IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧

<>
  • 特許-分析方法及びキット 図1
  • 特許-分析方法及びキット 図2
  • 特許-分析方法及びキット 図3
  • 特許-分析方法及びキット 図4
  • 特許-分析方法及びキット 図5
  • 特許-分析方法及びキット 図6
  • 特許-分析方法及びキット 図7
  • 特許-分析方法及びキット 図8
  • 特許-分析方法及びキット 図9
  • 特許-分析方法及びキット 図10
  • 特許-分析方法及びキット 図11
  • 特許-分析方法及びキット 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】分析方法及びキット
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6851 20180101AFI20221212BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20221212BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221212BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20221212BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z ZNA
C12Q1/6886 Z
G01N33/53 M
C12N15/113 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020568000
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2019030607
(87)【国際公開番号】W WO2021024332
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2020-12-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 美雅
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 桂子
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105950768(CN,A)
【文献】国際公開第2016/117582(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/200065(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/078037(WO,A1)
【文献】Cancers,2016年,8(112),1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/6851
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pの存在量を定量することと、
対照由来の試料中のhsa-miR-92a-3pの存在量を定量することと、
前記対象におけるhsa-miR-92a-3pの前記存在量が、同様に測定された対照におけるhsa-miR-92a-3pの前記存在量よりも多い場合、前記対象が前立腺がんに罹患していると判定することと
を含む、前記対象における前立腺がんの罹患の有無の判定を補助する分析方法であって、
前記対照は乳がん、大腸がん、胃がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、肉腫、子宮体がん又は子宮肉腫に罹患した個体である、分析方法。
【請求項2】
対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pを定量することと、
前記対象におけるhsa-miR-92a-3pの存在量が閾値以上である場合に、前記対象が前立腺がんに罹患していると判定することと
を含む、前記対象における前立腺がんの罹患の有無の判定を補助する分析方法であって、
前記閾値は、乳がん、大腸がん、胃がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、肉腫、子宮体がん又は子宮肉腫に罹患した個体由来の試料中のhsa-miR-92a-3p、及び、前立腺がんを有する個体由来の試料中のhsa-miR-92a-3pの定量値を測定し、比較することで予め決定された値である、分析方法。
【請求項3】
前記前立腺がんの罹患の有無の判定は、前記対象における前立腺がんの予後判定、又は前記対象における前立腺がんの再発の有無の判定を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料は、血清である、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記定量は、hsa-miR-92a-3pの増幅、伸長及び逆転写のいずれも経ずに、前記試料中のhsa-miR-92a-3pを検出することで行われる、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記定量は、
hsa-miR-92a-3pを逆転写するための逆転写用プライマーを用いて、前記試料中のhsa-miR-92a-3pの逆転写産物を得ること;及び
前記逆転写産物を検出すること;
で行われる、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記定量は、
hsa-miR-92a-3pを増幅するための増幅用プライマーセットを用いて、前記試料中のhsa-miR-92a-3pの増幅産物を得ること;及び
前記増幅産物を検出すること;
で行われる、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記定量は、
hsa-miR-92a-3pを伸長するための伸長用プライマーを用いて、前記試料中のhsa-miR-92a-3pの伸長産物を得ること;
前記伸長産物を増幅するための増幅用プライマーセットを用いて、前記伸長産物の増幅産物を得ること;及び
前記増幅産物を検出すること;
で行われる、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記定量は、
hsa-miR-92a-3pを逆転写するための逆転写用プライマーを用いて、前記試料中のhsa-miR-92a-3pの逆転写産物を得ること
前記逆転写産物を増幅するための増幅用プライマーセットを用いて、前記逆転写産物の増幅産物を得ること;及び
前記増幅産物を検出すること;
で行われる、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記定量は、
hsa-miR-92a-3pを逆転写するための逆転写用プライマーを用いて、前記試料中のhsa-miR-92a-3pの逆転写産物を得ること;
前記逆転写物を伸長するための伸長用プライマーを用いて、前記逆転写産物の伸長産物を得ること;
前記伸長産物を増幅するための増幅用プライマーセット(以下、「第1プライマーセット」と称する)を用いて、前記伸長産物の増幅産物を得ること;及び
前記増幅産物を検出すること;
で行われる、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1プライマーセット配列番号8のFIPプライマー、配列番号9のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含み、前記逆転写用プライマーが配列番号2を含み、並びに、前記伸長用プライマーが配列番号3を含むか、
