(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/15 20060101AFI20221212BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20221212BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20221212BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20221212BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20221212BHJP
F16F 7/12 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B62D21/15 C
B62D21/00 A
B62D25/20 H
F16F15/02 Z
F16F7/00 C
F16F7/00 J
F16F7/12
(21)【出願番号】P 2021041176
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 右京
(72)【発明者】
【氏名】松浦 範和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隼太
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100692(JP,A)
【文献】特開2020-055467(JP,A)
【文献】特開2019-026237(JP,A)
【文献】特開2009-067376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/15
B62D 21/00
B62D 25/20
F16F 15/02
F16F 7/00
F16F 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルと、
前記フロアパネルよりも車体の上下方向における下方に設けられるサブフレームと、
前記サブフレームよりも前記車体の前後方向における後方に設けられ、前記前後方向に沿って延びる衝撃吸収部材と、
前記フロアパネルの下面に前記衝撃吸収部材を着脱可能に取り付けるブラケットと、
を備え、
前記フロアパネルは、前記衝撃吸収部材が取り付けられる前記下面を有するフロアパンを有し、
前記衝撃吸収部材は、
前記フロアパンの前記下面に沿う第一延在部と、
前記第一延在部と一体形成され、前記フロアパンよりも前記前後方向の前方に延在する第二延在部と、
を有し、
前記衝撃吸収部材の前端部は、前記上下方向において前記サブフレームと同じ高さとなるように配置されるとともに、前記前後方向において前記サブフレームとの間に間隔をあけて配置されることを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記フロアパネルは、前記フロアパネルが上方に隆起するように湾曲形成されることにより下方に開口する凹部を有し、
前記衝撃吸収部材は、前記凹部の開口後縁を跨ぐように前記前後方向に延びることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記フロアパネルは、前記フロアパネルが上方に隆起するように湾曲形成されることにより下方に開口する凹部を有し、
前記ブラケットは、前記凹部の開口後縁を跨ぐL字状又はU字状に形成され、
前記サブフレームは、前記衝撃吸収部材の前記前端部と対向する被当接面を有することを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記ブラケットは、締結部材が締結されるナット部を有し、
前記衝撃吸収部材は、前記ブラケットとの間に配置されるスペーサを介して前記ブラケットと接続されることを特徴とする請求項3に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記フロアパネルは、前記フロアパネルが上方に隆起するように湾曲形成されることにより下方に開口する凹部を有し、
前記フロアパネルの前記凹部に燃料タンクが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記サブフレームは、前記燃料タンクよりも下方において車体フレームに固定されることを特徴とする請求項5に記載の車体後部構造。
【請求項7】
前記衝撃吸収部材は、
中空のパイプ状に形成された本体部と、
前記本体部の内部に設けられ、前記衝撃吸収部材の長手方向に沿って延びる補強部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項8】
前記衝撃吸収部材の前部には脆弱部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の車体後部構造。
【請求項9】
前記衝撃吸収部材は、
前記本体部の上面に設けられたボルト締結孔と、
前記本体部の下面に設けられたボルト挿入孔と、
を有することを特徴とする請求項7に記載の車体後部構造。
【請求項10】
前記サブフレームの後端部には、前記衝撃吸収部材の前記前端部と対向するとともに前記前後方向を面直方向とする被当接面が設けられ、
前記被当接面は、前記上下方向から見て、前記車体の車幅方向の内側から外側へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜し、
前記被当接面と対向する前記衝撃吸収部材の前記前端部は、前記上下方向から見て、前記被当接面と平行となるように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項11】
