(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】がんを治療するためのMDM2阻害剤の投与計画
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20221212BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
A61K31/4439 ZMD
A61P35/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2021043154
(22)【出願日】2021-03-17
(62)【分割の表示】P 2018520638の分割
【原出願日】2016-10-21
【審査請求日】2021-04-14
(32)【優先日】2015-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】ツェ ガイチウ アーチー
(72)【発明者】
【氏名】カイ シェンリー
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/108175(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0264738(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02894156(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする
ヒト対象において
そのゲノムに増幅されたMDM2遺伝子を有するかまたは過剰発現されているMDM2を有するがんを治療することに用いるための医薬組成物であって、
医薬組成物が治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される賦形剤を含み、および医薬組成物が80mg±10%から250mg±10%の1日用量の化合物またはその塩を対象に投与することを含む投薬スケジュールに従っ
て経口投与される
、前記医薬組成物
【化1】
(3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド。
【請求項2】
1日用量が化合物またはその塩の250mg±10%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
250mg±10%の1日用量が化合物またはその塩260mgである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
組成物が他の抗腫瘍剤(単数)または他の抗腫瘍剤(複数)との組み合わせにおいて使用される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
がんが固形腫瘍である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
1日用量が化合物またはその塩の200mg±10%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
1日用量が化合物またはその塩の160mg±10%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
1日用量が化合物またはその塩の130mg±10%である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
それを必要とするヒト対象においてそのゲノムに増幅されたMDM2遺伝子を有するかまたは過剰発現されているMDM2を有する固形腫瘍を治療することに用いるための医薬組成物であって、医薬組成物が治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される賦形剤を含み、および医薬組成物が80mg±10%から250mg±10%の1日用量の化合物またはその塩を対象に投与することを含む投薬スケジュールに従って経口投与される、前記医薬組成物
【化2】
(3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド。
【請求項10】
1日用量が化合物またはその塩の250mg±10%である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
250mg±10%の1日用量が化合物またはその塩260mgである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
組成物が他の抗腫瘍剤(単数)または他の抗腫瘍剤(複数)との組み合わせにおいて使用される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
固形腫瘍が、軟部組織肉腫、メラノーマ、神経内分泌がん、腺様嚢胞がん、平滑筋肉腫、結腸直腸がん、腎臓がん、肺がん、脊索腫、唾液腺癌、副腎皮質癌、および上顎洞腺癌から選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
1日用量が化合物またはその塩の200mg±10%である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
1日用量が化合物またはその塩の160mg±10%である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項16】
1日用量が化合物またはその塩の130mg±10%である、請求項9に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんをそれを必要とする対象において治療する方法であって、特定の投与計画に従って対象に特定のMDM2阻害剤を投与することを含む方法、および投与計画に従ってがんを治療することに用いるための医薬組成物に関する。本発明は、脂肪肉腫をそれを必要とする対象において治療する方法であって、対象に特定のMDM2阻害剤を投与することを含む方法、およびMDM2阻害剤を含む脂肪肉腫を治療することに用いるための医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
MDM2は、染色体12q13-15に位置し、p53腫瘍サプレッサータンパク質の負の制御因子である。90kDaのMDM2タンパク質は、そのN末端にあるp53結合ドメインおよびp53をユビキチン化するE3リガーゼとして機能する、そのC末端にあるRING(really interesting new gene)ドメインを含有する。細胞刺激およびストレスによる野生型p53の活性化は、N末端でのMDM2のp53への結合をもたらして、p53の転写活性化を阻害し、ユビキチン-プロテアソーム経路を介したp53の分解を促進する。したがって、MDM2は、p53媒介アポトーシスおよびがん細胞増殖の停止を妨げ、がん細胞中の重要な発癌活性はMDM2に起因する可能性がある。いくつかの場合では、MDM2は、例えばMDM2の選択的スプライス型を有する細胞中において、p53経路に依存しない発癌を引き起こす可能性がある(H.A.Steinmanら、2004、J.Biol.Chem.、279(6):4877-4886)。したがって、いくつかのMDM2阻害剤はがんを治療するため開発され、これには(3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド(WO2012/121361および米国特許出願公開第2012/0264738A)が含まれる。
【0003】
脂肪肉腫(LPS)は、ヒトにおける、最も一般的な軟部組織肉腫(STS)サブタイプの1つであり、STSケースの約18から26%を含む。LPSは、高分化型(well-differentiated)タイプ(WD、46から54%)、脱分化型タイプ(DD、18から26%)、粘液様/円形細胞タイプ(13から28%)および多形性タイプ(7から8%)の4つのサブタイプに分類することができる。染色体12q13-15の増幅は、WD/DD LPSにおいて頻繁(すなわち、約90%の患者まで)に見出される(Coindreら、2010、Virchows.Arch.、456:167-179、Momandら、1998、Nucleic Acid Research、26(15):3453-3459、およびRayburnら、2005、Current Cancer Drug Targets、5:27-41)。したがって、一部のMDM2アンタゴニストは、脂肪肉腫の治療薬として開発された(Ray-Coquardら、2012、Lancet Oncol.、13:1133-1140)。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、特定の投与計画に従って対象に特定のMDM2阻害剤を投与することを含む、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法および前記投与計画に従ってがんを治療することに用いるための医薬組成物を提供する。本発明は、対象に特定のMDM2阻害剤を投与することを含む、それを必要とする対象における脂肪肉腫を治療する方法およびMDM2阻害剤を含む脂肪肉腫を治療することに用いるための医薬組成物も提供する。
【0005】
固体がんおよびリンパ腫が、80から250mgの1日用量の化合物またはその塩を対象に周期性投薬(QD21/28またはQD28/28)を投与することを含む投与計画に従って
(3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド(以下「化合物1」とも称される)またはその薬学的に許容される塩を対象に経口投与することによって治療することができることを発明者らは発見した。脂肪肉腫が、化合物1で治療することができることも発明者らは発見した。
【0006】
本発明は、以下を提供する:
(1)治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象におけるがんを治療することに用いるための医薬組成物であって、約80mgから約250mgの1日用量の該化合物またはその塩を対象に投与することを含む投薬スケジュールに従って経口投与される、医薬組成物。
【化1】
(3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド(2)投薬スケジュールが、約80mgから約140mgの1日用量の化合物またはその塩を対象に投与することを含む、上記(1)に記載の医薬組成物。
(3)投薬スケジュールが、約80mgから約100mgの1日用量の化合物またはその塩を対象に投与することを含む、上記(1)に記載の医薬組成物。
(4)投薬スケジュールが、約90mgの1日用量の化合物またはその塩を対象に投与することを含む、上記(1)に記載の医薬組成物。
(5)投薬スケジュールが、約100mgから約140mgの1日用量の化合物またはその塩を対象に投与することを含む、上記(1)に記載の医薬組成物。
(6)投薬スケジュールが、約120mgの1日用量の化合物またはその塩を対象に投与することを含む、上記(1)に記載の医薬組成物。
(7)がんが、脂肪肉腫である、上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の、それを必要とする対象におけるがんを治療することに用いるための、医薬組成物。
(8)がんが、脂肪肉腫のゲノム中に増幅されたMDM2遺伝子を有する脂肪肉腫である、上記(7)に記載の、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための、医薬組成物。
(9)治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための、医薬組成物であって、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、各サイクルは、少なくとも10日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約80mgから約250mgの1日投薬量で毎日投与される、医薬組成物。
(10)化合物またはその塩が、約80mgから約140mgの1日投薬量で毎日投与される、上記(9)に記載の医薬組成物。
(11)化合物またはその塩が、約80mgから約100mgの1日投薬量で毎日投与される、上記(9)に記載の医薬組成物。
(12)化合物またはその塩が、約90mgの1日投薬量で毎日投与される、上記(9)に記載の医薬組成物。
(13)化合物またはその塩が、約100mgから約140mgの1日投薬量で毎日投与される、上記(9)に記載の医薬組成物。
(14)化合物またはその塩が、約120mgの1日投薬量で毎日投与される、上記(9)に記載の医薬組成物。
(15)化合物またはその塩が、約140mgから約180mgの1日投薬量で毎日投与される、上記(9)に記載の医薬組成物。
(16)化合物またはその塩が、約160mgの1日投薬量で毎日投与される、上記(9)に記載の医薬組成物。
(17)化合物またはその塩が、約180mgから約250mgの1日投薬量で毎日投与される、上記(9)に記載の医薬組成物。
(18)化合物またはその塩が、約210mgの1日投薬量で毎日投与される、上記(9)に記載の医薬組成物。
(19)治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物であって、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、各サイクルは、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、化合物またはその塩の約80mgから約250mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、医薬組成物。
【化2】
(3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド(20)各サイクルが、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約100mgから約140mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(
19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(21)各サイクルが、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約120mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(22)各サイクルが、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約140mgから約180mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(23)各サイクルが、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約160mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(24)各サイクルが、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約180mgから約250mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(25)各サイクルが、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約210mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(26)各サイクルが、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約100mgから約140mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(27)各サイクルが、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約140mgから約180mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(28)各サイクルが、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約180mgから約250mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(29)各サイクルが、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約80mgから約100mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(30)各サイクルが、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約90mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(31)各サイクルが、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約80mgから約100mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(32)各サイクルが、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、化合物またはその塩の約120mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(33)各サイクルが、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、化合物また
はその塩の約160mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(34)各サイクルが、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、化合物またはその塩の約210mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(35)各サイクルが、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、化合物またはその塩の約90mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない、上記(9)から(19)のいずれか1つに記載の医薬組成物。
(36)がんが、脂肪肉腫である、上記(9)から(35)のいずれか1つに記載の、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物。
(37)がんが、脂肪肉腫のゲノム中に増幅されたMDM2遺伝子を有する脂肪肉腫である、上記(36)に記載の、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物。
(38)化合物またはその塩が、式(II)に示される、p-トルエンスルホン酸塩一水和物の形態である(以下「化合物2」とも称される)、上記(1)から(37)のいずれか1つに記載の、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物。
【化3】
(39) (3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミドまたはその薬学的に許容される塩を含む、脂肪肉腫の治療することに用いるための医薬組成物。
