(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ガレージモード制御ユニット、制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20221212BHJP
G08G 1/14 20060101ALI20221212BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20221212BHJP
B60W 30/182 20200101ALI20221212BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20221212BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20221212BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20221212BHJP
B60W 10/10 20120101ALI20221212BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20221212BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20221212BHJP
F16H 59/60 20060101ALI20221212BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20221212BHJP
F16H 63/40 20060101ALI20221212BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20221212BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/14 A
B60W30/08
B60W30/182
B60W40/02
B60W10/04
B60W10/18
B60W10/10
B60T7/12 B
B60T7/12 C
B60T8/171 Z
F16H59/60
F16H61/02
F16H63/40
B60R99/00 320
(21)【出願番号】P 2020552100
(86)(22)【出願日】2018-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2018079654
(87)【国際公開番号】W WO2019129414
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】201711429765.7
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ツァン ウォン
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-335239(JP,A)
【文献】特開2010-287153(JP,A)
【文献】特開平04-123199(JP,A)
【文献】特開2004-108937(JP,A)
【文献】特開2009-193293(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1736786(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105299210(CN,A)
【文献】特開2007-055378(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105774585(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105807702(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 ~ 1/16
B60W 10/00 ~ 60/00
B60T 7/12 ~ 8/1769
F16H 59/60
F16H 61/02
F16H 63/40
B60R 99/00
G01C 21/26 ~ 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両環境情報及び車両状態情報を含む検出情報を受信する情報送信ポートと、
前記車両環境情報に基づいて、車両が混みあった場所にあるか否かを判定し、前記車両が混みあった場所にあると判定した場合、ガレージモード制御信号を生成し、前記情報送信ポートを介して前記ガレージモード制御信号を発信する内部処理モジュールとを備え、 前記ガレージモード制御信号は、ガレージモードトリガ信号と、ガレージモードの車両制御パラメータと、を含み、
前記車両環境情報は、周囲輝度信号及
び雨量センサ信号を含むガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項2】
前記車両環境情報は、駐車レーダ信号を含む請求項1に記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項3】
