IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンフォード ヘルスの特許一覧

特許7191946バイラテラル(両側方向)カテーテルシステム及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】バイラテラル(両側方向)カテーテルシステム及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
A61M25/00
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2020517548
(86)(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018054128
(87)【国際公開番号】W WO2019070828
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】62/567,264
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515223112
【氏名又は名称】サンフォード ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,パトリック,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ワスダイク,ジェエル,エム.
(72)【発明者】
【氏名】マッゴーワン,ロジャー,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ハバーコスト,パトリック,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィードマン,アレックス,ジェームズ
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0303321(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0245882(US,A1)
【文献】特表平10-510178(JP,A)
【文献】特開2013-056247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管腔を規定する第1管状ハウジングであって、前記第1管状ハウジングは第1端部及び第2端部を有し、前記第1管状ハウジングの前記第1端部は第1出口ポートを含む、第1管状ウジングと、
第2管腔を規定する第2管状ハウジングであって、前記第2管状ハウジングは第1端部及び第2端部を有し、前記第2管状ハウジングの前記第1端部は第2出口ポートを含む、第2管状ハウジングと、
第3管腔を規定する第3管状ハウジングであって、前記第3管状ハウジングは第1端部及び第2端部を有し、前記第3管状ハウジングは、前記第1管状ハウジング、前記第2管状ハウジング、及び前記第3管状ハウジングのそれぞれが、互いに対して固定されるように、前記第1管状ハウジング及び前記第2管状ハウジングのうちの少なくとも1つに結合される、第3ハウジングと、
第1端部及び第2端部を有する第1カテーテルであって、前記第1カテーテルの前記第1端部の近くに配置された前記第1カテーテルの部分は、複数の第1出口を含み、前記第1カテーテルは、前記第1管状ハウジング内に少なくとも部分的に配置されるように構成され、前記第1カテーテルの形状が前記第1管状ハウジングの形状に相補的であり、前記第1カテーテルが前記第1管状ハウジングに対して長手方向に移動するときに前記第1カテーテルが前記第1管状ハウジングに対して回転できないようになっている、第1カテーテルと、
第1端部及び第2端部を有する第2カテーテルであって、前記第2カテーテルの前記第1端部の近くの前記第2カテーテルの部分は複数の第2出口を備え、前記第2カテーテルは前記第2管状ハウジング内に少なくとも部分的に配置されるように構成される、第2カテーテルと、
前記第3管状ハウジングの前記第3管腔に配置される、圧力変換器ラインと、
前記圧力変換器ラインに結合された圧力変換器と、
を備える、装置。
【請求項2】
前記第1カテーテル及び前記第2カテーテルのそれぞれの前記第1端部は、湾曲区分を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1カテーテル及び前記第2カテーテルのそれぞれの前記湾曲区分は、約3cm~約500cmの範囲の半径を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1カテーテルは、前記第1管状ハウジング内で長手方向に一定距離を移動するように構成される、請求項1~3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記一定距離が、約0cm~約100cmの範囲である、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記第1カテーテルの前記第1端部に結合されたバルーンをさらに備える、請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
第1端部及び第2端部を有するシースであって、前記第1管状ハウジング、前記第2管状ハウジング及び前記第3管状ハウジングのそれぞれの周りに配置されるシースと、
前記シースの前記第1端部に結合されているバルーンと、
をさらに備える、請求項1~6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第1管状ハウジングの前記第1端部、前記第2管状ハウジングの前記第1端部又は前記第3管状ハウジングの前記第1端部のうちの1つに結合されたバルーンをさらに備える、請求項1~7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1カテーテルの前記第1端部及び/又は前記第2カテーテルの前記第1端部が、角度付きピグテール形状、シェパードフック形状又は角度付きフック形状のうちの1つを備える、請求項1~8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2カテーテルが展開前位置にあるときに、前記第2カテーテルの前記第1端部が、実質的に前記第2管状ハウジング内に配置される、請求項1~9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1カテーテル及び前記第2カテーテルは、展開前位置と展開位置との間で独立して移動可能であり、
前記第1カテーテルの前記第1端部は、前記第1カテーテルが前記展開前位置にあるとき、実質的に前記第1管状ハウジング内に配置され、
前記第2カテーテルの前記第1端部は、前記第2カテーテルが前記展開位置にあるとき、実質的に前記第2管状ハウジング内に配置され、
前記第1カテーテルの前記第1端部は、前記第1カテーテルが前記展開位置にあるとき、前記第1出口ポートの外に延在するように構成され、
前記第2カテーテルの前記第1端部は、前記第2カテーテルが前記展開位置にあるとき、前記第2出口ポートの外に延在するように構成される、請求項1~10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記第1管状ハウジングの前記第1管腔を少なくとも部分的に塞ぐように構成された第1カテーテルダイバータであって、前記第1カテーテルが、前記展開前位置から前記展開位置に移行するときに、前記第1カテーテルダイバータに接触し、それにより前記第1管状ハウジングの前記第1出口ポートを通ってある角度に向けられるようになっている、第1カテーテルダイバータと、
前記第2管状ハウジングの前記第2管腔を少なくとも部分的に塞ぐように構成された第2カテーテルダイバータであって、前記第2カテーテルが、前記展開前位置から前記展開位置に移行するときに、前記第2カテーテルダイバータに接触し、それにより前記第2管状ハウジングの前記第2出口ポートを通ってある角度に向けられるようになっている、第2カテーテルダイバータと、
をさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第1カテーテルダイバータが、前記第1管状ハウジングの長手方向軸に対してある角度で前記第1管状ハウジングの前記第1端部から延在する第1角度付きタブを備えており、
前記第2カテーテルダイバータが、前記第2管状ハウジングの長手方向軸に対してある角度で前記第2管状ハウジングの前記第1端部から延在する第2角度付きタブを備えている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1角度付きタブ及び前記第2角度付きタブが、可撓性である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記圧力変換器ラインが、前記第3管状ハウジングに対して移動可能である、請求項1~14の何れか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記第1カテーテルの前記第1端部の近くに配置された前記第1カテーテルの前記部分に沿って規定された前記複数の第1出口と、前記第2カテーテルの前記第1端部の近くに配置された前記第2カテーテルの前記部分に沿って規定された前記複数の第2出口と、は螺旋状のパターンで配置される、請求項1~15の何れか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記第1カテーテル及び前記第2カテーテルが、約1.5フレンチ~約15フレンチの範囲の内径を有する、請求項1~16の何れか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記第1カテーテルの前記第1端部の近くに配置された前記第1カテーテルの前記部分に沿って規定された前記複数の第1出口は、約3cm~約40cmの範囲の長さに沿って延在しており、
前記第2カテーテルの前記第1端部の近くに配置された前記第2カテーテルの前記部分に沿って規定された前記複数の第2出口は、約3cm~約40cmの範囲の長さに沿って延在している、請求項1~17の何れか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記第1カテーテルの前記第1端部の近くに配置された前記第1カテーテルの前記部分内に配置された第1止血弁と、
