(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20221212BHJP
B60R 19/34 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B60R19/34
(21)【出願番号】P 2021042630
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】堀井 勇希
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-023792(JP,A)
【文献】特開2011-084172(JP,A)
【文献】特開2012-091655(JP,A)
【文献】特開2011-073661(JP,A)
【文献】特許第5396100(JP,B2)
【文献】特許第6304202(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60R 19/34
B60R 19/18
B60R 19/52
B60R 19/04
B60R 21/34
B60R 19/24
B62D 25/16
B62D 25/10
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部にバンパフェースが設けられ、前記バンパフェースの車体後方にフロントバルクヘッドが設けられた車体前部構造において、
前記フロントバルクヘッドの上部に支持され、車体前方に向けて配置された基台前面部と、前記基台前面部の上端に設けられた基台上面部とを有する基台と、
前記基台および前記フロントバルクヘッドに支持され、前記バンパフェースを固定するバンパステイと、を備え、
前記バンパステイは、
前記バンパフェースを固定する前固定部と、
前記前固定部の車体後方に配置され、前記基台上面部に設けられた後上固定部と、
前記後上固定部の下方に配置され、前記基台前面部に設けられた後下固定部と、を有し、
前記前固定部、前記後上固定部、および前記後下固定部は、三角形の各頂点に配置されている、
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記バンパステイは、
前記前固定部から前記フロントバルクヘッドが配置される車体後方に向かうにつれて高さ方向の幅が漸増する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記バンパステイは、
前記前固定部を有する上面部と、
前記上面部から下方に延びる側面部と、
前記上面部と前記側面部とが交差する部位により形成される稜線部と、を有し、
前記稜線部は凹み部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記後上固定部は、前記基台上面部に重ねられるように配置され、
前記バンパステイの上面部は、
前記前固定部および前記後上固定部に加えて、
前記前固定部から前記後上固定部へ向かうに従って下方に傾斜する段差部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記基台は、
前記バンパステイの後部に配置され、前記フロントバルクヘッドの前方突出部に前記基台前面部を対向させた状態において前記前方突出部を上下方向から挟むようにコ字状に形成されたアッパースティフナであって、
前記フロントバルクヘッドの一対の縦脚部にわたって延在されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記フロントバルクヘッドは、
前記一対の縦脚部に加えて、前記一対の縦脚部にわたって延在され、前記前方突出部を有する横メンバを備え、
前記基台は、
前記横メンバより下側において、前記一対の縦脚部に固定される下方接続部を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記フロントバルクヘッドの車体前方に設けられて、前記フロントバルクヘッドの側に外気を案内するダクトを備え、
前記ダクトは、
前記基台および前記バンパステイと固定されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の車体前部構造。
【請求項8】
前記バンパフェースの上フランジを支持するセンタアッパビームを備え、
前記センタアッパビームは、
前記バンパステイの前記前固定部に固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項9】
前記基台は、
車幅方向の中央において下方に凹むように形成された凹部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項10】
前記バンパステイの前記前固定部は、
前記後上固定部より上下方向において高い位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項9に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、例えば、左右のフロントサイドフレームにバンパビームがかけ渡され、バンパビームから支持片が立ち上げられ、立ち上げられた支持片でグリルブラケットを支持する構成が知られている。グリルブラケットは、バンパフェースの構成部品である。よって、グリルブラケットを支持片で支持することにより、例えば、バンパフェースの垂れ下がりを抑制することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バンパビームは、一般に車体前後方向において、バンパフェースとフロントバルクヘッドとの間に配置されている。よって、バンパビームから立ち上げられる支持片もバンパフェースとフロントバルクヘッドとの間に配置されている。このため、バンパフェースとフロントバルクヘッドとの間にレーダ装置や、グリルシャッタなど車載部品を搭載する搭載空間を確保することが難しい。
【0005】
本発明は、バンパフェースとフロントバルクヘッドとの間にレーダ装置やグリルシャッタなどの車載部品の搭載空間を容易に確保でき、かつ、バンパフェースの垂れ下がりを抑制できる車体前部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る車体前部構造は、車体の前部にバンパフェース(例えば、実施形態のフロントバンパフェース17)が設けられ、前記バンパフェースの車体後方にフロントバルクヘッド(例えば、実施形態のフロントバルクヘッド12)が設けられた車体前部構造(例えば、実施形態の車体前部構造10)において、前記フロントバルクヘッドの上部に支持され、車体前方に向けて配置された基台前面部(例えば、実施形態の基台前面部31)と、前記基台前面部の上端に設けられた基台上面部(例えば、実施形態の基台上面部32)とを有する基台(例えば、実施形態の基台13)と、前記基台および前記フロントバルクヘッドに支持され、前記バンパフェースを固定するバンパステイ(例えば、実施形態の第1バンパステイ14、第2バンパステイ15)と、を備え、前記バンパステイは、前記バンパフェースを固定する前固定部(例えば、実施形態の前固定部51,71)と、前記前固定部の車体後方に配置され、前記基台上面部に設けられた後上固定部(例えば、実施形態の後上固定部52,72)と、前記後上固定部の下方に配置され、前記基台前面部に設けられた後下固定部(例えば、実施形態の後下固定部47,67)と、を有し、前記前固定部、前記後上固定部、および前記後下固定部は、三角形(例えば、実施形態の三角形60,80)の各頂点に配置されている。
