(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】複数の流体ラインを用いて医療治療システムで使用するポンプカセットおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
A61M1/28 110
(21)【出願番号】P 2021060927
(22)【出願日】2021-03-31
(62)【分割の表示】P 2019221161の分割
【原出願日】2009-01-23
【審査請求日】2021-04-30
(32)【優先日】2008-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2008-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594010009
【氏名又は名称】デカ・プロダクツ・リミテッド・パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】マクギル、デイビッド ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】デール、ジェームズ ディ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘルモア、サイモン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ラニガン、リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】デマーズ、ジェイソン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】カーメン、ディーン
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0015493(US,A1)
【文献】特表2007-509712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用注入システムの流体ライン接続システムと併用される使い捨ての構成部品システムであって、
流体ハンドリングカセット(12または24)であって、
略平面的な本体の第1の側に凹みとして形成された少なくとも1つのポンプチャンバおよび流体のための複数の流路を有する前記略平面的な本体と、
前記本体の第1の端部に位置する溶液ラインスパイク(160)であって、少なくとも1つの流路を介して前記少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通している前記溶液ラインスパイクと、を含む前記流体ハンドリングカセットと、
前記溶液ラインスパイクを取り外し可能に覆うように構成されたスパイクキャップ(63)であって、溶液ライン(30)のコネクタ(30a)への接続のための前記スパイクからの前記キャップの取り外しを補助するために
前記流体ライン接続システムの構成要素に取り付けられたロッカーアーム(61)と係合するフランジ(63a)を含む前記スパイクキャップと、
前記溶液ライン(30)に取り外し可能に接続された溶液ラインキャップ(31)と係合するスパイクキャップ(63)の外面上の突刺(63c)であって、前記溶液ラインキャップ(31)は、前記スパイクキャップの突刺(63c)を受け取って係合するように構成された径方向の内側溝または凹部を有する、前記突刺と、を備
え、
前記ロッカーアームおよび前記溶液ラインキャップの内側溝または凹部によって、前記スパイクからの前記スパイクキャップの取り外しを補助するために、前記流体ライン接続システムの前記構成要素が前記カセットから離れるときに前記スパイクキャップが引っ張られる、構成部品システム。
【請求項2】
前記
医療用注入システムは、腹膜透析システムであり、腹膜透析治療の開始前に前記スパイクキャップが取り外される、請求項1に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項3】
前記カセットは、前記スパイクキャップの端部を受容するために前記スパイク周囲に配置されたスカート部をさらに含む、請求項1または2に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項4】
前記カセットは、前記スカート部と前記スパイクとの間
の凹部
を含む、請求項3に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項5】
前記スパイクキャップ、スカート部、および凹部が、前記スパイクキャップと前記スカート部との間に密封部の形成を促すように配置される、請求項4に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項6】
前記溶液ラインキャップの一部分は、可撓性材料またはシリコーンゴムである、請求項1に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項7】
前記フランジ
(63a)は
、非対称的である、請求項1に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項8】
前記スパイクキャップは、第2のフランジを含む、請求項1、2、6、7のいずれか一項に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項9】
前記第2のフランジは、前記溶液ラインキャップの
端部の止め具として構成されている、請求項8に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項10】
前記径方向の内側溝または凹部は、対称
的である、請求項1に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項11】
前記溶液ラインキャップの前記径方向の内側溝または凹部は、前記スパイクキャップの突刺に適合するように構成されている、請求項6に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項12】
前記スパイクの主軸は、前記流体ハンドリングカセットの前記略平面的な本体と実質的に同じ平面上にある、請求項1、2、6、7、10、
11のいずれか一項に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項13】
前記カセットは、複数のスパイク
を含む、請求項1、2、6、7、10、
11のいずれか一項に記載の使い捨ての構成部品システム。
【請求項14】
前記フランジ(63a)は、前記溶液ライン(30)に取り外し可能に接続された前記溶液ラインキャップ(31)を前記ロッカーアーム(61)の溶液ラインキャップ係合部(61a)に接触させて前記ロッカーアーム(61)を回転させることにより、前記ロッカーアーム(61)のスパイクキャップ係合部(61b)と係合するように構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の使い捨ての構成部品システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の流体ラインを用いて医療治療システムで使用するポンプカセットおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析(PD)では、患者の腹膜腔内に滅菌済水溶液(腹膜透析液または透析液)を周期的に点滴する。その溶液と生体膜を介した血流の間で拡散と浸透交換が生じる。この交換により、通常であれば腎臓から排出されるべき老廃物が透析液へと移動する。一般に、老廃物はナトリウムイオン、塩化物イオンといった溶質と、これ以外の、通常腎臓から排出される尿素、クレアチニン、水といった化合物とからなる。透析中に腹膜にかけて水を拡散する方法は限外濾過と呼ばれる。
【0003】
従来の腹膜透析液には、限外濾過によって患者から水分を除去するために必要な浸透圧を生じるのに十分な濃度を持つデキストロースが含まれる。
持続性携帯型腹膜透析(CAPD)は広く用いられているPD(腹膜透析)の形態である。患者はこのCAPDを手動で1日に約4回行う。CAPDの排液/注液手順の最中、患者はまず使用済みの腹膜透析液を自分の腹膜腔内から排液した後に、腹膜腔内に未使用の腹膜透析液を新たに注入する。通常、この排液および注液手順にかかる時間は約1時間である。
【0004】
自動腹膜透析(APD)は、やはり一般に普及している別形態の腹膜透析である。APDは、サイクラーという機械を使用して腹膜透析液を患者の腹膜腔内に注入し、貯留させ、そして腹膜腔から排液することを自動的に行う。APDは夜間の就寝中に行うことができるため、腹膜透析患者にとって特に魅力的な方法である。これによって、患者は毎日、起きている時間、働いている時間にCAPDを行う必要性から解放される。
【0005】
一般に、APDの全工程の所要時間は約2~3時間である。多くの場合、APDは腹膜腔内から使用済みの透析液を除去する排液段階より開始される。APD工程は次に、注液、貯留、排液段階と連続的に進む。一連の注液/貯留/排液をサイクルと呼ぶ。
【0006】
注液段階にて、サイクラーが、未使用の暖めた所定量の透析液を患者の腹膜腔内へと移動させる。透析液は腹膜腔内に一定時間残留(または「貯留」)する。これを貯留段階と呼ぶ。排液段階では、サイクラーが腹膜腔内から使用済みの透析液を除去する。
【0007】
所与のAPDセッション中に行う必要がある注液/貯留/排液サイクルの回数は、各患者のAPDレジメンに処方される透析液の総量に応じて異なり、また、この回数は治療処方の一部として入力されるか、サイクラーによって計算される。
【0008】
APDは種々の方法で実行でき、また実際に実行されている。
持続性周期的腹膜透析(CCPD)は、一般的に使用されている1つのAPD様式である。CCPDのそれぞれの注液/貯留/排液段階において、サイクラーが処方量の透析液を注入する。サイクラーは、処方に従った貯留期間の後に、患者からこの液体の全量を完全に排液して、腹膜腔を空にすなわち「ドライ」状態にする。一般にCCPDでは、処方された治療量を達成するのに、4~8回の注液/貯留/排液サイクルを行う。
【0009】
CCPDでは、処方された最終の注液/貯留/排液サイクル後に、サイクラーは最終注液量を注入する。この最終注液量は長時間にわたって患者の体内に貯留する。この注液量は、夕方に行う次のCCPDセッションの開始時、または昼間の液交換中に排液される。最終注液量は、サイクラーが提供する連続したCCPD注液/貯留/排液サイクルの注液量とは濃度の異なるデキストロースを含有することができる。
【0010】
間欠的腹膜透析(IPD)は別のAPD様式である。IPDは一般に、患者が急に透析治療に入る急性状況において使用される。IPDはさらに、患者が腹膜透析を必要としているが、CAPDの義務を負うことができない、あるいは自宅にて腹膜透析を行う場合にも使用できる。
【0011】
CCPDと同様に、IPDは一連の注液/貯留/排液サイクルを設けている。また、CCPDとは異なり、IPDには最終注液段階は含まれていない。IPDでは、APD治療セッションが終了し次のAPD治療セッションが開始されるまで、患者の腹膜腔内には透析液がない状態(つまり「ドライ」)に保たれる。
【0012】
タイダール透析(TPD)は別のAPD様式である。TPDは、CCPDと同様に、一連の注液/貯留/排液サイクルが含まれる。CCPDと異なり、TPDでは、各排液段階にて腹膜腔内の透析液を完全に排液してしまうことはない。その代わりに、初回注液段階にてベース量を確立し、その一部のみを初回排液段階で排液する。後続の注液/貯留/排液サイクルでは、補充量がベース量の上に注入されその後排液される。最終排液段階にて全ての透析液が腹膜腔内から除去される。
【0013】
TPDの応用形には、完全に排液を行った後、満量のベース量透析液を新たに注入するサイクルを含んだものがある。
TPDでは、CCPDと同様に最終注液サイクルを設けることができる。あるいは、IPDのように最終注液サイクルを省くこともできる。
【0014】
APDは、透析が必要な個人に柔軟性とクオリティーオブライフの向上を提供するものである。APDは、患者を、人によって感じるCAPDの毎日の実施に伴う疲労と不便さから解放する。また、患者はAPDにより、透析液交換を行わなくてよい、一日のうちの起きている時間および就労時間を取り戻すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、様々なAPD様式については、従来機器とそれに関連する使い捨て用品の複雑さと寸法のために、APDが代替的な手動による腹膜透析法として患者に広く受け入れられることが阻害されていた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の複数の態様は、腹膜透析のような医療点滴術を含む医療用途に使用するための様々な構成部品、システム、方法に関連する。一部の例では、本発明の複数の態様は腹膜透析での用途に限定され、他の複数の態様は、より一般的な透析用途(例えば血液透析)や点滴用途に限定され、さらに別の複数の態様はより一般的な方法またはプロセスに限定される。そのため、本発明の態様は、必ずしもAPDシステムおよび方法に限定されるものではないが、ここで説明する多くの例示的な実施形態はAPDに関連している。
【0017】
本発明の1つの態様において、例えばAPDサイクラー装置または他の点滴装置と併用することが可能な使い捨て流体ハンドリングカセットは、本体の第1面に凹みとして形成された少なくとも1つのポンプチャンバと、1本のチャネルを含んだ複数の流体用流路とを有する略平面的な本体を含んでいる。患者ラインポートを患者ラインに接続するように配置し、少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通させることができ、また、本体の第1面に前記少なくとも1つのポンプチャンバを覆う膜を取り付けてもよい。一実施形態では、その膜は、概して本体のポンプチャンバ凹みと一致したストレスのかからない形状をしたポンプチャンバ部を有してもよく、このポンプチャンバ部は、ポンプチャンバの使用可能空間内の流体の動きに合わせて動作できるように配置されている。カセット本体が2つ以上のポンプチャンバ凹みを含む場合には、膜にも、事前に形成された2つ以上のポンプ部を設けることができる。別の実施形態では、例えば、サイクラーの制御面がカセットと相互に作用し合いポンピング機能やバルブ機能を制御する場合には、膜は必ずしもカセットに含まれてなくてもよい。
【0018】
別の実施形態では、ポンプチャンバに、例えば、凹みの内壁から延伸した1つ以上のスペーサ要素を設けて、膜がこの内壁と接触しないようにし、これによってポンプチャンバの入口/出口の遮断が阻止されることで、ポンプチャンバ内の空気の除去または捕捉、および/または、膜が内壁に付着してしまうことの防止が促される。スペーサ要素は、膜がスペーサ要素に押し付けられた際に、スペーサ要素の縁での膜の変形を最小に抑えるよう配置することが可能である。
【0019】
別の実施形態では、患者ラインポートと排液ラインポートを本体の第1端部に配置し、少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通させることができる。一方、複数の溶液ラインスパイクを、各溶液ラインスパイクが少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通した状態で、本体の第1端部とは反対側の第2端部に配置することができる。この配置により、溶液ラインをカセットに自動接続したり、患者ラインや排液ラインを溶液ラインに対して個別に遮断することが可能になる。一実施形態では、加熱バッグ・ラインポートを本体の第1端部に配置し、少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通させることもできる。可撓性の患者ライン、排液ライン、加熱バッグラインを、患者ラインポート、排液ラインポート、加熱バッグ・ラインポートにそれぞれ接続することができる。
【0020】
別の実施形態では、本体は、少なくとも1つのポンプチャンバ付近に形成された吸気通気用間隙凹みを含み得る。この凹みにより、膜とこれに対応するサイクラーの制御面との間に存在する流体(気体および/または液体)が、例えば制御面の吸引ポートを介して排除されるように促進される。つまり、この凹みは、膜が吸引ポートに押し付けられないよう補助して、吸引ポートを開放した状態に保つことで、必要に応じて流体を回収チャンバ内に引き入れられるようにする。
【0021】
一実施形態では、1つ以上のポート、例えば排液ラインポートと加熱バッグ・ラインポート、および/または1つ以上の溶液ラインスパイクを、カセット基部の共通の流路チャネルと連通させることができる。必要に応じて、複数のバルブのそれぞれを、少なくとも1つのポンプチャンバと、患者ラインポート、排液ラインポート、複数の溶液ラインスパイクとの間における各流路内の流れを制御するように配列することができる。一実施形態では、膜の各部をそれぞれ対応するバルブの上に位置決めし、バルブの開閉ができるよう可動にしてもよい。同様に、開口部から1または複数のポンプチャンバ内に入る流れを、これに対応する、膜の1つ以上の部分の動きにより開閉するバルブによって制御することもできる。
【0022】
いくつかの実施形態では、膜は、本体の少なくとも数本の流路を閉鎖することができる。つまり、少なくとも片側で膜により閉鎖される開放フローチャネルを本体に形成してもよい。一実施形態では、本体の対向する平坦な両面に流路を形成することができ、また、第1面上の少なくとも数本の流路を第2面上の複数の流路と連通させることができる。
【0023】
一実施形態では、カセット上の1つ以上のスパイク(例えば、透析液を受容するためのもの)は、当該スパイクを密封封止する取り外し可能なスパイクキャップで覆われてもよい。
【0024】
本発明の別の態様において、再利用可能な自動腹膜透析サイクラー装置と併用される使い捨て流体ハンドリングカセットは略平面的な本体を含んでおり、この本体は、本体の第1面に凹みとして形成された少なくとも1つのポンプチャンバと、チャネルを含む複数の流体用流路と、患者ラインに接続するように配置され、少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバに流体連通する患者ラインポートと、少なくとも1つのポンプチャンバの上に位置する、本体の第1面に取り付けられた可撓膜とを設けている。少なくとも1つのポンプチャンバの上に位置する膜のポンプチャンバ部は、本体に設けたポンプチャンバ凹みの再利用可能範囲とほぼ一致して、ポンプチャンバ内の流体の動きに合わせて動作できるように配置されたストレスのかからない形状をしている。一実施形態では、カセットは、再利用可能な自動腹膜透析サイクラー装置に対し動作可能に係合するよう構成されている。
【0025】
カセットは、排液ラインに接続するように配置された排液ラインポートを含んでよく、この排液ラインポートは、少なくとも1本の流路を介して、および/または、少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通している複数の溶液ラインスパイクを介して、少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通している。膜のポンプチャンバ部は略ドーム型であってよく、また、対応するポンプチャンバ凹みの使用可能範囲とほぼ一致する形状をした2つのポンプチャンバ部を含み得る。一実施形態では、ポンプチャンバ部の容積は、ポンプチャンバ凹みの使用可能な容積の85~110%であってよい。別の実施形態では、ポンプチャンバ部を、ポンプチャンバ凹みの使用可能範囲の深さの85~110%となるように設けることができる。別の実施形態では、ポンプチャンバ部を、ポンプチャンバ凹みの使用可能範囲の円周の85~100%の寸法になるように設けることができる。ポンプチャンバの使用可能範囲は、少なくとも部分的に、凹みの内壁から延伸した1つ以上のスペーサ要素によって画定されてもよい。一実施形態では、複数のスペーサ要素は、略ドーム型の領域あるいはこれ以外の形状を画定する、段階的な長さまたは可変高さを有するものであってよい。スペーサ要素は、平面において同心楕円パターンまたは別の形状に設けられてもよい。このパターンに1つ以上の分断部を設けて、例えば空隙間を連通させることが可能である。一実施形態では、膜がスペーサ要素に押し付けられる際に、スペーサ要素の縁部における膜の変形が最小化するようにスペーサ要素を設けることができる。別の実施形態では、1つ以上のスペーサを、ポンプチャンバの流体入口および/または出口が膜で覆われることのないように構成することが可能である。
【0026】
本発明の別の態様では、医療用点滴装置の流体ハンドリングシステムと併用される流体ハンドリングカセットは、本体の第1面に少なくとも1つのポンプチャンバが凹みとして形成された略平面的な本体と、1本のチャネルを含む複数の流体用流路とを含み、この少なくとも1つのポンプチャンバは凹みの内壁から延伸した1つ以上のスペーサ要素を含んでおり、流体ハンドリングカセットはさらに、患者ラインに接続するように配置された患者ラインポートを含み、この患者ラインポートは少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通しており、流体ハンドリングカセットはさらに、排液ラインに接続するように配置された排液ラインポートを含み、この排液ラインは少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通しており、流体ハンドリングカセットはさらに、少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通した複数の溶液ラインスパイクを含む。
【0027】