前記第2カテーテルの前記第1端部の近くに配置された前記第2カテーテルの前記部分内に配置された第2止血弁と、
をさらに備える、請求項1~18の何れか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記第1出口ポート及び前記第2出口ポートは、前記第1カテーテル及び前記第2カテーテルを相対的に反対方向に向けて、互いに離れるように角度が付けられている、請求項1~19の何れか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記第1出口ポートの中心を通って延在する長手方向軸が、前記第2出口ポートの中心を通って延在する長手方向軸に対してある角度で配置され、
前記角度は、約15度~約180度の範囲である、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記第2カテーテルの形状が、前記第2管状ハウジングの形状に相補的であり、
前記第2カテーテルが前記第2管状ハウジングに対して長手方向に移動するときに、前記第2カテーテルが、前記第2管状ハウジングに対して回転できないようになっている、請求項1~21の何れか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記第1管状ハウジングの前記第1管腔内に配置された第1レールであって、前記第1カテーテルの外面に配置された対応するレールと嵌合するように構成されている、第1レールと、
前記第2管状ハウジングの前記第2管腔内に配置された第2レールであって、前記第2カテーテルの外面に配置された対応するレールと嵌合するように構成されている、第2レールと、
をさらに備える、請求項1~22の何れか一項に記載の装置。
【請求項24】
第1カテーテル及び第2カテーテルのうちの少なくとも一方に結合された第1ポンプと、
前記第1ポンプに結合されたリザーバと、
をさらに備える、請求項1~23の何れか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記リザーバ内に配置されているセンサであって、前記リザーバ内に残っている治療溶液の容量を決定するように構成された、センサと、
前記センサと通信する無線通信インターフェースであって、前記決定された容量をコンピューティングデバイスに送信するように構成された、無線通信インターフェースと、をさらに備える、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記第1ポンプ及び前記リザーバの周りに配置されたハウジングであって、生体適合性の外面を含む、ハウジングをさらに備える、請求項24又は25に記載の装置。
【請求項27】
前記第1ポンプに結合されたコントローラをさらに備えており、
前記コントローラが、
前記圧力変換器を介して、血圧が閾値よりも大きいことを決定し、
前記血圧が前記閾値よりも大きいという前記決定に応じて、前記第1ポンプを作動させて、治療溶液を前記第1カテーテルの前記複数の第1出口及び前記第2カテーテルの前記複数の第2出口から進出させる
ように構成されている、請求項24~26の何れか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記コントローラが、さらに、
前記圧力変換器を介して、血圧が閾値よりも低いことを決定し、
前記血圧が前記閾値よりも低いという前記決定に応じて、前記第1ポンプを停止する
ように構成されている、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記第1ポンプが、前記第1カテーテルに結合されており、
前記装置が、前記第2カテーテルに結合された第2ポンプをさらに備えており、
前記リザーバが、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプの両方に結合されている、請求項24~28の何れか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記第1ポンプが、前記第1カテーテルに結合されており、
前記装置が、前記第2カテーテルに結合された第2ポンプをさらに備えており、
第1リザーバが、前記第1ポンプに結合され、
第2リザーバが、前記第2ポンプに結合されている、請求項24~29の何れか一項に記載の装置。
【請求項31】
前記第1リザーバが、第1治療溶液を含み、
前記第2リザーバが、第2治療溶液を含む、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記第1リザーバ及び前記第2リザーバが、それぞれ一意の識別子を有する、請求項30又は31に記載の装置。
【請求項33】
前記一意の識別子は、前記第1リザーバ及び前記第2リザーバのそれぞれの上のスタンプ又は放射線不透過性マーカーのうちの1つである、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記一意の識別子は、前記第1リザーバ及び前記第2リザーバの形状である、請求項32記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[1] この出願は、2017年10月3日に出願された「Bi-Lateral Catheter System and Methods for Use」と題する米国仮出願第62/567,264号の優先権の利益を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[2] 肺塞栓症は、血流を介して体内の別の場所から移動した物質による、肺の主動脈(つまり鞍状塞栓)又は多発性両側分岐閉塞である。結果として生じる肺を通る血流の閉塞は、呼吸困難(すなわち、息切れ)、頻呼吸(すなわち、急速な呼吸)、胸部呼吸、呼吸、及び/又は咳と喀血(すなわち、喀血)によって悪化する「胸膜炎の」性質の胸痛のうちの1つ以上につながり得る心臓の右心室への圧力の増加を引き起こす可能性がある。この状態の発生は、米国では人口1000人当たり約1~2人であり、肺塞栓症の可能性は年齢とともに増加する。80歳を過ぎると、肺塞栓症は、抗凝固療法の現在の標準治療を使用して30%の30日間の死亡率をもたらす。抗凝固療法は肺塞栓症の一般的な治療法である。しかしながら、塞栓症が位置する肺動脈内の場所への治療溶液の送達は、処置が容易でなく、理想的ではない場合がある。例えば、現在の治療方法は、左右の肺動脈に複数のカテーテルを配置するためのアクセスを得るために、片側大腿静脈に複数の穴又は両側大腿静脈に複数の穴を作成することを含む。このような方法は、治療中及び治療後の出血のリスクを高める可能性がある。単一の大腿静脈に複数のアクセス部位があると、血腫のリスクが高まる可能性がある。さらに、全身性又はカテーテル指向性抗凝固剤が生体内で活発に投与されている場合、閉塞が完全に取り除かれたときにそれを知る方法がなく、それによって場合によっては不必要に治療を延長する。この延長された治療はさらに患者を溶血剤に曝す結果となり、それにより、脳出血などの壊滅的な出血合併症のリスクが高まる可能性がある。
【0003】
[3] 肺高血圧症は、肺と心臓の右側の動脈に影響を与える高血圧の一種である。肺高血圧症は、肺動脈と毛細血管が狭くなる、ブロックされる、又は破壊されると始まる。これにより、血液が肺を流れにくくなり、肺の動脈内の圧力が上昇する。圧力が高まるにつれ、心臓の右心室は、肺を介して血液を送り出すためにより強く働き、最終的には右側の心不全と低酸素症につながる。肺高血圧症は、次第に悪化し、時には致命的となる深刻な病気である。兆候と症状には、息切れ、疲労感、めまい又は失神、胸部圧迫又は痛み、足首の腫れ、唇の青みがかった色、及び脈動又は心臓の動悸が含まれる。
【0004】
[4] 右心カテーテル検査は、肺高血圧症の診断に役立つことがある。そのような処置の間、カテーテルは患者の首又は鼠径部の静脈に配置される。次に、カテーテルを患者の右心室と肺動脈に通す。右心カテーテル法により、医療専門家は主な肺動脈と右心室の圧力を直接測定できる。そのような手順は、薬物療法が患者の肺高血圧症に及ぼす可能性のある影響を監視するためにも使用することができる。肺動脈の圧力感知線により、操作者が薬物を注入し、肺動脈圧の低下に気付いた場合、医療専門家はその薬物が特定の患者にとって良い選択肢であり得ると判断することができる。
【0005】
[5] 様々な程度の有効性で肺高血圧症を治療するために使用できるいくつかの薬がある。血管拡張剤(血管拡張薬)は、狭くなった血管を開く。肺高血圧症に最も一般的に処方されている血管拡張薬の1つは、エポプロステノール(フローラン)である。欠点は、効果が数分しか持続しない可能性があることである。この薬は、ベルト又は肩に装着された小さなポンプを介して、静脈内カテーテルを通して継続的に注入される。患者は自分の薬を混ぜる必要があり、医療専門家による頻繁なフォローアップが必要になる場合がある。関連する薬剤であるイロプロスト(Ventavis)は、薬を気化させる機械であるネブライザーを介して3時間ごとに吸入できる。薬物の吸入は、薬物が肺に直接送達されることを可能にし得る。代替薬には、血管壁を狭める血管壁の物質であるエンドセリンの効果を逆転させ得るエンドセリン受容体拮抗薬が含まれる場合がある。血管の狭窄を止める可能性のある別の薬は、アンブリセンタン(Letairis)である。シルデナフィル(Viagra)及びタダラフィル(Cialis)が使用され、肺の血管を開く働きがある。さらに、高用量のカルシウムチャネル遮断薬は、血管壁の筋肉をリラックスさせるのに役立つ薬である。それらには、アムロジピン(Norvasc)、ジルチアゼム(Cardizem、Tiazac)、及びニフェジピン(Adalat、Procardia)などの薬物が含まれる。肺高血圧症を患っている少数の患者のみがカルシウムチャネル遮断薬に反応する。利尿薬も使用できる。これらは一般的に水の丸薬として知られており、体から余分な水分を取り除くのに役立つ。これは、個人の心臓が実行しなければならない仕事の量を減らすことができまた、肺で体液の蓄積を制限するのを助けることができる。
【0006】
[6] 肺高血圧症を患っている患者の外科的選択肢は限られている。心房中隔瘻造設術は、選択肢になり得る開心術であるが、投薬に反応しない患者に限られる。心房中隔瘻では、外科医が心臓の左室と右室との間に開口部を作成して、心臓の右側の圧力を緩和する。心房中隔瘻は、心調律異常(不整脈)を含む深刻な合併症を起こすことがある。特発性肺高血圧症の若年患者にとって、場合によっては移植が別の選択肢である。しかしながら、移植は移植された臓器の拒絶及び重篤な感染を含む重大なリスクを伴い、患者は拒絶の可能性を減らすのを助けるために生涯免疫抑制剤を服用しなければならない。
