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特許7191942チャンバの容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】チャンバの容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/33 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G01N21/33
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020515208
(86)(22)【出願日】2018-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 IB2018056695
(87)【国際公開番号】W WO2019053545
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】15/704,075
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】グリナー・バディム
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】エフラス・ヤロン
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・アンドレス・クラウディオ
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-230899(JP,A)
【文献】特表2003-535669(JP,A)
【文献】特開2000-217894(JP,A)
【文献】特開2008-186404(JP,A)
【文献】特開平07-151546(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104897600(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出のための方法であって、
前記容積内の滅菌される物体の少なくとも1つの点上に2つ以上の立体カメラの焦点を合わせるステップと、
UV光及び滅菌剤を前記容積内に透過させるステップと、
読み取るステップであって、前記2つ以上の立体カメラを使用して、前記滅菌される物体の前記少なくとも1つの点を読み取り、前記少なくとも1つの点における吸光度の量を決定する、読み取るステップと、
決定された前記吸光度の量から、前記少なくとも1つの点のそれぞれに対する前記滅菌剤の濃度を算出するステップと、
前記濃度が閾値よりも大きい場合に、前記容積から前記滅菌剤を除去するステップと、を含み、
前記2つ以上の立体カメラは、前記滅菌される物体を三次元容積として観察するためのものである、方法。
【請求項2】
前記読み取るステップが、前記滅菌される物体を前記三次元容積として観察するためにチャンバをボクセルのグリッドに分割するステップと、前記ボクセルを読み取るステップと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記算出するステップが、前記少なくとも1つの点における前記吸光度の量を測定することによって実行され、前記吸光度の量が、前記滅菌剤の前記濃度に比例する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記滅菌剤が過酸化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記閾値が630mg/Lである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記滅菌剤がエチレンオキシドであり、前記閾値が630mg/Lであり、気相温度が摂氏55度である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
チャンバの容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出のためのシステムであって、
2つ以上の立体カメラと、
前記容積を有する前記チャンバと、
プロセッサであって、
前記チャンバの前記容積内に配置された滅菌される物体の少なくとも1つの点上に前記2つ以上の立体カメラの焦点を合わせ、
UV光及び滅菌剤を前記容積内に透過させ、
前記2つ以上の立体カメラを使用して、前記滅菌される物体の前記少なくとも1つの点を読み取り、前記少なくとも1つの点における吸光度の量を決定し、
決定された前記吸光度の量から、前記少なくとも1つの点のそれぞれに対する前記滅菌剤の濃度の算出をし、かつ
前記濃度が閾値よりも大きい場合に、前記容積から前記滅菌剤を除去するように構成されている、プロセッサと、を備え、