本発明の1つの態様では、腹膜透析システムの流体ライン接続システムと併用される使い捨て構成部品システムは、第1面に凹みとして形成された少なくとも1つのポンプチャンバを有する略平面的な本体と、複数の流体用流路とを有する流体ハンドリングカセットと、本体の第1端部に配置された溶液ラインスパイクとを含み、この溶液ラインスパイクは少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通しており、使い捨て構成部品システムはさらに、溶液ラインスパイクを取り外し可能に覆うように構成されたスパイクキャップを含んでおり、ここで、キャップは、腹膜透析治療を開始する前に、溶液ラインと接続させるためのキャップの取り外しを補助するために、少なくとも1つの隆起部機構(例えば、非対称または対称的なフランジ)を含んでいる。
【0028】
一実施形態では、カセットは、スパイクキャップの端部を受容するためにスパイク周囲に設けたスカート部を含み、さらに、スパイクキャップとスカート間に密封部の形成を促すように配置した凹部を、スカートとスパイクの間に設けてもよい。
【0029】
別の実施形態では、溶液ラインキャップを溶液ラインに取り外し可能に接続でき、また、溶液ラインキャップは凹部機構(例えば対称的または非対称的な溝)を含むことができる。溶液ラインキャップの少なくとも一部は、シリコーンゴムのような可撓性材料を含み得る。凹部機構により、カセットからスパイクキャップを取り外し易くなる。
【0030】
別の実施形態では、スパイクキャップは、溶液ラインキャップの停止部として機能する第2隆起部機構を含む。
別の実施形態では、1つ以上のスパイクの主軸は、流体ハンドリングカセットの略平面的な本体と実質的に同平面上にある。
【0031】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムと併用される流体ハンドリングカセットは、本体の第1面に凹みとして形成された少なくとも1つのポンプチャンバと複数の流体用流路とを有する略平面的な本体と、透析液ラインに係合するべく本体の第1端部に配置されたスパイクとを含む。スパイクは、少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通しており、また、末端部の先端と、スパイクの末端部の先端がスパイクの長手軸の実質的に近くに位置決めされるように配列された内腔とを含んでいる。一実施形態では、内腔は長手軸から実質的に外れて位置決めされている。
【0032】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムの流体ライン接続システムと併用される使い捨ての構成部品システムは、流体ハンドリングカセットのスパイクを取り外し可能に覆うように構成されたスパイクキャップを含む。キャップは、腹膜透析治療を開始する前に、溶液ラインに接続するべくキャップの取り外しを促すための少なくとも1つの特徴を含み得る。この特徴は隆起部機構または凹部機構であってよく、また、溶液ラインキャップと係合する構成になってよい。
【0033】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムの流体ライン接続システムと併用される使い捨ての構成部品システムは、溶液ラインに取り外し可能に取り付けるための溶液ラインキャップを含み、この溶液ラインキャップは、腹膜透析治療を開始する前に、溶液ラインとスパイクを接続するべくスパイクキャップの取り外しを助ける少なくとも1つの特徴を含む。この特徴は隆起部機構または凹部機構であってよく、また、スパイクキャップと係合するように構成されてもよい。例えば、溶液ラインと関連した溶液を識別でき、また、腹膜透析システムの少なくとも1つの機能に影響を与えるようにするために、指示が溶液ラインに関連付けられていてもよい。
【0034】
本発明の別の態様では、APDシステムのような医療用注入流体ハンドリングシステムは、キャップを取り外し、1本以上のライン(例えば溶液ライン)を、流体ハンドリングカセットの1つ以上のスパイクあるいは別の接続ポートと接続させるように配置することができる。この特徴には、キャップの取り外し、およびライン/スパイク間の接続に人の介入が不要であるため、汚染の可能性が低減するなどの利点がある。例えば、APDシステムは、それぞれがコネクタ端部とキャップを有する複数の溶液ラインを受容するように配置されたキャリッジを含み得る。このキャリッジは、第1方向に沿って移動することで、溶液ラインのコネクタ端部を第1方向に沿って移動できるように設けることができ、また、キャップストリッパは、キャリッジ上の溶液ラインのキャップと係合するように設けることができる。キャップストリッパは、第1方向を横切る第2方向へ移動するようにも、キャリッジと共に第1方向に沿って移動するようにも配置できる。例えば、キャリッジがAPDサイクラー内でカセットに向かって第1方向へ移動することで、溶液ラインのキャップをカセットのスパイクのキャップと係合させることもできる。キャップストリッパは(例えば、キャリッジの動作を横切る方向へ移動することによって)キャップと係合し、その後、キャップをスパイクから取り外すためにキャリッジがカセットから引き抜かれると、キャリッジと共に移動する。次に、キャリッジがキャップストリッパ上のキャップから溶液ラインのコネクタ端部を引くと、キャップストリッパが引っ込み、キャリッジが、露出状態となった溶液ラインコネクタ端部をカセット上の露出したスパイクと係合させられるようになる。
【0035】
一実施形態では、キャリッジは、それぞれが対応する溶液ラインを受容する複数の溝を含み得る。溶液ラインをこれと対応する溝内に位置決めすると、例えばライン上のバーコードまたは別の識別子が読み取られ、これに従ってシステムの制御が行われることで、各溶液ラインの個々の識別がさらに容易になる。キャリッジはサイクラーハウジングのドアに取り付けられることができ、キャリッジ駆動部によって第1方向に沿って移動される。一実施形態では、キャリッジ駆動部は、ドアを閉位置へ移動するとキャリッジと係合し、ドアを開位置へ移動するとキャリッジとの係合が外れる。
【0036】
一実施形態では、キャップストリッパは複数のフォーク状要素を含んでよく、このフォーク状要素は、これと対応する、キャリッジに収納された溶液ラインのキャップと係合するように配置されている。フォーク状要素は、溶液ラインから取り外されたキャップを保持することができ、また、各溶液ラインキャップ自体がスパイクキャップを保持することができる。別の実施形態では、キャップストリッパは複数の揺動アームを含んでよく、揺動アームのそれぞれはフォーク状要素と関連している。各揺動アームは、例えばスパイクキャップを関連するスパイクから取り外すべく働くため、スパイクキャップと係合するように移動できるよう配置されてよい。各揺動アームは、関連するフォーク状要素が溶液ラインのキャップと係合する時のみ、対応するスパイクキャップと係合するように配置されてよい。そのため、キャップストリッパは、スパイクと接続するための対応する溶液ラインが存在しない場所では、スパイクキャップと係合したり、カセットからスパイクキャップを取り外したりすることができない。
【0037】
本発明の別の態様では、APDサイクラーのような医療用注入流体ハンドリングシステム内で流体ラインを接続する方法は、溶液ラインおよびカセットのスパイクを、人が触れられない閉空間内に配置することを含む。閉空間内で溶液ラインおよび/またはスパイクのキャップを取り外して溶液ラインをスパイクに接続することで、接続が提供されると共に、例えば病原菌または他の潜在的有害物質が付着した指によって起こる接続部での汚染の可能性が最小化される。例えば、本発明のこの態様による1つの方法では、それぞれがコネクタ端部とキャップを有する複数の溶液ラインを提供することと、それぞれがスパイクキャップで覆われた複数のスパイクを有する流体ハンドリングカセットを提供し、人によるキャップやスパイクキャップへの接触が防止される空間内において、複数の溶液ラインのコネクタ端部をこれを覆うキャップで包囲し、複数のスパイクをこれを覆うスパイクキャップで包囲し、また、キャップまたはコネクタ端部を該空間から取り出すことなく複数の溶液ラインのコネクタ端部からキャップを取り外し、スパイクキャップおよびスパイクを該空間から取り出すことなくスパイクキャップをスパイクから取り外し、キャップをスパイクキャップのおのおのと係合させ、また、コネクタ端部とスパイクは該空間内に留め、人の接触から保護したたままで、複数のコネクタ端部をこれに対応するスパイクに流体接続する。
【0038】
一実施形態では、溶液ラインキャップとスパイクキャップを、ラインまたはスパイクから取り外す前に互いに係合させた後、係合させたままの状態でラインとスパイクの両方から取り外すことができる。この技術により、キャップ取り外し/キャップ被せ工程が簡易化されると共に、キャップの収納も簡単になる。
【0039】
別の実施形態では、例えば処置完了後に、溶液ラインをスパイクから外し、ラインのコネクタ端部とスパイクに再びキャップを被せることができる。
本発明の別の態様では、透析器機は流体ハンドリングカセットを含んでよく、この流体ハンドリングカセットは複数のスパイクおよびこれらスパイクの各々を覆う複数のスパイクキャップと、各々がコネクタ端部を覆うキャップを有する複数の溶液ラインと、溶液ラインのコネクタ端部から1つ以上のキャップを取り外すように、また、1または複数のキャップをスパイクキャップの対応する1つに固定した状態で、カセットのスパイクから1つ以上のスパイクキャップを取り外すように配列されたキャップストリッパとを備えている。上述したように、この器機は、キャップの取り外し後に、溶液ラインのコネクタ端部をこれと対応するスパイクに自動的に流体接続させるよう設けられる。
【0040】
本発明の別の態様では、APDシステムのような透析器機は、複数の流体スパイクおよび対応する流体スパイクを覆う複数のスパイクキャップを有するカセットと、各ラインのコネクタ端部を覆うキャップをそれぞれ設けた複数の溶液ラインを受容するように配置されているキャリッジと、ラインのコネクタ端部を覆う1つ以上のキャップと係合するように配置されたキャップストリッパとを含み得る。キャリッジとキャップストリッパは、1つ以上のキャップが、これと対応する、カセット上のスパイクを覆うスパイクキャップと係合している間に、ラインのコネクタ端部上の1つ以上のキャップと係合するように、また、スパイクからスパイクキャップを、溶液ラインのコネクタ端部からキャップを取り外すように、また、キャップを取り外した後に、スパイクと溶液ラインのコネクタ端部を流体接続するように構成されてよい。
【0041】
本発明の別の態様では、透析器機は、溶液ラインのコネクタ端部上の1つ以上のキャップを取り外すように、また、流体ハンドリングカセット上のスパイクから1つ以上のスパイクキャップを取り外すように、さらに、キャップを溶液ラインに、スパイクキャップをカセット上のスパイクに保持および再度取り付けするように配列されたキャップストリッパを含み得る。
【0042】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムの流体ライン接続システムは、第1面に凹みとして形成された少なくとも1つのポンプチャンバを有する略平面的な本体と複数の流体用流路とを有する流体ハンドリングカセットと、本体の第1端部に配置された複数の透析液ラインスパイクとを含み、この透析液ラインスパイクは、少なくとも1本の流路を介して少なくとも1つのポンプチャンバと流体連通しており、また、スパイクが流体ハンドリングカセットの略平面的な本体と略同平面となるように配置されており、複数の溶液ラインを受容するよう配置されたキャリッジを含み、各溶液ラインはコネクタ端部を設けている。キャリッジは、溶液ラインのコネクタ端部をこれと対応するスパイクに自動的に流体接続するように配置されている。
【0043】
一実施形態では、キャリッジは、溶液ラインおよび各々のキャップを、流体ハンドリングカセットの略平面的な本体と実質的に平行な第1方向に沿って移動させるように設けられている。キャリッジを第1方向にのみ移動させるキャリッジ駆動部は、駆動素子を第1方向に沿って移動させるために、駆動素子と空気袋またはスクリュードライブを含み得る。溶液ラインのコネクタ端部から1つ以上のキャップを取り外すように、また、1つ以上のキャップがこれに対応するスパイクキャップの1つに固定された状態で、カセット上のスパイクから1つ以上のスパイクキャップを取り外すように設けられたキャップストリッパを提供することができる。一実施形態では、キャップストリッパは、キャップを溶液ラインに、スパイクキャップをカセット上のスパイクに保持および再取り付けするように設けられる。
【0044】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムは、患者の腹膜腔への透析液の送出を制御するのに適した構成部品を備えたサイクラー装置を含み得る。サイクラー装置は、構成部品の少なくともいくつかを包囲し、さらに加熱バッグ収容部を有するハウジングを有してよい(ここで用いる「加熱バッグ」とは、透析液の加温に適したあらゆる容器を指す。例えば、ポリマー、金属、その他の適切な材料のいずれかからなる可撓性または硬性の容器)。ハウジングに蓋を取り付け、加熱バッグ収容部内に加熱バッグを設置できる開位置と、加熱バッグ収容部が蓋で覆われる閉位置との間で移動できるようにする。このような構成により、蓋によって熱が維持されるので、例えば加熱バッグ内の透析液をより速く効率的に加温できるようになる。さらに、蓋のために、加熱される面に人が触れてしまうことを防止できる。
【0045】
一実施形態では、透析システムは、加熱バッグラインに取り付けた加熱バッグポートと、患者ラインに取り付ける患者ポートラインと、患者ラインと加熱バッグライン内で流体を移動させるための少なくとも1つのポンプチャンバとを備える流体ハンドリングカセットを含み得る。加熱バッグは加熱バッグラインに取り付けて、加熱バッグ収容部内に設置するように設けられている。
【0046】
別の実施形態では、このシステムは、ハウジングに可動的に取り付けたインターフェース(例えば、タッチスクリーン構成部品を具備した視覚ディスプレイ)を含んでいてよく、このインターフェースは、インターフェースが加熱バッグ収容部内に受容される第1位置と、インターフェースが加熱バッグ収容部から取り出される第2位置(例えば、使用者がインターフェースと対話できる位置)の間で移動できる。したがって、システムを使用していない時にはインターフェースを見えないように隠し、保護することが可能である。さらに、インターフェースを加熱バッグ収容部に収納することで、少なくとも「収納」状態においてシステムがよりコンパクトになる。
【0047】
本発明の別の態様では、透析システムは、システムの空気圧駆動式構成部品の制御に適した空気圧および/または真空の供給部と、空気圧および/または真空の供給部に流体接続した空気圧駆動式構成部品と、さらに、空気圧駆動式構成部品に空気圧または真空を提供し、その後、再び空気圧駆動式構成部品に空気圧または真空を提供するようになるまで、空気圧駆動式構成部品を空気圧または真空の供給部からかなりの時間隔離しておく制御システムとを含む。このような構成は、本明細書中で説明するオクルーダ装置のように、さほど頻繁に起動されない構成部品にとって有用である。いくつかの構成部品が小さく動くとノイズを生じるため、患者が不快感を持つ可能性がある。構成部品を空気圧/真空から隔離することで、この構成部品を、例えば他のシステム構成部品による圧力/真空の引き込みによって生じた、供給圧/真空中の変化による微動から守ることができる。一実施形態では、上記のかなりの時間とは5分間以上、1時間以上、あるいは、患者の腹膜腔に対する透析治療に適した或る量の透析液を送出または除去するために必要な時間の50%以上、または他の適切な時間であってよい。
【0048】
本発明の別の態様では、透析システムは、システムの空気圧駆動式構成部品の制御に適した空気圧および/または真空の供給部と、空気圧および/または真空の供給部に流体接続した空気圧駆動式構成部品と、空気圧駆動式構成部品に空気圧または真空を提供し、空気圧駆動式構成部品によって生じるノイズを低減するべく空気圧または真空を制御する制御システムとを含む。例えば、空気圧駆動式構成部品は、少なくとも1つの移動部(例えばポンプ横隔膜)を含んでよく、制御システムは、停止および/または方向変換する移動部の動きを遅速化させるために、空気圧駆動式構成部品に提供された空気圧または真空を低減することができる(例えば、圧力/真空を制御して、横隔膜が方向変換する前にその動作を遅速化させる)。別の実施形態では、例えば圧力/真空供給バルブのパルス幅変調制御を用いることで、バルブの移動部が発するノイズを低減できる。
【0049】
本発明の別の実施形態では、透析システムは、システムの空気圧駆動式構成部品の制御に適した空気圧力および真空の供給部を含む。第1空気圧駆動式構成部品は、空気圧および/または真空の供給部に流体接続していてよく、また、空気圧を解放するための第1出力ラインを設けている。第2空気圧駆動式構成部品は、空気圧および/または真空の供給部に流体接続しており、また、真空を解放するための第2出力ラインを設けている。アキュムレータ、マニホルド、または防音チャンバによって画定された空間は、第1および第2出力ラインの両方と流体接続してよい。制御システムは、空気圧駆動式構成部品に空気圧または真空を提供でき、これにより、動作中に第1および第2構成部品が圧力/真空を解放すると、解放された圧力/真空が共通の空間(例えばマニホルド)内に受容される。いくつかの状況では、構成部品が解放した正圧下の気体を、他の構成部品が解放した負圧によって調和し、発生したノイズを低減することができる。
【0050】
本発明の別の態様では、腹膜透析システムは、患者の腹膜腔に流体接続し、腹膜腔から続く患者ラインを設け、さらに、透析液を患者ライン内で移動させるための少なくとも1つのポンプチャンバを有する流体ハンドリングカセットを含み得る。サイクラー装置は、流体ハンドリングカセットを受容し、これと相互作用するように設けられ、これによって、少なくとも1つのポンプチャンバに患者ライン内で透析液を移動させることができる。サイクラーは、少なくとも1つのポンプチャンバを、初期運転で動作させ、患者ライン内の空気を完全に排除するために透析液を患者ライン内に強制流入させるよう制御する形に設けた制御システムを含み、また、カセット本体に接続した患者ラインの容積に関連して異なる2タイプの流体ハンドリングカセットと相互作用するように適応させることができる。第1タイプのカセットは、比較的低容積の患者ライン(例えば小児科用)を設け、第2タイプのカセットは比較的高容積の患者ライン(例えば成人用)を設けていてよく、また、制御システムは、サイクラーに受容されたカセットが第1タイプか、第2タイプかを感知し、これに従ってサイクラー動作の調整を行う。
【0051】
一実施形態では、制御システムは初期運転中に、患者ラインの容積を求めることにより、サイクラーに受容されたカセットが第1タイプか第2タイプかを検出し、システムの運転中にカセット内を流れる流体の容積の調整を行う。別の実施形態では、サイクラーがカセット上に付けられているバーコードのような表示を検出し、カセットのタイプに基づいて圧送動作の調整を行う。
【0052】
本発明の別の態様では、透析器機は、複数のスパイクとスパイク内で流体を移動させるための少なくとも1つのポンプチャンバとを有する流体ハンドリングカセットと、カセット上の各スパイクとそれぞれ係合した複数の溶液ラインと、各溶液ラインのタイプを判断するために各溶液ライン上の表示を読み取る制御システムとを含む。制御システムは、1または複数の溶液ラインの独自性に基づき、圧送動作または他のサイクラー動作を調整することができる。例えば、溶液ラインが廃液サンプリングラインであると識別されると、排液サイクル中に、患者から使用済みの透析液を廃液サンプリングラインへ送るよう圧送動作が調整される。
【0053】
本発明の別の態様では、透析システム内で傾斜状態から自動回復する方法は、(A)透析システムの少なくとも一部分の傾斜角度を検出することであって、この透析システムの該一部分は透析治療を実施するための機械を含む、検出することと、(B)傾斜角度が所定の閾値を超えている傾斜状態が存在することを決定することと、(C)(B)に応答して透析治療を中断することと、(D)透析治療の中断中にこの傾斜角度を監視することと、(E)傾斜状態が既に存在していないことを判断することと、(F)(E)に応答して、透析治療を自動的に再開することを含む。
【0054】
本発明の別の態様では、透析システムの患者データインターフェースは、透析システムの少なくとも一部のシャーシに形成した凹部と、この凹部内に配置された第1コネクタとを備える装置ポートを含む。患者データ記憶装置は、ハウジングと、ハウジングに結合した第2コネクタとを含んでいてよく、ここで、第2コネクタは第1コネクタに選択的に結合するように設けられている。凹部は第1形状を持ち、ハウジングは第1形状に対応した第2形状を持ち、これにより、第1コネクタと第2コネクタが接続すると、患者データ記憶装置のハウジングが凹部内に少なくとも部分的に受容されるようになっている。第1および第2形状は非定型であってよく、患者データ記憶装置は、患者データ記憶装置が予測したタイプおよび/または起点のものであることを確認するために、透析システムによる読み出しが可能な確認コードを持ってよい。
【0055】
本発明の別の態様では、腹膜透析を提供する方法は、患者の腹膜腔に対して透析液を第1圧力にて送出または引き出すことと、透析液の移動によって患者が感じる不快感を最小化するために、透析液を送出または引き出す圧力を調整することを含む。一実施形態では、腹膜透析治療の同じ注液または空にするサイクル中に、および/または、腹膜透析治療の異なる注液または空にするサイクルにおいて、圧力を調整することができる。例えば、患者から透析液を引き出す際、腹膜腔内に残存する透析液の量が閾値量よりも低くなった場合に、透析液を引き出す圧力を降下させることができる。排液サイクルの終わり近くに圧力を降下させることで(負圧または真空)、透析液の引き出しに伴って患者が感じる不快感を緩和できる。