前記第1プライマーセットが配列番号8のFIPプライマー、配列番号9のBIPプライマー及び配列番号11のLBプライマーを含み、前記逆転写用プライマーが配列番号2を含み、並びに、前記伸長用プライマーが配列番号3を含むか、
前記第1プライマーセットが配列番号12のFIPプライマー、配列番号13のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含み、前記逆転写用プライマーが配列番号4を含み、並びに、前記伸長用プライマーが配列番号5を含むか、又は、
前記第1プライマーセットが配列番号14のFIPプライマー、配列番号15のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含み、前記逆転写用プライマーが配列番号6を含み、並びに、前記伸長用プライマーが配列番号7を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記検出は、核酸プローブを用いて行われる、請求項5~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
対象の前立腺がんを検出するためのキットであって、
前記キットは、前立腺がん検出用マーカーであるhsa-miR-92a-3pにハイブリダイズして、検出するための核酸を具備するキット。
【請求項14】
対象の前立腺がんを検出するためのキットであって、
前記キットは、前立腺がん検出用マーカーであるhsa-miR-92a-3pにハイブリダイズし、かつ、hsa-miR-92a-3pの逆転写産物を得るための逆転写用プライマーを具備するキット。
【請求項15】
対象の前立腺がんを検出するためのキットであって、
前記キットは、前立腺がん検出用マーカーであるhsa-miR-92a-3pにハイブリダイズし、かつ、hsa-miR-92a-3pの増幅産物を得るための増幅用プライマーセットを具備するキット。
【請求項16】
対象の前立腺がんを検出するためのキットであって、
前記キットは、
前立腺がん検出用マーカーであるhsa-miR-92a-3pにハイブリダイズし、かつ、hsa-miR-92a-3pの伸長産物を得るための伸長用プライマーと、
前記伸長産物の増幅産物を得るための増幅用プライマーセットと
を具備するキット。
【請求項17】
前記キットは、前記逆転写産物の増幅産物を得るための増幅用プライマーセットをさらに具備する、請求項14に記載のキット。
【請求項18】
前記キットは、
前記逆転写産物の伸長産物を得るための伸長用プライマーと、
前記伸長産物の増幅産物を得るための増幅用プライマーセット(以下、「第1プライマーセット」と称する)とをさらに具備する、請求項14に記載のキット。
【請求項19】
前記第1プライマーセット配列番号8のFIPプライマー、配列番号9のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含み、前記逆転写用プライマーが配列番号2を含み、並びに、前記伸長用プライマーが配列番号3を含むか、
前記第1プライマーセットが配列番号8のFIPプライマー、配列番号9のBIPプライマー及び配列番号11のLBプライマーを含み、前記逆転写用プライマーが配列番号2を含み、並びに、前記伸長用プライマーが配列番号3を含むか、
前記第1プライマーセットが配列番号12のFIPプライマー、配列番号13のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含み、前記逆転写用プライマーが配列番号4を含み、並びに、前記伸長用プライマーが配列番号5を含むか、又は、
前記第1プライマーセットが配列番号14のFIPプライマー、配列番号15のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含み、前記逆転写用プライマーが配列番号6を含み、並びに、前記伸長用プライマーが配列番号7を含む、
請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記逆転写産物を検出するための核酸プローブをさらに具備する、請求項14に記載のキット。
【請求項21】
前記増幅産物を検出するための核酸プローブをさらに具備する、請求項15~19のうちいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、microRNA(miRNA)と疾患との関係が注目されている。miRNAは遺伝子発現を調節する機能を持ち、種々の疾患でその種類や発現量が初期の段階から変化していることが報告されている。即ち、ある疾患を持つ患者では、特定のmiRNA量が健常者と比較して増加又は減少している。そのため、被検者から採取された試料中の該miRNAの量を調べることは、患者がその疾患に罹患しているか否かを知る手段となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、対象におけるがん、特に前立腺がんの罹患の有無を簡便に判定することができる分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施形態によれば、対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pを定量することを含む、対象におけるがんの罹患の有無を判定する分析方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、第1の実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、実施形態の定量工程の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、実施形態の定量工程の一例を示す模式図である。
図4図4は、第1の実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、第3の実施形態の分析方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、例1の実験結果を示すグラフである。
図8図8は、例1の実験結果を示すグラフである。
図9図9は、例2の実験結果を示すグラフである。
図10図10は、例2の実験結果を示すグラフである。
図11図11は、例3の実験結果を示すグラフである。
図12図12は、例4の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下に、図面を参照しながら実施形態の分析方法及びキットについて説明する。
【0007】
・第1の実施形態
(分析方法)
実施形態の分析方法は、対象における前立腺がんの罹患の有無を判定するための方法である。
【0008】
対象は、分析に供される動物、即ち、後述する試料を提供する動物である。対象は、何らかの疾患を有する動物であってもよいし、健常な動物であってもよい。例えば、対象は、前立腺がんに罹患している可能性がある動物又は前立腺がんに罹患したことのある動物等であってもよい。
【0009】
対象はヒトであることが好ましい。或いは、対象は他の動物であってもよい。他の動物は、例えば哺乳動物であり、例えば、サル等の霊長類、マウス、ラット又はモルモット等の齧歯類、イヌ、ネコ又はウサギ等の伴侶動物、ウマ、ウシ又はブタ等の家畜動物、或いは展示動物等に属する動物を含む。
【0010】
実施形態に従う前立腺がんは、前立腺内に形成される悪性腫瘍(新生物)をいう。前立腺がんは、一般に「前立腺癌」又は「前立腺腺癌」と称されるものも含む。また、実施形態に従う前立腺がんは、何れの病期のものも含み、例えば、がんが前立腺の中に留まった状態、更に周辺の組織までがんが及んだ状態、更にリンパ節へがんが転移した状態、及び更に離れた臓器へのがんの転移がある状態等を含む。
