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特許7191929衝撃および穿刺抵抗を分析するための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】衝撃および穿刺抵抗を分析するための装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/42 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G01N3/42 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020503696
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 US2018030277
(87)【国際公開番号】W WO2019027521
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】62/539,326
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マッカーティ、ドナルド、エル、2世
(72)【発明者】
【氏名】スタント、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ドットソン、ラリー
(72)【発明者】
【氏名】グラッド、ブライデン、イー.
(72)【発明者】
【氏名】シン、ハイテンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ルンド、ジョン
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-188032(JP,A)
【文献】特表2006-526775(JP,A)
【文献】特開2005-148057(JP,A)
【文献】特開昭64-013434(JP,A)
【文献】特開2003-014600(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106053236(CN,A)
【文献】実開平07-034352(JP,U)
【文献】特開平08-226881(JP,A)
【文献】特開平01-158330(JP,A)
【文献】特開平03-142188(JP,A)
【文献】特開2014-032173(JP,A)
【文献】特開2017-090166(JP,A)
【文献】特開2002-286604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00~3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムサンプルの物理的特性を分析するための装置であって、前記装置が、
前記フィルムサンプルを保持するように構成されたクランプシステムと、
前記フィルムサンプルの物理的特性を試験するように構成された槍プローブシステムであって、前記槍プローブシステムが、槍プローブ、前記槍プローブを前記クランプシステムに対して移動させるように構成された推進システム、および前記槍プローブの移動中に前記槍プローブが受ける力を測定するように構成された力センサを含む、前記槍プローブシステムと、を備え、
前記力センサは、前記槍プローブが前記フィルムサンプルと接触したときに前記フィルムサンプルに付与される力を測定するように構成され、
前記槍プローブが、中空部分を有し、かつ前記フィルムサンプルと接触するように構成された半球形端部を有する、前記装置。
【請求項2】
前記推進システムが、前記槍プローブを前記クランプシステムに対して移動させるように構成されたリニアモータを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記リニアモータが、前記槍プローブを移動させて、実質的に一定の速度で前記フィルムサンプルに衝突させるように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記槍プローブの前記実質的に一定の速度が、穿刺抵抗試験に関連付けられている0.04m/sと、槍衝撃試験に関連付けられている4m/sの間にある、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記槍プローブの前記実質的に一定の速度が、前記フィルムサンプルとの衝突時に3.3m/sであり、衝突後の前記槍プローブの前記実質的に一定の速度は、前記フィルムサンプルが前記槍プローブによって穿刺されるまで、3.3m/sの少なくとも80%のままである、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記リニアモータを制御するように構成されたコントローラと通信するコンピュータシステムをさらに備え、前記コンピュータシステムが、軌道を読み込ませるため、および前記読み込まれた軌道に従って前記槍プローブを移動させるためのコマンド信号を、前記コントローラに送信するように構成されている、請求項2~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記力センサが、動的圧電式センサを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記槍プローブが、アルミニウムからなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記半球形端部が、鋼を含み、前記中空部分が、アルミニウムを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記クランプシステムが、上顎および下顎を含み、前記上および下顎が、開放状態および閉鎖状態、ならびに中心に位置付けられている穴を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記上顎および前記下顎が、各々、溝および隆起部を含み、前記上および下顎のうちの一方の前記隆起部が、前記上および下顎のうちの他方の前記溝に嵌合するように構成されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記上顎および前記下顎のうちの一方が、前記上および下顎が前記開放状態にある間に、前記フィルムを適所に保持するように構成された保持機構を含む、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記保持機構が、複数の吸引カップを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記クランプシステムが、前記上顎および前記下顎を開放位置と閉鎖位置との間で移動させるように構成された空気圧式把持器を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記力センサと通信するコンピュータシステムをさらに備え、前記コンピュータシステムが、前記力センサから力データを取得するように構成されており、前記コンピュータシステムが、前記クランプシステムおよび前記槍プローブシステムとさらに通信して、前記クランプシステムの開放および閉鎖、ならびに前記槍プローブシステムの作動を制御して前記作動に関連付けられている力データを取得する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料のフィルムまたはシートの衝撃および穿刺抵抗の分析に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の物理的特性を特徴付けることは、材料の製造に使用される化学組成を分析および改善すること、ならびに材料の製造プロセスを分析および改善することに役立つ。