前記2つ以上の立体カメラは、前記滅菌される物体を三次元容積として観察するためのものである、システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記滅菌される物体を前記三次元容積として観察するために前記チャンバをボクセルのグリッドに分割し、前記ボクセルを読み取るように更に構成されている、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記少なくとも1つの点における前記吸光度の量を測定することによって前記算出を実行するように更に構成されており、前記吸光度の量が、前記滅菌剤の前記濃度に比例する、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記滅菌剤が過酸化水素である、請求項記載のシステム。
【請求項11】
前記閾値が630mg/Lである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記滅菌剤がエチレンオキシドであり、前記閾値が630mg/Lであり、気相温度が摂氏55度である、請求項に記載のシステム。
【請求項13】
チャンバの容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出のためのコンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶されている非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、前記コンピュータプログラム命令は、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
前記容積内に配置された滅菌される物体の少なくとも1つの点上に2つ以上の立体カメラの焦点を合わせるステップと、
UV光及び滅菌剤を前記容積内に透過させるステップと、
読み取るステップであって、前記2つ以上の立体カメラを使用して、前記滅菌される物体の前記少なくとも1つの点を読み取り、前記少なくとも1つの点における吸光度の量を決定する、読み取るステップと、
決定された前記吸光度の量から、前記少なくとも1つの点のそれぞれに対する前記滅菌剤の濃度を算出するステップと、
前記濃度が閾値よりも大きい場合に、前記容積から前記滅菌剤を除去するステップと、を実行させ、
前記2つ以上の立体カメラは、前記滅菌される物体を三次元容積として観察するためのものである、コンピュータソフトウェア製品。
【請求項14】
前記読み取るステップが、前記滅菌される物体を前記三次元容積として観察するために、前記チャンバをボクセルのグリッドに分割するステップと、前記ボクセルを読み取るステップと、を更に含む、請求項13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項15】
前記算出するステップが、前記少なくとも1つの点における前記吸光度の量を測定することによって実行されており、前記吸光度の量が、前記滅菌剤の前記濃度に比例する、請求項13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項16】
前記滅菌剤が過酸化水素であり、前記閾値が630mg/Lである、請求項13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項17】
前記滅菌剤がエチレンオキシドであり、前記閾値が630mg/Lであり、気相温度が摂氏55度である、請求項13に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
容積内の過酸化水素(「H202」)などの滅菌剤濃度及び散逸を紫外線(「UV」)検出するための方法及びカメラなどの装置が提供される。
【0002】
容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出のための方法は、容積内の物体の少なくとも1つの点上にカメラの焦点を合わせるステップと、UV光及び滅菌剤を容積内に透過させるステップと、カメラを使用して、物体の少なくとも1つの点を走査し、少なくとも1つの点における吸光度の量を決定するステップと、決定された吸光度の量から、少なくとも1つの点のそれぞれに対する滅菌剤の濃度を算出するステップと、濃度が閾値よりも大きい場合に、容積から滅菌剤を除去するステップと、を含み得る。
【0003】
本方法の一実施形態では、走査するステップは、チャンバをボクセルのグリッドに分割するステップと、ボクセルを走査するステップと、を更に含む。一実施形態では、算出するステップは、少なくとも1つの点における吸光度の量を測定することによって実行されている。一実施形態では、吸光度の量は、滅菌剤の濃度に比例する。一実施形態では、滅菌剤は過酸化水素である。一実施形態では、閾値は630mg/Lである。一実施形態では、カメラは立体カメラである。
【0004】
チャンバの容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出のためのシステムは、2つ以上のカメラと、チャンバの容積と、物体と、プロセッサであって、チャンバの容積内の物体の少なくとも1つの点上にカメラの焦点を合わせ、UV光及び滅菌剤を容積内に透過させ、カメラを使用して、物体の少なくとも1つの点を走査し、少なくとも1つの点における吸光度の量を決定し、決定された吸光度の量から、少なくとも1つの点のそれぞれに対する滅菌剤の濃度を算出し、かつ濃度が閾値よりも大きい場合に、容積から滅菌剤を除去するように構成されている、プロセッサと、を含み得る。
【0005】