【0011】
本分析方法は、図1に示すように、対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pを定量すること(定量工程(S1))を含む。
【0012】
対象由来の試料は、好ましくは、血清である。試料は、その他の体液、例えば、血液、血漿、間質液、尿、便、汗、唾液、口腔内粘膜、鼻腔内粘膜、咽頭粘膜、喀痰、リンパ液、髄液、涙液、母乳、羊水又は精液等であってもよい。或いは、試料は、組織又は細胞等であってもよく、対象から採取され、培養された組織又は細胞、或いはその上清であってもよい。また、細胞株化した培養細胞でもよい。
【0013】
試料の採取方法は、試料の種類に従う一般的な方法を用いることができる。採取された試料は、例えば、後述する逆転写、伸長及び増幅反応を阻害しない状態又はこれらの反応により適した状態となるように公知の何れかの手段により前処理してもよい。前処理は、例えば、細切、ホモジナイズ、遠心、沈殿、抽出及び/又は分離等である。
【0014】
例えば、抽出は、市販の核酸抽出キットを用いて行ってもよい。或いは、市販のキットを使用せずに、例えば、材料を緩衝液で希釈し、80~100℃の加熱処理を行い、遠心分離し、その上清を採取することによって抽出を行ってもよい。
【0015】
hsa-miR-92a-3pは、下記の配列:
UAUUGCACUUGUCCCGGCCUGU(配列番号1)
を有するmiRNAである。以下、hsa-miR-92a-3pを「標的miRNA」とも称する。また、配列番号1の配列を「第1の配列」とも称する。
【0016】
標的miRNAの定量は、RNAを定量することができる一般的な方法で行うことができる。例えば、標的miRNAを逆転写、伸長及び/又は増幅してもよく、PCR法、qPCR法、LAMP法等、濁度若しくは吸光度測定法、蛍光測定法又は電気化学的測定法、或いはこれらの組み合わせ等を用いることができる。
【0017】
qPCR法を用いる場合、例えば、市販のキットを用いて定量することができる。市販のキットは、TaqMan(登録商標)Advanced miRNA Assays(サーモフィッシャー製、ID:477827_mir)、miRCURY LNA miRNA PCR Assays(キアゲン製、カタログNo.YP02103132)等である。また、SYBR(登録商標)Green qPCR microRNA検出システム(オリジンテクノロジーズ製)及び標的miRNAを特異的に増幅するプライマーを用いて定量することも可能である。
【0018】
好ましい定量工程(S1)は、標的miRNAを特異的に逆転写及び伸長し、伸長産物をLAMP法により増幅し、得られた増幅産物を検出する方法により行う。以下、そのような定量工程(S1)の一例について説明する。定量工程(S1)は、例えば、図2及び図3に示す、次の工程を含む。
【0019】
(S1-1)標的miRNA1の第1の配列2とハイブリダイズする第1プライマー部4及び第1LAMP認識配列を含む逆転写用プライマー3(以下、「RTプライマー」とも称する)の、第1プライマー部4を第1の配列2とハイブリダイズさせ、第1の配列2を逆転写し、第1aの配列5(標的miRNA1のcDNA)を含む逆転写産物6を得る逆転写工程、
(S1-2)逆転写産物6と標的miRNA1とを解離させる解離工程、
(S1-3)第1aの配列5とハイブリダイズする第2プライマー部8、及び第2LAMP認識配列を含む伸長用プライマー7(以下、「ELプライマー」とも称する)の第2プライマー部8を逆転写産物6の第1aの配列5とハイブリダイズさせ、ELプライマー7及び逆転写産物6を、互いを鋳型として伸長させて、第1aの配列5の相補配列9(即ち、第1の配列に対応するDNA配列)を含む伸長産物10を得る伸長工程、
(S1-4)伸長産物10をLAMP反応により増幅し、増幅産物を得る増幅工程、及び
(S1-5)得られた増幅産物を検出する検出工程。
【0020】
RTプライマー3の第1プライマー部4は、第1の配列2とハイブリダイズして、第1の配列2を逆転写してcDNAを生成するためのプライマーとして働く核酸配列である。第1プライマー部4は、例えば、第1の配列2の3’末端を含む連続した少なくとも5つの塩基配列を有する。
【0021】
ELプライマー7の第2プライマー部8は、第1aの配列5とハイブリダイズして、その相補配列を生成するためのプライマーとして働く核酸配列である。第2プライマー部8は、例えば、第1aの配列5の3’末端を含む連続した少なくとも5つの塩基配列を有する。
【0022】
第1プライマー部4、第2プライマー部8は、DNAのみで構成されていてもよいし、LNA及び/又はPNAを含んでいてもよい。これらを多く含むほどハイブリダイゼーションの結合力を強くすることができる。従って、LNA及び/又はPNAの数は、ハイブリダイゼーションさせる配列との所望のTm値に従って決定されればよい。例えば、LNA及び/又はPNAを含ませると、より高い温度で逆転写工程(S1-1)及び伸長工程(S1-3)を行うことができ、非特異的な結合を抑制することが可能である。その結果より精度よく標的miRNAを逆転写及び伸長することが可能である。
【0023】
第1LAMP認識配列及び第2LAMP認識配列は、増幅工程(S1-4)においてLAMP増幅用プライマーが結合する配列(認識配列)を含む核酸塩基配列である。認識配列は、一般にLAMP増幅用プライマーにおいて用いられるものであってもよい。例えば、第1LAMP認識配列は、第1プライマー部4側から5’末端に向かう順番で、B1配列、B2配列(及び任意にLB配列)及びB1配列を含んでもよい。そして、第2LAMP認識配列は、第2プライマー部8側から5’末端に向かう順番で、F1配列、F2配列(及び任意にLB配列)及びF1配列を含んでもよい。
【0024】
しかしながら、第1LAMP認識配列及び第2LAMP認識配列は、下記の(1)~(7)の組み合わせで認識配列を含むことが好ましい。ここで、下記の各認識配列の順番は、第1プライマー部4又は第2プライマー部8側から5’末端に向かう順番である。「c」は、その直前に記載された配列の相補配列を意味する。例えば、「LBc配列」は、LB配列の相補配列を意味する。「ダミー配列」は、第1aの配列、F2配列、F1配列、LF配列、B1配列、B2配列、LB配列及びその相補配列とは異なる塩基配列を有する核酸配列である。
【0025】
(1)第1LAMP認識配列はB2配列を含み、
第2LAMP認識配列はB1c配列、F1配列及びF2配列を含む。
【0026】
(この場合、第1aの配列の相補配列9の少なくとも1部をLB配列とする。)
(2)第1LAMP認識配列はLBc配列及びB2配列を含み、
第2LAMP認識配列はB1c配列、F1配列及びF2配列を含む。
【0027】
(3)第1LAMP認識配列はダミー配列及びB2配列を含み、
第2LAMP認識配列はB1c配列、F1配列及びF2配列を含む。
【0028】
(4)第1LAMP認識配列はB1配列及びB2配列を含み、
第2LAMP認識配列はF1配列、LFc配列及びF2配列を含む。
【0029】
(5)第1LAMP認識配列はB2配列を含み、
第2LAMP認識配列はF1配列、LFc配列及びF2配列を含む。
【0030】
(6)第1LAMP認識配列はLBc配列及びB2配列を含み、
第2LAMP認識配列はF1配列及びF2配列を含む。
【0031】
(7)第1LAMP認識配列はB1配列及びB2配列を含み、
第2LAMP認識配列はLFc配列及びF2配列を含む。
【0032】
以上の組み合わせであることによって、標的miRNAをより特異的に逆転写及び伸長が可能となり、前立腺がん検出の精度が向上する。
【0033】
LAMP認識配列の組み合わせを上記(1)とする場合、以下の表1に示すRTプライマー3及びELプライマー7を含む、逆転写及び伸長用プライマーセットA~Cの何れかを用いることが好ましい。
