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特許7191952蛍光体組み合わせ体、変換素子、オプトエレクトロニクス装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】蛍光体組み合わせ体、変換素子、オプトエレクトロニクス装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/08 20060101AFI20221212BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20221212BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20221212BHJP
【FI】
C09K11/08 J ZNM
C09K11/64
H01L33/50
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020525923
(86)(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2018080607
(87)【国際公開番号】W WO2019092102
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/078913
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102018108842.6
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, 93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ブーテンダイヒ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ プスト
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド オブライエン
(72)【発明者】
【氏名】イオーン シュトル
(72)【発明者】
【氏名】マークス アーダム
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-313902(JP,A)
【文献】特開2016-042579(JP,A)
【文献】特開2007-146154(JP,A)
【文献】特表2015-526532(JP,A)
【文献】特表2012-524141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の蛍光体(1)と第2の蛍光体(2)とを含む、蛍光体組み合わせ体(10)であって、
前記第2の蛍光体(2)は赤色発光量子ドット蛍光体であり、
前記蛍光体組み合わせ体(10)は、下記式
(MB)Li Al :E
を有する第3の蛍光体(3)を含み、ここで、
MBは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znまたはこれらの組み合わせを含む二価金属の群から選択されており、
Eは、Eu、Mn、Ce、Ybおよびこれらの組み合わせを含む群から選択されている
蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項2】
前記第1の蛍光体(1)は緑色発光蛍光体である、
請求項1記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項3】
前記第1の蛍光体(1)は量子ドット蛍光体ではない、
請求項1または2記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項4】
前記第1の蛍光体(1)は、平均粒径が1μm~1000μmである粒子を有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項5】
前記赤色発光量子ドット蛍光体(2)は、1nm~300nmの平均粒径を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項6】
前記赤色発光量子ドット蛍光体(2)は、以下の半導体材料すなわち、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgTe、HgSe、GaP、GaAs、GaSb、AlP、AlAs、AlSb、InP、InAs、InSb、SiC、InN、A1N、ならびに該半導体材料の固溶体、または該半導体材料の組み合わせ、の群から選択された半導体材料のうち少なくとも1つの半導体材料を含む、
請求項1から5までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項7】
前記赤色発光量子ドット蛍光体(2)は、コアシェル構造(2a,2b)を有する、
請求項1から6までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項8】
前記赤色発光量子ドット蛍光体(2)は、平均直径が1~200nmであるコアを有し、かつ平均厚が200nmまでのシェルを有する、
請求項7記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項9】
当該蛍光体組み合わせ体(10)の蛍光体総量に対する前記赤色発光量子ドット蛍光体(2)の割合は、最大で60重量パーセントを有する、
請求項1から8までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項10】
前記第3の蛍光体(3)は、正方晶の空間群P4/mで結晶化している、
請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項11】
前記第3の蛍光体(3)は式SrLiAl:Eu2+を有する、
請求項1から10までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項12】
当該蛍光体組み合わせ体(10)の蛍光体総量に対する前記第3の蛍光体(3)の割合は、少なくとも10重量パーセントである、
請求項1から11までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項13】
少なくとも1つのさらなる蛍光体を含む、
請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)を有する変換素子(20)。
【請求項15】
第1の波長領域の電磁放射を放出する放射放出半導体チップ(50)と、請求項1から13までのいずれか1項記載の蛍光体組み合わせ体(10)とを含む、
オプトエレクトロニクス装置(30)。
【請求項16】
前記蛍光体組み合わせ体(10)は、前記半導体チップ(50)上に配置された変換素子(20)内に、または前記半導体チップ上に存在する注封部材(40)内に、設けられている、
請求項15記載のオプトエレクトロニクス装置(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、蛍光体組み合わせ体、変換素子およびオプトエレクトロニクス装置について述べる。
【0002】
本特許出願は、PCT特許出願PCT/EP2017/078913号および独国特許出願102018108842.6号の優先権を主張するものであり、これらの開示内容はここで参照したことにより本明細書に取り込まれるものとする。
【0003】
従来技術から、たとえば発光ダイオードなどのオプトエレクトロニクス装置によって、可視スペクトルの種々の波長領域の成分を含む光を生成するために、様々な手法が公知である。1つの重要な用途は白色光の生成である。
【0004】
1つのオプトエレクトロニクス装置を用いて可視スペクトルの種々の波長領域をカバーする光を生成するための1つの手法を成すのは、それぞれ異なる波長の光を放出する2つ以上の半導体チップを使用することである。たとえば1つのオプトエレクトロニクス装置が、青色発光半導体チップと赤色発光半導体チップとを含むことができる。白色光を生成しようというケースであれば、青色半導体チップをさらに1つまたは複数の蛍光体と組み合わせることができ、それらの蛍光体によって、青色放射が可視スペクトルのいっそう長い波長の放射たとえば緑色光に変換される。しかしながら公知の赤色発光半導体チップから放出される放射は、そのドミナント波長および強度に関して、温度と印加される電流とに依存して変化する。したがって、青色発光半導体チップに加えて赤色発光導体チップを使用するためには、オプトエレクトロニクス装置内において付加的な動作制御が必要になる。
【0005】