(40)脂肪肉腫が、脂肪肉腫のゲノム中に増幅されたMDM2遺伝子を有する、上記(39)に記載の医薬組成物。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】臨床研究における全ての評価可能な対象(n=23)において最良の腫瘍応答を示すウォーターフォールプロットを示す図である。脂肪肉腫を有する対象は、バー上に文字「L」によって示される。ベースラインは、化合物2の最初の用量の前にとられた最後の非欠損値として定義した。各対象について、全ての標的病変に対する直径の和におけるベースラインからの最良(最小)パーセント変化は、縦のバーによって表される。「PD」および「SD」という用語は、それぞれ、RECISTガイドラインv1.1に定義されるとおり、進行および安定を意味する。
【0008】
【
図2】臨床研究における脂肪肉腫に罹患している全ての対象(n=13)において最良の腫瘍応答を示すウォーターフォールプロットを示す図である。WDおよびDD脂肪肉腫を有する対象は、それぞれ、バー上に文字「WD」および「DD」によって示される。ベースラインは、化合物2の最初の用量の前にとられた最後の非欠損値として定義した。各対象について、全ての標的病変に対する直径の和におけるベースラインからの最良(最小)パーセント変化は、縦のバーによって表される。「PD」および「SD」という用語は、それぞれ、RECISTガイドラインv1.1に定義されるとおり、進行および安定を意味する。
【発明の具体的な説明】
【0009】
本明細書で使用される「含む」という用語は、オープンエンドで、包括的であることが意図され、追加の記載していない特性を排除しなく、クローズドな用語「からなる」または「本質的にからなる」を包含する。
【0010】
「対象」という用語は、がんに罹患しているかまたは罹患している疑いのある哺乳動物、特にヒトを表す。対象は、他の療法によって以前から治療されてきたかまたは治療された対象であり得る。対象は、ヒト成人であり得る。
【0011】
「治療する」という用語は、固形腫瘍ガイドライン(RECIST)バージョン1.1におけるResponse Evaluationに従って医師によって決定することができる、疾患の重症度を低下させることまたは疾患の進行を遅くすることを表す。
【0012】
「MDM2」という用語は、p53と相互作用し、p53の分解を引き起こすことができる、E3ユビキチンリガーゼを表す。本明細書で使用される「MDM2」は、マウスMDM2およびMDM2のヒトオルソログ(「Human Double Minute 2」または「HDM2」とも称される)を含むが、これらに限定されない。「MDM2阻害剤」という用語は、p53の分解におけるMDM2機能または活性を阻害する阻害剤を表す。
【0013】
「結合」という用語は、ある核酸分子から別のもの(またはそれ自体への)へのハイブリダイゼーション;ポリペプチド、タンパク質、またはペプチドと抗体との会合;または別のタンパク質もしくは核酸分子とタンパク質の会合などの、2つの物質または分子間の相互作用または会合を一般的に表す。その結合の検出を可能にするのに十分な量のオリゴヌクレオチド分子がその標的核酸分子と塩基対を形成するかまたはハイブリダイズしている場合、オリゴヌクレオチド分子は、標的核酸分子に結合するかまたは安定に結合する。優先的に、結合は、ある分子が別の分子に高親和性で結合し、異種分子に低親和性で結合する会合を表す。結合は、標的/オリゴヌクレオチド複合体の物理的または機能的性質によってなどの当業者に公知の任意の手順によって検出され得る。例えば、結合は、生合成プロセス、例えば、遺伝子の発現、DNA複製、転写、翻訳などに及ぼす観察可能な効果があるかどうかを決定することによって機能的に検出され得る。
【0014】
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、RNA転写物として対象において発現される、DNA配列を表す;遺伝子は完全長遺伝子(タンパク質をコードする、またはノンコーディング)であり得る。
【0015】
本発明に関連して使用される「遺伝子発現」は、遺伝子でコードされた遺伝情報を遺伝子の転写(例えば、RNAポリメラーゼの酵素作用によって媒介される)を介してRNA(例えば、mRNA、rRNA、tRNA、またはsnRNA)に、タンパク質をコードする遺伝子に関しては、mRNAの「翻訳」を介してタンパク質に変換するプロセスを意味する。
【0016】
本明細書で使用される「がん」という用語は、治療されないままの場合、周囲の組織に
侵入し、他の器官に広がる、すなわち、悪性になり得る異常な成長または異常に成長している細胞を表す、新生物および腫瘍を包含すると理解される。新生物は、新生物の結果として形成される細胞で構成される組織の異常成長(または塊)であり、良性または悪性の細胞の異常な成長と増殖である。新生物および腫瘍は、前がん性およびがん性細胞ならびに組織の異常な成長を含み得て、これが治療されない場合、正常細胞よりも急速に成長し、成長し続け、正常細胞と栄養素を求めて競争することになる。新生物は、これらに限定されないが、中空または液体で満たされた腫瘍さらに、血液細胞新生物形成または新生物、例えば、リンパ腫、白血病および骨髄腫などの固形および非固形腫瘍を含み得る。
【0017】
「がん」という用語は、身体内または身体上の様々な起源、様々なタイプおよびサブタイプ、ならびに器官、組織および細胞試料ならびに検体、例えば、その生物学的試料または検体の新生物および腫瘍を包含することも意図されている。例示的に、適切ながん試料または検体は、ヒト、例えば、がんのための治療を受けている患者、または獣医学的対象から得られた臨床試料を含めた、任意の従来の生物学的試料または検体を含む。試料は、組織の疾患のまたは健康な部分である組織の一部、または組織全体を表し得る。組織試料は、当技術分野で公知であり、実行されている任意の方法または手順を用いることによって、対象から得ることができる。
【0018】
「脂肪肉腫」という用語は、顕微鏡下の組織切片中で脂肪細胞に似ている、成人において最も一般的な軟部組織肉腫の1つである。脂肪肉腫は、軟部組織肉腫の約18から26%を示す。その病理学的な研究によれば、脂肪肉腫は、高分化型(WD、46から54%)、脱分化型(DD、18から26%)、粘液様/円形細胞(13から28%)、および多形性(7から8%)脂肪肉腫の4つのサブタイプに分類することができる。染色体12q13-15増幅は、脂肪肉腫、例えば、WDまたはDD脂肪肉腫に罹患している対象において頻繁に見出される。MDM2遺伝子が染色体12q13-15に位置することが公知であり、したがってMDM2遺伝子が脂肪肉腫に罹患している対象において頻繁に増幅されることが推定される。
【0019】
「薬学的に許容される塩」という用語は、比較的無毒な酸または塩基付加塩である、活性化合物の塩を表す。酸付加塩の非限定の例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、イソ酪酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、およびメタンスルホン酸塩を含む。「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される溶媒和物またはその塩を含む。溶媒和物は、1つの分子と1つまたは複数の溶媒分子の化学量論的な複合体である。薬学的に許容される溶媒和物の非限定の例は、溶媒としての水、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、およびアセテートを含む。溶媒として水を含有する溶媒和物は、水和物である。本発明の好ましい実施形態において、化合物の薬学的に許容される塩は、水和物およびより好ましくは一水和物であり得る。
【0020】
本明細書で使用される「約」という用語は、その用語に続く特定の値および特定の値の±10%の値の範囲を表す。例えば、「約100」という語句は、このケースにおいて特定の値である100および90から110の範囲を表す。
【0021】
式(I)の化合物:
(3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミドおよびその薬学的に許容される塩(そのp-トルエンスルホン酸塩を含む)は、MDM2
阻害剤の1つとして開示される(参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、WO2012/121361の実施例70および米国特許出願公開第2012/0264738A号の実施例70を参照されたい)。
【化4】
別段の記載がない限り、式(I)の化合物は、その化合物ならびにその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される溶媒和物、およびプロドラッグを意味する。
【0022】
本発明の最も好ましい実施形態の1つにおいて、この化合物は、式(II)の化合物であり得る:
(3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド
モノ(4-メチルベンゼンスルホン酸塩)一水和物(その化合物のモノp-トルエンスルホン酸塩一水和物とも称される)。
【化5】
【0023】
式(I)の化合物は、対象におけるがんを治療するため、本発明の投薬スケジュールに従ってがんに罹患している対象に1日1回投与することができる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約80mgから約250mgの1日用量で対象に経口投与することができる。本発明の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、または約250mgの1日用量で対象に経口投与することができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約80mgから約1