物理的特性を特徴付けることはまた、消費者が特定のユースケースに最適な製品を決定することにも役立つと共に、研究者が特定の用途向けの新しいソリューションを開発することにも役立ち得る。材料の有用な物理的特性の1つは、材料の穿刺特性を決定することである。槍試験は、科学者に材料の高速穿刺特性についての洞察を提供する。槍試験では、通常、特定の速度で進行する特定の寸法の丸い円筒形プローブで薄膜を穿孔し、プローブが薄膜に及ぼす力を測定する。
【0003】
現在、フィルムの槍試験は、手動落槍システムおよび計装化槍システムの2つの方法で実施されている。どちらの場合も、システムは重力に依存して槍プローブを試験されるフィルムに向けて加速させる。フィルムは、クランプ機構によって適所にぴんと張られて保持される。落槍(DD)は、既知の質量/重量をフィルムに落下させることを含む。オペレータは、フィルムが穿刺されたかどうかの観察を行う。この試験は、フィルムの複数の複製物上で異なる質量/重量で何度も繰り返すことができる。結果として得られるフィルム特性(通常は全体のエネルギーのみ)が、結果から推定される。ただし、このシステムは使用が面倒で、自動化された動作には適さず、フィルムに印加される力曲線の性質の詳細な理解を提供しない。
【0004】
計装化槍衝撃システム(IDI)は、フィルムを穿刺するために使用される槍プローブに力センサを組み込むことによって、1回の試験からより豊富なデータを取得することにより適している。IDIシステムは、前負荷がかけられたばねを使用して、試験システムの力およびエネルギー容量を増加させる。これは、自動化された槍システムの最新技術である。ただし、上記のシステムは両方とも受動的に作動される。さらに、上記のシステムは、限られた量の収集されたデータを提供する。
【0005】
したがって、既存の装置およびシステムの上記および他の問題を解決する、フィルムの衝撃および穿刺抵抗を分析するための装置の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0006】
本開示による衝撃および/または穿刺抵抗を分析するための装置は、例えば、材料のフィルムまたはシートの物理的特性の制御された試験、および試験中の増加したデータ収集を可能にする槍プローブの能動的または制御された作動を提供する。
【0007】
本開示の一態様は、フィルムサンプルの物理的特性を分析するための装置を提供することである。装置は、フィルムサンプルを保持するように構成されたクランプシステムを含む。装置は、フィルムサンプルの物理的特性を試験するように構成された槍プローブシステムをさらに含む。槍プローブシステムは、槍プローブと、槍プローブをクランプシステムに対して移動させるように構成された推進システムと、槍プローブの移動中に槍プローブが受ける力を測定するように構成された力センサと、を有する。力センサは、槍プローブがフィルムサンプルと接触したときにフィルムサンプルに付与される力を測定するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示、ならびに構造の関連要素の動作方法および機能、ならびに部品および製造の経済性の組み合わせは、添付の図面を参照して以下の説明および添付の特許請求の範囲を考慮するとより明らかになり、これらの全ては本明細書の一部を形成し、同様の参照番号は様々な図における対応する部分を示す。しかしながら、図面は例示および説明のみを目的としており、本発明の制限の定義として意図されていないことを明確に理解されたい。
図1】本開示の一実施形態によるシステムの概略図を示す。
図2】本開示の一実施形態による、ロボットシステムの3次元斜視図を示す。
図3】本開示の一実施形態による、材料保持システムの3次元斜視図を示す。
図4】本開示の一実施形態による、厚さ測定システムの構成要素の3次元斜視図を示す。
図5】本開示の一実施形態による、フィルムサンプルの欠陥を分析するための材料画像分析システムの3次元斜視図を示す。
図6A】本開示の一実施形態による、クランプシステムの3次元斜視図である。
図6B】本開示の一実施形態による、クランプシステムの断面図を示す。
図7A】および
図7B】本開示の一実施形態による、クランプシステムによってクランプされたフィルムのビデオの最初および最後のフレームを示す。
図8A】および
図8B】本開示の一実施形態による、槍プローブがフィルムにちょうど突き当たったとき(図8A)およびフィルムが最も伸張されたとき(穿刺直前)(図8B)のフィルムのフレームを示す。
図9】本開示の一実施形態による、槍プローブシステムの3次元斜視図を示す。
図10】本開示の一実施形態による、槍プローブの3次元斜視図を示す。
図11A】および
図11B】それぞれ、本開示の一実施形態による、槍プローブがフィルムに接触する直前、および槍プローブがフィルムに接触し、穿刺直前に最大までフィルムを伸張させた後の、クランプによってクランプされたフィルムサンプルの側面図をそれぞれ示す。
図12A】本開示の一実施形態による、プローブの移動の開始からプローブの完全な停止までの時間(s)に対するプローブに加えられる力(N)のプロットである。
図12B】本開示の一実施形態による、サンプルとの衝突点からサンプルの穿刺の完了までの時間(s)に対するプローブに加えられる力(N)のプロットである。
図13A】および
図13B】本開示の一実施形態による、変位(m)に対する力(N)のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態によれば、材料の薄膜の衝撃および穿刺抵抗を試験するプロセスを自動化することができる。自動化された槍試験装置のアイデアは、様々な産業における高スループット(HTP)試験の必要性から生じている。試験速度が高いほど、大量のデータを比較的迅速に収集して傾向を分析することができ、関心のある分野でより詳細な調査を行うことが可能になる。HTP試験設定の開始に必要な機能の1つは、連続(またはほぼ連続)の動作である。システムをノンストップで実行することを可能にすることで、実施される試験の量が増加する。このシステムはまた、手動試験システムと比較して、1回の試験の速度を向上させることができる。これは、例えば、連続する試験間で中断することなく、材料の多くのフィルムの試験を可能にすることができる完全に自動化された槍試験装置を使用することによって実現することができる。これは、試験のスループットの向上、試験されたフィルムサンプルの数の増加、および試験されたフィルムに同じ試験条件を受けさせることを提供する。