【0056】
本発明の別の態様では、腹膜透析を提供する方法は、腹膜透析第1回処置中に、再使用可能なサイクラー装置を用いて患者の腹膜腔に第1溶液を提供することと、第1回処置直後の腹膜透析第2回処置中に、再使用可能なサイクラー装置を用いて患者の腹膜腔に第2溶液を提供することを含み、ここで、第2溶液は第1溶液と比べてその化学的構造が異なっている。(例えば、サイクラーに取り付けたカセットを介して)サイクラーに接続した2種以上の溶液容器からの液体材料を混合することで、異なる溶液を作ることができる。これらの溶液容器はサイクラーが、バーコード、RFIDタグ、その他の表示を読み出すことによって自動識別される。
【0057】
本発明の別の態様では、医療用点滴システムは、システムの構成部品の少なくともいくつかを包囲するハウジングと、ハウジングに取り付けられ、ハウジングに取り外し可能に取り付けられる可能性のある流体ハンドリングカセットの運転を制御するように構成および配置された制御面とを含む。制御面は、流体圧送およびカセットのバルブ動作を制御するように配置された複数の可動部分を設けてよく、また、可動部分付近の領域から流体を引き出すように配置された少なくとも1つの可動部分は関連する真空ポートを設けてよい。
【0058】
一実施形態では、制御面は弾性ポリマー材料性のシートを含み、各可動部分は関連した真空ポートを有することができる。別の実施形態では、カセットは制御面に隣接して位置決め可能な膜を含み、真空ポートは膜と制御面の間の空間から流体を除去するように設けられている。液体センサを設けて、例えば万が一膜が破裂した場合には、液体センサが真空ポート内に引き込まれた液体を検出し、液体がカセットから漏出できるようにしてもよい。
【0059】
本発明の別の態様では、APDシステムで使用するようなポンプによって移動される流体の量を、例えば流量計、重量計などで流体を直接測定しなくても、圧力測定、特定の従来のチャンバおよび/またはライン容積に基づいて求めることができる。一実施形態では、ポンプチャンバの容積を変更させる可動要素を持ったポンプチャンバの容積を、ポンプチャンバ内および基準チャンバの圧力を互いから隔離した状態で、また、両チャンバ内の圧力を等化できるように2つのチャンバを流体接続した後に測定することで求められる。一実施形態では、圧力の等化は断熱的な方法で起こると考えられ、例えば、断熱的な圧力等化工程に基づいたシステムの数学モデルを用いてポンプチャンバ容積を求めることができる。別の実施形態では、チャンバ間を流体接続した後に測定した圧力を、完全な等化が生じる前に測定することができ、またこれにより、チャンバ間を流体接続した後に測定したポンプチャンバと基準チャンバの圧力は不等化となるが、ポンプチャンバ容積を求めるために使用できる。この手法により、初期圧力測定と最終圧力測定の間の時間を短縮でき、これにより、熱伝達が生じ得る時間を短縮でき、また、ポンプチャンバ容積を求めるために断熱モデルを使用した場合に取り込まれ得るエラーを減少させられる。
【0060】
本発明の1つの態様では、ポンプによって移動される流体の容積を求める方法は、ポンプ制御チャンバが基準チャンバから隔離されている時に、ポンプ制御チャンバの第1圧力を測定することを含む。ポンプ制御チャンバの容積は、例えばポンプ膜または横隔膜のようなポンプの一部分の動きに基づいて少なくとも一部変化してよい。基準チャンバがポンプ制御チャンバから隔離されている時に、基準チャンバの第2圧力を測定する。基準チャンバは既知の容積であってよい。基準チャンバとポンプ制御チャンバを流体接続した後のポンプ制御チャンバに関連する第3圧力を測定できるが、この測定は、ポンプ制御チャンバと基準チャンバの間にかなりの量の圧力の等化が生じる前に行う。同様に、基準チャンバとポンプ制御チャンバを流体接続した後の基準チャンバに関連した第4圧力を測定できるが、この測定は、ポンプ制御チャンバと基準チャンバの間にかなりの量の圧力等化が生じる前に行う。ポンプ制御チャンバの容積は、第1、第2、第3、第4測定圧力に基づいて求めることができる。
【0061】
一実施形態では、第3、第4圧力はほぼ同時に測定されるが、互いに対して実質的に不均等である。例えば、ポンプ制御チャンバと基準チャンバ内の圧力の等化は、ポンプ制御チャンバと基準チャンバが流体接続してから等化期間が経過した後に生じるが、第3、第4圧力は、ポンプ制御チャンバと基準チャンバが流体接続した後、つまり等化期間の約10~50%の時点で測定される。そのため、第3、第4圧力は、両チャンバ内の圧力が完全に等化するかなり前(時間的)に測定できる。別の実施形態では、第3圧力と第4圧力は、両チャンバ内の圧力が約50~70%の等化に達した時、例えば、両チャンバ内の圧力が初期値から等化圧力値の約50~70%へと変わった時に測定される。これにより、第1および第2圧力の測定と、第3、第4圧力の測定との間の期間が最短化する。
【0062】
別の実施形態では、ポンプ制御チャンバの容積を求めるモデルでは、隔離したポンプ制御チャンバと基準チャンバの第1圧力と第2圧力を測定する時点から第3圧力と第4圧力を測定する時点まで、断熱システムが存在しているとの仮定を採用している。
【0063】
ポンプによって移動される流体の容積を求めるには、第1および第2、第3、第4圧力を測定するステップと、流体容積を求めるステップとをポンプ膜の2つの異なる位置について実施し、ポンプ制御チャンバの2つの異なる容積を求める。2つの異なる容積の差は、ポンプによって送出される流体の容積を表す。
【0064】
上述したように、本発明のこの態様は、例えばポンプが使い捨てカセットの一部であり、ポンプ制御チャンバが透析処置に使用される透析器の一部であるシステムのような、あらゆる適切なシステムにおいて使用できる。
【0065】
一実施形態では、ポンプ制御チャンバ内または基準チャンバ内の圧力が(適宜)先の安定値から最初に変化し始める時点と一致する複数の圧力測定値から第1および/第2圧力を選択することができる。例えば、この時点は、連続した複数の測定圧力の組に最良適合ラインが安定した傾斜から最初に逸脱する時の決定に基づいて識別できる。この手法は、ポンプ容積の決定におけるエラーを低減しながら、時間的に可能な限り遅いポンプ制御チャンバと基準チャンバの初期圧力を識別する上で役立つ。
【0066】
別の実施形態では、第3、第4圧力を測定するのに最良の時点を識別する技術を用いることができる。例えば、ポンプ制御チャンバと基準チャンバを流体接続させた後にポンプ制御チャンバの複数の圧力値を測定し、ポンプ制御チャンバの複数の圧力値に基づいて、ポンプ制御チャンバについて複数の容積変化値を求めることができる。複数の容積変化値の各々は、ポンプチャンバでの固有の時点および測定した圧力値に対応する。この場合では、容積変化値は、バルブまたは他の構成部品にある想像上のピストンの動きによって生じたものであり、この想像上のピストンは、まずポンプ制御チャンバと基準チャンバを隔離するが、バルブまたは他の構成部品が開放すると移動する。そのため、ポンプチャンバのサイズまたは容積が実際に変化するわけではなく、容積の変化は、最初は互いに異なっているポンプチャンバおよび基準チャンバ内の圧力によって生じる空想上の状況である。同様に、ポンプ制御チャンバと基準チャンバを流体接続した後に、基準チャンバの複数の圧力値を測定することができ、また、基準チャンバの複数の容積変化値を、基準チャンバの複数の圧力値に基づいて求めることができる。複数の容積変化値の各々は、基準チャンバでの固有の時点および測定した圧力値に対応でき、また、ポンプチャンバでの容積変化値と同様に、想像上のピストンの動きによって生じたものである。各差分値を、対応するポンプ制御チャンバでの容積変化値と、対応する基準チャンバでの容積変化値とについて求めることで、ポンプ制御チャンバと基準チャンバの容積変化値間の複数の差分値を求めることができる。即ち、差分値を求めるための容積変化値の複数の対は同一あるいはほぼ同一の時点に対応している。差分値を分析すると、最小の差分値(または、所望の閾値よりも低い差分値)は、第3、第4圧力が測定されるべき時点を示す。したがって、第3及び第4圧力値は、最小または閾値未満の差分値に対応する、ポンプ制御チャンバ圧力値及び基準チャンバ圧力値とそれぞれ等しいと識別できる。
【0067】
別の実施形態では、測定した圧力は、ポンプ制御チャンバおよび基準チャンバの気体の圧力であり、ポンプ制御チャンバと基準チャンバ内の圧力の等化は断熱的に生じると仮定され、ポンプ制御チャンバの圧力と基準チャンバの圧力の等化は、ポンプ制御チャンバ内と基準チャンバ内の等しい気体容積変化であるが反対の方向に向かう変化を含むと仮定され、第4圧力測定時点での基準チャンバ内の気体の容積は、既知の基準チャンバの容積、第2および第4圧力から計算される。基準チャンバ内の気体容積の変化は、既知の基準チャンバの容積と第4圧力測定時に算出した基準チャンバ内の気体の容積値との間の差であると仮定できる。さらに、ポンプ制御チャンバ内の気体容積の変化は、ポンプ制御チャンバの初期容積と、第3圧力測定時におけるポンプ制御チャンバ内の気体容積との間の差であると仮定でき、ここで、ポンプ制御チャンバ内の気体容積の変化は、基準チャンバ内の気体容積の変化と等しいが、これと反対である。
【0068】
本発明の別の態様では、ポンプによって移動される流体の容積を求める方法は、可動膜によってポンプ制御チャンバから分離されているポンプチャンバを具備した流体ポンプ装置と、ポンプ制御チャンバと流体的に接続可能な基準チャンバとを提供することと、ポンプ制御チャンバ内の第1圧力を調整して膜を動かすことによりポンプチャンバ内の流体を移動させることと、基準チャンバをポンプ制御チャンバから隔離して、ポンプ制御チャンバ内の圧力とは異なる第2圧力を基準チャンバ内に確立することと、ポンプ制御チャンバと基準チャンバ内の圧力の等化を開始するために、基準チャンバとポンプ制御チャンバを流体接続させることと、第1および第2圧力と、ポンプ制御チャンバと基準チャンバ内の圧力が断熱式で等化を開始するという仮定とに基づいてポンプ制御チャンバの容積を求めることを含む。
【0069】
一実施形態では、基準チャンバとポンプ制御チャンバを流体接続させた後に、ポンプ制御チャンバと基準チャンバについての第3、第4圧力のそれぞれを測定でき、この第3、第4圧力を用いてポンプ制御チャンバの容積を求めることができる。第3、第4圧力は実質的に相互に対して等しくない。上述したものと同様に、調整、隔離、流体接続、決定ステップを繰返し、ポンプ制御チャンバについて求めた2つの容積間の差分を求めることができ、ここで、この差分はポンプによって送られる流体の容積を表す。
【0070】
別の実施形態では、ポンプは使い捨てカセットの一部であり、ポンプ制御チャンバは透析処置に使用する透析器の一部である。
本発明の別の態様では、医療点滴システムはポンプ制御チャンバと、制御面の少なくとも一部はポンプ制御チャンバ内の圧力の変化に応答して移動可能であるようにポンプ制御チャンバに関連した制御面と、制御面に隣接して配置され、少なくとも1つのポンプチャンバ内の流体が制御面の一部分の動きに応答して移動するように構成された少なくとも1つのポンプチャンバを有する流体ハンドリングカセットと、ポンプ制御チャンバと流体的に接続可能である基準チャンバと、ポンプ制御チャンバ内の圧力を調整し、流体ハンドリングカセットのポンプチャンバ内の流体の動きを制御するように構成された制御システムを含む。この制御システムは、ポンプ制御チャンバが基準チャンバから隔離されている時に、ポンプ制御チャンバの第1圧力を測定し、また、基準チャンバがポンプ制御チャンバから隔離されている時に、基準チャンバの第2圧力を測定し、ポンプ制御チャンバと基準チャンバを流体接続させ、基準チャンバとポンプ制御チャンバを流体接続させた後に、ポンプ制御チャンバおよび基準チャンバのそれぞれに関連した第3圧力を測定し、さらに、第1および第2、第3、第4の測定した圧力と、ポンプ制御チャンバと基準チャンバが流体接続している際に断熱的に生じるポンプ制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力の等化を定義する数学モデルとに基づいて、ポンプ制御チャンバの容積を決定するように構成できる。
【0071】
一実施形態では、第3及び第4圧力は互いに実質的に不均等であり、例えばポンプ制御チャンバと基準チャンバの圧力の相当量が等化する前に第3及び第4圧力を測定することができる。
【0072】
本発明の別の態様では、ポンプによって移動される流体の容積を求める方法は、ポンプの一部分の動きに基づいて少なくとも一部が変化する容積を持ったポンプ制御チャンバが基準チャンバから隔離されている時に、ポンプ制御チャンバの第1圧力を測定することと、基準チャンバがポンプ制御チャンバから隔離されている時に、基準チャンバの第2圧力を測定することと、基準チャンバとポンプ制御チャンバを流体接続した後に、ポンプ制御チャンバおよび基準チャンバの両方に関連して第3圧力を測定することと、第1および第2、第3の測定した圧力に基づきポンプ制御チャンバの容積を求めることを含む。
【0073】
一実施形態では、ポンプ制御チャンバと基準チャンバ内の圧力の完全な等化が完了した後に第3圧力を測定できる。一実施形態では、ポンプチャンバ容積を決定するために用いるモデルは、ポンプチャンバと基準チャンバの間の圧力を等化させるために断熱システムを仮定することができる。
【0074】
本発明の1つの態様では、ポンプチャンバ内の空気の存在を判断する方法は、ポンプ制御チャンバが基準チャンバから隔離されている時に、ポンプ制御チャンバの圧力を測定することを含み、このポンプ制御チャンバは既知の容積を有し、少なくとも部分的に液体で充填されているポンプチャンバから膜によって分離されており、該方法はさらに、基準チャンバがポンプ制御チャンバから分離されている時に、既知の容積を有するこの基準チャンバの圧力を測定することと、基準チャンバとポンプ制御チャンバを流体接続した後および両チャンバ内の圧力が等化する時間の前に圧力を測定することと、測定した圧力と既知の容積とに基づいて、ポンプチャンバ内の気泡の有無を判断することを含む。
【0075】
一実施形態では、気泡の有無の判断に用いるモデルは、隔離されたポンプ制御チャンバと基準チャンバの圧力が測定される時点から両チャンバが流体接続した後の時点まで、断熱システムを仮定する。別の実施形態では、膜をポンプ制御チャンバの壁に向かって引き寄せた状態で、ポンプ制御チャンバの圧力を測定する。
【0076】
本発明の別の態様では、自動腹膜透析システムは、少なくとも1つのポンプチャンバを有する使い捨て流体ハンドリングカセットに結合するように構成および配置された再使用可能なサイクラーを含む。使い捨て流体ハンドリングカセットは、第1のコラプシブルチューブ(collapsible tube)を介して患者の腹膜と、また、第2のコラプシブルチューブを介して第2ソースおよび/または送出先(例えば溶液容器ライン)と流体連通的に接続するように構成されてよい。オクルーダは、第2コラプシブルチューブを遮断していない時には第1コラプシブルチューブを選択的に遮断するように構成されて、サイクラー内に位置決めされる。一実施形態では、オクルーダは、患者ライン、排液ラインおよび/または加熱バッグラインのような複数のコラプシブルチューブを遮断することができる。カセットは略平面的な本体を設けており、この本体はその第1面に凹みとして形成された少なくとも1つのポンプチャンバと、複数の流体用流路と、第1コラプシブルチューブに接続するために本体の第1端部に配置された患者ラインポートと、本体の第1端部とは反対側にある第2端部に配置され、第2コラプシブルチューブと接続するように構成された溶液ラインポートとを設けている。オクルーダは、第2コラプシブルチューブは遮断せずに、第1管と第3コラプシブルチューブ(例えば廃液用)を選択的に遮断するように構成されてサイクラー内に位置決めされている。
【0077】
別の実施形態では、オクルーダは、旋回的に相互と接続する対向する第1および第2の遮断部材と、第1および第2遮断部材のうちの少なくとも一つの遮断部材に接続されているか当該少なくとも一つの遮断部材の少なくとも一部を備える管接触部材と、第1および第2遮断部材のうちの少なくとも一つの遮断部材に力を印加するように構造され、位置決めされたフォースアクチュエータとを含む。フォースアクチュエータによって力が印加されると、管接触部材が管遮断位置と開位置の間で動く。オクルーダは、遮断部材にフォースアクチュエータによる力が印加されていない場合でも、操作者が手動で管接触部材を管遮断位置から開位置へ移動できるように構成および位置決めされた解放部材を含み得る。フォースアクチュエータは、第1および第2遮断部材の両方を曲げるのに十分な力を印加することができるので、フォースアクチュエータが第1および第2遮断部材を曲げるべくこれらに力を印加すると、管接触部材が管遮断位置と開位置の間で移動する。遮断部材は、対向する第1端部と第2端部で旋回的に接続し合ったばね板であってよく、管接触部材は第1端部にてばね板に接続したピンチヘッドであってよく、一方、ばね板の第2端部は、オクルーダが接続しているハウジングに直接または間接的に固定される。一実施形態では、フォースアクチュエータは、第1遮断部材と第2遮断部材の間に位置決めされた膨張可能な袋を備える。フォースアクチュエータは、管接触部材を管遮断位置と開位置の間で移動させられるように、第1遮断部材と第2遮断部材が対向する領域内で、第1遮断部材と第2遮断部材の間の距離を延ばすことができる。一実施形態では、フォースアクチュエータは、管接触部材を管遮断位置から開位置へ移動させるために、遮断部材の一方または両方を曲げることができる。
【0078】
ここまで様々な態様を説明したが、これ以降では例示的な実施形態を参照しながら説明する。本発明の様々な態様は、単独で、および/または、本発明の他の態様との任意の適切な組み合わせにおいて使用できる点が理解される。例えば、ここで説明したポンプ容積決定機能を、既述の特定の特徴を持った液体ハンドリングカセットと、あるいはその他任意の適切なポンプ構成と併用することが可能である。
【0079】
本発明の態様を、少なくとも一部を以下の図面に示した例示的な実施形態を参照しながら以下で説明する。図面中、同様の要素には同様の参照符号を用いている。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】本発明の1つ以上の態様を組み込む自動腹膜透析(APD)システムの略図を示す。
【
図2】
図1のAPDシステムと併用される例示的なセットの略図である。
【
図3】第1実施形態におけるカセットの展開斜視図である。
【
図4】
図3の線4-4に沿ったカセットの断面図である。
【
図5】例示的実施形態での事前形成されたポンプチャンバ部を有する膜の形成に使用できる真空モールドの斜視図である。
【
図7】例示的実施形態における2つの異なるスペーサ配列を含んだカセット本体の正面図である。
【
図10】サイクラーのドアが開位置にある、
図1のAPDシステムの斜視図である。
【
図11】
図10に示したサイクラーのドアの内側の斜視図である。
【
図12】第1実施形態におけるキャリッジ駆動アセンブリおよびキャップストリッパの右正面斜視図である。
【
図13】
図12のキャリッジ駆動アセンブリおよびキャップストリッパの左正面斜視図である。
【
図14】
図12のキャリッジ駆動アセンブリの部分背面図である。
【
図15】第2の例示的実施形態におけるキャリッジ駆動アセンブリの背面斜視図である。
【
図16】
図15のキャリッジ駆動アセンブリおよびキャップストリッパの左背面斜視図である。
【
図17】例示的実施形態におけるキャップストリッパ要素の左正面斜視図である。
【
図18】
図17のキャップストリッパ要素の右正面斜視図である。
【
図23】例示的実施形態における溶液ラインのコネクタ端部の近接展開図である。
【
図24】
図10のサイクラー内に搭載されているカセットおよび溶液ラインの略図である。
【
図25】
図10のサイクラーのドアのそれぞれの場所に配置したカセットと溶液ラインの略図である。
【
図26】サイクラーのドアを閉めた状態にあるカセットおよび溶液ラインの略図である。
【
図27】溶液ラインがスパイクキャップと係合した状態の略図である。
【
図28】スパイクキャップおよび溶液ラインキャップと係合したキャップストリッパの略図である。
【
図29】カセットから離間させた状態の、キャップとスパイクキャップを取り付けた溶液ラインの略図である。
【
図30】溶液ラインキャップおよびスパイクキャップから離間させた溶液ラインの略図である。
【
図31】溶液ラインキャップおよびスパイクキャップと共に引き込み状態にあるキャップストリッパの略図である。
【
図32】カセットのスパイクと係合した溶液ラインの略図である。
【
図33】対応するカセットのスパイクに関連して示す5段階の溶液ライン接続動作を備えたカセットの断面図である。
【
図34】ポンプチャンバに隣接するカセット背面側に異なる配列を含む別の例示的実施形態におけるカセットの背面図を示す。
【
図35】例示的実施形態におけるカセットのスパイクの端面図を示す。
【
図36】
図10の実施形態においてカセットと相互作用するサイクラーの制御面の正面図を示す。
【
図37】
図36のインターフェースのためのアセンブリの展開図を示す。
【
図38】例示的実施形態におけるオクルーダの展開斜視図を示す。
【
図40】袋が空気を抜いた状態にある、
図38のオクルーダの上面図を示す。
【
図41】袋が膨張状態にある、
図38のオクルーダの上面図を示す。
【
図42】例示的実施形態におけるカセットのポンプチャンバと、関連する制御構成部品と、流入/流出路の略図である。
【
図43】
図42の実施形態について、バルブX2の開放時点からバルブX2開放後しばらく経つまでの経過を追った、制御チャンバおよび基準チャンバのための例示的な圧力バルブのグラフである。
【
図44】ハウジングの上方部分を取り除いた状態にある、
