(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】クロマトグラフィ設備用の気液分離器
(51)【国際特許分類】
G01N 30/02 20060101AFI20221212BHJP
G01N 30/80 20060101ALI20221212BHJP
B01D 45/08 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G01N30/02 N
G01N30/80 Z
B01D45/08 Z
(21)【出願番号】P 2020514326
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2018062537
(87)【国際公開番号】W WO2018210818
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】102017110601.4
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017125816.7
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017130820.2
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519408917
【氏名又は名称】アレクサンダー ボジッチ
【氏名又は名称原語表記】Alexander Bozic
【住所又は居所原語表記】Bommersheimer Str. 25, 61440 Oberursel, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ボジッチ
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527929(JP,A)
【文献】国際公開第2016/042618(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/040252(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
B01J 20/281-20/292
B01D 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)流入ノズル、衝突ユニットおよび気体案内ユニットを備えた分離領域;
b)液体流出部を備えたセパレート領域および
c)気体流出部を備えた気体導出領域;
を含む、クロマトグラフィ設備用の気液分離器であって、
前記分離領域が、前記セパレート領域に分離開口を介して接続されており、前記衝突ユニットからの前記流入ノズルの間隔が、前記分離開口の最小の延在長さよりも大きく、前記流入ノズルは、該流入ノズルにより案内された気液流が衝突ユニットに向かって噴射されるように、構成され
、
前記分離領域は、前記流入ノズルの領域において円形の横断面を有しておらず、前記分離領域は、上側の閉鎖部と一緒に1つの空間を画定する側壁を含み、該空間は、前記分離開口を介して前記セパレート領域に接続されていることを特徴とするクロマトグラフィ設備用の気液分離器。
【請求項2】
a)流入ノズル、衝突ユニットおよび気体案内ユニットを備えた分離領域;
b)液体流出部を備えたセパレート領域および
c)気体流出部を備えた気体導出領域;
を含む、クロマトグラフィ設備用の気液分離器であって、
前記分離領域が、前記セパレート領域に分離開口を介して接続されており、前記衝突ユニットからの前記流入ノズルの間隔が、前記分離開口の最小の延在長さよりも大きく、前記流入ノズルは、該流入ノズルにより案内された気液流が衝突ユニットに向かって噴射されるように、構成され、
前記気体案内ユニットが気体加速ユニットを有することにより、気体が前記分離開口に向かって加速させられ、
前記衝突ユニットが、前記気体加速ユニットの領域に形成されるとともに、該気体加速ユニットの2つの部分領域を結合し、前記分離領域を部分領域に分けることにより、前記気液分離器が、前記分離領域において
、液体の流れ方向にほぼ平行である前記気体の流れ方向で分離運転可能である
ことを特徴とするクロマトグラフィ設備用の気液分離器。
【請求項3】
a)流入ノズル、衝突ユニットおよび気体案内ユニットを備えた分離領域;
b)液体流出部を備えたセパレート領域および
c)気体流出部を備えた気体導出領域;
を含む、クロマトグラフィ設備用の気液分離器であって、
前記分離領域が、前記セパレート領域に分離開口を介して接続されており、前記衝突ユニットからの前記流入ノズルの間隔が、前記分離開口の最小の延在長さよりも大きく、前記流入ノズルは、該流入ノズルにより案内された気液流が衝突ユニットに向かって噴射されるように、構成され、
前記気液分離器が、前記分離領域において、液体の流れ方向にほぼ平行である前記気体の流れ方向で分離運転可能であって、
分離開口は、前記セパレート領域におけ
る気体の流速が減少させられるように、構成され
、
前記分離開口が、2
つ以上の部分分離開口を有していて、該部分分離開口の配置により、前記気体の前記流速の低下が生じ得る
ことを特徴とするクロマトグラフィ設備用の気液分離器。
【請求項4】
前記気液分離器が
、気体流の作用を減じるために前記セパレート領域内に組込み部材を有している、請求項1から
3まで
のいずれか1項記載の気液分離器。
【請求項5】
前記衝突ユニットは、ほぼ平坦であり、衝突プレートと見なすことができ、該衝突プレートが
、前記分離領域の1つの壁を形成していて、前記気体案内ユニットの1つの側壁を成す、請求項1から
4までのいずれか1項記載の気液分離器。
【請求項6】
前記分離領域内に、変向ユニットが設けられていて、該変向ユニットを介してエアロゾル流を第2の衝突ユニットに向かって噴射させることができる、請求項1から
5までのいずれか1項記載の気液分離器。
【請求項7】
前記衝突ユニットが、15~120mN/mの範
囲の表面エネルギを有する表面領域を有していて、前記衝突ユニット
の表面
の少なくとも80
%が、20~80mN/mの範
囲の表面エネルギを有している、請求項1から
6まで
のいずれか1項記載の気液分離器。
【請求項8】
前記分離領域に設けられた前記流入ノズルの流入面積の、前記分離領域の容積に対する比が、4:1mm2/ml~1:50mm2/mlの範
囲にある、請求項1から7まで
のいずれか1項記載の気液分離器。
【請求項9】
前記分離領域が、少なくとも2
つの側壁を含み、該側壁が、上側の閉鎖部および気体加速ユニットと一緒に、前記気体案内ユニットを形成する空間を画定し、前記側壁のうちの1つまたは前記気体加速ユニットまたは前記上側の閉鎖部が、衝突ユニットとして形成されていて、前記空間が、前記分離開口を介して前記セパレート領域に接続されていて、対峙する2つの側壁の間の間隔が、前記衝突ユニットからの前記流入ノズルの間隔の半分よりも大きい、請求項1から
8まで
のいずれか1項記載の気液分離器。
【請求項10】
前記分離開口の流出面積の、前記気液分離器の容積に対する比は、0.05mm2/ml~6mm2/mlの範
囲にある、請求項1から
9まで
のいずれか1項記載の気液分離器。
【請求項11】
前記流入ノズルは
、流入部により案内された気液流を前記衝突ユニットに向かって噴射させることができ、前記流入ノズルにより案内された気液流が前記衝突ユニットに向かって噴射可能である角度が
、50°~130°の範
囲にあるように構成されている、請求項1から
10まで
のいずれか1項記載の気液分離器。
【請求項12】
請求項1から
11まで
のいずれか1項記載の少なくとも1つの気液分離器を含むクロマトグラフィ設備。
【請求項13】
請求項1から
11まで
のいずれか1項記載の気液分離器または請求項1
2記載のクロマトグラフィ設備の使用を特徴とする、気液混合物を分離するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィ設備用の気液分離器と、気液混合物を分離するための方法とに関する。
【0002】
超臨界流体クロマトグラフィ(SFC:Supercritical Fluid Chromatography)により多くの利点を達成することができるので、種々異なる物質を特に簡単かつ信頼性よく分離し、化学的に分析し、識別し、数値化することができる。SFC用途において流体として二酸化炭素(CO2)を使用する場合に、概して31℃の臨界温度よりも高い温度、かつ74バールの臨界圧力よりも高い圧力で物質の抽出が実施される。
【0003】
CO2またはCO2混合物を流体の状態でクロマトグラフィカラム内に保持するために、クロマトグラフィシステム全体を、予め規定された圧力レベルに維持する必要がある。この目的のためには、クロマトグラフィカラムの下流側に、かつそれぞれの検出器の下流側に、一般的に背圧レギュレータが設けられていて、これによりクロマトグラフィシステム内の圧力を予め規定されたレベルに維持することができる。
【0004】
実際の使用において、SFC技術は、クロマトグラフィにより分けられる物質の移動相を開放した容器内に簡単に集めることはできないという欠点を負っている。液状のCO2と、付加的な溶媒とから成る混合物が大気圧に曝されるや否や、CO2は膨張し、付加的な溶媒と一緒にエアロゾルを形成する。溶媒を損失することなしに集めることは、エアロゾルの十分な気液分離を必要とする。気液混合物は、概してサイクロン原理で働く慣性分離を使用しながら気体状の成分および液状の成分に分離することができる。慣性分離では、エアロゾルは、接線方向で円錐形の容器内に導入される。エアロゾルは、円形軌道上で拡散するので、その液体の粒子は、容器の側壁に衝突するまで、半径方向外方に向かって偏流する。その減じられた比質量に基づいて、気体状の構成成分は比較的小さな慣性力を受け、中心の侵入管により円錐形の容器を出ることができる。
【0005】
しかし、SFCでは、エアロゾルの組成は著しく変化し得る。なぜならば、物質を分離するために溶媒グラジエント法がしばしば使用されるからである。CO2と、メタノールのような付加的な溶媒とから成る混合物は、たとえば10%~60%のメタノールフラクションで変化し得る。したがって、エアロゾルの構成と、その体積流量とは、相応して変化し、このことは、サイクロン分離機におけるエアロゾルの気体状のフラクションと液状のフラクションとの準最適の分離率をもたらす。
【0006】
別の気液分離システムは、たとえば衝突分離(Prallabscheidung)を使用する。エアロゾルの体積流量は、偏向プレートに向けられている。偏向プレートは、場合によっては試験管により提供することができる。一般的に、衝突分離器および慣性分離器は、エアロゾルが膨張することができる比較的大きな容積を必要とする。このような比較的大きな容器は、自浄作用に関して最適ではない。なぜならば、相前後してこの分離器により処理されるエアロゾルおよび物質の相互汚染が生じてしまうからである。特に、十分な分離を確保するために、物質の移動時間差は極めて大きくなければならない。基本的には、衝突分離器のサイズおよび表面は、高められた圧力レベルでの運転時に最小化することができる。
【0007】
たとえば、変向プレートとして働く試験管は、圧力下にある環境に設けられていてよい。したがって、エアロゾルは、次いで湾曲された流出部から漏れ出ることができ、試験管の側壁に予め規定された角度で衝突することができる。このような衝突分離器では、実際に、比較的少量の物質をかなり小さな手間で集めることが可能である。しかし、高められた圧力レベルで作動する衝突分離器は、大きくスケーリングされた自動化された分留を実現することを可能にしない。
【0008】