40mg、より好ましくは約80mgから約100mg、さらにより好ましくは約90mgの1日用量で、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間以上、対象に経口投与することができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約100mgから約140mg、より好ましくは約120mgの1日用量で、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間以上、対象に経口投与することができる。本発明の別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約140mgから約180mg、より好ましくは約160mgの1日用量で、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間以上、対象に経口投与することができる。本発明の別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約180mgから約250mg、より好ましくは約210mgの1日用量で、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間以上、対象に経口投与することができる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、ここで、各サイクルは、少なくとも10日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約80mgから約250mgの1日投薬量で毎日投与される。この実施形態において、投薬期間は、好ましくは少なくとも15日、より好ましくは約15日から約25日の間、さらにより好ましくは約21日であり、1日投薬量は、好ましくは約80mgから約100mgまたは約100mgから140mg、より好ましくは約90mgまたは約120mgである。別の実施形態において、投薬期間は、好ましくは少なくとも15日、より好ましくは約15日から約25日の間、さらにより好ましくは約21日であり、1日投薬量は、好ましくは約140mgから約180mgまたは約180mgから250mg、より好ましくは約160mgまたは約210mgである。特定の実施形態において、投薬期間は、少なくとも15日であり、1日投薬量は、約80mgから約100mg、より好ましくは約90mgである。別の実施形態において、投薬期間は、少なくとも15日であり、1日投薬量は、約100mgから約140mg、より好ましくは約120mgである。特定の実施形態において、投薬期間は、少なくとも15日であり、1日投薬量は、約140mgから約180mg、より好ましくは約160mgである。別の実施形態において、投薬期間は、少なくとも15日であり、1日投薬量は、約180mgから約250mg、より好ましくは約210mgである。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約100mgから約140mg、より好ましくは約120mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。本発明の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約120mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、より好ましくは約21日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、より好ましくは約7日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。本発明の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約120mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約21日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。
【0029】
本発明の別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約80mgから約100mg、より好ましくは約90mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少な
くとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。本発明のより特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約90mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、より好ましくは約21日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、より好ましくは約7日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約90mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約21日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約140mgから約180mg、より好ましくは約160mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。本発明の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約160mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、より好ましくは約21日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、より好ましくは約7日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。本発明の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約160mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約21日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。
【0031】
本発明の別の好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約180mgから約250mg、より好ましくは約210mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約15日から約25日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約5日から約10日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。本発明の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約210mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、より好ましくは約21日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、より好ましくは約7日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。本発明の特定の実施形態において、式(I)の化合物は、化合物約210mgの1日用量で、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与することができ、ここで、各サイクルは、約21日の投薬期間を有し、化合物は、上記で言及した用量で毎日投与され、続いての約7日の休薬期間では、そのいずれの化合物も投与されない。
【0032】
本発明において、治療されるがんは、固形がんおよび血液がんを含むが、これらに限定されない。本発明において治療される固形がんは、軟部組織肉腫、例えば、脂肪肉腫、メラノーマ、神経内分泌がん、腺様嚢胞がん、平滑筋肉腫、結腸直腸がん、腎臓がん、肺がん、脊索腫、唾液腺癌、副腎皮質癌、および上顎洞腺癌を含むが、これらに限定されない。本発明において治療される血液がんは、リンパ腫を含むが、これに限定されない。本発明の好ましい実施形態において、治療される固形がんは、脂肪肉腫、例えばDDまたはWDの脂肪肉腫であり得る。
【0033】
式(I)の化合物は、MDM2阻害剤として作用することができる。MDM2は、p53腫瘍サプレッサータンパク質の負の制御因子である。90kDaのMDM2タンパク質は、そのN末端にあるp53結合ドメインおよびp53をユビキチン化するE3リガーゼとして機能する、そのC末端にあるRING(really interesting new gene)ドメインを含有する。細胞刺激およびストレスによる野生型p53の活性化は、N末端でのMDM2のp53への結合をもたらして、p53の転写活性化を阻害し、ユビキチン-プロテアソーム経路を介したp53の分解を促進する。したがって、MDM2は、p53媒介アポトーシスおよびがん細胞増殖の停止を妨げ、がん細胞中の重要な発癌活性はMDM2に起因する可能性がある。いくつかの場合では、MDM2は、例えばMDM2の選択的スプライス型を有する細胞中において、p53経路に依存しない発癌を引き起こす可能性がある(H.A.Steinmanら、2004、J.Biol.Chem.、279(6):4877-4886)。加えて、ヒトがんの約50%は、TP53遺伝子に変異またはこの欠失を有することが観察されている。MDM2は、例えば、メラノーマ、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、食道がん、白血病、非ホジキンリンパ腫および肉腫を含めた多くのヒトがんにおいて過剰発現されている。MDM2の過剰発現は、肉腫、神経膠腫および急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する個体における予後不良と正に相関することが報告されている。