図10のサイクラーの内部の斜視図である。
【
図45】APDシステムのための制御システムの例示的な実装を示す略ブロック線図である。
【
図46】
図45の制御システムのためのユーザインターフェースコンピュータと自動コンピュータの例示的なソフトウェアサブシステムを示す略ブロック線図である。
【
図47】様々なサブシステム間での情報と、APDシステムの処理のフローを示す。
【
図49】治療の最初の補充部および透析部における、治療モジュールプロセスの例示的な対話を示すシーケンス図を示す。
【
図50】APDシステムのタッチスクリーンインターフェース上に表示できる警告および警報に関連した例示的なスクリーンビューを示す。
【
図51】APDシステムのタッチスクリーンインターフェース上に表示できる警告および警報に関連した例示的なスクリーンビューを示す。
【
図52】APDシステムのタッチスクリーンインターフェース上に表示できる警告および警報に関連した例示的なスクリーンビューを示す。
【
図53】APDシステムのタッチスクリーンインターフェース上に表示できる警告および警報に関連した例示的なスクリーンビューを示す。
【
図54】APDシステムのタッチスクリーンインターフェース上に表示できる警告および警報に関連した例示的なスクリーンビューを示す。
【
図55】APDシステムのタッチスクリーンインターフェース上に表示できる警告および警報に関連した例示的なスクリーンビューを示す。
【
図56】例示的実施形態におけるエラー状態の検出および回復のための構成部品の状態と動作を示す。
【
図57】APDシステムのUIビューサブシステムの例示的なモジュールを示す。
【
図58】例示的な実施形態において、システム設定、治療状況、表示設定、遠隔アシスタンス、パラメータ設定に関する情報をユーザに提供し、ユーザからの入力を受信する、例示的なユーザインターフェーススクリーンを示す。
【
図59】例示的な実施形態において、システム設定、治療状況、表示設定、遠隔アシスタンス、パラメータ設定に関する情報をユーザに提供し、ユーザからの入力を受信する、例示的なユーザインターフェーススクリーンを示す。
【
図60】例示的な実施形態において、システム設定、治療状況、表示設定、遠隔アシスタンス、パラメータ設定に関する情報をユーザに提供し、ユーザからの入力を受信する、例示的なユーザインターフェーススクリーンを示す。
【
図61】例示的な実施形態において、システム設定、治療状況、表示設定、遠隔アシスタンス、パラメータ設定に関する情報をユーザに提供し、ユーザからの入力を受信する、例示的なユーザインターフェーススクリーンを示す。
【
図62】例示的な実施形態において、システム設定、治療状況、表示設定、遠隔アシスタンス、パラメータ設定に関する情報をユーザに提供し、ユーザからの入力を受信する、例示的なユーザインターフェーススクリーンを示す。
【
図63】例示的な実施形態において、システム設定、治療状況、表示設定、遠隔アシスタンス、パラメータ設定に関する情報をユーザに提供し、ユーザからの入力を受信する、例示的なユーザインターフェーススクリーンを示す。
【
図64】例示的な実施形態において、システム設定、治療状況、表示設定、遠隔アシスタンス、パラメータ設定に関する情報をユーザに提供し、ユーザからの入力を受信する、例示的なユーザインターフェーススクリーンを示す。
【
図65】例示的な患者データキーと、これに関連し、APDシステムとの間で患者データを転送するためのポートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
腹膜透析システムに関連して本発明の態様を説明するが、本発明の特定の態様は、点滴静注システムまたは体外血流システムなどの点滴システム、および胃、腸管、膀胱、胸膜腔、またはその他の体内または器官の腔用の潅注および/または流体交換システムを含む、その他の医療用途にも使用可能である。よって、本発明の態様は特に腹膜透析への使用にも、一般的な透析への使用にも限定されない。
【0082】
APDシステム
図1は、本発明の1または複数の態様を組み込むことのできる自動腹膜透析(APD)システム10を示す。
図1に示すように、たとえば、図示した本実施形態のシステム10は、透析液送出セット12(特定の実施形態では使い捨てセットでもよい)と、送出セット12と相互作用して溶液容器20(たとえば、バッグ)によって提供される液体を送り出すサイクラー14と、APD手順を実行するプロセスを統治する制御システム16(たとえば、プログラムされたコンピュータまたはその他のデータプロセッサ、コンピュータメモリ、ユーザまたはその他の装置に情報を提供し、そこからの入力を受け取るインターフェース、1または複数のセンサ、アクチュエータ、リレー、気圧ポンプ、タンク、電源、および/またはその他の適切な構成部品などを含む。
図1にはユーザ制御入力を受け取るための数個のボタンしか示されていない。制御システムの構成部品に関するさらなる詳細は後述)とを含む。図示した本実施形態では、サイクラー14と制御システム16は共通のハウジング82に関連付けられるが、2つまたはそれ以上のハウジングに関連付けられてもよく、互いに独立していてもよい。サイクラー14は、テーブルトップや家庭に通常見られるその他の比較的小さな表面上で作業できるように適合されたコンパクトな設置面積を有する。サイクラー14は軽量で携帯可能なものであり、たとえば、ハウジング82の対向面に設けられたハンドルを介して手持ちで運搬できる。
【0083】
本実施形態のセット12は、1回のみの使用の使い捨てアイテムであることを意図しているが、1または複数の再利用可能な構成部品を含んでもよい、あるいは、全体が再利用可能であってもよい。ユーザは、各APD治療セッションを開始する前に、たとえば、セット12の各種ラインにおける流体流を送出し制御するためにカセット24と相互作用するサイクラー14のフロントドア141内にカセット24を搭載することによって、セット12とサイクラー14とを関連付ける。たとえば、透析液は、APDを実行するために患者へおよび患者から送出されることができる。治療後、ユーザはサイクラー14からセット12の構成部品の全部または一部を取り外すことができる。
【0084】
本技術分野において周知なように、使用に先立ち、ユーザは、セット12の患者ライン34を留置腹腔カテーテル(図示せず)に接続部36で接続することができる。一実施形態では、サイクラー14は、1または複数の異なる種類のカセット24、たとえば異なるサイズの患者ライン34を有するカセットとともに動作するように構成することができる。たとえば、サイクラー14は、成人患者用のサイズの患者ライン34を有する第1の種類のカセットと、幼児または小児用のサイズの患者ライン34を有する第2の種類のカセットと共に動作するように構成することができる。小児用患者ライン34はラインの容積を最小限にとどめるように成人用ラインよりも短く小さな内径を有しており、これにより透析液の送出を一層制御できるようになり、セット12が連続的排液および注液サイクルで使用されるとき小児患者に比較的大量の使用済み透析液が戻るのを回避するのを助けることができる。ライン26によってカセット24に接続されている加熱バッグ22は、サイクラー14のヒータ容器受入部(この場合、トレイ)142上に配置することができる。サイクラー14は、透析液が加熱トレイ142、たとえば、トレイ142と関連付けられる電気抵抗加熱素子によって、約37℃の温度まで加熱されるように、新しい透析液(カセット24を介して)を加熱バッグ22に送り出すことができる。加熱された透析液は、カセット24および患者ライン34を介して加熱バッグ22から患者に提供することができる。別の実施形態では、透析液は、透析液を加熱トレイ142と接触するチューブ、またはライン内流体ヒータ(カセット24内に設けることができる)を通過させることによって、カセット24に入ると、あるいはカセット24から出た後、患者に届く途中で加熱させることができる。使用済み透析液は、患者ライン34を介して患者からカセット24へ、そして、排液ライン28内へ送り出すことができ、該排液ラインは、排液ライン28の1または複数の枝路を通る流れを制御するために1または複数の締め金を含むことができる。図示した本実施形態では、排液ライン28は、排液ライン28と、専用排液容器、および試験またはその他の解析のために使用済み透析液のサンプルを採取する排出サンプルポート282とを接続するコネクタ39を含むことができる。ユーザは、1または複数の容器20のライン30をドア141内に搭載することもできる。ライン30は、連続的またはリアルタイム透析液作製システムに接続することもできる(ライン26、28、30、34は、可撓管および/または適切なコネクタおよびその他の構成部品(ピンチバルブなど)を要望に応じて含むことができる)。容器20は、点滴用滅菌腹膜透析液またはその他の物質(例えば、水と混合する、あるいは様々な種類の透析液と混合することによって透析液を処方するためにサイクラー14によって使用される物質)を含有することができる。ライン30は、取り外し可能なキャップによって覆われる、
図1に示されるカセット24のスパイク160に接続することができる。後でより詳細に述べる本発明の一態様によると、サイクラー14は、カセット24の1または複数のスパイク160からキャップを自動的に取り外し、溶液容器20のライン30を対応するスパイク160に接続することができる。この特徴は、スパイク160と非滅菌アイテムとの接触機会を低減することによって感染または汚染の可能性を低減するのに役立つこととなる。
【0085】
様々な接続がなされると、制御システム16は、APD手順の典型的な一連の注液、貯留、および/または排液サイクルを通じてサイクラー14のペースを調整することができる。たとえば、注液段階中、サイクラー14は、1または複数の容器20(またはその他の透析液供給源)から加熱バッグ22に(カセット24を介して)加熱のために透析液を送り出すことができる。その後、サイクラー14は、加熱バッグ22からカセット24を通り、患者ライン34を介して患者の腹膜腔に加熱された透析液を注入することができる。貯留段階後、サイクラー14は、排液段階を開始することができ、排液段階では、サイクラー14がライン34を介して(再びカセット24により)患者から使用済み透析液を圧送し、排液ライン28を介して近くの排液口(図示せず)に使用済み透析液を排出する。
【0086】
サイクラー14は、溶液容器20および/または加熱バッグ22を必ずしもサイクラー14の上方の所定の頭高に配置させる必要はない。というのはサイクラー14は必ずしも重力流システムではないからである。その代わりに、ソース溶液容器20がサイクラー14の上方、下方、または同じ高さにあり、患者がサイクラーの上方または下方にいるときでも、サイクラー14は重力流を模倣するか、あるいは他の方法で透析液の流れを適切に制御することができる。たとえば、サイクラー14は、所与の手順中、一定の頭高にあることを模倣することができる、あるいは、サイクラー14は手順中に透析液に印加される圧力を上げる、あるいは下げるために有効頭高を変更することができる。サイクラー14は、透析液の流速を調節することもできる。本発明の一態様では、サイクラー14は、注液または排液動作にともなう患者の感覚を低減するように、患者に透析液を供給するときあるいは患者から引き出すときの透析液の圧力および/または流速を調節することができる。このような調節は、単独の注液および/または排液サイクル中に行ったり、異なる注液および/または排液サイクルをまたいで行うことができる。一実施形態では、サイクラー14は、排液動作の最後近くで、患者から使用済み透析液を抜き出すのに使用される圧力を漸減させることができる。サイクラー14は人為的な頭高を確定できるため、特定の生理とまたは患者の相対的高度の変化と相互作用するとともに、それらに適合する柔軟性を有することができる。
【0087】
カセット
本発明の一態様では、カセット24は、溶液供給ラインに対して個々に遮断可能な患者ラインと排液ラインとを含むことができる。すなわち、たとえば、1または複数の溶液供給ラインを通る流れを遮断する必要なく、流れを停止するようにラインをつまむことによって、患者ラインへのおよび患者ラインからの安全上重要な流れを制御することができる。この特徴は簡易なオクルーダ装置を実現可能にする。というのは、患者の安全にほとんどあるいは全く影響を与えない他のラインを遮断するのとは反対に、2つのラインのみに関して遮断を実行することができるためである。たとえば、患者または排液の接続が切られた状況において、患者および排液ラインを遮断することができる。しかし、溶液供給ラインおよび/または加熱バッグラインは流れのために開放されたままであるため、サイクラー14は次の透析サイクルの準備をすることができる。たとえば、患者ラインと排液ラインの個々の遮断は、1または複数の容器20から加熱バッグ22またはその他の溶液容器20への透析液の圧送をサイクラー14に継続させながらも、患者の安全を確保するのに役立つ。
【0088】
本発明の別の態様では、カセットは、カセットの一方の面または部分に患者ライン、排液ライン、および加熱バッグラインを有し、カセットの他方の面または部分にたとえばカセットの反対側に1または複数の溶液供給ラインを有することができる。このような構成により、上述したように溶液ラインに対して、患者、排液、または加熱バッグラインを個々に遮断することができる。カセットに装着されるラインを種類別または機能別で物理的に分けることで、特定の種類または機能のラインとの相互作用をより効率的に制御することができる。たとえば、このような構成は、カセットに至る、あるいはカセットから出て行くすべてのラインを遮断するよりも、これらのラインのうち1つ、2つ、または3つを遮断するのに必要な力の方が小さいため、オクルーダの設計の簡易化を可能にする。あるいは、この構成は、より詳細に後述するように、溶液供給ラインとカセットとのより有効な自動接続を可能にする。すなわち、溶液供給ラインおよびそれらに対応する接続部が患者ライン、排液ライン、および/または加熱バッグラインから離れて配置され、自動キャップ取り外し接続装置は、カセット上のスパイクのキャップおよび溶液供給ライン上のキャップを取り外し、患者ライン、排液ライン、または加熱バッグラインに干渉せずにラインと各スパイクとを接続することができる。
【0089】
図2は、上述の本発明の態様が組み込まれたカセット24の例示的な実施形態を示す。本実施形態では、カセット24は、略平面的な本体と加熱バッグライン26とを有し、排液ライン28および患者ライン34はカセット本体の左端部の対応するポートに接続され、カセット本体の右端部は、溶液供給ライン30を接続することのできる5つのスパイク160を含むことができる。
図2に示される構成では、各スパイク160はスパイクキャップ63によって覆われ、該スパイクキャップが取り外されると対応するスパイクは露出して、対応するライン30と接続可能となる。上述したように、ライン30は、たとえば、透析での使用および/または透析液の処方のために、1または複数の溶液容器またはその他の物質源に装着することができる、あるいは、サンプリングまたは腹腔均等化テスト(PETテスト)のために1または複数の回収バッグに接続することができる。
【0090】
図3および4は、図示した本実施形態のカセット24の展開図(それぞれ斜視図と上面図)である。カセット24は、略平面的で比較的薄く平坦な部材で形成され、たとえば、適切なプラスチックから成形、押出成形、またはそれ以外の方法で形成された構成部品を含むことができる。本実施形態では、カセット24は、カセット24のフレームまたは構造部材として機能するとともに、各種流チャネル、ポート、バルブ部などを少なくとも部分的に形成するベース部材18を含む。ベース部材18は、適切なプラスチック、あるいはポリメタクリル酸メチル(PMMA)アクリルまたは環式オレフィンコポリマー/超低密度ポリエチレン(COC/ULDPE)などのその他の材料で成形する、あるいはその他の方法で形成することができ、比較的剛体であり得る。一実施形態では、COCとULDPEの比は約85%/15%とすることができる。
図3は、ベース部材18内に形成される、加熱バッグ(ポート150)、排液(ポート152)、および患者(ポート154)用のポートも示す。これらのポートはそれぞれ、たとえば、外側リングまたはスカート158から延出する中央管156、または中央管のみなど、任意の適切な方法で配置することができる。加熱バッグライン、排液ライン、および患者ライン26、28、および34の各可撓管は、中央管156に接続され、もしあれば外側リング158と係合することができる。
【0091】
ベース部材18の両側は、膜15および16、たとえば、鋳造、押出成形、またはそれ以外の方法で形成されたポリ塩化ビニル(PVC)製の可撓ポリマー膜で少なくとも部分的に覆うことができる。もしくは、シートは、たとえば、共押出可能接着剤(CXA)によって共に保持した2層以上のポリシクロヘキシレンシクロヘキサンジカルボン酸ジメチレン(PCCE)および/またはULDPEの積層体として形成することができる。いくつかの実施形態では、膜厚は約0.002~0.020インチ厚(約0.005cm~0.05cm)の範囲とすることができる。好適な実施形態では、PVC系の膜の厚さは約0.012~0.016インチ厚(約0.03cm~0.04cm)の範囲、より好適には約0.014インチ厚(約0.035cm)とすることができる。別の好適な実施形態では、たとえば積層シートの場合、積層体の厚さは約0.006~0.010インチ厚(約0.015cm~0.025cm)の範囲、より好適には約0.008インチ厚(約0.02cm)とすることができる。
【0092】
両膜15および16は、カセット24の流路の一部を閉鎖するかあるいは区画する機能を果たし得るだけでなく。移動あるいは操作されてバルブポートを開閉したりカセット24内の流体を移動させるポンプ隔壁、隔膜、または壁の一部として機能し得る。たとえば、膜15および16は、ベース部材18上に配置し、(たとえば、熱、接着剤、超音波溶接、またはその他の手段により)ベース部材18の周縁を封止して流体がカセット24から漏れるのを防ぐことができる。さらに、膜15は、たとえば様々なチャネルを形成するベース部材18の他の内壁に接合することができる、あるいは、カセット24が適切にサイクラー14内に搭載されたときに、ベース部材18の壁およびその他の機能と封止接触するように押圧することができる。よって、膜15および16はどちらも、たとえば、使用後にサイクラー14からの取り外し時にカセット24から流体が漏れるのを防止するためにベース部材18の周縁を封止しつつも、ベース部材18の別の部分上に位置するように構成することができる。いったんサイクラー14内に配置されれば、カセット24は、膜15および16が外周の内部の領域で押圧されベース部材18と封止接触することによってチャネルやバルブポートなどを互いに適切に封止するように、対向するガスケットまたはその他の部材の間で押しつぶすことができる。
【0093】
その他の構成の膜15および16も可能である。たとえば、膜16は、本体18に接合される、あるいはその他の方法で本体18と一体化される剛体の材料シートによって形成することができる。よって、膜16は必ずしも可撓部材でなくてもよいし、可撓部材を含まなくてもよい。同様に、膜15は全面にわたって柔軟である必要はなく、その代わりに、ポンプおよび/またはバルブ動作を可能にする1または複数の可撓部と、たとえばカセット24の流路を閉鎖するための1または複数の剛体部とを含むことができる。たとえば、サイクラー14がカセットの流路を封止し、バルブおよびポンプ機能などを制御する適切な部材を含む場合、カセット24が膜16または膜15を含まないことも可能である。
【0094】
本発明の別の態様によると、膜15は、ベース18内の対応するポンプチャンバ181の凹み形状に厳密に一致した形状を有するように形成されるポンプチャンバ部151(「ポンプ膜」)を含むことができる。たとえば、膜15は、ベース部材18のポンプチャンバ凹みに適合する熱成形(またはその他の方法で形成)されたドーム形状を有する平坦部材151として概して形成することができる。予め形成されたポンプチャンバ部151のドーム形状は、たとえば、
図5に示される種類の真空成形金型上で膜を加熱し形成することによって作製することができる。
図5に示すように、真空は、金型の壁に沿った複数の穴を通して印加することができる。もしくは、金型の壁は多孔性の気体透過材料で作製することができ、その結果、成形された膜が一層均等に滑らかな表面を有する。このように、膜15がポンプチャンバ181内へ、および(おそらくは)スペーサ要素50と接触するように(たとえば、ポンプチャンバ181から外へ流体を圧送しつつ
図4の実線で示されるように)最大まで移動するとき、および膜15がポンプチャンバ181から(たとえば、ポンプチャンバ181内へ流体を引き込みつつ
図4の点線で示されるように)最大まで引き出されるときの両方で、膜15は、膜15の伸長(または膜15の少なくとも最小の伸長)を必要とせずに圧送動作を実行するため、ポンプチャンバ181に対して移動させることができる。膜15の伸長防止は、シート伸張による圧力急増またはその他の流体送出圧力の変化を回避する、および/または圧送動作中の圧力変動を最小限に抑えようとする際のポンプ制御を簡易化するのに役立つ。(たとえば、伸長中に膜15にかかる応力から生じる膜15の断裂による)膜15の故障の可能性の低減、および/または、より詳細に後述するように、ポンプ送出容積測定の精度向上など、その他の利点もある。一実施形態では、ポンプチャンバ部151は、ポンプチャンバ181の約85~110%のサイズ(たとえば容積を定義)を有するように形成することができる。たとえば、ポンプチャンバ部151がポンプチャンバ容積の約100%の容積を画定する場合、ポンプチャンバ部151はポンプチャンバ181内で、静置されたまま応力を印加されずにスペーサ50と接触して配置することができる。
【0095】