前記車両環境情報は、任意のカメラ情報、GPS情報及び車両離間センサ情報を含む請求項1または2に記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項4】
前記車両状態情報は、制動トルク、動力源トルク、動力源回転速度、車速、車輪速度、現在のギア、アクセルペダルの開度、制動信号スイッチ、及びハンドルの回転角に関する情報のうちのいくつかを含む請求項1から3までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項5】
前記車両状態情報は、制動トルク、動力源トルク、動力源回転速度、車速、車輪速度、現在のギア、アクセルペダルの開度、制動信号スイッチ、及びハンドルの回転角に関する情報の全てを含む請求項1から4までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項6】
前記車両状態情報は、車輪加速度、変速比及び中心差動トルクを含む請求項1から5までのいずれか1項に記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項7】
前記車両制御パラメータは、車速制限値、目標ギア、動力源目標トルク、及び目標制動力を含み、
前記車両制御パラメータは、主に、前記車両状態情報に基づいて決定され、前記車両環境情報の要因も考慮に入れることができる請求項1から6までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項8】
前記内部処理モジュールは、前記車両状態情報に基づいて前記車両制御パラメータを自動的に調整する請求項7に記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項9】
前記車両が前進しているときの前記車速制限値は、時速約20kmであり、前記車両が後退しているときの前記車速制限値は、時速約5~10kmである請求項7または8に記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項10】
前記内部処理モジュールは、前記車両環境情報に基づいて前記車速制限値を調整する請求項7から9までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項11】
前記内部処理モジュールが、前記車速が前記車速制限値に向かって増加していると決定し、前記車速制限値を超える傾向を示すと決定した場合、車両制動システムを起動して前記車両を制動するために信号も発信される請求項7から10までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項12】
前記ガレージモード制御信号は、さらに、運転者がアクセルペダルを踏み込んでいない場合、車両制動システムを制動待機状態に設定することを含む請求項1から11までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項13】
前記ガレージモード制御信号は、さらに、運転者がアクセルペダルを踏み込んでいない場合、車両制動システムを臨界制動状態に設定することを含む請求項1から11までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項14】
前記ガレージモード制御信号は、さらに、前記ガレージモードについて運転者に促すための音声及び/又は映像信号を含む請求項1から13までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項15】
前記ガレージモード制御ユニット(10)は、信号伝送を可能にする方法で車両データバス(3)に接続され、車両制御ユニット(4)に統合されるか、又は信号伝送を可能にする方法で前記車両制御ユニット(4)に接続され、前記車両制御ユニット(4)は、 全車両制御ユニット、又は
車両駆動電気機械及び/又はエンジンの管理ユニット等の車両動力源管理ユニット、又は
電子車体安定システムである請求項1から14までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)と、それぞれ、前記ガレージモード制御ユニット(10)に信号伝送を可能にする方法で接続された情報検出要素(1)と、ヒューマンマシンインターフェース(2)と、を備えるガレージモード制御システム。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項記載のガレージモード制御ユニット(10)又は請求項16に記載のガレージモード制御システムによって実施されるガレージモード制御方法であって、
車両環境情報を受信することと、