これに対する代案として、可視スペクトルの種々の波長領域をカバーする光を、以下のようにして生成することも可能である。すなわち、ただ1つの半導体チップたとえば青色発光半導体チップが、1つまたは複数の蛍光体と組み合わせられ、その際に蛍光体が半導体チップから放出される放射を可視スペクトルのもっと長い波長の放射に変換するのである。この目的で一般に、複数の通例の蛍光体から成る蛍光体組み合わせ体(もしくは蛍光体混合物)が使用される。たとえば、1つの半導体チップから放出される青色光を、蛍光体混合物を用いて部分的に緑色、黄色および赤色の光に変換するようにして、白色光を生成することができる。種々の波長の光を重ね合わせることによって、全体として白色光を得ることができる。
【0006】
たとえば白色光の場合のように、可視スペクトル内の種々の波長領域を有する複数の成分をカバーする光を生成するオプトエレクトロニクス装置の場合には、効率も色品質も決定的な役割を果たす。
【0007】
効率も色品質(もしくは演色性)もかなりの度合いで、半導体チップから放出される放射を変換する蛍光体混合物により決定される。
【0008】
したがって本発明の課題は、オプトエレクトロニクス装置での使用にあたり、高い効率を良好な演色性と共に実現するのに特に適した複数の蛍光体による組み合わせを、すなわち蛍光体組み合わせ体を提供することにある。さらに、オプトエレクトロニクス装置での使用にあたり、高い効率を良好な演色性と共に実現するのに同様に特に適した変換素子を提供することにある。さらには、上述の蛍光体組み合わせ体を含むオプトエレクトロニクス装置を提供することにある。
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を備えた蛍光体組み合わせ体、請求項17の特徴を備えた変換素子、および請求項18の特徴を備えたオプトエレクトロニクス装置によって解決される。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つの第1の蛍光体と少なくとも1つの第2の蛍光体とを含む蛍光体組み合わせ体について述べられ、この場合、第2の蛍光体は赤色発光量子ドット蛍光体である。
【0011】
ここで蛍光体組み合わせ体とは、種々の蛍光体から組み合わせられたもののことであると解されたい。好ましくは蛍光体組み合わせ体は蛍光体混合物であり、つまり第1の蛍光体および第2の蛍光体が、さらに場合によっては第3の蛍光体または場合によってはさらに別の蛍光体が互いに混合されたものである。たとえば蛍光体を粒子の形態で存在させることができる。たとえば蛍光体組み合わせ体は、蛍光体に加えさらに他の材料たとえばマトリックス材料を含むことができ、このマトリックス材料内に蛍光体が埋め込まれており、もしくはこのマトリックス材料内に蛍光体が分散されている。
【0012】
第1の蛍光体とは特に、たとえばUV放射および/または青色光を可視スペクトルのもっと長い波長の放射に変換するのに適した蛍光体のことであると解されたい。つまり第1の蛍光体は、たとえばUV放射または青色光を吸収し、可視スペクトルのもっと長い波長の放射を放出し、たとえば第1の蛍光体は緑色光を放出する。第1の蛍光体は、第1の蛍光体の固有の発光よりも短い波長を有する波長を吸収することができる。第1の蛍光体はたとえば、著しく幅の広い吸収スペクトルを有することができ、UV放射および/または青色光に加え、シアン色および緑色の光も吸収し、最終的に緑色光を放出することができる。
【0013】
青色光とは、ここではおよび以下の記載では好ましくは、420~490nmの波長を有する光のことであると解され、さらに好ましくは、430~470nmの波長を有する光のことであると解される。
【0014】
緑色光とは、ここではおよび以下の記載では好ましくは、490~570nmの波長を有する光のことであると解される。
【0015】
量子ドット蛍光体とは、ここではおよび以下の記載では、ナノメータ領域の平均直径を有する、すなわち平均直径(d50)が1nm以上1μm未満の半導体の粒子(いわゆる
「量子ドット」、略してQD)のことであると解される。量子ドットを、部分的に凝集体となるよう凝集させることができる。ただし平均直径を決定するにあたっては、ここではおよび以下の記載では、それぞれ個々の量子ドットが決定的な役割を果たす。
【0016】
本発明による蛍光体組み合わせ体における量子ドット蛍光体は、赤色発光量子ドット蛍光体である。すなわち量子ドット蛍光体は特に、UV放射または青色光を赤色波長領域の光に変換するのに特に適しており、つまりUV放射または青色放射を吸収し、赤色光を放出する。
【0017】
本発明による蛍光体組み合わせ体は、改善された効率と同時に良好な色品質の点で優れている。
【0018】
特に白色光など、可視スペクトルにおける種々の波長領域の成分を有する光を生成するために用いられる、従来の蛍光体組み合わせ体は、それらの演色性および効率の点で、数多くの制限を受けている。
【0019】
オプトエレクトロニクス装置での蛍光体組み合わせ体の使用にあたり、その演色性および効率の向上のためにとりわけ、赤色発光蛍光体が重要な役割を果たす。それというのも、目の感度が赤色スペクトル領域において減少することによって、スペクトル効率(LER)が著しく制限されるからである。これと同時に色品質のためには、特に白色光については、明確に規定された赤色の割合が必要とされる。
【0020】
LERは英語の表現”luminous efficacy of radiation”のことを表し、光源の測光放射当量とも称せられる。これは光束(単位lmのφ)と放射出力(単位mWのφ)との商である。LERを求めるために、1つのスペクトルが人間の目の感度に従って重み付けられる。LERによって最終的に、1つのスペクトルの形状がどの程度「効率に関して好適に」与えられているかが示される。
【0021】
本発明の発明者が認識したことは、赤色発光量子ドット蛍光体を使用することによって、明確に規定された所望の赤色の割合を特に良好に達成することができ、このことは演色性に好影響を及ぼす、という点である。量子ドット蛍光体は、それらのサイズがナノ領域にあることから、特別な吸収特性および発光特性を有する。量子ドット蛍光体は、極めて狭帯域の発光スペクトルを有する。これとは引き換えに従来の蛍光体はたいてい、半値幅(FWHM)が60~120nmである幅の広い発光帯域を有する。これに対し量子ドット蛍光体はもっと狭い発光帯域幅を有し、この発光帯域幅は通常は半値幅(FWHM)に関して60nm未満であり、しばしば50nm未満、またはそれどころか40nm未満であり、たとえば20nm~40nmである。
【0022】
半値幅とは、ここではおよび以下の記載では、発光ピークの最大値の半分のレベルにおけるスペクトル幅、略してFWHMまたはFull Width at Half Maximum、のことであると解される。発光ピークとは、最大強度を有するピークのことであると解される。
【0023】
明確に規定された狭帯域の発光は、良好な色品質をもたらすだけでなく、深赤色成分は目による評価がいっそう弱まることから、スペクトル効率の利点も生じさせる(スペクトル効率を略してLERと称する)。
【0024】
本発明の発明者がさらに突き止めたことは、本発明による蛍光体組み合わせ体において量子ドット蛍光体を使用することによって、この蛍光体組み合わせ体を有するオプトエレクトロニクス装置の全体効率を向上させることができる、という点である。全体効率もしくは発光効率(単位LPW=”Lumen pro Watt”の略)は、光束(単位lmのφ)と消費電力(単位WのP)との商から得られる。従来の蛍光体組み合わせ体を有する従来のオプトエレクトロニクス装置(たとえば白色発光LED)の効率は、一連の損失経路によって低減される。
【0025】
既述のスペクトル効率(LER)に加え、オプトエレクトロニクス装置の効率に関して重要であるのは、個々の蛍光体の変換プロセス効率である。蛍光体は、半導体チップから放出されるたとえば青色光などいっそう短い波長の光を、いっそう長い波長の光に変換することから、蛍光体はコンバータとして作用する。たとえば、個々の蛍光体の量子効率(QE)が100%未満の値を有する場合に、損失が発生する。典型的な蛍光体は約90%の量子効率を有し、つまり100個の吸収された光子から90個の変換された光子が放出される。
【0026】
さらなる損失経路は散乱によって引き起こされ、従来のオプトエレクトロニクス装置では蛍光体粒子によって光子がこのような散乱の作用を被る。一般に数μmの領域にある慣用の蛍光体の粒子サイズに起因して、ならびに一般に粒子を取り囲むマトリックス材料に比べて蛍光体粒子の屈折率が異なることに起因して、散乱が発生する。散乱させられた光は、その後、オプトエレクトロニクス装置内の理想的には反射を行わない表面のところで吸収されることが多い。
【0027】