液体がポンプチャンバを出入りする注液および送出行程を生成するために利用される圧力を一層うまく制御できる機能を備えることにより、いくつかの利点を有することができる。たとえば、ポンプチャンバが排液サイクル中に患者の腹膜腔から流体を抜き出すときには、可能な最小負圧を印加することが望ましいであろう。患者は、一部には注液工程中にポンプに印加される負圧のため、患者は治療の排液サイクル中に不快感を覚えるかもしれない。予め形成された膜が注液工程中に印加される負圧をさらに制御できることは、患者の不快感を軽減するのに役立てることができる。
【0096】
カセットポンプチャンバの外形に合わせて予め形成されたポンプ膜を使用することによって、その他多くの利点が得られる。たとえば、一定な圧力または真空を圧送行程全体で印加することができるため、ポンプチャンバを通る液体の流速をより一定にすることができ、それにより、液体の加熱の制御プロセスが簡易化される。さらに、カセットポンプ内の温度変化が、膜を移動させる動学、およびポンプチャンバ内の圧力の測定精度に及ぼす影響を低減することができる。また、流体ライン内の圧力急増を最小限に抑えることができる。また、膜の制御(たとえば空気圧)側で圧力トランスデューサによって測定される圧力と、膜のポンプチャンバ側での液体の実際の圧力とを相関させることがより簡易になる。ひいては、治療前に患者および流体源バッグの頭高測定をより正確にし、ポンプチャンバ内の空気を検出する感度を高めることができ、また容積測定の精度を高めることができる。さらに、膜を伸張させる必要がないため、より大きな容積のポンプチャンバを構成し使用することができる。
【0097】
本実施形態では、カセット24はベース部材18内に形成される一対のポンプチャンバ181を含むが、1つのポンプチャンバまたは3つ以上のポンプチャンバも可能である。本発明の一態様によると、ポンプチャンバ181の内壁は、互いに間隔をおいて配置され、膜15の部分がポンプチャンバ181の内壁に接触するのを避けるためにポンプチャンバ18の内壁から延伸するスペーサ要素50を含む(
図4の右側ポンプチャンバ18に示されるように、内壁は側部181aと底部181bによって画定される。スペーサ50は本実施形態では底部181bから上向きに延伸するが、側部181aから延伸したり、あるいは別の方式で形成してもよい)。膜15とポンプチャンバ内壁との接触を避けることにより、スペーサ要素50は、ポンプチャンバ181内に空気またはその他の気体を捕捉し、いくつかの状況下で気体がポンプチャンバ181から外に押し出されるのを回避するのに役立てることのできるデッドスペース(または捕捉容積)を提供することができる。他の場合では、スペーサ50は、たとえば始動中に気体をポンプチャンバ181から除去できるように、気体がポンプチャンバ181の出口へ移動するのを助けることができる。また、スペーサ50は、膜15がポンプチャンバ内壁に密着してしまうのを防止るのを助けたり、膜15がスペーサ要素50と接触するように押圧されるとしても、流れが継続的にポンプチャンバ181内を通過させるのを助けることができる。また、スペーサ50は、シートが偶然に非均等にポンプチャンバ内壁に接触する場合、ポンプチャンバの出口ポート(開口部187および/または191)が早まって閉鎖されるのを回避する。スペーサ50の構成および/または機能のさらなる詳細は米国特許第6,302,653号および第6,382,923号に記載されている。これら両特許は参照により本文書に組み込まれる。
【0098】
本実施形態では、スペーサ要素50は一種の「スタジアム座席」構成で配列され、該構成において、スペーサ要素50は同心の楕円パターンで配列され、スペーサ要素50の端部がポンプチャンバ181の中心から距離を置き内壁の底部181bから次第に高くなっていき、半楕円のドーム状領域(
図4の点線で示す)を形成する。スペーサ要素50の端部が膜15のポンプチャンバ部151によって掃引されることを意図したドーム領域を画定する半楕円領域を形成するようにスペーサ要素50を配置することで、ポンプチャンバ181の意図する行程容積への低減を最小限とする所望量のデッドスペースを可能とする。
図3(および
図6)に見られるように、スペーサ要素50が配列される「スタジアム座席」構成は、楕円パターンで「通路」または分断部50aを含むことができる。分断部(または通路)50aは、流体がポンプチャンバ181から送出される間、スペーサ要素50間の列(空隙またはデッドスペース)50b全体で均等な気体レベルを維持するのを助ける。たとえば、スペーサ要素50が分断部(または通路)50aやスペーサ要素50間に液体および空気を流させるその他の手段を持たずに
図6に示されるようなスタジアム座席構成で配列された場合、膜15はポンプチャンバ181の最外周に配置されるスペーサ要素50上で最も低い位置をとり、この最も外のスペーサ要素50とポンプチャンバ壁の側部181aとの間の空隙に存在するどんな気体または液体も捕捉する。同様に、膜15が任意の2つの隣接するスペーサ要素50上で最も低い位置を取る場合、要素50間の空隙内の気体および液体が捕捉され得る。このような構成において、圧送行程の最後に、ポンプチャンバ181の中心の空気またはその他の気体は送出され、液体は外側列に残る可能性がある。分断部(または通路)50aまたはスペーサ要素50間の空隙間の流体連通のためのその他の手段を設けることは圧送行程中で、空隙全体を通じて均等な気体レベルを維持するのを助けるため、ある液体容積が実際に送出されない限り、空気またはその他のガスがポンプチャンバ181を離れるのを防ぐことができる。
【0099】
特定の実施形態では、膜15がスペーサ50と接触する、あるいはそれ以外にスペーサ50間の空隙内に大きく拡張するとき、概して個々のスペーサ50を包むあるいはそれ以外の形で変形することのないように、スペーサ要素50および/または膜15を配置することができる。このような構成は、1または複数の個々のスペーサ要素50の周囲を包む、あるいはそれ以外の形で変形することにより生じる膜15の伸長または損傷を低減することができる。たとえば、本実施形態では、スペーサ50間の空隙のサイズをスペーサ50の幅方向で略均等にすることが有益であることが判明した。この特徴は、膜15の変形、たとえば、圧送動作中に膜15がスペーサ50と接触するように付勢される場合の、スペーサ50間の空隙への膜の弛みを防止するのに役立つことを示す。
【0100】
本発明の別の態様によると、ポンプチャンバ181の内壁は、膜15のポンプチャンバ部151によって掃引されることを目的とした空間、たとえば半楕円またはドーム状の空間よりも大きい凹みを画定することができる。このような例では、1または複数のスペーサ要素50は、ドーム領域内に延伸せずに、膜部151によって掃引されることを目的としたドーム領域の下方に配置することができる。ある例では、スペーサ要素50の端部は、膜15によって掃引されることを目的としたドーム領域の外周を画定することができる。膜部151によって掃引されることを目的としたドーム領域の外周の外に、または隣接してスペーサ要素50を配置することは、多くの利点を備えることができる。たとえば、スペーサ要素が可撓膜によって掃引されることを目的としたドーム領域の外部にあるように、あるいは隣接するように1または複数のスペーサ要素50を配置することで、上述したように、ポンプチャンバ181の目標行程容積までの低減を最小限にとどめつつ、スペーサと膜の間にデッドスペースが設けられる。
【0101】
スペーサ要素50は、ポンプチャンバ内にある場合、たとえば
図7に示すように任意の他の適切な形で配列することができると理解すべきである。
図7の左側ポンプチャンバ181は、
図6と同様に配列されるスペーサ50を含むが、ポンプチャンバ181の略中心を通って垂直に走る分断部または通路50aは1つのみである。スペーサ50は、
図6と同様の凹状を画定するように配列することができる(すなわち、スペーサ50の頂部は
図3および4に示される半楕円を形成することができる)、あるいは、球状や箱状などを形成するなど、他の適切な形に配列することができる。
図7の右側ポンプチャンバ181は、スペーサ50が縦方向に配列され、スペーサ50間の空隙50bも縦方向に配列される実施形態を示す。左側ポンプチャンバと同様、右側ポンプチャンバ181のスペーサ50も、半楕円、球状、箱状、またはその他の適切な形状の凹みを画定することができる。しかし、スペーサ要素50は固定高、図示とは異なる空間パターンなどを有することができると理解すべきである。
【0102】
また、膜15は、スペーサ要素50に加えてまたはスペーサ要素の代わりに、それ自体がスペーサ要素、またはリブ、バンプ、タブ、溝、チャネルなどのその他の特徴を有することができる。このような膜15上の特徴は、膜15などの付着防止を助ける、および/または、他の特徴、たとえば、圧送動作中に移動する際にどのようにシートが折り曲がる、あるいは他の形で変形するかを制御するのを助けるという特徴を提供することができる。たとえば、膜15上のバンプまたはその他の特徴は、シートが反復サイクル中に一貫して変形するのを助け、同じ領域で折れ曲がるのを防ぐことができる。反復サイクル中に膜15が同じ領域での折れ曲がると、膜15は折れ曲がり領域で早期に劣化するため、膜15上の特徴は、どのように、またどこで折れ曲がりが発生するかを制御するのに役立つ。
【0103】
図示した本実施形態では、カセット24のベース部材18は、複数の制御可能なバルブ機能、流路、およびカセット24内での流体の移動を誘導するその他の構造を画定する。
図6は、
図3の斜視図でも見られるベース部材18のポンプチャンバ側の平面図である。
図8はベース部材18の裏側の斜視図であり、
図9はベース部材18の裏側の平面図である。各ポート150、152、および154用の管156は、ベース部材18に形成される対応するバルブウェル183と流体連通する。バルブウェル183は、各バルブウェル183を囲む壁によって、および膜15とウェル183の周囲の壁との封止係合によって互いに流体隔離される。上述したように、膜15は、たとえば、サイクラー14内に装填されるときに、壁と接触するよう押圧されることによって各バルブウェル183の壁(およびベース部材18の別の壁)と封止係合することができる。膜15がバルブポート184と封止係合されるように押圧されない場合、バルブウェル183内の流体は対応するバルブポート184に流れ込むことができる。よって、各バルブポート184は、バルブポート184に対応づけられる膜15の部分を選択的に移動させることによって開閉可能なバルブ(たとえば、「ボルケーノバルブ」)を画定する。より詳細に後述するように、カセット24内の様々な流体チャネルまたはその他の経路を通る流れを制御するべくバルブポート(たとえばポート184)を開閉させることができるように、サイクラー14は膜15の部分の位置を選択的に制御することができる。バルブポート184を通る流れは、ベース部材18の裏側につながる。加熱バッグおよび排液(ポート150および152)に関連するバルブポート184の場合、バルブポート184はベース部材18の裏側に形成された共通チャネル200につながる。バルブウェル183と同様、チャネル200は、チャネル200を形成するベース部材18の壁と封止接触するシート16によって、カセット24の他のチャネルおよび経路から隔離される。患者ラインポート154に対応づけられるバルブポート184の場合、ポート184を通る流れは、ベース部材18の裏側で共通チャネル202につながる。
【0104】
図6に戻ると、スパイク160(
図6ではキャップを外して示される)のそれぞれは対応するバルブウェル185と流体連通し、バルブウェル185は壁によって互いに隔離され、膜15とウェル185を形成する壁とは封止係合する。膜15がポート186と封止係合しない場合、バルブウェル185内の流体は対応するバルブポート186に流れ込むことができる(ここでも、各バルブポート186上の膜15の部分の位置は、バルブポート186を開閉するようにサイクラー14によって制御することができる)。バルブポート186を通る流れは、ベース部材18の裏側と共通チャネル202とに通じる。よって、本発明の一態様によると、カセットはカセットの共通マニホルドまたはチャネルに接続される複数の溶液供給ライン(または透析液を供給するための物質を供給するその他のライン)を有することができ、各ラインは共通マニホルドまたはチャネルに関してラインを行き来する流れを制御するための対応バルブを有することができる。チャネル202内の流体は、下側ポンプバルブウェル189に通じる開口部188によりポンプチャンバ181の下側開口部187に流れ込むことができる(
図6を参照)。膜15の該当部分がポート190と封止係合するように押圧されない場合、下側ポンプバルブウェル189からの流れは下側ポンプバルブポート190を通過することができる。
図9に見られるように、下側ポンプバルブポート190は、ポンプチャンバ181の下側開口部187と連通するチャネルに通じる。ポンプチャンバ181から出る流れは上側開口部191を通過して、上側バルブポート192と連通するチャネルに入ることができる。上側バルブポート192からの流れ(膜15がポート192と封止係合していない場合)は、各上側バルブウェル194と、ベース部材18の裏側で共通チャネル200と連通する開口部193とを通過することができる。
【0105】
カセット24は、ポンプチャンバ181がポート150、152、および154および/またはスパイク160のいずれかからおよび/またはいずれかに流体を圧送できるように制御することができると認識できるであろう。たとえば、ライン30によってスパイク160のうちの1つに接続される容器20の1つから供給される新しい透析液は、適切なスパイク160に適したバルブポート186を開放する(およびおそらくはその他のスパイク用のその他のバルブポート186を閉鎖する)ことによって共通チャネル202に引き込むことができる。また、下側ポンプバルブポート190を開放し、上側ポンプバルブポート192を閉鎖することができる。その後、ポンプチャンバ181と関連づけられる膜15の部分(すなわち、ポンプ膜151)は、ポンプチャンバ181内の圧力を低下させるように(たとえば、ベース部材18およびポンプチャンバ内壁から離して)移動させることにより、選択されたスパイク160および対応するバルブポート186を通って共通チャネル202に、開口部188を通って下側ポンプバルブウェル189に、(開放した)下側ポンプバルブポート190および下側開口部187を通ってポンプチャンバ181に流体を引き込むことができる。バルブポート186は個々に動作可能であるため、スパイク160および関連のソース容器20のいずれかまたはその組み合わせを通って、所望のシーケンスで、または同時に流体を引き込むオプションを可能にする(当然ながら、流体を自身に引き入れるために動作されるのは1つのポンプチャンバ181でよい。その他のポンプチャンバは非動作にしておき適切な下側ポンプバルブポート190を閉鎖することによって閉鎖させておいてもよい)。
【0106】
ポンプチャンバ181内に流体がある場合、下側ポンプバルブポート190は閉鎖され、上側ポンプバルブポート192は開放され得る。膜15がベース部材18の方に移動すると、ポンプチャンバ181内の圧力が上昇して、ポンプチャンバ181内の流体を、上側開口部191および(開放した)上側ポンプバルブポート192を通って上側ポンプバルブウェル194に、開口部193を通って共通チャネル200に送らせることができる。チャネル200内の流体は、適切なバルブポート184を開放することにより、加熱バッグポート150および/または排液ポート152へ(および対応する加熱バッグラインまたは排液ライン内へ)進ませることができる。このように、たとえば、1または複数の容器20内の流体は、カセット24内に引き込まれ、加熱バッグ22および/または排液口に圧送させることができる。
【0107】
加熱バッグ22内の流体については、(たとえば、患者への導入のために加熱トレイ上で適切に加熱された後)加熱バッグポート150用のバルブポート184を開放し、下側ポンプバルブポート190を閉鎖して、上側ポンプバルブポート192を開放することによってカセット24に引き入れることができる。ポンプチャンバ181と関連づけられる膜15の部分をベース部材18から離れるように移動させることによって、ポンプチャンバ181内の圧力を低下させ、流体流を加熱バッグ22からポンプチャンバ181内へ送ることができる。ポンプチャンバ181が加熱バッグ22からの加熱された流体を注入されると、上側ポンプバルブポート192は閉鎖され、下側ポンプバルブポート190は開放され得る。患者ポート154用のバルブポート184を開放し、スパイク160用のバルブポート186を閉鎖することで、加熱された透析液を患者に送ることができる。ポンプチャンバ181内でベース部材18に向かう膜の運動は、ポンプチャンバ181内の圧力を上昇させて、下側ポンプバルブポート190および開口部188を通って共通チャネル202に、そして患者ポート154用の(開放された)バルブポート184へと流体を流れ込ませることができる。この動作は、所望量の加熱された透析液を患者に輸送するために適切な回数繰り返すことができる。
【0108】
患者からの廃液の際、患者ポート154用バルブポート184を開放し、上側ポンプバルブポート192を閉鎖し、下側ポンプバルブポート190を開放する(スパイクバルブポート186は閉鎖)ことができる。膜15は、患者ポート154からポンプチャンバ181に流体を引き入れるように移動させることができる。その後、下側ポンプバルブポート190を閉鎖し、上側バルブポート192を開放し、排液ポート152用のバルブポート184を開放することができる。ポンプチャンバ181からの流体は、廃棄またはサンプリングのために排液ラインへ、および排液口または回収容器に圧送することができる(もしくは、流体はサンプリングまたは排液のために1または複数のスパイク160/ライン30に送ることができる)。この動作は、十分な透析液が患者から除去されて、排液口に圧送されるまで繰り返すことができる。
【0109】
加熱バッグ22は混合容器としての役割を果たすこともできる。個々の患者の特定の治療要件に応じて、透析液またはその他の様々な成分の溶液を、適切な溶液ライン30およびスパイク160を介してカセット24に接続することができる。測定された量の各溶液は、カセット24を用いて加熱バッグ22に追加し、制御システム16がアクセス可能なメモリプロセッサメモリに記憶される1または複数の所定の処方にしたがい混合することができる。もしくは、具体的な治療パラメータを、ユーザがユーザインターフェース144を介して入力することができる。制御システム16は、スパイク160に接続される透析液または溶液容器の種類に基づき適切な混合要件を算出した後、規定された混合物の混合および患者への送出を制御することができるようプログラムされている。
【0110】
本発明の一態様によると、患者に注入されるあるいは患者から除去される透析液にポンプによって印加される圧力は、排液および注液動作中の圧力変動から生じる「牽引」や「引張り」といった患者の感覚を最小限に抑えるように、制御することができる。たとえば、透析液の排出中、吸入圧(または真空/負圧)を排液プロセスの最後辺りで低減して、透析液除去の患者の感覚を最小化させることができる。注液動作の最後辺りでも同様の手法を用いることができる、すなわち、送出圧力(または正圧)を注液の最後辺りで低減することができる。患者が治療の異なるサイクル中に流体の動きに幾分敏感になる場合、様々な注液および/または排液サイクルに合わせて様々な圧力プロファイルを使用することができる。たとえば、患者が起きているときに比べて、患者が眠っているときは、注液および/または排液サイクルに比較的高い(または低い)圧力を使用することができる。サイクラー14は、患者の睡眠/覚醒状態を、たとえば、赤外線運動検知器を用いて、患者の運動が低下したときは睡眠状態だと推測することによって、あるいは血圧、脳波、またはその他の睡眠を示すパラメータの変化を検知することによって検知することができる。もしくは、サイクラー14は患者に「眠っていますか」と単純に「尋ね」、患者の反応(または無反応)に基づきシステム動作を制御することができる。
【0111】
セット搭載および動作
図10は
図1のAPDシステム10の斜視図であり、サイクラー14のドア141は開位置まで下げられて、カセット24用の搭載部145と溶液ライン30用のキャリッジ146を露出させている(本実施形態では、ドア141は、ドア141の下部でヒンジによってサイクラーハウジング82に取り付けられる)。セット12を搭載する際、カセット24は搭載部145内に配置され、膜15とカセット24のポンプチャンバ側は上を向き、ドア14が閉鎖しているとき、ポンプチャンバに関連づけられる膜15の部分とバルブポートとをサイクラー14の制御面148と相互作用させる。搭載部145がベース部材18の形状と合致するように成形されることにより、搭載部145内でのカセット24の適切な配向を確保する。図示した本実施形態では、カセット24および搭載部145は、適切な配向のカセット24を搭載部145に配置するようにユーザに要求する(さもないとドア141が閉まらない)単独の大きな丸みのあるコーナーを有する略矩形形状である。カセット24および/または搭載部145の他の形状や配向の特徴も可能であると理解すべきである。
【0112】
本発明の一態様では、カセット24が搭載部145に配置されると、患者ライン、排液ライン、および加熱バッグライン34、28、および26は
図10に示されるように、ドア141内のチャネル40を通って左に送られる。チャネル40はガイド41またはその他の特徴を含むことができ、オクルーダ(occluder)147が流れのためのラインを選択的に開閉させることができるように、患者ライン、排液ライン、および加熱バッグライン34、28、および26を保持することができる。ドア141が閉鎖されると、オクルーダ147は、オクルーダ停止部29に向けて患者ライン、排液ライン、および加熱バッグライン34、28、および26のうち1または複数を圧迫することができる。概して、オクルーダ147は、サイクラー14が動作している(および適正に動作している)ときに流れをライン34、28、および26に通過させるが、サイクラー14の電源が落ちているとき(および/または適正に動作していないとき)ラインを遮断することができる(ラインの遮断は、ラインを押圧する、あるいはそれ以外の方法でライン内の流路を閉鎖するようにラインをつまむことによって実行することができる)。好適には、オクルーダ147は、少なくとも患者ラインと排液ライン34および28を選択的に遮断することができる。