【0007】
[7] 心不全は、異常な心機能により、正常な充満圧下で代謝要件に十分な速度で心臓が血液を送り出せなくなるときに発生することがある。心不全は、息切れ、努力不耐性、体液貯留、及び低い生存率によって臨床的に特徴付けられる場合がある。心不全は、収縮機能障害又は拡張機能障害によって引き起こされることがある。例えば、左心室収縮機能不全は、左心室駆出率が0.40未満として定義されてもよい。拡張期心不全は、心臓が適切に血液で満たされず、診断が困難であり得る状態として定義される場合がある。右心カテーテル法と呼ばれる手順で肺動脈圧を直接監視することは、入院中の心不全患者にとって標準治療である。しかしながら、心不全の慢性的な性質を考慮すると、患者は病院の外で何日も過ごすことがあり、在宅モニタリングが重要になる。自宅で心不全イベントを早期に診断するための手段として、肺動脈圧の微小電気機械モニタリング用にシステムが開発されたが、入院を防ぐように心不全薬の注射を受けるために、あるエピソードのイベントが発生した場合、患者は医師のもとを訪れる必要がある。
【発明の概要】
【0008】
[8] 本開示は、肺動脈圧を監視して臨床的意思決定を支援する能力を改善するデバイスを対象とする。例えば、現在、右側の心臓の緊張及び肺動脈圧をリアルタイムで監視する便利な方法はなく、現在の治療方法では、通常、塞栓症を確実に解消するために長い治療時間を必要とする。患者が血栓を溶解する薬又は治療溶液に長時間曝されるほど、内出血のリスクが高くなる。内出血は、頭蓋内出血などの状況では壊滅的な可能性がある。したがって、塞栓症が十分に治療されたときを決定することは、治療溶液の送達時間を短縮するために有利である。本明細書に記載される装置及び方法は、肺塞栓症の治療のために肺動脈への治療溶液の送達を改善するために使用され得る。さらに、一実施形態では、装置は、肺動脈を通る健康な血流が再確立されたときを検出し、それによって治療が完了したことを示す機構を含むことができる。
【0009】
[9] したがって、第1態様では、本開示は、(a)~(g)を含む装置を提供する。(a)第1管腔を規定する第1管状ハウジングであって、第1管状ハウジングは第1端部及び第2端部を有し、第1管状ハウジングの第1端部は第1出口ポートを含む、第1管状ハウジング、(b)第2管腔を規定する第2管状ハウジングであって、第2管状ハウジングは第1端部及び第2端部を有し、第2管状ハウジングの第1端部は第2出口ポートを含む、第2管状ハウジング、(c)第3管腔を規定する第3管状ハウジングであって、第3管状ハウジングは第1端部及び第2端部を有し、第3管状ハウジングは、第1管状ハウジング、第2管状ハウジング、及び第3管状ハウジングが、互いに対して固定されるように、第1管状ハウジング及び第2管状ハウジングのうちの少なくとも1つに結合されている、第3管状ハウジング、(d)第1端部と第2端部を有する第1カテーテルであって、第1端部の近くに配置された第1カテーテルの部分は複数の第1出口を含み、第1カテーテルは第1管状ハウジング内に少なくとも部分的に配置されるように構成されている、第1カテーテル、(e)第1端部及び第2端部を有する第2カテーテルであって、第1端部の近くの第2カテーテルの部分は、複数の第2出口を含み、第2カテーテルは、第2管状ハウジング内に少なくとも部分的に配置されるように構成されている、第2カテーテル、(f)第3管状ハウジングの第3管腔に配置された圧力変換器ライン、及び(g)圧力変換器ラインに結合されている圧力変換器。
【0010】
[10] 第2態様では、本開示はまた、(a)~(d)を含む方法を提供する。(a)第1態様の装置を動脈アクセスを介して動脈構成に導入すること、(b)第1カテーテルの第1端部が第1出口ポートを出て、第1管状ハウジングの第1端部を超えて延在するように、第1管状ハウジングに対して第1カテーテルを前進させること、(c)第2カテーテルの第1端部が第2出口ポートを出て、第2管状ハウジングの第1端部を越えて延在するように、第2管状ハウジングに対して第2カテーテルを前進させること、及び(d)第1カテーテルの複数の第1出口及び第2カテーテルの複数の第2出口から、動脈構成へと治療溶液を前進させること。
【0011】
[11] 第3態様では、本開示の第1態様による装置は、皮下埋め込み型ポンプに結合することができる。ポンプは、治療薬又は薬物溶液で満たすことができるリザーバを含むことができる。圧力変換器は、圧力変換器が許容可能な正常肺動脈圧を感知し、続いて流量を調節するか又はポンプをオフにするコントローラと通信するまで、ポンプを作動させて治療溶液を肺動脈に送達するコントローラと通信することができる。心不全のエピソードを検出する手段として、肺高血圧症を監視することもできる。したがって、本開示の態様は、心不全患者に適切な薬物療法と併せて使用することもできる。そのような例では、システムが肺動脈圧の上昇を検出すると、システムはポンプと通信して心不全の薬を注入する。
【0012】
[12] これら並びに他の態様、利点、及び代替は、添付の図面を適宜参照して、以下の詳細な説明を読むことにより、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】例示的な実施形態による、例示的な装置を示す。
図2A】一実施形態による、図1の装置の一構成例の断面図を示す。
図2B】一実施形態による、図1の装置の別の例示的な構成の断面図を示す。
図3】一実施形態例による、図1の装置の斜視図である。
図4A】例示的な実施形態による、第1カテーテル及び/又は第2カテーテルの第1端部を示す。
図4B】別の例示的な実施形態による、第1カテーテル及び/又は第2カテーテルの第1端部を示す。
図4C】別の例示的な実施形態による、第1カテーテル及び/又は第2カテーテルの第1端部を示す。
図5A】例示的な実施形態による、第1管状ハウジング内に配置された第1カテーテル及び/又は第2管状ハウジング内に配置された第2カテーテルを示す。
図5B】別の例示的な実施形態による、第1管状ハウジング内に配置された第1カテーテル及び/又は第2管状ハウジング内に配置された第2カテーテルを示す。
図5C】別の例示的な実施形態による、第1管状ハウジング内に配置された第1カテーテル及び/又は第2管状ハウジング内に配置された第2カテーテルを示す。
図5D】別の例示的な実施形態による、第1管状ハウジング内に配置された第1カテーテル及び/又は第2管状ハウジング内に配置された第2カテーテルを示す。
図6A】心肺構造の概略図を示す。
図6B図1の装置が本明細書に配置された図6Aの心肺構造を示す。
図6C】心肺構造の展開位置にある図1の装置を示す。
図7】例示的な実施形態による、コンピュータネットワークインフラストラクチャの概略図である。
図8】開示される方法の例示的な実施形態に従って実行することができる機能を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[29] 異なる有利な配置の説明は、例示及び説明の目的で提示されており、網羅的であること、又は開示された形式の例に限定されることを意図していない。当業者には多くの修正及び変更が明らかであろう。さらに、異なる例は、他の例と比較して異なる利点を提供する可能性がある。選択された1つ又は複数の実施例は、実施例の原理、実際の適用を最もよく説明し、当業者が企図される特定の使用に適した種々の変更を伴う種々の実施例についての開示を理解できるようにするために選択され説明される。
【0015】
[30] 本明細書で使用する場合、測定に関して、「約」は±5%を意味する。
【0016】
[31] 本明細書で使用される場合、「結合された」は、直接的に及び間接的に関連付けられることを意味する。例えば、メンバーAはメンバーBに直接関連付けられてもよく、又は例えば別のメンバーCを介して間接的に関連付けられてもよい。様々な開示された要素間のすべての関係が必ずしも表されているわけではないことが理解される。
【0017】
[32] 特に明記しない限り、「第1」、「第2」などの用語は、本明細書では単にラベルとして使用され、これらの用語が参照する項目に順序、位置、又は階層の要件を課すことを意図していない。さらに、例えば、「第2」の項目への言及は、例えば、「第1」もしくはそれより少ない番号の項目、及び/又は、例えば、「第3」もしくはそれより高い番号の項目の存在を必要とせず、排除もしない。
【0018】
[33] 本明細書での「一実施形態」又は「一実施例」への言及は、実施例に関連して説明された1つ以上の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実装に含まれることを意味する。本明細書の様々な場所にある「一実施形態」又は「一実施例」という語句は、同じ例を指している場合も、そうでない場合もある。
【0019】
[34] 本明細書で使用される場合、指定された機能を実行「するように構成された」装置、要素、及び方法は、さらなる変更後に指定された機能を実行する可能性を単に有するだけでなく、変更なしに実際に指定された機能を実行することができる。言い換えると、指定された機能を実行「するように構成された」装置、要素、及び方法は、指定された機能を実行する目的で具体的に選択、作成、実装、利用、プログラム、及び/又は設計される。本明細書で使用される場合、「するように構成された」は、装置、要素、及び方法が既存の特性を示し、装置、要素、及び方法が、さらなる修正なしに指定された機能を実行できるようにすることを表す。この開示の目的のために、特定の機能を実行「するように構成される」と記載される装置、要素、及び方法は、追加又は代替として、実行「するように適応される」及び/又はその機能を実行「するように作動する」と説明され得る。
【0020】
[35] 本明細書で使用する場合、「第1端部」は、生体内での展開時に装置の操作者に対して「遠位端」になる端部を指す。したがって、装置の「第1端部」は、対象の治療ゾーン(例えば、肺動脈)の近くに位置する(使用時の)デバイスの端部を指す。
【0021】
[36] 本明細書で使用される場合、「第2端部」は、生体内での展開時に装置の操作者に対して「近位端」になる端部を指す。したがって、装置の「第2端部」は、対象の標的管腔からより遠く、アクセス部位及び操作者の近くに位置する(使用中の)デバイスの端部を指す。
【0022】