【0034】
したがって、本発明において治療されるがんは、増幅されたMDM2遺伝子を有するかまたはがんにおいて過剰発現されているMDM2を有することが好ましい。本発明の特定の実施形態において、本発明において治療されるがんは、がんのゲノムにおいて増幅されたMDM2遺伝子を有する脂肪肉腫であり得る。
【0035】
本発明において治療されるがんが、がんのゲノムにおいて野生型TP53遺伝子を有することも好ましい。本発明の特定の実施形態において、本発明において治療されるがんは、がんのゲノムにおいて野生型TP53遺伝子を有する脂肪肉腫(例えば、DDまたはWD脂肪肉腫)であり得る。
【0036】
本発明のさらに特定の実施形態において、本発明において治療されるがんは、がんのゲノムにおいて野生型TP53遺伝子および増幅されたMDM2遺伝子を有する脂肪肉腫であり得る。
【0037】
これらの特定の実施形態において、がんのゲノムにおいて野生型TP53遺伝子および/または増幅されたMDM2遺伝子を有するがんは、MDM2阻害剤として作用することができる、式(I)の化合物の投与によって効果的に治療することができる。
【0038】
本発明の実施形態において、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、約80mgから約250mg、より好ましくは約100mgから約140mg、約140mgから約180mg、または約180mgから約250mgの1日用量の化合物またはその塩を対象に投与することを含む投薬スケジュールに従って対象に経口投与される。
【0039】
本発明の実施形態において、式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、約80mgから約250mg、より好ましくは約100mgから約140mg、約140mgから約180mg、または約180mgから約250mgの1日用量の化合物を対象に投与することを含む投薬スケジュールに従って対象に経口投与される。
【0040】
本発明の実施形態において、式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、約80mgから約250mg、より好ましくは約100mgから約140mg、約140mgから約180mg、または約180mgから約250mgの1日用量の化合物を対象に投与することを含む投薬スケジュールに従って対象に経口投与され、ここで、がんは、脂肪肉腫、例えばDDまたはWDの脂肪肉腫である。特定の実施形態において、1日用量は、約100mgから約140mgの間であり、がんは、脂肪肉腫、例えばDDまたはWDの脂肪肉腫である。
【0041】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日または少なくとも15日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約80mgから約140mgの1日投薬量で毎日対象に投与される。特定の実施形態において、1日投薬量は、約100mgから約140mgの間である。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は、約15日から約25日の間、より好ましくは約21日である。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は、約15日から約25日の間であり、1日投薬量は、約100mgから約140mgである。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は約21日であり、1日投薬量は約100mgから約140mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、1日投薬量は約120mgであり、または投薬期間は約21日であり、1日投薬量は約120mgである。
【0042】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日または少なくとも15日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約140mgから約180mgの1日投薬量で毎日対象に投与される。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は、約15日から約25日の間、より好ましくは約21日である。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は、約15日から約25日の間であり、1日投薬量は、約140mgから約180mgである。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は約21日であり、かつ1日投薬量は約140mgから約180mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、かつ1日投薬量は約160mgであり、または投薬期間は約21日であり、かつ1日投薬量は約160mgである。
【0043】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日または少なくとも15日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約180mgから約250mgの1日投薬量で毎日対象に投与される。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は、約15日から約25日の間、より好ましくは約21日である。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は、約15日から約25日の間であり、かつ1日投薬量は、約180mgから約250mgである。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は約21日であり、かつ1日投薬量は約180mgから約250mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、かつ1日投薬量は約210mgであり、または投薬期間は約21日であり、か
つ1日投薬量は約210mgである。
【0044】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日または少なくとも15日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約80mgから約100mgの1日投薬量で毎日対象に投与される。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は、約15日から約25日の間、より好ましくは約21日である。本発明の特定の実施形態において、投薬期間は、約21日であり、かつ1日投薬量は、約80mgから約100mgである。
【0045】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約100mgから約140mg、より好ましくは約120mgの1日投薬量で毎日対象に投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは、約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。
【0046】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、ここで、各サイクルは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約100mgから約140mg、より好ましくは約120mgの1日投薬量で毎日対象に投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。
【0047】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約140mgから約180mg、より好ましくは約160mgの1日投薬量で毎日対象に投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは、約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。
【0048】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、ここで、各サイクルは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約140mgから約180mg、より好ましくは約160mgの1日投薬量で毎日対象に投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。
【0049】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ま
しくは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約180mgから約250mg、より好ましくは約210mgの1日投薬量で毎日対象に投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは、約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。
【0050】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、ここで、各サイクルは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約180mgから約250mg、より好ましくは約210mgの1日投薬量で毎日対象に投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。
