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特許7192016球面リンク機構および球面リンク作動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】球面リンク機構および球面リンク作動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 21/46 20060101AFI20221212BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
F16H21/46
B25J11/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021052060
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149763
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-08-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直彦
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 賢蔵
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-147350(JP,A)
【文献】特開平11-104987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 21/46
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端側のリンクハブと、
先端側のリンクハブと、
3つ以上のリンク機構とを備え、
前記3つ以上のリンク機構は、前記基端側のリンクハブと前記先端側のリンクハブとを接続するように構成され、
前記3つ以上のリンク機構は、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を変更可能であり、
前記3つ以上のリンク機構の各々は、
基端側の端部リンク部材と、
先端側の端部リンク部材と、
中央リンク部材とを備え、
前記基端側の端部リンク部材の一方端は、第1回転軸周りに回転可能に前記基端側のリンクハブと連結されており、
前記先端側の端部リンク部材の一方端は、第2回転軸周りに回転可能に前記先端側のリンクハブと連結されており、
前記基端側の端部リンク部材の他方端は、第3回転軸周りに回転可能に前記中央リンク部材の一方端と連結されており、
前記先端側の端部リンク部材の他方端は、第4回転軸周りに回転可能に前記中央リンク部材の他方端と連結されており、
前記基端側のリンクハブの中心軸線、前記第1回転軸及び前記第3回転軸は、第1球面リンク中心点において交わっており、
前記先端側のリンクハブの中心軸線、前記第2回転軸及び前記第4回転軸は、第2球面リンク中心点において交わっており、
前記第1回転軸、前記基端側のリンクハブ、および前記基端側の端部リンク部材を含む第1回転対偶部と、前記第2回転軸、前記先端側のリンクハブ、および前記先端側の端部リンク部材を含む第2回転対偶部と、前記第3回転軸、前記中央リンク部材、および前記基端側の端部リンク部材を含む第3回転対偶部と、前記第4回転軸、前記中央リンク部材、および前記先端側の端部リンク部材を含む第4回転対偶部とのうち、少なくとも1つの回転対偶部は、前記少なくとも1つの回転対偶部における前記回転の角度を制限する角度制限機構を含む、球面リンク機構。
【請求項2】
前記少なくとも1つの回転対偶部において前記回転軸周りに回転可能に連結された一方および他方の部材の各々は、前記角度が基準角度のときに互いに接触する接触部を含み、
前記接触部が前記角度制限機構を構成している、請求項1に記載の球面リンク機構。
【請求項3】
前記少なくとも1つの回転対偶部は、前記接触時に前記接触部に加わる衝撃を緩衝する緩衝部材をさらに含む、請求項2に記載の球面リンク機構。
【請求項4】
前記角度制限機構は、前記第2回転対偶部に含まれておりかつ前記第2回転軸周りの前記回転を制限する第2角度制限機構を有し、
前記第2角度制限機構は、前記第2回転軸の延在方向から視て前記先端側のリンクハブの中心軸線と前記先端側の端部リンク部材の中心軸線とが前記第2回転軸に対して成す第2回転角度が第2角度以下となるように、前記回転を制限する、請求項1~3のいずれか1項に記載の球面リンク機構。
【請求項5】
前記角度制限機構は、前記第1回転対偶部に含まれておりかつ前記第1回転軸周りの前記回転を制限する第1角度制限機構を有し、
前記第1角度制限機構は、前記第1回転軸の延在方向から視て前記基端側のリンクハブの中心軸線と前記基端側の端部リンク部材の中心軸線とが前記第1回転軸に対して成す第1回転角度が第1角度以下となるように、前記回転を制限する、請求項1~4のいずれか1項に記載の球面リンク機構。
【請求項6】
前記角度制限機構は、前記第3回転対偶部に含まれておりかつ前記第3回転軸周りの前記回転を制限する第3角度制限機構と、前記第4回転対偶部に含まれておりかつ前記第4回転軸周りの前記回転を制限する第4角度制限機構とを有し、
前記第3角度制限機構は、前記第3回転軸の延在方向から視て前記中央リンク部材の中心軸線と前記基端側の端部リンク部材の中心軸線とが前記第3回転軸に対して成す第3回転角度が第3角度以下となるように、前記回転を制限し、
前記第4角度制限機構は、前記第4回転軸の延在方向から視て前記中央リンク部材の中心軸線と前記先端側の端部リンク部材の中心軸線とが前記第4回転軸に対して成す第4回転角度が第4角度以下となるように、前記回転を制限する、請求項1~5のいずれか1項に記載の球面リンク機構。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の前記球面リンク機構と、
少なくとも2つ以上の駆動源とを備え、
前記少なくとも2つ以上の駆動源の各々は、前記3つ以上のリンク機構のうち少なくとも2つのリンク機構の各々を駆動するように設けられており、