[37] 本明細書で使用される場合、「カテーテル」は、展開機構に接続され、ガイドワイヤを介して送達され得る医療デバイスを収容する装置である。カテーテルは、オーバーザワイヤガイダンスのためのガイドワイヤ管腔を含んでもよく、ステントグラフトを標的管腔に送達するために使用されてもよい。カテーテルは、構造的な完全性を維持するために、カテーテル壁内に編組金属ストランドを有することができる。カテーテル先端の構造的要素は、カテーテルの編組ストランドに結合又はレーザー溶接して、カテーテル先端の性能特性を向上させることができる。
【0023】
[38] 本明細書で使用される場合、「ガイドワイヤ」は、金属及び/又はポリマーを含む様々な生体適合性材料で構成される細長いケーブルである。ガイドワイヤは、標的管腔を選択し、カテーテルを標的展開場所に案内するために使用することができる。ガイドワイヤは、通常、アセンブリの一部ではない他のデバイスとは独立して使用されるワイヤとして定義される。
【0024】
[39] 本明細書で使用される場合、「管腔」は、肺動脈又はステントグラフトなどの動脈構造内の通路、又はガイドワイヤが配置され得る管状ハウジング又はカテーテル内の通路を指す。
【0025】
[40] 本明細書で使用される場合、「開口部」は、カテーテルの外部と自由に連通していてもしていなくてもよい、カテーテルの分岐点を意味する。
【0026】
[41] 本明細書で使用される場合、「第1開口部」及び対応する構造へのすべての言及は、その後のすべての追加の開口部に適用される。
【0027】
[42] 本明細書で使用される場合、「フレンチ」は、カテーテルの測定単位を指す。1フレンチの丸型カテーテルの外径は1/3mmであるため、フレンチのサイズを3で割ると、ミリメートル単位の丸型カテーテルの直径を決定できる。
【0028】
[43] 本明細書で使用する場合、「治療溶液」は、肺動脈に投与することができる任意の流動性材料を指す。薬物溶液が患者に投与される治療薬を含む場合、溶液で投与され得る任意の適切な薬物が使用され得る。一実施例として、治療溶液は溶解剤を含む。様々な非限定的な実施形態では、治療薬は、シロリムス、ヘパリン、及び細胞ベースの治療法、並びに抗腫瘍性、抗炎症性、抗血小板性、抗凝固性、抗フィブリン、アンチトロンビン、抗有糸分裂、抗生物質、血管拡張、抗アレルギー性血栓溶解及び抗酸化物質を含むことができる。そのような抗悪性腫瘍薬及び/又は抗有糸分裂薬の例には、パクリタキセル(例えば、Bristol-Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.によるTAXOL(登録商標))、ドセタキセル(例えば、Aventis S.A.,Frankfurt,GermanyからのTaxotere(登録商標)、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、Pharmacia&Upjohn、Peapack N.J.からのAdriamycin(登録商標))、及びマイトマイシン(例えば、Bristol-Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのMutamycin(登録商標))が含まれる。そのような抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン、及び抗トロンビンの例には、アスピリン、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D-phe-pro-arg-クロロメチルケトン(合成アンチトロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗薬抗体、組換えヒルジン、並びにAngiomax aなどのトロンビン阻害剤(Biogen,Inc.,Cambridge,Mass.)が含まれる。そのような細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤の例には、アンジオペプチン、カプトプリル(例えば、Bristol-Myers Squibb Co.,Stamford,Conn.からのCapoten(登録商標)及びCapozide(登録商標))、シラザプリル又はリシノプリル(例えば、Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,N.J.からのPrinivil(登録商標)、及びPrinzide(登録商標))などのアンジオテンシン変換酵素阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬(ニフェジピンなど)、血栓溶解薬-ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、TPA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)コルヒチン、タンパク質、ペプチド、血管拡張薬-ニトロベースの薬物、Ca++チャネル遮断薬、線維芽細胞成長因子(FGF)拮抗薬、魚油(オメガ3-脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(HMG-CoAレダクターゼの阻害剤、コレステロール低下薬、商品名Mevacor(登録商標)Merck&Co.,Inc.,Whitehouse Station,N.J.)、モノクローナル抗体(血小板由来成長因子(PDGF)受容体に特異的なものなど)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)、及び一酸化窒素が含まれる。抗アレルギー剤の例は、ペルミロラストカリウムである。適切な薬剤であり得る他の治療物質又は薬剤には、シスプラチン、インスリン感作物質、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、カルボプラチン、α-インターフェロン、遺伝子組換え上皮細胞、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗癌剤、抗凝固剤、フリーラジカルスカベンジャー、エストラジオール、抗生物質、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣物、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-アミノ-TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ABT-578、クロベタゾール、細胞分裂阻害剤剤、それらのプロドラッグ、それらのコドラッグ、及びそれらの組み合わせが含まれる。他の治療物質又は治療薬には、40-O-(2-ヒドロキシ)エチル-ラパマイシン(EVEROLIMUSの商品名で知られている)、40-O-(3-ヒドロキシ)プロピル-ラパマイシン、40-O-[2-(2-ヒドロキシ)エトキシ]エチル-ラパマイシン、メチルラパマイシン、及び40-O-テトラゾール-ラパマイシンなどのラパマイシン及びその構造誘導体又は機能的類似体を含むことができる。肺動脈を対象とする治療溶液には、エポプロステノール(Flolan)及びイロプロスト(Ventavis)を含む、血管拡張薬、並びにアンブリセンタン(Letairis)などのエンドセリン受容体拮抗薬が含まれる。肺動脈に注入できる追加の治療溶液には、シルデナフィル(Viagra)及びタダラフィル(Cialis)、アムロジピン(Norvasc)、ジルチゼム(Cardizem,Tiazac)、及びニフェジピン(Adalat,Procardia)を含む、高用量カルシウムチャネル遮断薬、並びに様々な利尿薬が含まれる。冠状動脈疾患の様々な硝酸塩は、注入されると、有益な場合もあり、イソソルビドジニトレート(Dilatrate、Isordil)、イソソルビドモノニトレート(ISMO)、及びニトログリセリン(Nitro-Dur、Nitrolingual、及びNitrostate)を含む。心不全を治療するための本開示の装置及び方法を用いて注入することができる治療薬には、ダブタミン、アンジオテンシン-変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、ベータ遮断薬、利尿薬、アルドステロン拮抗薬、及びジゴキシンなどの強心薬が含まれる。さらに、装置が例えば教育モデル又はトレーニングのデモンストレーションで使用されている場合、水などの非治療流体が使用されてもよい。
【0029】
[44] 図を参照すると、図1は、装置100の例示的な一実施形態を示している。特に、装置100は、第1管腔104を規定する第1管状ハウジング102を含む。第1管状ハウジング102は、第1端部106及び第2端部108を含み、第1管状ハウジング102の第1端部106は、第1出口ポート110を含む。装置100は、第2管腔114を規定する第2管状ハウジング112をさらに含む。第2管状ハウジング112は、第1端部116及び第2端部118を含み、第2管状ハウジング112の第1端部116は、第2出口ポート120を含む。装置は、第3管腔124を規定する第3管状ハウジング122をさらに含む。第3管状ハウジング122は、第1端部126及び第2端部128を含む。第3管状ハウジング122は、第1管状ハウジング102及び第2管状ハウジング112のうちの少なくとも一方に結合され、第1管状ハウジング102、第2管状ハウジング112、及び第3管状ハウジング122のそれぞれは、互いに対して固定される。別の実施形態では、図2A図2Bに示すように、第1管腔104、第2管腔114、及び第3管腔124が貫通し、互いに平行に配置されている単一の管状ハウジング又はシース130がある。
【0030】
[45] 図1に示されるように、装置100は、第1端部134及び第2端部136を有する第1カテーテル132をさらに含む。第1端部134の近くに配置された第1カテーテル132の部分は、複数の第1出口138を含み、第1カテーテル132は、第1管状ハウジング102内に少なくとも部分的に配置されるように構成される。装置100は、第1端部142及び第2端部144を有する第2カテーテル140をさらに含む。第1端部142の近くの第2カテーテル140の部分は、複数の第2出口146を含み、第2カテーテル140は、第2管状ハウジング112内に少なくとも部分的に配置されるように構成される。装置100はまた、第3管状ハウジング122の第3管腔124に配置され、圧力変換器150に結合されるように構成された圧力変換器ライン148を含む。
【0031】
