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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】フレットナロータのための起伏用機構
(51)【国際特許分類】
   B63H 9/02 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B63H9/02
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020516957
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018064458
(87)【国際公開番号】W WO2018220174
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】17174379.2
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519427343
【氏名又は名称】アネモイ マリン テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ダンカン ストリングフェロー
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-519586(JP,A)
【文献】特表2015-533356(JP,A)
【文献】特表2014-516874(JP,A)
【文献】特開2008-63799(JP,A)
【文献】実開昭55-67236(JP,U)
【文献】特開昭56-108471(JP,A)
【文献】特開2001-37903(JP,A)
【文献】Dr. George Gougoulidis,“ENERGY-SAVINGS BASICS FOR THE MARITIME INDUSTRY RENEWABLE ENERGY”,ギリシャ,SNAME GREEK SECTION,2015年03月,pp.1-44
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 9/02,
F03D 3/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い部材を起立位置から倒伏位置まで倒伏させる方法において、前記細長い部材がフレットナロータ(100)のステータ(104)を含み:
前記細長い部材をベース(114)から分離し、前記細長い部材と前記ベースとの間に枢動軸(206)を含む枢動機構(206、304)を係合させることによって:
前記細長い部材と前記ベース(114)の間の第1の荷重経路に沿って荷重が担持されている第1のモードから:
前記細長い部材と前記ベース(114)の間の、前記枢動軸(206)を含む第2の荷重経路に沿って荷重が担持されている第2のモードへと:
前記細長い部材を移行させるステップと;
前記細長い部材が前記第2のモードにある状態で、前記枢動軸を中心として前記細長い部材を倒伏させるステップと;
を含む方法。
【請求項2】
前記細長い部材を前記ベース(114)から分離することが、前記細長い部材を前記ベースとの関係において持上げることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記持上げることが、持上げ用機構を用いて行なわれ、前記細長い部材と前記ベース(114)の間の一時的荷重経路を中に形成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
前記持上げ用機構を少なくとも部分的に格納することと、前記一時的荷重経路を除去することと、前記細長い部材を前記ベース(114)との関係において元の位置に倒伏させて前記枢動機構の係合および前記第2の荷重経路の形成を完成させることと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記枢動機構を係合することが、前記第2の荷重経路を完成させるための構成要素を挿入することを含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
細長い部材を倒伏位置から起立位置まで起立させる方法において、前記細長い部材がフレットナロータ(100)のステータ(104)を含み:
前記細長い部材とベース(114)の間の、枢動軸を含む第2の荷重経路に沿って荷重が担持されている第2のモードに前記細長い部材がある状態で、前記枢動軸を中心として前記細長い部材を起立させるステップと;
起立させられた時点で、前記細長い部材と前記ベース(114)の間にあり前記枢動軸(206)を格納する枢動機構(206、304)を係合解除し、その後前記細長い部材および前記ベースを統合することによって、前記細長い部材を前記第2のモードから、前記細長い部材と前記ベース(114)の間の第1の荷重経路に沿って荷重が担持されている第1のモードへと移行させるステップと;
を含む方法。
【請求項7】
前記第1のモードから前記第2のモードへおよびその逆への前記細長い部材の移行が、トラニオン機構によって達成される、及び/または、
前記細長い部材がさらに、フレットナロータ(100)のロータ(102)を含む、請求項1ないしのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
細長い部材の起伏用機構において:
フレットナロータ(100)のステータ(104)を含む細長い部材と;
ベース(114)と;
前記細長い部材と前記ベースの間の第1の荷重経路に沿って荷重が担持されている第1のモードと、前記細長い部材と前記ベースの間の枢動軸(206)を含む第2の荷重経路に沿って荷重が担持されている第2のモードとの間で前記細長い部材を移行させるための荷重移送機構とを含み、
前記荷重移送機構は、前記細長い部材を前記第1のモードから前記第2のモードへと移行させることが、前記細長い部材を前記ベースから分離し、その後、前記細長い部材と前記ベースとの間に、前記枢動軸(206)を含む枢動機構(206、304)を係合することを含むように、構成される、