【0007】
この構成によれば、基台およびフロントバルクヘッドにバンパフェースを固定するバンパステイを備えた。バンパステイには、前固定部と、後上固定部と、後下固定部と、を備えた。この前固定部でバンパフェースを固定する。また、後上固定部を前固定部の車体後方に配置して基台上面部に設けた。さらに、後下固定部を後上固定部の下方に配置して基台前面部に設けた。加えて、前固定部、後上固定部、および後下固定部を三角形の各頂点に配置した。
また、前固定部にバンパフェースが設けられることにより、前固定部にバンパフェースの重量(荷重)が下向きに作用する。よって、前固定部に作用する荷重は、後上固定部に作用する引張荷重と、後下固定部に作用する圧縮荷重と、に分散(変換)される。
【0008】
後下固定部は、基台前面部(すなわち、基台)に設けられている。また、基台は、フロントバルクヘッドに支持されている。フロントバルクヘッドは、車体骨格の一部を構成する強度、剛性の高い部材である。よって、後下固定部に作用する圧縮荷重を基台(すなわち、フロントバルクヘッド)で確実に支えることができる。
一方、後上固定部は、基台上面部(すなわち、基台)に設けられている。よって、後上固定部に作用する引張荷重を基台(すなわち、フロントバルクヘッド)で支えることができる。
これにより、バンパフェースの重量をバンパステイで支持でき、バンパフェースの垂れ下がりを抑制できる。
【0009】
ここで、フロントバルクヘッドの上部に基台が支持され、基台にバンパステイが支持されている。よって、バンパフェースとフロントバルクヘッドとの間の空間のうち、上方にバンパステイを配置できる。これにより、バンパフェースとフロントバルクヘッドとの間にレーダ装置やグリルシャッタなどの車載部品を搭載する搭載空間を容易に確保できる。
【0010】
(2)前記バンパステイは、前記前固定部から前記フロントバルクヘッドが配置される車体後方に向かうにつれて高さ方向の幅(例えば、実施形態の高さ方向の幅W1,W2)が漸増してもよい。
【0011】
この構成によれば、バンパステイの高さ方向の幅を、前固定部から車体後方に向かうにつれて漸増するようにした。よって、例えば、前固定部および後下固定部を連結する下辺を、車体後方へ向けて下り勾配に延ばすことができる。これにより、バンパフェースの荷重が前固定部に作用した状態において、前固定部に作用した荷重の一部を、後下固定部が基台前面部を押す方向に作用する圧縮荷重に分散(変換)しやすくできる。したがって、圧縮荷重をフロントバルクヘッドに伝えて支持しやすくでき、バンパフェースの垂れ下がりを一層良好に抑制できる。
【0012】
(3)前記バンパステイは、前記前固定部を有する上面部(例えば、実施形態の上面部44,64)と、前記上面部から下方に延びる側面部(例えば、実施形態の側面部45,65)と、前記上面部と前記側面部とが交差する部位により形成される稜線部(例えば、実施形態の稜線部46,66)と、を有し、前記稜線部は凹み部(例えば、実施形態の凹み部61,81)を有してもよい。
【0013】
この構成によれば、バンパステイの上面部と側面部とが交差する部位に稜線部を形成した。さらに、稜線部に凹み部を形成した。よって、バンパステイそのものの強度を凹み部で向上させ、かつ、例えば、上面部が稜線部を境にして側面部へ向けて変形することを抑制できる。これにより、バンパフェースから前固定部に作用する荷重に対して、バンパステイで強く踏ん張ることができ、前固定部に作用した荷重をバンパステイで支持できる。
【0014】
(4)前記後上固定部は、前記基台上面部に重ねられるように配置され、前記バンパステイの上面部(例えば、実施形態の上面部44,64)は、前記前固定部および前記後上固定部に加えて、前記前固定部から前記後上固定部へ向かうに従って下方に傾斜する段差部(例えば、実施形態の段差部53,73)を有してもよい。
【0015】
この構成によれば、バンパステイは、上面部に、前固定部、後上固定部、および段差部を有する。後上固定部は、基台上面部やフロントバルクヘッドに重ねられるように設けられている。さらに、段差部は、前固定部から後上固定部へ向かうに従って下方に傾斜するように延びている。よって、上面部の剛性(特に、面剛性)を向上させることにより、バンパステイの剛性を向上させることができる。これにより、バンパフェースから前固定部に作用する荷重を、バンパステイを経て基台の側に伝達させやすくなり、バンパフェースの垂れ下がりを一層良好に抑止できる。
【0016】
(5)前記基台は、前記バンパステイの後部に配置され、前記フロントバルクヘッドの前方突出部(例えば、実施形態の左前方突出部24、右下方接続部35)に前記基台前面部を対向させた状態において前記前方突出部を上下方向から挟むようにコ字状に形成されたアッパースティフナであって、前記フロントバルクヘッドの一対の縦脚部(例えば、実施形態の左右の縦脚部22)にわたって延在されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、基台をコ字状に形成することにより、フロントバルクヘッドの前方突出部を、基台で上下方向から挟むことができるようにした。よって、基台の剛性を高めることができ、基台でアッパースティフナ(すなわち、補強部材)としての役割を果たすことができる。さらに、基台をフロントバルクヘッドの一対の縦脚部にかけ渡した。よって、基台をフロントバルクヘッドの車体前方側に配置した状態において、フロントバルクヘッドに強固に支持できる。この基台にバンパステイが取り付けられている。これにより、バンパステイを基台から車体前方に向けて配置した状態において、基台に強固に固定できる。
【0018】
ここで、例えば、バンパフェースがフロントバルクヘッドに対して車体前方の側に比較的大きく離れて配置することが考えられる。この場合においても、フロントバルクヘッドの車体前方に基台を配置することにより、バンパステイの車体前後方向の長さを抑えることができる。これにより、バンパフェースをバンパステイで強固に支持できる。
【0019】