【0051】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約80mgから約100mg、より好ましくは約90mgの1日投薬量で毎日対象に投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは、約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。
【0052】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、ここで、各サイクルは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約80mgから約100mg、より好ましくは約90mgの1日投薬量で毎日対象に投与され、続いての約7日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。
【0053】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは、約21日の投薬期間を有し、化合物は、約80mgから約140mg、好ましくは約100mgから約140mg、より好ましくは約120mの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは約7日の休薬期間では、その化合物は投与されない。本発明の特定の実施形態において、1日投薬量は約100mgから約140mgの間であり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約120mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約100mgから約140mgの間であり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約120mgであり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。
【0054】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは、約21日の投
薬期間を有し、化合物は、約140mgから約180mg、より好ましくは約160mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは約7日の休薬期間では、その化合物は投与されない。本発明の特定の実施形態において、1日投薬量は約140mgから約180mgの間であり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約160mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約140mgから約180mgの間であり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約160mgであり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。
【0055】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは、約21日の投薬期間を有し、化合物は、約180mgから約250mg、より好ましくは約210mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは約7日の休薬期間では、その化合物は投与されない。本発明の特定の実施形態において、1日投薬量は約180mgから約250mgの間であり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約210mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約180mgから約250mgの間であり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約180mgであり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。
【0056】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約80mgから約140mg、好ましくは約100mgから約140mg、より好ましくは約120mの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは約7日の休薬期間では、その化合物は投与されず、ここで、がんは、脂肪肉腫、例えばDDまたはWDの脂肪肉腫である。本発明の特定の実施形態において、1日投薬量は約100mgから約140mgの間であり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約120mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約100mgから約140mgの間であり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約120mgであり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。
【0057】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約140mgから約180mg、より好ましくは約160mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは約7日の休薬期間では、その化合物は投与されず、ここで、がんは、脂肪肉腫、例えば、DDまたはWDの脂肪肉腫である。本発明の特定の実施形態において、1日投薬量は約140mgか
ら約180mgの間であり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約160mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約140mgから約180mgの間であり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約160mgであり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。
【0058】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、約180mgから約250mg、より好ましくは約210mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは約7日の休薬期間では、その化合物は投与されず、ここで、がんは、脂肪肉腫、例えばDDまたはWDの脂肪肉腫である。本発明の特定の実施形態において、1日投薬量は約180mgから約250mgの間であり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約210mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約180mgから約250mgの間であり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約210mgであり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。
【0059】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、対象に経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、化合物約80mgから約100mg、より好ましくは約90mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは約7日の休薬期間では、その化合物は投与されない。本発明の特定の実施形態において、1日投薬量は約90mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約80mgから約100mgの間であり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約90mgであり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。
【0060】
本発明の実施形態において、治療有効量の式(II)の化合物を含む、それを必要とする対象においてがんを治療することに用いるための本発明の医薬組成物が提供され、ここで、医薬組成物は、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、経口投与され、ここで、各サイクルは、約15日から約25日、好ましくは、約21日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、化合物約80mgから約100mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての約5日から約10日、好ましくは約7日の休薬期間では、その化合物は投与されず、ここで、がんは、脂肪肉腫、例えばDDまたはWDの脂肪肉腫である。本発明の特定の実施形態において、1日投薬量は約90mgであり、投薬期間は約15日から約25日の間であり、休薬期間は約5日から約10日の間である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約80mgから約100mgの間であり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。本発明の別の特定の実施形態において、1日投薬量は約90mgであり、投薬期間は約21日であり、休薬期間は約7日である。