起伏用機構。
【請求項9】
前記荷重移送機構が、
前記細長い部材に取付けられたトラニオンアクスル(206)と;
前記トラニオンアクスル(206)に対し回転可能な形で係合され前記ベース(114)と摺動可能な形で係合させられたトラニオン支持支柱(300)と;
を含むトラニオン機構を含む、請求項に記載の起伏用機構。
【請求項10】
前記トラニオン支持支柱(300)が、各々前記トラニオンアクスル(206)に対して回転可能な形で結合され前記ベース(114)に対し摺動可能な形で係合された第1のトラニオン支持支柱および第2のトラニオン支持支柱を含む、請求項9に記載の起伏用機構。
【請求項11】
前記トラニオンアクスル(206)が第1のトラニオンアクスルおよび第2のトラニオンアクスルを含み、前記第1のトラニオン支持支柱が前記第1のトラニオンアクスルに対して回転可能な形で結合され、前記第2のトラニオン支持支柱が前記第2のトラニオンアクスルに対して回転可能な形で結合されている、請求項10に記載の起伏用機構。
【請求項12】
前記トラニオン機構がさらに:
トラニオン支柱担持用ブロック(306)と;
トラニオン支持支柱(300)と前記ベース(114)の間に前記トラニオン支柱担持用ブロック(306)を挿入し、それらを通って前記第2の荷重経路を完成させるための機構と;
を含む、請求項9ないし11のいずれか1項に記載の起伏用機構。
【請求項13】
前記トラニオン支持支柱(300)と前記ベース(114)の間に前記トラニオン支柱担持用ブロック(306)を挿入するための前記機構が、複動式油圧シリンダ(308)を含む、請求項12に記載の起伏用機構。
【請求項14】
前記細長い部材と前記ベース(114)の間であって、かつ前記第1の荷重経路に沿って配置された、1つ以上の担持点(202)をさらに含む、及び/または、
前記細長い部材の前記第1のモードと前記第2のモードの間での移行を可能にする目的で前記ベース(114)から前記細長い部材を分離するように構成された持上げ用機構をさらに含む、請求項ないし13のいずれか1項に記載の起伏用機構。
【請求項15】
前記持上げ用機構が1つ以上のジャッキ(602)を含む、請求項14に記載の起伏用機構。
【請求項16】
前記細長い部材と前記ベース(114)の間に結合され、前記第2のモードにあるときに前記細長い部材を起立および/または倒伏させるように構成された起動用機構をさらに含む、請求項ないし15のいずれか1項に記載の起伏用機構。
【請求項17】
前記起動用機構が起動用ラムおよび巻上げ用機構の一方または両方である、請求項16に記載の起伏用機構。
【請求項18】
前記起動用機構が、1つ以上のクランク状タイ(504)を介して前記細長い部材に結合されている、請求項16または17に記載の起伏用機構。
【請求項19】
前記起動用機構は、前記細長い部材が倒伏位置にあるときに格納状態にある起動用ラムを含む、請求項18に記載の起伏用機構。
【請求項20】
前記ベース(114)に対して前記細長い部材を固定するように構成された押下機構をさらに含む、請求項ないし19のいずれか1項に記載の起伏用機構。
【請求項21】
前記押下機構が、前記細長い部材と前記ベース(114)の間に結合された、つ以上の固縛手段を含む、請求項20に記載の起伏用機構。
【請求項22】
前記ベース(114)が甲板に固定されているかまたは甲板と一体化して形成されている、請求項ないし21のいずれか1項に記載の起伏用機構。
【請求項23】
前記細長い部材がさらにフレットナロータ(100)のロータ(102)を含む、請求項ないし22のいずれか1項に記載の起伏用機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ただし非限定的に、フレットナロータに関し、詳細にはフレットナロータのための起伏用機構に関する。
【背景技術】
【0002】
マグヌスロータとしても知られるフレットナロータは、水上輸送船舶上で推進のために使用され得る。このようなロータは、船舶の推進のためにマグヌス効果を使用する。
【0003】
フレットナロータは概して使用中、水上輸送船舶の甲板上に直立して設置される。典型的には、フレットナロータは、ステータの周りに配置された円筒形管の形をした外側ロータ本体を含み、このロータは、通常ステータの頂端部に向かう上位軸受および多くの場合およそその中間点にあるステータのさらに下にある下位軸受を含む回転可能な継手を介してステータに結合されている。ステータは典型的には、それ自体船舶の甲板に連結されているベースに連結される。ロータはステータよりも長く、ステータの上方に突出していてよく、こうして、上位軸受は、ロータの高さのおよそ中間点に来ることができる。
【0004】
水上輸送船舶に適合したフレットナロータの場合、ロータは、その垂直軸を中心にして回転させられ、周囲の空気流が回転するロータ上を移動するにつれて、ロータの回転する本体と空気の間の相対運動が空気中に圧力差を発生させる。空気流内へ回転するロータの側は、ロータの表面によってひき起こされる抗力の結果として局所的に空気流を遅延させ、一方、空気流から離れるように回転するロータの側は、空気流を局所的に加速させる。このとき、ロータの空気流内へと回転している側には高圧領域が発生し、ロータの空気流から離れるように回転している側には低圧領域が発生する。したがって、ロータの低圧領域の方向の力が生成される。この力は船舶に移送される。この力は船舶の推進を補助することができる。多数のフレットナロータを単一の船舶上で併用することが可能である。
【0005】
フレットナロータの今日の利用分野は、貨物船などの大型船舶上におけるものである。フレットナロータは、航行中一次推進システム上の負荷を軽減する目的で船舶の一次推進システムと併せて使用される。これにより、特に好適な風条件の下での長距離の航程について、著しい燃料の節約をもたらすことができる。フレットナロータは、一次推進システムに比べてより高効率の船舶推進手段であり得、したがってフレットナロータが備わった船舶の環境への影響は、これが装備されていない船舶に比べ著しく削減され得る。