また、フロントバルクヘッドの前方突出部を、基台で上下方向から挟み、さらに、フロントバルクヘッドの一対の縦脚部に基台をかけ渡した。よって、フロントバルクヘッドを基台で補強することができる。
ここで、車両の走行中に、例えば、片側の車輪だけ段差に乗り上げることにより、フロントバルクヘッドに捩れ方向の荷重が入力することが考えられる。この場合において、フロントバルクヘッドに捩れ方向の荷重に対する剛性を、基台(すなわち、アッパースティフナ)により高めることができる。
【0020】
(6)前記フロントバルクヘッドは、前記一対の縦脚部に加えて、前記一対の縦脚部にわたって延在され、前記前方突出部を有する横メンバ(例えば、実施形態のアッパ横メンバ23)を備え、前記基台は、前記横メンバより下側において、前記一対の縦脚部に固定される下方接続部(例えば、実施形態の左下方接続部34、右下方接続部35)を有してもよい。
【0021】
この構成によれば、横メンバの前方突出部を基台で挟むように配置した。さらに、基台の下方接続部を横メンバより下側において一対の縦脚部に固定させた。これにより、基台は、例えば、一対の縦脚部を車幅方向外側にくの字状(V字状)に折り曲げる荷重に対しても、フロントバルクヘッドの剛性を高めることができる。
【0022】
(7)前記フロントバルクヘッドの車体前方に設けられて、前記フロントバルクヘッドの側に外気を案内するダクト(例えば、実施形態のダクト91)を備え、前記ダクトは、前記基台および前記バンパステイと固定されていてもよい。
【0023】
この構成によれば、フロントバルクヘッドの車体前方にダクトを設け、ダクトを基台およびバンパステイの両部材に固定した。よって、基台およびバンパステイの両部材にダクトを強固に支持できる。これにより、ダクトを樹脂で形成した場合でも、例えば、車両の走行中に振動の影響を受け難くでき、ダクトによる空気の通り道に影響を与え難くできる。
【0024】
(8)前記バンパフェースの上フランジ(例えば、実施形態の上フランジ17a)を支持するセンタアッパビーム(例えば、実施形態のセンタアッパビーム16)を備え、前記センタアッパビームは、前記バンパステイの前記前固定部に固定されていてもよい。
【0025】
この構成によれば、バンパフェースの上フランジをセンタアッパビームで支持し、センタアッパビームをバンパステイの固定部に固定した。これにより、上フランジを車幅方向において水平に延ばすことができ、上フランジの形状を簡素化できる。
【0026】
(9)前記基台は、車幅方向の中央において下方に凹むように形成された凹部(例えば、実施形態の凹部36)を有してもよい。
【0027】
ここで、例えば、横メンバ のうち、車幅方向の中央部位にフードロック機構が設けられている。そこで、基台の車幅方向の中央に凹部を形成した。よって、フードロック機構の車体前方に凹部36が配置されている。
これにより、フードロック機構のロックを解除するロック解除レバー(図示せず)を操作可能な空間を、基台の凹部とフードとの間に確保できる。フードロック機構のロックをロック解除レバーで解除することによりフードを開けることができる。
【0028】
(10)前記バンパステイの前記前固定部は、前記後上固定部より上下方向において高い位置に配置されていてもよい。
【0029】
この構成によれば、バンパステイの前固定部を後上固定部より上下方向において高い位置に配置した。よって、例えば、車幅方向に間隔をあけて複数のバンパステイを基台に設ける場合、基台上面部の高さが低い位置に設けられたバンパステイの前固定部を、他のバンパステイの前固定部同じ高さに配置できる。
これにより、基台に設けた複数のバンパステイの各前固定部を、車幅方向において水平に配置でき、バンパフェースを精度よく固定できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、バンパフェースとフロントバルクヘッドとの間にレーダ装置やグリルシャッタなどの車載部品の搭載空間を容易に確保でき、かつ、バンパフェースの垂れ下がりを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る一実施形態の車体前部構造を示す分解斜視図である。
【
図2】一実施形態の車体前部構造を車体前方の上方からみた斜視図である。
【
図3】一実施形態の車体前部構造に備える主要部材を示す斜視図である。
【
図4】一実施形態の車体前部構造に備える第1バルクステイを車体前方の側方からみた状態で示す断面図である。
【
図5】一実施形態の車体前部構造に備える第1バルクステイを側方からみた状態で示す断面図である。
【
図6】一実施形態の車体前部構造に備える第1バルクステイを破断した状態で示す断面図である。
【
図7】一実施形態の車体前部構造に備える第2バルクステイを車体前方の側方からみた状態で示す断面図である。
【
図8】一実施形態の車体前部構造に備える第2バルクステイを車体前方の側方からみた斜視図である。
【
図9】一実施形態の車体前部構造に備える第2バルクステイを側方からみた状態で示す断面図である。
【
図10】一実施形態の車体前部構造に備えるダクト、シャッタグリル、およびレーダ装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る車体前部構造10を説明する。図面において、矢印FRは車両の前方、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の左側方を示す。なお、車両は、用途や種類等は特に限定されないが、一実施形態として自動車を例に説明する。
【0033】
<車両>
図1、
図2に示すように、車両Veは、例えば、エンジンルームの車体前方に設けられる車体前部構造10を備えている。車体前部構造10は、例えば、フロントバルクヘッド12と、基台13と、複数(実施形態では、左右)の第1バンパステイ(バンパステイ)14,14と、複数(実施形態では、左右)の第2バンパステイ(バンパステイ)15,15と、センタアッパビーム16と、フロントバンパフェース(バンパフェース)17と、フロントグリル18と、を備えている。
以下、実施形態では、複数の第1バンパステイとして左右の第1バンパステイ14,14を例示し、複数の第2バンパステイとして左右の第2バンパステイ15,15を例示するが、第1、第2のバンパステイ14,15の個数は任意に選択可能である。
【0034】
<フロントバルクヘッド>
図2、
図3に示すように、フロントバルクヘッド12は、エンジンルームの車体前方で、かつ、フロントバンパフェース17の車体後方に設けられている。フロントバルクヘッド12は、例えば、左右の縦脚部(一対の縦脚部)22,22と、ロア横メンバ(図示せず)と、アッパ横メンバ(横メンバ)23と、を備えている。
【0035】