【0010】
さらに、本開示の槍試験装置を使用することによって、槍速度を設定することができ、複数のサンプルが同じ槍速度を受けることができる。例えば、これにより、サンプルが同じ材料であるか異なる材料であるかに関係なく、複数のサンプルの物理的特性を比較することが可能になる。さらに、槍試験装置の槍プローブの速度は、穿刺抵抗試験を実施するための比較的低い0.04m/sから高速槍衝撃試験を実施するための8m/sまで調整することができる。さらに、以下の段落でさらに詳述するように、槍試験装置の槍プローブを自動的に取り出すことができ、これによりフィルム試験のスループットを向上させることができる。
【0011】
さらに、本槍試験装置は、ポリマーフィルム(例えば、プラスチック)および非ポリマーフィルムの試験を含む材料の様々なフィルムの試験を可能にする。さらに、本槍試験装置は、厚さ1mm以上の基材を含む様々な厚さのフィルムまたは基材を試験するために使用することができる。基材は、例えば、ポリマープラーク、金属シート、紙シート、または他の複合材料であり得る。したがって、本明細書では、「フィルム」、「フィルムサンプル」、または「材料のフィルム」という用語は、様々な種類の材料(例えば、プラスチック、紙、金属、または複合材料)および様々な厚さの材料を包含するために使用される。一例では、本槍試験装置は、射出成形および他のプラスチック成形手段を通じて形成されたものなど、他の加工材料の試験を可能にする。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態によるシステムの概略図を示す。本開示の一実施形態では、衝撃および穿刺抵抗を分析するためのシステム10は、ロボットシステム12、材料保持システム14、材料厚さ測定システム16、材料画像分析システム18、および槍試験装置20のうちの1つ以上を含む。ロボットシステム12、材料保持システム14、材料厚さ測定システム16、材料画像分析システム18、および槍試験装置20は、作業面22または共通の枠組みに位置付けられ得る。ロボットシステム12、材料保持システム14、材料厚さ測定システム16、材料画像分析システム18、および槍試験装置20は、コンピュータシステム24を使用して制御され得る。送達システムも提供されてもよい。送達システムは、ロボットシステム12および材料保持システム14が1つ以上のトレイからフィルムサンプルを取り出すことができる作業面にサンプルを送達する1つ以上のトレイを含んでもよい。
【0013】
図2は、本開示の一実施形態による、ロボットシステム12の3次元斜視図を示す。一実施形態では、ロボットシステム12は、エプソン社製のEpson C4Lロボットなどの6軸ロボットアームシステムである。実施形態によれば、Epson C4Lロボットシステムは、900mm(約35インチ)の最大リーチを有する。ロボットシステム12は、分析または試験されるフィルムサンプルを、作業面22に設けられたステーション間で移動するように構成されている。例えば、ロボットシステムは、図3に関連して以下に記載されるように、材料保持システムに接続され得る。図2に示されるロボットアームに加えて他の種類のロボットシステムを使用して、作業面22に設けられたステーション間でフィルムサンプルを移動させることができる。
【0014】
図3は、本開示の一実施形態による、材料保持システムの3次元斜視図を示す。材料保持システム14は、図2に示されるロボットシステム12の1つの端部に接続されている。例えば、一実施形態では、材料保持システム14は、締結具を使用してロボットシステム12のアームに取り付けられる。材料保持システム14は、フィルムサンプルを保持および移動させるように構成さている。一実施形態では、材料保持システムは、真空吸引を通じてフィルムサンプルを保持するように適合された真空吸引システム30を含む。一実施形態では、真空吸引システム30は、フィルムの垂れ下がりを防止するために、フィルムサンプルの各角部で実質的に平坦な四角形の形状および厚さを有するフィルムサンプルを保持するように構成された2対の吸引カップ32を含む。一実施形態では、対の吸引カップ32は、吸引カップ32がその周囲でフィルムサンプル38を保持できるように配置および離間される。対の吸引カップ32間に空間またはスロット33が設けられて、試験のためにフィルムサンプル38へのアクセスを提供する。一実施形態では、真空吸引システム14は、フィルムが作業面の周りを移動する効率を高めるために、第3の対の吸引カップ34をさらに含む。例えば、吸引カップ34の第3の対を提供することによって、以前に試験されたフィルムサンプル36を拾い上げると同時に、試験のための新しいフィルムサンプル38を配置することができる。
【0015】
本明細書では、吸引カップがフィルムサンプルを保持するために使用されるものとして記載されているが、他の機構またはシステムを使用して、材料の種類に応じてフィルムサンプルを保持することもできる。例えば、吸引カップは、様々なプラスチックおよびポリマー材料などの、非多孔質の比較的軽いサンプルを保持するのに適している場合がある。したがって、例えば、多孔質材料が使用される場合、吸引カップは、磁石、クリップ、または何らかの他の種類の把持機構などの他の保持機構に置き換えることができる。
【0016】
図4は、本開示の一実施形態による、厚さ測定システムの構成要素の3次元斜視図を示す。厚さ測定システム16は、例えば、0.5milから10milの間の広範囲の厚さでフィルムサンプルの厚さを測定するように構成されている。厚さ測定システム16は、接触板40およびプローブ41を使用してフィルムサンプルの厚さを測定するように構成さている。接触板40およびプローブ41は略平坦であり、その対向面でフィルムに接触し、フィルムの厚さは、接触板40とプローブ41との間の距離として測定される。接触板40およびプローブ41の両方の表面は、測定中にフィルムサンプルに穿刺することを回避するのに十分である。接触板40およびプローブ41は、厚さゲージの力を分散させ、測定中にフィルムサンプルが変形するのを防止するという利点を有する。例えば、接触板40およびプローブ41は、可撓性のかつ柔軟な材料またはより剛性のサンプルに使用されるように構成され得る。
【0017】
厚さ測定システム16はまた、高精度デジタル接触センサ44(例えば、キーエンス社のKeyence GT2シリーズ)も含む。センサ44は、フィルムサンプルの厚さを1ミクロンの精度で測定するために使用される。センサ44は、その精度のために選択される。プローブ41は、センサ44に機械的にリンクされている。厚さ測定システム16はまた、フィルムサンプル(図示せず)がセンサ44の上部または下部接点のいずれにも引っ掛からないように配置されたランプ42も含む。フィルムサンプルが接触板40とプローブ41との間の適所に置かれると、空気圧システム46からの加圧空気がセンサ44に加えられ、センサ44は、センサ44とプローブ41とにリンクされたシャフト45を延伸させ、プローブ41を移動させてフィルムサンプルの厚さを測定する。