【0006】
フレットナロータが使用されていない場合、航行中にこのフレットナロータが組付けられる船舶が受ける抗力の全体的増大がもたらされる可能性がある。荒れたまたは暴風雨の条件下では、直接的風の力からおよび船舶の動きの増大の結果という両方の原因でフレットナロータは著しい力を受ける可能性があり、それがロータおよび船舶の損傷を導く可能性がある。
【0007】
さらに、フレットナロータの寸法は、船舶の高さを著しく増大させ得るものであり、このことは、例えば入港時および船舶から貨物を荷積みおよび/または荷卸しする場合に問題をひき起こす可能性がある。1つ以上のフレットナロータが船舶に装備されている場合には、ロータのサイズおよび船舶の甲板上のその場所に起因して、船舶が港湾に停泊している間に問題が発生する可能性がある。フレットナロータは、クレーンおよび荷積みおよび陸揚げ用および他の機械類が船舶の甲板にアクセスするのを妨害し得る。これにより、船舶の荷積みおよび荷卸しの遅延がひき起こされるかまたは、いくつかの事例では荷積み及び荷降しが妨げられる可能性があり、これは同様に危険でもあり得る。
【0008】
したがって、船舶へのアクセスが妨害されるという欠点無く、上述の燃料節約のメリットを提供するため、船舶の甲板上でフレットナロータを使用できるようにする手段を提供する必要性が存在する。
【0009】
したがって、荷役機器のためのクリアランスを増大させるため、使用されていないときにはフレットナロータを保管または収納しておくことが好ましい。
【0010】
特許文献1(国際公開第2013/110695号)は、垂直に組付けられた作動状態からフレットナロータを、非作動状態で船舶の甲板に向かって移動させるための装置について記載している。ロータは、甲板にヒンジ式に連結され、ヒンジの周りでロータを枢動させることによってロータを倒すために油圧式拡張甲板38を使用することができ、再びロータを立てるためにはロープおよび滑車システムを使用することができる。
【0011】
このような起伏用システムは、ロータそしてロータが組付けられる船舶の動きによって生成される力のサイズに制限がある比較的小さいフレットナロータの場合に使用するために好適であり得るものの、ロータとベースの間のヒンジ式の連結は、起伏用機構の弱点部であり、ロータおよび船舶の動きにより生成される力はここに集中する。
【0012】
フレットナロータがその起立位置にあるとき、フレットナロータの長さおよび質量の増加に起因する大きな力を受ける可能性のある油圧式拡張機構についても、同様のことが言える。
【0013】
特許文献2(英国特許出願公開第2187154号明細書)は、組付けられる船舶の甲板のウェル内に入れ子式に格納可能なフレットナロータについて記載している。このような設計は、甲板下の体積の減少を導き、その結果、このようなシステムを用いる船の貨物容量が削減されることになる。さらに、複雑な作動機構は、それが設置されることになる船の有意な構造的改変を必要とする。したがって、このようなシステムを船に組み込むことは困難でかつ費用がかかる。その上、このようなシステムを設置するにあたっては、船の露天甲板を貫通する必要があり、これは冠水の危険性を増大させる原因となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2013/110695号
【文献】英国特許出願公開第2187154号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、既存の起伏用機構の設計における上述の欠点を克服するフレットナロータのための改良型の起伏用機構に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によると、細長い部材を起立位置から倒伏位置まで倒伏させる方法において、細長い部材がフレットナロータのステータを含み:細長い部材をベースから分離し、間に枢動機構を係合させることによって:細長い部材とベースの間の第1の荷重経路に沿って荷重が担持されている第1のモードから:細長い部材とベースの間の枢動軸を含む第2の荷重経路に沿って荷重が担持されている第2のモードへと:細長い部材を移行させるステップと、細長い部材が第2のモードにある状態で、枢動軸を中心として細長い部材を倒伏させるステップとを含む方法が提供されている。
【0017】
このような方法によると、弱点として作用することが考えられる枢動軸が荷重経路内に全く存在しないことからフレットナロータが作動している場合に好適である第1のモードにおいて、フレットナロータのステータは安全な位置に保たれる。フレットナロータのステータを倒伏させるためには、結び付けられた第2の荷重経路が枢動軸を含む第2のモードへと移行させられる。
【0018】
好ましくは、細長い部材をベースから分離するステップは、細長い部材をベースとの関係において持上げるステップを含む。
【0019】
好ましくは、持上げステップは、持上げ用機構を用いて行なわれ、細長い部材とベースの間の一時的荷重経路を中に形成する。
【0020】
好ましくは、該方法は、持上げ用機構を少なくとも部分的に格納するステップと、一時的荷重経路を除去するステップと、細長い部材をベースとの関係において元の位置に降下させて枢動機構の係合および第2の荷重経路の形成を完成させるステップと、をさらに含む。
【0021】
好ましくは、枢動機構を係合するステップは、第2の荷重経路を完成させるための構成要素を挿入するステップを含む。
【0022】
本発明の第2の態様によると、細長い部材を倒伏位置から起立位置まで起立させる方法において、細長い部材がフレットナロータのステータを含み:細長い部材とベースの間の枢動軸を含む第2の荷重経路に沿って荷重が担持されている第2のモードに細長い部材がある状態で、枢動軸を中心として細長い部材を起立させるステップと;起立させられた時点で、細長い部材とベースの間にある枢動軸を格納する枢動機構を係合解除し細長い部材およびベースを統合することによって、細長い部材を第2のモードから、細長い部材とベースの間の第1の荷重経路に沿って荷重が担持されている第1のモードへと移行させるステップと;を含む方法が提供されている。