前記車両環境情報に基づいて、車両が混みあった場所にあるか否かを判定することと、 前記車両が混みあった場所にあると判定された場合、前記車両をガレージモードで制御することと、を含むガレージモード制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、混みあった場所における車両の誤加速を防止するためのガレージモード制御ユニット、制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガレージ等の駐車場又はその他の混みあった場所での車両の駐車時、運転者によっては、緊張や経験不足に起因して方向感覚を失い、その時に操舵しているハンドルの操舵角に気づかず、ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んでしまう場合がある。こうした状況は、車両の制御の喪失となり、事故を起しやすい。さらに、運転者は、車両駐車時に、車両が予想した方向に移動しないことに気づき、及び車両を制動してから車両の移動方向を変化させたいが、アクセルペダルを急に踏み込んでしまい、車両を誤った方向に加速させることがある。この結果、車両が、近くの車両、設備、又は人々にさえも突っ込む可能性が高い。
【0003】
従来技術の自動運転システム及び自動駐車システムは、駐車時の予想外な加速を防止することができる。しかしながら、これらのシステムは、概して、常に高価であるため、車両の販売価格が上がる結果となる。また、緊急時に自動的に車両を制動することができる自動緊急制動システムもあるが、このようなシステムは、駐車時の予想外の加速を回避することができるものの、受動的な是正技術に過ぎず、運転者に不快感や恐怖を与える。
【0004】
また、運転者が混みあった場所から車両を移動する際にブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んだことから、しばしば事故が発生することがあることも指摘しておかなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願の目的は、混みあった場所で車両を制御する際の誤加速を積極的に回避できるガレージモード制御技術を低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本出願の一態様によれば、車両環境情報及び車両状態情報を含む検出情報を受信する情報送信ポートと、
車両の環境情報に基づいて、車両が混みあった場所にあるか否かを判定し、車両が混みあった場所にあると判定した場合、ガレージモード制御信号を生成し、前記情報送信ポートを介して前記ガレージモード制御信号を発信する内部処理モジュールとを備え、
前記ガレージモード制御信号は、ガレージモードトリガ信号と、ガレージモードの車両制御パラメータと、を含むガレージモード制御ユニットを提供する。
【0007】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記車両環境情報は、駐車レーダ信号を含む。
【0008】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記車両環境情報は、さらに、任意のカメラ情報、GPS情報、及び車両離間センサ情報を含む。
【0009】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記車両環境情報は、さらに、周囲輝度信号及び/又は雨量センサ信号を含む。
【0010】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記車両状態情報は、制動トルク、動力源トルク、動力源回転速度、車速、車輪速度、現在のギア、アクセルペダルの開度、制動信号スイッチ、及びハンドルの回転角度に関する情報のうちのいくつか、好ましくは、これら全てを含む。
【0011】
1つの実現可能な実施形態によれば、さらに、前記車両状態情報は、車輪加速度、変速比及び中心差動トルクを含む。
【0012】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記車両制御パラメータは、車速制限値、目標ギア、動力源目標トルク、及び目標制動力を含み、前記車両制御パラメータは、主に、前記車両状態情報に基づいて決定される(及び、前記車両環境情報の要因も考慮に入れることができる)。
【0013】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記内部処理モジュールは、前記車両状態情報に基づいて前記車両制御パラメータを自動的に調整する。
【0014】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記車両が前進しているときの車速制限値は、時速約20kmであり、前記車両が後退しているときの車速制限値は、時速約5~10kmである。
【0015】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記内部処理モジュールは、前記車両環境情報に基づいて前記車速制限値を調整する。
【0016】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記内部処理モジュールが、前記車速が車速制限値に向かって増加していると判定し、前記車速制限値を超える傾向を示すと判定した場合、車両制動システムを起動して前記車両を制動するために信号も発信される。
【0017】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記ガレージモード制御信号は、さらに、運転者がアクセルペダルを踏み込んでいない場合、車両制動システムを制動待機状態、特に、臨界制動状態に設定することを含む。