一実施形態では、プロセッサは、チャンバをボクセルのグリッドに分割し、ボクセルを走査するように更に構成されている。一実施形態では、プロセッサは、少なくとも1つの点における吸光度の量を測定することによって算出を実行するように更に構成される。一実施形態では、吸光度の量は、滅菌剤の濃度に比例する。一実施形態では、滅菌剤は過酸化水素である。一実施形態では、閾値は630mg/Lである。一実施形態では、カメラは立体カメラである。
【0006】
容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出のためのコンピュータプログラム製品も提示される。
【0007】
本発明のこれら及びその他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と関連付けて解釈されるべき、その例示的実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明は、添付図面の図において、制限としてではなく例示として図示される。
図1】洗浄及び包装装置から出ていく洗浄され包装された器具を示す、本発明による一実施形態の図である。
図2】本発明の一実施形態による滅菌チャンバの概略図である。
図3】本発明の一実施形態による、図1に示すチャンバの構成要素の略図である。
図4A】本発明の実施形態による例示的なディスプレイである。
図4B】本発明の実施形態による例示的なディスプレイである。
図5】1つ以上の開示された実施形態に関連して使用される、例示的な滅菌動作の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、立体カメラなどを使用した容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出に関する方法及び装置に関する。
【0010】
医療機器の低温滅菌のための標準的な方法のうちの1つは、過酸化水素蒸気などの滅菌剤と低温プラズマとの組み合わせを滅菌チャンバ内で使用することである。滅菌プロセスの過程において、過酸化水素濃度は、過酸化水素の消費とともに測定され、必要に応じて、過酸化水素がチャンバに添加され、濃度が満足なレベルに維持される。過酸化水素濃度を測定する現在の方法は、チャンバ内を透過する紫外光源を使用し、受光された紫外光は、光源から遠くに位置する単一の紫外光検出器で測定される。受光された紫外光のレベルは、全体の過酸化水素濃度指示値を算出するために使用される。
【0011】
過酸化水素ガスプラズマ技術を使用する現在のプラズマ滅菌システムでは、過酸化水素蒸気が真空チャンバ内に広がった程度を決定することができないため、問題が生じる。したがって、過酸化水素の均一な散逸及び分布は確実なものではない。既存のシステムは、医療器具などの物体で満たされ、ドレープで覆われたすべてのトレイの中で、システム内に(滅菌を検出するための)生物学的センサを1つだけ備えている。
【0012】
実際には、特に、カテーテル、内視鏡など、細い内腔を有する機器を滅菌することによって滅菌蒸気の拡散が制限されるときは、過酸化水素などの滅菌剤の濃度はチャンバ内で大きく変動し得る。このような流れの制限に起因して、より高い又はより低い濃度の過酸化水素に曝されているチャンバの領域ができることがある。したがって、上述の全体の指示値は、チャンバ全体にわたる正確な濃度分布の状況を示していない可能性がある。
【0013】
したがって、チャンバの容積全体を通して蒸気が広がり、滅菌を達成するために必要な全ての点に到達したことをユーザが確認することを可能にする改善されたプラズマ滅菌システムが必要とされる。
【0014】
本明細書に記載される本発明のプラズマ滅菌システムは、チャンバ内の立体UVカメラを使用して、チャンバ内に三次元(「3D」)で広がる滅菌剤、例えば、過酸化水素蒸気の可視化を提供する。この可視化は、例えば、チャンバ全体にわたる、及び/又は滅菌されている1つ以上の医療器具の表面全体にわたる過酸化水素蒸気濃度のマッピングであってもよい。このプロセスは、少なくとも以下の情報、すなわち、チャンバ全体の1つ又は複数の箇所における蒸気のおおよその濃度、蒸気が広がった場所、蒸気が物体と接触したかどうか、蒸気がチャンバ内で持続した時間、及びその他のパラメータを決定するために使用することができる。なお、本発明のシステムは、既存のシステムで使用される生物学的インジケータセンサを排除するために使用することができる。
【0015】
以下の説明では、本発明の様々な原理が十分に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらの詳細の全てが本発明を実施する上で必ずしも必要であるとは限らない点は当業者には明らかであろう。この場合、一般的な概念を無用に分かりにくくすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及びプロセスに対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0016】