【0023】
好ましくは、枢動機構を係合解除するステップは、第2の荷重経路を遮断するために構成要素を除去するステップを含んでいる。
【0024】
好ましくは、細長い部材およびベースを統合するステップは、ベースとの関係において細長い部材を降下させるステップを含む。
【0025】
好ましくは、降下ステップは、最初に細長い部材とベース間の一時的荷重経路を中に作り出すため細長い部材をベースとの関係において持上げ次に降下させる持上げ用機構を介して行なわれる。
【0026】
好ましくは、枢動機構を係合解除するステップは、持上げ用機構を用いて細長い部材をベースとの関係において持上げるステップを含む。
【0027】
好ましくは、第1のモードから第2のモードへおよびその逆への細長い部材の移行は、トラニオン機構によって達成される。
【0028】
好ましくは、細長い部材はさらに、フレットナロータのロータを含む。
【0029】
本発明の第3の態様によると、細長い部材の起伏用機構において:フレットナロータのステータを含む細長い部材と;ベースと;細長い部材とベースの間の第1の荷重経路に沿って荷重が担持されている第1のモードと細長い部材とベースの間の枢動軸を含む第2の荷重経路に沿って荷重が担持されている第2のモードの間で細長い部材を移行させるための荷重移送機構とをふくむ機構が提供されている。
【0030】
有利には、該機構は、弱点として作用することが考えられる枢動軸が荷重経路内に全く存在しないことからフレットナロータが作動している場合に好適である第1のモードにおいて、フレットナロータのステータを安全な位置に保つ。フレットナロータのステータを倒伏および起立させるためには、結び付けられた第2の荷重経路が枢動軸を含む第2のモードへと移行させられる。
【0031】
有利には、上述の機構および方法は、フレットナロータを、安全、迅速かつ効率良く起立させ倒伏させることを可能にする。このことは、橋梁または送電線などの障害物の下を航行しなければならない船舶(すなわち、船舶が安全に通過するための障害物の下のクリアランスが制限されている場合)にとって極めて有益である。このような船舶としては一般に、その耐用期間中橋梁下および運河を頻繁に通過することが求められる場合のあるフェリー、クルーズ船およびコンテナ船が含まれる。
【0032】
好ましくは、荷重移送機構は:細長い部材に取付けられたトラニオンアクスルと;トラニオンアクスルに対し回転可能な形で係合されベースと摺動可能な形で係合させられたトラニオン支持支柱と;を含むトラニオン機構を含む。
【0033】
好ましくは、トラニオン支持支柱は、各々トラニオンアクスルに対して回転可能な形で結合されベースに対し摺動可能な形で係合された第1のトラニオン支持支柱および第2のトラニオン支持支柱を含む。
【0034】
好ましくは、トラニオンアクスルは第1のトラニオンアクスルおよび第2のトラニオンアクスルを含み、第1のトラニオン支持支柱は第1のトラニオンアクスルに対して回転可能な形で結合され、第2のトラニオン支持支柱は第2のトラニオンアクスルに対して回転可能な形で結合されている。
【0035】
好ましくは、トラニオン機構はさらに:トラニオン支柱担持用ブロックと;トラニオン支柱とベースの間にトラニオン支柱担持用ブロックを挿入し、それらを通って第2の荷重経路を完成させるための機構と;を含む。
【0036】
好ましくは、トラニオン支柱とベースの間にトラニオン支柱担持用ブロックを挿入するための機構は、複動式油圧シリンダを含む。
【0037】
好ましくは、起伏用機構は、細長い部材とベースの間および第1の荷重経路に沿って配置された1つ以上の担持点をさらに含む。
【0038】
好ましくは、起伏用機構は、細長い部材の第1のモードと第2のモードの間での移行を可能にする目的でベースから細長い部材を分離するように構成された持上げ用機構をさらに含む。
【0039】
好ましくは、持上げ用機構は1つ以上のジャッキを含む。
【0040】
好ましくは、起伏用機構は、細長い部材とベースの間に結合され、第2のモードにあるときに細長い部材を起立および/または倒伏させるように構成された起動用機構をさらに含み、好ましくは、起動用機構は起動用ラムおよび巻上げ用機構の一方または両方である。
【0041】
好ましくは、起動用機構は、1つ以上のクランク状タイを介して細長い部材に結合されている。
【0042】
好ましくは、起動用機構は、細長い部材が倒伏位置にあるときに格納状態にある起動用ラムを含む。
【0043】
好ましくは、起伏用機構は、ベースに対して細長い部材を固定するように構成された押下機構をさらに含む。
【0044】
好ましくは、押下機構は、細長い部材とベースの間に結合された、例えばターンバックルなどの1つ以上の固縛手段を含む。
【0045】
好ましくは、ベースは甲板に固定されているかまたは甲板と一体化して形成されている。
【0046】
好ましくは、細長い部材はさらにフレットナロータのロータを含む。
【0047】
ここで、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら、単なる一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】フレットナロータを概略的に描いている。
図2a】フレットナロータを起立位置で示す。
図2b図2aで示されたフレットナロータのペデスタルとベースのクローズアップを示す。
図3a】フレットナロータが第1のモードにある場合のトラニオン支持体を示す。
図3b】フレットナロータが第1のモードと第2のモードの間の遷移途中にある場合のトラニオン支持体を示す。
図3c】フレットナロータが第2のモードにある場合のトラニオン支持体を示す。
図4】第2のモードにあるフレットナロータを描いている。
図5a図4に示されているスライドビーム、主油圧シリンダ、第1のスライドおよび第2のスライドを描いている。
図5b】巻上げ用機構が油圧シリンダに代って第2のスライドに取付けられている図5aに描かれたものの代替的配設を描いている。