前記衝撃吸収部材は、前記車体の車幅方向に並んで左右一対設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後方であってフロアパネルの近傍に種々の車載部品が搭載された車体後部構造が知られている。これらの車両では、車載部品を保護しつつ、後突時における衝撃エネルギーを吸収して乗員の安全性を高めるための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、サイドシルの後方に配置されるトーションビームと、下方に突出するフロアパンと、フロアパンの下面に沿って前後方向に延びるリヤセンタフレーム(衝撃吸収部材)と、を有する車体後部構造が開示されている。リヤセンタフレームは、トーションビームの後方に配置されている。特許文献1に記載の技術によれば、後突初期には、凹凸状に形成されたリヤセンタフレームの後部が潰れることで衝撃エネルギーが吸収される。後突後期には、リヤセンタフレームがトーションビームに当接することによって衝撃エネルギーが吸収される。よって、短いストロークで衝撃エネルギーを吸収し、乗員の安全性を確保できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、水素ガス等のガス燃料を燃料として走行する車両が知られている。これらの車両では、フロアパネルを上方に隆起させ、燃料タンクをこの隆起した部分に配置する場合がある。この場合、燃料タンクの下方にはフロアパネルの開口が形成される。このため、前後方向において燃料タンクと対応する部分において、衝撃吸収部材をフロアパネルの下面に沿わせることができない。これにより、トーションビーム等の荷重を受ける部材と衝撃吸収部材との間の間隔が大きくなるので、後突時に衝撃吸収部材が空走状態となり、車体が大きく変形するおそれがあった。さらに、荷重を受ける部材と衝撃吸収部材との間隔が大きいので、後突時の移動に伴って衝撃吸収部材の後退角度が変化することにより、衝撃吸収部材がトーションビームに当接しなくなるおそれがあった。
したがって、特許文献1に記載の従来技術にあっては、フロアパネルの下方に燃料タンクを配置する車両に適用した場合であっても、衝撃エネルギーを確実に吸収して乗員の安全性を向上する点において改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、フロアパネルの下方に燃料タンクを配置する車両に適用した場合であっても、衝撃エネルギーを確実に吸収して乗員の安全性を向上できる車体後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る車体後部構造(例えば、実施形態における車体後部構造1)は、フロアパネル(例えば、実施形態におけるフロアパネル2)と、前記フロアパネルよりも車体の上下方向における下方に設けられるサブフレーム(例えば、実施形態におけるサブフレーム3)と、前記サブフレームよりも前記車体の前後方向における後方に設けられ、前記前後方向に沿って延びる衝撃吸収部材(例えば、実施形態における衝撃吸収部材4)と、前記フロアパネルの下面(例えば、実施形態における下面13a)に前記衝撃吸収部材を着脱可能に取り付けるブラケット(例えば、実施形態におけるブラケット5)と、を備え、前記フロアパネルは、前記衝撃吸収部材が取り付けられる前記下面を有するフロアパン(例えば、実施形態におけるフロアパン13)を有し、前記衝撃吸収部材は、前記フロアパンの前記下面に沿う第一延在部(例えば、実施形態における第一延在部47)と、前記第一延在部と一体形成され、前記フロアパンよりも前記前後方向の前方に延在する第二延在部(例えば、実施形態における第二延在部48)と、を有し、前記衝撃吸収部材の前端部(例えば、実施形態における前端部38)は、前記上下方向において前記サブフレームと同じ高さとなるように配置されるとともに、前記前後方向において前記サブフレームとの間に間隔(例えば、実施形態における間隔S)をあけて配置されることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る車体後部構造は、前記フロアパネルは、前記フロアパネルが上方に隆起するように湾曲形成されることにより下方に開口する凹部(例えば、実施形態における凹部12)を有し、前記衝撃吸収部材は、前記凹部の開口後縁(例えば、実施形態における開口後縁14a)を跨ぐように前記前後方向に延びることを特徴としている。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る車体後部構造は、前記フロアパネルは、前記フロアパネルが上方に隆起するように湾曲形成されることにより下方に開口する凹部(例えば、実施形態における凹部12)を有し、前記ブラケットは、前記凹部の開口後縁(例えば、実施形態における開口後縁14a)を跨ぐL字状又はU字状に形成され、前記サブフレームは、前記衝撃吸収部材の前記前端部と対向する被当接面(例えば、実施形態における被当接面22)を有することを特徴としている。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る車体後部構造は、前記ブラケットは、締結部材が締結されるナット部(例えば、実施形態におけるナット部41)を有し、前記衝撃吸収部材は、前記ブラケットとの間に配置されるスペーサ(例えば、実施形態におけるスペーサ43)を介して前記ブラケットと接続されることを特徴としている。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る車体後部構造は、前記フロアパネルは、前記フロアパネルが上方に隆起するように湾曲形成されることにより下方に開口する凹部(例えば、実施形態における凹部12)を有し、前記フロアパネルの前記凹部に燃料タンク(例えば、実施形態における燃料タンク16)が配置されていることを特徴としている。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係る車体後部構造は、前記サブフレームは、前記燃料タンクよりも下方において車体フレーム(例えば、実施形態における車体フレーム10)に固定されることを特徴としている。
【0013】
また、請求項7に記載の発明に係る車体後部構造は、前記衝撃吸収部材は、中空のパイプ状に形成された本体部(例えば、実施形態における本体部30)と、前記本体部の内部に設けられ、前記衝撃吸収部材の長手方向に沿って延びる補強部(例えば、実施形態における補強部31)と、を有することを特徴としている。
【0014】