したがって、運転コストおよび設置コストは、比較的に高い。なぜならば、制限された量の試験管しか圧力領域において自動的に処理することができないからである。さらに、分離速度は、大気圧で作動する分離器のように良好ではない。
【0009】
したがって、先行技術に鑑みて、本発明の課題は、上述の問題を解決する、クロマトグラフィ設備用の気液分離器を提供することにある。ここで気液分離器はできるだけ簡単かつ廉価に製造可能であることが望ましい。さらに、気液分離器の容積は、クロマトグラフィ設備において流動する体積流量に関して、できるだけ小さいことが望ましい。
【0010】
さらに、エアロゾル組成が著しく異なり、変化する場合に、混合物からの液体の優れた分取を引き起こす気液分離器の提供が、本発明の課題であった。さらに、気液分離器は簡単に洗浄することができ、省メンテナンスで作動することが望ましい。
【0011】
さらに、本発明の課題は、特に高い分離率を有する気液分離器を提供することであった。したがって、特に気体ができるだけ完全に液体から取り除かれ得ることが望ましい。しかしさらに重要であるのは、できるだけ小さな割合の液体が、気液分離器から導出される気体流中に残り、これにより、精製された物質のできるだけ高い収量を確保することができる。この高い分離率は、できるだけ種々異なる気液混合物のために達成可能であることが望ましい。
【0012】
別の課題は、クロマトグラフィカラムにより分離されて気液分離器内に導入された物質を汚染物質により汚染しない、気液分離器を提供することにある。このためには、気液分離器は、できるだけ小さな体積のエアロゾルで洗浄され得ることが望ましい。さらに、気液分離器内で堆積物または付着物が生じないことが望ましい。これらの堆積物または付着物は、後のフラクションを汚染してしまう。特に、分離すべき物質が、できるだけ小さな移動時間差を、この小さな移動時間差によって気液分離器内における衝突が無駄にされてしまうことなしに、有し得ることが望ましい。さらに、予め規定された移動時間差で、気液分離器によりバッチのできるだけ高い分離が生じることが望ましい。
【0013】
別の課題は、公知のHPLC設備をSFC設備にできるだけ簡単に改造することを可能にする、気液分離器を提供することにある。
【0014】
これらの課題と、明示していないが、本明細書の冒頭で議論された背景に基づいて簡単に導出可能または推論可能である別の課題とは、請求項1に記載の全ての特徴を備えたクロマトグラフィ設備用の気液分離器により解決される。
【0015】
したがって、本発明の対象は、
a)流入ノズル、衝突ユニットおよび気体案内ユニットを備えた分離領域;
b)液体流出部を備えたセパレート領域および
c)気体流出部を備えた気体導出領域;
を含む、クロマトグラフィ設備用の気液分離器であって、
分離領域が、セパレート領域に分離開口を介して接続されており、衝突ユニットからの流入ノズルの間隔が、分離開口の最小の延在長さよりも大きく、流入ノズルは、該流入ノズルにより案内された気液流が衝突ユニットに向かって噴射されることができるように、構成されていることを特徴とする、クロマトグラフィ設備用の気液分離器である。
【0016】
本発明により、特に、気液分離器の分離率が改善され、特にエアロゾルからの液体の極めて高い分取が達成されるようになる。さらに、クロマトグラフィカラム内で分けられ、気液分離器内に導入される物質の汚染を信頼性良く阻止することができる。特に、別の気液分離器に比べて、予め規定された移動時間差でバッチの極めて高い分離を気液分離器により引き起こすことができるように改善される。さらに、分離すべき物質の移動時間差が比較的小さな場合、気液分離器における極めて良好な分離を引き起こすことができる。
【0017】
さらに、気液分離器は極めて廉価かつ簡単に製造することができる。さらに、気液分離器は省メンテナンスであり、簡単に洗浄することができる。
【0018】
さらに、極めて良好な気液分離を、種々異なる気液組成でも引き起こすことができる。さらに気液分離器は、エアロゾルの極めて異なる体積流でも使用することができ、この場合に、エアロゾルの分離を著しく損なうことはない。
【0019】
さらに、自動化された分留が可能であり、分留は需要に応じてスケーリングすることができ、この場合に、大きな投資が必要になることはない。
【0020】
さらに、気液分離器により、SFC分析の装置のために必要とされる技術的な装備の複雑性およびコストを減じることができる。
【0021】
本発明は、衝突分離の予期しなかった改善を分離開口の配置および構成により達成することができる、という知識に基づいている。これにより、特に、衝突分離時に提供される気体体積を減少させることができるので、気液分離器の全体容積を縮小させることができる。これにより、上述の分離率を改善することができる。
【0022】
本発明に係る気液分離器は、流入ノズル、衝突ユニットおよび気体案内ユニットを備えた分離領域を含んでいる。
【0023】
好適には、分離領域は、衝突分離が引き起こされるように構成されている。衝突分離とは、エアロゾル内にある液滴が、衝突ユニットに向かって案内され、これにより液滴が液膜を形成することができるということを意味している。この場合、エアロゾルを、流入ノズルからの直接的な噴射において意図的に衝突ユニットに向かって案内することができる。さらに、2つ以上の衝突ユニットが分離領域内に設けられていてよく、これらの衝突ユニットを介して、エアロゾルの気液分離を少なくとも部分的に行うことができる。さらに、エアロゾルは、2つ以上の流入ノズルを介して分離領域内に導入することができる。この場合、それぞれのエアロゾル流の変向を引き起こすことができる。
【0024】
衝突ユニットとして、ここではあらゆる物体が利用でき、この物体に向かってエアロゾル流が案内される。たとえば、エアロゾル流を、分離領域の上側の領域に向かって案内することができ、たとえば分離領域の上側の閉鎖部に向かって案内することができる。この場合、突出部、たとえば心棒等が設けられていてよく、この突出部に向かってエアロゾル流が噴射されるので、衝突ユニットに向けて案内される液滴が逆流させられる、または衝突ユニットにより跳ね返されるのではなく、膜を形成する。分離領域内への1つまたは複数のエアロゾル流の上述の導入の種類に応じて、衝突ユニットは、分離領域内において多かれ少なかれ大きな面積を占めることができる。分離領域内への2つ以上のエアロゾル流の導入による著しく強い変向時に、分離領域の上側の領域における分離領域の内側表面全体を衝突ユニットと見なすことができる。
【0025】
この気液分離器は、運転中に重力を利用する。重力は気体と液体との分離を引き起こす。したがって、「上方」という表現は、気液分離器の運転中の配向に関連するので、気体は上方に向かって流出することができる一方で、「下方」は反対方向であり、この反対方向で液体が気液分離器を出る。
【0026】
好適な構成では、衝突ユニットはほぼ平坦であり、衝突プレートと見なすことができることが規定されていてよい。この衝突プレートは、好適には分離領域の1つの壁を形成し、気体案内ユニットの1つの側壁を成す。「ほぼ平坦」という表現は、衝突ユニットもしくは衝突プレートが湾曲させられておらず、しかし表面構造を有していてよいことを意味している。特別な構成では、衝突プレートは好適には表面構造なしに構成されているので、この表面は平滑である。
【0027】
好適な実施例では、衝突ユニットは好適には表面構造を含んでいる。この実施形態は、平滑な表面を備えた実施形態に対して優れている。表面構造は、好適には隆起部および凹設部を有している。隆起部は、凹設部に対して好適には0.2mm~10mmの範囲、特に好適には0.8mm~8mmの範囲、極めて好適には1.5mm~5mmの範囲の高さを示す。
【0028】
さらに、(凹設部に対する)隆起部の高さの、気液分離器の容積に対する比は、好適には0.01~10mm/mlの範囲、特に好適には0.03~5mm/mlの範囲にあることが規定されていてよい。
【0029】
別の構成では、衝突ユニットの表面構造は、溝を有している。溝の隆起部および凹設部は好適には、流入ノズルおよび分離開口により形成される方向に向けられているか、またはこの方向に対して平行に延びている。
【0030】
衝突ユニットの、好適には溝構造として形成されている構造化された表面により、気液分離器の容積を特に小さく維持することができ、これにより分離率を改善することができる。この場合、分離すべき物質は、比較的小さな移動時間差を有していてよく、この場合に、これにより気液分離器内での分離が無駄にされることはない。さらに、エアロゾルからの液体の分離度を、気液分離器の容積との関連において改善することができる。
【0031】
さらに好適な構成では、衝突ユニットが湾曲部または屈曲部を有していることが規定されていてよい。曲率半径は好適には小さい。衝突ユニットは、好適には、後に詳しく説明するように、上側の閉鎖部の部分として、または気体加速ユニットの部分として形成されている。
【0032】
本発明の別の改良形では、衝突ユニットは好適には、少なくとも10mN/m、特に好適には少なくとも15mN/m、極めて好適には少なくとも20mN/mの表面エネルギ(若しくは表面自由エネルギであり、表面張力と同じ値)を備えた表面領域を有している。好適には、衝突ユニットは、好適には15~120mN/mの範囲、特に好適には20~80mN/mの範囲、極めて好適には22~60mN/mの範囲の表面エネルギを備えた表面領域を有していることが規定されていてよい。衝突ユニットの表面の好適には少なくとも80%、特に好適には少なくとも90%が、20~80mN/mの範囲、特に好適には22~60mN/mの範囲の表面エネルギを有している。この表面エネルギは、衝突ユニットが製造される材料の、対応する材料選択により達成することができる。
【0033】
さらに、衝突ユニットは、コーティングを備えた表面領域を有している。これにより、上述の表面エネルギを調節することができる。衝突ユニットの表面の好適には少なくとも80%、特に好適には少なくとも90%がコーティングを有している。
【0034】
表面エネルギは、Owens-Wendt-Rabel-Kaelble(OWRK)法に基づいて求められる。このためには、一連の測定は、Busscherによる標準シリーズにより実施される。この標準シリーズでは、試験液として、水[SFT 72.1mN/m]、ホルムアミド[SFT 56.9mN/m]、ジヨードメタン[SFT 50.0mN/m]およびα-ブロモナフタレン[SFT 44.4mN/m]が使用される。測定は20℃で実施される。表面エネルギは、在ハンブルグのKruess社の接触角測定システム(Kontaktwinkelmesssystem)G40により測定することができる。1993年の接触角測定システムG40のユーザマニュアルにおいて実施が記載されている。計算方法に関しては、A.W.Neumann,Ueber die Messmethodik zur Bestimmung grenzflaechenenergetischer Groessen,Teil I,Zeitschrift fuer Phys. Chem.,Bd.41,S.339-352(1964)およびA.W.Neumann,Ueber die Messmethodik zur Bestimmung grenzflaechenenergetischer Groessen,Teil II,Zeitschrift fuer Phys. Chem.,Bd.43,S.71-83(1964)が参照される。
【0035】
好適な実施形態では、気体流が、衝突ユニットへの衝突後に第2の衝突ユニットへと案内されることが規定されていてよい。この構成により、意想外にも分離率、特にエアロゾルからの液体の分取を改善することができる。好適には、エアロゾルは、まず第1の衝突ユニットへと案内される。この第1の衝突ユニットは、たとえば分離領域の壁により形成される。次いで気体流は第2の衝突ユニットへと案内される。この第2の衝突ユニットは、好適には分離領域の上側領域において、特に好適には分離領域の上側の閉鎖部に設けられている。