図6a-6d】起立および倒伏プロセス中のさまざまな点におけるフレットナロータを示す。
図7a-7b】起立および倒伏プロセスに関与するステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、(内部にある要素が見えるように透けた状態で示されている)ロータ102、ステータ104、ペデスタル106、上位軸受108および下位軸受110を含むフレットナロータ100を概略的に描いている。当該技術分野において公知であるように、ロータは、空力特性を改善するため頂部ディスク112で蓋がされていてよい。頂部ディスク112は、典型的に、ロータ102の直径の2倍の直径を有していてよい。ロータ102はさらに、追加のディスクまたは、空力的強化のための他の特徴を含んでいてよい。
【0050】
ロータ102はステータ104の周りに配置され、上位軸受108および下位軸受110を介してステータに対し回転可能な形で結合されている。ステータ104の基端部は、ペデスタル106上に載り、このペデスタルに固定されており、ロータ102の下端部はペデスタル106の内部に載っている。ペデスタル106は、ベース114の頂部に載っている。下位軸受110は、その基端部においてロータの半径方向の動きを抑えている。
【0051】
図2aは、起立位置にあるフレットナロータ100を示しており、ここでロータ102は、ステータ104および上位軸受108を顕示するために除去されている。
【0052】
図2bは、図2aに示されているフレットナロータ100のペデスタル106とベース114のクローズアップを示す。隅軸受202の形をした担持点が、ペデスタル106の各隅においてペデスタル106とベース114の間に配置されている。ロータ102、ステータ104およびペデスタル106の重量は、ロータ100に作用するあらゆる力(例えば風および/またはマグヌス効果に起因するもの)と共に、隅軸受202を通ってベース114へと移送される。
【0053】
この起立位置において、かつ第1のモードで、荷重(ステータ104およびペデスタル106の荷重)は、隅軸受202を介してペデスタル106とベース114の間の第1の荷重経路に沿って担持される。
【0054】
フレットナロータ100は、ペデスタル106の各隅でペデスタル106とベース114の間に配置され、フレットナロータ100が起立位置および第1のモードにあるときペデスタル106およびステータ104をベース114に固定するように作用する押下機構(この例示された実施形態中ではターンバックルを含むが、固縛手段または他の好適な固定用機構を使用してもよい)を含む。したがって、フレットナロータ100が起立位置かつ第1のモードにある場合、それはベース114に対ししっかりと組付けられる。
【0055】
図2bは同様に、ペデスタル106上に配置されたトラニオンアクスル206も示している。第2のトラニオンアクスル206が、ペデスタル106の反対側に配置されている(図2bには見えない)。トラニオンアクスル206は、ペデスタル106に対して固定的に連結されるかまたはペデスタル106と一体化して形成されてよい。トラニオンアクスル206は、以下でより完全に説明するように、フレットナロータ100が第2のモードにあるときペデスタル106およびロータ104がそれを中心として枢動する軸を画定する。代替的配設においては、ペデスタル106とステータ104がそれを中心として枢動する軸を画定するように、ペデスタル106を通って走る単一のトラニオンアクスルが提供されてよい。
【0056】
トラニオンアクスルにより画定される枢動軸は、ステータ104およびペデスタル106の重心から水平方向にオフセットされ得る。これは、ステータ104およびペデスタル106が自重により倒伏する傾向を有することを保証するためである。有利にもこのことはすなわち、ステータ104およびペデスタル106が、必要な場合には力を介することなく倒伏され得ること、そして図4に描かれ以下でさらに詳述する主油圧シリンダ404がつねに圧縮状態にあることを意味する。
【0057】
図3a、3bおよび3cは、第1のモードと第2のモードの間の遷移のさまざまな段階におけるトラニオン支持体を示す。フレットナロータ100は2つのトラニオン支持体300を含み、各トラニオンアクスル206に1つずつ結合されている。トラニオン支持体300は、トラニオン支柱304と担持用ブロック306を収容するトラニオンフレーム302を含む。担持用ブロック306は、それがトラニオン支柱304の下側に配置されている拡張位置(図3cに示す)と、トラニオン支柱304に隣接して配置されている格納位置(図3aおよび3bに示す)との間で担持用ブロック306を移動させるように構成された複動式油圧シリンダ308に結合されている。
【0058】
トラニオンフレーム302の底端部は、例えばボルト連結、溶接またはそれらの組合せによってベース114にしっかりと固定されている。トラニオン支柱304は、トラニオンフレーム302の内部を垂直方向に移動可能であり、トラニオン支柱304の水平方向の動きはガイド303により拘束される。トラニオン支柱304は、結び付けられたトラニオンアクスル206に対して回転可能な形で結合されるように構成されているアパーチャ310を含む。
【0059】
図3aは、フレットナロータ100が第1のモードにある場合のトラニオン支持体300を示す。担持用ブロック306は、その格納位置でトラニオン支柱304の側面にあり、複動式油圧シリンダ308はその格納位置にある。ロータ102、ステータ104およびペデスタル106の荷重は、隅軸受202により担持される。
【0060】
ベース114との関係においてペデスタル106を上昇させると、それ自体ペデスタル106に結合されているトラニオンアクスル206の1つにトラニオン支柱304が結合されているため、トラニオンフレーム302内部でトラニオン支柱304が上昇することになる。ペデスタル106は、(図6bに示された)ベース114の内部に収納された4つのコーナージャッキ602により上昇および下降させられて、ロータ102、ステータ104およびペデスタル106とベース114の間に一時的荷重経路を形成することができる。