本発明の発明者が認識したことは、慣用の赤色発光蛍光体の発光特性だけでなく吸収特性も、上述の損失経路のいくつかにとって重要な役割を果たす、という点である。慣用の赤色蛍光体を有する従来の蛍光体混合物は、幅広い吸収を有し、これは短い波長の青色スペクトル領域から、赤色スペクトル領域内の蛍光体の固有の発光領域にまで及んでいる(図5A参照)。したがって慣用の赤色蛍光体は、半導体チップから放出されるような青色光を吸収するだけでなく、それらの蛍光体は一部分では、たとえば緑色スペクトル領域に属する光子も放出し、この光子も赤色光に変換する。この結果、同時に2つの損失プロセスが生じる。すなわち、
第1にはこれによって、所定の割合の赤色光子が2段階の変換プロセスによって生成され、すなわち青色から緑色への第1の変換ステップと、緑色から赤色への第2の変換ステップとが行われる。この経路上で発生する赤色光は、量子効率に関して2倍の損失を被る。かかる2段階のプロセスにおける量子効率は、90%ではなく90%*90%=81%だけになってしまう(図6A参照)。
第2には、かかる慣用の蛍光体組み合わせ体においては、常に緑色蛍光体の一部分が「犠牲蛍光体」の役割を担う。このことが意味するのは、緑色蛍光体の一部分は緑色光をまったく放出せず、そうではなく赤色光を放出する、ということである。つまり蛍光体のこの部分は、緑色光子をスペクトルに供するのではなく、赤色光子を生成するためだけに利用される。しかしながら、最適な演色性のためにはスペクトル的には本来は不要なこのような量の犠牲蛍光体は、散乱損失の一因となる。従来の蛍光体組み合わせ体の場合、この損失は、一部ではいっそう大きな蛍光体粒子を用いることによって低減されるが、このことは技術的に制限されており、したがって一定限度内でしか可能でない。
【0028】
つまり、赤色発光量子ドット蛍光体を有しておらず、そうではなくその代わりにもっぱら慣用の赤色発光蛍光体を有する従来の蛍光体組み合わせ体は、とりわけ緑色スペクトル領域における従来の赤色蛍光体の不所望な吸収にそれぞれ帰する損失に特に悩まされている。かかる慣用の蛍光体組み合わせ体の場合には時として、上述の不所望な二重変換を、以下のようにして低減することが試みられる。すなわち蛍光体組み合わせ体における種々の蛍光体を空間的に互いに分離して、オプトエレクトロニクス装置での蛍光体組み合わせ体の使用にあたり、二重変換がこの分離によってもはや起こり得ないようにするのである。しかしながらこのためには、対応する蛍光体組み合わせ体もしくはオプトエレクトロニクス装置を製造する際に、付加的に煩雑なステップが必要とされる。しかもこのような分離によって、色度制御および等方性スペクトルの保証が困難になってしまうことが多い。
【0029】
本発明の発明者が認識したことは、慣用の赤色発光蛍光体が部分的にまたは完全に赤色発光量子ドット蛍光体によって置き換えられた蛍光体組み合わせ体によって、前述の損失経路を低減して効率を改善することができる、という点である。
【0030】
本願では、従来のまたは慣用の蛍光体という用語は、量子ドット蛍光体でもなく、あとで説明する第3の蛍光体の特徴を示す蛍光体でもない蛍光体のことを指す。
【0031】
量子ドット蛍光体は、慣用の蛍光体とは異なる吸収特性を有する。典型的な慣用の赤色発光蛍光体は、著しく幅広いスペクトル領域において吸収を示す一方、量子ドット蛍光体は、ほとんど短い波長のスペクトル領域内でしか、特に青色のスペクトル領域内でしか、吸収を行わない(図5B)。このことは特に、コアシェル構造を有する量子ドット蛍光体の場合に極めて顕著である。コアシェル構造を有する量子ドット蛍光体は、ほぼ青色半導体チップの発光領域内のみで吸収を行う。量子ドット蛍光体は一般に、いっそう長い波長領域での吸収が従来の蛍光体よりも著しく僅かである。赤色発光量子ドット蛍光体は、特に固有の赤色発光の領域では吸収を行わない。つまりこのことは、慣用の第1の蛍光体と赤色発光量子ドット蛍光体とを含む本発明による蛍光体組み合わせ体の場合、量子ドット蛍光体により生成されるスペクトル内の赤色成分は、大部分が青色光から赤色光への変換によって直接的に発生する、ということを意味する。これとは引き換えに、不所望な2段階の変換プロセスが十分に回避される。しかもこのケースでは、第1の蛍光体のさしたる割合しか犠牲蛍光体として現れない。このため、犠牲蛍光体に帰する散乱損失も回避することができる。さらにこれらに加え、量子ドット蛍光体は、ナノ領域にあるそれらの僅かなサイズゆえに、それら自体がさしたる散乱を引き起こさず、その結果、不必要な犠牲蛍光体の回避に基づく散乱損失の既述の間接的な低減に加え、量子ドット蛍光体の僅かな散乱に基づく散乱損失の直接的な低減ももたらされる。
【0032】
赤色発光量子ドット蛍光体を使用することにより、前述の損失経路を著しく低減することができるので、本発明による蛍光体組み合わせ体によって、いっそう高い変換効率を実現することができる。つまり赤色発光量子ドット蛍光体を用いることによって、スペクトル効率に関しても変換効率に関しても利点がもたらされ、その結果、オプトエレクトロニクス装置において相応の蛍光体組み合わせ体を使用することで、総じて改善された全体的電気効率が生じるようになる。
【0033】
本発明の発明者が認識したことは、本発明による蛍光体組み合わせ体において、スペクトル効率および変換効率に関する両方の貢献度は、当初の予想に反して好ましいものであり、したがって意外なことに全体効率を高めることができるようになる、という点である。散乱が僅かになることにより得られる利点は、該当する量子ドット蛍光体の量子効率が、たとえ置き換えられた慣用の赤色発光蛍光体の量子効率よりも低いものであったとしても、なお変換効率に対する正味の利得が達成されるほど、大きいものとなる可能性がある。この点については、発明者により計算および実験によって証明された(図7および図8)。
【0034】
次に、本発明による蛍光体組み合わせ体の好ましい発展形態について述べる。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、量子ドット蛍光体は青色光を吸収し、赤色光を放出する。好ましくは量子ドット蛍光体は、420~490nmのピーク波長を、さらに好ましくは430~470nmのピーク波長を有する青色光を吸収する。好ましくは量子ドット蛍光体は、590~650nmの範囲内のピーク波長を、さらに好ましくは600nm~640nmの範囲内の、たとえば610nm~650nmまたは620nm~640nmの範囲内のピーク波長を有する光を放出する。
【0036】
「ピーク波長」とはここでは、発光スペクトル内の最大強度が位置する発光スペクトル内の波長のことを指すことができる。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、量子ドット蛍光体は赤色光を放出し、その際に発光帯域は半値幅(FWHM)において10nm~60nmであり、特に15~50nmであり、好ましくは20~40nmである。
【0038】
少なくとも1つの好ましい実施形態によれば、本発明による蛍光体組み合わせ体は蛍光体混合物である。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体組み合わせ体は、さらにマトリックス材料を有する蛍光体混合物であり、このマトリックス材料の中に、第1の蛍光体および赤色発光量子ドット蛍光体ならびに場合によっては第3の蛍光体および/またはさらなる蛍光体が埋め込まれている。蛍光体を、特に均等にマトリックス材料内に分散させておくことができる。特に、マトリックス材料は透明なマトリックス材料であり、たとえば樹脂、シリコーン、ガラスまたはハイブリッド材料もしくはこれらの組み合わせを含む、またはこれらから成る、マトリックス材料である。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体組み合わせ体はさらに第3の蛍光体を有する。好ましくは、第3の蛍光体は赤色発光蛍光体である。
【0041】
たとえば、第3の蛍光体も量子ドット蛍光体とすることができる。さらなる量子ドット蛍光体によって、可視スペクトルのさらなる領域を、明確に規定された狭帯域の発光によって、所期のようにカバーすることができ、これと同時に効率損失を回避することができる。たとえば、第3の蛍光体も赤色発光量子ドット蛍光体とすることができる。このケースでは、第2の蛍光体として、短い波長の赤色領域で発光する量子ドット蛍光体を選択し、第3の蛍光体として、長い波長の赤色領域で発光する量子ドット蛍光体を選択することができる。つまりこの場合、第3の蛍光体は、第2の蛍光体よりも長い波長の可視スペクトル領域で発光する。かかる蛍光体組み合わせ体は、高い効率と良好な演色性の点で優れている。
【0042】