【0036】
さらに、分離領域内に2つの衝突ユニットが設けられていることが規定されていてよい。第1の衝突ユニットは、第2の衝突ユニットの下側に配置されている。この場合、エアロゾル流は、まず、第2の衝突ユニットの下側に配置されている第1の衝突ユニットへと案内され、次いで第2の衝突ユニットへと案内される。
【0037】
衝突ユニットの他に、本発明の気液分離器の分離領域内には、流入ノズルが設けられている。流入ノズルによりエアロゾルが気液分離器内に、特に気液分離器の分離領域内に案内される。
【0038】
流入ノズルは、上記ですでに衝突ユニットに関して説明されたように、流入ノズルにより案内された気液流を衝突ユニットに向かって噴射させることができるように構成されている。
【0039】
流入ノズルの形状および種類は重要ではないので、流入ノズルは、能力の範囲内で当業者により選択することができる。したがって、流入ノズルは、たとえば、エアロゾルが極めて狭い放射の形で衝突ユニットへと案内されるように、構成されていてよい。さらに、流入ノズルは、円錐形の噴霧が衝突ユニットへと案内されるように構成されていてもよい。
【0040】
ノズルは、分離領域の壁で終端しているか、または突出部を介して分離領域内に突入することができる。突出部を備えた実施形態は、衝突ユニットが分離領域の上側の閉鎖部に設けられている場合に、有利である。
【0041】
特に好適には、流入ノズルが、簡単な孔の形または単純な開口の形で構成されている。改良形では、分離領域内に設けられた流入ノズルがほぼ円形である流入口を有していることが規定されていてよい。
【0042】
さらに、分離領域内に設けられた流入ノズルは、0.05mm2~20mm2の範囲、好適には0.5mm2~15mm2の範囲、特に好適には0.5mm2~10mm2の範囲、極めて好適には0.8mm2~5mm2の範囲の流入面積を有していることが規定されていてよい。別の実施形態では、分離領域内に設けられた流入ノズルが、2mm2~40mm2の範囲、好適には4mm2~20mm2の範囲、極めて好適には5mm2~15mm2の範囲の流入面積を有していることが規定されていてよい。この値は、複数の流入ノズルが使用される場合、個別の流入ノズルのサイズに関する。
【0043】
流入ノズルが、孔の形で形成されている場合、この孔は好適には、0.3mm~5mm、好適には0.5mm~4mm、特に好適には0.8mm~3mm、特に好適には1mm~2mmかつ/または極めて好適には2~3mmの範囲の直径を有している。この値は、複数の流入ノズルが使用される場合、個別の流入ノズルのサイズに関する。
【0044】
さらに、分離領域内に設けられた流入ノズルの流入面積の、気液分離器の容積に対する比は、0.01mm2/ml~1mm2/mlの範囲、好適には0.04mm2/ml~0.4mm2/mlの範囲、特に好適には0.08mm2/ml~0.25mm2/mlの範囲、極めて好適には0.08mm2/ml~0.17mm2/mlの範囲にあることが規定されていてよい。この値は、複数の流入ノズルが使用される場合、使用される全ての流入ノズルの面積の合計に関する。
【0045】
さらに、分離領域内に設けられた流入ノズルの流入面積の、分離領域の容積に対する比は、1:3mm2/ml~1:50mm2/mlの範囲、好適には1:5mm2/ml~1:20mm2/mlの範囲、極めて好適には1:7mm2/ml~1:15mm2/mlの範囲にあることが規定されていてよい。別の実施形態では、分離領域内に設けられた流入ノズルの流入面積の、分離領域の容積に対する比は、4:1mm2/ml~1:50mm2/mの範囲、好適には1:1mm2/ml~1:20mm2/mlの範囲、極めて好適には2:3mm2/ml~1:5mm2/mlの範囲にあることが規定されていてよい。この値は、複数の流入ノズルが使用される場合、使用される全ての流入ノズルの面積の合計に関する。
【0046】
分離領域内には、1つ以上の流入ノズルが設けられていてよい。複数の流入ノズルが設けられている場合のために、これらの流入ノズルは好適には互いに平行に配向されている。好適には、気体-エアロゾル混合物は、まさに1つの流入ノズルを介して、分離領域内に案内され、好適には分離領域内に位置する衝突ユニットへと案内される。
【0047】
別の好適な実施形態では、分離領域が、2つ以上の流入ノズルを含んでいる。これらの流入ノズルは好適には、気体-エアロゾル混合物の流れが衝突ユニットの種々異なる部分に対して、または種々異なる衝突ユニットに対して案内されるように、配置されている。好適には、2つ以上の流入ノズルは、これらの2つ以上の流入ノズルにより案内された気体-液体流が互いに対して向けられていて、これにより気体-液体流が、衝突ユニットなしに少なくとも部分的に衝突させられるように、構成されている。したがって、1つの衝突ユニットもしくは複数の衝突ユニットが、2つ以上の流入ノズルを備えたこの好適な実施形態では、好適には2つ以上の流入ノズルの間に配置されている。
【0048】
別の好適な実施形態では、分離領域が、2つ以上の流入ノズルを含んでいる。これらの流入ノズルは好適には、気体-エアロゾル混合物の流速が分離領域の上側の領域において減じられるように、配置されている。したがって好適には、2つ以上の流入ノズルにより案内された気体-液体流が互いに対して向けられていることが、規定されていてよい。この好適な実施形態では、好適にはたとえば、分離領域の側壁の部分がそれぞれの衝突ユニットを形成する。この構成により、意想外にも、分離率、特にエアロゾルからの液体の分取を改善することができる。この場合、2つ以上の流入ノズルが、それぞれの気体流の最大の減衰が達成されるように、配置されていてよい。さらに、2つ以上の流入ノズルが互いに対して向けられているが、それぞれの気体-液体流が互いに対して僅かにずらされていて、これによりそれぞれの気体流が確かに減衰されるが、それぞれの気体流のこの減衰が最大ではないことが規定されていてよい。それぞれの気体流の減衰は、気体流の当初の方向を含む、それぞれの気体流の当初の速度ベクトルに基づいて測定される。
【0049】
さらに、流入ノズルは、流入部により案内された気体-液体流が衝突ユニットに対して噴射されるようになっていて、流入ノズルにより案内された気体-液体流が衝突ユニットに向かって噴射可能である角度が、衝突ユニットの表面に対して好適には50°~130°の範囲、特に好適には70°~110°の範囲にあるように構成されていることが規定されていてよい。この角度は、特に流入ノズルの方向により規定することができる。この角度で流入ノズルが衝突ユニットに向けられている。この記載は、エアロゾルのメイン噴射が衝突ユニットに向けられた時の角度に関する。エアロゾル放射の形状自体は、衝突分離が引き起こされ得る限り、重要ではない。エアロゾルの液滴は、衝突ユニットへの衝突により合流し、好適には膜を形成することが望ましい。したがって、流入ノズルは、エアロゾルの液滴が過度に小さくされないように、選択されていることが望ましい。
【0050】
好適な実施形態では、分離領域内に、2つの衝突ユニットが設けられている。流入ノズルは気体流を、すでに上述したように、まず第1の衝突ユニットへと案内する。第2の衝突ユニットへの気体流の移送のために、あらゆる公知の装置を使用することができる。たとえば、第1の衝突ユニットにおける変向を、第1の衝突ユニットの対応する角度および/または対応する形状により達成することができる。好適な構成では、エアロゾル流を第2の衝突ユニットへと変向する変向ユニットが設けられていることが規定されていてよい。変向ユニットは、好適には少なくとも3つの画定面を有しているので、気体流は、流入ノズルの流入部から導出開口を介して第2の衝突ユニットへと案内される。したがって、変向ユニットは好適には切欠きを成し、切欠きの底部はU字形またはV字形であってよく、対峙する2つの側面と、好適には第1の衝突ユニットとして働く1つの端面とを有しているので、流入ノズルの流入部と、第1の衝突ユニットとの間で空間が画定されている。好適には、流入ノズルは、エアロゾルもしくは気体流を、切欠きの底部に対して平行に案内するので、この気体流は、第1の衝突ユニットとして形成された端面に衝突する。切欠きもしくは変向ユニットの導出開口を通って、エアロゾル流は引き続き第2の衝突ユニットへと案内される。好適な構成では、気体流は、変向時に、上方に向かって、好適には流入ノズルから第1の衝突ユニットへと案内されるエアロゾル流の方向に対して、好適には50~130°の範囲、特に好適には70~110°の範囲にある角度で変向される。この実施形態により、エアロゾル流の流速は好適には制動され、第1の衝突ユニット、好適には変向ユニット、好適には切欠きの端面により戻された気体流は、まずは、流入ノズルから変向ユニット、好適には切欠き内に案内されるエアロゾル流とは反対に変向されている。
【0051】
さらに、変向ユニットもしくは切欠きの、分離領域内に好適には設けられている導出開口は、0.1mm2~60mm2の範囲、好適には1.5mm2~40mm2の範囲、極めて好適には3mm2~20mm2の範囲にある導出面積を有している。
【0052】
好適には、変向ユニットもしくは切欠きの導出開口の流出面積は、少なくとも流入ノズルの流入面積と同一の大きさであることが規定されていてよい。好適には、変向ユニットもしくは切欠きの、分離領域内に好適には設けられている導出開口の、分離領域に設けられた流入ノズルの流入面積に対する面積比は、20:1~1:1の範囲、好適には15:1~3:2の範囲、極めて好適には5:1~2:1の範囲にある。
【0053】
さらに、分離領域内に好適には設けられている変向ユニットもしくは切欠きは、0.3mm~8mm、好適には0.8mm~5mm、特に好適には1.5mm~4mmの範囲の幅を有していることが規定されていてよい。変向ユニットもしくは切欠きの幅は、対峙する少なくとも2つの側面の最大の間隔に関する。
【0054】
さらに、分離領域内に好適には設けられている変向ユニットもしくは切欠きは、1mm~60mm、好適には5mm~40mm、特に好適には10mm~30mmの範囲の長さを有していることが規定されていてよい。変向ユニットもしくは切欠きの長さは、衝突ユニットとして形成された面と、流入ノズルとの間の間隔を意味する。
【0055】
さらに、分離領域内に好適には設けられている変向ユニットもしくは切欠きが、0.5mm~40mm、好適には1.5mm~30mm、特に好適には5mm~20mmの範囲の高さを有していることが規定されていてよい。変向ユニットもしくは切欠きの高さは、変向ユニットもしくは切欠きの底部と導出開口との間の間隔を意味する。
【0056】
気液分離器は、分離開口を有している。分離開口は、分離領域とセパレート領域との間に配置されているので、気体-液体に対して開放している接続部がこれらの領域の間に生じる。分離開口により、好適には、慣性分離が引き起こされる。このことは、衝突ユニットおよび/または気体案内ユニットにおいて液膜の形で下方に向かって流れる液体が気体から慣性により分離されることを意味している。気体は好適には液体を加速するので、液体は、この気体加速がない場合よりも高い速度でセパレート領域内に移送される。この場合、液膜は、好適には分離領域の、好適には衝突ユニットおよび/または気体案内ユニットの部分として構成されている壁に、膜の形で残留し、直接にセパレート領域に移動する。この場合に、液膜が、セパレート領域に移行しているこの壁から離れることはない。気相は、液相とは異なり、壁に付着するのではなく、上方に向かって流出し、気体導出領域内に移動することができる。これとは異なり、液体はセパレート領域内に排出され、セパレート領域内に設けられている液体流出部を介して気液分離器から取り出される。