【0061】
本発明の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤(例えば、ビヒクル、アジュバントおよび増量剤などの添加物、粘度増強剤、接着剤、可塑剤、結合剤、崩壊剤、錠剤滑沢剤、流動促進剤、コーティング剤、抗酸化剤、保存剤、保湿剤、乳白剤、艶出し剤、甘味剤、アロマ、風味剤、および着色剤)を含み得、経口投与のための医薬組成物として調製することができる。
【0062】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野の当業者によって製剤化することができる。経口投与のための医薬組成物は、錠剤、粉剤、顆粒剤、カプセル、丸剤、トローチ剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、エマルジョン剤、および油性または水性の懸濁液であり得る。薬学的溶液剤は、薬学的に許容される酸、例えばp-トルエンスルホン酸を使用して、酸付加塩を形成させることによって作ることができる。
【0063】
式(I)または(II)の化合物は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、WO2012/121361の実施例70およびWO2014/038606の実施例7に従って当業者によって容易に調製することができる。式(II)の化合物は、結晶の形態に調製され得る。
【0064】
本発明の別の態様において、それを必要とする対象において、がんを治療するため、投薬スケジュールに従って治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を対象に経口的に毎日投与することを含む方法が提供され、ここで、投薬スケジュールは、約80mgから約250mgの1日用量の化合物またはその塩を対象に投与することを含む。投薬スケジュールの好ましい実施形態において、化合物またはその塩の1日用量は、好ましくは約100mgから約140mgの間、より好ましくは約120mgである。投薬スケジュールの好ましい実施形態において、化合物またはその塩の1日用量は、好ましくは約140mgから約180mgの間、より好ましくは約160mgである。投薬スケジュールの好ましい実施形態において、化合物またはその塩の1日用量は、好ましくは約180mgから約250mgの間、より好ましくは約210mgである。投薬スケジュールの好ましい実施形態において、化合物またはその塩の1日用量は、好ましくは約80mgから約100mgの間、より好ましくは約90mgである。好ましい実施形態において、治療されるがんは、脂肪肉腫、特に脂肪肉腫のゲノムにおいて増幅されたMDM2遺伝子を有する脂肪肉腫であり得る。好ましい実施形態において、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、式(II)の化合物であり得る。
【0065】
本発明の実施形態において、それを必要とする対象において、がんを治療する方法であって、周期性投与スケジュールの少なくとも1つのサイクルの間、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩を毎日経口投与することを含む方法が提供され、ここで、各サイクルは、15日から25日の投薬期間を有し、化合物またはその塩は、化合物またはその塩の約80mgから約250mgの1日投薬量で毎日投与され、続いての5日から10日の休薬期間では、該化合物およびその塩のいずれも投与されない。投薬スケジュールの好ましい実施形態において、化合物またはその塩の1日用量は、好ましくは約100mgから約140mgの間、より好ましくは約120mgである。投薬スケジュールの好ましい実施形態において、化合物またはその塩の1日用量は、好ましくは約140mgから約180mgの間、より好ましくは約160mgである。投薬スケジュールの好ましい実施形態において、化合物またはその塩の1日用量は、好ましくは約180mgから約250mgの間、より好ましくは約210mgである。好ましい実施形態において、治療されるがんは、脂肪肉腫、特に脂肪肉腫のゲノムにおいて増幅されたMDM2遺伝子を有する脂肪肉腫であり得る。好ましい実施形態において、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩は、式(II)の化合物であり得る。
【0066】
式(I)または(II)の化合物は、追加の抗腫瘍剤との組合せにおいて使用され得る
。式(I)または(II)の化合物は、追加の抗腫瘍剤との組合せにおいて使用され得る。その例は、抗腫瘍抗生物質、抗腫瘍植物成分、BRM(生物反応修飾物質)、ホルモン、ビタミン、抗腫瘍抗体、分子標的薬、および他の抗腫瘍剤を含む。本発明の好ましい実施形態において、式(I)または(II)の化合物との組合せにおいて使用される抗腫瘍剤は、MDM2阻害剤であってもなくてもよい。
【0067】
より具体的には、アルキル化剤の例としては、以下が挙げられる:アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード、ナイトロジェンマスタードN-オキシド、ベンダムスチンおよびクロランブシル;アミジンアルキル化剤、例えばカルボコンおよびチオテパ;エポキシドアルキル化剤、例えばジブロモマンニトールおよびジブロモズルシトール;ニトロソ尿素アルキル化剤、例えばカルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ニムスチン塩酸塩、ストレプトゾシン、クロロゾトシン、およびラニムスチン;およびブスルファン、インプロスルファントシレート、およびダカルバジン。
【0068】
様々な代謝拮抗物質の例としては、以下が挙げられる:プリン代謝拮抗物質、例えば6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、およびチオイノシン;ピリミジン代謝拮抗物質、例えばフルオロウラシル、テガフール、テガフール-ウラシル、カルモフール、ドキシフルリジン、ブロクスウリジン、シタラビン、およびエノシタビン;および葉酸代謝拮抗物質、例えばメトトレキセートおよびトリメトレキセート。
【0069】
抗腫瘍抗生物質の例としては、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプロマイシン、ダウノルビシン、アクラルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、THP-アドリアマイシン、4’-エピドキソルビシン、およびエピルビシン;およびクロモマイシンA3およびアクチノマイシンDが挙げられる。
【0070】
抗腫瘍植物成分およびそれらの誘導体の例としては、以下が挙げられる:ビンカアルカロイド、例えばビンデシン、ビンクリスチン、およびビンブラスチン;タキサン、例えばパクリタキセル、ドセタキセル、およびカバジタキセル;およびエピポドフィロトキシン、例えばエトポシドおよびテニポシド。
【0071】
BRMの例としては、腫瘍壊死因子およびインドメタシンが挙げられる。
【0072】
ホルモンの例としては、ヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プラステロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、オキシメトロン、ナンドロロン、メテノロン、ホスフェストロール、エチニルエストラジオール、クロルマジノン、メドロキシプロゲステロン、およびメピチオスタンが挙げられる。
【0073】
ビタミンの例としては、ビタミンCおよびビタミンAが挙げられる。
【0074】
抗腫瘍抗体および分子標的薬の例としては、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、ニモツズマブ、デノスマブ、ベバシズマブ、インフリキシマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブ、ピジリズマブ、アテゾリズマブ、ラムシルマブ、イマチニブメシル酸塩、ダサチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、スニチニブ、ラパチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、パゾパニブ、パルボシクリブ、パノビノスタット、ソラフェニブ、イブルチニブ、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブ、およびキザルチニブが挙げられる。
【0075】
他の抗腫瘍剤の例としては、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、タモキシフェン、レトロゾール、アナストロゾール、エキセメスタン、トレミフェンクエン酸塩、フルベストラント、ビカルタミド、フルタミド、ミトタン、リュープロレリン、ゴセ
レリン酢酸塩、カンプトセシン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、L-アスパラギナーゼ、アセグラトン、シゾフラン、ピシバニール、プロカルバジン、ピポブロマン、ネオカルチノスタチン、ヒドロキシ尿素、ウベニメクス、アザシチジン、デシタビン、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドミド、エリブリン、トレチノイン、およびクレスチンが挙げられる。
【0076】
以下の実施例は例示的な目的だけのために提供され、本発明が実施例に限定されないことが理解される。
【実施例1】
【0077】
この実施例は、試験化合物(「化合物2」とも称される)に関する特定の投与計画が、がんの治療において予想外に良好な結果を示した臨床研究を記載する。
【0078】
試験化合物