また、請求項8に記載の発明に係る車体後部構造は、前記衝撃吸収部材の前部には脆弱部(例えば、実施形態における脆弱部33)が設けられていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項9に記載の発明に係る車体後部構造は、前記衝撃吸収部材は、前記本体部の上面に設けられたボルト締結孔(例えば、実施形態におけるボルト締結孔34)と、前記本体部の下面に設けられたボルト挿入孔(例えば、実施形態におけるボルト挿入孔35)と、を有することを特徴としている。
【0016】
また、請求項10に記載の発明に係る車体後部構造は、前記サブフレームの後端部には、前記衝撃吸収部材の前記前端部と対向するとともに前記前後方向を面直方向とする被当接面(例えば、実施形態における被当接面22)が設けられ、前記被当接面は、前記上下方向から見て、前記車体の車幅方向の内側から外側へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜し、前記被当接面と対向する前記衝撃吸収部材の前記前端部は、前記上下方向から見て、前記被当接面と平行となるように傾斜していることを特徴としている。
【0017】
また、請求項11に記載の発明に係る車体後部構造は、前記衝撃吸収部材は、前記車体の車幅方向に並んで左右一対設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に記載の車体後部構造によれば、衝撃吸収部材は、ブラケットを介してフロアパネル後部に位置するフロアパンの下面に着脱可能に取り付けられる。衝撃吸収部材は、フロアパネル(フロアパン)に沿う第一延在部と、フロアパンよりも前方に延びる第二延在部と、を有する。これにより、衝撃吸収部材の前端部をフロアパンよりも前方に配置することができる。よって、例えばフロアパネルの下方に燃料タンク等を配置する場合であっても適用できる。すなわち、フロアパンの前方において衝撃吸収部材をフロアパネルに沿わせることができない場合であっても、前後方向の所望の位置まで前方に向けて衝撃吸収部材を延出させることができる。
衝撃吸収部材より前方には、サブフレームが配置される。衝撃吸収部材の前端部は、上下方向においてサブフレームと同じ高さとなるように配置されるとともに、前後方向においてサブフレームとの間に間隔をあけて配置される。これにより、フロアパネルが下面に開口を有する場合であっても、衝撃吸収部材をフロアパネルに沿わせて配置する従来技術と比較して、サブフレームと衝撃吸収部材の前端部とを近づけた状態で配置できる。よって、後突時に衝撃吸収部材が空走状態となることを抑制し、後突時の衝撃エネルギーを効果的に吸収できる。
衝撃吸収部材をサブフレームに当接させる構成としたので、後突時に衝撃吸収部材とサブフレームとの高さ位置がずれることを抑制できる。すなわち、サスペンションとの関係により車体に対して上下方向に変位し易いトーションビームに衝撃吸収部材を当接させる従来技術と比較して、サブフレームは車体に固定されているので、同じく車体に取り付けられた衝撃吸収部材とサブフレームとの相対位置のずれが生じにくい。これにより、後突時に衝撃吸収部材とサブフレームとを確実に当接させることができる。よって、衝撃吸収部材により安定的に後突時の衝撃エネルギーを吸収できる。
したがって、フロアパネルの下方に燃料タンクを配置する車両に適用した場合であっても、衝撃エネルギーを確実に吸収して乗員の安全性を向上できる車体後部構造を提供できる。
【0019】
本発明の請求項2に記載の車体後部構造によれば、フロアパネルは凹部及び開口を有し、衝撃吸収部材は、凹部の開口後縁を跨ぐように前後方向に延びる。これにより、サブフレームや燃料タンクをフロアパネルの凹部の下方に配置した後に、下方から衝撃吸収部材を取り付けることができる。サブフレームの後に衝撃吸収部材を取り付けるので、サブフレームに合わせて所望の位置に衝撃吸収部材を配置し、衝撃吸収部材の前端部をサブフレームに近接させることができる。よって、後突時にサブフレームと衝撃吸収部材とを確実に当接させ、衝撃吸収部材により衝撃エネルギーを効果的に吸収できる。
【0020】
本発明の請求項3に記載の車体後部構造によれば、ブラケットは、フロアパネルの凹部の開口後縁を跨ぐL字状又はU字状に形成される。これにより、衝撃吸収部材を取り付ける際に、ブラケットの傾き等を調整し易い。よって、フロアパネルに対する衝撃吸収部材の取り付け角度や姿勢を容易に調整できる。サブフレームは、衝撃吸収部材の前端部と対向する位置に被当接面を有する。これにより、後突時において、安定的に衝撃吸収部材をサブフレームに当接させることができる。また、L字状又はU字状のブラケットを用いて衝撃吸収部材が取り付けられるので、サブフレームの被当接面と衝撃吸収部材の前端部とが対向するように衝撃吸収部材を取り付けることができる。よって、衝撃吸収部材からの荷重をサブフレームに効果的に伝達し、後突時の衝撃エネルギーを吸収できる。
【0021】
本発明の請求項4に記載の車体後部構造によれば、ブラケットはナット部を有し、衝撃吸収部材及びブラケットの間にはスペーサが配置される。スペーサの個数や大きさ等を変更することにより、特に衝撃吸収部材の上下方向に沿う高さ位置を容易に調整できる。よって、ブラケットだけでなくスペーサによっても衝撃吸収部材の位置を調整可能となり、車体の下方から容易に衝撃吸収部材を取り付けることができる。
【0022】
本発明の請求項5に記載の車体後部構造によれば、フロアパネルは、下方に開口する凹部を有し、フロアパネルの凹部に燃料タンクが配置されている。フロアパネルに凹部が設けられることにより、フロアパネルの下方(凹部の内側)に燃料タンクを収容できる。また、凹部は下方に開口するので、車体の下方から燃料タンクを配置できる。よって、製造時の作業性を向上できる。さらに、この燃料タンクの下方にサブフレームや衝撃吸収部材を配置できるので、サブフレーム及び衝撃吸収部材により後突時の衝撃エネルギーを吸収できる。よって、特に上方に隆起した凹部を有するフロアパネルに燃料タンクが配置される構成の車両において好適な車体後部構造とすることができる。
【0023】
本発明の請求項6に記載の車体後部構造によれば、サブフレームは、燃料タンクよりも下方において車体フレームに固定される。サブフレームは車体フレームに固定されるので、フロアパネルを介して同じく車体フレームに取り付けられた衝撃吸収部材とサブフレームとの位置ずれを抑制できる。よって、後突時に衝撃吸収部材とサブフレームとを確実に当接させ、衝撃エネルギーを吸収できる。