【0018】
機械の種類の厚さ測定システム16が記載および使用されているが、他の種類の厚さ測定システムも使用することができる。例えば、別の実施形態では、厚さ測定システム16は、レーザビームを使用して厚さを決定するように適合されたレーザ距離測定センサを含む。例えば、デュアルレーザ厚さ分析器を使用して、フィルムサンプルの厚さを測定することができる。さらに別の実施形態では、容量測定システムを使用して、フィルムサンプルの厚さを測定することができる。静電容量(または一般にインピーダンス)測定システムは、材料全体の静電容量(またはインピーダンス)の測定に基づいている。測定されたインピーダンスは、材料の種類およびフィルムサンプルの厚さに直接関係している。
【0019】
再び図1を参照すると、厚さ測定システム16での厚さ測定の前または後に、フィルムサンプルは、ロボットシステム12によって材料画像分析システム18に移動される。図5は、本開示の一実施形態による、フィルムサンプルの欠陥を分析するための材料画像分析システムの3次元斜視図を示す。一実施形態では、材料画像分析システム18は、偏光の原理に基づいている。材料画像分析システム18は、試験されるフィルムサンプルの欠陥を検出するように構成されている。偏光源18Aを使用して、分析システム18内のフィルムサンプルを照射し、あらゆる周囲光を実質的に除去する。光がフィルムサンプルを通過した後、フィルムは、偏光フィルタを取り付けたカメラ18Bによって捕捉される。完全に形成されたフィルムは、光源からの偏光を散乱させず、したがって完全に鮮明な画像が得られる。ただし、フィルムに何らかの欠点/欠陥があると、カメラによって検出された光が散乱する。次いで、マシンビジョンアルゴリズムは、重大な欠陥を伴うフィルムサンプルを識別およびタグ付けする。したがって、材料画像分析システム18は、フィルムサンプルを通過する偏光がサンプルに存在する特定の物理的欠陥の影響を受けるときに生じる欠陥の検出に基づいている。材料画像分析システムは偏光に依存しているため、試験される材料が変更されると、偏光も変化する可能性があり、これは何もない場合に存在する欠陥を示す可能性がある。ただし、分析の態様の一部として、欠陥または不規則性の分析は、データ解釈に移行し、フィルムからの結果の範囲を調べること、ならびに標準偏差および平均からの距離に基づいて外れ値を識別することによって行われる。したがって、欠陥を決定する本方法は、材料に依存せず、HTP実施形態の問題に対するより普遍的なソリューションである。あるいは、一実施形態では、材料画像分析システム18は、欠陥の種類を定量化および識別するように構成されたゲル試験器を含み得る。ゲル試験器の例として、光学制御システム(OCS)試験器が挙げられる。上述されたもの以外の他の種類の材料画像分析システムが、代わりに使用されてもよい。例えば、光透過率分析システムまたは超音波欠陥検出システムを使用して、フィルムサンプルの欠陥を検出することができる。本明細書では、フィルムサンプルの任意の欠陥または不規則性を含めるために、「欠陥」という用語が使用される。
【0020】
厚さ測定および画像分析に続いて、フィルムサンプルは、ロボットシステム12によって槍試験装置20に移動される。槍試験装置は、フィルムサンプルの物理的特性を試験するように構成されている。一実施形態では、物理的特性は、フィルムサンプルの弾性および強度を含む。図6Aおよび6Bを参照すると、槍試験装置20は、フィルムクランプシステム60を含む。図6Aは、本開示の一実施形態による、クランプシステム60の3次元斜視図である。図6Bは、本開示の一実施形態による、クランプシステム60の断面図を示す。フィルムクランプシステム60は、試験の精度を確保する役割を果たす。クランプシステム60は、2つの顎62Aおよび62Bを含む。一実施形態では、顎62Aおよび62Bは円形であり、すなわち、円形または環状の形状を有する。しかしながら、顎62Aおよび62Bは、多角形などの異なる形状を有することもある。一実施形態では、2つの顎62Aおよび62Bは、顎62A、62Bが互いに閉鎖されたときに互いに完全または部分的に噛み合う対応する表面形状を含む。例えば、図6Bの切断図に示されるように、上顎62Aには、溝64Aおよび隆起部65Aのパターンが設けられている。下顎62Bには、一致する溝64Bおよび隆起部65Bが設けられている。上顎62Aの隆起部65Aは、下顎62Bの溝64Bと噛み合うように構成されている。下顎62Bの隆起部65Bは、上顎62Aの溝64Aと噛み合うように構成されている。溝64A、64Bおよび隆起部65A、65Bは、2つの顎62A、62Bが互いに閉鎖するときに、フィルムをぴんと引っ張るように構成されている。溝64A、64Bおよび隆起部65A、65Bは、プロセス中にフィルムに過度の応力が印加されないようにさらに構成されている。一実施形態では、溝および隆起部は円形である。一実施形態では、フィルムサンプルが対向する隆起部および溝の間に挟まれるために、ただしこの間で切断されないために十分な空間を提供するために、隆起部の幅は溝の幅よりもわずかに小さい。顎62Aおよび62Bは、穴66などの中央に位置付けられている孔を画定する。一実施形態では、中央穴66の直径は3インチ(7.62cm)である(ASTM試験規格によって指定されている)。2つの顎62Aおよび62Bは、顎62A、62Bを開放および閉鎖するように作動させることができる平行顎空気圧式把持器68(Schunkから入手した)によって作動する。一実施形態では、底部顎62Bは、フィルムクランプシステム60が開放している間にフィルムサンプルを適所に保持する4つの吸引カップ63(図6Aに示される)を含む。図6Aおよび6Bに示されているもの以外の他のクランプを使用して、槍試験中にフィルムサンプルを保持することができる。一実施形態では、10psi(0.69bar)~50psi(3.45bar)、例えば15psi(1.03bar)の圧力が平行顎空気圧式把持器68によって印加され、2つの顎62Aおよび62Bを閉鎖して、それらの間でフィルムサンプルを保持する。ただし、印加された圧力がフィルムサンプルをせん断しない限り、他の圧力も可能である。
【0021】
クランプシステム60の機能を試験して、(a)クランプが閉鎖したときにフィルムサンプルがぴんと引っ張られ、クランプに起因するフィルムサンプルの過度の応力/伸張がないこと、および(b)フィルムサンプルが試験プロセス全体でクランプに滑り込まないことを確認することができる。高速カメラシステムを使用して、これらの研究の質的データを収集することができる。フィルムサンプルをぴんと引っ張るクランプシステム60の有効性を試験するために、様々なレベルのしわおよび折り目を有する複数のフィルムを、異なる試験のためにクランプに配置することができる。高速ビデオは、フィルムサンプル上でクランプシステム60が閉鎖するときにクランプシステム60の上方から捕捉できるが、他の視点も可能である。
【0022】