【表1】
【0034】
RTプライマー3の第1プライマー部4と第1LAMP認識配列との間、ELプライマー7の第2プライマー部8と第2LAMP認識配列との間、及び/又は各LAMP認識配列に含まれる各認識配列の間には、スペーサー配列が存在していてもよい。スペーサー配列は、第1aの配列、各認識配列及びそれらの相補配列の配列とは異なり、かつ後述する伸長産物の増幅反応に悪影響を与えない核酸配列である。スペーサー配列は、DNAのみで構成されていてもよいし、LNA及び/又はPNAを含んでいてもよい。例えば、スペーサー配列は、1塩基~16塩基であり、ポリT配列又はポリA配列等であることが好ましい。
【0035】
逆転写工程(S1-1)は、例えば、RTプライマー3、逆転写酵素、塩及びデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)等の基質(必要に応じて反応試薬としての増粘剤、pH調製用緩衝材、界面活性剤、アニーリング特異性を増大するイオン及び/又は逆転写酵素の補因子となるイオン)等を試料に添加することにより行われる。逆転写酵素として、例えば、M-MuLV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、トランスクリプター逆転写酵素、SuperScript(登録商標)トランスクリプター逆転写酵素、又はMultiScribe逆転写酵素等を用いることができる。温度は、例えば約10℃~55℃に維持することが好ましい。
【0036】
解離工程(S1-2)は、例えば、反応液を80℃~100℃に加熱することによって行うことができる。
【0037】
伸長工程(S1-3)は、例えば、ELプライマー7、DNAポリメラーゼ、塩及びdNTP等の基質(必要に応じて増粘剤、pH調製用緩衝材、界面活性剤及びイオン)等を、逆転写産物6を含む溶液に添加することにより行われる。温度は、約10℃~80℃に維持することが好ましい。
【0038】
増幅工程(S1-4)は、LAMP法を用いて行われる。この工程においては、例えば、LAMP増幅用プライマーセット、鎖置換型DNAポリメラーゼ、塩及びdNTP等の基質(必要に応じて増粘剤、pH調製用緩衝材、界面活性剤及びイオン)等を、伸長産物10を含む溶液に添加して、それを等温増幅反応条件下で維持することによって行われる。
【0039】
LAMP増幅用プライマーセットの種類及び配列は、第1LAMP認識配列及び第2LAMP認識配列の配列に従って選択される。例えば、LAMP増幅用プライマーセットは、第1LAMP認識配列及び第2LAMP認識配列の配列に対応するFIPプライマー及びBIPプライマーを含む。必要であれば、それはF3プライマー、B3プライマー及び/又はLFプライマー若しくはLBプライマー等のループプライマーを含んでもよい。
【0040】
LAMP認識配列の組み合わせを上記(1)の組み合わせとする場合、LAMP増幅用プライマーセットとして、例えば、以下の表2に示すLAMP増幅用プライマーセットA~Cを用いることができる。なお、LAMP増幅用プライマーセットAのLBプライマーに関しては、配列番号10又は11のどちらかを用いることができる。
【表2】
【0041】
以上の工程によれば、標的miRNAをより特異的に逆転写、伸長及び増幅することができる。特に、表1及び表2に示すプライマーを用いる場合、逆転写、伸長及び増幅の特異性が向上する。したがって、より感度よく前立腺がんの罹患の有無を検出することが可能である。
【0042】
検出工程(S1-5)は、核酸を検出する一般的な方法により行うことができる。検出工程には、例えば、濁度の信号、光学的信号又は電気化学的信号等を用いることができる。
【0043】
濁度を用いる場合、例えば増幅産物又は増幅反応の存在に応じて増加する反応液の濁度、濁度の変化量又は濁度の立ち上がり時間を検出すればよい。検出は、例えば、濁度計若しくは分光光度計を用いて、又は目視等によって行うことができる。
【0044】
光学的信号を用いる場合、例えば、増幅産物又は増幅反応の存在に応じて変化する光学的信号を生ずる標識物質(蛍光試薬又はインターカレータ等)の存在下で増幅反応を行い、光学的信号の量、変化量又はその立ち上がり時間を検出すればよい。検出は、例えば、公知の何れかの光学センサを用いて、又は目視等によって行うことができる。
【0045】
電気化学的信号を用いる場合、例えば、増幅産物の増加に応じて変化する電気化学的信号を生ずる標識物質(レドックスプローブ等)の存在下で増幅反応を行い、電気化学的信号の量、変化量又は立ち上がり時間を検出すればよい。検出は、例えば、電極を備える電気化学検出用デバイスを用いて行うことができる。
【0046】
電気化学検出用デバイスは、例えばチップを含む。チップは、1つの面上に電極を備える基板を具備する。電極は、例えば金であれば感度が良好であるため好ましい。増幅産物を含む溶液を前記1つの面上に持ち込むと電極が溶液に接し、そこに存在する標識物質からの電気化学的信号を検出することができる。
【0047】
以上に説明した濁度、光学的信号及び電気化学的信号等の検出は、増幅反応の開始から特定の時点で行われてもよいし、経時的に行われてもよい。経時的とは、連続的であってもよいし、所望の時間間隔で複数の時点で検出することであってもよい。
【0048】
また、増幅産物の検出には、例えば、標的miRNA、標的miRNAのcDNA又は伸長産物11の少なくとも1部の配列又はその相補的な配列を含む核酸プローブを用いてもよい。このような核酸プローブと増幅産物とのハイブリダイゼーションを検出することにより、増幅産物を検出することができる。
【0049】
以上のように検出工程(S1-5)で得られた各信号の量、変化量又は立ち上がり時間は増幅産物の量を反映するものであり、これらの情報から試料中にもともと存在している標的miRNAの存在量を算出、即ち定量する。
【0050】
例えば、試料中に存在する標的miRNAの存在量が多いほど、より短い時間で信号の変化の立ち上がりが観察され得る。故に、立ち上がり時間と標的miRNAの存在量との関係を表す検量線を用いて、試料中の標的miRNAの定量を行うことができる。検量線は、異なる既知の濃度で標的miRNAを含む複数の標準試料について信号の立ち上がり時間を計測することにより作成することができる。この検量線と、対象由来の試料について得られた立ち上がり時間の測定結果とを比較する。それによって、試料中の標的miRNAの存在量を算出することができる。
【0051】
例えば、試料中の標的miRNAの存在量は、試料の単位量当たりの標的miRNAのコピー数として得られ得る。
【0052】
以上に説明した何れかの方法に従う定量工程(S1)で得られた定量結果から、対象における前立腺がんの罹患の有無を判定することができる。このような判定は、例えば、図4の(a)に示す定量工程(S1)の後に行われ得る判定工程(S2)によって行われ得る。
【0053】
例えば、判定工程(S2)では、対象における標的miRNAの存在量が対照における標的miRNAの存在量と比較して多い場合に、対象が前立腺がんに罹患していると判定することができる。対照とは、健常体で有り得る。健常体とは、少なくともがんに罹患していない個体をいう。健常体は、何れの疾患や異常も有さない健康な個体であることが好ましい。又は、対照は、前立腺がん以外のがんに罹患した個体であってもよい。
【0054】
ここで、対照として選択される個体は、本分析方法で検査を受ける対象とは別の個体であってもよいが、同じ種に属する個体、即ち対象がヒトであればヒトであることが好ましい。また、対照の年齢、性別及び身長体重等の身体的条件、又は人数は特に限定されるものではないが、身体的条件は、本分析方法で検査を受ける対象のものと同じ又は類似であることが好ましい。
【0055】