好ましくは第3の蛍光体は、水銀(Hg)および/またはカドミウム(Cd)不含の赤色発光蛍光体である。一連の市販の量子ドット蛍光体は、HgまたはCdといった重金属を有し、それらの濃度は、RoHSの規制(危険物質の制限、”reduction of hazardous substances”、EU指令2011/65/EU)のもとで、市販の電子機器および電気機器において制限されている。第3の蛍光体として、Hgおよび/またはCd不含の赤色発光蛍光体が選択されることによって、場合によってはHgおよび/またはCdを有し量子ドット蛍光体である第2の蛍光体の成分を、EU指令2011/65/EUの規準値を遵守できるよう、量的に制限することができる。かかる蛍光体組み合わせ体は、色品質に対する高度な要求を満たす。これと同時に、かかる蛍光体の組み合わせは、高い効率を有し、かつRoHSの規制を満たす。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の蛍光体は緑色発光蛍光体である。好ましくは、第1の蛍光体は青色光を吸収し、たとえば430~470nmのピーク波長を有する光を吸収し、緑色光を放出し、特に490~570nmのピーク波長を有する緑色光を放出する。
【0044】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の蛍光体は慣用の蛍光体である。このことは特に、第1の蛍光体は量子ドット蛍光体ではない、ということを意味する。つまりこの場合には蛍光体混合物は、第2の蛍光体として少なくとも1つの赤色発光量子ドット蛍光体を有し、第1の蛍光体として非量子ドット蛍光体を有する。
【0045】
本発明の発明者が認識したことは、とりわけ赤色発光蛍光体の吸収特性および発光特性が色品質および効率に決定的な役割を果たす、という点である。したがって残りの蛍光体は、必ずしも量子ドット蛍光体でなくてもよい。好ましくは第1の蛍光体はHgおよび/またはCdを有しておらず、このためRoHSの規制を満たすために役立つ。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体混合物は、前述のRoHS指令と調和している。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の蛍光体は粒子の形態を有する。好ましくは第1の蛍光体は、平均粒径(d50)が0.1μm~1000μmである粒子を、さらに好ましくは1μm~1000μmである粒子を有する。特に好ましくは第1の蛍光体は、平均粒径(d50)が1μm~50μmである粒子を、たとえば5μm~50μmである粒子を有する。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の蛍光体は、β-SiAlONを含む、またはβ-SiAlONから成る、緑色蛍光体である。β-SiAlONをたとえば、以下の化学式すなわちSi6-zA18-z:REに従うものとすることができ、ここで好ましくは0<z≦6および0.001≦y≦0.2が適用され、REは、希土類金属から選択された1つまたは複数の元素であり、好ましくは少なくともEuおよび/またはYbである。
【0049】
さらに以下のようにすることも可能である。すなわち第1の蛍光体は、式Y(Al1-xGa12:Ceを有する、またはこの材料から成る緑色蛍光体であり、ここでGaの割合は、0.2≦x≦0.6であり、好ましくは0.3≦x≦0.5であり、特に好ましくは0.35≦x≦0.45である。
【0050】
しかも第1の蛍光体を、以下のような緑色蛍光体とすることができる。すなわちこの緑色蛍光体は(Gd,Y)(Al1-xGa12:Ce、または(Tb,Y)(Al1-xGa12:Ceを有し、またはこれらの材料のうちの1つから成り、ただしセリウムの割合は1.5mol%~5mol%であり、好ましくは2.5mol%~5mol%であり、ガリウムの割合xは0~0.5であり、好ましくはxは0~0.1である。
【0051】
さらに以下のようにすることも可能である。すなわち第1の蛍光体はLu(Al1-xGa12:Ce、または(Lu,Y)(Al1-xGa12:Ceを有し、またはこれらの材料のうちの1つから成り、ただしセリウムの割合は、それぞれ希土類金属に対して0.5mol%~5mol%であり、好ましくは0.5mol%~2mol%であり、ガリウムの割合xは0~0.5であり、好ましくは0.15~0.3である。
【0052】
本発明による蛍光体組み合わせ体の少なくとも1つの実施形態によれば、赤色発光量子ドット蛍光体は、1nm~300nmの平均粒径(d50)を有し、好ましくは1nm~100nmの平均粒径を、さらに好ましくは1nm~30nm、特に好ましくは2nm~50nm、たとえば2nm~20nmの平均粒径を有する。このようなサイズオーダのナノ粒子は、明確に規定されたバンドギャップを有し、極めて明確に規定された吸収特性および発光特性の点で優れている。この場合、発光波長は、半導体材料のバンドギャップと、量子ドット蛍光体の個々のサイズによる量子化とから、結果として生じる。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によれば、量子ドット蛍光体の粒子の形態は球状である。ただし粒子の形態を基本的には縦長としてもよく、つまり理想的な球形から逸脱していてもよい。
【0054】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による蛍光体組み合わせ体の赤色発光量子ドット蛍光体は、以下の半導体材料すなわち、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgTe、HgSe、GaP、GaAs、GaSb、AlP、AlAs、AlSb、InP、InAs、InSb、SiC、InN、A1N、ならびにこれらの半導体材料の固溶体、またはこれらの半導体材料の組み合わせ、の群から選択された半導体材料のうち少なくとも1つの半導体材料を含む。二元固溶体に加え、三元固溶体および四元固溶体も考えられる。たとえば量子ドット蛍光体は、上述の半導体材料のうち厳密に1つ、厳密に2つ、厳密に3つ、または厳密に4つの半導体材料を含むことができ、またはそれらの半導体材料から成るものとすることができる。
【0055】
少なくとも1つの別の実施形態によれば、量子ドット蛍光体は、ペロブスカイト構造をもつ材料を有する。
【0056】
たとえばEu2+ドープされた窒化物、たとえばCaAlSiN:Eu2+、(Ba,Sr)Si:Eu2+、またはEu2+ドープされた硫化物などのように、量子ドット蛍光体ではない典型的な慣用の赤色蛍光体とは異なり、量子ドット蛍光体は、かなりもっと小さい発光半値幅を有する。
【0057】
少なくとも1つの実施形態によれば、量子ドット蛍光体は、コアシェル構造(英語ではcore-shell-structure)を有する。その際に好ましくは、コアとシェルとは互いに異なる半導体材料を有する。このようにすれば、吸収と発光とをスペクトル的に互いに分離することができる。たとえば、吸収を主としてまたはもっぱらシェルによって行うことができる一方、発光は主としてまたはもっぱらコアによって行われる。このことは、コアとシェルとについて選択された半導体材料のバンドギャップがそれぞれ異なることに基づき可能である。
【0058】
少なくとも1つの好ましい実施形態によれば、コアはCdSeを含み、またはCdSeから成り、シェルはCdSを含み、またはCdSから成る。
【0059】
少なくとも1つの実施形態によれば、量子ドット蛍光体はいわゆる「複合構造」を有する。このことはたしかに、内部もしくはコアにおいてその表面もしくはシェルとは異なる組成を有する量子ドット蛍光体のことを意味してはいる。しかしながら従来のコアシェル構造とは異なり、この構造はコアとシェルとの間の境界がはっきりしておらず、そうではなく移行部分が滑らかである。換言すれば、量子ドット蛍光体は少なくとも2つの半導体材料を有し、たとえば上述の記載で挙げた半導体材料のうち少なくとも2つの半導体材料を有し、しかも量子ドット蛍光体は、これら少なくとも2つの半導体材料の組成の点で内側から外側に向かって勾配を有する。
【0060】
本発明による蛍光体組み合わせ体の少なくとも1つの実施形態によれば、赤色発光量子ドット蛍光体は、平均直径が1~100nmである、好ましくは2~10nmであるコアと、平均厚が200nmまでの、好ましくは20nmまでの、たとえば1~200nmである、または1~20nmである、たとえば1~10nmなどであるようなシェルとを有する。たとえばシェルの厚さは2~20nmであり、たとえば5~20nmなどである。このようなシェルによって、特に仕様に適合され目的に合った吸収が可能となる。シェルが薄すぎると、吸収の利点が少なくなってしまう。
【0061】