【0057】
分離開口の形は、分離開口の上述の機能が満たされ得る限り、重要ではない。しかし好適には、分離開口が、ギャップ状である流出面を有しているか、またはたとえばU字形またはV字形または円形であってよい、平行に配置された複数の開口を有していることが規定されていてよい。
【0058】
本発明によれば、衝突ユニットからの流入ノズルの間隔が、分離開口の最小の延在長さよりも大きい。衝突ユニットからの流入ノズルの間隔は、流入ノズルを出てから衝突ユニットに衝突するまでのエアロゾルの経路に基づいて生じる。分離開口の最小の延在長さは、分離開口の幅または長さに関係している。この場合、分離開口の縁部に至るまでの平面の延在長さは、分離領域とセパレート領域との間の、分離開口の最小面積をもたらす平面に関係している。分離開口が位置するこの平面において、分離開口の最長の延在長さが特定されるので、次いで、分離開口の最長の延在長さに対して垂直に位置する、分離開口の最短の延在長さを測定することができる。この最短の延在長さを、ここでは分離開口の幅と見なすことができる。
【0059】
分離開口がギャップ形状である場合、分離開口は、好適には0.1mm~1.5mm、特に好適には0.3mm~1.0mm、極めて好適には0.4mm~0.7mmの範囲のギャップ幅を有している(最小の延在長さ)。円形または楕円形の分離開口の場合、ギャップの長さはこの円周により設定されている。この値は、好適には5mm~120mmの範囲、特に好適には10mm~60mmの範囲にあってよい。
【0060】
分離開口がギャップ形状である場合、分離開口は、別の実施形態では好適には0.1mm~3.0mm、特に好適には0.3mm~2.0mm、極めて好適には0.4mm~1.5mmの範囲のギャップ幅を有している(最小の延在長さ)。ギャップの長さは、円形または楕円形の分離開口の場合、円周により設定されている。この値は、別の実施形態では、好適には5mm~150mmの範囲、特に好適には10mm~80mmの範囲にあってよい。
【0061】
好適には2つの端部により特徴付けられている、ギャップ形状を備えた非円形または非楕円形の分離開口では、ギャップ形状の分離開口の長さが、好適には3mm~80mmの範囲、好適には5mm~50mmの範囲、特に好適には15mm~30mmの範囲にある。
【0062】
分離開口が、たとえばU字形、V字形または円形であってよい、平行に配置された複数の開口により実現されている場合、上述のサイズが相応して通用する。開口は好適には、0.1mm~1.5mm、好適には0.3mm~1.0mm、極めて好適には0.4mm~0.7mmの範囲の幅を有している(最小の延在長さ)。別の実施形態では、開口が好適には、0.1mm~3.0mm、特に好適には0.3mm~2.0mm、極めて好適には0.4mm~1.5mmの範囲の幅を有していてよい(最小の延在長さ)。
【0063】
ギャップ幅は、ギャップの長さまたは円周に対して垂直方向に測定されたものであって、分離領域からセパレート領域への移行平面と見なすことができるギャップ開口の比較的小さい延在長さである。この移行平面は、分離領域からセパレート領域への移行の領域において二次元的な最小の延在長さを有している。
【0064】
好適には、分離開口が、10~120mm2の範囲、特に好適には15~60mm2の範囲、極めて好適には15~40mm2の範囲の流出面積を有している。別の実施形態では、分離開口は、10~180mm2の範囲、特に好適には15~120mm2の範囲、極めて好適には30~100mm2の範囲の流出面積を有していてよい。さらに、分離開口の流出面積の、気液分離器の容積に対する比は、0.05mm2/ml~2mm2/mlの範囲、特に好適には0.1mm2/ml~1mm2/mlの範囲、極めて好適には0.3mm2/ml~0.8mm2/mlの範囲にあることが規定されていてよい。別の実施形態では、分離開口の流出面積の、気液分離器の容積に対する比は、0.05mm2/ml~6mm2/mlの範囲、特に好適には0.3mm2/ml~3mm2/mlの範囲、極めて好適には0.5mm2/ml~2.0mm2/mlの範囲にあることが規定されていてよい。
【0065】
分離領域の三次元の形状は重要ではなく、需要に適合されていてよい。ここでは、分離領域に気体案内ユニットが形成されることが重要である。気体案内ユニットは、気体の流速の変化を引き起こすので、流入ノズルの領域において、分離開口の領域よりも小さな気体速度が存在する。体積流量は同一のエアロゾル組成では一定であると見なされ得るので、このことは、エアロゾルはまず比較的大きな空間に導入され、この空間は次いで狭められるので、流速が増大することを意味している。
【0066】
したがって、分離領域の横断面は、たとえば円形であってよく、横断面は、たとえば流入ノズルから分離開口の方向で好適には楔形に狭められる。
【0067】
好適な実施形態では、分離領域が、流入ノズルの領域において円形の横断面を有していない。分離領域は、好適には少なくとも3つの側壁を含み、これらの側壁は、上側の閉鎖部と一緒に空間を規定する。この空間は、分離開口を介してセパレート領域に接続されている。分離領域が円形の横断面を含んでいるのではなく、横断面が角部を備え、特に三角形、四角形、五角形、または六角形の横断面、特に好適には方形の横断面を備えたこの実施形態は、要求された精度で容易に製造される。気液分離器の容積は、要求により改善されて適合され得る。特に、特に小さな体積流量のために適している気液分離器も提供することができる。円形の横断面を備えた気液分離器とは異なり、非円形の、好適には角部を備えた横断面を備えた気液分離器は、まさに1つの流入ノズルを有していてよく、この場合、気液混合物による不十分な濡れの領域が生じることはない。
【0068】
好適には、気体案内ユニットは、ほぼ平坦な少なくとも2つの側壁を有していることが規定されていてよい。これらの側壁は、気体案内プレートと見なすことができる。この気体案内プレートは、好適には分離領域の壁を形成する。ほぼ平坦なこれら2つの側壁は、互いに向かって延びているので、楔形が形成される。
【0069】
さらに、気体案内ユニットは、少なくとも2つの側壁を有していることが規定されていてよい。これらの側壁のうちの少なくとも1つが湾曲させられていて、両側壁が互いに向かって近づくような凹形状を成している。流入ノズルに接近している分離領域の上側の領域では、分離開口に接近している分離領域の下側の領域におけるより側壁の間の間隔が大きくなっており、その間隔は、上側の領域から下側の領域への方向において減少する。
【0070】
好適には、気体案内ユニットが、気体加速ユニットを有していることが規定されていてよい。この気体加速ユニットは、少なくとも1つの側壁と一緒に、好適には少なくとも2つの側壁と一緒に、気体の流速の変化を引き起こす。
【0071】
別の構成では、気体案内ユニットの横断面積が、流入ノズルから分離開口の方向で少なくとも部分的に、好適には分離開口に対して向かう領域内において減少するので、気液混合物の流れ方向に対して垂直な平面は小さくなることが規定されていてよい。この減少は、好適には連続的であるので、好適には気体案内ユニットの側壁のうちの少なくとも2つの側壁は縦断面で楔形を形成する。
【0072】
別の構成では、分離領域が上側の閉鎖部を含んでいることが規定されていてよい。この上側の閉鎖部は、湾曲部またはアングル部を含んでいる。湾曲部またはアングル部の最高点は、好適には中心に配置されていて、これにより流入ノズルと同一直線上に位置している。この直線は、気体流れ方向もしくは液体の流れ方向に対して平行に、つまり気体流入部-液体流出部-開口の方向に対して平行であると考えられる。上側の閉鎖部は、好適には2つの側壁に移行するので、側壁と上側の閉鎖部との間の移行部は湾曲させられている。
【0073】
好適な実施形態では、分離領域内に2つの衝突ユニットが設けられていて、すでに上記で説明したように、流入ノズルが気体流をまず第1の衝突ユニットへと案内する。好適な実施形態では、第2の衝突ユニットが上側の閉鎖部の領域内に設けられていることが規定されていてよい。したがって、好適には、エアロゾルが変向ユニットにより第1の衝突ユニットから、上側の閉鎖部に配置された第2の衝突ユニットへと案内される。
【0074】
本発明の別の改良形では、分離領域が少なくとも4つの側壁を含んでいることが規定されていてよい。4つの側壁は上側の閉鎖部と一緒に1つの空間を画定し、この空間は、気体案内ユニットを形成する。側壁のうちの1つが衝突ユニットとして形成されている。この空間は、分離開口を介してセパレート領域に接続されている。分離領域内に、上側の閉鎖部と一緒に空間を画定する少なくとも4つの側壁を含むこの実施形態では、好適には、対峙する2つの側壁の間の間隔が、衝突ユニットから流入ノズルまでの間隔の半分よりも大きいことが規定されていてよい。好適には、分離領域内に、上側の閉鎖部と一緒に空間を画定する少なくとも4つの側壁を含むこの実施形態では、対峙する2つの側壁の間の間隔の、衝突ユニットからの流入ノズルの間隔に対する比が、0.8~8の範囲、特に好適には0.9~6の範囲、極めて好適には1.0~4の範囲、特に好適には1.2~2の範囲にあることが規定されていてよい。この値は特に、最大の間隔を有している、対峙する2つの側壁に関する。
【0075】
本発明の別の改良形では、分離領域が少なくとも2つ、好適には少なくとも3つの側壁を含んでいることが規定されていてよい。これらの側壁が上側の閉鎖部および気体加速ユニットと一緒に、気体案内ユニットを形成する空間を画定し、側壁のうちの1つまたは気体加速ユニットまたは上側の閉鎖部が、衝突ユニットとして形成されている。この空間は、分離開口を介してセパレート領域に接続されている。上側の閉鎖部と一緒に空間を画定する、少なくとも2つの側壁および気体加速ユニットを分離領域内に含むこの実施形態では、好適には、対峙する2つの側壁の間の間隔が、衝突ユニットからの流入ノズルの間隔の半分よりも大きいことが規定されていてよい。好適には、上側の閉鎖部と一緒に空間を定義する、少なくとも2つの側壁および気体加速ユニットを分離領域内に含むこの実施形態では、対峙する2つの側壁の間の間隔の、衝突ユニットからの流入ノズルの間隔に対する比が、0.8~8の範囲、特に好適には0.9~6の範囲、極めて好適には1.0~4の範囲、特に好適には1.2~2の範囲にあることが規定されていてよい。この値は特に、最大の間隔を有する、対峙する2つの側壁に関係している。
【0076】
さらに、流入ノズルは、分離領域の上側の領域に設けられていて、特に分離領域の上側3分の1の範囲に設けられていることが規定されていてよく、この上下方向は、流入部および液体流出部の配置に基づいて生じるので、流入ノズルは、液体流出部の上方に配置されている。
【0077】
上述の分離領域の他に、本発明に係る気液分離器は、セパレート領域を有している。セパレート領域内では、すでに示唆したように、相が分離される。セパレート領域は、液体流出部を有している。この液体流出部を介して、液相が気液分離器から取出し可能である。気相は、気体導出領域内へと導かれる。したがって、セパレート領域は、開口を介して、気体導出領域に接続され、この気体導出領域に連通している。
【0078】
好適には、液体流出部を備えたセパレート領域が底部を含んでいて、底部が好適には、湾曲部、アーチ部、アングル部または、先細り部につながる別の形状を含んでいて、液体流出部が、底部の最も深い位置の領域内に設けられていることが規定されていてよい。
【0079】