前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの位置及び姿勢は、前記少なくとも2つ以上の駆動源により決定される、球面リンク作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球面リンク機構および球面リンク作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2015-194207号公報)には、パラレルリンク機構が記載されている。特許文献1に記載のパラレルリンク機構は、複数の回転対偶部を有している。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載のパラレルリンク機構基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、基端側の端部リンク部材と、先端側の端部リンク部材と、中央リンク部材とを有している。基端側の端部リンク部材の一方端は、基端側のリンクハブに回転可能に連結されている。先端側の端部リンク部材の一方端は、先端リンクハブに回転可能に連結されている。中央リンク部材の一方端は基端側の端部リンク部材の他方端に回転可能に連結されており、中央リンク部材の他方端は先端側の端部リンク部材の他方端に回転可能に連結されている。
【0004】
先端リンクハブは、球面リンク中心点を中心とする球面上を移動する。特許文献1のパラレルリンク機構は、球面リンク機構である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-194207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の球面リンク機構では、各回転対偶部のうち回転軸周りを回転可能に設けられている一方の部材が他方の部材に対して成す角度が特定の角度になると、該回転対偶部の姿勢が制御できなくなる。具体的には、各回転対偶部が自由に回転できなくなり、球面リンク機構の姿勢が本来想定されていない状態で固定される。以下では、このような状態を、特異点とよぶ。そのため、特許文献1に記載の球面リンク機構では、球面リンク機構が特異点に入らないように、各回転対偶部の動作範囲(例えば角度)が制御される。
【0007】
しかし、このような制御がなされていたとしても、例えば高速動作中の振動、またはエンドエフェクタを取り付けた際の慣性モーメントの増加により、各回転対偶部が目標値を超えて動いてしまう現象(オーバーシュート)が発生し、球面リンク機構が特異点に入るおそれがある。
【0008】
本発明の主たる目的は、構造的に特異点に入ることが抑制されている球面リンク機構および球面リンク作動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る球面リンク機構は、基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、複数のリンク機構とを備える。複数のリンク機構の各々は、基端側の端部リンク部材と、先端側の端部リンク部材と、中央リンク部材とを備える。基端側の端部リンク部材の一方端は、第1回転軸周りに回転可能に基端側のリンクハブと連結されている。先端側の端部リンク部材の一方端は、第2回転軸周りに回転可能に先端側のリンクハブと連結されている。基端側の端部リンク部材の他方端は、第3回転軸周りに回転可能に中央リンク部材の一方端と連結されている。先端側の端部リンク部材の他方端は、第4回転軸周りに回転可能に中央リンク部材の他方端と連結されている。基端側のリンクハブの中心軸線、第1回転軸及び第3回転軸は、第1球面リンク中心点において交わっている。先端側のリンクハブの中心軸線、第2回転軸及び第4回転軸は、第2球面リンク中心点において交わっている。第1回転軸、基端側のリンクハブ、および基端側の端部リンク部材を含む第1回転対偶部と、第2回転軸、先端側のリンクハブ、および先端側の端部リンク部材を含む第2回転対偶部と、第3回転軸、中央リンク部材、および基端側の端部リンク部材を含む第3回転対偶部と、第4回転軸、中央リンク部材、および先端側の端部リンク部材を含む第4回転対偶部とのうち、少なくとも1つの回転対偶部は、少なくとも1つの回転対偶部における回転の角度を制限する角度制限機構を含む。
【0010】
上記球面リンク機構において、少なくとも1つの回転対偶部において回転軸周りに回転可能に連結された一方および他方の部材の各々は、角度が基準角度のときに互いに接触する接触部を含む。この接触部が角度制限機構を構成している。
【0011】
上記球面リンク機構において、少なくとも1つの回転対偶部は、接触時に接触部に加わる衝撃を緩衝する緩衝部材をさらに含んでいてもよい。
【0012】
上記球面リンク機構において、角度制限機構は、第2回転対偶部に含まれておりかつ第2回転軸周りの回転を制限する第2角度制限機構を有している。第2角度制限機構は、第2回転軸の延在方向から視て先端側のリンクハブの中心軸線と先端側の端部リンク部材の中心軸線とが第2回転軸に対して成す第2回転角度が第2角度以下となるように、回転を制限する。
【0013】
上記球面リンク機構において、角度制限機構は、第1回転対偶部に含まれておりかつ第1回転軸周りの回転を制限する第1角度制限機構を有している。第1角度制限機構は、第1回転軸の延在方向から視て基端側のリンクハブの中心軸線と基端側の端部リンク部材の中心軸線とが第1回転軸に対して成す第1回転角度が第1角度以下となるように、回転を制限する。
【0014】
上記球面リンク機構において、角度制限機構は、第3回転対偶部に含まれておりかつ第3回転軸周りの回転を制限する第3角度制限機構と、第4回転対偶部に含まれておりかつ第4回転軸周りの回転を制限する第4角度制限機構とを有している。第3角度制限機構は、第3回転軸の延在方向から視て中央リンク部材の中心軸線と基端側の端部リンク部材の中心軸線とが第3回転軸に対して成す第3回転角度が第3角度以下となるように、回転を制限する。第4角度制限機構は、第4回転軸の延在方向から視て中央リンク部材の中心軸線と先端側の端部リンク部材の中心軸線とが第4回転軸に対して成す第4回転角度が第4角度以下となるように、回転を制限する。
【0015】
本発明に係る球面リンク作動装置は、上記球面リンク機構と、少なくとも2つ以上の駆動源とを備える。少なくとも2つ以上の駆動源の各々は、3つ以上のリンク機構のうち少なくとも2つのリンク機構の各々を駆動するように設けられている。基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの位置及び姿勢は、少なくとも2つ以上の駆動源により決定される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構造的に特異点に入ることが抑制されている球面リンク機構および球面リンク作動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1に係る球面リンク機構を示す正面図である。
図2】実施の形態1に係る球面リンク機構を示す断面図である。
図3】実施の形態1に係る球面リンク機構の第1状態を示す部分拡大断面図である。