本発明による蛍光体組み合わせ体の少なくとも1つの実施形態によれば、量子ドット蛍光体はSiO被覆部を有する。つまり、それぞれ蛍光体の1つまたは複数の量子ドットは、SiOを含む、またはSiOから成る被覆部によって取り囲まれている。たとえば量子ドット蛍光体はコアシェル構造を有し、かつ付加的にSiO被覆部を有する。つまりこのケースでは量子ドット蛍光体は、1つのコアに加え複数のシェルを有し、その際に第1のシェルは半導体材料を含む一方、さらなるシェルをSiOシェルとすることができ、したがってSiO被覆部を成している。SiO被覆部は、量子ドット蛍光体の凝集を低減するためにまたは阻止するために、さらには量子ドット蛍光体をたとえば酸素または水から保護する目的で適している。
【0062】
少なくとも1つの発展形態によれば、SiO被覆部は1μm~20μmの直径を有する。少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体総量に対する赤色発光量子ドット蛍光体の割合は、60重量%未満であり、好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは20重量%未満、特に好ましくは10重量%未満、さらにいっそう好ましくは5重量%未満であり、またはそれどころか2重量%未満である。たとえば、蛍光体組み合わせ体における蛍光体総量に対する量子ドット蛍光体の割合は、0.1~60重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、または0.1~10重量%であり、たとえば0.1~5重量%、たとえば1~2重量%などである。
【0063】
1つの好ましい実施形態によれば、本発明による蛍光体組み合わせ体は第3の蛍光体を含み、その際にこの第3の蛍光体は式
(MB)(TA)3-2x(TC)1+2x4-4x4x:E
を有する。
【0064】
TAは、一価金属の群から選択されている。特にTAは、一価金属であるリチウム、ナトリウム、銅、銀およびこれらの組み合わせを含む群から選択されている。好ましくはTAはリチウムである。
【0065】
MBは、二価金属の群から選択されている。特にMBは、二価金属であるマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛およびこれらの組み合わせを含む群から選択されている。有利にはMBは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはこれらの組み合わせである。好ましくはMBはストロンチウムである。
【0066】
TCは、三価金属の群から選択されている。特にTCは、三価金属であるホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、イットリウム、鉄、クロム、スカンジウム、希土類金属およびこれらの組み合わせを含む。好ましくはTCはアルミニウムである。
【0067】
Eは、ユーロピウム、マンガン、セリウム、イッテルビウムおよびこれらの組み合わせを含む群から選択されている。好ましくはEは、Eu3+、Eu2+、Ce3+、Yb3+、Yb2+および/またはMn4+である。さらに好ましくは、EはEu2+である。
【0068】
ここで0<x<0.875が適用される。好ましくは0.45<x<0.55が適用される。さらに好ましくはx=0.5が適用される。
【0069】
本発明の発明者が認識したことは、第1の蛍光体と、赤色発光量子ドット蛍光体である第2の蛍光体と、一般式(MB)(TA)3-2x(TC)1+2x4-4x4x:Eを有する第3の蛍光体とを含む、蛍光体組み合わせ体は、格別良好な色品質と高い効率とを兼ね備えており、したがってオプトエレクトロニクス装置での使用にあたりスペクトル的な利点がもたらされる、という点である。これに加え、かかる蛍光体組み合わせ体は、唯一の赤色発光蛍光体として量子ドット蛍光体を有する蛍光体組み合わせ体よりも環境適合性が高い。一般式(MB)(TA)3-2x(TC)1+2x4-4x4x:Eの第3の蛍光体を使用することによって、同じ色度を維持しかつ同じ光品質を維持しながら、Hgおよび/またはCdがいっそう僅かな量子ドット蛍光体を使用することができ、このことによって、蛍光体組み合わせ体がRoHS規制の要求を満たす、ということを達成できる。
【0070】
これに加え、第3の蛍光体として(MB)(TA)3-2x(TC)1+2x4-4x4x:Eを使用することの利点は、この赤色発光蛍光体は従来の赤色発光蛍光体よりも狭帯域の発光を有する、ということである。このことは、演色性およびスペクトル効率の点で好ましい。
【0071】
総じて、ここで説明した種類の第3の蛍光体を有する既述の蛍光体組み合わせ体によって、二重変換および散乱の減少がもたらされる。これによって、蛍光体組み合わせ体における蛍光体の総量を低減することができる。このような低減によって、散乱をさらに減少させることができる。かくして、かかる蛍光体組み合わせ体をオプトエレクトロニクス装置において使用することによって、全体的電気効率を著しく高めることができるようになる。
【0072】
少なくとも1つの実施形態によれば、第3の蛍光体は式
(MB)Li3-2xAl1+2x4-4x4x:E
を有する。MBは、二価金属の群から選択されている。特にMBは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛およびこれらの組み合わせを含む群から選択されている。有利にはMBは、カルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはこれらの組み合わせである。特にMBはストロンチウムである。Eは、ユーロピウム、マンガン、セリウム、イッテルビウムおよびこれらの組み合わせを含む群から選択されている。特にEは、Eu3+、Eu2+、Ce3+、Yb3+、Yb2+および/またはMn4+である。ここで0<x<0.875が適用される。特に0.45<x<0.55が適用される。有利にはx=0.5である。
【0073】
ここではおよび本願全体では、蛍光体は組成式に基づき記述される。記述された組成式において、蛍光体がさらなる元素をたとえば不純物という形態で有する可能性があり、その際にそれらの不純物は全体として見れば、好ましくは最大で蛍光体の1‰または100ppm(Parts per Million)または10ppmという重量割合を有する。
【0074】
活性体Eu、Ce、Ybおよび/またはMn、特にEu、あるいはCe、Ybおよび/またはMnと組み合わせられたEuを使用することにより、CIE色空間における第3の蛍光体の色度、そのピーク波長λpeakもしくはドミナント波長λdomおよび半値幅を、格別良好に調整することができる。
【0075】
さらなる実施形態によれば、活性体Eを、0.1mol%~20mol%、1mol%~10mol%、0.5mol%~5mol%のモル%量で存在させることができる。Eの濃度が高すぎると、濃度消光によって効率損失が引き起こされる可能性がある。ここではおよび以下の説明では、活性体E、特にEuについてのmol%の記載は、特に第3の蛍光体におけるMBのモル比に対するモル%の記載のことであると解される。
【0076】
さらなる実施形態によれば、MBを、80mol%~99.9molのモル%量で存在させることができる。
【0077】
少なくとも1つの実施形態によれば、第3の蛍光体は正方晶の空間群P4/mで結晶化している。この空間群で結晶化している蛍光体は、特に狭帯域の発光を有する。
【0078】
少なくとも1つの実施形態によれば、x=0.5である。この場合、式(MB)LiAl:Eを有する第3の蛍光体が得られ、ここでMBは、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛またはこれらの組み合わせを含む二価金属の群から選択されており、ここでEは、ユーロピウム、マンガン、セリウム、イッテルビウムおよびこれらの組み合わせを含む群から選択されている。
【0079】
特に好ましくは、第3の蛍光体はSrLiAl:Euである。つまり第3の蛍光体は特に好ましくは、ユーロピウムドープされたリチウムオキソニトリドアルミネート蛍光体である。この蛍光体は、特に狭帯域の発光を有する。前述の利点は、第3の蛍光体としてのこの蛍光体に関して特に顕著である。
【0080】
少なくとも1つの実施形態によれば、第3の蛍光体は、赤色スペクトル領域に属する電磁放射を放出する。特にこの蛍光体は、590nm以上620nm以下、好ましくは595nm以上615nm以下、特に好ましくは600nm以上610nm以下のドミナント波長を有する放射を放出する。
【0081】
たとえば式SrLiAl:Euの蛍光体は、たとえば460nmの波長を有する1次放射により励起されると、電磁スペクトルの赤色スペクトル領域において発光して狭帯域の発光を示し、すなわち半値幅が狭い発光、有利には半値幅が55nm未満の発光を示す。
【0082】