さらに、液体流出部が、セパレート領域の下側領域内に設けられていて、特に好適にはセパレート領域の下側3分の1の範囲に設けられていることが規定されていてよい。この上下方向は、流入ノズルおよび液体流出部の配置に基づいて生じるので、流入ノズルは液体流出部の上方に配置されている。
【0080】
別の実施形態では、セパレート領域の内側表面が、15~120mN/mの範囲、特に好適には20~80mN/mの範囲、極めて好適には22~60mN/mの範囲の表面エネルギを持つ表面領域を有していることが規定されていてよい。セパレート領域の表面の好適には少なくとも80%、特に好適には少なくとも90%が、20~80mN/mの範囲、極めて好適には22~60mN/mの範囲の表面エネルギを有している。好適には、セパレート領域の内側表面の表面エネルギの、分離領域の内側表面の表面エネルギに対する差が、少なくとも10mN/m、好適には30mN/mであってよく、この値は、差異が最大となる、それぞれの最大値または最小値に関係している。
【0081】
さらに、分離領域が、流入ノズルの領域内で、セパレート領域の最大の横断面積の少なくとも80%、好適には少なくとも90%となる横断面積を有していることが規定されていてよい。横断面積は、衝突ユニットに対して垂直方向かつ気液混合物-開口のメイン衝突点の方向に対して垂直な平面に関する。
【0082】
気体導出領域は、気液分離器からの気相の排出のために働くので、この気液分離器は気体流出部を含んでいる。
【0083】
好適には、気体導出領域は、気体速度が気体流出部において最大であるように、好適には気体速度がセパレート領域から気体流出部の方向での気体流れ方向で見て増大するように、構成されている。これにより、気液分離器の確実かつ省メンテナンスな運転をもたらす吸引効果を発生させることができる。さらに、これにより、気液分離器の容積を減じることができ、この場合に、別の特性における気液分離器の性能、たとえば分離特性は減じられない。
【0084】
したがって、分離領域とは反対に、空間はセパレート領域から気体流出部に向かう方向で減少する。したがって好適には、横断面はセパレート領域から気体流出部に向かう方向で減少する。
【0085】
気液分離器の改良形では、気体導出領域が、セパレート領域から気体流出部の方向に対して垂直である仮想平面の面積が、セパレート領域を起点として気体流出部の方向で減少するように、構成されている。この減少は、好適には連続的であり、好適には、気体案内ユニットが、気体導出領域の側壁を形成し、縦断面では気体導出ユニットのこの面が、気体導出域の別の側壁と一緒に楔形を形成する。
【0086】
さらに、気体流出部が、気体導出領域の上側の領域に設けられていて、特に好適には気体導出領域の上側3分の1の範囲に設けられていることが規定されていてよい。この方向は、流入ノズルと、液体流出部との配置に基づいて生じるので、流入ノズルは液体流出部の上側に配置されている。
【0087】
さらに、気体導出領域の内側表面が、10~40mN/mの範囲の表面エネルギを持つ表面領域を有していて、気体導出領域の表面の好適には少なくとも80%、特に好適には少なくとも90%が、10~30mN/mの範囲の表面エネルギを有している。
【0088】
さらに、分離領域が、セパレート領域の上側に配置されていて、気体導出領域がセパレート領域の上側に配置されていることが規定されていてよく、この方向が流入ノズルおよび液体流出部の配置に基づいて生じるので、流入ノズルは液体流出部の上側に配置されている。
【0089】
さらに、分離領域が、セパレート領域の上側に配置されていて、気体導出領域がセパレート領域の上側に配置されていることが規定されていてよく、この方向が、流入ノズルおよび液体流出部の配置に基づいて生じるので、流入ノズルが液体流出部の上側に配置されている。
【0090】
さらに、セパレート領域に対する分離領域の容積比が好適には、4:1~1:10の範囲、好適には2:1~1:6の範囲、極めて好適には1:1~1:3の範囲にあることが規定されていてよい。
【0091】
さらに、セパレート領域に対する分離領域の容積比が好適には、6:1~1:6の範囲、好適には4:1~1:4の範囲、極めて好適には2:1~1:2の範囲にあることが規定されていてよい。
【0092】
別の実施形態では、気体導出領域に対する分離領域の容積比が好適には、10:1~1:10の範囲、好適には5:1~1:5の範囲、極めて好適には2:1~1:2の範囲にあることが規定されていてよい。
【0093】
さらに、気体導出領域に対するセパレート領域の容積比が好適には、10:1~1:4の範囲、好適には6:1~1:2の範囲、極めて好適には3:1~1:3の範囲にあることが規定されていてよい。
【0094】
さらに、分離領域の高さが、好適には1cm~100cmの範囲、特に好適には5cm~20cmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0095】
さらに、分離領域の幅が、好適には0.5cm~20cmの範囲、特に好適には1.5cm~10cmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0096】
さらに、分離領域の深さが、好適には0.5cm~20cmの範囲、特に好適には1.5cm~10cmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0097】
さらに、衝突ユニットからの流入ノズルの間隔は、3mm~60mmの範囲、特に好適には6mm~40mmの範囲、極めて好適には10mm~25mmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0098】
さらに、セパレート領域の高さが、好適には0.5cm~20cmの範囲、特に好適には2cm~5cmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0099】
さらに、セパレート領域の幅は、好適には0.5cm~20cmの範囲、特に好適には1.5cm~10cmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0100】
さらに、セパレート領域の深さが、好適には0.5cm~20cmの範囲、特に好適には1.5cm~10cmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0101】
さらに、気体導出領域の高さが、好適には0.5cm~20cmの範囲、特に好適には2cm~5cmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0102】
さらに、気体導出領域の幅が、好適には0.5cm~20cmの範囲、特に好適には1.5cm~10cmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0103】
さらに、気体導出領域の深さが、好適には0.5cm~20cmの範囲、特に好適には1.5cm~10cmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0104】
さらに、セパレート領域の高さに対する分離領域の高さの比が、好適には1:2~10:1の範囲、特に好適には1:1~7:1の範囲、極めて好適には3:1~6:1の範囲にあることが規定されていてよい。
【0105】
さらに、気体導出領域の高さに対するセパレート領域の高さの比が、2:1~1:10の範囲、特に好適には1:1~1:7の範囲、極めて好適には1:3~1:6の範囲にあることが規定されていてよい。
【0106】
好適には、気液分離器が、分離領域において、液体の流れ方向に対してほぼ平行である、気体の流れ方向を有している。この領域では、気液混合物が気体圧力により下方に向かって案内される。セパレート領域内において、気体の流れ方向が変向されるので、気体の流れ方向は、液体の流れ方向から逸脱する。実質的に、液体は下方に向かって流れる一方で、気体はセパレート領域および気体導出領域において上方に向かって流れる。
【0107】
上述かつ後述の構成によれば、気体および液体の流れ方向は、分離領域全体において平行であるのではなく、特に分離領域の下側領域において、好適には分離領域の下側3分の1の範囲において平行である。この方向は、流入部および液体流出部の配置に基づいて生じるので、流入ノズルは、液体流出部の上側に配置されている。
【0108】
さらに好適な実施形態では、気液分離器は、気体の流速が分離開口の下流側、特にセパレート領域において、特別な手段により減じられるように、構成されていることが規定されていてよい。このためには、たとえば、セパレート領域に存在する液体に強い気体流が作用することを阻止する変向金属薄板または変向格子のような組み込み部材がセパレート領域内に設けられていてよい。
【0109】
好適には、分離開口は、気体の流速が減じられるように構成されていてよい。さらに、分離開口が2つ、3つ、4つ以上の部分分離開口を有していることが規定されていてよく、これらの部分分離開口の配置により、気体の流速の低下を引き起こすことができる。特に、気体の流速を低下させるように配置されている、2つ、3つ、4つ以上の部分分離開口が設けられていてよい。好適には、気体の流速が、水平方向で少なくとも5%、特に好適には少なくとも15%、極めて好適には少なくとも30%減じられ、この場合、数字は、流速の初期値に関連している。流速の減少の値は、たとえば対応する流れ試験により特定することができる。この値は、シミュレーション計算によっても求めることができる。好適には、この数値は、気体により連行される液体量の減少を計測することにより求められる。
【0110】
好適には、部分分離開口はほぼ対称的に配置されているので、気体流は、水平方向で減衰される。2,4,6以上の部分開口では、これらの部分開口は対応して対峙していて、3,5個の部分開口は、三角形または五角形の形で配置されているので、分離開口を通って流れる気体は水平方向で対向して延びていて、これにより気体の流速の低下が生じる。
【0111】
この場合、部分分離開口は好適には対称的に配置されている。対称軸線または対称平面は、分離領域内において気体もしくは流体の流れ方向に対して平行に延びている。部分分離開口の個数に応じて、点または鏡像対称性が存在する。「ほぼ対称的」という概念は、セパレート領域内における気体の流速の有効な減衰が達成されるような配置を意味する。好適には、この対称性は、部分分離開口の幾何学形状および/または気体案内ユニットの幾何学形状により定義されている。好適には、2つの部分分離開口の場合、部分分離開口の面積の比は、2:1~1:2、特に好適には1.5:1~1:1.5、極めて好適には1.2:1~1:1.2の範囲にある。3つ以上の部分分離開口では、この値は相応して部分分離開口の異なる対のために有効であるので、最小の部分分離開口の面積に対する最大の部分分離開口の面積の比は、好適には最大で2:1、好適には最大で1.5:1、極めて好適には1.2:1である。
【0112】
気液分離器は、それぞれ1つの流入ノズル、衝突ユニットおよび気体案内ユニットを備えた1つ、2つまたはそれ以上の分離領域を有していてよい。好適な構成では、1つの気液分離器は、衝突ユニットを備えたまさに1つの流入ノズルを含んでいて、気体案内ユニットが、それぞれ1つの(部分)分離開口を含む2つ、3つまたはそれ以上の領域に分割されていることが規定されていてよい。別の構成では、気液分離器が、1つの衝突ユニットを備えたそれぞれまさに1つの流入ノズルを備えた分離された複数の分離領域を含んでいることが規定されていてよい。種々異なる(部分)分離領域の分離開口は、まさに1つのセパレート領域に接続されている。さらに別の好適な構成では、気液分離器が1つの衝突ユニットを備えた2つ以上の流入ノズルを含んでいることが規定されていてよい。衝突ユニットは、2つ以上の流入ノズルにより案内された気液流が、上述のように互いに向けられていて、気体案内ユニットがそれぞれ1つの(部分)分離開口を含む2つ、3つ、それ以上の領域に分割されているように、構成されている。これにより、種々異なる(部分)分離開口を介して案内された気体流が同一のセパレート領域内に導入され、気体の流速を相互に減じる。