図4】実施の形態1に係る球面リンク機構の第2状態を示す部分拡大断面図である。
図5】実施の形態1に係る球面リンク作動装置を示す正面図である。
図6】実施の形態2に係る球面リンク機構の第1状態を示す部分拡大断面図である。
図7】実施の形態2に係る球面リンク機構の第2状態を示す部分拡大断面図である。
図8】実施の形態3に係る球面リンク機構を示す斜視図である。
図9】実施の形態3に係る球面リンク機構の第2状態を示す部分拡大図である。
図10】実施の形態3に係る球面リンク作動装置を示す正面図である。
図11】実施の形態4に係る球面リンク機構の第1状態を示す部分拡大図である。
図12】実施の形態4に係る球面リンク機構の第2状態を示す部分拡大図である。
図13】実施の形態5に係る球面リンク機構の第1状態を示す部分拡大図である。
図14】実施の形態5に係る球面リンク機構の第2状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0019】
(実施の形態1)
<球面リンク機構100の構成>
図1および図2に示されるように、球面リンク機構100は、基端側のリンクハブ31と、先端側のリンクハブ32と、複数のリンク機構とを備える。複数のリンク機構の各々は、基端側の端部リンク部材33と、先端側の端部リンク部材34と、中央リンク部材35とを備える。複数のリンク機構の数は、例えば3である。複数のリンク機構の数は、4以上であってもよい。
【0020】
基端側のリンクハブ31は、平板形状を有している平板部31Aと、平板部31Aから突出している複数の突出部31Bとを有している。複数の突出部31Bの各々は、平板部31Aに対して、先端側のリンクハブ32側に配置されている。複数の突出部31Bの各々には、貫通孔31Cが形成されている。貫通孔31Cは、第1回転軸41の回転抵抗を低減する回転抵抗低減部材33Aを有している。複数の突出部31Bの数は、複数の基端側の端部リンク部材33の数に等しい。
【0021】
先端側のリンクハブ32は、平板形状を有している平板部32Aと、平板部32Aから突出している複数の突出部32Bとを有している。複数の突出部32Bの各々は、平板部32Aに対して、先端側のリンクハブ32側に配置されている。複数の突出部32Bの各々には、貫通孔32Cが形成されている。貫通孔32Cは、第1回転軸41の回転抵抗を低減する回転抵抗低減部材34Aが挿入されている。回転抵抗低減部材34Aは貫通孔33Bを有する。複数の突出部32Bの数は、複数の先端側の端部リンク部材34の数に等しい。
【0022】
各基端側の端部リンク部材33は、互いに同等の構成を有している。基端側の端部リンク部材33の一方端は、第1回転軸41周りに回転可能に基端側のリンクハブ31と連結されている。貫通孔33Bの孔軸は、貫通孔31Cの孔軸と同軸である。基端側の端部リンク部材33は、例えば、L字形状を有している。
【0023】
第1回転軸41は、貫通孔31Cおよび該貫通孔31Cに通された回転抵抗低減部材33Aの貫通孔33Bに通されている軸部と、該軸部の両端に接続されており、かつ貫通孔31Cおよび貫通孔33Bの外側に配置されている拡径部とを含む。第1回転軸41は、基端側のリンクハブ31の突出部31Bと基端側の端部リンク部材33の一方端とを連結している。第1回転軸41は、貫通孔33Bおよび貫通孔31Cの各孔軸と同軸である。
【0024】
各先端側の端部リンク部材34は、互いに同等の構成を有している。先端側の端部リンク部材34の一方端は、第2回転軸42周りに回転可能に先端側のリンクハブ32と連結されている。貫通孔34Bの孔軸は、貫通孔32Cの孔軸と同軸である。先端側の端部リンク部材34は、例えば、L字形状を有している。
【0025】
第2回転軸42は、貫通孔32Cおよび該貫通孔32Cに通された回転抵抗低減部材34Aの貫通孔34Bに通されている軸部と、該軸部の両端に接続されており、かつ貫通孔32Cおよび貫通孔34Bの外側に配置されている拡径部とを含む。第2回転軸42は、先端側のリンクハブ32の突出部32Bと先端側の端部リンク部材34の一方端とを連結している。第2回転軸42は、貫通孔34Bおよび貫通孔32Cの各孔軸と同軸である。
【0026】
各中央リンク部材35は、互いに同等の構成を有している。中央リンク部材35の一方端は、第3回転軸43周りに回転可能に基端側の端部リンク部材33の他方端と連結されている。中央リンク部材35の一方端には、貫通孔35Aが形成されている。基端側の端部リンク部材33の他方端は、中央リンク部材35の一方端に形成された貫通孔35Aに通されている挿通部(図示しない)を有している。当該挿通部には、貫通孔が形成されている。挿通部の平面形状は、円環形状である。貫通孔35Aの孔軸は、貫通孔35Aに通されている上記挿通部に形成された貫通孔の孔軸と同軸である。
【0027】
中央リンク部材35の他方端は、第4回転軸44周りに回転可能に先端側の端部リンク部材34の他方端と連結されている。中央リンク部材35の他方端には、貫通孔35Bが形成されている。先端側の端部リンク部材34の他方端は、中央リンク部材35の他方端に形成された貫通孔35Bに通されている挿通部(図示しない)を有している。当該挿通部には、貫通孔が形成されている。挿通部の平面形状は、円環形状である。貫通孔35Bの孔軸は、貫通孔35Bに通されている上記挿通部に形成された貫通孔の孔軸と同軸である。中央リンク部材35は、例えば、L字形状を有している。
【0028】
第3回転軸43は、基端側の端部リンク部材33の他方端に形成された貫通孔および貫通孔35Aに通されている軸部と、該軸部の両端に接続されており、かつ当該2つの貫通孔の外側に配置されている拡径部とを含む。第3回転軸43は、基端側の端部リンク部材33の他方端と中央リンク部材35の一方端とを連結している。第3回転軸43は、基端側の端部リンク部材33の他方端に形成された貫通孔および貫通孔35Aの各孔軸と同軸である。
【0029】
第4回転軸44は、先端側の端部リンク部材34の他方端に形成された貫通孔および貫通孔35Bに通されている軸部と、該軸部の両端に接続されており、かつ当該2つの貫通孔の外側に配置されている拡径部とを含む。第4回転軸44は、先端側の端部リンク部材34の他方端と中央リンク部材35の他方端とを連結している。第4回転軸44は、先端側の端部リンク部材34の他方端に形成された貫通孔および貫通孔35Bの各孔軸と同軸である。
【0030】
言い換えると、球面リンク機構100は、基端側のリンクハブ31と先端側のリンクハブ32との間を連結する複数のリンク機構を備え、各リンク機構は、1つの基端側の端部リンク部材33、1つの中央リンク部材35、および1つの先端側の端部リンク部材34を含む。
【0031】