図1は、外科用器具などの物体ための改善された衛生、滅菌及び包装プロセスを提供し、かつ非密閉状態における微生物要素への曝露による汚染の可能性を排除する、例示的な洗浄及び包装システム100を示す。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/602,739号(Altmannら)は、例示的な洗浄及び包装システムを開示している。図1に示すように、洗浄及び包装システム100は、封止可能な洗浄区画室又はチャンバ105及び封止可能な包装区画室110を有する。洗浄区画室105及び包装区画室110は、好ましくは、例示的な洗浄及び包装システム100に示すように互いに連続的に連結しているが、物理的に連結することなく連続的に配置されてよい。示される実施例では、洗浄区画室105は衛生システム及び滅菌システムの両方を含み、また包装区画室110は包装システムを含む。当然、別の実施形態では、洗浄区画室105は、包装区画室110の包装システムと共に滅菌システムを単に含んでよい。
【0017】
なお、例示的な洗浄及び包装システム100は、区画室105及び110により部分的に進入し、かつ区画室105及び110を介して品目を搬送するように構成される、コンベアシステム120を有する。図1に図示したように、コンベアシステム120は4つの個別のコンベア区間120a、120b、120c及び120dを有する。コンベアシステム120がこれら4つの個別のコンベア区間120a、120b、120c及び120dと共に図示されたにもかかわらず、洗浄及び包装システム100のその他の実施形態は1つの単一のコンベア区間又は任意のその他多数の個別のコンベア区間を利用してよい、と理解されている。図1を参照すると、通常、コンベアシステム120は洗浄区画室105に進入し、最初に洗浄区画室105を介して進み、次に包装区画室110を介して、次に包装区画室110から最終的に退出する。特に、コンベア区間120aは洗浄区画室105の入口の外側に属しており、コンベア区間120bは洗浄区画室105に覆われて洗浄区画室105を介して品目を搬送するように構成され、コンベア区間120cは包装区画室110に覆われて包装区画室110を介して品目を搬送するように構成され、またコンベア区間120dは包装区画室110の出口の外側に属する。したがって、コンベア区間120aは器具を洗浄区画室105の入口へと搬送するように構成され、コンベア区間120bはコンベア区間120aから器具を受容するように構成される。コンベア区間120bは、洗浄区画室105を介して器具を洗浄区画室105の出口及び包装区画室110の入口へと搬送するように更に構成される。続いて、コンベア区間120cは、コンベア区間120bから器具を受容するように構成される。コンベア区間120cは、包装区画室110を介して器具を包装区画室110の出口へと搬送するように更に構成される。最終的に、コンベア区間120dは、コンベア区間120cから包装された包装体150を受容して、包装された包装体150を包装区画室110から容器160へと搬送するように構成される。
【0018】
なお、例示的な洗浄及び包装システム100は、3組の封止扉を特徴とする。封止扉の第1の組は洗浄区画室105の入口に構成され、封止進入扉構成要素(図示せず)を提供する。封止扉の第2の組は洗浄区画室105と包装区画室110との間に構成され、封止連結扉構成要素130を提供する。封止扉の第3の組は包装区画室110の出口に構成され、封止出口扉構成要素140を提供する。上述の3組の封止扉のそれぞれについて、封止態様は、液体封止及び気密封止の一方又は両方を含むことができる。3組の封止扉は、3組の封止扉が閉じた場合に、洗浄区画室105及び包装区画室110への視界を提供する透明材料で作製されてもよい。これらの3組の封止扉は透明材料で作製されてもよいが、必ずしもそのような透明材料で作製される必要はない。
【0019】
上述のように、図1のコンベアシステム120が4つの個別のコンベア区間120a、120b、120c及び120dと共に図示された一方、洗浄及び包装システム100のその他の実施形態は1つの単一のコンベア区間又は任意のその他の多数のコンベア区間を利用してよい、と理解されている。1つの単一のコンベア区間が洗浄及び包装システム100全体にわたって存在する代替的実施形態では、コンベア120は、好ましくは、封止扉130及び140の組が、当該封止扉が閉じた場合にコンベア120と封止的に係合することを可能にする、ゴムなどの物質から作製される。特に、コンベア120は、封止扉により係合される場合に真空封止を提供するガスケットを伴う溝を、有することができる。滅菌のレベル及び方法に応じて、別の実施形態では、扉は、空気の移動を妨げる重量のあるドレープであり得る。このような重量のあるドレープを、洗浄区画室105の入口、洗浄区画室105と包装区画室110との間、及び包装区画室110の出口に配置することができる。
【0020】