[46] いくつかの実施形態では、装置100の全長は、約50cm~約500cm、好ましくは約50cm~約300cmの範囲であり得る。一実施例では、複数の第1出口138は、第1端部134の近くに配置され、約3cm~約40cmの範囲の長さを有する第1カテーテル132の部分に沿って規定され、複数の第2出口146は、第1端部142の近くに配置された第2カテーテル140の部分に沿って規定され、約3cm~約40cmの範囲の長さに沿って延在し得る。一実施例では、第1及び複数の第2出口138、146は、一実施例として、直列に配置された小さな穴を含む。第1及び複数の第2出口138、146のそれぞれは、約50μm~約250μmの範囲の直径を有することができる。別の実施形態では、第1及び複数の第2出口138、146のそれぞれは、約50μm~約250μmの範囲の幅、及び約50μm~約250μmの範囲の長さを有するスロットであり得る。
【0032】
[47] 第1及び複数の第2出口138、146は、治療溶液が第1及び複数の第2出口138、146を通過して治療ゾーンに入り、塞栓の溶解を助けることを可能にするように構成され得る。さらに、第1カテーテル132は、約1.5フレンチ~約15フレンチの範囲の内径を有してもよく、第2カテーテル140は、約1.5フレンチ~約15フレンチの範囲の内径を有してもよい。一実施例では、第1カテーテル132及び第2カテーテル140は、同じ直径を有する。別の実施例では、第1カテーテル132は、第2カテーテル140の直径とは異なる直径を有する。一実施例では、第1端部134の近くに配置された第1カテーテル132の部分に沿って規定された複数の第1出口138と、第1端部142の近くに配置された第2カテーテル140の部分に沿って規定された複数の第2出口146とが、らせん状のパターンに配置される。他の実施形態も可能である。
【0033】
[48] 図1に示されるように、第1カテーテル132及び第2カテーテル140のそれぞれの第1端部134、142は、湾曲区分152、154を含み得る。一実施形態では、第1カテーテル132及び第2カテーテル140のそれぞれの第1端部134、142は、曲率半径を与える形状記憶材料を含むことができる。第1カテーテル132及び第2カテーテル140のそれぞれの湾曲区分152、154は、約3cm~約500cmの範囲の曲率半径を有し得る。第1カテーテル132の湾曲区分152は、装置100が使用されているときに、第1カテーテル132の第1端部134を肺動脈の第1分岐内に前進及び配置するのを助けることができ、第2カテーテル140の湾曲区分154は、装置100が使用されているときに、第2カテーテル140の第1端部142を前進させて肺動脈の第2分岐に配置するのを助けることができる。
【0034】
[49] 一実施例では、第1カテーテル132は、第1管状ハウジング102内で長手方向に一定距離移動するように構成される。一定距離を前進した後、第1カテーテル132は、第1管状ハウジング102に対して遠位に移動することを防止され得る。そのような実施例では、一定距離は、約0cm~約100cmの範囲であり得る。別の実施例では、第1カテーテル132は、第1管状ハウジング102に対して妨げられない長手方向の移動を有し得る。同様に、一実施例では、第2カテーテル140は、第2管状ハウジング112内で長手方向に一定距離移動するように構成される。一定距離を前進した後、第2カテーテル140は、第2管状ハウジング112に対して遠位に移動することを防止され得る。そのような実施例では、一定距離は、約0cm~約100cmの範囲であり得る。別の実施例では、第2カテーテル140は、第2管状ハウジング112に対して妨げられない長手方向の移動を有し得る。
【0035】
[50] 圧力変換器ライン148は、第3管状ハウジング122の第3管腔124内に配置されてもよく、圧力変換器150は、圧力変換器ライン148に結合されてもよい。一実施例では、圧力変換器ライン148は、第3管状ハウジング122に対して移動可能である。一実施例では、圧力変換器150は、第3管状ハウジング122を含む液柱を含む。圧力変換器ライン148は、圧力変換器150を、電源及び/又は圧力変換器150からデータを送信及び/又は表示するように構成されたコンピューティングデバイスに接続することができる。圧力変換器150は、様々な場所に配置することができる。一実施例では、圧力変換器150は、第3管状ハウジング122の第1端部に配置されてもよい。別の実施例では、圧力変換器150は、装置100が使用されているとき、第3管状ハウジング122の第1端部126を越えて肺動脈内に延在することができる。このような場所は、第1カテーテル132が展開位置にあるとき、第1カテーテル132の第1端部134の近位にあり得る。圧力変換器150の他の場所も同様に考えられる。したがって、圧力変換器150は、許容範囲内の肺動脈圧を観察するために有利に監視され得、それによって治療の完了を示す。肺動脈圧は、肺閉塞のいくつかの症例の間に上昇する可能性があり、血行力学的安定性、したがって治療の完了又はその欠如の優れた指標となり得る。例えば、正常な肺動脈圧は治療の完了を示す。
【0036】
[51] 一実施形態では、図1に示すように、装置100は、第1カテーテル132の第1端部134に結合されたバルーン158をさらに含むことができる。別の実施形態では、装置100は、図示されるように、第1端部160及び第2端部162を有するシース130を含み得、シースは、図2A図2B及び図3に示されるように、第1管状ハウジング102、第2管状ハウジング112、及び第3管状ハウジング122のそれぞれの周りに配置される。そのような一実施形態では、図3に示すように、バルーン158は、シース130の第1端部160に結合されてもよい。さらに別の実施形態では、バルーン158は、第1管状ハウジング102の第1端部106、第2管状ハウジング112の第1端部116、又は第3管状ハウジング122の第1端部126のうちの1つに結合され得る。
【0037】
[52] 第1管状ハウジング102、第2管状ハウジング112、及び第3管状ハウジング122の配置は、様々な形態をとることができる。図2Aは、一実施形態による、装置100の断面を示す。図2Aに示されるように、第1管状ハウジング102、第2管状ハウジング112、及び第3管状ハウジング122は、実質的に並んだ構成で配置されてもよい。図2Bは、別の実施形態による装置100の断面を示す。図2Bに示されるように、第1管状ハウジング102、第2管状ハウジング112、及び第3管状ハウジング122は、三角形の構成で配置され得、それによって装置100の全体の幅を減少させる。他の配置も可能である。
【0038】
[53] 図4A図4Cに示されるように、第1カテーテル132及び/又は第2カテーテル140の第1端部134、142は、様々な形態をとることができる。特に、第1カテーテル132の第1端部134及び/又は第2カテーテル140の第1端部142は、角度付きピグテール形状164(図4Aに示される)、シェパードフフック形状166(図4Bに示される)、又は角度付きフック形状168(図4Cに示される)のうちの1つ有し得る。他の実施形態も可能である。
【0039】
[54] 第1カテーテル132及び第2カテーテル140は、展開前位置と展開位置との間で独立して移動可能であり得る。そのような例では、第1カテーテル132が展開前位置にあるとき、第1カテーテル132の第1端部134は実質的に第1管状ハウジング102内に配置され、第2カテーテル140が展開前位置にあるとき、第2カテーテル140の第1端部142は実質的に第2管状ハウジング112の内部に配置される。このような実施形態では、第1カテーテル132の第1端部134は、第1カテーテル132が展開位置にあるときに第1出口ポート110から外に延在するように構成され、第2カテーテル140の第1端部142は、第2カテーテル140が展開位置にあるときに、第2出口ポート120から外に延在するように構成される。
【0040】
[55] 展開前位置は、治療ゾーンにおいて、装置100への前進中又は配置中に使用することができ、展開位置は、第1カテーテル132の複数の第1出口138及び第2カテーテル140の複数の第2出口146を介した治療溶液の注入に使用することができる。第1及び第2カテーテル132、140が展開位置に移動すると、治療溶液は、第1及び第2カテーテル132、140を通って前進し、第1及び複数の第2出口138、146を通って治療ゾーンに注入される。第1及び第2カテーテル132、140のそれぞれは、第1端部134、142の近くに配置された止血弁170を第1及び第2カテーテル132、140の部分内に備えることができ、この血止弁は、治療溶液が第1及び複数の第2出口138、146を通過して排出されることを可能にするが、第1及び第2カテーテル132、140への血液の逆流を最小にすることができる。そのような実施形態は、血液が第1及び複数の第2出口138、146に入り、経時的に凝固するのを防ぎ、それによって第1及び第2カテーテル132、140の注入能力を維持することができる。複数の塞栓が治療溶液を介して溶解(すなわち、溶解)すると、肺動脈を通る正常な血流が回復し、肺動脈圧を低下させ、全身動脈圧を上昇させ、患者を血行力学的安定性に戻すことができる。
【0041】
[56] 図1に示す一実施形態では、装置100は、第1カテーテル132が第1カテーテルダイバータ172に接触するように、第1管状ハウジング102の第1管腔104を少なくとも部分的に閉塞するように構成される第1カテーテルダイバータ172をさらに含み得る。これにより、展開前位置から展開位置に移行するときに、第1管状ハウジング102の第1出口ポート110を通ってある角度に向けられる。装置100はさらに、第2カテーテル140が第2カテーテルダイバータ174に接触するように、第2管状ハウジング112の第2管腔114を少なくとも部分的に塞ぐように構成される第2カテーテルダイバータ174をさらに含み得る。これにより展開前位置から展開位置に移行するとき、第2管状ハウジング112の出口ポート120を通ってある角度に向けられる。そのような実施形態では、第1カテーテルダイバータ174は、第1管状ハウジング102の長手方向軸に対してある角度で第1管状ハウジング102の第1端部106から延在する第1角度付きタブの形をとることができ得、第2カテーテルダイバータ174は、第2管状ハウジング112の長手方向軸に対してある角度で第2管状ハウジング112の第1端部116から延在する第2角度付きタブの形態を取り得る。第1及び第2カテーテルダイバータ172、174の角度付きタブは、第1及び第2カテーテル132、140が第1及び第2カテーテルダイバータ172、174に接触し、それにより第1及び第2出口ポート110、120から外に向けられるように可撓性であり得る。第1及び第2カテーテルダイバータ172、174の角度は、使用時に第1及び第2カテーテル132、140を肺動脈の反対側の分枝に向けるのを助けることができる。