図7Aおよび図7Bは、本開示の一実施形態による、クランプシステム60によってクランプされたフィルムサンプルのビデオの最初および最後のフレームを示す。図7Aの最初のフレームは、クランプシステム60の閉鎖前のフィルムサンプルのいくつかのしわを示している。しかしながら、クランプシステム60を閉鎖すると、図7Bの最後のフレームは、フィルムサンプルがクランプシステム60の動作によってぴんと引っ張られたことを示している。フィルムサンプルがクランプシステム60に配置される前のフィルムサンプル上に、同心円が示された。フレームは、クランプシステム60が閉鎖したときに、円の形状が大きく変化していないことを示している。したがって、クランプシステム60は、フィルムサンプルをぴんと引っ張っている間(例えば、フィルムを歪ませるまたは伸張する)、フィルムサンプルに悪影響を与えない。
【0023】
フィルムサンプルがクランプシステム60によって固定された後、槍はフィルムサンプルを通って移動する。試験の高速ビデオを捕捉することができる。図8Aは、本開示の一実施形態による、槍がフィルムサンプルにちょうど突き当たったときのビデオからのフレームを示す。図8Bは、本開示の一実施形態による、フィルムサンプルが最も伸張されるとき(穿刺直前)のビデオからのフレームを示す。図8Aおよび図8Bの2つのフレーム画像は、クランプ顎に最も近いフィルムサンプルの縁部が適所に留まることを示し、フィルムサンプルがクランプシステム60内で滑らないことを示している。図8Aおよび8Bに示された上記の試験は、比較的薄い(0.5mil)および比較的厚いフィルムサンプル(10mil)で実施され、両方の場合において、フィルムサンプルはクランプシステム60で滑らなかった。
【0024】
図9を参照すると、槍試験装置20はまた、槍プローブシステム90も含む。図9は、本開示の一実施形態による、槍プローブシステム90の3次元斜視図を示す。槍プローブシステム90は、槍プローブ92と、槍プローブ92を移動させる推進システム94と、を含む。一実施形態では、推進システム94は、リニアモータ96(例えば、LinMot USA,IncのLinMotリニアモータ)と、リニアモータ96を制御するコントローラ(図示せず)と、を含む。リニアモータ96は、規定の運動プロファイルに正確に追従しながら、比較的高い加速および減速のために構成されている。一実施形態では、リニアモータ96は、槍プローブの目標速度を比較的低い速度(0.04m/s)から比較的高い速度(4m/s)に変更するか、またはこれらの速度を選択し、かつ許容運動範囲内で目標速度に到達しながら、穿刺抵抗および槍衝撃試験中に速度を調整する柔軟性を提供する。さらに、リニアモータは、槍プローブがリニアモータにリンクされているため、槍プローブをすばやく簡単に取り出すことができるという利点を提供する。コントローラは、推定されたモータパラメータに基づくフィードフォワード補償を有する従来の比例-積分-微分(PID)コントローラを使用することができる。命令は、コンピュータシステム24によってコントローラに送信される(図1を参照)。コンピュータシステム24は、コントローラと通信しており、コンピュータシステム24は、コントローラにコマンド信号を送信して、リニアモータ96を制御するように構成されている。コンピュータシステム24は、コントローラにコマンド信号を送信して軌道を読み込み、読み込まれた軌道に従って槍プローブ92を移動させるように構成されている。同様に、フィードバックデータは、コンピュータシステム24によってPIDコントローラから受信される。槍プローブ92は、リニアモータ96の可動スライダ95に取り付けられる一方、固定子は、例えば、ポスト97によって作業面22またはフレームに固定される。槍プローブ92はリニアモータ96によって作動されるため、槍プローブ92の取り出しプロセスは従来技術のシステムよりも速くて安全であり、自動化された高スループットのフィルム試験が可能になる。しかしながら、リニアモータ96以外の推進システムを使用して、槍プローブ92を移動させることができる。例えば、油圧システムまたは空気圧システム(例えば、圧縮空気を使用)を使用して、槍プローブ92を移動させることもできる。リニアモータ96の代わりにモータを使用して、槍プローブ92を移動させることもできる。
【0025】
図9をさらに参照すると、槍プローブシステムは、力センサ99をさらに含む。力センサ99は、槍プローブ92の移動中、例えば、フィルムサンプルの変形中に、槍プローブ92が受ける力を測定するように構成されている。一実施形態では、力センサ99は、槍試験中に力信号を測定するために、例えば、槍プローブ92とリニアモータ96のスライダ95との間の槍プローブ92にまたはその中に設置される圧電式(PZT)力センサである。圧電式センサは、急速に変化する力を正確に測定することができる。圧電式センサは、動的な力のプロファイルが発生する、力形態槍プローブ92の測定に良く適している。本明細書では、槍試験中に力を測定するための圧電式センサが記載されているが、他の種類のセンサを使用して力を測定することもできる。
【0026】
槍衝撃試験は、ASTM D1709規格と相関している一方、穿刺抵抗試験は、ASTM F1306規格と相関している。槍試験装置20は、より良い速度調整およびより速いプローブ取り出しのために構成されている。槍プローブ92を交換することによって、槍試験装置20は、低速で穿刺抵抗試験を、より高速で槍衝撃試験を実施することができる。
【0027】
図10は、本開示の一実施形態による、槍プローブの3次元斜視図を示す。一実施形態では、槍プローブ92は、ASTM試験規格によって指定されるように構築されている。一実施形態では、槍プローブ92は、直径0.5インチ(1.27cm)の円筒形ロッド102である。一実施形態では、円筒形ロッド102は、0.2インチ(0.51cm)~1インチ(2.54cm)の直径を有する。槍プローブ92はまた、ASTM規格によって指定されているように、半球形端部104も有する。半球状の形状は、応力集中が最小化する。一実施形態によれば、半球形端部104は、ASTM試験規格によって指定されるように、0.25インチ(0.63cm)の半径を有することができる。ASTM規格では、プローブが鋼製であることが指定されているが、これにより、現在の構成ではプローブが重くなる。実際、プローブはモータによって駆動されるため、プローブの過度の重量は、モータの精度、速度、および寿命の低下を含む、時間の経過に伴うモータの動作に有害な場合がある。したがって、一実施形態では、槍プローブ92の重量を最小化するために、槍プローブ92は、中空に構成される。追加的または代替的に、槍プローブ92は、アルミニウムで作られている。槍プローブ92がASTM規格に準拠することを保証するために、先端104は、鋼から作られてもよい。一実施形態では、先端104は、例えば、接着剤を使用して、またはねじで円筒形ロッド102に締結される。プローブの全長は、約10インチ(25.4cm)である。一実施形態では、プローブの全長は、6インチ(15.2cm)~約16インチ(40.6cm)である。槍プローブ92の重量は、おおよそ90gである。一実施形態では、槍プローブ92の重量は、50g~200gである。