少なくとも1つの実施形態によれば、第3の蛍光体は以下のような発光スペクトルを有する。すなわちこの発光スペクトルの最大ピーク波長は614nm±10nm、9nm、8nm、7nm、6nm、5nm、4nm、3nm、2nmまたは1nmであり、かつ/または半値幅は70nm未満、65nm未満、または60nm未満、特に55nm未満、好ましくは50nm未満であり、たとえば48nmである。
【0083】
少なくとも1つの実施形態によれば、半値幅は55nm未満であり、好ましくは50nm未満であり、たとえば45nm以下である。
【0084】
少なくとも1つの実施形態によれば、第3の蛍光体は、空間群I4/mまたはUCrタイプの結晶構造では結晶化していない。
【0085】
これとは異なる実施形態によれば、第3の蛍光体は、空間群I4/mまたはUCrタイプの結晶構造で結晶化している。
【0086】
少なくとも1つの実施形態によれば、第3の蛍光体を、UVスペクトル領域および/または青色スペクトル領域に属する1次放射によって励起可能である。たとえばこの蛍光体を、430~470nm、たとえば460nm±10%の波長によって励起可能である。
【0087】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体総量に対する第3の蛍光体の割合は、60重量%未満であり、好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは20重量%未満であり、特に好ましくは10重量%未満である。たとえば、蛍光体組み合わせ体における蛍光体総量に対する第3の蛍光体の割合は、0.1~60重量%、0.1~30重量%、0.1~20重量%、または0.1~10重量%である。
【0088】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体組み合わせ体の蛍光体総量に対する第3の蛍光体の割合は、少なくとも10重量パーセント、好ましくは少なくとも20重量パーセントである。
【0089】
1つの実施形態によれば、蛍光体組み合わせ体は少なくとも1つのさらなる蛍光体を含み、これは好ましくは第1、第2および第3の蛍光体とは異なる蛍光体である。
【0090】
1つの実施形態によれば、さらなる蛍光体は一般式
(1-x-y-Z)[A4-n]:ESRE
の蛍光体である。
- ここでMは、元素Ca、Sr、Baの群から選択されている。
- ここでZは、元素Na、K、Rb、Cs、Agの群から選択されている。
- ここでAは、元素Mg、Mn、Znの群から選択されている。
- ここでBは、元素B、Al、Gaの群から選択されている。
- ここでCは、元素Si、Ge、Ti、Zr、Hfの群から選択されている。
- ここでDは、元素LiおよびCuの群から選択されている。
- ここでEは、元素P、V、Nb、Taの群から選択されている。
- ここでESはCe3+である。
- ここでREは、Eu2+、Eu3+、Yb2+、Yb3+から成る群から選択されている。
ただし以下が適用される。すなわち、
- 0≦x≦0.2
- 0≦y≦0.2
- 0≦x+y≦0.4
- 0≦z≦1、好ましくはz≦0.9が適用され、たとえばz≦0.5が適用される。
- 0≦n≦0.5
- 0≦a≦4、たとえば2≦a≦3が適用される。
- 0≦b≦4
- 0≦c≦4
- 0≦d≦4
- 0≦e≦4
- a+b+c+d+e=4
- 2a+3b+4c+d+5e=10-y-n+z
特に好ましくは、x+y+z≦0.2が適用される。
【0091】
1つの好ましい実施形態によれば、さらなる蛍光体は以下の蛍光体のリストから選択されている。すなわち、
- Ce3+ガーネットたとえば、
-- Y(Al1-xGa12:Ce3+
-- (Gd,Y)(Al1-xGa12:Ce3+
-- (Tb,Y)(Al1-xGa12:Ce3+
-- Lu(Al1-xGa12:Ce3+
-- (Lu,Y)(Al1-xGa12:Ce3+
- Ce3+ドープされた(オキシ)窒化物たとえば、
-- (La,Y)Si11:Ce3+
-- (La1-xCaSi(N1-y11:Ce3+
ただし0≦x≦1かつ0≦y≦1
- Eu2+酸化物、(オキシ)窒化物たとえば、
-- (Ca,Sr)AlSiN:Eu2+
-- Sr(Sr,Ca)SiAl:Eu2+
-- (Ca,Ba,Sr)Si:Eu2+
-- SrAlSi:Eu2+
-- Sr[AlLiN]:Eu2+
-- Ca[AlLiN]:Eu2+
-- CaMg(SiO12:Eu2+
- Eu2+ドープされた硫化物たとえば、
-- CaS:Eu2+
-- SrGa:Eu2+
- Mn4+ドープされた蛍光体、この場合、ホスト構造としてたとえばKSiF、NaSiF、KTiFを用いることができる。
【0092】
Mn4+ドープされた蛍光体として、一般にフッ化物およびオキシフッ化物の蛍光体を、たとえば一般式
EA[B]:Mn4+
の蛍光体を使用することができる。
-- ただしAは、Li、Na、K、Rb、Cs、Cu、Ag、NHまたはこれらの組み合わせから成る群から選択されており、
-- ただしEAは、Be、Mg、Ca、Ba、Sr、Znまたはこれらの組み合わせから成る元素の群から選択されており、
-- ただしBは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Hfから成る元素の群から選択されており、
-- ただしCは、Al、Ga、In、Gd、Y、Sc、La、Bi、Crから成る元素の群から選択されており、
-- ただしDは、Nb、Ta、Vから成る元素の群から選択されており、
-- ただしEは、W、Moまたはこれらの組み合わせから成る元素の群から選択されている。
ここで[EAからの部分電荷dが(2*x+y)から生じ、これは[[B]:Mn4+ の部分電荷eの反転に相応し、この部分電荷は(4*z+3*f+5*g+6*h+4*c-2*a-b)からも構成される。
【0093】
同様に、MgGeO3,5Fをホスト構造として用いることができ、この場合、活性体含有量は好ましくは3原子%以下であり、特に好ましくは1原子%以下である。さらなる蛍光体は、一般式(4-x)MgO*xMgF*GeO:Mn4+を有することができる。
【0094】
同様に、Mn4+ドープされたAGeもしくはAA’Ge18をさらなる蛍光体として用いることができ、ただしAおよびA’は、それぞれ互いに依存することなく元素Li、K、Na、Rbの群から選択されており、たとえばMn4+ドープされたKGe,RbGeまたはLiRbGe18である。
【0095】
同様に、Mn4+ドープされたSrAl1425、MgTiO、CaZrO、GdGa12、Al、GdAlO、LaAlO、LiAl、SrTiO、YTi、YSn、CaAl1219、MgO、BaLaNbOを、さらなる蛍光体として用いることができる。
【0096】
- しかも(ナノ粒子)半導体材料の分類からの蛍光体、たとえば一般組成ZMXの蛍光体を、さらなる蛍光体として用いることができ、
-- ただしZは、Cs,CHNH、CH(NH、(CHNHから成る群から選択されており、
-- ただしMは、Pb、Sn、Ge、Mn、Cd、Znから成る群から選択されており、
-- ただしXは、Br、I、SCNから成る群から選択されている。
【0097】
- しかも一般式A IIIの蛍光体を、さらなる蛍光体として用いることができ、
-- ただしAは、Cs,CHNH、CH(NH、(CHNHから成る群から選択されており、
-- ただしMは、Ag、K、Tl、Auから成る群から選択されており、
-- ただしMIIIは、Sb、Bi、As、Snから成る群から選択されており、
-- ただしXは、Br、I、SCNから成る群から選択されている。
たとえば式CsSb、(CHNHSb、CsSnIの蛍光体である。
【0098】
第2の態様によれば本発明は、本発明の第1の態様による蛍光体組み合わせ体を有する変換素子に関する。
【0099】
少なくとも1つの実施形態によれば、この変換素子は少なくとも1つの層を有する。蛍光体組み合わせ体は、好ましくはこの層内に存在している。
【0100】
少なくとも1つの実施形態によれば、この変換素子は第1の層に加え、少なくとも第2の層および/または第3の層を有する。たとえば第2の層を、第1の層の上に配置しておくことができる。第3の層を、第2の層の上に配置しておくことができる。蛍光体組み合わせ体の蛍光体を、個々の層の上に分散さておくことができる。たとえば蛍光体各々を、1つの固有の層内に存在させることができる。
【0101】
少なくとも1つの実施形態によれば、この変換素子は少なくとも1つのマトリックス材料を有する。たとえば蛍光体を、このマトリックス材料中に埋め込んでおくことができ、またはその中に分散させておくことができる。特に蛍光体を、粒子として均等にこのマトリックス材料内に分散させておくことができる。
【0102】
第3の態様によれば本発明は、第1の波長領域の電磁放射を放出する放射放出半導体チップと、本発明の第1の態様による蛍光体組み合わせ体とを含む、オプトエレクトロニクス装置に関する。