対照における標的miRNAの存在量は、実施形態の分析方法が行われる前に、同じ又は類似の種類の試料及び方法を用いて予め得られたものであり得る。又は、対照における標的miRNAの存在量は文献等の過去の知見から得た値であってもよい。
【0056】
或いは、定量工程(S1)で得られた定量値が予め定められた閾値以上である場合に、対象が前立腺がんに罹患していると判定してもよい。例えば、閾値は、定量工程(S1)で用いられる方法と同じ方法で健常な個体又は他のがんを有する個体と、前立腺がんを有する個体との標的miRNA定量値を測定し、比較することにより決定することができる。各個体は複数でもよい。閾値は、用いられる方法、試料の種類、測定条件に従って異なり得る。
【0057】
ここで、対象が前立腺がんに罹患していると判定することは、前立腺がんへの罹患可能性が高いと判定することも含む。
【0058】
また、対象が前立腺がんに罹患していると判定することは、対象における前立腺がんの罹患の有無を他のがんと区別して判定することも含む。即ち、判定工程(S2)で前立腺がんに罹患していると判定された場合は、対象が他のがんではなく、前立腺がんに罹患していることを意味し得る。他のがんとは、例えば、前立腺がん以外に分類されるがん(悪性腫瘍、悪性新生物、癌及び肉腫)を含む。他のがんは、例えば、乳がん、大腸がん、胃がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、肉腫、子宮体がん及び子宮肉腫等を含む。
【0059】
また、対象が前立腺がんに罹患していると判定することは、対象における前立腺がんの予後又は前立腺がんの再発の有無を判定することも含む。この場合、対象は、例えば本分析方法を行う以前に前立腺がんに罹患していると判定された対象、前立腺がんの治療を受けた対象、前立腺がんから治癒した対象、及び/又は前立腺がんの経過観察中の対象等であり得る。
【0060】
例えば、このような対象において標的miRNAの定量を行った結果、定量値が対照より高い、又は予め定められた閾値以上である場合には、対象における前立腺がんの予後が不良である又は前立腺がんが再発している、或いはその可能性が高いと判定することが可能である。そのような分析方法は、図4の(b)に示すように、定量工程(S1)の後、定量の結果から対象における前立腺がんの予後又は前立腺がんの再発の有無を判定する判定工程(S3)を含む。 更なる実施形態においては、判定工程(S2)又は(S3)の後、その結果に従って対象に適用するための治療法の種類又は薬剤の種類を選択することも可能である。治療法又は薬剤は、前立腺がんの治療のためのものである。治療法の種類又は薬剤の種類は、治療法又は薬剤の使用量、タイミング若しくは期間を含む。そのような分析方法は、図4の(c)に示すように、判定工程(S2)又は(S3)の後、定量の結果から対象に適用するための治療法の種類又は薬剤の種類を選択する選択工程(S4)を含む。
【0061】
また、更なる実施形態においては、判定工程(S2)又は(S3)の後、当該判定をより確かなものにするために、対象を更なる前立腺がん用の検査、例えば、細胞診等に供してもよい。
【0062】
以上に説明した実施形態の分析方法によれば、1種類のmiRNA(hsa-miR-92a-3p)を定量することにより、簡便に対象における前立腺がんの罹患の有無を判定することが可能である。
【0063】
特に、実施形態の分析方法は、健康診断等で容易に採取できる血清を用いることが可能であるため、前立腺がんを早期に発見することができる。加えて、実施形態の分析方法は、細胞診等と比較して対象の肉体的及び経済的負担を大きく軽減することができるとともに、手順が容易であるため検査者にとっても負担が少ない。また、血清は、そこに含まれるmiRNA濃度が安定しているため、より正確な検査を行うことが可能である。
【0064】
(マーカー)
実施形態によれば、hsa-miR-92a-3pを含む、前立腺がん検出用マーカーが提供される。
【0065】
実施形態の前立腺がん検出用マーカーは、例えば、対象における前立腺がんの罹患の有無の判定、対象における前立腺がんの予後判定、及び対象における前立腺がんの再発の有無の判定等に使用することができる。
【0066】
また、実施形態のマーカーは、対象に適用する治療方法の種類又は薬剤の種類の選択にも使用することができる。ここで、治療方法又は薬剤は、前立腺がんの治療のためのものである。
【0067】
或いは、実施形態のマーカーは、試料中の前立腺がん細胞の検出にも使用することが可能である。
【0068】
(キット)
実施形態によれば、前立腺がん検出用キットが提供される。
【0069】
当該キットは、hsa-miR-92a-3pを増幅するためのプライマーセット(以下、「第1プライマーセット」とも称する)、hsa-miR-92a-3pを逆転写するためのRTプライマー、hsa-miR-92a-3pを伸長するためのELプライマー、及びhsa-miR-92a-3pを検出するための核酸プローブからなる群から選択される少なくとも1種の核酸を含む。
【0070】
第1プライマーセットは、例えばLAMP増幅用のプライマーセットである。第1プライマーセットとして、例えば、表2に示すLAMP増幅用プライマーセットA~Cの少なくとも1つを用いることができる。
【0071】
実施形態のキットがRTプライマー及びELプライマーを含む場合、表1に示す逆転写及び伸長用プライマーセットA~Cの少なくとも1つを用いることができる。
【0072】
核酸プローブは、hsa-miR-92a-3pの少なくとも1部の配列又はその相補配列、或いは、hsa-miR-92a-3pのcDNAの少なくとも1部の配列又はその相補配列を含む。
【0073】
キットに含まれる上記核酸は、個別に又は何れかが組み合わされて適切な担体とともに容器に収容されて提供されてもよい。適切な担体は、例えば、水又は緩衝液等である。容器は、例えば、チューブ又はマイクロタイタープレート等である。或いは、これらはマイクロ流体チップ等の固相に固定されて提供されてもよい。
【0074】
キットは、上記核酸の他に、逆転写、伸長及び/又は増幅に用いられる試薬、検出に用いられる指示薬(例えば、SYBR GreenやEVA Greenなどの蛍光色素、電流検出する場合はルテニウムヘキサアミンなどの金属錯体)等を含んでもよい。
【0075】
実施形態の前立腺がん検出用キットは、例えば、対象における前立腺がんの罹患の有無の判定、対象における前立腺がんの予後判定、及び対象における前立腺がんの再発の有無の判定等に使用することができる。また、実施形態のキットは、対象に適用する治療方法の種類又は薬剤の種類の選択にも使用することができる。ここで、治療方法又は薬剤は、前立腺がんの治療のためのものである。或いは、実施形態のキットは、試料中の前立腺がん細胞の検出等にも使用することが可能である。
【0076】
更なる実施形態によれば、前立腺がん検出用キットは、hsa-miR-92a-3pを増幅するためのプライマーセット、hsa-miR-92a-3pを逆転写するためのRTプライマー、hsa-miR-92a-3pを伸長するためのELプライマー、及びhsa-miR-92a-3pを検出するための核酸プローブからなる群から選択される少なくとも1種の核酸を含む前立腺がんの診断用組成物又は診断薬として提供される。また、実施形態によれば、前立腺がんの診断用組成物又は前立腺がんの診断薬の製造における上記核酸の少なくとも1種の使用も提供される。
【0077】
・第2の実施形態
第2の実施形態において、図5の(a)に示すように、対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pを定量すること(定量工程(S11))を含む、対象における前立腺がんの罹患の有無の判定を補助するための分析方法も提供される。
【0078】