【0018】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記ガレージモード制御信号は、さらに、前記ガレージモードについて運転者に促すための音声及び/又は映像信号を含む。
【0019】
1つの実現可能な実施形態によれば、前記ガレージモード制御ユニットは、信号伝送を可能にする方法で車両データバスに接続され、車両制御ユニットに統合されるか、又は信号伝送を可能にする方法で前記車両制御ユニットに接続され、前記車両制御ユニットは、全車両制御ユニット、又は車両駆動電気機械及び/若しくはエンジンの管理ユニット等の車両動力源管理ユニット、又は電子車体安定システムである。
【0020】
本出願の他の態様によれば、上述のガレージモード制御ユニットと、それぞれ、前記ガレージモード制御ユニットに信号伝送を可能にする方法で接続された情報検出要素及びヒューマンマシンインターフェースと、を備えるガレージモード制御システムが提供される。
【0021】
本出願の他の態様によれば、車両環境情報を受信することと、前記車両環境情報に基づいて、車両が混みあった場所にあるか否かを判定することと、前記車両が混みあった場所にあると判定された場合、前記車両をガレージモードで制御することと、を含むガレージモード制御方法が提供される。
【0022】
本出願のガレージモード制御方法は、上述したガレージモード制御ユニット又はガレージモード制御システムによって実施されてもよい。したがって、前記ガレージモード制御ユニット又は前記ガレージモード制御システムに関連して上述した様々な特徴が、前記ガレージモード制御方法に適用されてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本出願によれば、ほとんどの場合、車両の既存のハードウェアを使用して、混みあった場所での車両の制御における誤加速を積極的に回避し、したがって、この機能を追加することに起因する車両コストの増大の問題を回避する、又は少なくとも軽減することができる。さらに、本出願では、前記車両の加速を抑制することにより、前記車両の誤加速が積極的に防止されるので、混みあった場所における前記車両の制御時に、安全性をより確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本出願の上述の及び他の態様は、添付の図面を参照することにより、以下の詳細な説明を通じてさらに完全に理解できよう。
【
図1】本出願によるガレージモード制御技術の略図である。
【
図2】本出願の実現可能な実施形態によるガレージモード制御システムの略ブロック図である。
【
図3】本出願の実現可能な実施形態によるガレージモード制御方法の略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本出願は、概ね、混みあった場所にあるときに車両の予想外の加速を積極的に防止するための技術に関する。混みあった場所は、ガレージのような駐車場、歩行者の密集度の高い地域等を含む、即ち、混みあった場所は、車両制御の難易度が高い場所である。
【0026】
本願の技術は、
図1に示されるガレージモード制御ユニット10により実現される。ガレージモード制御ユニット10は、情報送信ポートと内部処理モジュールを有し、ガレージモード制御ユニット10は、情報送信ポートを介して検出情報A1、A2、A3...Aiを受信し、内部処理モジュールのアルゴリズムを使って、検出情報のこれらの項目に基づいてガレージモード制御信号C1、C2、C3...Ckを生成し、情報送信ポートを介してガレージモード制御信号を発信する。
【0027】
具体的には、検出情報A1~Aiは、車両環境情報及び車両状態情報を含むことができる。
【0028】
車両環境情報を使って、車両が、運転者がかなり注意を払って車両を制御しなければならないような混みあった場所にあるかどうかを判定してガレージモードを起動するかどうかを判定してもよい。例えば、車両環境情報は、駐車レーダ信号、周囲輝度信号(周囲輝度のレベルが低いと運転者の視野が限られてきて車両制御の難易度が増す)、雨量センサ信号(雨量が多いと運転者の視界を遮り、車両制御の難易度が増す)等を含んでいてもよい。
【0029】
車両状態情報を使ってガレージモードにある車両制御パラメータを決定してもよい。例えば、前記車両状態情報は、制動トルク、動力源トルク、動力源回転速度、車速、車輪速度、現在のギア、アクセルペダルの開度、制動信号スイッチ、及びハンドルの回転角度を含む。加えて、前記車両状態情報は、さらに、車輪加速度、変速比及び中心差動トルク等を含んでいてもよい。
【0030】
さらに、ガレージモード制御ユニット10の性能を改善するため、追加の検出情報B1、B2...Bjを受信してもよい。これらの追加検出情報B1~Bjの項目は任意であるが、必須ではなく、例えば、ガレージモードを起動するかどうかをより確実に判定するための追加車両環境情報、即ち、カメラ情報、GPS情報、車両離間センサ情報等を含んでもよい。
【0031】