基端側のリンクハブ31の中心軸線、第1回転軸41の中心軸線、および第3回転軸43の中心軸線の各々は、1点で交わっている。この1点を、第1球面リンク中心点という。先端側のリンクハブ32の中心軸線、第2回転軸42の中心軸線、および第4回転軸44の中心軸線の各々は、1点で交わっている。この1点を、第2球面リンク中心点という。すなわち、球面リンク機構100は、2つの球面リンク機構が組み合わされた構造を有している。その結果、先端側のリンクハブ32の第2球面リンク中心点は、基端側の端部リンク部材33を第1回転軸41周りに回転させることにより、第1球面リンク中心点を中心とする球面(以下「第1移動球面」ということがある)上を移動することになる。
【0032】
基端側のリンクハブ31の突出部31B、基端側の端部リンク部材33の一方端、および第1回転軸41は、第1回転対偶部11を構成している。先端側のリンクハブ32の突出部32B、先端側の端部リンク部材34の一方端、および第2回転軸42は、第2回転対偶部12を構成している。基端側の端部リンク部材33の他方端、中央リンク部材35の一方端、および第3回転軸43は、第3回転対偶部13を構成している。先端側の端部リンク部材34の他方端、中央リンク部材35の他方端、および第4回転軸44は、第4回転対偶部14を構成している。
【0033】
球面リンク機構100では、第1回転対偶部11は第2回転対偶部12と同様の構造を有している。第3回転対偶部13は第4回転対偶部14と同様の構造を有している。
【0034】
図2に示されるように、球面リンク機構100では、第1回転対偶部11が、第1回転対偶部11における第1回転軸41周りの回転の角度を制限する第1角度制限機構51を含む。さらに球面リンク機構100では、第2回転対偶部12が、第2回転対偶部12における第2回転軸42周りの回転角度を制限する第2角度制限機構52を含む。
【0035】
第1角度制限機構51は、基端側のリンクハブ31の突出部31Bの一部により構成されている第1部分51Aと、基端側の端部リンク部材33の一方端の一部により構成されている第2部分51Bとを含む。第1角度制限機構51は、第2部分51Bが第1部分51Aと接触していない状態と、第2部分51Bが第1部分51Aと接触している状態とを切り替えるように設けられている。
【0036】
第2角度制限機構52は、先端側のリンクハブ32の突出部32Bの一部により構成されている第3部分52Aと、先端側の端部リンク部材34の一方端の一部により構成されている第4部分52Bとを含む。第2角度制限機構52は、第4部分52Bが第3部分52Aと接触していない状態(第1状態)と、第4部分52Bが第3部分52Aと接触している状態(第2状態)とを切り替えるように設けられている。
【0037】
次に、図3および図4を参照して、第2角度制限機構52の構造について説明する。球面リンク機構100では、第1角度制限機構51が、第2角度制限機構52と同様の構造を有している。具体的には、第1角度制限機構51および第2角度制限機構52は、互いに対称の関係にある。そのため、以下では、第2角度制限機構52を説明し、第1角度制限機構51の説明は省略する。
【0038】
図3は、第2角度制限機構52が第2回転対偶部12における第2回転軸42周りの回転の角度を制限していない第1状態を示す部分拡大断面図である。図4は、第2角度制限機構52が第2回転対偶部12における第2回転軸42周りの回転の角度を制限している第2状態を示す部分拡大断面図である。
【0039】
図3および図4に示されるように、第2回転対偶部12において、第2回転軸42周りに回転する一方の部材としての先端側のリンクハブ32の貫通孔32C、および他方の部材としての先端側の端部リンク部材34の貫通孔34Bには、第2回転軸42の上記軸部が通されている。
【0040】
図3および図4に示されるように、先端側のリンクハブ32の突出部32Bは、外周面32Dを有している。外周面32Dは、第2回転軸42の中心軸線O2に対する径方向の距離が相対的に短い第1外周面部32D1と、第2回転軸42の中心軸線O2に対する径方向の距離が第1外周面部32D1よりも長い第2外周面部32D2とを有している。
【0041】
図3に示されるように、第2回転軸42の中心軸線O2に垂直な断面において、第1外周面部32D1は、先端側のリンクハブ32の中心軸線C1に沿って延びる部分32D1Aと、部分32D1Aに対して0度超え90度未満の角度で傾斜している部分32D1Bと、先端側のリンクハブ32の中心軸線C1と直交する方向に沿って延びる部分32D1Cとを有している。部分32D1Aのうち平板部31Aとは反対側に位置する端部は、部分32D1Bの一端に接続されている。部分32D1Bの他端は、部分32D1Cの一端と接続されている。部分32D1Cの他端は、第2外周面部32D2の一端に接続されている。部分32D1Cは、先端側のリンクハブ32の中心軸線C1と交差する。第1外周面部32D1の部分32D1Cおよび第2外周面部32D2は、例えば平面を成している。
【0042】
異なる観点から言えば、第2回転軸42の中心軸線O2に垂直な断面において、突出部31Bは、先端側のリンクハブ32の中心軸線C1に対して角度制限機構を形成していない側のみ面取りされている。あるいは、第2回転軸42の中心軸線O2に沿って方向から視て、先端側のリンクハブ32の中心軸線C1に対する一方の側の突出部31Bの面取り部の寸法は、先端側のリンクハブ32の中心軸線C1に対する他方の側の突出部31Bの面取り部の寸法よりも大きい。
【0043】
第2回転軸42の中心軸線O2と、第1外周面部32D1の部分32D1A、部分32D1B、および部分32D1Cの各々との最短距離は、例えば互いに等しい。第2回転軸42の中心軸線O2と、第1外周面部32D1の部分32D1A、部分32D1B、および部分32D1Cの各々との最短距離は、第2回転軸42の中心軸線O2と第2外周面部32D2とを結んだ距離よりも短い。
【0044】
図3に示されるように、先端側の端部リンク部材34は、第1面34Cと、第2回転軸42の中心軸線O2に対する径方向において、第1面34Cよりも第2回転軸42側に位置する第2面34Dとを有している。
【0045】
図3に示されるように、第1状態では、先端側の端部リンク部材34の第2面34Dは、先端側のリンクハブ32の突出部32Bの第2外周面部32D2と接触しない。第1状態では、第1面34Cおよび第2面34Dは、第1外周面部32D1および第2外周面部32D2の少なくとも一部と上記径方向に間隔を空けて配置されている。つまり、第1状態では、第2角度制限機構52は、第2回転対偶部12における第2回転軸42周りの回転を妨げない。例えば、先端側の端部リンク部材34は、先端側のリンクハブ32に対し、第2回転軸42の中心軸線O2に対する周方向である第1方向Aまたはその逆方向である第2方向Bに回転可能である。