「判定を補助する」とは、例えば、対象が前立腺がんに罹患している可能性に関する情報を取得することを含む。そのような分析方法は、図5の(b)に示すように、以下の工程を含む。
【0079】
(S11)対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pを定量する定量工程、及び
(S12)対象が前立腺がんに罹患している可能性に関する情報を得る情報取得工程。
【0080】
定量工程(S11)は、上記の定量工程(S1)と同様の方法により行うことができる。情報取得工程(S12)で得られる情報とは、例えば、定量工程(S11)の定量結果から得られる、試料中における標的miRNAの存在量に関する情報である。例えば、情報は、増幅産物の定量値又は試料中の標的miRNAの定量値等である。
【0081】
当該情報は、上記のような対照又は予め定められた閾値と比較されることにより、試料の由来となる対象における前立腺がんの罹患の有無の判定、対象における前立腺がんの予後判定、前立腺がんの再発の有無の判定、或いは対象に適用される治療法の種類又は薬剤の種類の選択等に用いることができる。
【0082】
・第3の実施形態
第3の実施形態によれば、図6の(a)に示すように、対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pを定量すること(定量工程(S21))により、対象におけるがんの罹患の有無を判定する。
【0083】
がんは、悪性腫瘍、悪性新生物、癌及び肉腫を含む。がんは、例えば、前立腺がん、乳がん、大腸がん、胃がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、肉腫、子宮体がん及び子宮肉腫等を含む。
【0084】
本分析方法では、定量工程(S21)は、上記定量工程(S1)と同様の方法で行うことができる。
【0085】
定量工程(S21)で得られた定量結果から、対象におけるがんの罹患の有無を判定することができる。このような判定は、例えば、図6の(b)に示す定量工程(S21)の後に行われ得る判定工程(S22)によって行われ得る。例えば、判定工程(S22)では、対象の標的miRNAの定量値が対照と比較して高い場合に、対象ががんに罹患していると判定することができる。対照とは、健常体における標的miRNAの定量値である。ここにおいて、健常体とは、がんに罹患していない個体である。
【0086】
或いは、定量工程(S21)で得られた定量値が予め定められた閾値以上である場合に、対象ががんに罹患していると判定してもよい。
【0087】
対象ががんに罹患していると判定することは、がんの罹患可能性が高いと判定すること、対象のがんの予後が不良であると判定すること、及び/又は対象におけるがんが再発していると判定することを含む。そのような分析方法は、図6の(c)に示すように、定量工程(S21)の後、定量の結果から対象におけるがんの予後又はがんの再発の有無を判定する判定工程(S23)を含む。
【0088】
本方法における、対象におけるがんの罹患の有無を判定することは、対象におけるがんの罹患の有無を、健常な状態と区別して判定することを含む。ここにおいて、健常な状態とは、がんを罹患していない状態をいう。
【0089】
また、判定工程(S22)の結果から、対象に適用する治療法又は薬剤の種類を選択してもよい。そのような分析方法は、図6の(d)に示すように、判定工程(S22)又は(S23)の後、定量の結果から対象に適用するための治療法の種類又は薬剤の種類を選択する選択工程(S24)を含む。また、判定工程(S22)の後、当該判定をより確かなものにするため、又は対象をがんの種類を判定するための更なる検査に供してもよい。
【0090】
以上に説明した実施形態の分析方法によれば、1種類のmiRNA(hsa-miR-92a-3p)を定量することにより、簡便に対象におけるがんの罹患の有無を判定することが可能である。
【0091】
また、第3の実施形態によれば、対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pを定量すること(定量工程(S21))を含む、対象におけるがんの罹患の有無の判定を補助するための分析方法も提供される。「判定を補助する」とは、例えば、図6の(e)に示すように、対象ががんに罹患している可能性に関する情報を取得する情報取得工程(S25)を含む。
【0092】
また、第3の実施形態によれば、hsa-miR-92a-3pを含む、がん検出用マーカーが提供される。がん検出用マーカーは、例えば、対象におけるがんの罹患の有無の判定、対象におけるがんの予後判定、及び対象におけるがんの再発の有無の判定等に使用することができる。また、がん検出用マーカーは、対象に適用する治療方法の種類又は薬剤の種類の選択にも使用することができる。ここで、治療方法又は薬剤は、がんの治療のためのものである。或いは、がん検出用マーカーは、試料中のがん細胞の検出等にも使用することが可能である。
【0093】
更に、第3の実施形態によれば、がん検出用キットが提供される。
【0094】
当該キットは、hsa-miR-92a-3pを増幅するためのプライマーセット、hsa-miR-92a-3pを逆転写するためのRTプライマー、hsa-miR-92a-3pを伸長するためのELプライマー、及びhsa-miR-92a-3pを検出するための核酸プローブからなる群から選択される少なくとも1種の核酸を含む。
【0095】
実施形態のがん検出用キットは、例えば、対象におけるがんの罹患の有無の判定、対象におけるがんの予後判定、及び対象におけるがんの再発の有無の判定等に使用することができる。また、実施形態のキットは、対象に適用する治療方法の種類又は薬剤の種類の選択にも使用することができる。ここで、治療方法又は薬剤は、がんの治療のためのものである。或いは、実施形態のキットは、試料中のがん細胞の検出等にも使用することが可能である。
【0096】
更なる実施形態によれば、がん検出用キットは、hsa-miR-92a-3pを増幅するためのプライマーセット、hsa-miR-92a-3pを逆転写するためのRTプライマー、hsa-miR-92a-3pを伸長するためのELプライマー、及びhsa-miR-92a-3pを検出するための核酸プローブからなる群から選択される少なくとも1種の核酸を含むがんの診断用組成物又は診断薬として提供される。また、実施形態によれば、がんの診断用組成物又はがんの診断薬の製造における上記核酸の少なくとも1種の使用も提供される。
【0097】
[例]
以下に、実施形態の分析方法又はキットを用いて行った実験について記載する。
【0098】
例1.健常者血清及びがん患者血清中のhsa-miR-92a-3pの定量(qRT-PCR法)
健常者16検体、乳がん患者22検体、大腸がん患者6検体、胃がん患者6検体、肺がん患者3検体、卵巣がん患者6検体、膵臓がん患者6検体、胆管がん患者5検体、食道がん患者5検体、肝臓がん患者5検体、脳腫瘍患者5検体、膀胱がん患者5検体、前立腺がん患者5検体、肉腫患者5検体、子宮体がん患者5検体、子宮肉腫患者5検体から得られた血清を用意した。
【0099】
全ての血清からRNAを抽出した。抽出は、NucleoSpin(登録商標)miRNA Plasma(商品名、タカラバイオ社製)を用いて行った。
【0100】
次に、抽出サンプル中に存在する短鎖RNAを逆転写しcDNAを合成及び増幅した。合成は、TaqMan(登録商標)Advanced miRNA Assay(商品名、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)の取扱説明書にしたがって、TaqMan(登録商標)Advanced miRNA cDNA Synthesis Kit(商品名、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)を用いて行った。