【0113】
カセット24が搭載され、ドア141が閉められると、カセット24のポンプチャンバ側と膜15はたとえば、搭載部145と制御面148との間でカセット24を押しつぶす、搭載部145の後ろのドア141内の空気袋、バネ、またはその他の適切な構成によって、制御面148と接触するように押圧することができる。このカセット24の閉じ込めは、ベース部材18の壁およびその他の特徴と接触するように膜15および16を押すことによって、所望されるように、カセット24のチャネルおよびその他の流路を隔離することができる。制御面148は可撓ガスケット、たとえば、膜15と関連づけられるシリコーンゴムまたはその他の材料製のシートを備えることができ、膜15の部分を選択的に移動させて、ポンプチャンバ181の圧送動作とカセット24のバルブポートの開閉とを生じさせることができる。制御面148は、膜15の様々な部分と関連づける、たとえば、膜15の部分が制御面148の対応する部分の移動に応答して移動するように、互いに密接に接触して配置することができる。たとえば、膜15と制御面148は密接して配置することができ、少なくともバルブポートを開閉する、および/または圧送動作を生じさせる運動を必要とする膜15の領域で実質上互いに固着するように、適切な真空(または大気に対してより低い圧力)を制御面148内に適切に配置された吸気ポートを通じて導入し、膜15と制御面148との間で維持することができる。別の実施形態では、膜15と制御面148は互いに接着する、あるいは他の形で適切に関連づけることができる。
【0114】
カセット24を搭載してドア141を閉める前に、1または複数の溶液ライン30をキャリッジ146に搭載することができる。各溶液ライン30の端部は、キャップ31をラベルで表示する、あるいはインジケータまたは識別子を添付する領域33を含むことができる。インジケータは、たとえば、インジケータ領域33で管にスナップフィットするIDタグであってもよい。本発明の一態様によると、より詳細に後述するように、サイクラー14のキャリッジ146およびその他の構成部品は、ライン30からキャップ31を取り外し、(ライン、溶液の量などと関連づけられる溶液の種類としての表示を提供することのできる)各ライン30用のインジケータを認識し、ライン30とカセット24のスパイク160とを流体係合させるように動作することができる。このプロセスは、自動的に、たとえば、ドア141が閉じられ、ライン30および/またはスパイク160が互いに接続される際の両者の汚染のリスクを軽減するようにキャップ31とスパイク160が人に触れられないように保護された空間に収容された後に実行することができる。たとえば、ドア141の閉鎖後、インジケータ領域33は、(たとえば、適切な画像装置およびRFID技術などのソフトウェアベースの画像認識により視覚的に)評価されて、どの溶液がどのライン30と関連づけられているかを識別することができる。インジケータ領域33でのインジケータによりライン30の特徴を検知する能力に関する本発明の態様は、システム動作に影響を及ぼさずにユーザがキャリッジ146の任意の位置にライン30を配置できるなどの利点を提供することができる。すなわち、サイクラー14が溶液ライン機能を自動的に検知するため、システムが適切に機能を果たすように特定のラインがキャリッジ146上の特定の位置に配置されることを確保する必要はない。その代わりに、サイクラー14は、どのライン30がどこでカセット24およびその他のシステム機能を適切に制御するかを識別することができる。たとえば、1つのライン30と接続された容器とは、たとえば、後の検査のために使用済み透析液を収容することを目的とすることができる。サイクラー14はサンプル供給ライン30の存在を識別できるため、サイクラー14は使用済み透析液を適切なスパイク160およびライン30に送ることができる。上述するように、カセット24のスパイク160はすべて共通チャネルに送り込むため、任意の特定のスパイク160からの入力は、バルブおよびその他のカセット機能を制御することにより所望の任意の方法でカセット24に送ることができる。
【0115】
ライン30が搭載されると、キャリッジ146を(再度、ドア141が閉じられている間)
図10に示すように左に移動させて、カセット24のスパイク160上の各スパイクキャップ63上方に、キャップストリッパ149と隣接してキャップ31を配置することができる。キャップストリッパ149は、外方に(サイクラー14のハウジングの凹部内からドア141に向かって)延伸してキャップ31と係合することができる(たとえば、キャップストリッパ149は5つのフォーク状要素を含むことができ、該要素はキャップ31内の対応する溝と係合して、キャップストリッパ149がキャップストリッパ149に対するキャップ31の左右移動に抵抗できるようにする)。キャップ31とキャップストリッパ149とを係合させることによって、キャップ31も対応するスパイクキャップ63を把持することができる。その後、キャップ31が対応するスパイクキャップ63と係合した状態で、キャリッジ146とキャップストリッパ149を右に移動させて、スパイクキャップ63を対応するキャップ31と係合するスパイク160から取り外すことができる(この構成の可能な利点の1つは、溶液ライン30からのキャップ31の係合がスパイクキャップ63を取り外すのに必要とされるため、溶液ライン30が搭載されていない位置でスパイクキャップ63が取り外されないことである。よって、溶液ラインがスパイク160に接続されない場合、スパイク160上のキャップは定位置に残される)。その後、キャリッジ146が右への移動を継続する間、キャップストリッパ149は(たとえば、止め具と接触することによって)右方向への移動を止めることができる。その結果、キャリッジ146は、キャップストリッパ149に取り付けられたままのキャップ31からライン30終端を引っ張ることができる。キャップ31がライン30から取り外された状態で(スパイクキャップ63はキャップ31に取り付けられたまま)、キャップストリッパ149は再びキャップ31とともにサイクラー14のハウジング内の凹部に退却して、キャリッジ146とライン30のキャップで覆われていない端部とがスパイク160に向かう移動経路を空ける。その後、キャリッジ146は再び左に移動し、ライン30の終端をカセット24の各スパイク160pに接続させる。この接続は、ライン30の別様の閉鎖端を貫通するスパイク160によって実行することができ(たとえば、スパイクは終端の閉鎖された隔膜または壁を貫通することができる)、各容器20からカセット24への流体流を可能にする。一実施形態では、壁または隔膜は、たとえば、PVC、ポリプロピレン、またはシリコーンゴムなどの可撓性および/または自己封止材料で構成することができる。
【0116】
本発明の一態様によると、加熱バッグ22は、蓋143を持ちあげることによって露出される加熱バッグ収容部(たとえば、トレイ)142内に配置することができる(本実施形態では、サイクラー14は、後述するようにハウジング82に旋回可能に搭載されるユーザまたはオペレータインターフェース144を含む。加熱バッグ22をトレイ142内に配置させるため、インターフェース144はトレイ142の外で上方に旋回させることができる)。当該技術において既知なように、加熱トレイ142は、加熱バッグ22内の透析液を適切な温度、たとえば、患者への導入に適した温度に加熱することができる。本発明の一態様によると、蓋143は、たとえば、熱を捕捉して加熱プロセスを加速するのを助けるため、および/または加熱面などの加熱トレイ142の比較的温かい部分に触れるたり他の形で接触するのを避けるのを助けるため、トレイ142内に加熱バッグ22を配置した後に閉じることができる。一実施形態では、蓋143はトレイ142の一部が肌を火傷させかねないほどの温度まで加熱される状況下で、トレイ142の該加熱部分との接触を避けるために閉位置で係止させることができる。蓋143下の温度が適度に低くなるまで、たとえばロックにより蓋143の開放を防止することができる。
【0117】
本発明の別の態様によると、サイクラー14は、サイクラー14のハウジングに旋回可能に搭載され、加熱トレイ142内に折り畳むことのできるユーザまたはオペレータインターフェース144を含む。インターフェース144が畳まれた状態で、蓋143はインターフェース144を隠す、および/またはインターフェース144との接触を防止するように閉じることができる。インターフェース144は、たとえば図で情報をユーザに表示し、ユーザからの入力をたとえばタッチスクリーンとグラフィカルユーザインターフェースの使用によって受信するように構成することができる。インターフェース144は、ボタン、ダイヤル、ノブ、ポインティングデバイスなどのその他の入力装置を含むことができる。セット12が接続され、容器20が適切に配置された状態で、ユーザはインターフェース144と相互作用し、サイクラー14に治療を開始させる、および/または他の機能を実行させることができる。
【0118】
しかし、(たとえば、製造施設で、またはその他サイクラー14との使用に入る前に)セット12が予め準備された状態で提供されない限り、透析治療サイクルの開始前に、少なくともカセット24、患者ライン34、加熱バッグ22をサイクラー14に事前準備しておかなければならない。準備は、ライン30を介して1または複数の溶液容器20から液体を引き出し、カセット24から空気を除去するようにカセット24の各種経路を通り液体を圧送するように、カセット24(すなわち、ポンプとバルブ)を制御するなど、様々な方法で実行することができる。透析液は、たとえば患者への送出前の加熱のために、加熱バッグ22内へ圧送することができる。いったんカセット24と加熱バッグライン26が準備されれば、サイクラー14は次に患者ライン34を準備することができる。一実施形態では、患者ライン34は、ライン34を(たとえば、コネクタ36により)適切なポートまたはサイクラー14上のその他の接続点に接続し、カセット24に液体を患者ライン34へ圧送させることによって準備される。ポートまたはサイクラー14上の接続点は、(たとえば、光学的に、導電センサまたはその他により)患者ラインの最後に液体が到着したのを検知することにより、患者ラインが準備されたことを検知するように構成することができる。上述したように、異なる種類のセット12は、たとえば、成人用サイズまたは小児用サイズなどの異なるサイズの患者ライン34を有することができる。本発明の一態様によると、サイクラー14はカセット24の種類(または少なくとも患者ライン34の種類)を検知し、それにしたがいサイクラー14とカセット24を制御することができる。たとえば、サイクラー14は、患者ライン34を準備するのに必要なカセット内のポンプにより送出される液体量を判定し、その量に基づき患者ライン34のサイズを判定することができる。カセット24、患者ライン34、または患者ラインの種類を示すその他の構成部品の上のバーコードまたはその他のインジケータの認識等、その他の方法を使用することもできる。
【0119】
図11は、サイクラー14のハウジング82から分離されたドア141の内側の斜視図である。この図は、インジケータ領域33がキャリッジ146の特定のスロットに捕捉されるように、ライン30がどのようにドア141内の対応する溝とキャリッジ146とに収容されるかをより明確に示す。管がキャリッジ146に取り付けられるときインジケータ領域33にインジケータが適切に配置された状態で、リーダまたはその他の装置は、たとえば、ライン30に接続される容器20内の溶液の種類、溶液の量、製造日、製造業者のIDなどを表すインジケータの表示を識別することができる。キャリッジ146は、キャリッジ146の上端と下端の一対のガイド130上に搭載される(下側ガイド130のみを
図11に示す)。よって、キャリッジ146はガイド130に沿ってドア141上を左右に移動することができる。カセット搭載部145へ(
図11では右に)移動するとき、キャリッジ146は止め具131に接触するまで移動することができる。
【0120】
図12は、カセット上のスパイク160からキャップを取り外し、溶液ライン30上のキャップ31を取り外し、ライン30をスパイク160に接続するためにキャリッジ146を移動させる機能を果たす、第1の実施形態のキャリッジ駆動アセンブリ132の斜視図である。駆動素子133は、ロッド134に沿って左右に移動するように構成される。図示した本実施形態では、空気袋がロッド134に沿った駆動素子133の移動の動力を与えるが、モータや水圧システムなどの任意の適切な駆動機構を使用することができる。駆動素子133は、キャリッジ146上の対応するスロット146aと係合する、前方に延伸するタブ135を有する(キャリッジ146上の最上のスロット146aを示す
図11を参照)。タブ135とスロット146aとの係合により、駆動素子133がガイド130に沿ってキャリッジ146を移動させることができる。駆動素子133はウィンドウ136も含み、ウィンドウを通じて、CCDまたはCMOSイメージャなどの画像装置は、キャリッジ146に搭載されたライン30のインジケータ領域33でのインジケータの画像情報を捕捉することができる。インジケータ領域33でのインジケータに関する情報は、画像装置から、たとえば、画像解析によって表示を取得する制御システム16へと提供される。駆動素子133は、ロッド134に沿って左右両方にキャップストリッパ149を選択的に移動させることができる。キャップストリッパ149は、空気圧空気袋などの別の駆動機構を用いて前後に拡張することができる。
【0121】
図13はキャリッジ駆動アセンブリ132の左側面斜視図であり、どのようにキャップストリッパ149のストリッパ要素がキャップストリッパ149のハウジングの溝149aに沿って(ロッド134に略垂直な方向で)出入りするように構成されるかをより明確に示す。ストリッパ要素の半円切欠きはそれぞれ、キャップ31が駆動素子133およびキャリッジ146によってストリッパ149の正面に適切に配置されるときに前方に拡張することによってライン30上のキャップ31の対応する溝と係合する。ストリッパ要素がキャップ31と係合された状態で、駆動素子133が移動するにつれ、キャップストリッパ149はキャリッジ146と共に移動することができる。
図14はキャリッジ駆動アセンブリ132の部分背面図である。本実施形態では、駆動素子133は駆動素子133を強制的に
図14で右方向に移動させるように拡張する第1の空気袋137によって、カセット24の搭載部145の方に移動させられる。駆動素子は、第2の空気袋138によって左に移動させることもできる。もしくは、駆動素子133は、ボールネジアセンブリ(キャリッジ駆動アセンブリがボールナットに装着される)またはラックピニオンアセンブリなどの線形駆動ギアアセンブリに接続される1または複数のモータによって前後に移動させることができる。キャップストリッパ149のストリッパ要素1491は第3の空気袋、もしくは、上述するように線形駆動アセンブリに接続されるモータによって、キャップストリッパハウジングを出入りするように移動させることができる。
【0122】
図15~18は、キャリッジ駆動アセンブリ132およびキャップストリッパ149の別の実施形態を示す。
図15のキャリッジ駆動アセンブリ132の背面図に見られるように、本実施形態では、駆動素子133はネジ駆動機構1321によって左右に移動させられる。
図16のキャリッジ駆動アセンブリ132の右背面斜視図に見られるように、ストリッパ要素は空気袋139によって内方および外方に移動させられるが、上述したようにその他の構成も可能である。
【0123】
図17および18は、キャップストリッパ149のストリッパ要素1491の別の実施形態の左右正面斜視図である。
図13に示す実施形態のストリッパ要素1491は、溶液ライン30のキャップ31と係合するように配置されるフォーク状要素のみを含んでいた。
図17および18の実施形態では、ストリッパ要素1491はフォーク状要素60だけでなく、ストリッパ要素1491に旋回可能に取り付けられるロッカーアーム61も含む。より詳細に後述するように、ロッカーアーム61は、スパイクキャップ63をカセット24から取り外すのを助ける。各ロッカーアーム61は、溶液ラインキャップ係合部61aとスパイクキャップ係合部61bとを含む。ロッカーアーム61は通常、
図18のロッカーアーム61に示されるように、スパイクキャップ係合部61bがストリッパ要素1491の近傍に位置するよう移動するようにバイアスをかけられる。しかし、キャップ31が対応するフォーク状要素60に収容されると、溶液ラインキャップ係合部61aはキャップ31と接触して、
図17に示されるように、スパイクキャップ係合部61bがストリッパ要素1491から離れて移動するように、ロッカーアーム61を旋回させる。この位置で、スパイクキャップ係合部61bはスパイクキャップ63、具体的にはスパイクキャップ63上のフランジと接触することができる。
【0124】
図19は、ストリッパ要素1491の正面図であり、
図20~22には、いくつかの断面図の位置を示す。
図20は、ストリッパ要素1491の近傍にスパイクキャップ63または溶液ラインキャップ31が配置されていないロッカーアーム61を示す。ロッカーアーム61は、スパイクキャップ係合部61bと溶液キャップ係合部61aとのほぼ中間地点で旋回可能にストリッパ要素1491に装着される。上述したように、ロッカーアーム61は通常、スパイクキャップ係合部61bがストリッパ要素1491の近傍に位置するように、
図20に示される反時計回り方向に回転するようバイアスをかけられる。
図21は、フォーク状要素60と係合する溶液ラインキャップ31がない場合、ストリッパ要素1491がスパイクキャップ63の方に前進するときでも、ロッカーアーム61がこの位置を維持する(すなわち、スパイクキャップ係合部61bがストリッパ要素1491近傍に位置する)ことを示す。その結果、ロッカーアーム61は、溶液ラインキャップ31が存在しない限り、時計回りに回転しない、あるいはスパイクキャップ63と係合しない。よって、溶液ラインキャップ31と係合しないスパイクキャップ63は、カセット24から取り外されない。
【0125】
図22は、溶液ラインキャップ31がフォーク状要素60と係合し、ロッカーアーム61の溶液ラインキャップ係合部61aと接触する例を示す。これにより、ロッカーアーム61は(図示したように)時計回りに回転させられ、スパイクキャップ係合部61bはスパイクキャップ63と係合させられる。本実施形態では、ストリッパ要素1491が右に移動すると(
図22に示す)、スパイクキャップ係合部61bが第2のフランジ63aと接触し、対応するスパイク160からのスパイクキャップ63の引張を助けるように、部分61bの係合は、スパイクキャップ63上に第2のフランジ63aと隣接する部分61bを配置することを含む。尚、スパイクキャップ63の突刺63cがキャップ31内の穴31bを伸張し(
図23を参照)、キャップ31内の周囲の内側溝または凹部に捕捉されるように、溶液ラインキャップ31はシリコーンゴムなどの可撓材料製である。スパイクキャップ63上の第1のフランジ63bは、溶液ラインキャップ31の端部用の止め具としての役割を果たす。キャップ31の穴31b内の溝または凹部を画定する壁は対称であってもよい、あるいは好適には、突刺63cの形状に合致するように非対称に配置してもよい(キャップ31と溝または凹部の断面
図33を参照)。スパイクキャップ63上の第2のフランジ63aは、必要に応じ、スパイク160からスパイクキャップ63を分離するさらなる引張力を提供するため、ロッカーアーム61のスパイクキャップ係合部61bが係合する歯としての役割を果たす。
【0126】
図23は、キャップ31が取り外された溶液ライン30のコネクタ端30aの近接展開図である(
図23では、明瞭化のために
図24に示されるような指プルリングのないキャップ31が示されている。プルリングは、サイクラー14でのキャップ31の動作のために存在する必要はない。しかしながら、オペレータに必要に応じて溶液ライン30の終端から手動でキャップ31を取り外させる際には有用であろう)。図示した本実施形態では、インジケータ領域33でのインジケータは、
図10および11に示されるように装着されるときにキャリッジ146の対応するスロット内に適合するようなサイズと構成の環状形状を有する。当然ながら、インジケータは任意の適切な形状をとることができる。キャップ31は、内部穴、シール、および/またはカセット24上のスパイク160との漏れ防止接続を可能にするその他の特徴を有する、コネクタ端30aの遠位端全面に適合するように配置される。コネクタ端30aは、キャップ31が取り外されているときでもライン30内の溶液がコネクタ端30aから漏れるのを防止する貫通可能な壁または隔膜(図示せず。
図33の部材番号30bを参照)を含むことができる。壁または隔膜は、コネクタ端30aがカセット24に装着されているときにスパイク160によって貫通されて、ライン30からカセット24への流れを可能にすることができる。上述するように、キャップ31は、キャップストリッパ149のフォーク状要素60によって係合される溝31aを含むことができる。キャップ31は、スパイクキャップ63を収容するように配置される穴31bも含むことができる。穴31bとキャップ31は、キャップストリッパ149が溝31aと係合し、スパイク160のスパイクキャップ63が穴31bに収容された状態で、キャップ31がスパイクキャップ63を適切に把持するように配置されるため、キャリッジ146/キャップストリッパ149がカセット24から離れるようにキャップ31を引っ張ると、スパイクキャップ63がスパイク160から取り外されて、キャップ31によって担持される。この取り外しは、上述したように、第2のフランジ63aまたはスパイクキャップ63上のその他の特徴と係合するロッカーアーム61によって助けることができる。その後、キャップ31およびスパイクキャップ63をコネクタ端30aから取り外し、キャリッジ146によってライン30をスパイク160に装着することができる。