コンベアシステム120は、コントローラ170と、モニタ又はディスプレイスクリーン175とを含んでもよい。コントローラ170は、コンベアシステム120との間で信号を送受信してもよい。一実施形態では、コントローラ170は、(以下に)図4に関してより詳細に説明されるように、モニタ175上に表示するための信号を受信してもよい。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態による洗浄及び滅菌区画室又はチャンバ105の概略図である。チャンバ105は、滅菌される物体202を通すための封止されたポータル201を有しており、物体は種々雑多の外科用器具などであり得る。過酸化水素を、調節器又は弁204を有する流入口203を通してチャンバ105内に入れることができる。空気を入れるために少なくとも1つのポータル205が設けられ、ガスは少なくとも1つのその他のポータル206を通ってチャンバから出ていく。チャンバ105は、大気圧未満に、典型的には0.5トルに維持され、チャンバ内にわたって紫外(UV)光を透過させるUV光源207を備えており、UV光は、複数の壁面上UV光検出器208及び内部UV光検出器209で受光される。UV源207と関連付けられている適当なUVレンズを有する光学素子210は、検出器208、209のすべてを照明するように構成されている。図2における検出器208、209の分布は、非制限的な一例である。検出器208、209は、滅菌中の物体における過酸化水素の濃度が測定値に最適に反映されるように、チャンバ内に分布され得る。したがって、それらは、チャンバ全体に均一に配置されてもよい。検出器は特定の順序で分布する必要はなく、更には、チャンバの周囲及び内部に様々な方向を向いて広く散在してもよい。
【0022】
また、チャンバ内には、物体202上に常に焦点が合わせられた2つの立体カメラ211がある。これらの立体カメラ211は、物体202を三次元(3D)容積として観察する。3つ以上の立体カメラを使用することができる。
【0023】
UV光源207は、コントローラ170から指令信号を受信し、検出器208、209及びカメラ211からの読み出し値を受信する。弁204は、コントローラ170によって読み出し値に応じて調整される。弁204は、チャンバ105内で所望の最適なレベル(典型的には95%濃度)の過酸化水素が得られるように、過酸化水素の流入を調節する。最適なレベルになると、いくつかの実施形態では、流入は中断され得、チャンバは静的な状態で維持され得る。
【0024】
一実施形態では、滅菌チャンバは、石英などの透明な物質から作製されてもよい。過酸化水素蒸気は、高周波数のUV光を吸収するので、2つ(又はそれ以上)の立体カメラ211は、滅菌処置の妥当性を判定するためにチャンバ内の蒸気を測定することができる。蒸気濃度は、以下のように測定することができる。各波長の吸光度は濃度に依存し、吸光度+透過率=1であると仮定する。したがって、チャンバが一方側から照明され、カメラが他方側に配置される場合、UV光の透過率は、ピクセルの輝度に基づいて測定することができる。ピクセルは、光の透過量が多いほど、また吸収量が少ないほど、明るい。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態による、システム100の電気構成要素の略図である。本実施形態では、UV源207は、並列の2つの発光ダイオード301、302として実現され、どちらもコントローラ303によって供給される。別の実施形態では、UV源207は、ダイオードの代わりにUVランプであってもよい。ダイオード301、302は、抵抗器304、305と直列であり、280nm及び370nmでそれぞれ発光する。ダイオード301、302は、それぞれの周波数で同時に発光しても、又は同じ周波数で異なる時間間隔で発光してもよい。ダイオード301、302からの信号を検出する際にGoertzelアルゴリズムが使用され得る。2波長紫外分光法の技術は、例えば、参照によって本明細書に援用される、米国特許第6,269,680号から知られている。図3に示す回路では、ダイオード302が回路の内部変動を補正するための基準となる一方、ダイオード301は過酸化水素蒸気によって強く吸収される波長で発光する。
【0026】
UV光源207には、当該技術分野において既知の複数のその他の紫外線発光器、例えば、約254nmにスペクトルピークを有する円筒形の低圧水銀UV発光器が使用され得る。このような発光器は、参照によって本明細書に援用される、米国特許出願公開第2006/0222576号で提案されている。このような光源の他の例には、低圧水銀蒸気ランプ、重水素ランプ、キセノンランプ、発光ダイオード、及び半導体レーザが挙げられる。一般に、これらはすべて、上述の2発光ダイオード構成よりも不便であるか、又は高価である。
【0027】
検出器208、209は、抵抗器307にわたる電荷結合検出器306として実現され得る。検出器306からの信号は、コントローラ303で受信され、トランシーバ308によってプロセッサ(図示せず)などの遠隔サイトに伝達され、信号処理技術が適用される。信号処理技術には、アナログ-デジタル変換、及び上述のGoertzelアルゴリズムなどのフーリエ解析が含まれる。
【0028】
図4A及び図4Bは、本発明の実施形態による例示的なディスプレイである。コントローラ170は、コンベアシステム120の1つ以上の構成要素との間でデータ401を送受信する。図4Aに示す実施形態では、データ401は、異なる色又は色相が滅菌剤の密度を示すように、ディスプレイモニタ175上に表示されてもよい。図4Bに示す実施形態では、データ401は、アウトラインによって密度及び密度変化が強調されることを示すカラー又はグレースケールで表示されてもよい。データ401は、カラーで、グレースケールで、及び/又は数字を用いて表示されてもよい。
【0029】