【0024】
本発明の請求項7に記載の車体後部構造によれば、衝撃吸収部材は、パイプ状の本体部と、本体部の内部に設けられる補強部と、を有する。補強部は、衝撃吸収部材(本体部)の長手方向に沿って延びている。衝撃吸収部材をこのように構成することにより、例えばアルミニウム合金等の金属を押出成形することにより容易に衝撃吸収部材を製造することができる。また、本体部は中空のパイプ状に形成されるので、衝撃吸収部材を軽量化できる。補強部は長手方向に沿って延びるので、補強部を設けることにより後突時の荷重に対する衝撃吸収部材の剛性を高めることができる。よって、後突時の衝撃エネルギーを効果的に吸収できる。特に本体部の内部を仕切るように壁状の補強部を設けた場合には、製造性の向上及び耐衝撃性の向上を両立した好適な構成とすることができる。
【0025】
本発明の請求項8に記載の車体後部構造によれば、衝撃吸収部材の前部には脆弱部が設けられている。これにより、衝撃吸収部材の後部と比較して前部が脆弱となる。よって、後突時には、衝撃吸収部材の前部が圧壊することにより衝撃エネルギーを吸収できる。また、フロアパネルと接続される衝撃吸収部材の後部の変形が抑制されることにより、車体後部の変形を抑制できる。よって、衝撃吸収部材の後部は、衝撃吸収部材がサブフレームに当接するまで形状を維持できるので、衝撃吸収部材の後部に伝達された衝撃エネルギーを効果的にサブフレームへ伝達できる。したがって、衝撃吸収部材及びサブフレームにより、後突時の衝撃エネルギーを効果的に吸収できる。
【0026】
本発明の請求項9に記載の車体後部構造によれば、衝撃吸収部材は、ボルト締結孔と、ボルト挿入孔と、を有する。ボルト締結孔は衝撃吸収部材の上面に設けられるので、ボルト締結孔により衝撃吸収部材をブラケットに締結できる。ボルト挿入孔は衝撃吸収部材の下面に設けられるので、例えば車体の下方から衝撃吸収部材を取り付ける際に、ボルト挿入孔にボルトを挿入して上面のボルト締結孔にアクセスできる。これにより、衝撃吸収部材の取り付け作業性を向上できる。また、後突時には、下面のボルト挿入孔が脆弱部として機能することにより、衝撃吸収部材がボルト挿入孔を起点として下方に凸となるように屈曲する。これにより、衝撃吸収部材が変形した場合であっても、衝撃吸収部材より上方に設けられた燃料タンクと衝撃吸収部材とが干渉しない。よって、燃料タンクを衝撃から保護できる。
【0027】
本発明の請求項10に記載の車体後部構造によれば、サブフレームは後端部に被当接面を有する。被当接面は、車幅方向の内側から外側へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜している。被当接面と対向する衝撃吸収部材の前端部は、上下方向から見て、被当接面と平行となるように傾斜している。これにより、衝撃吸収部材の前端部とサブフレームの被当接面とが面接触するので、衝撃吸収部材に入力された衝撃エネルギーを安定的にサブフレームに伝達させることができる。被当接面及び衝撃吸収部材の前端部は、上下方向から見て傾斜しているので、衝撃吸収部材からサブフレームに伝達される荷重が、前後方向及び車幅方向に分配される。これにより、衝撃吸収部材に入力された荷重を車体フレーム全体に亘って分散できる。よって、衝撃エネルギーを効果的に吸収し、車体後部の変形を抑制できる。
【0028】
本発明の請求項11に記載の車体後部構造によれば、衝撃吸収部材は、車幅方向に並んで左右一対設けられている。これにより、後突時の衝撃エネルギーが左右の衝撃吸収部材及びサブフレームにより均一に分散して伝達される。また、後突時に左右で傾きが生じることを抑制できる。よって、車体後部の変形を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】実施形態に係る車体後部構造を下方から見た斜視図。
【
図4】実施形態に係る衝撃吸収部材の後部の側面図。
【
図5】実施形態に係る衝撃吸収部材の前部の側面図。
【
図6】実施形態に係る衝撃吸収部材の取り付け方法を説明する分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、前後、左右及び上下の向きは、車体後部構造1を有する車両(不図示)の前後、左右及び上下方向と一致する。また、左右方向を車幅方向という場合がある。図中の矢印FRは車体前方を指し、矢印UPは車体上方を指し、矢印LHは車体左方を指している。
【0031】
(車体後部構造)
図1は、実施形態に係る実施形態に係る車体後部構造1を下後方から見た斜視図である。
図2は、実施形態に係る車体後部構造1を下方から見た斜視図である。
図3は、実施形態に係る衝撃吸収部材4の拡大下面図である。
図1に示すように、車体後部構造1は、自動車等の車両(不図示)の後部に設けられている。車両は、例えば天然ガスや水素ガス等のガス燃料を燃料として走行する天然ガス車両や、燃料ガスによって発電された電力を用いて走行する燃料電池車両等である。本実施形態の車体後部構造1は、ガス燃料が充填された燃料タンク16をフロア下に搭載した車両において、前後方向に沿う衝撃エネルギーを吸収して乗員を保護するための後部構造である。
【0032】
本実施形態の車体後部構造1は、例えば乗員が乗り込む車室と、車室より後方に位置する荷室(いずれも不図示)と、が連続するタイプの車両(例えばワンボックスカー等)に適用される。換言すれば、車室と荷室の区別がなく、フロア後部の剛性がフロアのみによって担保される車両に適用される。車体後部構造1は、車体フレーム10と、フロアパネル2と、サブフレーム3と、ブラケット5と、衝撃吸収部材4と、を備える。
【0033】
(車体フレーム)
車体フレーム10は、車体の骨組みを構成する部材である。車体フレーム10は、サイドシル8と、クロスメンバ9と、を有する。
サイドシル8は、車幅方向に離間して左右一対設けられている。一対のサイドシル8は、それぞれ車両の前後方向に沿って延びている。クロスメンバ9は、一対のサイドシル8の間で車幅方向に沿って延びている。クロスメンバ9は、前後方向において互いに離間して複数設けられている。本実施形態において、クロスメンバ9は、詳しくは後述するフロアパネル2の凹部12に対して前方及び後方にそれぞれ設けられている。