ガレージモード制御ユニット10によって生成されるガレージモード制御信号C1~Ckは、ガレージモードトリガ信号と、ガレージモードにおける車両制御パラメータとを含んでいてもよい。車両制御パラメータは、車速制限値、目標ギア、動力源目標トルク、目標制動力(例えば、目標制動流動速度)等を含んでいてもよい。
【0032】
ガレージモード制御ユニット10は、データA1~Aiに基づいてガレージモードを起動する必要があるかどうかを判定する。具体的にはガレージモード制御ユニット10は、車両が混みあった場所にあるかどうかを車両環境情報に基づいて確認する(そしてその場所における車両制御の難易度を判定してもよい)。車両が混みあった場所にあると判定されたら、ガレージモード制御ユニット10は、ガレージモードトリガ信号を発信して車両をガレージモードにする。ガレージモード制御ユニット10は、次に、車両状態情報に基づいてガレージモードにおける車両制御パラメータを決定する。
【0033】
車両制御パラメータは、主として車両状態情報に基づいて決定され、また、車両環境情報の要素(特に、周囲輝度、雨量等)を考慮に入れてもよい。
【0034】
前記内部処理モジュールは、リアルタイムで更新される車両状態情報に基づいて車両制御パラメータを自動的にリアルタイムで調整することができる。
【0035】
ガレージモードの車両制御パラメータは、車両が前進及び後退しているときの車速制限値を含んでいてもよい。例えば、車両の前進状態では、最大車速は、大部分のガレージにおける車速制限値でもある時速約20kmに制限されてもよい。車両の後退状態では、最大車速は、各車両モデル固有の較正値である、時速約5~10kmに制限されてもよい。ガレージモードの車速制限値の具体的な値は、ガレージモード制御ユニット10によって、その場所の車両制御の難易度に応じて調整してもよいことを指摘しておく必要があろう。例えば、物体が車両の近傍に近接して存在する場合(例えば他の車両又は設備若しくは人)、又はその場所における周囲輝度が低い場合、又は雨量が多い場合等に、ガレージモード制御ユニット10は、車速制限値を減少させる。
【0036】
車速制限値を設定することで、運転者がブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んだ場合であっても、車両が急に加速できなくなることが確実になる。車両の動力源目標トルク(例えば、エンジン出力トルク、電気車両又はハイブリッド車両の電気機械出力トルク等)を制御することにより、車速を最適な速度制限内に維持することができる。必要に応じて、例えば、車速が車速制限値に向かって増加し、車速制限値を超える傾向を示す場合、車速は、車両制動システムの制動操作(目標制動力を実現する)によって抑制してもよい。
【0037】
制動システムの操作を迅速かつ確実なものとするため、ガレージモード制御ユニット10がガレージモードトリガ信号を発信し、ガレージモードに入ると、運転者がアクセルペダルを踏み込んでいない場合には、制動システムは、例えば、ブレーキキャリパとブレーキディスクとの間のギャップが低減、又はほぼゼロ(ほぼ接触)になるように、制動待機状態に入ってもよい。
【0038】
ガレージモードでは、運転者が突発的な力でアクセルペダルを踏み込むと、ガレージモード制御ユニット10は、アクセルペダルの開度と、アクセルペダルの開度の変化率が対応する閾値より大きいこととに基づいて運転者が誤操作を行ったと判定して、加速操作を行わない。
【0039】
本出願では、ガレージモード制御システムを構築する基礎としてガレージモード制御ユニット10を使用する。
図2に示すようにガレージモード制御システムは、主として、ガレージモード制御ユニット10と、情報検出要素1と、ヒューマンマシンインターフェース2と、それぞれがガレージモード制御ユニット10に信号伝送を可能にする方法で接続された車両データバス3及び車両制御ユニット4と、信号伝送を可能にする方法で車両制御ユニット4に接続された車両制動システム5とを備える。
【0040】
ガレージモード制御ユニット10は、情報検出要素1と車両データバス3から、検出情報A1~Ai(及び可能な追加の検出情報B1、B2...Bj)を取得する。情報検出要素1は、対応する検出情報を受信するために、駐車レーダ、周囲輝度センサ、雨量センサ(そして可能なカメラ、GPS受信機、車両離間センサ)等を備えていてもよい。他の検出情報は、車両データバス3及び/又は車両制御ユニット4から取得してもよい。
【0041】
ヒューマンマシンインターフェース2はガレージモードのプッシュボタンと、音声及び/又は映像のプロンプト要素等を備えていてもよい。運転者は、ガレージモードのプッシュボタンを押すことによって手動でガレージモードを起動したり、或いは強制的にガレージモードを終了したりすることができる。音声及び/又は映像のプロンプト要素は、車両の既存のサウンドシステム及び/又は表示画面でもよい。ガレージモード制御ユニット10がガレージモードトリガ信号を発信したら、対応するプロンプトが音声及び/又は映像のプロンプト要素によって運転者に向けて発信され、現状に注意を払い、急激にアクセルペダルを踏み込まないように等、運転者に再認識を促してもよい。ガレージモード制御システムが車両に対してガレージモードを適用する必要がないと運転者が考える場合には、運転者はガレージモードのプッシュボタンによってガレージモードを強制的に終了することができる。