図5は、一実施形態における本発明の方法の流れ図である。ステップS1において、立体カメラ211は、チャンバ105の容積内の物体202上に焦点を合わせ、チャンバ容積は、ボクセルのグリッドに分けられる又は分割される。典型的なボクセルは、1mm×1mm×1mmであってもよい。
【0030】
ステップS2において、UV光源が点灯し、UV光がチャンバ105に入る。ステップS2の間、チャンバ105内の全ての点又はピクセルは、UV光源からの放射線の一部を吸収し、非吸収部分を透過させる。
【0031】
ステップS3において、滅菌剤がチャンバ105に入る。各カメラ211で受光するUV光の量は、滅菌剤がチャンバ105内に入るにつれて増加する。光の量は、各点における滅菌剤の量に比例して増加する。例えば、特定の点における滅菌剤の量が倍増すると、その時点でのUV光の量もまた倍増する。
【0032】
次に、チャンバを走査するループプロセスを開始する。ステップS4において、物体202上に焦点を合わせられたカメラ211が、チャンバ105内の物体202上の点を含むボクセルのグリッドを走査する。すなわち、カメラは、チャンバ105内の各ボクセルの各点(ピクセル)上のUV光の量を測定する。物体202は、ボクセルのグリッド内の1つ以上のボクセル内に存在し得ることに留意されたい。
【0033】
ステップS5において、H202の濃度が、ステップS4のカメラ測定値から決定された吸光度の量を使用して算出される。吸光度の量はH202の濃度に比例するので、濃度は吸光度の測定値から算出できる。
【0034】
上述のように、各点におけるUV光の量は、各点における滅菌剤の量に比例する。ステップS6において、各点について滅菌剤の濃度が閾値を超えるかどうかを判定する。全ての点について滅菌剤の濃度が閾値を超える(S6=はい)と、物体は成功裏に滅菌される。滅菌剤の濃度が閾値を超えると(S6=はい)、ステップS7において、処置が完了し、滅菌剤がチャンバから除去される。一実施形態では、エチレンオキシドプロセスは、典型的には、630mg/Lの気相濃度で摂氏55度で実行される。したがって、一実施形態では、滅菌剤濃度の閾値は630mg/L以上であってもよく、したがって、滅菌剤濃度が630mg/L以上である場合、除去プロセスが実行される(例えば、滅菌剤がチャンバから除去される)。
【0035】
滅菌剤の濃度が閾値を超えない場合(S6=いいえ)、ステップS4において走査を継続する。
【0036】
当業者であれば、本教示が上述の本明細書で具体的に図示及び記載されたものに限定されない点を理解するであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、先行技術にはない上述の特徴の変形例及び改変例をも含むものである。
【0037】
洗浄区画室105は、ライト305及びセンサ315などの、任意の数及び検査装置の任意の組み合わせを備えておもよい、と理解されたい。洗浄区画室105内の衛生プロセス及び滅菌プロセスの両方について、複数の検査装置が医療器具の洗浄プロセスを補助する。複数の検査装置は、UVセンサ、熱追跡検出器、生物学的指標、化学試薬、及び湿度検出器などの、広範な種々のセンサ及び検査機構を含んでよい、と理解されている。
【0038】
提供される方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアへの実装を含む。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来型プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと関連する1つ若しくは2つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)回路、任意の他のタイプの集積回路(integrated circuit、IC)、及び/又は状態機械が挙げられる。このようなプロセッサは、処理されたハードウェア記述言語(hardware description language、HDL)命令及びネットリスト等の他の中間データ(このような命令は、コンピュータ可読媒体に格納することが可能である)の結果を用いて製造プロセスを構成することにより、製造することが可能である。そのような処理の結果は、次いで、本明細書で説明される方法を実施するプロセッサを製造するために半導体製造プロセスにおいて使用される、マスクワークとすることができる。
【0039】
本明細書に提供される方法又はフロー図は、汎用コンピュータ又はプロセッサによる実施のために非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実施することができる。非一時的コンピュータ可読記憶媒体の例としては、ROM、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、磁気媒体、例えば内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光学媒体、並びに光学媒体、例えば、CD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(DVD)が挙げられる。
【0040】
〔実施の態様〕
(1) 容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出のための方法であって、