【0042】
[57] 一実施形態では、第1出口ポート110及び第2出口ポート120は、第1カテーテル132及び第2カテーテル140を相対的に反対方向に方向付けるように、互いに離れるように角度が付けられている。特定の一実施例では、第1出口ポート110の中心を通って延在する長手方向軸は、第2出口ポート120の中心を通って延在する長手方向軸に対してある角度で配置される。そのような実施形態では、第1出口ポート110の長手方向軸と第2出口ポート120の長手方向軸との間の角度は、約15度~約180度の範囲である。
【0043】
[58] 別の実施形態では、図5A図5Cに示されるように、第1カテーテル132の形状は、カテーテル132は、第1管状ハウジング102に対して長手方向に動くときに第1カテーテル132が第1管状ハウジング102に対して回転できないように、第1管状ハウジング102の形状と相補的であり得る。同様に、第2カテーテル140の形状は、第2カテーテル140が第2管状ハウジング112に対して長手方向に動くときに第2カテーテル140が第2管状ハウジング112に対して回転できないように、第2管状ハウジング112の形状に相補的であり得る。特に、図5A~5Cに示されるように、第1カテーテル132及び/又は第2カテーテル140は、楕円形(図5Aに示される)、正方形(図5Bに示される)であり得るか、又は第1カテーテル132及び/又は第2カテーテル140(図5Cに示される)の中心線から軸方向に離れて延在する1つ以上のリブ176を含み得る。そのような実施形態では、第1管状ハウジング102及び/又は第2管状ハウジング112は、楕円形(図5Aに示される)、正方形(図5Bに示される)であり得か、又は第1カテーテル132及び/又は第2カテーテル140の中心線から離れて軸方向に延在する1つ以上のリブ176を受け入れるように構成された1つ以上の外側に延在する突起178を含み得る。このような実施形態は、第1カテーテル132及び/又は第2カテーテル140が適切な位置に配置されて、展開位置にある肺動脈の分枝に突出することを確実にするのに役立ち得る。
【0044】
[59] 別の実施例では、図5Dに示されるように、装置100は、第1管状ハウジング102の第1管腔104に配置された第1レール180をさらに含み得る。第1レール180は、第1カテーテル132の外面上に配置された対応するレール182と嵌合するように構成される。そのような実施形態では、装置100は、第2管状ハウジング112の第2管腔114に配置された第2レール184をさらに含むことができる。第2レール184は、第2カテーテル140の外面に配置された対応するレール186と嵌合するように構成される。図5A図5Cに関連して上述した実施形態と同様に、図5Dの実施形態は、第1カテーテル132及び/又は第2カテーテル140が適切な位置に配置されて、展開位置にある圧肺動脈の分枝に突出することを確実にするのに役立ち得る。
【0045】
[60] 動作中、装置100は、バルーンを介して、ガイドワイヤを介して、又はいくつかの他の手段を介して治療ゾーンに配置されてもよい。特に、図6Aは、心臓200を含む心肺構造、及び下大静脈(IVC)202、右心室(RV)204、及び肺動脈206を塞いでいる塞栓208を有する肺動脈(PA)206を通る血流の概略図を示す。図6Bは、装置100の遠位端に結合されたバルーン158を含む例示的な実施形態を示す。図6Bに示すように、装置100は、手動で前進させるか、又は血流を介してバルーン158によって下大静脈を通して引っ張ることができる。一実施例では、そのようなバルーン158は帆バルーンであってよい。バルーン158は、装置100の遠位端に結合されてもよく、又は図1に示されるように、上述のように、第1カテーテル132の第1端部134に結合されてもよい。バルーン158が下大静脈202に入ると、バルーン158は、三尖弁203を通って右心室204へと続き得る。最後に、バルーン158は、装置100と共に肺動脈弁210を通って前進されてもよい。操作者は、蛍光透視画像上で装置100の前進を観察することができ、装置100が塞栓208の近くの肺動脈206に配置されると前進を停止することができる。
【0046】
[61] 装置100が塞栓208の近くの肺動脈206に配置されると、第1カテーテル132の第1端部134が肺動脈206の第1分枝212内に配置されるまで、第1カテーテル132は第1管状ハウジング102の第1出口ポート110から外に向けられる。第1カテーテル132の湾曲区分152は、第1カテーテル132の第1端部134を肺動脈206の第1分岐212内に配置するのを助けることができる。次に、第2カテーテル140は、第2管状ハウジング112の第2出口ポート120を通って、肺動脈206の第2分岐214に有利に向けられてもよい。装置100は、図6Cの展開位置に示されている。
【0047】
[62] 所望の脈管構造内に配置されると、次いで、上述のように、治療溶液は、第1及び第2カテーテル132、140の第1及び複数の第2出口138、146を通してそれぞれ治療ゾーンに注入され得る。装置100は、第3管状ハウジング122の第3管腔124に配置され、圧力変換器150に結合されるように構成された圧力変換器ライン148をさらに含み得る。上述のように、圧力変換器150は、肺圧が許容範囲を下回るまで肺圧を有利に監視及び観察することができ、それにより治療の完了を示す。
【0048】
[63] 図1及び図7に示すさらに別の実施形態では、装置100は、第1カテーテル132及び第2カテーテル140のうちの少なくとも一方に結合された第1ポンプ188、及び第1ポンプ188に結合されたリザーバ190をさらに備え得る。特に、第1ポンプ188は、第1カテーテル132及び/又は第2カテーテル140と流体連通するように構成され得る。一実施形態では、装置100は、第1ポンプ188及びリザーバ190の周りに配置されたハウジング192をさらに備えることができる。ハウジング192は、生体適合性の外面を含み得る。リザーバ190は、第1ポンプ188を介して肺動脈に送達するための治療溶液を保持するように構成され得る。第1及び第2カテーテル132、140は、取り付けのための他の選択肢の中でも、外部ロックリングとの圧入摩擦接続を介して第1ポンプ188に結合されてもよい。圧力変換器150は、圧力変換器150が第1ポンプ188に導電的に結合されるように、第1ポンプ188と電子的に通信している。
【0049】
[64] 肺動脈に役に立つ治療溶液には、エポプロステノール(Flolan)及びイロプロスト(Ventavis)を含む、血管拡張薬、並びにアンブリセンタン(Letairis)などのエンドセリン受容体拮抗薬が含まれる。肺動脈に注入できる追加の治療溶液には、シルデナフィル(Viagra)とタダラフィル(Cialis)、アムロジピン(Norvasc)、ジルチゼム(Cardizem,Tiazac)、及びニフェジピン(Adalat,Procardia)を含む、高用量カルシウムチャネル遮断薬、並びに様々な利尿薬が含まれる。冠状動脈疾患用の様々な硝酸塩も、注入されると、有益な場合があり、二硝酸イソソルビド(Dilatrate、Isordil)、一硝酸イソソルビド(ISMO)、及びニトログリセリン(Nitro-Dur、Nitrolingual、Nitrostate)を含む。心不全を治療するために本開示を注入することができる治療薬には、ダブタミン、アンジオテンシン-変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、ベータ遮断薬、利尿薬、アルドステロン拮抗薬、及びジゴキシンなどの強心薬が含まれる。
【0050】
[65] 一実施例では、第1ポンプ188及びリザーバ190は、患者の体外に配置されてもよい。別の実施例では、装置100、第1ポンプ188、及びリザーバ190は、患者内に移植可能であり得る。特に、第1ポンプ188及びリザーバ190は、例えば、患者の皮膚と筋肉の間のポケット内、又は患者の脂肪ポケットの中又はその下に皮下的に配置されてもよい。例示的な実施形態では、第1ポンプ188及びリザーバ190は、患者の腹部、臀部又は大腿部に配置されてもよい。他の場所の例も可能である。第1ポンプ188は、治療溶液を補充するための経皮的にアクセス可能なリザーバを含み得る。これは、患者がフォローアップのために来られたときに、触知可能な経皮マーカーと超音波又は透視ガイドを介して行うことができる。
【0051】
[66] 装置100は、リザーバ190内に配置されたセンサ194をさらに含み得る。センサ194は、リザーバ190内に残っている治療溶液の容量を決定するように構成されている。装置100はまた、センサ194と通信する無線通信インターフェース196を含み得る。無線通信インターフェース196は、決定された容量を、他の情報とともに、ローカル又はリモートのコンピューティングデバイスに送信するように構成される。
【0052】
[67] さらに、装置100は、第1ポンプ188に結合されたコントローラ198を含むことができ、コントローラはプロセッサを有する。コントローラ198は、圧力変換器ライン148を介して圧力変換器150に結合されてもよい。そのような実施形態では、圧力変換器150は、第1ポンプ188と通信し、その結果、コントローラ198は、圧力変換器150によって感知された圧力を記録することができる。特に、コントローラ198は、上述のように、圧力変換器150から受信した情報を、他の情報とともに、ローカル又はリモートのコンピューティングデバイスに送信する無線通信インターフェース196を含むことができる。したがって、コントローラ198は、(i)圧力変換器150を介して、肺動脈血圧が閾値よりも大きいかどうかを決定し、(ii)肺動脈血圧が閾値よりも大きいという決定に応じて第1ポンプ188を作動させて、治療溶液をリザーバ190から第1カテーテル132の複数の第1出口138及び第2カテーテル140の複数の第2出口146に進出させる。第1ポンプ188はまた、上述のように、リザーバ190内に残っている治療溶液のレベルを決定するように構成されたセンサ194を備え得る。センサ194は、コントローラ198と通信していてもよく、無線通信インターフェース196は、決定された容量を、医師のコンピュータなどのローカル又はリモートのコンピューティングデバイスに送信するように構成されていてもよい。したがって、医師は、治療溶液がほぼ空になるのを監視し、患者に連絡して、リザーバ190を補充する時間をスケジュールすることができる。