【0113】
好適には、気液分離器は、気体の流速がセパレート領域においてできるだけ強く減じられ、これにより、セパレート領域の下側の領域にある液体の連行または取り込みを阻止することができるように、構成されている。2つ、3つ、4つまたはそれ以上の部分分離開口が設けられている好適な実施形態では、これらの部分分離開口は、好適には相応して対称的に構成されている。したがって、2つの分離開口を備えた好適な実施形態では、これらの分離開口は、好適にはほぼ同一の大きさで、対峙しているので、気体流が最小限にされる。実質的に、好適には、気体流量の比が、好適には2:1~1:2の範囲、特に1.5:1~1:1.5の範囲、特に好適には1.2:1~1:1.2の範囲にあることを意味している。3つ以上の部分分離開口では、この値が部分分離開口の種々異なる対のために有効であるので、最小の部分分離開口の気体流量に対する最大の部分分離開口の気体流量の比は、好適には最大で2:1、好適には最大で1.5:1、特に好適には1.2:1である。
【0114】
気体流量は、特にそれぞれ部分分離開口の流出面積に基づいて、気体案内ユニットの幾何学形状を考慮して計算することができる。分離開口の気体流量は、クロマトグラフィが行われる流量を介して測定され、分離開口の流出面積が考慮され得る。
【0115】
一緒に分離開口と見なされ得る2つ以上の部分分離開口を備えた実施形態では、上述または後述のサイズ表示、たとえば面積、長さ、幅等に関する表示は、相応して有効であり、「分離開口」という概念は、部分分離開口全体であると理解される。
【0116】
特に好適な実施形態は、流入ノズル、衝突ユニットおよび気体案内ユニットを備えたまさに1つの、または2つの分離領域を有している。まさに2つの(部分)分離開口が設けられている。この構成は、特に簡単な形式で、材料ブロックの切削加工により、好適にはフライス加工により製造することができる。材料ブロックは、好適にはプラスチックから成っている。好適には、1つの側壁がカバープレートにより形成され、カバープレートは、たとえばねじ締結により形成される圧力により、フライス加工された材料ブロックに結合される。ねじの簡単な取外しと、カバープレートの簡単な取外しとにより、気液分離器は信頼性よく洗浄することができる。
【0117】
好適な実施形態では、分離領域内に変向ユニット、好適には切欠きが設けられている。流入ノズルは、気体流をまず第1の衝突ユニットへと案内する。この実施形態では、好適には付加的に気体の流速がセパレート領域においてできるだけ強く減じられ、これにより、上述したように、セパレート領域の下側の領域に存在する液体の連行または取り込みを阻止することができる。特に好適な実施形態では、第2の衝突ユニットが上側の閉鎖部の領域に設けられていて、これにより変向ユニットが気体流を上側の閉鎖部の領域へと案内することが規定されていてよい。特に好適には、第2の衝突ユニットが内側膨出部として構成されている。ここで内側膨出部の形状は重要ではない。
【0118】
第2の衝突ユニットが内側膨出部として構成されている特に好適なこの実施形態では、分離領域が上側の閉鎖部を含んでいることが規定されていてよい。この上側の閉鎖部は、1つ以上の湾曲部またはアングル部を含んでいるので、上側の領域の2つのより高い点(箇所)の間に、より低く位置する点(箇所)が設けられている。湾曲部またはアングル部のより低く位置する点は好適には中心に配置されていて、これにより、気体流れ方向もしくは液体の流れ方向に対して平行である、つまり上方から下方に向かって延びる仮想の直線上に流入ノズルと一緒に位置している。上側の閉鎖部は、好適には2つの側壁に移行するので、移行部は側壁と、上側の閉鎖部との間で少なくとも二重に湾曲させられている。
【0119】
内側膨出部の形成もしくは上側の閉鎖部において1つ以上の湾曲部またはアングル部を備えた形状の構成は、特別な制限に曝されておらず、したがって別の構成に適合させることができる。たとえば、内側膨出部の高さは好適には1~30mmの範囲、特に好適には2~15mmの範囲、極めて好適には3~10mmの範囲にあることが規定されていてよい。内側膨出部の高さは、上側の閉鎖部の最高点と、上側の閉鎖部の、側壁の間に位置する最低点との間の間隔を示している。
【0120】
さらに、変向ユニット、好適には切欠きの導出開口と、変向ユニットにより気体が好適には向けられる、内側膨出部の最も近い点との間の間隔は、好適には0.8~25mmの範囲、特に好適には1.5~20mmの範囲、極めて好適には2~10mmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0121】
2つの以上の部分分離開口を備えた上述および後述の実施形態は、別の構成に対して特に好適である。意想外にも、この構成によって、気体により連行される液体量を極めて少なく維持することができることが判った。この改善は、特に、クロマトグラフィのために使用される溶媒混合物中の著しく異なる液体割合にとって有効である。したがって、この実施形態は、グラジエントクロマトグラフィを実施するために特に適している。グラジエントクロマトグラフィでは、上述および後述で詳しく説明するように、室温および標準圧力では液状である溶媒と、室温および標準圧力で気体状である流体の割合が著しく変化する。
【0122】
気液分離器の上述の好適な特性は、それぞれ互いに流れ接触している種々異なる領域の定義を必要とする。なぜならば、気相-液相から成る混合物が分離領域を介してセパレート領域へと移行され、このセパレート領域内において液体が気相から分離され、気体が気体導出領域へと移送されるからである。この場合、分離開口は、分離領域とセパレート領域との間の区画部を形成し、分離開口が終端する平面は、セパレート領域への移行部を示す。
【0123】
セパレート領域と気体導出領域との間の移行部は、同様に開口により示される。しかしこの開口は、分離開口に比べて比較的大きい。この開口は、分離開口の高さ位置に配置されていて、分離領域における気体-液体混合物の気体流れ方向の方向に対して垂直に、もしくは気相の流れ方向に対して平行に延びる平面により定義されている。この分離開口は分離領域からセパレート領域に移行するか、もしくは運転時に液体レベルに対して平行である。開口の広がりにより定義された平面は、この平面がセパレート領域と気体導出領域との間で最小面積を形成するように選択され、この平面は、分離開口に接触し、セパレート領域の底部に対してほぼ平行に、もしくは運転時に液体レベルに対して平行に位置している。
【0124】
さらに、分離領域内に設けられた流入部の流入面積の、流入部と衝突ユニットとの間隔に対する比は、5:1mm2/mm~1:10mm2/mm、好適には2:1mm2/mm~1:5mm2/mmの範囲にあることが規定されていてよい。
【0125】
本発明の気液分離器は、溶媒および物理的な特性により予め規定されている要求が満たされる限り、あらゆる公知の材料から製造することができる。好適には、分離工程が可視であるように透明な材料を使用することができるので、堆積物形成等の場合に迅速なエラー分析が可能にされる。
【0126】
好適には、気液セパレータは、好適には酸耐性かつ塩基耐性に構成されている金属、鉱物ガラスおよび/またはプラスチック、たとえばフルオポリマ、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)または好適には溶媒耐性である同様の材料から製造することができる。
【0127】
気液分離器は、好適には、20ml~100mlの範囲、特に好適には20ml~70mlの範囲、極めて好適には20ml~50mlの範囲の容積を有している。たとえば、流入ノズルもしくは液体流出部により与えられている、気液分離器の上側の領域および/または下側の領域において円弧状またはドームとして構成されていてよいほぼ直方体の構成では、気液分離器の高さは、好適には8cm~150cmの範囲、特に好適には10cm~12cmの範囲にあってよく、高さは、流入ノズルから液体導出部の方向としての、気体流れ方向の長手方向延在長さにより設定されている。気液分離器の幅および深さは、それぞれ好適には15mm~60mmの範囲、特に好適には15mm~25mmの範囲にある。
【0128】
好適には、気液分離器は円筒状ではなく、好適には、上側および下側の円弧状のカバーを有するほぼ直方体状の基本構造を有していることが規定されていてよい。
【0129】
本発明に係る気液分離器の構造および製造は、簡単な形式で行うことができる。好適な実施形態によれば、気液分離器は、分解可能に構成されていてよく、これにより、個別の構成部材を組み立てかつ分解することができる。これにより、気液分離器は、汚れた場合に容易に洗浄することができる。たとえば、適切な切欠きを備えたほぼ直方体状の基体を製造することができ、切欠き上に側壁として働くカバーがねじ締結部を介して被せられる。カバーとして働く側壁は、上述のように、衝突ユニットの機能を引き受けることができ、かつ/または気体案内ユニットの部分としての機能を引き受けることができる。好適にはさらに気体導出領域の側壁を成す、気体案内ユニットの別の部分は、この実施形態において、適切な切欠きを備えたほぼ直方体状の基体内に、形状結合部により、溶接、好適にはレーザ溶接、接着等により取り付けることができ、これにより、上述の複数の領域、特に少なくとも1つの分離領域、少なくとも1つのセパレート領域および少なくとも1つの気体導出領域が形成される。好適には、気液分離器は、切削加工、好適には、好適にはプラスチックから成る材料ブロックのフライス加工により製造される。好適には、側壁は、カバープレートにより形成される。このカバープレートは、たとえばねじ締結により形成される圧力により、フライス加工された材料ブロックに結合される。ねじの簡単な取外しおよびカバープレートの簡単な取外しにより、気液分離器は、上述かつ後述のように信頼性よく洗浄することができる。
【0130】
気液分離器は、概して大気圧で運転することができる。しかし、より大量の液体、たとえばメタノールが集まることを阻止するために、気液分離器は、たとえば0.1バール~4バールの範囲の適切な内部の背圧時に、背圧レギュレータにより運転され得る。したがって、クロマトグラフィ設備は、気体流出部の下流側で背圧レギュレータが設けられていることが規定されていてよい。この背圧レギュレータは、好適には、1バール~4バールの過圧の範囲(絶対圧2バール~5バール)、好適には2バール~3バールの過圧の範囲で制御可能である。しかし、セパレート領域を介して集められ、液体流出通路を通って提供される液体成分は、自動化された分留を可能にする。この分留は、大気圧下で作動され得る。気液分離器により、従来のHPLC分析に比類して、SFC分析のためにも、完全自動化された分留コレクトを実現することができる。
【0131】
気体/液体分離器の内壁および構成部材が分離領域およびセパレート領域において実質的に継続的に湿らされるので、自浄効果を発揮することができるだけではなく、試料の相互汚染の比較的低い程度を達成することができる。別の利点として、気液分離器は、結果として生じるクロマトグラフにおける比較的小さなピーク分布を発生させる。
【0132】
別の観点によれば、変換キットが提供される。この変換キットにより、高出力液体クロマトグラフィシステム(HPLC)を、SFCシステムに変換することができる。このようなキットは、上述のような少なくとも1つの気液分離器を含んでいる。好適には、このキットは、後述のような別の構成要素、たとえば熱交換機または背圧レギュレータを含んでいて、これによりHPLC設備をSFCシステムに変換することができる。