【0061】
第1のモードと第2のモードの間で遷移するとき、ペデスタル106およびトラニオン支柱304は、コーナージャッキ602により、トラニオン支柱304の下位面が担持用ブロック306の上位面より上に上昇している点まで上昇させられ、こうして、遷移が第1のモードから出るものであるかまたは第1のモードへ入るものであるかに応じて、担持用ブロック306をトラニオン支柱304の下側に摺動させるかまたは、そこから除去することが可能になっている。
【0062】
図3bは、ペデスタル106およびトラニオン支柱304が完全に上昇させられている上述の段階においてフレットナロータ100が第1のモードと第2のモードの間の遷移の途中にある場合のトラニオン支持体300を示す。担持用ブロック306は、その格納位置においてトラニオン支柱304の側面にあり、トラニオン支柱304は、その下位面が担持用ブロック306の上方に来るような形でトラニオンフレーム302の内部で上昇させられている。
【0063】
第2のモードへと移行するためには、担持用ブロック306はトラニオン支柱304の下側を摺動させられ、ペデスタル106は4つのコーナージャッキ602により下降させられ、トラニオン支柱304は、担持用ブロック306上へと下降させられ、こうしてロータ102、ステータ104およびペデスタル106の重量は、トラニオンアクスル206、トラニオン支柱304、担持用ブロック306およびベース114の間の第2の荷重経路に沿って担持されるようになっている。この時点で、フレットナロータ100は第2のモードにある(図3cに示されている通り)。
【0064】
図3cは、フレットナロータ100が第2のモードにある場合のトラニオン支持体300を示す。担持用ブロック306はトラニオン支柱304の下側のその拡張位置にあり、複動式油圧シリンダ308もその拡張位置にある。
【0065】
図4は、ロータ102、ステータ104およびペデスタル106の荷重が第2の荷重経路に沿って担持されている第2のモードにあるフレットナロータ100を描いている。図4には、第1のトラニオン支持体300のみが完全に見えている。
【0066】
この構成において、ペデスタル106と同様それに取付けられたステータ104およびロータ102も、トラニオンアクスル206とそれに結び付けられたトラニオン支柱304との間の回転可能な結合により画定される枢動軸を中心として回転可能である。
【0067】
2つのスライドビーム402は、ベース114の内部に配置されている。スライドビームは、フレットナロータ100を起立させ倒伏させるために起動可能な主油圧シリンダ404として描かれている起動用ラムを収容する。スライドビーム402は、フレットナロータ100が第2のモードにある場合、起伏用機構の載荷部分を形成する。
【0068】
主油圧シリンダ404は、第2のスライド408に取付けられた巻上げ用機構などの、任意の好適な起動用ラムまたは起動用手段で置換され得る。これは、トラニオンアクスル206をステータ104の重心から水平方向にオフセットさせることができ、こうしてステータ104およびペデスタル106がつねにその自重により倒伏する傾向を有し、その結果としてウインチラインがつねに緊張状態にあることが保証されるという上述の事実によって可能となる。
【0069】
主油圧シリンダ404は、スライドビーム402と摺動可能な形で係合されている第1のスライド406および第2のスライド408を介してスライドビーム402に連結される。
【0070】
図5aは、図4に示されたスライドビーム402、主油圧シリンダ404、第1のスライド406および第2のスライド408を描いている。第1および第2のスライド406および408は、スライドビーム402内に形成されたフランジおよび/またはウェブを用いて、スライドビーム402によって垂直方向に拘束されて、スライド406および408がスライドビーム402との関係において持上げられるのを防いでいる。
【0071】
第1のスライド406は、主油圧シリンダ404のシリンダバレルを収容するための開口部を含む。第1のスライド406は、第1のスライド406内部に配置された主シリンダ中間トラニオン配設(図示せず)を介してシリンダバレル506に回転可能な形で結合されている。第1のスライド406とシリンダバレル506の間の他の連結も可能である。
【0072】
スライドビーム402は各々、第1のスライド406と係合し、第2のスライド408から離れる方向での第1のスライド406の水平方向の動きを防止するように構成されたエンドストッパ502を含む。例えば主油圧シリンダ404が「休止」している、すなわちフレットナロータ100が起立させられ第1のモードにあり完全に格納される時に、第2のスライド408に向かう方向でエンドストッパ502から離れるように第1のスライド406を移動させることができる。
【0073】
第2のスライド408は、第1のスライド406が結合されている主油圧シリンダ404の端部とは反対側である主油圧シリンダ404のピストンロッド508の端部に結合される。2つのクランク状タイ504は、それらが第2のスライド408を介して主油圧シリンダ404の端部に結合されるような形で、第2のスライド408に結合される。
【0074】
クランク状タイ504は、一方の端部で第2のスライド408に回転可能な形で結合され、他方の端部でペデスタル106の下側に回転可能な形で結合されている。例えば、クランク状タイ504は、第2のスライド408およびペデスタルの上にそれぞれ配置されたピンプレート(図示せず)にピン留めされることによって第2のスライド408とペデスタル106に対して回転可能な形で結合され得る。
【0075】
主油圧シリンダ404の起動は、クランク状タイ504を介してペデスタル106に伝達される。
【0076】