【0034】
(フロアパネル)
フロアパネル2は、車体の下部に設けられ、車室の床面を構成している。フロアパネル2は、左右一対のサイドシル8の間に設けられている。フロアパネル2の車幅方向の両端部は、それぞれサイドシル8に固定されている。フロアパネル2は、クロスメンバ9より上方に設けられている。
【0035】
フロアパネル2は、凹部12と、フロアパン13と、を有する。
凹部12は、フロアパネル2を構成するパネル部材が上方に隆起するように湾曲形成されることにより、下方から見て上方へ窪むように形成されている。凹部12は、下方に開口するように形成されている。換言すれば、フロアパネル2の下面は、開口14を有する。凹部12は、前後方向において車室と荷室との間の位置に設けられている。凹部12は、車幅方向から見た側面視において、上壁12aと、前壁12bと、後壁12cと、を有する矩形状に形成されている。フロアパネル2の下方であって凹部12の内側には、燃料タンク16が収容されている。
【0036】
フロアパン13は、フロアパネル2の後部を構成している。フロアパン13は、凹部12よりも後方に設けられている。フロアパン13は、凹部12を有するフロアパネル2の前部と比較して下方に膨出するように形成されている。換言すれば、フロアパン13の下面13aは、凹部12の開口14(開口面)よりも下方に位置している。フロアパン13の下面13aは、水平方向とほぼ平行な平面状に形成されている。
【0037】
なお、以下の説明において、凹部12の開口14の後縁部分を開口後縁14aという場合がある。開口後縁14aは、前後方向において凹部12の後壁12cと対応する箇所に位置している。
【0038】
(サブフレーム)
図1及び
図2に示すように、サブフレーム3は、フロアパネル2及び燃料タンク16よりも下方に設けられている。サブフレーム3は、上下方向から見て、フロアパネル2の開口14と対応する位置に設けられている。サブフレーム3は、フロアパネル2の開口14を下方から覆っている。サブフレーム3は、一対のアーム17と、前側ビーム18と、後側ビーム19と、被当接面22と、を有する。一対のアーム17、前側ビーム18、後側ビーム19及び被当接面22は、一体形成されている。
【0039】
図2に示すように、アーム17は、左右に一対設けられている。アーム17は、前後方向に沿って延びている。一対のアーム17は、前端部及び後端部よりも前後方向の中央部が車幅方向の内側に位置するように緩やかに湾曲している。一対のアーム17の前端部及び後端部は、車体フレーム10にそれぞれ固定されている。本実施形態において、各アーム17の前端部及び後端部は、不図示の連結ブラケットを介してサイドシル8にそれぞれ取り付けられている。これによりサブフレーム3が車体フレーム10に固定される。
【0040】
前側ビーム18は、一対のアーム17の間に設けられている。前側ビーム18は、車幅方向に沿って延びている。前側ビーム18の左右両端部は、一対のアーム17にそれぞれ接続されている。前側ビーム18は、長手方向と直交する断面視において、上方に開口14するU字状に形成されている。なお、前側ビーム18は、例えば閉断面を有する枠状に形成されてもよい。
【0041】
後側ビーム19は、一対のアーム17の間に設けられている。後側ビーム19は、前側ビーム18よりも後方に離間して設けられている。後側ビーム19は、車幅方向に沿って延びている。後側ビーム19の左右両端部は、一対のアーム17にそれぞれ接続されている。後側ビーム19は、上下方向を厚み方向とする板状に形成されている。上下方向から見て、後側ビーム19の前辺は、車幅方向の内側から外側へ向かうにつれて後方から前方へ位置するように傾斜している。よって、後側ビーム19は、車幅方向の内側から外側へ向かうにつれて前後方向に沿う幅寸法が増大している。
【0042】
被当接面22(
図1も参照)は、後側ビーム19の後端部に接続されている。被当接面22は、前後方向を面直方向とする板状に形成されている。被当接面22は、例えば後側ビーム19の後端部を垂直方向に折り曲げることにより形成されている。被当接面22は、後側ビーム19の後辺において長手方向の全体に亘って設けられている。被当接面22は、上下方向から見て、車幅方向の内側から外側へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜した部分を有する(
図3も参照)。具体的に、本実施形態において、被当接面22は、第一傾斜面24と、第二傾斜面25と、を有する。
【0043】
第一傾斜面24は、被当接面22のうち車幅方向の中央部よりも左方に設けられている。第一傾斜面24は、車幅方向の内側(中央部)から外側(左方)へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜している。
第二傾斜面25は、被当接面22のうち車幅方向の中央部よりも右方に設けられている。第二傾斜面25は、車幅方向の内側(中央部)から外側(右方)へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜している。
被当接面22のうち第一傾斜面24と第二傾斜面25との間には、車幅方向とほぼ平行な面が設けられている。なお、第一傾斜面24の車幅方向内側端部と第二傾斜面25の車幅方向内側端部とが連続して設けられていてもよい。
【0044】
(ブラケット)
図4は、実施形態に係る衝撃吸収部材4の後部の側面図である。
図4に示すように、ブラケット5は、フロアパネル2の下面に設けられている。ブラケット5は、フロアパネル2(フロアパン13)の下面13aに衝撃吸収部材4を着脱可能に取り付けている。ブラケット5は、凹部12の開口後縁14a(
図2参照)を跨ぐL字状又はU字状に形成されている。本実施形態において、ブラケット5は、前部ブラケット5a及び後部ブラケット5bを有する。
【0045】
前部ブラケット5aは、凹部12の開口後縁14aを跨ぐように形成されている。前部ブラケット5aは、フロアパン13の前部に沿って上下方向に延びる垂直部51と、垂直部51の下端部から後方に向かって延びる水平部52と、によりL字状に形成されている。前部ブラケット5aの上端部は、フロアパネル2又はフロアパン13に接続されている。前部ブラケット5aの水平部52には、ボルト等の締結部材を締結可能なナット部41が設けられている。