【0046】
図4に示されるように、第2状態では、52Bは、52Aと接触する。具体的には、先端側の端部リンク部材34の第2面34Dは、先端側のリンクハブ32の突出部32Bの第2外周面部32D2と接触する。言い換えると、突出部32Bの第2外周面部32D2および先端側の端部リンク部材34の第2面34Dは、第2回転角度θ2が基準角度のときに互いに接触する接触部を成している。
【0047】
これにより、第2状態では、第2角度制限機構52が、第2回転対偶部12における第2回転軸42周りの回転を制限する。例えば、先端側の端部リンク部材34は、先端側のリンクハブ32に対し、第1方向Aにのみ回転可能であり、その逆方向である第2方向Bには回転不能である。
【0048】
図3および図4を参照して、先端側のリンクハブ32の中心軸線C1と先端側の端部リンク部材34の軸線C2とが成す角度であって、中心軸線C1に対して部分32D1B側に形成される角度を、第2回転角度θ2とよぶ。先端側の端部リンク部材34の軸線C2は、第2回転軸42の中心軸線O2と、第4回転軸44の中心軸線を中心軸線O2と垂直かつ中心軸線C1を通る面に射影した直線の第2回転軸42側の一端とを結ぶ。第2角度制限機構52により、第2回転角度θ2は、球面リンク機構100が特異点に入らない角度範囲(可動角度の範囲)内に収まるように設けられている。
【0049】
第2状態での第2回転角度θ2を、第2角度(基準角度)とよぶ。基準角度は、第2回転対偶部12が特異点に入らないように、可動角度の範囲内から適宜設定される。可動角度は、球面リンク機構100の構成に応じて適宜設定される。
【0050】
球面リンク機構100の第2回転対偶部が第2角度制限機構52を含まない構成は、例えば、第2回転角度θ2が180度より大きくなったときに特異点に入る構造を有している。この場合、図4に示されるように、第2回転角度θ2の基準角度は、例えば180度とされる。球面リンク機構100の第2角度制限機構52は、第2回転角度θ2が180度より大きくならないように設けられている。第2角度制限機構52は、第2回転角度θ2が180度より小さいときに、第1方向Aおよび第2方向Bの回転を制限しないように設けられている。
【0051】
上述のように、第1角度制限機構51は、第2角度制限機構52と同様の構成を有している。図示しないが、基端側のリンクハブ31の中心軸線と基端側の端部リンク部材33の軸線とが第1回転軸41の中心軸線に対して成す角度を、第1回転角度とよぶ。基端側の端部リンク部材33の軸線は、第1回転軸41の中心軸線と第3回転軸43の中心軸線とを結ぶ。第1角度制限機構51が第1回転対偶部11における第1回転軸41周りの回転の角度を制限している状態での、第1回転角度を、第1角度(基準角度)とよぶ。該基準角度は、第1回転対偶部11が特異点に入らないように、可動角度の範囲内から適宜設定される。第1角度制限機構51は、第1回転角度が基準角度以下となるように、第1回転軸41周りの回転を制限する。第1回転角度の基準角度は、例えば180度とされる。
【0052】
<球面リンク作動装置200の構成>
図5に示されるように、実施の形態1に係る球面リンク作動装置200は、球面リンク機構100と、複数の駆動源60とを備える。複数の駆動源60の各々は、例えば、モータである。複数の駆動源60の数は、例えば、複数の基端側の端部リンク部材33の数に等しい。複数の駆動源60の各々は、基端側のリンクハブ31に取り付けられている。各駆動源60は、各基端側の端部リンク部材33を、第1回転軸41周りに回転させる。これにより、先端側のリンクハブ32の基端側のリンクハブ31に対する位置及び姿勢を変化させることができる。
【0053】
<球面リンク機構100の効果>
次に、球面リンク機構100の効果を、比較例に係る球面リンク機構と対比に基づいて説明する。
【0054】
まず、比較例に係る球面リンク機構は、第1角度制限機構51および第2角度制限機構52を備えていない点を除き、球面リンク機構100と同様の構成を備えている。
【0055】
このような比較例に係る球面リンク機構は、構造的に特異点に入ることが抑制されていない。そのため、比較例に係る球面リンク機構は、例えば高速動作中の振動またはエンドエフェクタを取り付けた際の慣性モーメントの増加により、実際の位置が目標値を超えてしまう現象(オーバーシュート)が発生して、特異点に入るおそれがある。球面リンク機構が特異点に入ると、各回転対偶部を構成する各部材には、過度の負荷がかかる。
【0056】
これに対し、球面リンク機構100は、第1角度制限機構51および第2角度制限機構52を備えているため、例えば高速動作中の振動またはエンドエフェクタを取り付けた際の慣性モーメントの増加によっても、上記角度が基準角度以上とならない。つまり、球面リンク機構100は、第1角度制限機構51および第2角度制限機構52を備えているため、構造的に特異点に入ることが抑制されている。その結果、球面リンク機構100の第1回転対偶部11および第2回転対偶部12を構成する各部材には、特異点に入ることに伴う過度の負荷がかからない。
【0057】
また、球面リンク機構100は、第2角度制限機構52を備えている。球面リンク機構100の動作時には、最も先端側に配置される第2回転対偶部12は、それよりも基端側に配置される第3回転対偶部13および第4回転偶部よりも、先に特異点に入りやすい。球面リンク機構100では、第2角度制限機構52を備えず第1角度制限機構51のみを備える球面リンク機構、および後述する第3角度制限機構53および第4角度制限機構54のみを備える実施の形態3に係る球面リンク機構101と比べて、特異点に入ることがより直接的に抑制されている。
【0058】
さらに、球面リンク機構100は、第1角度制限機構51を備えている。例えば、基端側のリンクハブ31が指元側の自由端とされ、先端側のリンクハブ32が指先側の自由端とされる場合、基端側のリンクハブ31が固定端とされる場合と比べて、第1回転対偶部11においてもオーバーシュートが発生しやすい。球面リンク機構100は、第1角度制限機構51および第2角度制限機構52を備えるため、第1回転対偶部11および第2回転対偶部12の各々において特異点にはいることを防止している。そのため、球面リンク機構100は、第2角度制限機構52のみを備える球面リンク機構と比べて、基端および先端が共に自由端となる継手等に使用される球面リンク機構に好適である。
【0059】