主油圧シリンダ404は、クランク状タイ504を介してトラニオンアクスル206の軸の周りにモーメントを提供する。主油圧シリンダ404およびクランク状タイ504は、ペデスタル106の下側に結合されたクランク状タイ504の端部がたどる運動経路が、フレットナロータ100が上昇させられた場合にトラニオン支持体300に対するレバレッジが最小であり(抵抗すべき最低のモーメント)、フレットナロータ100が倒伏された場合に最大となる(抵抗すべき最大のモーメント)ようなものであるように、幾何学的に配設されている。換言すると、第2のスライド408に結合されたクランク状タイ504の端部は、フレットナロータ100の起立および倒伏中、直線経路をたどり、一方ペデスタル106の下側に結合されたクランク状タイ504の端部は曲線経路をたどる。これにより主油圧シリンダ404上の荷重は、フレットナロータ100の運動の範囲全体にわたりそれを恒常に保つことによって制限される。
【0077】
クランク状タイ504の形状は複雑であり、多くの要件によって制約を受ける。クランク状タイ504は、その全運動範囲を通してペデスタル106と衝突してはならず、同様に、クランク状タイ504が内部に配置されているベース114が上に据え付けられる表面とクランク状タイ504の間のクリアランスも維持されなければならない。クランク状タイ504は、これらの要件を満たすように整形される。
【0078】
図5bは、巻上げ用機構510が油圧シリンダ404の代りに第2のスライド408に取付けられている代替的配設を描いている。この配設は、実質的に図5bで描かれているものと同じ形で作動するが、第2のスライド408を介したクランク状タイ504の起動が巻上げ用機構510によるものであるという点が異なる。
【0079】
巻上げ用機構510は、2つの起動用手段を有する配設を提供するために追加の起動用手段として図5aに描かれている配設内の油圧シリンダ404と併用することも同じく可能である。有利には、一方の起動用手段は、他方の起動用手段に対するフェイルセーフとして作用し得る。
【0080】
フレットナロータ100の起立および倒伏に関与するステップについて、ここで、起立および倒伏プロセス中のさまざまな点におけるフレットナロータ100を示す図6a~6bならびに起立および倒伏プロセス中に関与するステップを示す流れ図である図7aおよび7bを参照して、詳細に説明する。
【0081】
図6aは、4つの隅軸受202を介してベース114に対しステータ104およびペデスタル106の荷重が伝達される第1のモードにあるフレットナロータ100を示す。ペデスタル106はさらに、押下機構204を介してベース114に固定される。図6aに示されていないのは、ロータ102、トラニオン支持体300および主油圧シリンダ404である。
【0082】
図6bは、押下機構204が解放されペデスタル106およびステータ104がコーナージャッキ602によりベースとの関係において上昇させられてロータ102、ステータ104およびペデスタル106とベース114の間に一時的荷重経路を形成しているフレットナロータ100を示す。コーナージャッキは、ベース114から離れるように、ステータ104およびロータ102を含めペデスタル106全体を持上げることができる。これにより、ペデスタル106、ステータ104およびロータ102の重量を、隅軸受204からトラニオンアクスル206上に移送することが可能になる。
【0083】
図6bではコーナージャッキ602が示されているものの、ペデスタル106を、任意の好適な手段によって上昇させてよい。例えば、起動用ラムを使用してもよい。同様に、コーナージャッキ602をペデスタルの隅に設置する必要もない。ペデスタル106を上昇させるためには単一のジャッキまたは任意の好適なジャッキ構成を具備することができる。
【0084】
コーナージャッキ602によるペデスタル106の上昇は、トラニオンフレーム302との関係においてトラニオンアクスル206を上昇させる効果を有する。これにより今度は、フレームの内部でトラニオンアクスル206に結合されているトラニオン支柱304が上昇させられる。コーナージャッキ602は、担持用ブロック306をトラニオン支柱304の下側に挿入できるようになる程度までトラニオンフレーム302内部でトラニオン支柱を上昇させる。したがって、コーナージャッキ602を格納することによりペデスタル106を下降させた時点で、ペデスタル106の重量は、トラニオンアクスル206を介してトラニオン支柱304および担持用ブロック306によってと同様、クランク状タイ504、スライド406および408、スライドビーム402および主シリンダ404によって担持される。これは、図6cに示されているフレットナロータ100の第2のモードである。
【0085】
フレットナロータ100は、第2のモードにある場合、トラニオンアクスル206とトラニオン支柱304の間の回転可能な結合によりトラニオンアクスル206の軸を中心として枢動可能である。クランク状タイ504を介してペデスタル106に結合された主油圧シリンダ404の起動により、フレットナロータ100を起立および/または倒伏させることができる。
【0086】
フレットナロータ100が起立位置かつ第2のモードにある場合(図6cに示されている通り)、主油圧シリンダ404は、拡張位置にある。主油圧シリンダ404を格納すると、第2のスライド408は第1のスライド406に向かって移動し、その動きはエンドストッパ502により阻止される。これによりクランク状タイ504も第1のスライド406に向かって移動させられ、こうしてペデスタル106は、トラニオンアクスル206を中心にして枢動させられ、これがフレットナロータ100を図6dに示された位置まで倒伏させる。
【0087】
甲板に恒常的にまたは一時的に固定されているクラッチ構造(図示せず)を使用して、倒伏位置にある場合にロータ102を支持することができ、こうしてロータを固定し、主油圧シリンダ404から荷重を解放することが可能になる。
【0088】
図6dに描かれた倒伏位置において、ステータ104の下側およびステータ104に取付けられた場合のロータ102は、ベース114が上に取付けられている船の甲板の上方で既定の距離のところに位置する。有利にも、ステータ104およびロータ102は、甲板レベルでのいかなる作業をも妨げないように、船の甲板に近付かないようになっている。ベース114およびフレットナロータ100の構成要素の寸法は、フレットナロータ100が倒伏位置にある場合に甲板からステータ104の下側およびロータ102までの所望の距離を提供するように構成され得る、ということが理解される。