【0103】
本発明によるオプトエレクトロニクス装置は、格別良好な演色性および効率の点で優れている。
【0104】
半導体チップを、特にUV放射および/または青色光を放出する半導体チップとすることができる。好ましくは半導体チップは、青色スペクトル領域に属する光を放出する。さらに好ましくは半導体チップは、430nm~470nmのピーク波長を有する光を放出する。
【0105】
少なくとも1つの好ましい実施形態によれば、蛍光体組み合わせ体は、半導体チップのビーム路中に配置されている。たとえば蛍光体組み合わせ体は、半導体チップの主放射出射面上に配置されている。
【0106】
少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体組み合わせ体は、半導体チップ上に配置された変換素子内に設けられている。少なくとも1つの実施形態によれば、蛍光体組み合わせ体は、注封部材として半導体チップの上方に配置されている。
【0107】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明によるオプトエレクトロニクス装置は発光ダイオード(LED)であり、好ましくは白色発光LEDである。
【0108】
本発明のさらなる有利な実施形態および発展形態は、図面を参照しながら説明する以下の実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1A】本発明による蛍光体組み合わせ体10の概略的側面図を示す図である。
図1B】本発明による蛍光体組み合わせ体10の概略的側面図を示す図である。
図2】蛍光体組み合わせ体10を有する本発明による変換素子20の概略的側面図を示す図である。
図3A】本発明によるオプトエレクトロニクス装置30の実施形態の概略的側面図を示す図である。
図3B】本発明によるオプトエレクトロニクス装置30の実施形態の概略的側面図を示す図である。
図4】第2の蛍光体の例示的な構造を概略的に示す図である。
図5A】慣用の赤色発光蛍光体の吸収特性(A)と発光特性(E)を示す図である。
図5B】赤色発光量子ドット蛍光体(QD)の吸収特性(A)と発光特性(E)を示す図である。
図6A】青色半導体チップと従来の蛍光体組み合わせ体とを備えた発光ダイオードの発光スペクトルを示す図である。
図6B】本発明による蛍光体組み合わせ体を備えた発光ダイオードの発光スペクトル(W QD)を示す図である。
図7】本発明による蛍光体組み合わせ体を使用するオプトエレクトロニクス装置において、相対的な効率向上がどのようにして実現されるのかについての計算による説明を示す図である。
図8A】本発明によるLEDと参照LEDとにおける測定結果を示す図である。
図8B図8Aの測定で使用されたLEDにおいてどのような蛍光体組み合わせ体が適用されたのかの説明を示す図である。
図9】一連の個別の蛍光体についてシミュレートされた発光スペクトルを示す図である。
図10】種々の蛍光体組み合わせ体(実施例1~3ならびに比較例1および2)に基づく白色光LEDの発光スペクトルのシミュレーションを示す図である。
図11】蛍光体組み合わせ体の組成をまとめた表を示す図である。
【0110】
図中、同じ、同種の、または同じ作用を有する部材には、同じ参照符号が付されている。図面およびそれらの図面に描かれている部材同士のサイズの比率は、縮尺どおりではないと見なされたい。むしろ個々の部材は、見やすくするために、かつ/または理解しやすくするために、誇張されたサイズで描かれている場合がある。
【0111】
図1Aには、本発明による蛍光体組み合わせ体10の概略的側面図が示されており、この蛍光体組み合わせ体10は、第1の蛍光体1と、赤色発光量子ドット蛍光体である第2の蛍光体2とを含む。好ましくはさらに第3の蛍光体3も存在しており、これはたとえば赤色発光蛍光体SrLiAl:Euである。図1Aに描かれているように、蛍光体組み合わせ体10は好ましくは蛍光体混合物10である。
【0112】
図1Bには、本発明による蛍光体組み合わせ体10の概略的側面図が示されており、ただし図1Bの場合には蛍光体は互いに混合されていない。蛍光体組み合わせ体は、蛍光体混合物であるのがたしかに好ましいけれども、蛍光体が互いに混合されずに存在しているということも可能である。
【0113】
図2には、蛍光体組み合わせ体10を有する本発明による変換素子20の概略的側面図が示されている。好ましくはこの変換素子は、蛍光体組み合わせ体を蛍光体混合物として有する。この変換素子はマトリックス材料4を有することができ、その中に蛍光体が埋め込まれている。
【0114】
図3Aおよび図3Bには、本発明によるオプトエレクトロニクス装置30の実施形態の概略的側面図がそれぞれ示されている。これらはそれぞれ1つの半導体チップ50を有し、この半導体チップ50のビーム路中に本発明による蛍光体組み合わせ体が存在している。図3Aのケースでは、蛍光体組み合わせ体を有する本発明による変換素子20が、半導体チップ上に配置されている。図3Bには、半導体チップ50と注封部材40とを備えたオプトエレクトロニクス装置30が示されている。たとえばシリコーンまたは樹脂とすることができる注封材料内に、本発明による蛍光体組み合わせ体が含有されている。オプトエレクトロニクス装置はさらに、ハウジング60を有することができる。
【0115】
図4には、第2の蛍光体の例示的な構造が概略的に示されている。量子ドット蛍光体は、本発明による蛍光体組み合わせ体の1つの好ましい実施形態において、コア2aとシェル2bとを備えたコアシェル構造を有することができる。たとえばコア2aはCdSeを含み、またはCdSeから成り、シェル2bはCdSを含み、またはCdSから成る。
【0116】
図5Aには、慣用の赤色発光蛍光体の吸収特性(A)と発光特性(E)とが示されている。吸収は、青色のスペクトル領域から固有の赤色発光にまで及んでいる。本発明の発明者が認識したことは、このように幅広い吸収がかなりの度合いで効率損失を引き起こす、という点である。
【0117】
図5Bには、赤色発光量子ドット蛍光体(QD)の吸収特性(A)と発光特性(E)とが示されている。量子ドット蛍光体は、ほぼ所望の青色スペクトル領域においてのみ吸収を行う。したがって吸収領域と発光領域とが互いに分離されている。このようにして不所望な二重変換を十分に回避することができる。
【0118】
図6Aには、青色半導体チップと従来の蛍光体組み合わせ体とを備えた発光ダイオードの発光スペクトルが示されている。青色半導体チップは青色光を放出する。青色光は部分的に第1の蛍光体により吸収されて、緑色光として放出される(G)。青色光はさらに部分的に第2の蛍光体により吸収されて、赤色光として放出される(R)。
【0119】
さらに緑色光の一部分は、やはり第2の蛍光体により吸収されて、赤色光となって放出される(R)。これは不所望な2段階の変換(もしくは二重変換)である。変換ステップ各々において量子効率(QE)は約90%となるので、二重変換のケースでの量子効率は全体で90%*90%=81%だけになってしまう。つまり二重変換によって、量子効率における損失が引き起こされる。しかも緑色を放出する第1の蛍光体のかなりの部分は、赤色光の発生のみに寄与しているが、緑色光の生成には寄与していない。したがって第1の蛍光体の「犠牲蛍光体」として働くこの部分は、所望のスペクトルのためには不要である。しかしながらその存在によって、余分な散乱損失が引き起こされる。かくして全体として放出される白色スペクトル(W)は、全体的電気効率に関してかなりの損失を受けながらでしか得られない。
【0120】
これに対し図6Bには、本発明による蛍光体組み合わせ体を備えた発光ダイオードの発光スペクトル(W QD)が示されている。この場合も、半導体チップの青色光が、慣用の緑色蛍光体により吸収される。しかしながら第2の蛍光体は、幅広い吸収を有する慣用の赤色発光蛍光体ではなく、狭い吸収を有する赤色発光量子ドット蛍光体(R QD)であるので、ほとんど二重変換は発生しない。このため二重変換に起因する量子効率(QE)における不所望な損失を、かなり低減することができる。しかも、犠牲蛍光体として働く緑色蛍光体(G)がいっそう僅かになることから、一部ではかなりの量の緑色の第1の蛍光体を節約することができる。この節約を、一部では30%よりも多くすることができ、たとえば35%よりも多くすることができる。したがってこの節約された量の第1の蛍光体については、散乱はもはや発生しない。しかも、第2の蛍光体の量子ドットもほとんど散乱を行わない。つまり全体としても、慣用の蛍光体組み合わせ体よりも著しく僅かな散乱しか発生しない。蛍光体組み合わせ体は、任意選択的に第3の蛍光体をさらに含むこともできる。図6Bには第3の蛍光体が示されており、これも赤色を放出するが(R)、量子ドット蛍光体ではない。このようにすれば、限られた量の量子ドット蛍光体(R QD)だけしか必要とされず、このことによってRoHS規制を満たすのが容易になる一方、同時に高効率のオプトエレクトロニクス装置が得られる。