【0133】
気液分離器は、特に、超臨界流体クロマトグラフィのために設計されているクロマトグラフィ設備において働く。
【0134】
このようなシステムは、たとえば超臨界CO2を使用しながら、溶媒、たとえばメタノールと一緒に運転される。したがって、超臨界流体クロマトグラフィのために設計されたクロマトグラフィ設備は、溶媒のための少なくとも1つの保存容器と、超臨界流体、たとえばCO2のための保存容器とを有している。概して、流体は、保存容器から取り出され、それぞれ少なくとも1つのポンプにより混合エレメントへと移送される。混合エレメントは、クロマトグラフィカラムに接続している。ポンプおよび/または混合エレメントならびにクロマトグラフィカラムは、温度調節器を備えていてよい。これにより、それぞれ予め規定された温度を調節することができる。このためには、特に熱交換機が設けられていてよい。分離すべき混合物、特に精製すべき物質の供給は、公知の装置、たとえばインジェクタにより行うことができる。インジェクタは、好適には管路内に設けられている。管路内では溶媒が混合エレメントに向かって案内される。
【0135】
クロマトグラフィカラムを出た流体は、好適には少なくとも部分的に検出ユニットまたは分析ユニットに供給される。検出ユニットまたは分析ユニットのための例は、特にUV検出器および/または質量分析計(Massenspektrometer)である。
【0136】
クロマトグラフィカラムの下流側かつ好適には検出ユニットまたは分析ユニットの下流側には、概して背圧レギュレータが設けられていて、好適には背圧レギュレータの下流側には熱交換器が設けられている。熱交換器を出たエアロゾルは、好適には次いで本発明に係る気液分離器に供給される。
【0137】
エアロゾルの気相は、気体の種類に応じて捕捉かつ処理されるか、またはたとえばCO2の使用時に周囲に放出され得る。
【0138】
エアロゾルの液相は、好適には、フラクションコレクタ内に集められる。集められたフラクションは、特に好適には自動的にメインフラクションとして集められる一方で、過剰な溶媒は処理または排出され得る。気液分離器の液体流出部と、フラクションコレクタとの間の接続ラインは、好適には、気相の残り、好適にはCO2の残りがこの接続部を介して漏れ出ることができるように構成されていてよい。このためには、半透過性のプラスチック材料、たとえばテフロン、特に好適にはAF2400(DuPont社から商業的に入手可能)を使用することができる。
【0139】
SFCクロマトグラフィシステムは、好適には、10ml/分~450ml/分の範囲、特に好適には50ml/分~300ml/分の範囲、極めて好適には100ml/分~250ml/分の範囲の体積流量で運転可能である。さらに、SFCクロマトグラフィシステムは、好適には少なくとも10ml/分、特に好適には少なくとも50ml/分、極めて好適には少なくとも100ml/分の体積流量で運転可能である。
【0140】
本発明の別の対象は、気液混合物を分離するための方法である。この方法では、本発明に係る気液分離器または本発明に係る気液分離器を備えたクロマトグラフィ設備が使用される。
【0141】
超臨界流体による分離を実施するために、好適には比較的簡単に超臨界状態にすることができる気体が使用される。この特性を有する好適なガスには、特に二酸化炭素(CO2)、アンモニア(NH3)、フレオン、キセノンがあり、二酸化炭素(CO2)が特に好適である。
【0142】
さらに、本発明に係る方法では、無機または有機溶媒を使用することが規定されていてよい。溶媒は、通常の分離条件では、特に25℃および大気圧(1023ミリバール)では液体である。この場合、分離すべきまたは精製すべき化合物の種類に応じて、極性または無極性の溶媒を使用することができる。
【0143】
好適には、超臨界状態にもたらすべき気液混合物は、極性の溶媒と、気体を含んでいることが規定されていてよい。気体は、CO2、NH3、フレオン、キセノンから成る群から選択されていて、好適にはCO2である。好適には極性の溶媒は、アルコール、好適にはメタノール、エタノールまたはプロパノール、ヘキサンであるか、ジクロロメタン、クロロフォルム、水(好適には最大3体積%まで。なぜならば、さもなければ混和性ギャップが発生してしまう)を有する混合物、アルデヒドまたはケトン、好適にはメチルエチルケトン;エステル、好適には酢酸エチルエステル;またはエーテル、好適にはテトラヒドロフランである。
【0144】
極性の溶媒の使用時に、好適には、衝突ユニットが、35mN/m~100mN/mの範囲、特に好適には50mN/m~80mN/mの範囲の表面エネルギを備えた表面領域を有していることが規定されていてよい。
【0145】
さらに、超臨界状態にもたらすべき気液混合物が無極性の溶媒および気体を含んでいることが規定されていてよい。気体は、CO2、NH3、フレオン、キセノンから成る群から選択されていて、好適にはCO2である。好適には、無極性の溶媒は、脂肪族炭化水素、好適にはヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン;芳香族炭化水素、好適にはベンゾール、トルエン、キシレン;エステル、好適には酢酸エチルエステル;またはエーテル、好適にはテトラヒドロフランである。
【0146】
無極性の溶媒の使用時に、好適には、衝突ユニットが、10mN/m~40mN/mの範囲、特に好適には15mN/m~30mN/mの範囲の表面エネルギを備えた表面領域を有していることが規定されていてよい。
【0147】
クロマトグラフィ設備が背圧レギュレータを含み、この背圧レギュレータにより気液分離器内の圧力が制御可能である方法の好適な実施形態では、圧力の制御が、気液混合物の溶媒含有量に応じて選択されることが規定されていてよく、好適には、制御は、溶媒含有量が高い場合に、気液分離器内で高い圧力が存在するように、構成されていてよい。
【0148】
以下に本発明の好適な実施形態を、10個の図面につき例示的に説明するが、これにより本発明の制限が行われることはない。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【
図1】本発明に係る気液分離器を示す概略的な縦断面図である。
【
図2】本発明に係る気液分離器を示す概略的な横断面図である。
【
図3】本発明に係る気液分離器を示す概略的な平面図である。
【
図4】本発明に係る気液分離器の別の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
【
図5】本発明に係る気液分離器の別の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
【
図6】本発明に係る気液分離器の別の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
【
図7】本発明に係る気液分離器の別の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
【
図8】本発明に係る気液分離器の
図7に図示した実施形態を示す概略的な縦断面図であり、切断面が、
図7に図示した切断面に対して90°だけ回転させられている。
【
図9】本発明に係る気液分離器の別の実施形態を示す概略的な縦断面図である。
【
図10】本発明に係る気液分離器を備えたクロマトグラフィシステムの概略図である。
【0150】
図1は、本発明に係る気液分離器10を縦断面図で示している。
【0151】
気液分離器10は、流入ノズル14、衝突ユニット16および気体案内ユニット18を備えた分離領域12を含んでいる。気体案内ユニット18は、本実施形態では衝突プレートとして形成されている衝突ユニット16と、気体加速プレート20と、縦断面では図示されていない別の2つの側壁とにより形成される。特に分離領域12の、本実施形態では楔形に形成された形状が図示されており、この形状によって、気体は流入ノズル14の領域を起点として、分離開口22に向かって加速させられる。
【0152】
本実施形態では衝突プレートとして形成された衝突ユニット16は、構造化された表面または平滑な表面を有していてよい。気体加速プレート20は、流入ノズル14の方向から分離開口22の方向に向かって平坦であるか、または僅かに凹状に湾曲されていてよいので、衝突プレート16と気体加速プレート20との間の間隔の
図1において明確な減少が生じている。上方に対して、分離領域12は上側の閉鎖部24を介して画定されている。
【0153】
気液分離器10は、液体流出部28を備えたセパレート領域26を含んでいる。セパレート領域26は、分離開口22を介して分離領域12に接続されているので、分離領域12は、セパレート領域26に連通している。
【0154】
本実施形態では、衝突プレートとして形成された衝突ユニット16が、セパレート領域26の側壁を形成する。気液分離器10の底部は、セパレート領域26の下側の閉鎖部により形成される。この底部は、液体流出部28が底部の最も深い位置に設けられているように、構成されていてよい。
【0155】
気体導出領域30の側壁32ならびに(縦断面では図示しない)両側の側壁が、気体導出領域30とセパレート領域26との間に設けられている開口34ならびに分離開口22と一緒に、セパレート領域の別の境界を形成する。
【0156】
セパレート領域26では、気相が液相から分離される。好適には、気体が、気体案内ユニット18によって分離開口22の方向で加速させられるので、液体は、セパレート領域26の底部の方向に移送される。
【0157】
気相は、気体導出領域30とセパレート領域26との間に設けられている開口34を介して、気体導出領域30内へと案内される。気体導出領域30は、この実施形態では、気体が、気体導出領域30に設けられている気体流出部35の方向で加速させられるように、構成されている。
【0158】
この実施形態では、上述の気体加速プレート20の背壁は、セパレート領域内に突入している側壁32と一緒に、対応する楔形を形成する。気体加速プレート20の一方の縁部は、側壁32に結合されている。
【0159】
図2は、本発明に係る気液分離器10の概略的な横断面図を示している。同一の参照符号は同一の部材を示している。
【0160】
特に、気液分離器10の
図1には図示されていない側壁36,38を確認することができる。さらに、エアロゾルの供給部40と、気体42のための排出部とが図示されている。
【0161】
さらに、この実施形態では、衝突プレートとして形成されている衝突ユニット16が、溝状の表面構造を有していることが明らかである。
【0162】
図3は、本発明に係る気液分離器10の概略的な平面図を示している。同一の参照符号は同一の部材を示している。特に、本実施形態ではそれぞれ円弧状に形成されている、セパレート領域26の下側の閉鎖部44と、分離領域12の上側の閉鎖部24との好適な構成が明らかである。
【0163】
図4は、本発明に係る気液分離器50を縦断面図で示している。
【0164】
気液分離器50は、流入ノズル54、衝突ユニット56および気体案内ユニット58を備えた分離領域52を含んでいる。気体案内ユニット58は、気体加速ユニット60、2つの側壁62a,62bならびに縦断面では図示されていない別の底部壁およびカバー壁により形成されている。特に、分離領域52の、ここでは楔形に形成された形状が図示されている。この形状により、気体は、流入ノズル54の領域を起点として、分離開口64に向かって加速させられる。
【0165】
この実施形態では、分離領域52が、2つの部分領域52a,52bに分けられている。これらの部分領域52a,52bは、それぞれ固有の部分分離開口64a,64bを介して、セパレート領域66に接続されている。