ロア横メンバは、車体の前下部において車幅方向に延びている。ロア横メンバの左端部から左縦脚部22が立ち上げられ、ロア横メンバの右端部から右縦脚部22が立ち上げられている。左縦脚部22の上端部22aおよび右縦脚部22の上端部22aにアッパ横メンバ23がかけ渡されている。
すなわち、フロントバルクヘッド12は、ロア横メンバ、左右の縦脚部22,22、およびアッパ横メンバ23により平面視矩形枠状に形成されている。フロントバルクヘッド12は、車体骨格の一部を構成する強度、剛性の高い部材である。
【0036】
アッパ横メンバ23は、左縦脚部22の上端部22aおよび右縦脚部22の上端部22aにわたって延在されている。アッパ横メンバ23は、左前方突出部(前方突出部)24および右前方突出部(前方突出部)25を有する。左前方突出部24は、アッパ横メンバ23の中央に対して左寄りの部位から車体前方に向けて突出されている。右前方突出部25は、アッパ横メンバ23の中央に対して右寄りの部位から車体前方に向けて突出されている。
フロントバルクヘッド12の上部(すなわち、アッパ横メンバ23、左縦脚部22の上端部22a、および右縦脚部22の上端部22a)には基台13が支持されている。
【0037】
<基台>
基台13は、左右の第1バンパステイ14,14の後部、および左右の第2バンパステイ15,15の後部に配置された状態で設けられている。基台13は、左縦脚部22の上端部22aおよび右縦脚部22の上端部22aにかけ渡されることにより、左縦脚部22の上端部22aおよび右縦脚部22の上端部22aにわたって車幅方向に向けて延在されている。
さらに、基台13は、アッパ横メンバ23の左端部23aおよび右端部23bにもかけ渡されることにより、アッパ横メンバ23の左端部23aおよび右端部23bにわたって車幅方向に向けて延在されている。この状態において、基台13は、アッパ横メンバ23に沿って車幅方向に延びている。
【0038】
基台13は、基台前面部31と、基台上面部32と、基台下面部33(
図7参照)と、左下方接続部(下方接続部)34と、右下方接続部(下方接続部)35と、凹部36と、を有する。
基台前面部31は、アッパ横メンバ23の車体前方において車体前方に向けて配置され、アッパ横メンバ23の左端部23aおよび右端部23bの間で車幅方向に延びている。また、基台前面部31は、左前方突出部24の前端部24a(
図9参照)および右前方突出部25の前端部(図示せず)に対向させた状態に配置されている。
【0039】
基台上面部32は、基台前面部31の上辺から車体後方に向けて水平に折り曲げられた状態に設けられている。基台上面部32は、アッパ横メンバ23の上面に沿って配置されている。基台上面部32は、左端部32aおよび右端部32bがアッパ横メンバ23の上面に沿って配置されている。また、基台上面部32は、左端部32aより車幅方向内側の左内側部位32cが左端部32aの下方に配置され、右端部32bより車幅方向内側の右内側部位32dが右端部32bの下方に配置されている。左内側部位32cと右内側部位32dとの間に凹部36が形成されている。
基台下面部33は、基台前面部31の下辺から車体後方に向けて水平に折り曲げられた状態に設けられている。基台下面部33は、アッパ横メンバ23の下面に沿って配置されている。
【0040】
すなわち、基台13は、基台前面部31、基台上面部32、および基台下面部33により断面コ字状(U字状)に形成されている。なお、コ字状(U字状)は、略コ字状(略U字状)を含む。基台13は、左前方突出部24および右前方突出部25に基台前面部31を車体前方側から対向させた状態において、左右の前方突出部24,25を基台上面部32および基台下面部33で上下方向から挟むように形成されている。
これにより、基台13は、アッパ横メンバ23(すなわち、フロントバルクヘッド12)を補強するアッパースティフナ(上部補強部材)の役割を兼ねている。
【0041】
左下方接続部34は、基台13の左端部から下方に向けて張り出されている。左下方接続部34は、アッパ横メンバ23の左下端部(下端部)より下側において、例えば、左縦脚部22の上端部22aにボルト41などの締結部材により固定(接続)されている。
右下方接続部35は、基台13の右端部から下方に向けて張り出されている。右下方接続部35は、アッパ横メンバ23の右下端部(下端部)より下側において、例えば、右縦脚部22の上端部22aにボルト42により固定(接続)されている。
【0042】
凹部36は、左第2バンパステイ15と右第2バンパステイ15との間で、かつ、車幅方向の中央に形成されている。凹部36は、上部(特に、基台上面部32)が下方に凹むように凹状に形成されている。
ここで、例えば、アッパ横メンバ23のうち、車幅方向の中央部位にフードロック機構(図示せず)が設けられる。このフードロック機構の車体前方に凹部36が配置される。これにより、フードロック機構のロックを解除するロック解除レバー(図示せず)を操作可能な空間を、基台13の凹部36とフードとの上下方向の間に確保できる。
凹部36とフードとの間の空間に手を差し込み、差し込んだ手でロック解除レバーを操作できる。ロック解除レバーを操作することにより、フードロック機構のロックを解除してフードを開けることができる。
【0043】
<第1バンパステイ>
基台13の左端部に左第1バンパステイ(バンパステイ)14が設けられ、基台13の右端部に右第1バンパステイ(バンパステイ)14が設けられている。左第1バンパステイ14および右第1バンパステイ14は、基台13およびフロントバルクヘッド12に支持され、フロントバンパフェース17などを支持(固定)する。
左第1バンパステイ14および右第1バンパステイ14は、概ね左右対称の部材である。よって、左右の第1バンパステイ14に同じ符号を付して、左第1バンパステイ14について詳しく説明し、右第1バンパステイ14の詳しい説明を省略する。また、左第1バンパステイ14を「第1バンパステイ14」と略記して説明する。
【0044】
図4から
図6に示すように、第1バンパステイ14は、上面部44と、側面部45と、稜線部46と、後下固定部47(
図3も参照)と、前面部48と、を有する。上面部44は、前固定部51(
図3も参照)と、後上固定部(後方フランジ部)52と、段差部53と、を有する。
前固定部51は、例えば、センタアッパビーム16の上部16aにボルト55およびナット56などの締結部材で固定されている。センタアッパビーム16の上部16aには、例えば、フロントバンパフェース17がクリップ58などの締結部材で固定されている。すなわち、前固定部51は、センタアッパビーム16を介してフロントバンパフェース17に固定されている。
また、前固定部51は、後上固定部52より上下方向において高い位置に配置されている。
【0045】