【0053】
[68] さらに、コントローラ198は、(i)圧力変換器150を介して、血圧が閾値よりも低いことを決定し、及び(ii)血圧が閾値よりも低いという決定に応じて流量を調節するか、又は第1ポンプ188を停止する、ように構成され得る。特定の一実施例では、装置100は、第1カテーテル132に結合された第1ポンプ188と、第2カテーテル140に結合された第2ポンプ189とを含み得る。そのような例では、コントローラ198は、第1及び第2ポンプ188、189を互いに独立して作動及び停止するように構成され得る。さらに、そのような例では、装置100は、第1ポンプ188に結合された第1リザーバ190と、第2ポンプ189に結合された第2リザーバ191とを備えることができる。第1及び第2リザーバ190、191は、同じ治療溶液を含んでもよく、又は第1リザーバ190内の治療溶液は、第2リザーバ191内の治療溶液と異なってもよい。2つ以上のリザーバがある場合、各リザーバのアクセスサイトには、間違った薬剤が間違ったリザーバに追加されないように、補充する目的用の明確に識別可能なマーカーを備えることができる。例えば、第1リザーバ190及び第2リザーバ191のそれぞれは、スタンプ又は放射線不透過性マーカーなどの一意の識別子を含み得る。別の実施例では、一意の識別子は、第1リザーバ190が第2リザーバ191とは異なる形状を有するように、第1リザーバ190及び第2リザーバ191の所定の形状であってもよい。別の実施例では、各リザーバは、対応するカテーテルへの独自の結合機構を含み得る。他の例も可能である。
【0054】
[69] 一実施例では、圧力変換器150、センサ194、及び/又はポンプ188、189は、電力を節約し、バッテリー寿命を延ばすために定期的に動作させることができる。例えば、治療溶液が長時間作用する特性を有する場合、ポンプ188、189は、治療溶液が完全に代謝されるか、又は不活性になると考えられた後にのみオンになるようにプログラムされ得る。さらに、心不全エピソードは、最長60日までの比較的長い期間にわたって進行し、途中で肺動脈圧が徐々に増加するため、センサ194は、バッテリーの節約を可能にする遅延周波数でオンにすることができる。センサ194は、マイクロ電気機械システムとして構築され得、その結果、センサ194は、無線周波数方法で遠隔的に充電され得る。あるいは、センサ194又はポンプ188、189のバッテリーを充電するための機械的エネルギーを収集するために柔軟な統合デバイスを心臓や肺などの臓器に配置できるエネルギー収集方法を使用して、ポンプ188、189を充電してもよい。1つ又は複数のポンプ188、189は、一実施例では、ジルコニウム酸チタン酸鉛などの圧電材料を、整流器及び電池が追加された可撓性シリコーン上に積層することによって作製され得る。
【0055】
[70] さらに、ポンプ188、189は、生体適合性及び血液適合性であり得る。センサのドリフト及びデバイスの故障を引き起こす可能性のある水の侵入から電子機器を保護するには、適切な気密封止が必要である。はんだなどの金属接続を酸化して取り付け不良を引き起こす可能性のある酸素の進入を防ぐために、気密封止も必要である。センサ194はまた、表面で発生する免疫応答を管理して、繊維性組織の被包又は他の細胞性もしくは血液ベースの生物付着を防止することができる。圧力変換器150は、膜及び密封された空洞から作製され得る。1つの膜要素は圧力下で撓みを発生させ、もう1つの膜は真空密閉キャビティ内の底部の剛性面に配置される。膜の撓みにより、電極ペア間で測定される静電容量に変化が生じる事ができる。あるいは、ピエゾ抵抗センシングは、ピエゾ抵抗器を膜表面にパターン化することを可能にし、膜の撓みは、通常はブリッジ回路を介して測定される抵抗の変化に変換され得る。血液に曝される膜は、タンパク質の吸着と最終的に生物付着を防ぐ表面特性を持つように設計されている場合がある。他の実施形態も可能である。
【0056】
[71] 本明細書に記載される装置100は、患者の肺高血圧症又は心不全を治療するために使用され得る。肺高血圧症は、肺動脈と呼ばれる肺内の小さな動脈と毛細血管が狭くなる、ブロックされる、又は破壊されると始まる。これにより、血液が肺を流れにくくなり、肺の動脈内の圧力が上昇する。通常、血液は肺の血管を流れやすくなるため、通常、肺の血圧ははるかに低くなる。肺高血圧症では、血圧の上昇は、肺動脈の内側を覆う細胞の変化によって引き起こされることがある。これらの変化により、余分な組織が形成され、血管が狭くなったり完全に閉塞したりして、動脈が硬く狭くなったりする。これにより、血液の流れが妨げられ、肺動脈の血圧が上昇する。
【0057】
[72] したがって、治療溶液は、肺高血圧症の治療を助けるために様々な形態を取り得る。エンドセリンは、血管を収縮させ、血圧を上昇させるペプチドである。肺におけるエンドセリンの過剰産生は、肺高血圧症を引き起こす可能性があり、これは、ボセンタン、シタキセンタン、又はアンビセンタンなどのエンドセリン受容体拮抗薬で治療される場合がある。エポプロステノールを吸入すると、血管拡張により肺圧が低下することがある。60マイクログラムの用量は血行動態的に安全であり、通常25分後に完全に元に戻る。一実施形態では、60マイクログラム未満のエンドセリン受容体拮抗薬が、ポンプ188、189から、第1及び第2カテーテル132、140を通って、肺血管系に放出され、肺動脈圧を低下させることができる。肺動脈圧が閾値を下回ると、薬物の送達が停止する可能性がある。効果はおそらく約25分で元に戻る。薬物が低下させた後に肺動脈圧が再び増加する場合、ポンプ188、189は、リザーバからより多くの治療溶液を放出することができる。ポンプ188、189及び装置100と共にいくつかの治療薬を使用することができ、この用途はエンドセリン受容体拮抗薬に限定されるべきではない。使用できる代替薬はベンタビスである。ベンタビスは伝統的に3時間ごとに吸入される。この代替実施形態では、肺動脈圧が閾値を超えて増加すると、ベンタビスが効果的に解放されて、肺動脈圧を低下させることができる。肺高血圧症を治療するための他の治療溶液も可能である。
【0058】
[73] さらに、治療溶液は、心不全の治療に役立つ様々な形態をとることができる。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤は血管拡張薬であり、血管を広げて血圧を下げ、血流を改善し、心臓への負担を減じる。例としては、エナラプリル(Vasotec)、リシノプリル(Zestril)、カプトプリル(Capoten)などがある。アンジオテンシンII受容体遮断薬は、ロサルタン(Cozaar)やバルサルタン(Diovan)などの薬物であり、ACE阻害剤と同じ利点が数多くある。それらはACE阻害剤に耐えられない人のための代替品となり得る。ベータ遮断薬は、心拍数を遅くし、血圧を下げ、収縮期心不全の場合に心臓への損傷の一部を制限又は逆転させる薬剤のクラスである。例としては、カルベジロール(Coreg)、メトプロロール(Lopressor)、及びビソプロロール(Zebeta)が挙げられる。これらの薬は、いくつかの異常な心臓のリズムのリスクを減らし、予期せず死ぬ可能性を減じる。ベータ遮断薬は心不全の兆候と症状を軽減し、心機能を改善し、寿命を延ばす可能性がある。利尿薬は、頻尿を引き起こし、体液が体に集まるのを防ぐ。フロセミド(Lasix)などの利尿薬も、肺の中の液体を減らして呼吸を容易にする。アルドステロン拮抗薬は、スピロノラクトン(アルダクトン)及びエプレレノン(インスプラ)を含む薬である。これらはカリウム節約性利尿薬であり、重度の収縮期心不全のある人の余命を延ばすのに役立つ可能性のある追加の特性を有することもある。強心薬は、心臓ポンプ機能を改善し、血圧を維持するために病院で重度の心不全の人々に使用される静脈内薬である。ジゴキシン(ラノキシン)はジギタリスとも呼ばれ、心筋収縮の強度を高める薬である。ジゴキシンはまた、心拍を遅くする傾向がある。ジゴキシンは、収縮期心不全の心不全症状を軽減し、通常、心房細動などの心調律に問題がある人に投与される。心不全を治療するための他の治療ソリューションも可能である
【0059】
[74] 図7に、コンピュータネットワークインフラストラクチャの概略図の例を示す。1つのシステム300では、コンピューティングデバイス305は、有線又は無線接続などの通信リンク304を使用して第1ポンプ188と通信する。コンピューティングデバイス305は、データを受信し、データに対応するか又はデータに関連付けられた情報を表示することができる任意のタイプのデバイスとすることができる。例えば、コンピューティングデバイス305は、例として、携帯電話、タブレット、スマートウォッチ、又はパーソナルコンピュータであり得る。
【0060】
[75] したがって、コンピューティングデバイス305は、プロセッサ308及びディスプレイ310を含むディスプレイシステム306を含み得る。ディスプレイ310は、例えば、光学シースルーディスプレイ、光学シーアラウンドディスプレイ、又はビデオシースルーディスプレイであってもよい。プロセッサ308は、第1ポンプ188からデータを受け取り、ディスプレイ310に表示するためにデータを構成することができる。別の実施形態では、プロセッサ308は、1つ又は複数のセンサ194からデータを受け取り、ディスプレイ310上に表示するためにデータを構成することができる。所望の構成に応じて、プロセッサ308は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、又はそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない任意のタイプのプロセッサであり得る。
【0061】
[76] コンピューティングデバイス305は、プロセッサ308に結合されたメモリ312などのオンボードデータストレージをさらに含み得る。メモリ312は、例えば、プロセッサ308によってアクセス及び実行され得るソフトウェアを格納し得る。メモリ312は、揮発性メモリ(RAMなど)、不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモリなど)、又はそれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない、現在知られている又は後に開発される任意のタイプのメモリを含むことができる。