前記容積内の物体の少なくとも1つの点上にカメラの焦点を合わせるステップと、
UV光及び滅菌剤を前記容積内に透過させるステップと、
前記カメラを使用して、前記物体の前記少なくとも1つの点を走査し、前記少なくとも1つの点における吸光度の量を決定するステップと、
決定された前記吸光度の量から、前記少なくとも1つの点のそれぞれに対する前記滅菌剤の濃度を算出するステップと、
前記濃度が閾値よりも大きい場合に、前記容積から前記滅菌剤を除去するステップと、を含む、方法。
(2) 前記走査するステップが、チャンバをボクセルのグリッドに分割するステップと、前記ボクセルを走査するステップと、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記算出するステップが、前記少なくとも1つの点における前記吸光度の量を測定することによって実行されている、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記吸光度の量が、前記滅菌剤の前記濃度に比例する、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記滅菌剤が過酸化水素である、実施態様1に記載の方法。
【0041】
(6) 前記閾値が630mg/Lである、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記カメラが立体カメラである、実施態様1に記載の方法。
(8) チャンバの容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出のためのシステムであって、
2つ以上のカメラと、
チャンバの容積と、
物体と、
プロセッサであって、
前記チャンバの前記容積内の前記物体の少なくとも1つの点上に前記カメラの焦点を合わせ、
UV光及び滅菌剤を前記容積内に透過させ、
前記カメラを使用して、前記物体の前記少なくとも1つの点を走査し、前記少なくとも1つの点における吸光度の量を決定し、
決定された前記吸光度の量から、前記少なくとも1つの点のそれぞれに対する前記滅菌剤の濃度を算出し、かつ
前記濃度が閾値よりも大きい場合に、前記容積から前記滅菌剤を除去するように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(9) 前記プロセッサが、前記チャンバをボクセルのグリッドに分割し、前記ボクセルを走査するように更に構成されている、実施態様8に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサが、前記少なくとも1つの点における前記吸光度の量を測定することによって前記算出を実行するように更に構成されている、実施態様8に記載のシステム。
【0042】
(11) 前記吸光度の量が、前記滅菌剤の前記濃度に比例する、実施態様8に記載のシステム。
(12) 前記滅菌剤が過酸化水素である、実施態様8記載のシステム。
(13) 前記閾値が630mg/Lである、実施態様8に記載のシステム。
(14) 前記カメラが立体カメラである、実施態様8に記載のシステム。
(15) チャンバの容積内の滅菌剤濃度及び散逸のUV検出のためのコンピュータソフトウェア製品であって、コンピュータプログラム命令が記憶されている非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含み、前記命令は、コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに、
前記容積内の物体の少なくとも1つの点上にカメラの焦点を合わせるステップと、
UV光及び滅菌剤を前記容積内に透過させるステップと、
前記カメラを使用して、前記物体の前記少なくとも1つの点を走査し、前記少なくとも1つの点における吸光度の量を決定するステップと、
決定された前記吸光度の量から、前記少なくとも1つの点のそれぞれに対する前記滅菌剤の濃度を算出するステップと、
前記濃度が閾値よりも大きい場合に、前記容積から前記滅菌剤を除去するステップと、を実行させる、コンピュータソフトウェア製品。
【0043】
(16) 前記走査するステップが、前記チャンバをボクセルのグリッドに分割するステップと、前記ボクセルを走査するステップと、を更に含む、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(17) 前記算出するステップが、前記少なくとも1つの点における前記吸光度の量を測定することによって実行されている、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(18) 前記吸光度の量が、前記滅菌剤の前記濃度に比例する、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(19) 前記カメラが立体カメラである、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(20) 前記閾値が630mg/Lである、実施態様15に記載のコンピュータソフトウェア製品。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5