【0127】
治療がいったん完了すると、あるいはライン30および/またはカセット24をサイクラー14から取り外す準備が整うと、キャップ31と装着されたスパイクキャップ63とは、ドア141の開放が許可されて、カセット24およびライン30がサイクラー14から取り外される前に、スパイク160およびライン30に再装着することができる。もしくは、カセット24と溶液容器とはライン30と一緒に、キャップ31および装着されたスパイクキャップ63を再装着せずに、サイクラー14からまとめて取り外すことができる。この手法の利点は、取り外しプロセスが簡易化されることと、サイクラーまたは周辺領域に漏れ出す可能性のある流体が不適切に再装着される、あるいは不適切にキャップを封止するのを防止することである。
【0128】
図24~32は、ライン搭載および自動接続動作中のキャリッジ146、キャップストリッパ149、およびカセット24の斜視図である。ドア141およびその他のサイクラー構成部品は明瞭化のため図示しない。
図24では、ドア141が
図8に示す位置で開放しているかのように、キャリッジ146は折り曲げ位置にある。ライン30およびカセット24は、ドア141上にまで降下されるように配置される。
図25では、ライン30はキャリッジ146内に搭載され、カセット24は搭載部145内に搭載される。この時点で、ドア141は、動作のためサイクラーを準備するのに閉じられる。
図26では、ドア141が閉じられている。サイクラー14がどの溶液をどの程度の量装填するかなどを決定できるように様々なライン特性を識別するため、ライン30上のインジケータ領域33に位置する識別子またはインジケータを読み取ることができる。
図27では、キャリッジ146は左に移動させられて、ライン30上のキャップ31とカセット24上の対応するスパイクキャップ63とを係合させている。移動中、駆動素子133はキャップストリッパ149と係合し、キャップストリッパ149を左に移動させる。しかし、キャップストリッパ149は後退位置のままである。
図28では、キャップストリッパ149が前方に移動してフォーク状要素60をキャップ31と係合させることによって、スパイクキャップ63と連結されていたキャップ31と係合する。存在する場合、ロッカーアーム61はスパイクキャップ63に対して係合位置まで移動することができる。次に、
図29に示すように、キャリッジ146およびキャップストリッパ149が、キャップ31およびスパイクキャップ63をカセット24上の対応するスパイク160から引っ張るように、カセット24から離れる方向へ右に移動する。この移動中、存在する場合、ロッカーアーム61は、スパイクキャップ63をカセット24から引っ張る際の手助けをすることができる。
図30では、キャップストリッパ149が右への移動を中止している一方、キャリッジ146はカセット24から離れる方向に移動し続ける。これにより、ライン30のコネクタ端30aをキャップ31から引っ張って、フォーク状要素60によりキャップストリッパ149上に装着されたキャップ31およびスパイクキャップ63を残す。
図31では、キャップストリッパ149が後退し、カセット24の方に再び移動するためキャリッジ146のための経路を空ける。
図32では、キャリッジ146がカセット24の方に移動して、ライン30のコネクタ端30aをカセット24の対応するスパイク160と係合させる。サイクラーの動作中、キャリッジ146はこの位置にとどまる。いったん治療が完了すると、
図24~32に示される移動を逆転して、スパイク160および溶液ライン30に再びキャップをかぶせ、カセット24および/またはライン30をサイクラー14から取り外すことができる。
【0129】
キャップ31およびスパイクキャップ63の取り外しをさらに図示するため、
図33は、ライン30が5つの異なる接続段階にあるカセット24の断面図を示す。最も上のスパイク160で、スパイクキャップ63はまだスパイク160上の適所にあり、溶液ライン30は
図26の場合のようにカセット24から離れた位置にある。最も上のスパイクから下方にある2番目のスパイク160で、溶液ライン30およびキャップ31は
図27および28の場合のように、スパイクキャップ63の上方で係合している。この時点で、キャップストリッパ149はキャップ31およびスパイクキャップ63と係合することができる。最上部から3番目のスパイク160で、溶液ライン30、キャップ31、およびスパイクキャップ63は
図29の場合のようにカセット24から離れて移動している。この時点で、キャップストリッパ149は右への移動を停止することができる。最上部から4番目のスパイク160で、溶液ライン30は右に移動し続けることにより、
図30の場合のようにキャップ31をライン30から取り外す。いったんキャップ31および63が後退すれば、溶液ライン30は左に移動して、
図32の場合のようにライン30のコネクタ端30aをスパイク160に流体接続する。
【0130】
各種センサは、キャリッジ146およびキャップストリッパ149が予測される位置に完全に移動することを検証する助けとして使用することができる。一実施形態では、キャリッジ駆動アセンブリ132には6つのホール効果センサ(図示せず)を備えることができ、4つがキャリッジ146用で、2つがキャップストリッパ149用である。第1のキャップストリッパセンサは、キャップストリッパ149が完全に後退した時点を検知するために配置することができる。第2のキャップストリッパセンサは、キャップストリッパ149が完全に延伸した時点を検知するために配置することができる。第1のキャリッジセンサは、キャリッジ146が「ホーム」位置、すなわち、カセット24およびライン30を搭載することが可能な位置にある時を検知するために配置することができる。第2のキャリッジセンサは、キャリッジ146がスパイクキャップ63と係合した位置にある時を検知するために配置することができる。第3のキャリッジセンサは、キャリッジ146がキャップ31をライン30から取り外した位置に到達した時を検知するために配置することができる。第4のキャリッジセンサは、キャリッジ146がライン30のコネクタ端30aとカセット24の対応するスパイク160とを係合させた位置に移動した時を検知するために配置することができる。他の実施形態では、単独のセンサが、上述のキャリッジ位置のうち2つ以上を検知することができる。キャップストリッパセンサおよびキャリッジセンサは、電子制御盤(「自動接続盤」)に入力信号を供給し、次にユーザインターフェース144を介してユーザに特定の確認コードまたはエラーコードを通信することができる。
【0131】
何本のライン30が装着されているかに応じて、キャリッジ146がスパイクキャップ63と係合する力を調整する際の利点があり得る。カセット24への接続を完了するのに必要な力は、スパイクキャップ63に接続しなければならないキャップ31の数とともに増大する。インジケータ領域33でラインインジケータからの情報を検知し読み取る検知装置は、駆動素子133に印加される力を調節するのに必要なデータを供給するためにも使用することができる。力はたとえば、第1の空気袋137またはモータ/ボールネジなどの直線アクチュエータなどのいくつかの装置によって生成することができる。電子制御盤(たとえば、自動接続盤)は、ライン検知センサからの入力を受信し、直線アクチュエータのモータ、または空気袋137の膨張を制御する空気圧バルブのいずれかに適切な制御信号を送信するようにプログラムすることができる。コントローラ16は、たとえば、直線アクチュエータのモータに印加される電圧を調整する、あるいは空気袋137の膨張を制御する空気圧バルブを調整することによって、駆動素子133の移動の程度または速度を制御することができる。
【0132】
ライン30上のキャップ31がカセット24のスパイク160上のキャップ63と一緒に取り外される本発明の態様は、動作の簡易化とは別の利点も提供することができる。たとえば、スパイクキャップ63はライン30上のキャップ31との係合により取り外されるため、ライン30がキャリッジ146上の特定のスロットに搭載されていない場合、その位置でスパイクキャップ63は取り外されない。たとえば、カセット24は5つのスパイク160と対応するスパイクキャップ63とを含むが、サイクラー14はサイクラー14と関連づけられる4つ以下(0でも可)のライン30と共に動作することができる。ライン30が存在しないキャリッジ146上のスロットの場合、キャップ31がないため、その位置でスパイクキャップ63を取り外すことのできる機構も存在しない。よって、ライン30が特定のスパイク160に接続されなければ、スパイク160上のキャップ63はカセット24の動作中、定位置にとどまる。このことは、スパイク160での漏れおよび/またはスパイク160の汚染を防止するのを助けることができる。
【0133】
図33のカセット24は、たとえば
図3、4、6に示す実施形態のカセットとは異なるいくつかの特徴を含む。
図3、4、6の実施形態では、加熱バッグポート150、排液ラインポート152、および患者ラインポート154は中央管156とスカート158とを有するように配置される。しかし、上述したように、および
図33に示すように、ポート150、152、154は中央管156のみを含みスカート158を含まないことも可能である。これは
図34にも示される。
図34に示す実施形態は、左側ポンプチャンバ181の外表面に形成される隆起リブを含む。隆起リブは右側ポンプチャンバ181に提供することもでき、ポンプチャンバ181の外壁の追加接触点を提供することができ、該チャンバはカセット搭載部145でドア141内に、ドア141が閉じられたときにカセットを制御面148に押し付ける機構を有する。隆起したリブは必要ではなく、その代わりに、ポンプチャンバ181は
図34の右側ポンプチャンバ181に見られるようにリブまたはその他の特徴を持たないことも可能である。同様に、
図3、4、6の実施形態のスパイク160はスパイク160のベースにスカートまたは類似の特徴を含まないが、
図33の実施形態はスカート160aを含む。これは
図34にも示される。スカート160aは、スカート160aとスパイク160との間の凹部にスパイクキャップ63の端部を収容して、スパイク160とスパイクキャップ63との間の封止の形成を助けるように配置することができる。
【0134】
図33に示す本発明の別の特徴は、スパイク160を通るスパイク163の遠位端および内腔159の構成に関する。この態様において、スパイク160の遠位端は、スパイク160の幾何学的中心にほぼ沿って走るスパイク160の長手軸またはその近傍に配置される。スパイク160の遠位端を長手軸またはその近傍に配置することで、スパイク160を対応する溶液ライン30に係合させる際に位置合わせの許容差を緩和し、スパイク160がライン30のコネクタ端30aの隔膜または膜30bを貫通するのを助けることができる。その結果、スパイク160の内腔159はスパイク160の長手軸からほぼ外れて、たとえば、
図33に示すように、および
図35のスパイク160の端面図に示すようにスパイク160の底部近傍に配置される。また、スパイク160の遠位端は、スパイク160のより近位の部分と比べてやや径が小さい(本実施形態では、スパイク160の径は実際に、本体18からのスパイク160の長の約2/3に段階的に変化している)。遠位端でのスパイク160の径が縮小されていることで、スパイク160とライン30の内壁との間の間隙が提供されて、スパイク160によって貫通される際に隔膜30bがスパイク160とライン30間に配置されるように折り返される空間ができる。スパイク160の段階的特徴は、隔膜30bがライン30の内壁に接続される場所でライン30と係合することにより、ライン30とスパイク160との間に形成される封止を強化するように配置することもできる。
【0135】
いったんカセット24およびライン30がサイクラー14内に装填されれば、サイクラー14は溶液ライン30から加熱バッグ22および患者へ流体を移動させるようにカセット24の動作を制御しなければならない。
図36は、カセット24内の流体圧送と流路制御とを生じさせる、カセット24のポンプチャンバ側(たとえば、
図6に示す)と相互作用するサイクラー14の制御面148の平面図である。静置時、1種のガスケットとして説明することのできる制御面148はシリコーンゴム製シートを備えることができ、略平坦にすることができる。バルブ制御領域1481は、たとえば、シート表面上の折り目、溝、リブ、またはその他の特徴によって、制御面148に画定してもよく、シートの面と略長手方向に移動可能であるように配置してもよく(あるいはしなくてもよい)。内方/外方に移動させることによって、バルブ制御領域1481は、カセット24のバルブポート184、186、190、および192を開閉し、それによってカセット24の流れを制御するように、カセット24上の膜15の関連部分を移動させることができる。2つのより大きな領域であるポンプ制御領域1482は同様に、ポンプチャンバ181と協働する膜15の関連造形部151を移動させるように可動にすることができる。膜15の造形部151と同様、ポンプ制御領域1482は、制御領域1482がポンプチャンバ181内へ広がる際にポンプチャンバ181の形状と一致するように形成することができる。このように、ポンプ制御領域1482での制御シート148の部分は、圧送動作中に必ずしも伸張させる、あるいはその他の形で弾性的に変形させる必要はない。
【0136】
領域1481および1482はそれぞれ、たとえば、カセット24がサイクラー14に装填され、ドア141が閉じられた後、カセット24の膜15とサイクラー14の制御面148との間に存在し得る空気またはその他の流体をすべてまたはほぼすべて除去するために使用可能な関連の真空または真空排気ポート1483を有することができる。これは、膜15と制御領域1481および1482との密な接触の確保と、圧送動作での所望量の送出および/または各種バルブポートの開/閉状態の制御とを助けることができる。尚、吸気ポート1482は、制御面148がカセット24の壁またはその他の比較的硬い特徴と接触するように押圧されない場所に形成される。たとえば、本発明の一態様によると、カセットのポンプチャンバの一方または両方は、ポンプチャンバに隣接して形成される吸気通気用間隙領域を含むことができる。
図3および6に示される本実施形態では、ベース部材18は、ポンプ制御領域1482用の吸気通気用ポート1483が障害なしに膜15と制御面148との間から(たとえば、膜15の断裂のため)空気または流体を除去できるように、ポンプチャンバ181を形成する楕円形の凹みに隣接し、かつその外部に吸気通気用ポート間隙または拡張機能82(たとえば、ポンプチャンバに流体接続される凹部領域)を含むことができる。拡張機能は、ポンプチャンバ181の周囲内に配置することもできる。しかし、ポンプチャンバ181の周囲外に通気用ポート機能182を配置すると、液体を圧送するためのポンプチャンバの容積をより多く確保することができ、たとえば、透析液の圧送に使用されるポンプチャンバ181の設置面積全体を確保できる。好適には、拡張機能182はポンプチャンバ181に関して縦方向に下側の位置に配置されて、膜15と制御面148間で漏れる液体を最も早い機会に吸気ポート1483を通って引き出すことができる。同様に、バルブ1481に関連付けられる吸気ポート1483は好適には、バルブ1481に対して縦方向に下位の位置に配置される。
【0137】
制御領域1481および1482は、カセット24に対向する制御面148の側、たとえば、制御面148を形成するゴムシートの裏側の空気圧および/または空気容積を制御することによって移動させることができる。たとえば、
図37に示すように、制御面148は、各制御領域1481、1482と関連して配置される制御チャンバ171を有し、互いに隔離される(または少なくとも所望に応じ互いに個々に制御可能である)嵌合ブロック170によって支持されることができる。カセット24が嵌合ブロック170に支持された制御面148と動作可能に関連するように押圧されるとき、嵌合ブロック170の表面はカセット24とのインターフェースを形成する。よって、嵌合ブロック170の制御チャンバはカセット24の補完バルブまたはポンプチャンバに接続されて、嵌合ブロック170に隣接する制御面148の制御領域1481および1482と、カセット24に隣接する膜15の関連領域(たとえば造形部151)とを挟み込む。空気またはその他の制御流体は、領域1481、1482用の嵌合ブロック170の制御チャンバ171を出入りするように移動することによって、カセット24のバルブポートを開閉する、および/またはポンプチャンバ181の圧送動作を実行するために、所望に応じて制御領域1481、1482を移動させることができる。
図37に示される一実施形態では、制御チャンバ171は、バルブ制御領域1481の裏当てとなる円筒状領域と、ポンプ制御領域1482の裏当てとなる一対の楕円形空隙として構成することができる。サイクラー14が各制御チャンバ内の流体量および/または流体圧を制御することができるように、流体制御ポートを各制御チャンバ171に設けることができる。たとえば、嵌合ブロック170は、制御チャンバ171と連通し、適切な空気圧/真空を制御チャンバ171に印加させる様々なポート、チャネル、開口部、空隙、および/またはその他の特徴を含むマニホルド172と嵌合することができる。図しないが、空気圧/真空の制御は、たとえば制御可能バルブ、ポンプ、圧力センサ、アキュムレータなどを使用して適切な方法で実行することができる。当然ながら、制御領域1481、1482は、たとえば、重力ベースシステム、水圧システム、および/または機械的システム(リニアモータなど)によって、あるいは、気圧、水圧、重力ベース、および機械的システムなどのシステムの組み合わせによって別の方法で移動させることもできると理解すべきである。
【0138】
本発明の一態様によると、膜15内の漏れを検知するために吸気ポート1483を使用することができる。たとえば、吸気ポート1483に接続される導管またはチャンバ内の液体センサは、膜15に穴が開く、あるいはそれ以外の方法で液体が膜15と制御面148との間に導入される場合、液体を検知することができる。たとえば、吸気ポート1483は、嵌合ブロック170内の補完吸気ポート173と位置合わせし、封止して関連させ、次にマニホルド172内の共通流体回収チャンバ1722につながる流体路1721と封止して関連させることができる。流体回収チャンバ1722は、真空を制御面148のすべての吸気ポート1483に印加および分布することのできる入口を含むことができる。真空を流体回収チャンバ1722に印加することによって、吸気ポート173および1483のそれぞれから流体を引き出すことで、様々な制御領域での膜15と制御面148との間の空間から流体を除去することができる。しかし、液体が1または複数の領域に存在する場合、関連の吸気ポート1483が液体を吸気ポート173と、流体回収チャンバ1722に通じるライン1721とに引き込むことができる。上記流体は流体回収チャンバ1722に回収され、1または複数の適切なセンサ、たとえば、液体の存在を示すチャンバ1722内の伝導率の変化を検知する一対の伝導度センサによって検知することができる。本実施形態では、センサは流体回収チャンバ1722の底部に配置し、真空源はチャンバ1722の上端でチャンバ1722に接続することができる。したがって、液体が流体回収チャンバ1722に引き込まれる場合、液体面が真空源に達する前に液体を検出することができる。任意で、真空源への液体の進入に抵抗するのをさらに助けるため、チャンバ1722への真空源接続点に疎水性フィルタ、バルブ、またはその他の構成部品を配置することができる。このように、真空源バルブが液体によって汚染されるリスクを負う前に、液体の漏れを検知し、コントローラ16によって対処することができる(たとえば、警告の生成、液体流入バルブの閉鎖、および圧送動作の中止)。
【0139】
一実施形態では、制御チャンバ171の内壁は、たとえば、ポンプ制御領域1482に関連づけられる制御チャンバ171に関して
図37に示すように、ポンプチャンバのスペーサ要素50に幾分類似する隆起要素を含むことができる。これらの隆起要素は、完全に後退した制御領域1482から離して制御ポートを退避させておく高平特徴、リブ、またはその他の突部の形状を取ることができる。この構成により、制御チャンバ171内の圧力または真空をより均等に分布し、制御面148による制御ポートの早すぎる遮断を防止することができる。予め形成された制御面148(少なくともポンプ制御領域で)は、送出行程中のカセット24のポンプチャンバの内壁、または注液工程中の制御チャンバ171の内壁のいずれかに当たるまで完全に拡張されたときに大きな伸張圧を受けることがない。したがって、制御領域1482が制御チャンバ171内へ非対称に広がって、チャンバが完全に排気される前に制御領域1482によって制御チャンバの1または複数のポートを早めに閉鎖させることができる。制御領域1482と制御ポートとの間の接触を防止する特徴を制御チャンバ171の内表面に設けることは、制御領域1482が注液工程中に制御チャンバ内壁と均一に接触できるよう確保するのを助けることができる。
【0140】