球面リンク機構100において、第2角度制限機構52は、第2回転角度θ2が基準角度のときにのみ、先端側のリンクハブ32の第2外周面部32D2と先端側の端部リンク部材34の第2面34Dとが接触する。第2回転角度θ2が基準角度未満のときには、先端側のリンクハブ32の第2外周面部32D2と先端側の端部リンク部材34の第2面34Dとは接触しない。そのため、第1角度制限機構51および第2角度制限機構52の各々は、球面リンク機構100の第1回転対偶部11および第2回転対偶部12の各可動角度内での動作を妨げない。
【0060】
球面リンク機構100では、第1回転対偶部11は第2回転対偶部12と同様の構造を有し、かつ第3回転対偶部13は第4回転対偶部14と同様の構造を有している。基端側の端部リンク部材33は、先端側の端部リンク部材34と同様の構造を有している。第1回転軸41は、第2回転軸42と同様の構造を有している。第3回転軸43は、第4回転軸44と同様の構造を有している。このため、球面リンク機構100の製造コストは、第1回転対偶部11が第2回転対偶部12と異なる構造を有し、かつ第3回転対偶部13が第4回転対偶部14と異なる構造を有している場合と比べて、低い。
【0061】
<変形例>
実施の形態1に係る球面リンク機構は、少なくとも第2角度制限機構52を備えていればよい。上述のように、最も先端側に配置される第2回転対偶部12は、それよりも基端側に配置される第3回転対偶部13および第4回転偶部よりも、先に特異点に入りやすい。そのため、このような変形例に係る球面リンク機構では、第2角度制限機構52を備えず第1角度制限機構51のみを備える球面リンク機構、および後述する第3角度制限機構53および第4角度制限機構54のみを備える実施の形態3に係る球面リンク機構101と比べて、特異点に入ることがより直接的に抑制されている。また、第2回転対偶部12が特異点に入る角度は、第3回転対偶部及び第4回転対偶部が特異点に入る角度より計算により求めやすい。そのため、上述した球面リンク機構100および本変形例に係る球面リンク機構は、比較的容易に設計され得る。
【0062】
実施の形態1に係る球面リンク機構の第3回転対偶部13は、後述する第3角度制限機構53を含んでいてもよい。また、第4回転対偶部14は、第4角度制限機構54をさらに含んでいてもよい。
【0063】
また、実施の形態1に係る球面リンク作動装置では、各駆動源60が、先端側の端部リンク部材34を、第2回転軸42周りに回転させてもよい。これにより、先端側のリンクハブ32に対する基端側のリンクハブ31の位置及び姿勢を変化させることができる。
【0064】
複数の駆動源60の数は、2つ以上であればよい。複数の駆動源60の数は、複数のリンク機構の数よりも少なくてもよい。例えば、複数のリンク機構の数が3であるとき、このうちの2つのリンク機構の各々を駆動する2つの駆動源60を備え、残り1つのリンク機構は駆動源に接続されていなくてもよい。つまり、実施の形態1に係る球面リンク作動装置では、基端側のリンクハブ31及び先端側のリンクハブ32の少なくとも一方の位置及び姿勢が、少なくとも2つの駆動源60により決定されていればよい。
【0065】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る球面リンク機構の第1状態を示す部分拡大断面図である。図7は、実施の形態2に係る球面リンク機構の第2状態を示す部分拡大断面図である。
【0066】
図6および図7に示されるように、実施の形態2に係る球面リンク機構は、実施の形態1に係る球面リンク機構100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、第2回転対偶部12が緩衝部材70をさらに含む点で、球面リンク機構100とは異なる。
【0067】
緩衝部材70は、第2角度制限機構52の第4部分52Bが第3部分52Aに接触する時に、第3部分52Aおよび第4部分52Bに加わる衝撃を緩衝する。緩衝部材70は、例えばゴムからなるシート部材である。なお、緩衝部材70は、例えば任意の弾性体であればよく、例えばバネであってもよい。
【0068】
図6および図7に示されるように、緩衝部材70は、例えば第4部分52Bとしての第2面34Dに固定されている。
【0069】
図6に示されるように、第1状態では、緩衝部材70は、第1外周面部32D1および第2外周面部32D2の少なくとも一部と上記径方向に間隔を空けて配置されている。つまり、第1状態では、緩衝部材70は、第2回転対偶部12における第2回転軸42周りの回転を妨げない。
【0070】
図7に示されるように、第2状態では、緩衝部材70は、第3部分52Aとしての第2外周面部32D2に接触する。緩衝部材70は、例えば第2外周面部32D2と面接触する。
【0071】
なお、緩衝部材70は、例えば52Aとしての第2外周面部32D2に固定されていてもよい。この場合、第1状態では、緩衝部材70は、第1面34Cおよび第2面34Dの少なくとも一部と上記径方向に間隔を空けて配置されている。第2状態では、緩衝部材70は、52Bとしての第2面34Dに接触する。
【0072】
実施の形態2に係る球面リンク機構では、第2回転対偶部12が緩衝部材70をさらに含むため、上記接触時に第2角度制限機構52に加わる衝撃が低減される。その結果、実施の形態2に係る球面リンク機構では、第2角度制限機構52が破壊されにくい。
【0073】
好ましくは、第1回転対偶部11も、緩衝部材70をさらに含む。この場合、基端側のリンクハブ31と基端側の端部リンク部材33とが接触する時に第1角度制限機構51に加わる衝撃が低減される。
【0074】
実施の形態2に係る球面リンク作動装置(図示しない)は、実施の形態2に係る球面リンク機構と、複数の駆動源(図示しない)とを備える。複数の駆動源は、実施の形態1に係る球面リンク作動装置200における複数の駆動源60と同様の構成を有している。
【0075】
なお、実施の形態2に係る球面リンク機構も、実施の形態1に係る球面リンク機構100と同様に変形され得る。
【0076】
(実施の形態3)
図8および図9に示されるように、実施の形態3に係る球面リンク機構101は、実施の形態1に係る球面リンク機構100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、第3回転対偶部13および第4回転対偶部14の各々が角度制限機構を含む点で、球面リンク機構100とは異なる。
【0077】
第3回転対偶部13は、第3回転軸43周りの回転を制限する第3角度制限機構53を含む。第4回転対偶部14は、第4回転軸44周りの回転を制限する第4角度制限機構54を含む。第4角度制限機構54は、第3角度制限機構53と同様の構造を有している。第3角度制限機構53および第4角度制限機構54は、互いに対称の関係にある。そのため、以下では、第3角度制限機構53を説明し、第4角度制限機構54の説明は省略する。