【0028】
高速槍衝撃試験を実施するために、ASTM規格では、槍プローブがフィルムサンプルとの衝突の瞬間に3.3m/sで進行し、フィルムサンプルが穿刺されるまで、その速度の80%以上で進行し続けることが要求される。一実施形態では、槍プローブ92の速度は、フィルムサンプルとの衝突時に3.3m/sであり、フィルムサンプルが槍プローブ92によって穿刺されるまで、速度は3.3m/sの80%を超えたままである。妥当な進行距離でこの速度プロファイルを実現するには、軌道の慎重な計画が必要になる場合がある。軌道には、フィルムサンプルと接触する前の静止から3.3m/sへの加速、3.3m/sの一定速度、およびフィルムサンプルを穿刺した後の3.3m/sから静止への減速の、3つの段階がある。加速および減速に起因して、力センサ99は、加速および減速段階のG力を記録する。次の段落でさらに説明されるであろうように、加速および減速段階からのデータは破棄される。理想的には、これらの力は軌道の一定速度の部分には存在せず、プローブがフィルムサンプルに衝突することに起因する、力の測定値を損なうことはない。ただし、加速度プロファイルが強すぎる場合、PID位置制御システムは最初に目標位置に追いつくことができず、最終的に一定速度の領域で目標速度をオーバーシュートする。これにより、槍の運動に振動が発生し、これは、力センサ99に反映される。この望ましくない状況を回避するために、滑らかな軌道を確立して、加速度の突然の変化を最小化することができる。PIDコントローラのゲインを調整して、システムが過減衰または非振動になるようにすることができる。槍プローブ92の速度は、衝突時に3.3m/sに等しいものとして上述されているが、槍プローブ92の速度は、高速槍衝撃試験を実施するために、比較的低い0.04m/sから4m/sまでの穿刺抵抗試験を実施するように調整することができる。
【0029】
図11Aおよび11Bは、それぞれ、本開示の一実施形態による、槍がフィルムサンプルと接触する直前、および槍がフィルムと接触し、穿刺直前に最大までフィルムを伸張した後に、クランプによってクランプされたフィルムサンプルの図を示す。
【0030】
試験されるすべてのフィルムサンプルの試験条件を実質的に同じに保つために、試験サンプルに共通のフィルム形式が選択され得る。例えば、一実施形態では、6インチ×6インチ(15.2cm×15.2cm)の正方形のフィルム片が共通形式として選択される。例えば、このサイズは、槍試験のためにクランプシステム60にしっかりと保持されるのに十分な大きさである。さらに、この形式のフィルムを切断するために、従来のダイが利用可能である。ただし、理解できるように、他のサイズと形式も使用することができる。
【0031】
再び図1を参照すると、槍システムの試験手順の一実施形態は以下のステップを含む。
(a)材料保持システム14を使用して、ロボットシステム12によってフィルムサンプルを拾い上げるステップ。
(b)材料厚さ測定システム16を使用して、フィルムサンプルの厚さを測定するステップ。
(c)槍試験装置20のクランプ60にフィルムサンプルを配置するステップ。
(d)槍試験装置20内の槍プローブ92を移動させるステップ。
(e)コンピュータシステム24による槍試験のデータおよび結果を収集するステップ。
(f)試験されたサンプルを廃棄するステップ。
任意に、試験手順にはまた、材料画像分析システム18を使用して欠陥分析を実施することも含む。
【0032】
サンプルは、6インチ(15.2cm)の正方形のフィルムを含み得る。
【0033】
ステップ(c)に関して、フィルムサンプルが試験の準備ができたときに、槍試験装置20のクランプ60が開放し、ロボットシステム12に取り付けられた材料保持システム14は、最初にクランプ60にある任意の古いフィルムを取り除き(フィルムがクランプ内に存在する場合)、新しいフィルムサンプルフィルムをクランプ60に配置する。図3に示されるように、これは、任意の使用された/古いフィルム36を掴んで取り除くために材料保持システム14上の真空吸引カップ34を制御することによって、および対の真空吸引カップ30および32を制御して新しいフィルムサンプル38を保持し、かつクランプ60上の吸引カップのセットを制御することによって(図6を参照)達成される。材料保持システム14を有するロボットシステム12がクランプ60の空間から引き出されると、クランプ60は閉鎖され、サンプルフィルムは、クランプ60の顎62Aおよび62Bの間にぴんと張った状態で保持される。したがって、フィルムサンプルを穿刺する準備ができている。
【0034】
ステップ(d)に関して、リニアモータ96(図9を参照)は、一定の開始位置へのリニアモータ96のホーミングを含むシステムが開始されたときに初期化される。一実施形態では、リニアモータ96が初期化されると、リニアモータ96を再初期化することなく複数の試験を実行することができる。一実施形態では、槍試験装置20のリニアモータ96を定期的に、例えば、毎日再初期化して、リニアモータ96が確実に同じ開始位置に戻るようにすることができる。槍試験装置20の槍プローブ92は、次いで、コンピュータシステム24によって移動され、指定された軌道を読み込み、槍プローブ92を移動させるコマンドをリニアモータ96に送信するように、槍試験装置20のPIDコントローラに命令する。
【0035】
ステップ(e)に関して、コマンドはまた、コンピュータシステム24によって、コンピュータシステム24と通信し、槍試験中に力信号を測定してデータ収集を開始する力センサ99と通信するデータ取得システムにも送信される。このコマンドは、槍コマンドの移動と実質的に同時に送信することも、槍コマンドの移動と同時に送信することもできる。試験が完了した後、リニアモータ96はその初期位置に戻る。
【0036】
ステップ(f)に関して、使用されたフィルムサンプルを、次いで、ロボットシステム12を使用して材料保持システム14によって持ち上げることができ、オペレータによって定期的に空にされるゴミ箱に配置することができる。これによりサイクルが完了し、システムはその初期状態に戻り、例えば、レセプタクルから、またはレセプタクルに到着したときに、次のフィルムサンプルを拾い上げる準備ができている。
【0037】
槍試験の制御および槍試験のデータおよび結果の収集に加えて、一実施形態では、コンピュータシステム24は、様々な試験を通じて進行するフィルムサンプルを追跡するようにさらに構成することができ、これにより厚さ測定、欠陥分析、および槍試験情報が各サンプルに相関されて、後での参照のために記憶されるようにする。したがって、例えば、欠陥のあるサンプルからの試験データにフラグを付けて、それを信頼すべきかまたは破棄すべきかを評価することができる。
【0038】