【0089】
図6dに示された位置からフレットナロータ100を起立させるためには、主油圧シリンダ404が起動させられる。フレットナロータ100は第2のモードにあることから、油圧シリンダ404を起動させることで、フレットナロータ100は図6cに示された位置まで起立する。
【0090】
フレットナロータ100がひとたび図6cに示された完全に起立した位置になった時点で、第2のモードから第1のモードへの移行が行なわれる。ペデスタル106は、コーナージャッキ302によりベース114との関係において図6bに示された位置まで上昇させられる。以上で詳述した通り、ペデスタル106を上昇させることでトラニオン支柱304は上昇し、これにより担持用ブロックをトラニオン支柱304の下側から格納させることが可能になる。こうして、ペデスタル106は、コーナージャッキ602を格納することによって下降させられた時に、図6aに示されているように、隅軸受202上へと下降させられる。
【0091】
隅軸受202上にひとたび下降させられると、押下機構を係合させることができる。すなわち、ターンバックル204を用いてペデスタル106およびステータ104をベース114に固定することができる。
【0092】
図7aは、フレットナロータ100の倒伏に関与するステップを示す流れ図である。
【0093】
第1のステップ701は、主油圧シリンダ404をその休止位置から拡張させるという任意のステップである。主油圧シリンダ404は、フレットナロータ100がその倒伏位置にあるとき完全に格納されており、同様にひとたびフレットナロータ100が起立させられかつ主油圧シリンダ404を「休止」させるために第1のモードにある時点でも完全に格納され得る。主油圧シリンダ404を休止状態する、すなわち完全に格納させると、ピストンロッド508はシリンダバレル506内部に収納され、主油圧シリンダ404に対する損傷または腐食の尤度は低減される。実際、海上航行状態では、システム内の全ての油圧シリンダを格納することができる。これにより、バッフルまたは他の保護機構の必要性は無くなる。
【0094】
ステップ702で、押下機構204は解放される。押下機構がペデスタル106とベース114の間に配置された1つ以上のターンバックルを含む場合、ステップ702にはこれらのターンバックルの解放ステップが含まれる。
【0095】
ステップ703で、コーナージャッキ602は、ジャッキ602を通る一時的荷重経路を介してベース114との関係においてペデスタル106を上昇させるために、同時に付勢される。
【0096】
ステップ704で、複動式油圧シリンダ308は、トラニオン支柱304の下側に担持用ブロック306を摺動させて、トラニオン支柱を所定の位置に係止する。
【0097】
ステップ705で、コーナージャッキ602は格納され、ペデスタルの重量をトラニオンアクスル206を介してトラニオン支持体300に移送する。
【0098】
ステップ706で、フレットナロータ100は主油圧シリンダ404の起動を通して倒伏させられる。例えば、主油圧シリンダ404は格納されてよい。
【0099】
倒伏作業の終りにおける速度は、クランク状タイ504の上述の幾何形状の結果として低下する。フレットナロータ100が主油圧シリンダ404の動きにより一定速度で倒伏させられていることから、フレットナロータ100の角回転速度は、クランク状タイ504のレバレッジの長さが増大するにつれて減少する。
【0100】
ステップ707で、クラッチが存在する場合、フレットナロータ100は任意に、倒伏作業の終りでクラッチ上に位置するバッファと接触する。
【0101】
ステップ708で、クラッチが存在する場合、フレットナロータ100は任意にクラッチに固定される。
【0102】
図7bは、倒伏位置からフレットナロータ100を起立させることに関与するステップの概要を示している。
【0103】
ステップ09で、クラッチが存在する場合、ロータ100は任意にクラッチから解放される。
【0104】
ステップ710で、主油圧シリンダ404は、フレットナロータ100を起立させるように起動される。例えば、主油圧シリンダ404は拡張され得る。
【0105】
ステップ711で、ペデスタル106は、位置付け補助具として作用するトラニオンフレーム302上に組付けられた受け座と接触する。
【0106】
ステップ712で、コーナージャッキ602は、トラニオン支持体300からペデスタル106の荷重を受ける目的でベース114との関係においてペデスタル106を持上げるべく付勢される。
【0107】
ステップ713で、複動式油圧シリンダ308は、トラニオン支柱304がトラニオンフレーム302内部を垂直方向下向きに自由に移動するような形でトラニオン支柱304の下側から担持用ブロック306を格納する。
【0108】
ステップ714で、コーナージャッキ602は、ペデスタル106を隅軸受202上に下降させるような形で格納される。
【0109】
ステップ715で、押下機構204は、ベース114に対しペデスタル106を固定するために係合される。
【0110】
本明細書に記載の実施形態は、フレットナロータ100の構成要素がその上で移動するペデスタル106およびベース114に関連するものであるが、本明細書中で実質的に説明されているものと全く同じ起伏用機構を他の構造で使用することもできるということが理解される。フレットナロータ100の構成要素、すなわちロータ102、ステータ104、上位軸受108、下位軸受110および頂部ディスク112は、多くの他の構造で置換可能であると考えられる。
【0111】
例えば、フレットナロータ100の以上で概略説明した構成要素の代りに、風力タービン、旗竿、アンテナまたは他のこのような細長い部材をペデスタル106に結合し、上述の機構およびプロセスにより起立または倒伏させることができると考えられる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図7a-7b】