後上固定部52は、前固定部51の車体後方に配置され、基台上面部32のうち左端部32aの上面に沿ってフランジ状に突出されている。後上固定部52は、基台上面部32の左端部32aに上方から重ねられ、例えば、基台上面部32の左端部32aおよびアッパ横メンバ23の左端部23aに接合されることにより設けられている。
【0046】
段差部53は、前固定部51から後上固定部52へ向かうに従って下方に傾斜するように延びている。具体的には、段差部53は、前固定部51から車体後方側に向けて下方に傾斜するように延びている。上面部44のうち段差部53の後端部53aおよび後上固定部52の間の部位44aが、例えば、水平に配置されている。
前固定部51は、後上固定部52に対して上下方向においてH1だけ高い位置に配置されている。
【0047】
側面部45は、上面部44の外辺から下向きに折り曲げられた状態で下方に延びている。側面部45は、前端部45aから後端部45bまで下辺45cが下り勾配で延びている。よって、側面部45は、車体後方に向かうにつれて高さ方向の幅W1が漸増するように形成されている。側面部45の後端部45bは、基台前面部31やアッパ横メンバ23の近傍に配置されている。
換言すれば、第1バンパステイ14は、前固定部51からアッパ横メンバ23が配置される車体後方に向かうにつれて高さ方向の幅W1が漸増するように形成されている。
【0048】
稜線部46は、上面部44と側面部45とが交差する部位により、第1バンパステイ14の外側に突出するように稜線状に形成されている。稜線部46は、側面部45の前端部45aから後端部45bまで車体後方に向けて延びている。稜線部46のうち、側面部45の後端部45b寄りの部位に凹み部61が形成されている。
凹み部61は、稜線部46のうち、側面部45の後端部45b寄りの部位が第1バンパステイの内側に凹むように凹状に形成されている。
【0049】
後下固定部47は、側面部45の後端部45bから車幅方向内側に向けて基台前面部31に沿って折り曲げられることにより形成されている。後下固定部47は、基台前面部31に対向する位置に配置され、後上固定部52の下方に配置されている。後下固定部47は、例えば、基台前面部31に接合されることにより、基台前面部31に設けられている。
【0050】
前固定部51、後上固定部52、および後下固定部47の下端部47aは、三角形60の各頂点に配置されている。前固定部51、後上固定部52、および後下固定部47の下端部47aを三角形60の各頂点に配置した理由については後で詳しく説明する。
【0051】
前面部48は、側面部45の前端部45aから車幅方向内側に折り曲げられることにより形成されている。前面部48には、例えば、後述するダクト91の前上側部 がクリップ などの締結部材で固定されている。
【0052】
<第2バンパステイ>
図2、
図3に示すように、基台13の左前方突出部24に左第2バンパステイ(バンパステイ)15が設けられ、基台13の右前方突出部25に右第2バンパステイ(バンパステイ)15が設けられている。左第2バンパステイ15および右第2バンパステイ15は、基台13およびフロントバルクヘッド12に支持され、フロントバンパフェース17を固定する。
左第2バンパステイ15および右第2バンパステイ15は、概ね左右対称の部材である。よって、左右の第2バンパステイ15に同じ符号を付して、左第2バンパステイ15について詳しく説明し、右第2バンパステイ15の詳しい説明を省略する。また、左第2バンパステイ15を「第2バンパステイ15」と略記して説明する。
【0053】
図7から
図9に示すように、第2バンパステイ15は、上面部64と、側面部65と、稜線部66と、後下固定部67と、を有する。上面部64は、前固定部71と、後上固定部(後方フランジ部)72と、段差部73と、を有する。
前固定部71は、例えば、後述するセンタアッパビーム16の上部16aにボルト75およびナット76などの締結部材で固定されている。センタアッパビーム16の上部16aには、例えば、後述するフロントバンパフェース17がクリップ58などの締結部材で固定されている。すなわち、前固定部71は、センタアッパビーム16を介してフロントバンパフェース17に設けられている。
また、前固定部71は、後上固定部72より上下方向において高い位置に配置されている。
【0054】
後上固定部72は、前固定部71の車体後方に配置され、基台上面部32のうち左内側部位32cの上面に沿ってフランジ状に突出されている。後上固定部72は、基台上面部32の左内側部位32cに上方から重ねられ、例えば、アッパ横メンバ23の左前方突出部24にボルト78により固定されることにより設けられている。すなわち、後上固定部72は、基台上面部32の左内側部位32cおよびアッパ横メンバ23の左前方突出部24にボルト78により固定されることにより設けられている。
ここで、基台上面部32の左内側部位32cは、基台上面部32の左端部32a(
図3参照)に対して低い位置に配置されている。よって、第2バンパステイ15の後上固定部72は、第1バンパステイ14の後上固定部52に対して低い位置に配置されている。
【0055】
段差部73は、前固定部71から後上固定部72へ向かうに従って下方に傾斜するように延びている。具体的には、段差部73は、前固定部71から後上固定部72まで車体後方に向かうに従って下方に傾斜するように延びている。
前固定部71は、後上固定部72に対して上下方向においてH2だけ高い位置に配置されている。
【0056】
ここで、第2バンパステイ15の高さH2は、第1バンパステイ14の高さH1(
図6参照)より大きく設定されている。第2バンパステイ15の高さH2を第1バンパステイ14の高さH1より大きく設定した理由は以下の通りである。
すなわち、
図3、
図6、
図9に示すように、例えば、複数のバンパステイ(具体的には、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15)が車幅方向に間隔をあけて基台13に設けられている。また、第1バンパステイ14の後上固定部52は、第2バンパステイ15の後上固定部52に対して低い位置に配置されている。
【0057】
そこで、第2バンパステイ15の高さH2を第1バンパステイ14の高さH1より大きく設定した。よって、第1バンパステイ14の前固定部51および第2バンパステイ15の前固定部71を同じ高さに配置できる。すなわち、基台13に設けた第1バンパステイ14の前固定部51および第2バンパステイ15の前固定部71(すなわち、複数のバンパステイの各前固定部)を、車幅方向において水平に配置できる。
第1バンパステイ14の前固定部51および第2バンパステイ15の前固定部71には、センタアッパビーム16の上部16aを介してフロントバンパフェース17の上フランジ17aが固定されている。これにより、フロントバンパフェース17を第1バンパステイ14および第2バンパステイ15に精度よく固定できる。
【0058】
図7から