【0166】
この実施形態では、衝突ユニット56が、気体加速ユニット60の領域に形成されている。衝突ユニット56は、この箇所において、気体加速ユニット60の2つの部分領域60a,60bを円弧状に結合し、分離領域52を部分領域52a,52bに分けている。流入ノズル54は、気液混合物を衝突ユニット56に向かって導く。これにより、分離領域52において液体の流れ方向に対して平行な気体流が生じる。気体加速ユニット60は、本実施形態では2つの部分領域60a,60bを有している。これらの部分領域60a,60bは、流入ノズル54の方向から分離開口64の方向へ、気体加速ユニット60とそれぞれの側壁62a,62bとの間の間隔を減じるように延びている。気体加速ユニット60の部分領域60a,60bは、平坦であるか、または僅かに凹状に湾曲させられていてもよい。上方において、分離領域52は上側の閉鎖部68により画定されている。
【0167】
気液分離器50は、液体流出部70を備えたセパレート領域66を含んでいる。セパレート領域66は、分離開口64もしくは2つの部分分離開口64a,64bを介して分離領域52に接続されているので、分離領域52の2つの部分領域52a,52bは、セパレート領域66と連通している。
【0168】
気液分離器50の底部は、セパレート領域66の下側の閉鎖部により形成されている。この底部は、液体流出部70が底部の最も深い位置に設けられているように、構成されていてよい。
【0169】
気体導出領域72は、気体加速ユニット60ならびに縦断面には図示されていない両方の壁と、開口74とにより形成されている。この開口74は、気体導出領域72とセパレート領域66との間に設けられている。
【0170】
セパレート領域66において、気相が液相から分離される。この場合、好適には気体が気体案内ユニット58により分離開口64の方向で加速させられるので、液体はセパレート領域66の底部の方向に移送される。この実施形態では、部分分離開口64a,64bを介してセパレート領域66内に導入された両方の部分気体流が互いに向かい合うように案内されるので、部分気体流の速度はセパレート領域において最小化される。この構成により、気体流中に連行される液体の量を著しく減じることができる。
【0171】
気相は、気体導出領域72とセパレート領域66との間に設けられている開口74を介して、気体導出領域72内へと案内される。気体導出領域72は、この実施例では、気体が、気体導出領域72に設けられている気体流出部76の方向で加速させられるように、構成されている。
【0172】
この実施形態では、上述の気体加速ユニット60の背壁が、上方に向かって狭まるような形状を成している。
【0173】
図4に図示された実施形態は、極めて簡単にフライス加工によりプラスチックブロックから製造することができる。ここでは、
図4に図示されていない背壁は、材料を除去することなく残すことにより製造することができる。上述の領域および部分領域の容積(材料除去部分)は、対応するフライス深さ、もしくは材料除去深さにより形成することができる。上面側の部材は、プレート、たとえばガラスプレートにより提供することができる。このプレートは、フライス加工されたプラスチックブロックに上方から押し付けられる。押し付けは、たとえばねじ締結により達成することができる。対応する複数のねじ孔が、
図4に参照符号78により示唆されている。上面を形成するプレートは、好適には図示された領域および部分領域にわたって段状に設けられた、溝と見なすことができる切欠きによって位置固定される。この段状の切欠きは、
図4では参照符号79により示唆されている。
【0174】
図5は、本発明に係る気液分離器80を縦断面図で示している。
図5に図示された気液分離器80は、その構造コンセプトにおいて、
図4に図示した気液分離器50に相当する。同一または類似の構成部材は、同一の参照符号を有している。気液分離器80は、流入ノズル54、衝突ユニット56および気体案内ユニット82を備えた分離領域52を含んでいる。気体案内ユニット82は、気体加速ユニット84、2つの側壁62a,62bならびに縦断面には図示されていない別の底部壁およびカバー壁により形成される。
【0175】
主な差異は特に、
図4に図示された実施形態の、衝突領域において円弧状に形成されている気体加速ユニット60とは異なり、気体加速ユニット84が2つの部分領域84a,84bに先鋭な形状を成して分かれていることにある。この場合、ノズルは、衝突ユニット56に向けられており、この衝突ユニット56の領域は、比較的平坦に形成することができ、これにより2つの部分領域84a,84bの結合箇所は傾斜面を成している。
【0176】
図6は、本発明に係る気液分離器90を縦断面図で示している。
図6に図示された気液分離器90は、構造コンセプトにおいて、
図5に図示した気液分離器80に相当する。同一または類似の構成部材は、同一の参照符号を有している。気液分離器90は、2つの流入ノズル94a,94b,1つの衝突ユニット56および気体案内ユニット82を備えた分離領域52を含んでいる。
【0177】
主な差異は特に、2つの流入ノズル94a,94bが、エアロゾルを2つの側から気体案内ユニット82に向けて、もしくは気体案内ユニット82の2つの部分領域82a,82bに向けて案内することにある。当業者にとって、気体案内ユニット82を上側の閉鎖部68に至るまで分離壁によって実際に分けられた2つの分離領域へ分けることができることが明らかであり、この場合、分離領域における流れに関して著しい変化が生じることはない。
【0178】
図7は、本発明に係る気液分離器100を縦断面図で示している。
図7に図示された気液分離器100は、構造コンセプトにおいて、
図4に図示した気液分離器50に相当する。同一または類似の構成部材は同一の参照符号を有している。気液分離器100は、流入ノズル102および気体案内ユニット58を備えた分離領域52を含んでいる。衝突ユニットは、この実施形態では、
図7には図示されていないカバー壁により形成される。
【0179】
主な差異は特に、衝突ユニットが図示されていないカバー壁により形成されていて、流体が流入ノズル102により気液分離器100内でまずカバー壁へと案内されることにある。変向ユニット104は、気体流を上側の閉鎖部106へと案内し、上側の閉鎖部106は、この実施形態では、内側膨出部108を有している。変向ユニット104は、この実施形態では、気体加速ユニット110の切欠きによりから形成される。変向ユニット104は、この箇所において気体加速ユニット110の2つの部分領域110a,110bを円弧状に結合し、分離領域52を部分領域52a,52bに分割している。
【0180】
したがって、上側の閉鎖部106、特に内側膨出部108の領域は、第2の衝突ユニットと見なすことができる。なぜならば、エアロゾルの一部がさらに衝突分離されるからである。内側膨出部108は、気体流の安定化に寄与していて、エアロゾルもしくは気体流は意図的に気体案内ユニットの両部分領域52a,52b内へと案内される。
【0181】
図8は、
図7に示した気液分離器100を縦断面図で示している。この場合、
図7に描写されている図平面に対して垂直方向の切断面が示されている。図示されている平面は、内側膨出部108の先端部118および液体流出部70を通る切断面を示している。特に、カバー壁112および底部壁114が図示されている。実線116は、変向ユニット104の底部領域を示していて、実線118は、内側膨出部108の先端部を示している。破線120,122は、変向ユニット104を形成する材料フライス加工部を示唆しているのに対して、破線124は、気体導出領域72の上側の領域を示唆している。この箇所において、気体が合流して、気体流出部76に導かれる。
【0182】
図9は、本発明に係る気液分離器130を縦断面図で示している。
図9に図示された気液分離器130は、構造コンセプトにおいて、
図4に図示した気液分離器50に相当する。同一または類似の構造部材は、同一の参照符号を有している。気液分離器130は、2つの流入ノズル134a,134b、2つの衝突ユニット136a,136bおよび1つの気体案内ユニット58を備えた分離領域52を含んでいる。
【0183】
主な差異は特に、2つの流入ノズル134a,134bがエアロゾルを、それぞれの側壁62a,62bの対峙する面へと案内することにある。これらの側壁はそれぞれの箇所において衝突ユニット136a,136bとして形成されている。流入ノズル134aの噴流は、側壁62bの部分と見なすことができる衝突ユニット136aに向けられている。2つの流入ノズル134a,134bは水平方向または鉛直方向で僅かにずらされていてよい。
【0184】
図5~
図9に図示された実施形態は、上述で
図4のために説明したように、プラスチックブロックに対するフライス加工により製造することができる。上面は、プレート、たとえばガラスプレートにより提供することができる。プレートは、フライス加工されたプラスチックブロックに上方から押し付けられる。さらに、全実施形態は、相応して注型または類似の方法により提供することができる。
【0185】
図10は、本発明に係る気液分離器230を備えたクロマトグラフィシステム200を概略図で示している。気液分離器230は、超臨界流体クロマトグラフィのために適している。
【0186】
このようなシステムは、たとえば超臨界状態のCO2を使用しながら説明される。メタノールが例示的な溶媒として説明される。当然ながら、別の溶媒、好適には有機溶媒が使用されるか、または別の超臨界状態の流体が使用されるシステムが同様に構成されている。
【0187】
図10に示されているように、それぞれの流体が、貯蔵容器内に保存されており、特に引き続き超臨界状態で使用される気体は保存タンク202に、溶媒は保存タンク204に保存されている。気体および溶媒は、それぞれ1つのポンプ206,208を介して、保存タンク202,204から設備の別の構成部分にまで圧送される。
図10に図示されたシステム200では、好適には各流体供給部に準備段210,212が設けられている。この準備段210,212を介して液体を温度調節することができる。さらに、ポンプにより誘発される圧力変動の平均化を提供することができる。したがって、この準備段はたとえば熱交換器またはポンプとして形成されていてよい。溶媒管路内には、好適には添加ユニット214、たとえばインジェクタが設けられていてよい。このインジェクタを介して、分離すべき混合物をシステム200内に導入し、その後にCO
2および溶媒が混合器216内に案内され、この混合器216からクロマトグラフィカラム218に供給される。
【0188】
このシステム200では、クロマトグラフィカラム218には、2つの分析ユニットが後置されている。このためには、試料導出ユニット220が質量分析計222に接続されていて、試料導出ユニットの下流側にはUV検出器224が配設されている。管路内に設けられた背圧レギュレータ226は、流体が超臨界状態に留まるために必要とされるそれぞれの圧力を維持する。背圧レギュレータ226の下流側には、熱交換器228が設けられている。熱交換器228は、膨張過程時のエアロゾルの凍結を阻止する。次いで、エアロゾルは本発明に係る気液分離器230内に導入される。気体は、設備から流出部232を介して排出される。
【0189】
液体は、フラクションコレクタ(分溜収集器)234内に導入され、このフラクションコレクタ234内で分留される。分留された試料に含まれる溶媒は、試料から取り除くことができる。
【0190】
上述の説明ならびに特許請求の範囲、図面および実施例において開示された本発明の特徴は、単独でもそれぞれ任意の組み合わせでも、種々異なる実施形態において本発明を実現するために重要であり得る。