通常、フィルムサンプルに対する衝突から穿刺までの時間は、数ミリ秒のオーダーである。さらに、取得した衝撃信号の高速フーリエ解析により、約20kHzの周波数情報内容が示された。したがって、サンプリング周波数(データ収集率)は20 kHzを超える速度で実施される場合がある。捕捉されたデータの周波数スペクトルは、関連するデータを低周波数で、任意のノイズを高周波数で示す。ノイズは、以下の段落でさらに説明するように、ローパスフィルタを使用してを除去される。
【0039】
上記のように、センサはプローブが受ける力を測定するために使用される。一実施形態では、槍システムの力を測定するために単軸力センサで十分である。上で説明したように、一実施形態では、圧電式センサは、その高い帯域幅(36000Hz)、したがって力の高速変化を測定する能力に起因して選択される。一実施形態では、PCB Piezotronicsの単軸力センサ、モデルICP力センサ、208C02が使用される。この圧電式センサは、Z方向に100ポンド(444 Nの力に相当)の負荷容量を有する。このセンサは、動的な力の用途に構成されている。センサのあらゆる静的負荷は最終的にゼロに戻る。
【0040】
センサの動的な性質の結果として、センサの較正は高度な機器を使用し、実験質での実施は困難である。したがって、センサのルーチンの較正は、製造者によって実施されなくてもよい。さらに、力センサはまた、測定ノイズの影響を受けやすい場合もあり、これは、試験中の槍の速度によってさらに悪化する。一実施形態では、力信号の高周波ノイズを実質的に減少または除去するために、生の力信号のローパスフィルタリングが実施される。一実施形態では、この目的のために、400Hzのカットオフ周波数を有する二次バターワースフィルタを使用することができる。さらに、一実施形態では、このフィルタリングプロセスによって導入されるあらゆる遅延を除去するために、信号は逆方向(時間に対して逆方向)に2回フィルタリングされる。これは、MathWorksのMatLabが提供するfiltfilt関数と同様である。
【0041】
一実施形態では、衝突時の槍プローブ92の速度を確認するため、およびフィルムサンプルを穿刺するプロセスを通して、位置信号の数値導関数をとることによって、槍プローブ速度が計算される。このプロセスによって導入されるあらゆる数値ノイズを除去するために、力信号のフィルタリングに使用されるものと同様のローパスフィルタリング戦略が使用される。
【0042】
一実施形態では、槍試験装置20と通信するコンピュータシステム24は、槍試験装置20から力データを収集または取得するように構成されている。一実施形態では、槍試験装置20でのデータ収集は、槍プローブ92が移動されたときに開始し、槍プローブ92がそのストロークの最上部で停止したときに終了する。これにより、槍プローブ92がフィルムサンプルと接触している間、遅延およびタイミングの考慮が収集されたデータに影響を与えないことが保証される。したがって、収集されたデータ内のデータの関連部分を分離するために、収集されたデータは切り捨てられることが好ましい。これは、槍プローブ92がフィルムと接触する時間を示す衝撃センサからのデータを使用して実施される。測定された力がゼロになったとき、穿刺の完了が示される。ただし、力信号のフィルタリングに起因して、力がゼロにならない場合がある。したがって、一実施形態では、穿刺完了点は、フィルタリングされていない力信号を使用して識別される。
【0043】
図12Aは、一実施形態による、槍プローブ92の移動の開始から槍プローブ92の完全な停止までの時間(s)に対するプローブに加えられる力(N)のプロットである。このプロットは、槍プローブ92の加速度に対応する第1の広いピーク、槍プローブ92のサンプルとの接触に対応する鋭いピーク、および槍プローブ92の減速に対応する第2の広いピークを示している。
【0044】
図12Bは、本開示の一実施形態による、フィルムサンプルとの衝突点からサンプルの穿刺の完了までの時間(s)に対する槍プローブ92に印加される力(N)のプロットである。
【0045】
主要な計量法は、槍試験装置20によって収集された力データから計算することができる。これらの測定基準は、用途に基づいてフィルムを特徴付けることに役立つ。主要な計量法の例は、その単位、説明、およびそれらの計算方法の簡単な説明と共に、表2に要約されている。
【表1】
【0046】
図13Aは、本開示の一実施形態による、変位(m)に対する力(N)のプロットを示す。図13Aは、力のピーク(または最大力)を示す。図13Aはまた、最大力までの力曲線の下の区域に対応するピークエネルギーも示している。エネルギーは、変位の距離に対する力の積分に対応する。一実施形態では、台形法を使用して、力のエネルギーまたは積分を計算する。ただし、他の計算方法を使用することもできる。
【0047】
図13Bは、本開示の一実施形態による、変位(m)に対する力(N)のプロットを示す。図13Bは、力のピーク(または最大力)を示す。図13Bはまた、総変位までの力曲線の下の区域に対応する総エネルギーも示す。
【0048】
単一の種類のフィルムのすべての複製またはサンプルを試験した後、統計アルゴリズムを使用して、データ内のあらゆる外れ値を検出および除去することができる。あらゆる統計上の外れ値を除去する目的は、不適切な試験から生じる可能性のあるあらゆる誤った試験結果(例えば、試験中にフィルムが存在しない、フィルムが引き裂かれているなど)を除去することである。したがって、外れ値を除去するために使用される閾値は保守的である。
【0049】
一実施形態では、外れ値を決定するために、修正Zスコアが使用される。Zスコア法の詳細な説明は、米国商務省国立標準技術研究所のウェブサイトで見つけることができる。簡単に言えば、修正Zスコアは、所与の観測値がその中央値からどれだけ離れているかを示す(通常のZスコアも同様に平均からの距離を示す)。Zスコアは、式(1)を使用して計算される。
【数1】
ここで、
【数2】
は、観察値
【数3】
についての修正Zスコアであり、
【数4】
は、観察値のセットの中央値であり、MADは、式(2)を使用して計算される中央値絶対偏差である。
【数5】
【0050】
修正Zスコアは、通常のZスコアと比較して、データのセットの統計的広がりのより堅牢な尺度とみなされる。平均から遠く離れた単一の外れ値は、データの平均(したがって通常のZスコア)に影響を与える可能性がある。外れ値の数が許容可能な観測値よりもはるかに少ないと仮定すると、データセットの中央値は影響を受けない。Zスコアは、中央絶対偏差(MAD)を使用して計算することが好ましいが、MADの代わりに標準偏差(σ)を使用してZスコアを計算することも可能である。さらに、Grubbs検定、Tietjen-Moore検定、Generalized Extreme Studentized Deviate(ESD)検定など、Zスコア法以外の他の統計手法も使用することができる。
【0051】
一実施形態では、各槍試験に対して複数の計量法および測定値があるため、外れ値の検出は、1つの計量法または測定値に対して実施することができる。この実施形態によれば、保守的な閾値が与えられると、試験が外れ値を生成する場合、何かが著しく間違っていなければならず、すべての計量法について同様に貧弱なデータが生じると想定される。これは、試験の重大な欠陥を検出することである外れ値検出プロセスの目的と一致している。