図9に戻って、側面部65は、上面部64の外辺から下向きに折り曲げられた状態で下方に延びている。側面部65は、前端部65aから後端部65bまで下辺65cが下り勾配で延びることにより、車体後方に向かうにつれて高さ方向の幅W2が漸増するように形成されている。側面部65の後端部65bは、基台前面部31やアッパ横メンバ23(具体的には、左前方突出部24)の近傍に配置されている。
換言すれば、第2バンパステイ15は、前固定部71からアッパ横メンバ23の左前方突出部24が配置される車体後方に向かうにつれて高さ方向の幅W2が漸増するように形成されている。
【0059】
稜線部66は、上面部64と側面部65とが交差する部位により、第2バンパステイ15の外側に突出するように稜線状に形成されている。稜線部66は、側面部65の前端部65aから後端部65bまで車体後方に向けて延びている。稜線部66のうち、側面部65の後端部65b寄りの部位に凹み部81が形成されている。
凹み部81は、稜線部66のうち、側面部65の後端部65b寄りの部位が第2バンパステイ15の内側に凹むように凹状に形成されている。
【0060】
後下固定部67は、側面部65の後端部65bから車幅方向外側に向けて基台前面部31に沿って折り曲げられることにより形成されている。後下固定部67は、基台前面部31に対向する位置に配置されることにより、後上固定部72の下方に配置されている。後下固定部67は、例えば、基台前面部31に接合されることにより、基台前面部31に設けられている。
【0061】
前固定部71、後上固定部72、および後下固定部67の下端部67aは、三角形80の各頂点に配置されている。前固定部71、後上固定部72、および後下固定部67の下端部67aを三角形80の各頂点に配置した理由については後で詳しく説明する。
【0062】
<センタアッパビーム>
図2、
図6、
図9に示すように、第1バンパステイ14の前固定部51および第2バンパステイ15の前固定部71にセンタアッパビーム16が固定されている。具体的には、センタアッパビーム16は、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15の車体前方側で、かつ、基台13と対向する位置に車幅方向へ向けて配置されている。センタアッパビーム16は、上部16aが第1バンパステイ14の前固定部51および第2バンパステイ15の前固定部71に載置可能に車幅方向に平坦に延びている。
【0063】
センタアッパビーム16の上部16aは、第1バンパステイ14の前固定部51に載置された状態において、例えば、前固定部51にボルト55およびナット56で固定されている。また、センタアッパビーム16の上部16aは、第2バンパステイ15の前固定部71に載置された状態において、例えば、前固定部71にボルト75およびナット76で固定されている。すなわち、第1バンパステイ14の前固定部51および第2バンパステイ15の前固定部71にセンタアッパビーム16の上部16aが固定されている。
【0064】
センタアッパビーム16の上部16aには、例えば、後述するフロントバンパフェース17の上フランジ17aがクリップ58などの締結部材で強固に固定されている。すなわち、第1バンパステイ14の前固定部51および第2バンパステイ15の前固定部71には、センタアッパビーム16を介してフロントバンパフェース17が支持されている。
ここで、センタアッパビーム16の上部16aは、第1バンパステイ14の前固定部51および第2バンパステイ15の前固定部71に載置可能に車幅方向に平坦に延びている。これにより、フロントバンパフェース17の上フランジ17aを車幅方向において水平に延ばすことができ、上フランジ17a(すなわち、フロントバンパフェース17)の形状を簡素化できる。
【0065】
<フロントバンパフェース、フロントグリル>
図1、
図2に示すように、フロントバンパフェース17は、車両Veの前部(すなわち、車体の前部)に設けられてフロントバンパ(図示せず)を車体前方側から覆い、かつ、車両Veの前面を装飾する部材である。フロントバンパフェース17の車幅方向中央にはフロントグリル18が設けられている。
フロントグリル18は、フロントバンパフェース17の車体後方に配置されたシャッタグリル101(後述する)に走行風(外気)を導入可能に開口されている。フロントグリル18の中央にはエンブレム87が設けられている。
【0066】
<ダクト>
図5、
図6、
図10に示すように、フロントバルクヘッド12および基台13の車体前方にダクト91が設けられている。ダクト91は、例えば、フロントバルクヘッド12に取り付けられたラジエータやコンデンサ(図示せず)に走行風(外気、空気)を案内する。ダクト91は、センタアッパビーム16、基台13、および第1バンパステイ14に固定(接続)されている。
【0067】
具体的には、ダクト91は、例えば、前上部91aがセンタアッパビーム16の前壁部16bにクリップ93などの締結部材で固定されている。また、ダクト91は、例えば、後上フランジ部91bが基台13の基台前面部31にクリップ94などの締結部材で固定されている。さらに、ダクト91は、例えば、後上側部91cが第1バンパステイ14のうち側面部45の後下部45dにクリップ95などの締結部材で固定されている。加えて、ダクト91は、例えば、前上側部91dが第1バンパステイ14の前面部48にクリップ96などの締結部材で固定されている。
【0068】
よって、センタアッパビーム16、基台13、および第1バンパステイ14にダクト91を強固に支持できる。これにより、ダクト91を樹脂で形成した場合でも、例えば、車両Veの走行中に振動の影響を受け難くでき、ダクト91による走行風(空気)の通り道に影響を与え難くできる。すなわち、ダクト91は、フロントバルクヘッド12に取り付けられたラジエータやコンデンサに走行風を良好に案内できる。
【0069】
<車載部品>
図10に示すように、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15より下方にシャッタグリル(車載部品)101が配置されている。シャッタグリル101は、フロントグリル18の車体後方で、かつ、ダクト91の前開口部91eに設けられ、フロントグリル18から導入された走行風をダクト91に案内する。すなわち、シャッタグリル101は、例えば、シャッタ102(
図7参照)を開閉することによりダクト91に案内する走行風を調整して、ラジエータやコンデンサに導く走行風を制御する。
【0070】