【0046】
後部ブラケット5bは、前部ブラケット5aより後方に設けられている。後部ブラケット5bは、フロアパン13の下面13aに設けられている。後部ブラケット5bは、フロアパン13の下面13aに接続される一対のフランジ53と、一対のフランジ53から下方に凸となるように接続される膨出部54と、によりU字状に形成されている。膨出部54には、ボルト等の締結部材を締結可能なナット部41が設けられている。
【0047】
(衝撃吸収部材)
図2及び
図3に示すように、衝撃吸収部材4は、複数のブラケット5(前部ブラケット5a及び後部ブラケット5b)を介してフロアパン13の下面13aに取り付けられている。衝撃吸収部材4は、前後方向においてサブフレーム3よりも後方に設けられている。衝撃吸収部材4は、車幅方向に並んで左右一対設けられている。一対の衝撃吸収部材4は左右対称に形成されているため、以下の説明では左の衝撃吸収部材4について詳細に説明し、右の衝撃吸収部材4について重複する部分の説明を省略する場合がある。
【0048】
衝撃吸収部材4は、フロアパネル2における凹部12の開口後縁14aを跨ぐようにして前後方向に沿って延びている。開口後縁14aより後方に位置する衝撃吸収部材4の後部は、第一延在部47とされている。第一延在部47は、フロアパン13の下面13aに沿って設けられている。開口後縁14aより前方に位置する衝撃吸収部材4の前部は、第二延在部48とされている。第二延在部48は、フロアパン13よりも前方に突出した状態で前後方向に沿って延びている。第一延在部47及び第二延在部48は一体形成されている。よって、フロアパネル2(フロアパン13)に衝撃吸収部材4が取り付けられた状態で、衝撃吸収部材4の前端部38は開口後縁14aよりも前方に位置する。
【0049】
図3に示すように、衝撃吸収部材4は、本体部30と、補強部31と、を有する。
本体部30は、中空のパイプ状に形成されている。本体部30は、前後方向に沿って延びている。本体部30は、長手方向(前後方向)と直交する断面視において、上下方向に対して車幅方向が長い長方形枠状に形成されている。
【0050】
補強部31は、本体部30の内部に設けられている。補強部31は、本体部30の長手方向に沿って延びている。本実施形態において、補強部31は、本体部30の上面と下面とを接続するとともに本体部30の内部の空間を左右に分割する1枚の仕切壁である(
図6も参照)。本体部30及び補強部31は、例えばアルミニウム合金等の金属材料を押出成形することにより一体形成される。
【0051】
図3に示すように、衝撃吸収部材4の本体部30の上面には、複数(本実施形態では4個)のボルト締結孔34が設けられている。ボルト締結孔34は、本体部30の上面を上下方向に貫通している。ボルト締結孔34にボルトを挿入することにより、ブラケット5(
図4参照)に衝撃吸収部材4が締結固定される。衝撃吸収部材4の本体部30の下面には、複数(本実施形態では4個)のボルト挿入孔35が設けられている。ボルト挿入孔35は、本体部30の下面を上下方向に貫通している。ボルト挿入孔35は、上下方向から見て、上面に形成されたボルト締結孔34と重なる位置に設けられている。ボルト挿入孔35の大きさは、ボルト締結孔34の大きさと同等以上となっている。
【0052】
図5は、実施形態に係る衝撃吸収部材4の前部の側面図である。
図5に示すように、衝撃吸収部材4の本体部30の側面には、脆弱部33が設けられている。脆弱部33は、衝撃吸収部材4の前部に設けられている。脆弱部33は、本体部30の側面を左右方向に貫通する孔である。車幅方向から見て、脆弱部33(孔)は、上下方向に長い長方形状に形成されるとともに、前後方向に並んで複数(本実施形態では3個)設けられている。脆弱部33は、本体部30における左右両側の側面にそれぞれ設けられている。
【0053】
図6は、実施形態に係る衝撃吸収部材4の取り付け方法を説明する分解斜視図である。
図6に示すように、衝撃吸収部材4とブラケット5(
図4参照)との間には、スペーサ43が設けられる。換言すれば、衝撃吸収部材4は、ブラケット5との間に配置されるスペーサ43を介してブラケット5と接続される。スペーサ43は、フロアパネル2に対する衝撃吸収部材4の上下方向に沿う高さ位置を調整可能にしている。
【0054】
図1及び
図3に示すように、ブラケット5を介してフロアパネル2に衝撃吸収部材4が取り付けられた状態(衝撃吸収部材4の取り付け状態)において、衝撃吸収部材4の前端部38は、上下方向においてサブフレーム3と同じ高さとなるように配置される。衝撃吸収部材4の取り付け状態において、衝撃吸収部材4の前端部38は、サブフレーム3の被当接面22と対向している。衝撃吸収部材4の取り付け状態において、衝撃吸収部材4の前端部38は、前後方向においてサブフレーム3の被当接面22との間に間隔Sをあけて配置される。
【0055】
さらに、衝撃吸収部材4の取り付け状態において、衝撃吸収部材4の前端部38は、上下方向から見て、被当接面22と平行となるように傾斜している。具体的に、左の衝撃吸収部材4の前端部38は、サブフレーム3の第一傾斜面24と平行となるように、車幅方向の内側(中央部)から外側(左方)へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜している。
図3に示すように、右の衝撃吸収部材4の前端部38は、サブフレーム3の第二傾斜面25と平行となるように、車幅方向の内側(中央部)から外側(右方)へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜している。
【0056】
(車体後部構造の取り付け手順)
次に、上述の車体後部構造1を構成するサブフレーム3、ブラケット5、衝撃吸収部材4の取り付け手順について説明する。
サブフレーム3、ブラケット5、衝撃吸収部材4が取り付けられる前の状態において、フロアパネル2及び車体フレーム10は車体に固定されている。