【0052】
一実施形態では、外れ値が識別されると、データセット内の残りの複製またはサンプルの平均および標準偏差を計算し、データベースにアップロードすることができる。外れ値データは、そのようにタグ付けすることができ、必要に応じてさらなるレビューのためにデータベースに記憶することができる。
【0053】
用語「コンピュータシステム」は、本明細書では、任意のデータ処理システムまたは処理ユニット(単数または複数)を包含するために使用される。コンピュータシステムは、1つ以上のプロセッサまたは処理ユニットを含み得る。コンピュータシステムまた、分散コンピューティングシステムでもあり得る。コンピュータシステムは、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、PDAなどのハンドヘルドコンピューティング装置、タブレット、スマートフォンなどを含み得る。上の段落に記載された機能または動作を達成するために、コンピュータプログラム製品(単数または複数)がコンピュータシステム上で実行されてもよい。コンピュータプログラム製品は、上述の機能または動作を実施するようにコンピュータシステムをプログラムするために使用される命令が内部に記憶された、コンピュータ可読媒体または記憶媒体(単数または複数)を含む。好適な記憶媒体(単数または複数)の例としては、フロッピーディスク、光ディスク、DVD、CD ROM、光磁気ディスク、RAM、EPROM、EEPROM、磁気もしくは光学カード、ハードディスク、フラッシュカード(例えば、USBフラッシュカード)、PCMCIAメモリカード、スマートカード、または他の媒体を含む、任意の種類のディスクが挙げられる。あるいは、コンピュータプログラム製品の一部分または全体を、インターネット、ATMネットワーク、ワイドエリアネットワーク(WAN)またはローカルエリアネットワークなどのネットワークを介してリモートコンピュータまたはサーバからダウンロードすることができる。
【0054】
コンピュータシステムまたはプロセッサを制御するためのソフトウェアを含み得る。また、このソフトウェアにより、コンピュータシステムまたはプロセッサは、グラフィカルユーザインターフェース、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などの出力装置を介してユーザと対話することもできる。ソフトウェアは、装置ドライバ、オペレーティングシステム、およびユーザアプリケーションなども含み得るがこれらに限定されない。あるいは、コンピュータで具現化されるコンピュータプログラム製品(単数または複数)として(例えば、ソフトウェア製品として)、上述の方法を実装する代わりに、またはそれに加えて、上述の方法は、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)またはグラフィック処理ユニット(単数または複数)(GPU)が本開示の方法(単数または複数)、機能、または動作を実装するように設計され得るハードウェアとして実装することができる。
なお、本発明には、以下の態様が含まれることを付記する。
〔態様1〕
フィルムサンプルの物理的特性を分析するための装置であって、前記装置が、
前記フィルムサンプルを保持するように構成されたクランプシステムと、
前記フィルムサンプルの物理的特性を試験するように構成された槍プローブシステムであって、前記槍プローブシステムが、槍プローブ、前記槍プローブを前記クランプシステムに対して移動させるように構成された推進システム、および前記槍プローブの移動中に前記槍プローブが受ける力を測定するように構成された力センサを含む、槍プローブシステムと、を備え、
前記力センサは、前記槍プローブが前記フィルムサンプルと接触したときに前記フィルムサンプルに付与される力を測定するように構成されている、装置。
〔態様2〕
前記推進システムが、前記槍プローブを前記クランプシステムに対して移動させるように構成されたリニアモータを含む、態様1に記載の装置。
〔態様3〕
前記リニアモータが、前記槍プローブを移動させて、実質的に一定の速度で前記フィルムサンプルに衝突させるように構成されている、態様2に記載の装置。
〔態様4〕
前記槍プローブの前記実質的に一定の速度が、穿刺抵抗試験に関連付けられている0.04m/sと、槍衝撃試験に関連付けられている4m/sの間にある、態様3に記載の装置。
〔態様5〕
前記槍プローブの前記実質的に一定の速度が、前記フィルムサンプルとの衝突時に3.3m/sであり、衝突後の前記槍プローブの前記実質的に一定の速度は、前記フィルムサンプルが前記槍プローブによって穿刺されるまで、3.3m/sの少なくとも80%のままである、態様3または4に記載の装置。
〔態様6〕
前記リニアモータを制御するように構成されたコントローラと通信するコンピュータシステムをさらに備え、前記コンピュータシステムが、軌道を読み込ませるため、および前記読み込まれた軌道に従って前記槍プローブを移動させるためのコマンド信号を前記コントローラに送信するように構成されている、態様2~5のいずれか一項に記載の装置。
〔態様7〕
前記力センサが、動的圧電式センサを含む、態様1~8のいずれか一項に記載の装置。
〔態様8〕
前記槍プローブが、中空部分を有し、かつ前記フィルムサンプルと接触するように構成された半球形端部を有する、態様1~7のいずれか一項に記載の装置。
〔態様9〕
前記半球形端部が、鋼を含み、前記中空部分が、アルミニウムを含む、態様8に記載の装置。
〔態様10〕
前記クランプシステムが、上顎および下顎を含み、前記上および下顎が、開放状態および閉鎖状態、ならびに中心に位置付けられている穴を有する、態様1~9のいずれか一項に記載の装置。
〔態様11〕
前記上顎および前記下顎が、各々、溝および隆起部を含み、前記上および下顎のうちの一方の前記隆起部が、前記上および下顎のうちの他方の前記溝に嵌合するように構成されている、態様10に記載の装置。
〔態様12〕
前記上顎および前記下顎のうちの一方が、前記上および下顎が前記開放状態にある間に、前記フィルムを適所に保持するように構成された保持機構を含む、態様10または11に記載の装置。
〔態様13〕
前記保持機構が、複数の吸引カップを含む、態様12に記載の装置。
〔態様14〕
前記クランプシステムが、前記上顎および前記下顎を開放位置と閉鎖位置との間で移動させるように構成された空気圧式把持器を含む、態様1~13のいずれか一項に記載の装置。
〔態様15〕
前記力センサと通信するコンピュータシステムをさらに備え、前記コンピュータシステムが、前記力センサから力データを取得するように構成されており、前記コンピュータシステムが、前記クランプシステムおよび前記槍プローブシステムとさらに通信して、前記クランプシステムの前記開放および閉鎖、ならびに前記槍プローブシステムの作動を制御して前記作動に関連付けられている力データを取得する、態様1に記載の装置。

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B