【0078】
図9は、第3角度制限機構53が第3回転対偶部13における第3回転軸43周りの回転の角度を制限している第2状態を示す部分拡大図である。
【0079】
図9に示されるように、基端側の端部リンク部材33の他方端には、貫通孔33Bが形成されている。中央リンク部材35の一方端には、貫通孔35Aが形成されている。貫通孔35Aの孔軸は、貫通孔33Bの孔軸と同軸である。貫通孔33Bおよび貫通孔35Aの各々には、第3回転軸43がその中心軸周りに回転可能に連結されている。
【0080】
図9に示されるように、中央リンク部材35の一方端には、第3回転軸43に対する径方向において貫通孔35Aよりも外側に配置されており、かつ貫通孔35Aが開口している面に対して突出している突出部35Cが形成されている。
【0081】
第3回転軸43は、貫通孔33Bと貫通孔35Aに通されている軸部と、該軸部の両端に接続されており、かつ貫通孔33Bおよび貫通孔35Aの外側に配置されている拡径部とを含む。第3回転軸43は、基端側の端部リンク部材33の他方端と中央リンク部材35の一方端とを回転可能に連結している。第1回転軸41は、貫通孔33Bおよび貫通孔35Aの各孔軸と同軸である。
【0082】
第3回転対偶部13において、第3回転軸43周りに回転する一方の部材としての基端側の端部リンク部材33の貫通孔33B、および他方の部材としての中央リンク部材35の貫通孔35Aには、第3回転軸43の上記軸部が通されている。
【0083】
第3角度制限機構53は、基端側の端部リンク部材33が中央リンク部材35の突出部35Cと接触していない状態と、基端側の端部リンク部材33が中央リンク部材35の突出部35Cと接触している状態ととを切り替えるように設けられている。基端側の端部リンク部材33および中央リンク部材35の突出部35Cの各々は、第3角度制限機構53が第3回転対偶部13における第3回転軸43周りの回転の角度を制限している状態において、互いに接触する接触部を成している。
【0084】
図9を参照して、基端側の端部リンク部材33の軸線C3と中央リンク部材35の軸線C4とが第3回転軸43の中心軸線O3に対して成す角度であって、軸線C3に対して突出部35Cとは反対側に形成される角度を、第3回転角度θ3とよぶ。基端側の端部リンク部材33の軸線C3は、第3回転軸43の中心軸線O3と、第1回転軸41の中心軸線を中心軸線O3に垂直な基端側の端部リンク部材33の内側面上に射影した直線の第3回転軸43側の一端とを結ぶ。中央リンク部材35の軸線C4は、第3回転軸43の中心軸線と第4回転軸44の中心軸線とが通る面と、中央リンク部材35の第3回転軸43の中心軸線と垂直な内側面との交線である。第3角度制限機構53により、第3回転角度θ3は、球面リンク機構が特異点に入らない角度範囲(可動角度の範囲)内に収まるように設けられている。
【0085】
第3角度制限機構53が第3回転対偶部13における第3回転軸43周りの回転の角度を制限している状態での第3回転角度θ3を、第3角度(基準角度)とよぶ。基準角度は、第3回転対偶部13が特異点に入らないように、可動角度の範囲内から適宜設定される。可動角度は、球面リンク機構101の構成に応じて適宜設定される。
【0086】
第3角度制限機構53は、第3回転角度θ3が基準角度よりより大きくならないように設けられている。第3角度制限機構53は、第3回転角度θ3が基準角度より小さいときに、第3回転軸43周りの回転を制限しないように設けられている。第3回転角度θ3の基準角度は、例えば120度とされる。
【0087】
球面リンク機構101は、第3角度制限機構53および第4角度制限機構54を同時に備えている。これにより、例えば第3角度制限機構53および第4角度制限機構54の各々が同時に作用した場合、すなわち第3角度制限機構53の接触部が互いに接触しかつ第4角度制限機構54の接触部が互いに接触した場合、各接触部に加えられる荷重(負荷)は分散され得る。その結果、第3角度制限機構53および第4角度制限機構54を構成する部材の耐久性が向上する。
【0088】
第3角度制限機構53および第4角度制限機構54は、互いに対称の関係にある。中央リンク部材35の他方端にも、第4回転軸44が通されている貫通孔と、第4回転軸44に対する径方向において当該貫通孔よりも外側に配置されており、かつ当該貫通孔が開口している面に対して突出している突出部35Cが形成されている。つまり、中央リンク部材35の一方端および他方端は、互いに対称の関係にある。このような中央リンク部材35は、一方端および他方端が互いに非対称の関係にある中央リンク部材と比べて、容易に加工され得る。
【0089】
第3回転対偶部13および第4回転対偶部14の少なくともいずれかは、実施の形態2に係る球面リンク機構と同様に、接触時に基端側の端部リンク部材33および中央リンク部材35の突出部35Cの各々に加わる衝撃を緩衝する緩衝部材をさらに含んでいてもよい。例えば、緩衝部材は、突出部35Cに固定されている。
【0090】
<球面リンク作動装置201の構成>
図10に示されるように、実施の形態3に係る球面リンク作動装置201は、球面リンク機構101と、複数の駆動源60とを備える。複数の駆動源60の各々は、実施の形態1に係る球面リンク作動装置200の各駆動源60と同様の構成を有している。
【0091】
<変形例>
実施の形態3に係る球面リンク機構101も、実施の形態1に係る球面リンク機構100と同様に変形され得る。
【0092】
実施の形態3に係る球面リンク機構は、第3角度制限機構53および第4角度制限機構54の一方のみを備えていてもよい。実施の形態3に係る球面リンク機構は、図1図4に示される第1角度制限機構51および第2角度制限機構52の少なくともいずれかをさらに備えていてもよい。
【0093】
(実施の形態4)
図11は、実施の形態4に係る球面リンク機構の第1状態を示す部分拡大断面図である。図12は、実施の形態4に係る球面リンク機構の第2状態を示す部分拡大断面図である。
【0094】
図11および図12に示されるように、実施の形態4に係る球面リンク機構は、実施の形態1に係る球面リンク機構100と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、球面リンク機構100とは第2角度制限機構52の接触部の構造が異なる。
【0095】
先端側のリンクハブ32の突出部32Bは、先端側のリンクハブ32の中心軸線C1に対して0度より大きく90度より小さい角度を成すように傾斜しており、かつ第2回転軸42側を向いている傾斜面32Eを有している。傾斜面32Eは、第2回転軸42の中心軸線O2に対する径方向において、突出部32Bに形成されておりかつ第2回転軸42が通されている貫通孔(図示しない)よりも外側に配置されている。