ここで、フロントバルクヘッド12の上部(例えば、アッパ横メンバ23および左右の縦脚部22,22の上端部22a,22a)に基台13が支持され、基台13に第1バンパステイ14および第2バンパステイ15が支持されている。よって、フロントバンパフェース17とフロントバルクヘッド12との間の空間のうち上方に、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15を配置できる。これにより、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15より下方にシャッタグリル101などの車載部品を搭載する搭載空間104を確保できる。したがって、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15より下方の搭載空間104にシャッタグリル101を搭載できる。
さらに、例えば、前面軽衝突により車体前部に衝突荷重F1が入力した際に、シャッタグリル101が車体後方に後退できる空間(すなわち、搭載空間104)を第1バンパステイ14および第2バンパステイ15の下方に確保できる。
【0071】
また、シャッタグリル101の車体前方において、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15より下方にレーダ装置(車載部品)108が配置されている。具体的には、レーダ装置108は、例えば、エンブレム87の車体後方に設けられている。レーダ装置108は、例えば、障害物を検知して車両Veのブレーキを制御し、あるいは、周辺車両の速度や車間距離を測定して車両Veの速度や車間距離を制御する。
【0072】
また、前述したように、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15の下方には、車載部品を搭載する搭載空間104が確保されている。これにより、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15より下方の搭載空間104にレーダ装置108を搭載できる。
さらに、例えば、前面軽衝突により車体前部に衝突荷重F1が入力した際に、レーダ装置108が車体後方に後退できる空間(すなわち、搭載空間104)を第1バンパステイ14および第2バンパステイ15の下方に確保できる。
【0073】
以上説明したように、実施形態の車体前部構造10によれば、
図3から
図5に示すように、第1バンパステイ14は、前固定部51、後上固定部52、および後下固定部47の下端部47aが、三角形60の各頂点に配置されている。また、前固定部51には、センタアッパビーム16を介してフロントバンパフェース17が設けられている。
よって、前固定部51にフロントバンパフェース17の重量(荷重)F2が下向きに作用する。前固定部51に作用する荷重F2は、後上固定部52に作用する引張荷重F3と、後下固定部47(特に、下端部47a)に作用する圧縮荷重F4と、に分散(変換)される。
【0074】
後下固定部47は、基台前面部31(すなわち、基台13)に設けられている。また、基台13は、フロントバルクヘッド12に支持されている。フロントバルクヘッド12は、車体骨格の一部を構成する強度、剛性の高い部材である。よって、後下固定部47に作用する圧縮荷重F4を基台13(すなわち、フロントバルクヘッド12)で確実に支えることができる。
一方、後上固定部52は、基台上面部32(すなわち、基台13)に設けられている。よって、後上固定部52に作用する引張荷重F3を基台13(すなわち、フロントバルクヘッド12)で支えることができる。
【0075】
また、
図3、
図9に示すように、第2バンパステイ15は、前固定部71、後上固定部72、および後下固定部67の下端部67aが、三角形80の各頂点に配置されている。また、前固定部71には、センタアッパビーム16を介してフロントバンパフェース17が設けられている。
よって、前固定部71にフロントバンパフェース17の重量(荷重)F5が下向きに作用する。前固定部71に作用する荷重F5は、後上固定部72に作用する引張荷重F6と、後下固定部67(特に、下端部67a)に作用する圧縮荷重F7と、に分散(変換)される。
【0076】
後下固定部67は、基台前面部31(すなわち、基台13)に設けられている。また、基台13は、フロントバルクヘッド12の左前方突出部24に支持されている。フロントバルクヘッド12は、車体骨格の一部を構成する強度、剛性の高い部材である。よって、後下固定部67に作用する圧縮荷重F7を基台13(すなわち、フロントバルクヘッド12)で確実に支えることができる。
一方、後上固定部72は、基台上面部32(すなわち、基台13)に設けられている。よって、後上固定部52に作用する引張荷重F6を基台13(すなわち、フロントバルクヘッド12)で支えることができる。
【0077】
これにより、
図5、
図9に示すように、フロントバンパフェース17の重量(荷重)F2,F5を第1バンパステイ14および第2バンパステイ15で支持できる。これにより、フロントバンパフェース17の垂れ下がりを第1バンパステイ14および第2バンパステイ15で抑制できる。
【0078】
また、
図5に示すように、第1バンパステイ14は、前固定部51からアッパ横メンバ23が配置された車体後方に向かうにつれて側面部45の高さ方向の幅W1が漸増するように形成されている。よって、前固定部51および後下固定部47の下端部47aを連結する側面部45の下辺45cを、車体後方へ向けて下り勾配に延ばすことができる。
これにより、フロントバンパフェース17の荷重F2が前固定部51に作用した状態において、前固定部51に作用した荷重F2の一部を、後下固定部47(特に、下端部47a)が基台前面部31を押す方向に作用する圧縮荷重F4に分散(変換)しやすくできる。すなわち、圧縮荷重F4をフロントバルクヘッド12に伝えて支持しやすくできる。
【0079】
さらに、
図8、
図9に示すように、第2バンパステイ15は、前固定部71からアッパ横メンバ23が配置された車体後方に向かうにつれて側面部65の高さ方向の幅W2が漸増するように形成されている。よって、前固定部71および後下固定部67の下端部67aを連結する側面部65の下辺65cを、車体後方へ向けて下り勾配に延ばすことができる。
これにより、フロントバンパフェース17の荷重F5が前固定部71に作用した状態において、前固定部71に作用した荷重F5の一部を、後下固定部67(特に、下端部67a)が基台前面部31を押す方向に作用する圧縮荷重F7に分散(変換)しやすくできる。すなわち、圧縮荷重F7をフロントバルクヘッド12に伝えて支持しやすくできる。
【0080】
このように、
図5、
図9に示すように、圧縮荷重F4をフロントバルクヘッド12に伝えて支持しやすくでき、さらに、圧縮荷重F7をフロントバルクヘッド12に伝えて支持しやすくできる。これにより、フロントバンパフェース17の垂れ下がりを第1バンパステイ14および第2バンパステイ15で一層良好に抑制できる。
【0081】
また、
図3、