【0121】
図7には、本発明による蛍光体組み合わせ体を使用するオプトエレクトロニクス装置において、相対的な効率向上がどのようにして実現されるのかが、計算により説明されている。
【0122】
図8Aは、本発明によるLEDと参照LEDとにおける測定結果をまとめており、発光効率の向上が、改善された変換効率および改善されたスペクトル効率にどの程度まで帰するのかが示している。
【0123】
図8Bは、図8Aの測定で使用されたLEDにおいてどのような蛍光体組み合わせ体が適用されたのかを説明している。参照LEDは従来の蛍光体組み合わせ体を有し、これらは緑色発光ガーネット蛍光体に加えて、2つの慣用の赤色発光窒化物蛍光体を有する。これに対し本発明によるLEDは、赤色発光量子ドット蛍光体を1重量%有する蛍光体組み合わせ体を含む。つまり慣用の赤色発光蛍光体の一部分が、赤色発光量子ドット蛍光体により置き換えられる。この蛍光体の赤色発光は、青色半導体チップの発光から直接的に変換され、慣用のケースのように部分的に緑色蛍光体の光子を介しても変換されるのではないため、総じて必要とされる緑色蛍光体が著しく僅かになる。これによって、緑色発光ガーネット蛍光体の割合を35%減らすことができるようになり、その結果、散乱損失が著しく僅かになる。蛍光体の重量パーセントの記載は、図8Bではそれぞれ蛍光体およびマトリックス材料の重量全体の合計に関連づけられている。しかもこの蛍光体組み合わせ体は、色品質に関して高い基準を満たす。約3000Kの色温度が達成され、さらにそれぞれ90を上回るCRI値、それぞれ50を上回るR9値が達成される。本発明によるLEDによって、このような高い色品質を同時に効率を向上させながら達成することができる。
【0124】
図9には、一連の個別の蛍光体についてシミュレートされた発光スペクトルが示されている。半導体チップの青色発光が示されている。さらにLuAGaG:Ce蛍光体の緑色発光が示されており、この蛍光体を本発明による蛍光体組み合わせ体における第1の蛍光体として使用することができる。さらに、慣用のSr(Sr,Ca)SiAl:Eu2+蛍光体の赤色発光が示されている。さらには狭帯域で発光するSr[AlLi]:Eu2+蛍光体の発光が示され、この蛍光体を本発明による蛍光体組み合わせ体における第3の蛍光体として使用することができる。これに加え、CdS/CdSe量子ドット蛍光体の極めて狭帯域の発光が示されており、この蛍光体を本発明による蛍光体組み合わせ体における第2の蛍光体として使用することができる。
【0125】
図10には、種々の蛍光体組み合わせ体(実施例1~3ならびに比較例1および2)に基づく白色光LEDの発光スペクトルのシミュレーションが示されている。
【0126】
図11には、蛍光体組み合わせ体の組成をまとめた表が示されている。この表は、個々の蛍光体組み合わせ体を、色座標Cx,Cy、色温度(CCT)、演色指数(CRI値)、R9値(参照色9、赤色の演色性)、ならびにスペクトル効率(LER)に関して比較している。これらのシミュレーションから明らかになることは、緑色を放出する第1のLuAGaG:Ce3+蛍光体、および第2の蛍光体として赤色発光量子ドット蛍光体を有する、全ての蛍光体組み合わせ体は、特に高いスペクトル効率(LER)と特に良好な演色特性とを兼ね備えている、という点である(実施例1~3)。実施例1は最高効率を有する一方、実施例2は効率と環境適合性との最良の結び付きを表している。たしかに実施例1は最高効率を示しているけれども、RoHS規制とは調和してない。実施例2は、第3の蛍光体としてSr[AlLi]:Eu2+が存在していることから、優れた演色特性および効率特性があると同時に、RoHS規制を満たすことができる。
【0127】
実施例を互いに組み合わせることもでき、これはかかる組み合わせが図面に明示的に示されていないとしても可能である。さらに、図面を参照しながら説明した実施例は、概要部分での説明による付加的または択一的な特徴を有することができる。
【0128】
次に、本発明による蛍光体混合物をどのようにして提供できるのか、について記載する。本発明による蛍光体混合物を製造するために、最初に第1のおよび第2の、さらに場合によっては第3の蛍光体が準備される。
【0129】
第1の蛍光体として、任意の慣用の蛍光体を考慮の対象とすることができ、好ましくは緑色発光蛍光体、たとえば前述の蛍光体Si6-zAl8-z:RE、Y(Al1-xGa12:Ce、(Gd,Y)(Al1-xGa12:Ce、(Tb,Y)(Al1ーxGa12:Ce、Lu(Al1-xGa12:Ce、または(Lu,Y)(Al1-xGa12:Ce、を考慮の対象とすることができる。これらの蛍光体の製造は当業者に公知である。しかもこれらは市販されている。
【0130】
赤色発光量子ドット蛍光体を合成するために、従来技術から多くの様々な合成が公知である。しかも一連の赤色発光量子ドット蛍光体は市販されている。
【0131】
以下では、第3の蛍光体の製造方法について説明する。
【0132】
第3の蛍光体を、固体反応によって製造することができる。この目的で、第3の蛍光体の出発材料を混合することができる。たとえば窒化ストロンチウム(Sr),窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化リチウム(LiN)および酸化ユーロピウム(Eu)を用いて、SrLiAl:Euを製造することができる。これらの出発材料が相応の比率で互いに混合される。これらの出発材料をたとえばニッケルのるつぼの中に入れることができる。次いで混合物を、700℃~1000℃、有利には800℃の温度まで加熱することができる。これに加え、フォーミングガス流において加熱を行うことができ、これによれば温度が1~400時間にわたり維持される。窒素(N)中の水素(H)の割合を、たとえば7.5%とすることができる。加熱および冷却の速度を、たとえば1時間あたり250℃にすることができる。
【0133】
上述の方法に対し択一的に、溶接で閉じられたタンタルアンプル内における固体合成によっても、第3の蛍光体を生成することができる。この目的で出発材料を、たとえば第3の蛍光体のケースでは、SrLiAl:Eu、SrAl、Li(フラックス)、LiNおよびEuを、相応の混合比で互いに混合することができ、タンタルアンプルの中に入れることができる。たとえば室温から800℃まで加熱し、次いでこの温度をたとえば100時間にわたり維持し、さらにその後、システムを再び室温まで冷却して、第3の蛍光体を生成した。第3の蛍光体の出発材料は、たとえば粉体として存在している。加熱ステップ後、混合物を室温まで冷却する冷却過程を行うことができる。室温とは、特に20℃または25℃の温度のことであると解される。合成は中庸な温度で行われ、したがって著しくエネルギー効率的である。このため、たとえば使用される炉などに対しての要求は低い。出発材料は安価に市販されており、かつ毒性がない。最終的に、上述の第1および第2の蛍光体ならびに任意選択的に第3の蛍光体の組み合わせから、蛍光体混合物が得られる。たとえば蛍光体の粉体を互いに混合することができる。たとえばこれらの蛍光体をそれぞれ、1つのマトリックス材料の中に入れて、その中で分散させることもできる。しかしながら蛍光体各々を、専用のマトリックス材料の中に入れることも可能である。蛍光体組み合わせ体のことであると解される蛍光体混合物が、このケースでは個々の蛍光体を含む種々のマトリックス材料の組み合わせから得られる。
【0134】
本発明による蛍光体組み合わせ体をたとえば、付加的なマトリックス材料を用いてまたは用いずに上述の蛍光体の粉体を混合することによって、得ることができる。
【0135】
本発明は、実施例に基づくこれまでの説明によってそれらの実施例に限定されるものではない。むしろ本発明は、あらゆる新たな特徴ならびに特徴のあらゆる組み合わせを含むものであり、そのような組み合わせには特に、特許請求の範囲に記載された特徴のあらゆる組み合わせが含まれ、このことは、それらの特徴またはそれらの組み合わせそのものが特許請求の範囲あるいは実施例に明示的には挙げられていないにしても、当てはまるものである。
【符号の説明】
【0136】
1 第1の蛍光体
2 第2の蛍光体=量子ドット蛍光体
2a コア
2b シェル
3 第3の蛍光体
4 マトリックス材料
10 蛍光体組み合わせ体
20 変換素子
30 オプトエレクトロニクス装置
40 注封部材
50 半導体チップ
60 ハウジング
A 吸収
E 発光
QD 量子ドット蛍光体(”Quantumdot”)
W 白色光
G 緑色蛍光体
R 赤色蛍光体
QE 量子効率
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11