【0101】
続いて、TaqMan(登録商標)Fast Advanced Master Mix(商品名、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)及びTaqMan(登録商標)Advanced miRNA Assay ID:477827_mirを用いてTaqMan PCRを行い、Ct値を測定し、miRNAを定量した。
【0102】
定量の結果を図7及び図8に示す。図7は健常者及び各がん患者におけるhsa-miR-92a-3pの定量値を示す。hsa-miR-92a-3pは、健常者では10~10コピーオーダー、前立腺がん以外のがん患者では10~10コピーオーダー、前立腺がん患者では10コピーオーダーで分布していた。この結果から、前立腺がん患者では血清中のhsa-miR-92a-3pの存在量が多いことが示された。
【0103】
図8は、健常者、前立腺がん以外のがん患者及び前立腺がん患者の定量結果を示す箱ひげ図である。がん患者は健常者より高い値に分布し、さらに前立腺がん患者は他のがんよりも高い値を示した。
【0104】
健常者及びがん患者、前立腺がん患者及び健常者+他のがん患者、前立腺がん患者及び他のがん患者をそれぞれ切り分けるAUC(Area Under Curve)を以下の表3に示す。
【表3】
【0105】
健常者とがん患者とを切り分けるAUCは約0.88であり、前立腺がん患者と健常者+他のがん患者との間のAUCは約0.87であり、前立腺がん患者と他のがん患者との間のAUCは約0.85であった。
【0106】
したがって、配列番号1のmiRNA、即ちhsa-miR-92a-3pは、前立腺がんを健常者及び他のがんと区別して検出するためのマーカーとして高性能であることが示された。また、hsa-miR-92a-3pは、健常者とがん患者とを区別して検出するためのマーカーとしても使用できることが示された。
【0107】
例2.健常者血清及びがん患者血清中のhsa-miR-92a-3pの定量(LAMP法)
健常者16検体、乳がん患者5検体、大腸がん患者5検体、胃がん患者5検体、肺がん患者3検体、卵巣がん患者5検体、膵臓がん患者5検体、胆管がん患者5検体、食道がん患者5検体、肝臓がん患者5検体、脳腫瘍患者5検体、膀胱がん患者5検体、前立腺がん患者5検体、肉腫患者2検体、子宮体がん患者2検体、子宮肉腫患者2検体からの血清を用意した。
【0108】
RNAの抽出は、例1と同じ方法で行った。抽出サンプル2μLを、反応体積20μL、16℃10分、42℃5分、85℃5分の条件で逆転写した。逆転写反応液の組成は、67unit MultiScribe(登録商標)Reverse Transcriptase(*)、1×RT Buffer(*)、0.1mMのdNTPs(*)、4UのRNaseOUT(商品名、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)、10nMのRTプライマー(配列番号2、RTプライマー)であった。「*」を付したものは全てHigh-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(商品名、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)に含まれているものを用いた。
【0109】
逆転写後の反応液に、伸長液5μLを添加して、95℃2分後、95℃20秒-59℃30秒-72℃10秒のサイクルを20回かけて伸長を行った。伸長液は、25μL伸長反応液中に、DeepVent(exo-)DNApolymerase(0.5U、ニューイングランドバイオ)を含み、終濃度が、0.2×ThermoPol Buffer(DeepVent(exo-)DNApolymerase付属)、0.2mMのMgSO、0.12mMのdNTPs、10nMのELプライマー(配列番号3、ELプライマー)となるよう調整した。
【0110】
次に、伸長した産物1μLを、反応体積25μL、65℃60分の条件でLAMP増幅を行い、同時に蛍光強度の立ち上り時間を測定した。LAMP増幅液は、8UのTin(exo-)LF DNApolymerase(Optigene)、0.5μLのEvaGreen(登録商標)(Biotium)を含み、終濃度がそれぞれ、20mMのTris-HCl(pH8.0)、50mMのKCl、8mMのMgSO、10mMの(NH4)SO4、0.1%のTween-20、0.8Mのベタイン、各1.4mMのdNTPs、1.6μMのFIPプライマー(配列番号8)、1.6μMのBIPプライマー(配列番号9)、及び0.8μMのLBプライマー(配列番号10)となるよう調整した。リアルタイムPCR装置にて、経時的に蛍光強度を測定し、閾値を超える時間を測定した。
【0111】
配列番号1の合成RNAの0、10、10、10及び10コピー/μLを上記と同様のプライマーを用いて逆転写、伸長及びLAMP増幅し、同様に蛍光強度の立ち上り時間を測定した。この結果を用いて配列番号1のRNAのコピー数と立ち上がり時間の検量線を作成した(図11の(a))。この検量線を用いて、各検体における立ち上がり時間からRNAのコピー数を算出した。
【0112】
定量の結果を図9及び図10に示す。図9は健常者及び各がん患者の血清における定量値を示す。定量値は、健常者では10~10コピーオーダー、前立腺がん以外のがん患者では10コピーオーダー、前立腺がん患者では10コピーオーダーで分布していた。この結果から、前立腺がん患者では血清中のhsa-miR-92a-3pの存在量が多いことが示された。
【0113】
図10は、健常者、前立腺がん以外のがん患者及び前立腺がん患者の定量結果を示す箱ひげ図である。この結果から、がん患者は健常者より高い値に分布し、更に前立腺がん患者は他のがんよりも高い値を示した。
【0114】
健常者及びがん患者、前立腺がん患者及び健常者+他のがん患者、前立腺がん患者及び他のがん患者をそれぞれ切り分けるAUC(Area Under Curve)を以下の表4に示す。
【表4】
【0115】
健常者とがん患者とを切り分けるAUCは約0.92であり、前立腺がん患者と健常者+他のがん患者との間のAUCは約0.89であり、前立腺がん患者と他のがん患者との間のAUCは約0.87であった。
【0116】
この結果から、配列番号1のmiRNA、即ちhsa-miR-92a-3pは、前立腺がんを健常者及び他のがんと区別して検出するためのマーカーとして高性能であることが示された。また、hsa-miR-92a-3pは、健常者とがん患者と区別して検出するためのマーカーとしても使用できることが示された。更に、LAMP法を用いた本例の結果は、例1のようにqRT-PCRを用いるより高い分離能であることが明らかとなった。
【0117】
例3.プライマーセットの特異性の評価
4組のRTプライマー、ELプライマー、FIPプライマー、BIPプライマー及びLBプライマーを含むプライマーセットを合成した。これらを用いて、hsa-miR-92a-3pをより特異的に伸長及び増幅することができるプライマーの配列、及びの組み合わせを評価した。当該4組のプライマーセットを用いて例2と同じ条件で、配列番号1の合成RNAの0、10、10、10及び10コピー/μLを伸長し、LAMP増幅した。増幅はエンドポイント濁度測定装置(LT-16、ニッポンジーン製)を用いて行い、濁度の立ち上がり時間を計測した。ポジティブコントロールとして、各プライマーセットの配列に対応する伸長産物を人工合成したものを各々合成して用いた。
【0118】
4組のうち、表5に示すプライマーセットA、B及びCの濁度の立ち上がり時間の結果をそれぞれ図11の(a)、(b)及び(c)に示す。
【表5】
【0119】