図4に示すように、第1バンパステイ14は、上面部44と側面部45とが交差する部位に稜線部46を形成した。さらに、稜線部46に凹み部61を形成した。よって、第1バンパステイ14そのものの強度を凹み部61で向上させ、かつ、例えば、上面部44が稜線部46を境にして側面部45へ向けて変形することを抑制できる。
さらに、
図3、
図8に示すように、第2バンパステイ15は、上面部64と側面部65とが交差する部位に稜線部66を形成した。さらに、稜線部66に凹み部81を形成した。よって、第2バンパステイ15そのものの強度を凹み部81で向上させ、かつ、例えば、上面部64が稜線部66を境にして側面部65へ向けて変形することを抑制できる。
【0082】
これにより、
図5、
図9に示すように、フロントバンパフェース17から第1バンパステイ14の前固定部51に作用する荷重F2に対して、第1バンパステイ14で強く踏ん張ることができる。また、フロントバンパフェース17から第2バンパステイ15の前固定部71に作用する荷重F5に対して、第2バンパステイ15で強く踏ん張ることができる。
したがって、第1バンパステイ14の前固定部51および第2バンパステイ15の前固定部71に作用した荷重F2,F5を第1バンパステイ14および第2バンパステイ15で支持できる。
【0083】
また、
図3、
図4に示すように、第1バンパステイ14は、上面部44に、前固定部51、後上固定部52、および段差部53を有する。後上固定部52は、基台上面部32やフロントバルクヘッド12のアッパ横メンバ23に重ねられるように設けられている。さらに、段差部53は、前固定部51から後上固定部52へ向かうに従って下方に傾斜するように延びている。よって、上面部44の剛性(特に、面剛性)を向上させることにより、第1バンパステイ14の剛性を向上させることができる。
【0084】
さらに、
図8、
図9に示すように、第2バンパステイ15は、上面部64に、前固定部71、後上固定部72、および段差部73を有する。後上固定部72は、基台上面部32やフロントバルクヘッド12のアッパ横メンバ23に重ねられるように設けられている。さらに、段差部73は、前固定部71から後上固定部72へ向かうに従って下方に傾斜するように延びている。よって、上面部64の剛性(特に、面剛性)を向上させることにより、第2バンパステイ15の剛性を向上させることができる。
【0085】
これにより、
図5、
図9に示すように、フロントバンパフェース17から第1バンパステイ14の前固定部51に作用する荷重F2を、第1バンパステイ14を経て基台13の側に伝達させやすくできる。また、フロントバンパフェース17から第2バンパステイ15の前固定部71に作用する荷重F5を、第2バンパステイ15を経て基台13の側に伝達させやすくできる。
したがって、フロントバンパフェース17の垂れ下がりを第1バンパステイ14および第2バンパステイ15で一層良好に抑止できる。
【0086】
また、
図3、
図7、
図9に示すように、基台13をコ字状に形成することにより、フロントバルクヘッド12のアッパ横メンバ23(特に、左前方突出部24、右前方突出部25など)を、基台13で上下方向から挟むことができる。よって、基台13の剛性を高めることができ、基台13でアッパースティフナ(すなわち、補強部材)としての役割を果たすことができる。
さらに、基台13をフロントバルクヘッド12の左右の縦脚部22にかけ渡した。よって、基台13をフロントバルクヘッド12の車体前方側に配置した状態において、フロントバルクヘッド12に強固に支持できる。この基台13に第1バンパステイ14および第2バンパステイ15が取り付けられている。これにより、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15を基台13から車体前方に向けて配置した状態において、基台13に強固に固定できる。
【0087】
ここで、例えば、フロントバンパフェース17がフロントバルクヘッド12に対して車体前方の側に比較的大きく離れて配置することが考えられる。この場合においても、フロントバルクヘッド12の車体前方に基台13を配置することにより、第1バンパステイ14および第2バンパステイ15の車体前後方向の長さを抑えることができる。これにより、フロントバンパフェース17を第1バンパステイ14および第2バンパステイ15で強固に支持できる。
【0088】
また、アッパ横メンバ23の左前方突出部24および右前方突出部25を、基台13で上下方向から挟み、さらに、フロントバルクヘッド12の左右の縦脚部22に基台13をかけ渡した。よって、フロントバルクヘッド12を基台13で補強することができる。
ここで、車両Veの走行中に、例えば、片側の車輪だけ段差に乗り上げることにより、フロントバルクヘッド12に捩れ方向の荷重が入力することが考えられる。この場合において、フロントバルクヘッド12に捩れ方向の荷重に対する剛性を、基台13(すなわち、アッパースティフナ)により高めることができる。
【0089】
また、
図3に示すように、アッパ横メンバ23の左前方突出部24および右前方突出部25を基台13で挟むように配置した。さらに、基台13の左下方接続部34および右下方接続部35を、アッパ横メンバ23の下端部より下側において左右の縦脚部22,22の上端部22a,22aに固定させた。これにより、基台13は、例えば、左右の縦脚部22を車幅方向外側にくの字状(V字状)に折り曲げる荷重に対しても、フロントバルクヘッド12の剛性を高めることができる。
すなわち、例えば、フロントバルクヘッド12に左右の縦脚部22を車幅方向外側にくの字状(V字状)に折り曲げる荷重が入力した際に、左右の縦脚部22が車幅方向外側にくの字状(V字状)に折れ曲がることを基台13で抑制できる。
【0090】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0091】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0092】
Ve 車両
10 車体前部構造
12 フロントバルクヘッド
13 基台
14 第1バンパステイ(バンパステイ、左右の第1バンパステイ)
15 第2バンパステイ(バンパステイ、左右の第2バンパステイ)
16 センタアッパビーム
17 フロントバンパフェース(バンパフェース)
17a 上フランジ
22 左右の縦脚部(一対の縦脚部)
23 アッパ横メンバ(横メンバ)
24 左前方突出部(前方突出部)
25 右前方突出部(前方突出部)
31 基台前面部
32 基台上面部
34 左下方接続部(下方接続部)
35 右下方接続部(下方接続部)
36 凹部
44,64 上面部
45,65 側面部
46,66 稜線部
47,67 後下固定部
51,71 前固定部
52,72 後上固定部
53,73 段差部
60,80 三角形
61,81 凹み部
91 ダクト
101 シャッタグリル
108 レーダ装置
W1,W2 高さ方向の幅