【0062】
[77] 例示的な実施形態によれば、コンピューティングデバイス305は、メモリ312(及び/又は恐らくは別のデータ記憶媒体)に記憶され、プロセッサ308によって実行可能な、本明細書に記載の様々な機能を容易にするプログラム命令を含み得る。システム300の様々なコンポーネントが分散コンポーネントとして示されているが、そのようなコンポーネントのいずれも、コンピューティングシステムの所望の構成に従って物理的に統合及び/又は分散され得ることを理解されたい。
【0063】
[78] 第1ポンプ188及びコンピューティングデバイス305は、プロセッサ、送信機、受信機、アンテナなどのような通信リンク304を可能にするハードウェアを含み得る。
【0064】
[79] 図7では、通信リンク304は無線接続として示されている。ただし、有線接続も使用できる。例えば、通信リンク304は、ユニバーサルシリアルバス又はパラレルバスなどのシリアルバスを介した有線リンクであり得る。有線接続も独自の接続である場合があり得る。通信リンク304はまた、他の可能性の中でも、例えば、Bluetooth(登録商標)無線技術、IEEE802.11(任意のIEEE802.11改訂を含む)に記載されている通信プロトコル、セルラー技術(GSM、CDMA、UMTS、EV-DO、WiMAX、又はLTEなど)など、又はZigbee(登録商標)技術を使用する無線接続であってもよい。そのような通信リンク504は、402~405MHzの範囲の、又は2GHzを超える周波数帯域を有し得る。
【0065】
[80] したがって、第1ポンプ188及び/又はセンサ194は、電力消費、現在のリザーバレベル、残りの電力レベル、注入速度、及び経時的な圧力測定に関するデータを患者の医師に送信するための無線通信機能を有することができる。さらに、そのような無線通信システムは、ポンプ188のマイクロコントローラ及び不揮発性ストレージがX線によって損傷されず、無線通信システム300がMRI検査中に誘電加熱を引き起こさないように設計され得る。
【0066】
[81] そのようなシステム300では、第1ポンプ188は、計算装置305と通信することができ、計算装置305は、リザーバの治療溶液レベル並びに補充が必要になるまでの推定残り時間を登録することができる。第1ポンプ188はまた、所与の期間にわたる肺動脈圧の用量応答に加えて、時間ベースの肺動脈圧の要約を登録し、コンピューティングデバイス305に送信することができる。第1ポンプ188はまた、コンピューティングデバイス305と通信して、ポンプバッテリーの残りの電力レベル並びに現在の平均電力消費率を登録することができる。次に、コンピューティングデバイス305は、この情報を遠隔で医師に送信して、より良い患者医師のケア管理を促進することができる。さらに、第1ポンプ188は、酸素飽和度、システム血圧(実際又は相対的)などの情報をワイヤレス又はリモートで収集し、第1ポンプ188をオン又はオフにすることにより、第1ポンプ188又はポンプ188、189からの薬剤出力を調整することができる。この情報は、第1ポンプ188及び/又はコンピューティングデバイス305によって無線で記録、記憶、及び送信され得る。
【0067】
[82] 血圧、心拍数、酸素飽和度などの追加の患者情報を追跡することは、肺高血圧症又は心不全の患者にとって臨床的に有用であり得る。一実施形態では、埋め込み型装置100及び第1ポンプ188を有する患者はまた、血圧、心拍数、及び/又は酸素飽和度を監視することができるコンピューティングデバイス305などのウェアラブルデバイスを有するであろう。コンピューティングデバイス305は、無線通信リンク304を介して第1ポンプ188と通信することができ、データは、第1ポンプ188又はコンピューティングデバイス305のいずれかに格納することができる。情報は、定期的に医師に送信されるか、患者がフォローアップの予定で診察されたときに医師のPCにダウンロードされる。そのような実施形態では、第1ポンプ188は、肺動脈圧並びに薬物注入速度に加えて、心拍数、血圧、及び酸素飽和度の入力で制御され得る。別の潜在的な実施形態では、第1ポンプ188は、前述の入力を受け取らない場合に第1ポンプ188を停止する安全機能を有することができる。このシナリオでは、警告メッセージがコンピューティングデバイス305のディスプレイ310及び/又は患者の医師に送信される。
【0068】
[83] 図8は、例示的な実施形態による方法を示す簡略化されたフローチャートである。ブロックは連続した順序で示されているが、これらのブロックは、並列に、及び/又は本明細書に記載されているものとは異なる順序で実行することもできる。また、様々なブロックは、より少ないブロックに組み合わされ、追加のブロックに分割され、及び/又は所望の実装に基づいて除去されてもよい。
【0069】
[84] ブロック402では、本方法400は、図1図7に関連して上述した実施形態のいずれかの装置100を、動脈アクセスを介して動脈構成に導入することを含む。ブロック404では、本方法は、第1カテーテル132の第1端部134が第1出口ポート110を出て、第1管状ハウジング102の第1端部106を越えて延在するように、第1管状ハウジング102に対して第1カテーテル132を前進させることを含む。ブロック406では、本方法は、第2カテーテル140の第1端部142が第2出口ポート120を出て、第2管状ハウジング112の第1端部116を超えて延在するように、第2管状ハウジング112に対して第2カテーテル140を前進させることを含む。ブロック408では、本方法は、第1カテーテル132の複数の第1出口138及び第2カテーテル140の複数の第2出口146から動脈構成へと治療溶液を進出させることを含む。
【0070】
[85] 一実施例では、治療溶液は、約5cc/時~約100cc/時の範囲の流量で、第1カテーテル132及び第2カテーテル140を通って進出されてもよい。
【0071】
[86] 一実施形態では、本方法は、動脈構成内に装置100を導入した後、圧力変換器150を介して血圧を監視することをさらに含み得る。これにより、ユーザーは患者のベースライン血圧を確立することができる。肺動脈へのカテーテル使用による溶解薬注入では、装置100は、12~36時間、所定の場所に残されてもよい。患者がICU看護師による監視下にある場合、肺動脈圧が所定のレベルに達したときに、看護師が血圧を監視するか、システムがアラーム又は注入制御を停止することができる。次に、この方法は、第1カテーテル132の複数の第1出口138及び第2カテーテル140の複数の第2出口146に治療溶液を進出させた後、圧力変換器150を介して血圧を監視することを含む。これにより、血圧の低下を観察することにより、治療溶液が閉塞を減少又は除去したときをユーザーが決定できるようになる。一実施形態では、監視される血圧は、例えば、肺動脈圧であり得る。
【0072】
[87] 別の実施例では、本方法は、第1カテーテル132の第1端部134に結合されたバルーン158を膨張させ、バルーン158を介して第1カテーテル132の第1端部134を動脈構成まで前進させるステップをさらに含み得る。この実施形態では、膨張したバルーン158は、血流によって作用され得る。別の実施例では、本方法は、第1管状ハウジング102の第1端部106に結合されたバルーンを膨張させ、バルーンを介して、第1管状ハウジング102の第1端部106を動脈構成まで前進させるステップをさらに含み得る。別の実施例では、本方法は、動脈アクセスを介してガイドワイヤを動脈構成に導入することと、ガイドワイヤに沿って動脈構成まで装置100を前進させることとをさらに含み得る。
【0073】
[88] 別の実施例では、動脈構成は肺動脈であり、本方法は、第1カテーテル132の第1端部134を肺動脈206の第1分岐212に配置するステップと、第2カテーテル140の第1端部142を肺動脈206の第2分枝214に配置するステップとをさらに含む。
【0074】
[89] 本方法は、第1時点で圧力変換器150を介して第1血圧を決定することと、第1時点で圧力変換器150を介して第2血圧を決定することと、血圧の変化を決定するために第1血圧を第2血圧と比較することとを含むことができる。これにより、使用者は、経時的な肺動脈血圧の低下を観察することにより、治療溶液が閉塞を減少又は除去した時期を判断することができる。
【0075】
[90] 別の実施形態では、本方法は、圧力変換器150を介して、血圧が閾値よりも低いことを決定することと、それに応じて装置100を動脈構成から除去することとをさらに含む。ブロックされていない動脈の肺動脈圧は、約20mmHg~約35mmHgの範囲であるが、このような範囲は、年齢、体液の状態、その他の根本的な病状によって異なる場合がある。したがって、閾値は、約20mmHg~約35mmHgの範囲であり得る。
【0076】
[91] 別の実施形態では、本方法は、ポンプ188を皮下に埋め込むことを含み得、ポンプ188は、第1カテーテル132及び第2カテーテル140に結合される。そのような実施形態では、ポンプ188は、臀部、大腿、又は腹部のうちの1つに埋め込まれるように構成されてもよい。
【0077】
[92] さらに別の実施形態では、本方法は、圧力変換器150を介して、血圧が閾値よりも高いことを決定するステップと、血圧が閾値よりも高いという決定に応じて、ポンプ188は、第1カテーテル132の複数の第1出口138及び第2カテーテル140の複数の第2出口146から治療溶液を進出させるステップとをさらに含む。そのような方法は、圧力変換器150を介して、血圧が閾値よりも低いことを決定するステップと、血圧が閾値よりも低いという決定に応じて、ポンプ188を停止するステップとをさらに含み得る。そのような方法は、患者の肺高血圧症又は心不全を治療するために使用され得る。
【0078】
[93] 上記の説明では、開示された概念の完全な理解を提供するために、これらの詳細の一部又はすべてがなくても実施できる多数の特定の詳細が示されている。他の例では、開示を不必要に不明瞭にすることを避けるために、既知のデバイス及び/又はプロセスの詳細は省略されている。いくつかの概念が特定の例に関連して説明されたが、これらの例は限定を意図するものではないことが理解されよう。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7
図8