(3’R,4’S,5’R)-N-[(3R,6S)-6-カルバモイルテトラヒドロ-2H-ピラン-3-イル]-6”-クロロ-4’-(2-クロロ-3-フルオロピリジン-4-イル)-4,4-ジメチル-2”-オキソ-1”,2”-ジヒドロジスピロ[シクロヘキサン-1,2’-ピロリジン-3’,3”-インドール]-5’-カルボキサミド
モノ(4-メチルベンゼンスルホン酸塩)一水和物(化合物2)を、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、WO2012/121361およびWO2014/038606において記載されるように調製した。
【0079】
対象適格性基準
固形腫瘍/リンパ腫対象に関する組み入れ基準:
1.標準的な治療に対して再発性を有するかまたは難治性であるか、またはそれに対して標準的な治療が利用可能ではない、組織学的または細胞学的に記録に記載されている進行性固形腫瘍またはリンパ腫を有する。
2.18歳以上の男性または女性。
3.Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータス0~1を有する。
4.十分な骨髄機能、十分な腎臓機能、十分な肝臓機能、および十分な血液凝固機能を有する。
【0080】
研究の用量漸増パートに登録される対象の人口統計/特性は、表1に要約されたとおりであった。
【表1】
【0081】
投与計画 化合物2を、薬学的に許容される担体(賦形剤、可塑剤、崩壊薬および滑沢剤)を含む経口カプセルとして投与した。化合物2を、28日サイクルの1日目から21日目(QD21/28)に対象に1日1回投与した。安全性を評価する目的で、代替的な薬物投与スケジュールを、上記スケジュールを使用して固形腫瘍および/またはリンパ腫対象における化合物2の最大耐量(MTD)を決定した後に、検討した。対象は、薬物投
与の2時間前および1時間後の間に食物を避けることによる絶食条件において化合物2を投与された。MTDを決定するための化合物2の用量漸増を、過量制限を伴う漸増原則(EWOC)の後にBayesianロジスティック回帰モデル(BLRM)を使用する改変された連続再評価法(mCRM)によってガイドした。用量漸増を、イヌにおける3mg/kgの重篤な毒性が発現しない最大投与量(HNSTD)に基づいて、15mg/日での化合物2の開始用量で進行性固形腫瘍またはリンパ腫を有する対象において開始した。
【0082】
用量制限毒性の定義 DLTを、各用量レベルコホートにおける観察期間(サイクル1)の間に発生する疾患または疾患-関連プロセスに寄与しえない任意の治療下で発現した有害事象(TEAE)として定義したところ、NCI CTCAEバージョン4に従うグレード3以上であった。グレード2以上の非疾患-関連の有害事象(AE)の結果として、最初の21日における化合物2の処方された用量(すなわち、16日)の少なくとも75%を完了できない対象は、DLTを有すると考えられた。
【0083】
腫瘍評価 対象が最初の9サイクルの研究に残っている間、2サイクル毎に、および次いでその後3サイクル毎(サイクルの開始3、5、7、および9、次いでサイクル12、15など)内に、腫瘍評価をベースラインで行なった。
【0084】
腫瘍再生検 化合物2への獲得耐性の見込まれる機構を探索するため、任意選択での腫瘍再生検は、標準応答判定基準によって初期の完全応答/部分応答を達成しているが、療法の間、好ましくは新しい療法を開始する前に、進行性疾患を後で発生した対象に対する化合物2治療の最終用量のあと30日内に行なった。
【0085】
TP53遺伝子型判定、対象登録および早期中断の選択肢
腫瘍TP53遺伝子型判定を、全ての登録された対象において、保管されたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)または凍結した試料を使用して行なった。TP53野生型状態の確認は、化合物2投薬の前に必要とされなかった。研究の間、化合物2が開始された後にTP53遺伝子中に非同義変異、挿入または欠失を含有することが対象に見出される事象において、治験責任医師および対象は、遺伝子型判定結果について告知され、早期に試験薬を中断するとの選択肢を与えられた。
【0086】
研究期間 治療サイクルの数は、この研究において固定されなかった。対象の同意の撤回、進行、または許容できない毒性の非存在下で、治療から臨床上の利益を継続して得る対象は、医師の判断で治療を継続した。プロトコールにextension phaseにおいても継続
的処置がなされ、処置がなされた患者のデータは、別のデータベースに収集した。
【0087】
治療群 オープンラベル、単一群での用量漸増研究において、各対象は、化合物2を28日サイクルの1から21日に経口的に1日1回受けた。
【0088】
安全性パラメータ 安全性プロファイルは、AE、身体的な検査所見、バイタルサイン測定、臨床検査測定、およびECG記録に基づいていた。少なくとも1用量の化合物2を受けた全ての対象を、安全性分析に含めた。
【0089】
腫瘍応答 応答評価を、行程スケジュールに従って、または疾患進行が疑われる場合に、行なった。X線撮影評価には、全ての影響を受けた部位のコンピュータ断層撮影法(CT)を含めた。加えて、リンパ腫を有する対象は、(18F)フッ化デオキシグルコース-ポジトロン放出断層撮影FDG-PETスキャンを受けた。腫瘍応答は、固形腫瘍を有する対象に関してRECIST1.1判定基準およびリンパ腫を有する対象に関して改正IWG判定基準に従って医師によって評価された。測定可能な腫瘍の最長径の和における最
大パーセント変化に対する記述統計値を、提供した。各対象に対するSLDにおけるスクリーニングからの最大パーセント変化のウォーターフォールプロットを、進行性固形悪性疾患およびリンパ腫を有する対象に関して提示した。加えて、FDG-PETスキャンに対する記述統計値を、改正IWG判定基準に従ってリンパ腫の対象に関して提供した。
【0090】
結果
34名の対象が第1相研究の用量漸増パートに登録され、そのうち31名の対象が用量制限毒性(DLT)に関して評価可能であった。対象は、42歳と79歳の間の範囲の年齢であり、中央値年齢は59.5歳であった。13の異なる腫瘍タイプを有する対象は、そのうち76.5%がTP53野生型であり、研究に登録され、脂肪肉腫の対象が最も頻繁(n=15;44.1%)であった。薬物を、28日サイクルのうち21日においてQDスケジュール(QD21/28)で、15mgから開始して、30、60、120および160mgから最高試験用量の240mgまでの7つの増加する用量レベルで研究した。28日サイクルにおいて毎日投与の代替スケジュール(QD28/28)における90mg用量も研究した。最大耐量(MTD)は、120mgであると決定され、QD21/28スケジュールにおいて13名の対象のうち2DLTを伴っていた。QD28/28スケジュールにおける90mgも、この投与スケジュールにおいてMTDであると決定され、9名の対象のうち1名はDLTを経験した。
【0091】
23名の対象が、この研究においてRECIST v1.1に基づく有効性に関して評価可能であった。大部分の対象(23名のうち21名)は、3名の対象において10%超腫瘍縮小を伴う、最良の腫瘍応答として安定(SD)を経験した(
図1)。多くの対象について持続性がある安定が見られ、全集団の、無増悪生存期間(PFS)の中央値は5.72カ月間であった。興味深いことに、最大の腫瘍縮小および最も持続性がある安定は、高分化型または脱分化型(WD/DD)の脂肪肉腫を有する対象に関して見られた(表2、
図2)。脂肪肉腫の対象中の3および6カ月間PFS割合は、それぞれ91.7%および76.4%であった(表2)。脂肪肉腫対象中の12カ月間PFS割合が57.3%であったとの結果にさらに注目するべきである(表2)。The European Organization of Research and Treatment of Cancer(EORTC)は、12週間PFSが40%超であるものとしてセカンドライン軟部組織肉腫における活性剤についての判定基準を定義した。したがって、脂肪肉腫における本発明者らの有効性結果は、履歴データとの比較で有利であった。
【表2】
【0092】
因果関係が無関係の任意の治療サイクルでの任意のグレードの、治療下で発現した有害事象(TEAE)は、対象の97.1%において観察され、そのうち55.9%はグレー
ド3以上の重症度であった。因果関係が無関係の最も一般的なTEAEは、好中球減少症(17.6%)、血小板減少症(32.4%)、貧血(38.2%)、悪心(64.7%)、嘔吐(35.3%)、下痢(35.3%)、便秘(23.5)、食欲減退(50.0%)、味覚不全(20.6%)、疲労(52.9%)、呼吸困難(26.5%)、低アルブミン血症(32.4%)、末梢性浮腫(17.6%)および高血糖(29.4%)であった。最も一般的な薬物関連TEAEは、MDM2阻害剤のオンターゲットの毒性効果と一致する、血液学的なもの(血小板減少症、貧血、好中球減少症)、胃腸的なもの(悪心、嘔吐および下痢)、および疲労[Lillian L.Siuら、J Clin Oncol 32:5s、2014 (suppl; abstr 2535)およびIsabelle Ray-Coquardら、The Lancet Oncology、13(11):1133-1140 (November 2012)]であった。4週間を超える用量の中止または中断をもたらす長期の血小板減少症は、8名の対象に見られ、2名は120mg QD21/28のMTDで治療された。120mg QD21/28での13名の対象のうち9名および90mg QD28/28での9名の対象のうち6名(2種の投与スケジュールでのMTD)は、有害事象共通用語規準(CTCAE) v4.0 グレード≧3 TEAEを経験し、血小板減少症が最も顕著であった(表3)。合計6名の対象は、DLTを経験し、そのうち全てがMTD以上の用量であった(表4)。MTDでの全て3つのDLTは、開始サイクル2における1週間超の遅延をもたらす血小板減少症に起因して出現した。血液学的な悪性疾患を有する患者は、160mgを許容した。
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