車体後部構造1の取り付け手順では、まず、フロアパネル2の凹部12に燃料タンク16を配置して固定する。次に、下方から開口14を覆うようにフロアパネル2の下面にサブフレーム3をボルト等で締結して取り付ける。最後に、下方からスペーサ43を介してブラケット5に衝撃吸収部材4をボルト42等により締結して取り付ける。このとき、衝撃吸収部材4とサブフレーム3との間に所定の隙間Sを有し、かつサブフレーム3と高さが同等となるように調整しながら衝撃吸収部材4を取り付ける。具体的に、スペーサ43の厚みや個数等を変えることにより、衝撃吸収部材4の上下方向に沿う高さ位置を調整する。また、ブラケット5の角度等を変えることにより、衝撃吸収部材4の取り付け角度や姿勢を調整する。
これにより、車体後部構造1における各部品を車体に取り付ける。
【0057】
(車体後部構造における衝撃エネルギーの吸収方法)
次に、上述の車体後部構造1において、車体後部構造1を有する車両の後方から衝撃荷重が入力された場合(後突時)に衝撃エネルギーを吸収する方法について説明する。
まず、衝撃吸収部材4に荷重が入力された直後(後突初期)には、衝撃吸収部材4はサブフレーム3に対して非接触である。その後、衝撃吸収部材4に入力される荷重が増加するにつれて、衝撃吸収部材4が前方に移動し、衝撃吸収部材4がサブフレーム3の被当接面22に当接する。この状態でさらに荷重が増加すると(後突中期)、脆弱部33を有する衝撃吸収部材4の前部が圧壊されつつ衝撃エネルギーがサブフレーム3に伝達される。これにより後突中期において衝撃エネルギーが吸収される。
さらにサブフレーム3に荷重が入力されると(後突後期)、サブフレーム3の前端部の潰れ易い領域で衝撃エネルギーが吸収される。このとき、衝撃吸収部材4の後部は剛性が高く維持されているので、衝撃吸収部材4からサブフレーム3へ確実に荷重を伝達させ、衝撃エネルギーが吸収される。
【0058】
(作用、効果)
次に、上述の車体後部構造1の作用、効果について説明する。
本実施形態の車体後部構造1によれば、衝撃吸収部材4は、ブラケット5を介してフロアパネル2後部に位置するフロアパン13の下面13aに着脱可能に取り付けられる。衝撃吸収部材4は、フロアパネル2(フロアパン13)に沿う第一延在部47と、フロアパン13よりも前方に延びる第二延在部48と、を有する。これにより、衝撃吸収部材4の前端部38をフロアパン13よりも前方に配置することができる。よって、例えばフロアパネル2の下方に燃料タンク16等を配置する場合であっても適用できる。すなわち、フロアパン13の前方において衝撃吸収部材4をフロアパネル2に沿わせることができない場合であっても、前後方向の所望の位置まで前方に向けて衝撃吸収部材4を延出させることができる。
【0059】
衝撃吸収部材4より前方には、サブフレーム3が配置される。衝撃吸収部材4の前端部38は、上下方向においてサブフレーム3と同じ高さとなるように配置されるとともに、前後方向においてサブフレーム3との間に間隔Sをあけて配置される。これにより、フロアパネル2が下面に開口14を有する場合であっても、衝撃吸収部材4をフロアパネル2に沿わせて配置する従来技術と比較して、サブフレーム3と衝撃吸収部材4の前端部38とを近づけた状態で配置できる。よって、後突時に衝撃吸収部材4が空走状態となることを抑制し、後突時の衝撃エネルギーを効果的に吸収できる。
【0060】
衝撃吸収部材4をサブフレーム3に当接させる構成としたので、後突時に衝撃吸収部材4とサブフレーム3との高さ位置がずれることを抑制できる。すなわち、サスペンションとの関係により車体に対して上下方向に変位し易いトーションビームに衝撃吸収部材4を当接させる従来技術と比較して、サブフレーム3は車体に固定されているので、同じく車体に取り付けられた衝撃吸収部材4とサブフレーム3との相対位置のずれが生じにくい。これにより、後突時に衝撃吸収部材4とサブフレーム3とを確実に当接させることができる。よって、衝撃吸収部材4により安定的に後突時の衝撃エネルギーを吸収できる。
したがって、フロアパネル2の下方に燃料タンク16を配置する車両に適用した場合であっても、衝撃エネルギーを確実に吸収して乗員の安全性を向上できる車体後部構造1を提供できる。
【0061】
フロアパネル2は凹部12及び開口14を有し、衝撃吸収部材4は、凹部12の開口後縁14aを跨ぐように前後方向に延びる。これにより、サブフレーム3や燃料タンク16をフロアパネル2の凹部12の下方に配置した後に、下方から衝撃吸収部材4を取り付けることができる。サブフレーム3の後に衝撃吸収部材4を取り付けるので、サブフレーム3に合わせて所望の位置に衝撃吸収部材4を配置し、衝撃吸収部材4の前端部38をサブフレーム3に近接させることができる。よって、後突時にサブフレーム3と衝撃吸収部材4とを確実に当接させ、衝撃吸収部材4により衝撃エネルギーを効果的に吸収できる。
【0062】
ブラケット5は、フロアパネル2の凹部12の開口後縁14aを跨ぐL字状又はU字状に形成される。これにより、衝撃吸収部材4を取り付ける際に、ブラケット5の傾き等を調整し易い。よって、フロアパネル2に対する衝撃吸収部材4の取り付け角度や姿勢を容易に調整できる。サブフレーム3は、衝撃吸収部材4の前端部38と対向する位置に被当接面22を有する。これにより、後突時において、安定的に衝撃吸収部材4をサブフレーム3に当接させることができる。また、L字状又はU字状のブラケット5を用いて衝撃吸収部材4が取り付けられるので、サブフレーム3の被当接面22と衝撃吸収部材4の前端部38とが対向するように衝撃吸収部材4を取り付けることができる。よって、衝撃吸収部材4からの荷重をサブフレーム3に効果的に伝達し、後突時の衝撃エネルギーを吸収できる。
【0063】
ブラケット5はナット部41を有し、衝撃吸収部材4及びブラケット5の間にはスペーサ43が配置される。スペーサ43の個数や大きさ等を変更することにより、特に衝撃吸収部材4の上下方向に沿う高さ位置を容易に調整できる。よって、ブラケット5だけでなくスペーサ43によっても衝撃吸収部材4の位置を調整可能となり、車体の下方から容易に衝撃吸収部材4を取り付けることができる。
【0064】
フロアパネル2は、下方に開口する凹部12を有し、フロアパネル2の凹部12に燃料タンク16が配置されている。フロアパネル2に凹部12が設けられることにより、フロアパネル2の下方(凹部12の内側)に燃料タンク16を収容できる。また、凹部12は下方に開口するので、車体の下方から燃料タンク16を配置できる。よって、製造時の作業性を向上できる。さらに、この燃料タンク16の下方にサブフレーム3や衝撃吸収部材4を配置できるので、サブフレーム3及び衝撃吸収部材4により後突時の衝撃エネルギーを吸収できる。よって、特に上方に隆起した凹部12を有するフロアパネル2に燃料タンク16が配置される構成の車両において好適な車体後部構造1とすることができる。