【0096】
図11および図12に示されるように、先端側の端部リンク部材34の一方端には、貫通孔34Fが形成されている。先端側の端部リンク部材34の一方端は、先端側の端部リンク部材34の軸線C2に沿って延びる第3面34Gと、第3面34Gに対して0度超え90度未満の角度で傾斜している第4面34Hとを有している。
【0097】
第2角度制限機構52は、先端側のリンクハブ32の突出部32Bの傾斜面32Eにより構成されている第3部分52Aと、先端側の端部リンク部材34の一方端の第4面34Hにより構成されている第4部分52Bとを含む。
【0098】
図11に示されるように、第1状態では、先端側の端部リンク部材34の第3面34Gおよび第4面34Hの各々は、先端側のリンクハブ32の突出部32Bの傾斜面32Eと接触しない。第1状態では、第3面34Gおよび第4面34Hの各々は、傾斜面32Eと上記径方向に間隔を空けて配置されている。第1状態では、第2角度制限機構52は、第2回転対偶部12における第2回転軸42周りの回転を妨げない。
【0099】
図11および図12に示されるように、第2状態では、第4面34Hは、傾斜面32Eと接触する。言い換えると、突出部32Bの傾斜面32Eおよび先端側の端部リンク部材34の第4面34Hの各々は、第2回転角度θ2が基準角度のときに互いに接触する接触部を成している。球面リンク機構201での該接触部は、第2回転軸42に対して先端側のリンクハブ32側に配置されている。
【0100】
図11および図12に示されるように、先端側の端部リンク部材34の一方端は、例えばその軸線C2と直交する第5面34Iをさらに有している。先端側の端部リンク部材34の一方端は、例えばその軸線C2に対して線対称の構造を有している。つまり、先端側の端部リンク部材34の一方端は、例えば第3面34Gおよび第4面34Hの各々を2つ有している。なお、先端側の端部リンク部材34は、第3面34Gおよび第4面34Hの各々を少なくとも1つ有していればよい。
【0101】
実施の形態4に係る球面リンク作動装置(図示しない)は、実施の形態4に係る球面リンク機構と、複数の駆動源(図示しない)とを備える。複数の駆動源は、実施の形態1に係る球面リンク作動装置200における複数の駆動源60と同様の構成を有している。
【0102】
なお、実施の形態4に係る球面リンク機構も、実施の形態1に係る球面リンク機構100と同様に変形され得る。
【0103】
(実施の形態5)
図13は、実施の形態5に係る球面リンク機構の第1状態を示す部分拡大図である。図14は、実施の形態5に係る球面リンク機構の第2状態を示す部分拡大図である。
【0104】
図13および図14に示されるように、実施の形態5に係る球面リンク機構は、実施の形態4に係る球面リンク機構と基本的に同様の構成を備え、同様の効果を奏するが、第2回転対偶部12が緩衝部材71をさらに含む点で、実施の形態4に係る球面リンク機構とは異なる。
【0105】
緩衝部材71は、第2角度制限機構52の第4部分52Bが第3部分52Aに接触する時に、第3部分52Aおよび第4部分52Bに加わる衝撃を緩衝する。緩衝部材71は、例えば板バネである。なお、緩衝部材71は、例えば任意の弾性体であればよく、例えばゴムからなるシート部材であってもよい。
【0106】
図13および図14に示されるように、突出部32Bは、傾斜面32Eよりも先端側のリンクハブ32の平板部32A側には位置されておりかつ先端側のリンクハブ32の中心軸線C1に沿って延びる面32Fをさらに有している。
【0107】
緩衝部材71は、例えば突出部32Bに固定されている被固定部71Aと、突出部32Bに固定されておらず被固定部71Aよりも第2回転軸42側に配置されている可動部71Bとを有している。
【0108】
図13に示されるように、第1状態では、緩衝部材71の可動部71Bは、第3面34Gに接触しているが、傾斜面32Eには接触していない。つまり、第1状態では、緩衝部材71は、第2回転対偶部12における第2回転軸42周りの回転を妨げない。
【0109】
図14に示されるように、第2状態では、緩衝部材71の可動部71Bは、傾斜面32Eおよびと第4面34Hに同時に接触し、両者に挟まれている。可動部71Bは、例えば傾斜面32Eおよびと第4面34Hの各々と面接触する。
【0110】
実施の形態5に係る球面リンク機構では、第2回転対偶部12が緩衝部材71をさらに含むため、上記接触時に第2角度制限機構52に加わる衝撃が低減される。その結果、実施の形態5に係る球面リンク機構では、第2角度制限機構52が破壊されにくい。
【0111】
好ましくは、第1回転対偶部11も、緩衝部材70または緩衝部材71をさらに含む。この場合、基端側のリンクハブ31と基端側の端部リンク部材33とが接触する時に第1角度制限機構51に加わる衝撃が低減される。
【0112】
実施の形態5に係る球面リンク作動装置(図示しない)は、実施の形態5に係る球面リンク機構と、複数の駆動源(図示しない)とを備える。複数の駆動源は、実施の形態1に係る球面リンク作動装置200における複数の駆動源60と同様の構成を有している。
【0113】
なお、実施の形態5に係る球面リンク機構も、実施の形態4に係る球面リンク機構100と同様に変形され得る。
【0114】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0115】
11 第1回転対偶部、12 第2回転対偶部、13 第3回転対偶部、14 第4回転対偶部、31 基端側のリンクハブ、31A,32A 平板部、31B,32B,35C 突出部、31C,32C,33A,33B,34B,34F,35A,35B 貫通孔、32 先端側のリンクハブ、32B1A,32D1A,32D1B,32D1C 部分、32D 外周面、32D1 第1外周面部、32D2 第2外周面部、32E 傾斜面、32F 面、33 基端側の端部リンク部材、33A,34A 回転抵抗低減部材、34 先端側の端部リンク部材、34C 第1面、34D 第2面、34G 第3面、34H 第4面、34I 第5面、35 中央リンク部材、41 第1回転軸、42 第2回転軸、43 第3回転軸、44 第4回転軸、51 第1角度制限機構、51A 第1部分、51B 第2部分、52 第2角度制限機構、52A 第3部分、52B 第4部分、53 第3角度制限機構、54 第4角度制限機構、60 駆動源、70,71 緩衝部材、71A 被固定部、71B 可動部、100,101 球面リンク機構、200,201 球面リンク作動装置。
図1
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