これらのプライマーセットA~Cを用いた場合では、他のプライマーセットと比較して、濁度の立ち上がり時間のmiRNA濃度依存性が良好であり、miRNAのコピー数が0であるときの非特異的増幅が少なかった。特にプライマーセットAは、濁度の立ち上がり時間のmiRNA濃度依存性が高く、miRNAのコピー数が0であるときの非特異的増幅がなく、特に優れていた。
【0120】
以上の結果から、プライマーセットA~Cを用いることによって、標的miRNAを特異的伸長及び増幅が可能であることが明らかとなった。したがって、これらのプライマーセットを用いれば、前立腺がんの検出の精度が向上することが示唆された。
【0121】
例4.LB配列の検討
例2において作製した合成RNAによる検量線用伸長産物を、配列番号10のLB配列に代えて、表6に示す配列番号11のLB配列を用いて例2と同様の方法で増幅した。
【表6】
【0122】
その結果を図12に示す。配列番号11のLBプライマーを用いた場合も、濁度の立ち上がり時間のmiRNA濃度依存性が良好であり、miRNAのコピー数が0であるときの非特異的増幅が少なかった。したがって、配列番号11のLB配列も本LAMP増幅系において有効に用いることが可能であることが示された。
【0123】
例5.電気化学的検出
例2で使用したFIPプライマー及びBIPプライマー(各48μM)、LBプライマー(24μM)を含むプライマー溶液を調製した。シリコーン製流路パッキン(流路幅×高さ:1mm×1mm)にプライマー溶液100nLを、微量分注機を用いてスポットした。電極をパターニングしたDNAチップ基板(ガラス(0.8mm)/チタン(500nm)/金(2000nm))と該流路パッキンとをカセットに組み込み、チップを作製した。
【0124】
次に、表5に示す組成のLAMP増幅反応液を調整した。
【表7】
【0125】
上記LAMP増幅反応液に、例2で用いた伸長後の鋳型を1μL添加し、表8に示す条件で電気化学測定を行った。
【表8】
【0126】
LAMP増幅反応が開始されると、ルテニウムヘキサアミン(RuHex)の還元電流値が増加し始めた。電流が増加する時間は、伸長産物の存在量が多いほど早く、本チップを用いて定量検出が可能であることが明らかとなった。
【0127】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pを定量することを含む、前記対象に
おけるがんの罹患の有無を判定する分析方法であって、
前記がんは、前立腺がん、乳がん、胃がん、肺がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、肉腫、子宮体がん又は子宮肉腫である
分析方法。
[2]
対象由来の試料中のhsa-miR-92a-3pを定量することを含む、前記対象におけるがんの罹患の有無の判定を補助する分析方法であって、
前記がんは、前立腺がん、乳がん、胃がん、肺がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、肉腫、子宮体がん又は子宮肉腫である
分析方法。
[3]
前記対象におけるhsa-miR-92a-3pの存在量が、対照におけるhsa-miR-92a-3pの存在量よりも多い場合、前記対象ががんに罹患していると判定する判定工程を更に含む[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
前記がんの罹患の有無の判定は、前記対象におけるがんの予後判定、又は前記対象におけるがんの再発の有無の判定を含む、[1]~[3]の何れか1つに記載の方法。
[5]
前記がんは、前立腺がんであり、前記前立腺がんの罹患の有無の判定は、他のがんと区別して行われる、[1]~[4]の何れか1つに記載の方法。
[6]
前記他のがんは、乳がん、大腸がん、胃がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、肉腫、子宮体がん及び子宮肉腫を含む、[5]に記載の方法。
[7]
前記試料は、血清である、[1]~[6]の何れか1つに記載の方法。
[8]
前記定量は、hsa-miR-92a-3pを増幅するためのプライマーセット(以下、「第1プライマーセット」と称する)、hsa-miR-92a-3pを逆転写するための逆転写用プライマー、hsa-miR-92a-3pを伸長するための伸長用プライマー、及びhsa-miR-92a-3pを検出するための核酸プローブからなる群から選択される少なくとも1種の核酸を用いて行われる、[1]~[7]の何れか1つに記載の方法。
[9]
前記第1プライマーセットは、
配列番号8のFIPプライマー、配列番号9のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含むか、
配列番号8のFIPプライマー、配列番号9のBIPプライマー及び配列番号11のLBプライマーを含むか、
配列番号12のFIPプライマー、配列番号13のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含むか、又は
配列番号14のFIPプライマー、配列番号15のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含み、
前記逆転写用プライマーが配列番号2を含み、前記伸長用プライマーが配列番号3を含むか、
前記逆転写用プライマーが配列番号4を含み、前記伸長用プライマーが配列番号5を含むか、又は
前記逆転写用プライマーが配列番号6を含み、前記伸長用プライマーが配列番号7を含む、
[8]に記載の方法。
[10]
hsa-miR-92a-3pを増幅するためのプライマーセット(以下、「第1プライマーセット」と称する)、hsa-miR-92a-3pを逆転写するための逆転写用プライマー、hsa-miR-92a-3pを伸長するための伸長用プライマー、及びhsa-miR-92a-3pを検出するための核酸プローブからなる群から選択される少なくとも1種の核酸を含む、がんを検出するためのキットであって、
前記がんは、前立腺がん、乳がん、胃がん、肺がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、肉腫、子宮体がん又は子宮肉腫である
キット。
[11]
前記がんは、前立腺がんである、[10]に記載のキット。
[12]
前記第1プライマーセットは、
配列番号8のFIPプライマー、配列番号9のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含むか、
配列番号8のFIPプライマー、配列番号9のBIPプライマー及び配列番号11のLBプライマーを含むか、
配列番号12のFIPプライマー、配列番号13のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含むか、又は
配列番号14のFIPプライマー、配列番号15のBIPプライマー及び配列番号10のLBプライマーを含み、
前記逆転写用プライマーが配列番号2を含み、前記伸長用プライマーが配列番号3を含むか、
前記逆転写用プライマーが配列番号4を含み、前記伸長用プライマーが配列番号5を含むか、又は
前記逆転写用プライマーが配列番号6を含み、前記伸長用プライマーが配列番号7を含む、
[10]又は[11]に記載のキット。
[13]
hsa-miR-92a-3pを含む、がん検出用のマーカーであって、
前記がんは、前立腺がん、乳がん、胃がん、肺がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、肝臓がん、脳腫瘍、膀胱がん、肉腫、子宮体がん又は子宮肉腫である
マーカー。
[14]
前記がんは、前立腺がんである、[13]に記載のマーカー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
0007191984000001.app