【0065】
サブフレーム3は、燃料タンク16よりも下方において車体フレーム10に固定される。サブフレーム3は車体フレーム10に固定されるので、フロアパネル2を介して同じく車体フレーム10に取り付けられた衝撃吸収部材4とサブフレーム3との位置ずれを抑制できる。よって、後突時に衝撃吸収部材4とサブフレーム3とを確実に当接させ、衝撃エネルギーを吸収できる。
【0066】
衝撃吸収部材4は、パイプ状の本体部30と、本体部30の内部に設けられる補強部31と、を有する。補強部31は、衝撃吸収部材4(本体部30)の長手方向に沿って延びている。衝撃吸収部材4をこのように構成することにより、例えばアルミニウム合金等の金属を押出成形することにより容易に衝撃吸収部材4を製造することができる。また、本体部30は中空のパイプ状に形成されるので、衝撃吸収部材4を軽量化できる。補強部31は長手方向に沿って延びるので、補強部31を設けることにより後突時の荷重に対する衝撃吸収部材4の剛性を高めることができる。よって、後突時の衝撃エネルギーを効果的に吸収できる。特に本体部30の内部を仕切るように壁状の補強部31を設けた場合には、製造性の向上及び耐衝撃性の向上を両立した好適な構成とすることができる。
【0067】
衝撃吸収部材4の前部には脆弱部33が設けられている。これにより、衝撃吸収部材4の後部と比較して前部が脆弱となる。よって、後突時には、衝撃吸収部材4の前部が圧壊することにより衝撃エネルギーを吸収できる。また、フロアパネル2と接続される衝撃吸収部材4の後部の変形が抑制されることにより、車体後部の変形を抑制できる。よって、衝撃吸収部材4の後部は、衝撃吸収部材4がサブフレーム3に当接するまで形状を維持できるので、衝撃吸収部材4の後部に伝達された衝撃エネルギーを効果的にサブフレーム3へ伝達できる。したがって、衝撃吸収部材4及びサブフレーム3により、後突時の衝撃エネルギーを効果的に吸収できる。
【0068】
衝撃吸収部材4は、ボルト締結孔34と、ボルト挿入孔35と、を有する。ボルト締結孔34は衝撃吸収部材4の上面に設けられるので、ボルト締結孔34により衝撃吸収部材4をブラケット5に締結できる。ボルト挿入孔35は衝撃吸収部材4の下面に設けられるので、例えば車体の下方から衝撃吸収部材4を取り付ける際に、ボルト挿入孔35にボルトを挿入して上面のボルト締結孔34にアクセスできる。これにより、衝撃吸収部材4の取り付け作業性を向上できる。また、後突時には、下面のボルト挿入孔35が脆弱部として機能することにより、衝撃吸収部材4がボルト挿入孔35を起点として下方に凸となるように屈曲する。これにより、衝撃吸収部材4が変形した場合であっても、衝撃吸収部材4より上方に設けられた燃料タンク16と衝撃吸収部材4とが干渉しない。よって、燃料タンク16を衝撃から保護できる。
【0069】
サブフレーム3は後端部に被当接面22を有する。被当接面22は、車幅方向の内側から外側へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜している。被当接面22と対向する衝撃吸収部材4の前端部38は、上下方向から見て、被当接面22と平行となるように傾斜している。これにより、衝撃吸収部材4の前端部38とサブフレーム3の被当接面22とが面接触するので、衝撃吸収部材4に入力された衝撃エネルギーを安定的にサブフレーム3に伝達させることができる。被当接面22及び衝撃吸収部材4の前端部38は、上下方向から見て傾斜しているので、衝撃吸収部材4からサブフレーム3に伝達される荷重が、前後方向及び車幅方向に分配される。これにより、衝撃吸収部材4に入力された荷重を車体フレーム10全体に亘って分散できる。よって、衝撃エネルギーを効果的に吸収し、車体後部の変形を抑制できる。
【0070】
衝撃吸収部材4は、車幅方向に並んで左右一対設けられている。これにより、後突時の衝撃エネルギーが左右の衝撃吸収部材4及びサブフレーム3により均一に分散して伝達される。また、後突時に左右で傾きが生じることを抑制できる。よって、車体後部の変形を効果的に抑制できる。
【0071】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態において、開口後縁14aを跨ぐ前部ブラケット5aがL字状に形成されたが、これに限られない。前部ブラケット5aは、開口後縁14aを跨ぐようにU字状に形成されてもよい。
【0072】
上述の実施形態において、被当接面22は、後側ビーム19の後端部を垂直方向に折り曲げることにより形成されたが、これに限られない。例えば後側ビーム19の後端部に板状の部材を接合することにより被当接面22を形成してもよい。
スペーサ43を設けることなく衝撃吸収部材4が適切な高さ位置に配置される場合には、スペーサ43を省略してもよい。
【0073】
サブフレーム3は、車体フレーム10に対して固定されていればよく、一対のアーム17がサイドシル8に取り付けられる構成に限定されない。サブフレーム3のアーム17は、クロスメンバ9に接続されていてもよい。
衝撃吸収部材4の断面形状や脆弱部33の孔の形状は上述した実施形態の形状に限定されない。脆弱部33として、孔の代わりにスリットや切欠き、荷重の伝達方向と直交する方向に延びるビード、凹凸等を設けてもよい。
衝撃吸収部材4の補強部31として、仕切壁の代わりに長手方向に沿うビードを設けてもよい。
【0074】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 車体後部構造
2 フロアパネル
3 サブフレーム
4 衝撃吸収部材
5 ブラケット
10 車体フレーム
12 凹部
13 フロアパン
13a (フロアパンの)下面
14a 開口後縁
16 燃料タンク
22 被当接面
30 本体部
31 補強部
33 脆弱部
34 ボルト締結孔
35 ボルト挿入孔
37 (衝撃吸収部材の)前端部
41 ナット部
43 スペーサ
47 第一延在部
48 第二延在部
S 間隔