【0042】
車両制御ユニット4は、車両動力出力(場合によっては、駆動系の状態、伝達ギア等も備える)と、車両制動システム5の操作を制御できる全車両制御ユニットを備えていてもよい。
【0043】
代替の実施形態によれば、車両制御ユニット4は、車両の動力源の動力出力を制御するための車両動力源管理ユニット(例えば、エンジン管理ユニット)を備える。この実施形態では、ガレージモード制御ユニット10は、車両制動システム5に、信号伝送を可能にする方法で接続して、車両制動システム5の操作を直接制御してもよい。
【0044】
別の代替の実施形態によれば、車両制御ユニット4は、車両動力出力と車両制動システム5の操作を制御できる電子車体安定システムを備える。
【0045】
任意で、ガレージモード制御ユニット10は(ハードウェア及び/又はソフトウェアの形態の)車両制御ユニット4の一部として構築してもよい。
【0046】
当業者であれば、本出願の原理に基づいて、ガレージモード制御ユニット10が車両の動力源の出力と車両制動システム5の操作を直接又は間接的に制御する様々な解決策が構築できることが理解できよう。
【0047】
本出願は、さらに、上述したガレージモード制御ユニット10を介して、及び/又は上述したガレージモード制御システムによって実行可能なガレージモード制御方法を提供する。
【0048】
図3は、下記に示すように本出願のガレージモード制御方法の手順の例示を示す。
【0049】
ステップS1では、ガレージモード制御プログラムを開始する。このプログラムは車両が始動すると自動的に実行することができる。
【0050】
次に、ステップS2では、車両環境情報を収集する(例えば、上記の情報検出要素1、車両データバス3及び/又は車両制御ユニット4によって取得する)。
【0051】
次に、ステップS3では、車両が混みあった場所にいるかどうかを車両環境情報(制御の難易度の要素も考慮に入れる)に基づいて判定する。判定の結果が否定の場合にはステップS7へ進み、判定の結果が肯定の場合にはステップS4に進む。
【0052】
ステップS4では、ガレージモードトリガ信号を発信し、(例えば、上述した音声及び/又は映像のプロンプト要素によって)運転者にプロンプトが発信される。
【0053】
次に、ステップS5では、ガレージモードに入り、車両状態情報が収集され、車速制限値に基づいて、ガレージモード制御信号が決定され、ガレージモード制御信号に基づいて車両動力源の動力出力、駆動系の状態、及びトランスミッションギアが制御される(そして、車両制動システム5が、場合によっては制動待機状態に入る又は維持するように制御され、車両制動システム5が必要な場合に車両を制動する)。ガレージモードは運転者が(例えば、上述のヒューマンマシンインターフェース、特に、ガレージモードのプッシュボタンを介した入力によって)強制的に開始できることを指摘する必要があろう。
【0054】
次に、ステップS6で、ガレージモードを強制的に終了するよう指示があるかどうか(例えば、運転者がヒューマンマシンインターフェース、特に、ガレージモードのプッシュボタンを介して入力したかどうか)を判定する。判定の結果が否定の場合にはステップS2へ戻り、判定の結果が肯定の場合にはステップS7に進む。
【0055】
ステップS7では、ガレージモードを終了し、遅延ステップS8の後に、ステップS2へ戻る。遅延ステップS8における遅延は2、3分又はそれ以上でよく、調整可能に設計されてもよい。
【0056】
本出願の原理に基づいて、当業者がガレージモード制御方法で使用する様々な固有の工程を構築できることは理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本出願のガレージモード制御方法、ガレージモード制御ユニット、及びガレージモード制御システムは、主に、車両の既存のハードウェアを使用して、車両制御の難易度が高い場所での車両の制御において誤加速を積極的に回避するものであり、この目的のために新しい装置を追加する必要がなく、(或いは、余分な数の装置を追加する必要がなく)、したがって、この機能を追加することに起因する車両コストの増大の問題を回避/緩和できることがわかる。さらに、本出願では、車両の加速を抑制することにより、車両の誤加速が積極的に防止される(補助ブレーキを使用する必要があり得る)ので、車両制御の難易度が高い場所における車両の制御時に、安全性をより確実に向上させることができる。
【0058】
上述した様々な特徴はガレージモード制御ユニット、制御システム及び制御方法に概ね適用できることが理解できよう。
【0059】
本出願について、ここでは、特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、本出願の範囲は、例示した詳細事項に制限されることはない。本出願の基本原理から逸脱することなく、様々な変更をこれらの詳細事項に加えてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 情報検出要素
2 ヒューマンマシンインターフェース
3 車両データバス
4 車両制御ユニット
5 車両制動システム
10 ガレージモード制御ユニット