上述したように、サイクラー14は、システムの各種バルブ、圧力センサ、モータなどと電気接続するデータプロセッサを有し、所望の動作シーケンスまたはプロトコルにしたがい上記構成部品を制御するように構成される制御システム16を含むことができる。制御システム16は、適切な回路、プログラミング、コンピュータメモリ、電気接続、および/または特定のタスクを実行するためのその他構成部品を含むことができる。該システムは、制御面148、およびその他の空気圧式構成部品の領域の動作を制御するために所望の空気またはその他の流体の圧力(正圧-大気圧またはその他の基準を上回る-あるいは、負圧または真空-大気圧またはその他の基準を下回る-のいずれか)を生成するポンプ、タンク、マニホルド、バルブ、またはその他の構成部品を含むことができる。制御システム16(または少なくともその一部)に関するさらなる詳細は後で述べる。
【0141】
図示した一実施形態では、ポンプ制御チャンバ171内の圧力は、たとえば、制御チャンバ171を適切な圧力/真空下に暴露するように開放し、圧力/真空源を切断するように閉鎖するバイナリバルブによって制御することができる。バイナリバルブは、ポンプ制御チャンバ171内の圧力を制御するように調整可能な鋸歯状制御信号を用いて制御することができる。たとえば、ポンプ送出行程中(すなわち、正圧がポンプ制御チャンバ171に導入されて、膜15/制御面148を移動させ、液体をポンプチャンバ181から流出させる)、バイナリバルブは、制御チャンバ171内に適切な圧力(たとえば、約70~90mmHgの圧力)を確立するため比較的高速で開閉するように鋸歯状信号によって駆動することができる。制御チャンバ171内の圧力が約90mmHg超に上昇すると、鋸歯状信号はさらに延長した期間、バイナリバルブを閉鎖するように調節することができる。圧力が制御チャンバ171で約70mmHg未満に低下すると、鋸歯制御信号が再びバイナリバルブに印加されて、制御チャンバ171内の圧力を上昇させることができる。よって、通常の圧送動作中、バイナリバルブは複数回開閉され、1または複数の延長期間、閉鎖することができるため、液体が強制的にポンプチャンバ181から押しやられる圧力は所望レベルまたは範囲(たとえば、約70-90mmHg)で維持される。
【0142】
いくつかの実施形態と本発明の一態様によると、膜15/ポンプ制御領域1482の「行程の最後」、たとえば、膜15がポンプチャンバ181内のスペーサ50と接触する、あるいはポンプ制御領域1482がポンプ制御チャンバ171の壁と接触するときを検出することが有用であり得る。たとえば、圧送動作中、「行程の最後」の検出は、膜15/ポンプ制御領域1482の移動を逆転させて新たな圧送サイクルを開始すべきである(ポンプチャンバ181に注液する、あるいはポンプチャンバ181から液体を追いやる)ことを示すことができる。ポンプ用の制御チャンバ171内の圧力が鋸歯状制御信号によって駆動されるバイナリバルブにより制御される、図示した一実施形態では、ポンプチャンバ181内の圧力が、比較的高い周波数、たとえば、バイナリバルブが開閉される周波数またはその近傍の周波数で変動する。制御チャンバ171内の圧力センサは、膜15/ポンプ制御領域1482がポンプチャンバ181の内壁またはポンプ制御チャンバ171の壁と接触していないときに通常より高い振幅を有するこの変動を検知することができる。しかし、いったん膜15/ポンプ制御領域1482がポンプチャンバ181の内壁またはポンプ制御チャンバ171の壁と接触すれば(すなわち、「行程の最後」)、圧力変動は低下する、あるいはそれ以外の形でポンプ制御チャンバ171内の圧力センサによって検知可能に変化する。この圧力変動の変化は行程の最後を識別するのに利用することができ、カセット24および/またはサイクラー14のポンプおよびその他の構成部品はそれに従い制御することができる。
【0143】
オクルーダ
本発明の一態様では、1または複数の可撓ラインを開閉するオクルーダは、バネ鋼(たとえば、板バネ)で作製される平板などの弾性要素として構成され得る一対の対向する遮断部材を含むことができ、オクルーダを動作させるために遮断部材の一方または両方に力を印加するフォースアクチュエータを有する。特定の実施形態では、フォースアクチュエータは、弾性要素間に位置する拡張可能部材または拡大可能な部材を備えることができる。拡張可能部材が縮小サイズ状態にあるとき、弾性要素は平坦または略平坦な状態にあり、閉鎖されたラインをつまむようにピンチヘッドを1または複数のラインと強制的に係合させる。しかし、拡張可能部材が強制的に弾性要素を遠ざける場合、弾性要素はピンチヘッドを折り曲げて引き込み、ラインを解放させてライン内に流れを流させることができる。別の実施形態では、遮断部材はフォースアクチュエータによって印加される力のレベルに対して基本的に不動にすることができる。特定の実施形態では、フォースアクチュエータは、遮断部材が可撓管の開放または閉鎖を実行するように対向している領域の少なくとも一部で、遮断部材間の距離を増大させるように対向遮断部材の一方または両方に力を印加することができる。
【0144】
図38は、患者ラインおよび排液ライン34および28、および/またはサイクラー14またはセット12内のその他のライン(たとえば、加熱バッグライン26)を閉鎖または遮断するために使用可能なオクルーダ147の図示した実施形態の展開図であり、
図39はその部分組立図である。オクルーダ147は、任意のピンチヘッド161、たとえば、ドア141に管を押し付け、閉鎖された管をつまむように管と接触する略平坦な刃状要素を含む。別の実施形態では、ピンチヘッドの機能は、遮断部材165の一方または両方の拡張縁部によって置き換えることができる。ピンチヘッド161は、たとえば、遮断されたラインのうちの1つに漏れがある場合、流体(たとえば、空気または液体)のサイクラー14のハウジングへの進入に抵抗するのを助けるようにピンチヘッド161と協働する、Oリングまたはその他の部材などのガスケット162を含む。ベローズガスケット162は、サイクラーハウジングの前面パネル、すなわち、ドア141を開けることにより露出されるパネルに装着されるピンチヘッドガイド163に取り付けられ、ピンチヘッド161はそのピンチヘッドガイドを通過する。ピンチヘッドガイド163により、ピンチヘッド161は、ピンチヘッド161の摺動運動に対する拘束および/または大きな抵抗なくピンチヘッドガイド163を出入りできる。ピボット軸164は、たとえば、標準的ドアヒンジ上に見られるような、図示した実施形態のバネ板165ではそれぞれがフック状ピボット軸受けを含む一対の対向するオクルーダ部材をピンチヘッド161に装着する。すなわち、ピンチヘッド161上のシャフトガイドの開口部、およびバネ板165のフック状軸受けによって形成される開口部は互いに位置合わせされ、ピボット軸164が開口部に挿入されるため、ピンチヘッド161とバネ板165は共に旋回可能に接続される。バネ板165は、スチールなどの適切な材料で作製し、応力のかかっていないときに略平坦になるように構成することができる。バネ板165の対向端部は、第2のピボット軸164によって直線アジャスタ167に旋回可能に接続される同様のフック状軸受けを含む。本実施形態では、フォースアクチュエータは空気袋166を備え、該空気袋はバネ板165間に位置し、流体が(たとえば、加圧下の空気)空気袋に導入されるときに、空気袋が拡張してピボット軸164間の領域で互いに離れるようにバネ板165を押すように構成される。直線アジャスタ167がサイクラーハウジング82に固定される一方、ピンチヘッド161は浮遊するのを許されるが、その移動はピンチヘッドガイド163によって誘導される。直線アジャスタ167は、その下端にスロット穴を含み、アセンブリ全体を適所に調節させることによって、オクルーダ147がサイクラー14内に設置されるときにピンチヘッドを適切に位置決めすることができる。ハウジング82に対する直線アジャスタ167の位置の調節を助けるため、ターンバックル168またはその他の構成を使用することができる。すなわち、ピンチヘッド161は通常、バネ板165が互いに近接して配置され、空気袋166がほぼ空である、あるいは大気圧下にある状態で、ピンチヘッド161が切断、ねじれ、またはその他の管の損傷なく流れるように閉鎖された管をつまむべく患者ラインおよび排液ラインを適切に押圧するように、適切に配置される必要がある。直線アジャスタ167のスロット開口部により、オクルーダ147を精密に位置決めし適所に固定することができる。リリースブレード169によって提供されるようなオーバライド解放装置がバネ板165間に任意に配置され、より詳細に後述するように、バネ板165を遠くに押すように回転させられることによって、ピンチヘッド161をピンチヘッドガイド163に引き込む。リリースブレード169はたとえば、停電、空気袋166の故障、またはその他の状況下でオクルーダ147を動作不能にするため、手動で作動することができる。
【0145】
オクルーダの特定の実施形態を構成する際に有益となり得る特定の構成部品のさらなる構成および説明が米国特許第6,302,653号に記載されている。バネ板165は、所望数のコラプシブルチューブを遮断する曲げ変位に応答して十分な復元力を提供するため、曲げ力に弾性的に抵抗し、十分な長手方向の剛性(曲げ抵抗)を有する材料で構成することができる。図示した実施形態では、各バネ板は応力をかけられていないときに略平坦であり、シートまたはプレートの形状である。1または複数の弾性遮断部材(バネ部材)を利用する別の実施形態では、所望数の折畳み式管を遮断する曲げ変位に応答して十分な復元力を提供するため、曲げ力に弾性的に抵抗し、十分な長手方向の剛性(曲げ抵抗)を有する任意の遮断部材を使用することができる。適切であろうバネ部材は、プリズム状、台形、正方形、または矩形のバーまたはビーム、Iビーム、楕円形ビーム、お椀状表面、またはその他を含むがそれらに限定されない、当業者にとっては自明の広範な形状を取ることができる。当業者であれば、本教示と特定用途の要件とに基づきバネ板165の適切な材料および寸法を容易に選択できるであろう。
【0146】
図40は、空気袋166が収縮しバネ板165が互いに近接配置されて平坦または略平坦な状態になっているオクルーダ147の上面図である。この位置で、ピンチヘッド161はピンチヘッドガイドから完全に延伸され、サイクラー14の前面パネル(すなわち、ドア141の内側のパネル)は患者ラインおよび排液ラインを遮断することが可能である。一方、
図41は膨張状態にある空気袋166を示し、この膨張状態ではバネ板165が互いに遠ざかるように押されることによって、ピンチヘッド161がピンチヘッドガイド163内へ後退している。(尚、直線アジャスタ167がサイクラーハウジング82に対して適所に固定され、よってハウジング82の前面パネルに対しても固定される。ピンチヘッド161はピンチヘッドガイド163を自由に出入りするように構成されているため、バネ板165が遠くへ移動させられるにつれ、ピンチヘッド161は前面パネルに対して後方へ移動する)。この状態は、ピンチヘッド161が患者ラインおよび排液ラインを遮断するのを防止し、オクルーダ147がサイクラー14の通常動作中にとどまる状態である。すなわち、上述したように、サイクラー14の各種構成部品は空気圧/真空を用いて作動することができる。たとえば、制御面148は適切な空気圧/真空の駆動下で、カセット24のための流体圧送およびバルブ動作を生じさせるように作動することができる。よって、サイクラー14が正常に動作しているとき、サイクラー14は制御システム動作に対してだけでなく、ピンチヘッド161を後退させ、患者ラインおよび排液ラインの遮断を防止するために空気袋166を膨張させるように十分な空気圧を生成することができる。しかし、システムシャットダウン、故障、欠陥、またはその他の状況の場合、空気袋166への空気圧は停止されて、空気袋166を収縮させ、バネ板165を真直にし、ピンチヘッド161を延伸させてラインを遮断する。図示した構成の1つの利点は、ピンチヘッドガイド163に対して移動する際に、ピンチヘッド161は通常ピンチヘッドガイド163を拘束しないように、バネ板165の復元力が釣合いを取ることである。また、バネ板165の対向力は、ピボット軸およびアセンブリのブシュの非対称な摩擦摩耗量を低減させる傾向がある。また、いったんバネ板165が略真直な位置を取れば、バネ板165はピンチヘッド161の長さにほぼ沿う方向で、空気袋166によってバネ板165にかかる力よりも数倍大きい力を働かせて、バネ板165を互いに分離させ、ピンチヘッド161を後退させる。さらに、バネ板165が平坦または略平坦な状態にある場合、ピンチヘッド161によるピンチ力を圧倒するために、押出した管内の流体によって必要とされる力は、端部で平坦化されたバネ板の面に略平行にバネ板に印加される際、平坦化されたバネ板のカラム安定性を破壊することによってバネ板を座屈させるのに必要な比較的大きな力に近い。その結果、オクルーダ147は、ピンチヘッド161を後退させるのに空気袋166に印加される力を比較的小さく抑えつつ、故障の可能性を低減して、ラインを遮断するのに非常に有効である。図示した実施形態の二重バネ板構成は、バネ板を曲げるのに必要な任意の所与の力、および/またはバネ板の任意の所与のサイズおよび厚みに対して、ピンチヘッドによって提供されるピンチ力を大幅に増大させるさらなる利点を備えることができる。
【0147】
状況によっては、ラインへのオクルーダ147の力を比較的大きくして、ドア141を開けにくくさせてもよい。すなわち、ピンチヘッド161がラインと接触しラインを遮断しているときに、ドア141はオクルーダ147の力に対抗しなければならず、場合によっては、このために、手動で作動するのが困難または不可能になるようにドア141を閉状態で維持するラッチが生じる場合がある。当然ながら、サイクラー14が始動され、作動するように空気圧を生成すれば、オクルーダ空気袋166を膨張させて、オクルーダピンチヘッド161を後退させることができる。しかしながら、場合によっては、サイクラー14のポンプ故障の場合のように、空気袋166の膨張が不可能または困難になることがある。ドアを開放できるように、オクルーダ147は手動解放を含むことができる。図示した本実施形態では、オクルーダ147は、
図38および39に示されるような、バネ板165間の回転移動のために旋回可能に搭載される一対の羽根を含むリリースブレード169を含むことができる。静置時、リリースブレードの羽根は
図39に示されるようにバネと位置合わせされて、オクルーダを正常に作動させる。しかし、バネ板165が平坦な状態にあり、ピンチヘッド161を手動で後退させる必要がある場合、たとえば、羽根がバネ板165を遠くに押すように、六角形キーまたはその他のツールとリリースブレード169を係合させてリリースブレード169を回転させることによって、リリースブレード169を回転させることができる。六角形キーまたはその他のツールは、サイクラー14のハウジング82の開口部、たとえば、サイクラーハウジング82の左側ハンドルの凹み近傍の開口部に挿入して、オクルーダ147を分離しドア141を解放させるように作動することができる。
【0148】
ポンプ容積送出測定
本発明の別の態様では、サイクラー14は、流量計、重量計、またはその他の流体の容積または重量の直接測定を使用せずにシステム10の各種ラインに送出される流体の容積を判定することができる。たとえば、一実施形態では、カセット24内のポンプなどのポンプによって移動させられる流体の容積は、ポンプを駆動するのに使用される気体の圧力測定に基づき判定することができる。一実施形態では、2つのチャンバを互いに隔離し、隔離されたチャンバ内の対応する圧力を測定し、(2つのチャンバを流体接続することで)チャンバ内の圧力を部分的にまたは実質的に均等化し、その圧力を測定することによって容積判定を実行することができる。測定圧力、一方のチャンバの既知の容積、および均等化が断熱的に生じるという仮定を用いて、他方のチャンバ(たとえば、ポンプチャンバ)の容積を算出することができる。一実施形態では、チャンバが流体接続された後に測定される圧力は、互いに略不均等になる場合がある、すなわち、チャンバ内の圧力はまだ完全に均等化させることができない。しかし、こうした略不均等な圧力は、後述するようにポンプ制御チャンバの容積を判定するために使用することができる。
【0149】
たとえば、
図42は、カセット24のポンプチャンバ181とその関連制御構成部品および流入/流出路の概略図である。図示した本例では、加熱バッグ22、加熱バッグライン26、およびカセット24を通る流路を含む液体供給源が、ポンプチャンバの上側開口部191に液体入力を設けて示されている。本例では、液体出口はポンプチャンバ181の下側開口部187から液体を受け取るものとして示されており、たとえばカセット24の流路と患者ライン34とを含むことができる。液体供給源は、たとえば、ポンプチャンバ181へのまたはポンプチャンバ181からの流れを許容するあるいは禁止するために開閉可能なバルブポート192を含むバルブを含むことができる。同様に、液体出口は、たとえば、ポンプチャンバ181へのまたはポンプチャンバ181からの流れを許容するあるいは禁止するために開閉可能なバルブポート190を含むバルブを含むことができる。当然ながら、液体供給源は、1または複数の溶液容器、患者ライン、カセット24またはその他の液体源の1または複数の流路などの任意の適切な構成を含むことができ、液体出口は、排液ライン、加熱バッグおよび加熱バッグライン、カセット24内の1または複数の流路、またはその他の液体出口などの任意の適切な構成を含むことができる。概して言えば、ポンプチャンバ181(すなわち、
図42の膜14の左側)は、動作中に水や透析液などの非圧縮性液体で充填される。しかしながら、最初の動作中、準備、または後述するようなその他の状況下などの場合によっては、ポンプチャンバ181内に空気またはその他の気体が存在する場合がある。また、ポンプの容積および/または圧力の検出に関する本発明の態様をカセット24のポンプ構成を参照して説明したが、本発明の態様は任意の適切なポンプまたは流体移動システムで使用可能であると理解すべきである。
【0150】
図42は、右手に膜15と制御チャンバ171の制御面148(互いに隣接する)を概略的に示し、該制御チャンバは、上述したように、ポンプチャンバ181用の制御面148のポンプ制御領域1482と関連づけられる嵌合ブロック170内の空隙またはその他の空間として形成することができる。制御チャンバ171内には、適切な空気圧が導入されて、膜15/制御領域1482を移動させ、ポンプチャンバ181内の液体の圧送を実行させる。制御チャンバ171は、別のラインL1に分岐するラインL0、および圧力源(たとえば、空気圧源または真空源)と連通する第1のバルブX1と連通する。圧力源は、制御チャンバ171に送出される圧力を制御するためにピストンがチャンバ内で移動させられるピストンポンプを含むことができる、あるいは、膜15/制御領域1482を移動させ圧送動作を実行するための適切な気体圧を送出する異なる種類の圧力ポンプおよび/またはタンクを含むことができる。ラインL0は、別のラインL2および基準チャンバ(たとえば、後述する測定を実行するために適切に構成される空間)と連通する第2のバルブX2につながる。さらに、基準チャンバは、通気口またはその他の基準圧(たとえば、大気圧源またはその他の基準圧源)につながるバルブX3を有するラインL3とも連通する。バルブX1、X2、およびX3はそれぞれ個々に制御することができる。圧力センサは、たとえば、制御チャンバおよび基準チャンバと関連づけられる圧力を測定するために、あるセンサを制御チャンバ171に、別のセンサを基準チャンバに配置することができる。これらの圧力センサは、適切な方法で圧力を検知するように配置され、作動することができる。圧力センサは、ポンプまたはその他の特徴によって送出される容積を判定するためにサイクラー14またはその他の適切なプロセッサに関して制御システム16と通信することができる。
【0151】
上述したように、
図42に示されるポンプシステムのバルブまたはその他の構成部品は、ポンプチャンバ181、液体供給源および/または液体出口の圧力を測定する、および/またはポンプチャンバ181から液体供給源または液体出口に送出される流体の容積を測定するように制御することができる。容積測定に関して、ポンプチャンバ181から送出される流体の容積を判定するために使用される1つの技法は、2つの異なるポンプ状態における制御チャンバ171での相対圧力と基準チャンバでの圧力を比較することである。相対圧力を比較することによって、ポンプチャンバ181内の容積変化に対応し、ポンプチャンバ181に送出される/ポンプチャンバ181から受け取る容積を反映する、制御チャンバ171での容積変化を判定することができる。たとえば、ポンプチャンバ注液サイクル中に(たとえば、開放されたバルブX1を通って圧力源からの負圧を印加することによって)制御チャンバ壁の少なくとも一部(または膜15/領域1482にとって別の適切な位置)と接触すべく膜15およびポンプ制御領域1482を引き込むように、制御チャンバ171内での圧力が低減された後、バルブX1を閉鎖して制御チャンバを圧力源から隔離することができ、およびバルブX2を閉鎖することによって、基準チャンバを制御チャンバ171から隔離することができる。バルブX3を開放して基準チャンバを大気圧まで通気し、次いで閉鎖して基準チャンバを隔離することができる。バルブX1が閉鎖され、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力が測定された状態で、バルブX2が開放されて、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力を均等化させ始める。基準チャンバおよび制御チャンバ内の最初の圧力は、基準チャンバの既知の容積および均等化が開始された後(だが、必ずしも完了していなくともよい)に測定された圧力とともに、制御チャンバの容積を判定するのに使用することができる。シート15/制御領域1482がポンプチャンバ181のスペーサ要素50と接触するように押圧されるポンプ送出サイクルの最後で、このプロセスを繰り返すことができる。注液サイクルの最後での制御チャンバ容積と送出サイクルの最後での容積を比較することによって、ポンプから送出される液体の容積を判定することができる。
【0152】
理論的には、圧力均等化プロセス(たとえば、バルブX2の開口部で)は、断熱的に、すなわち、熱転写が制御チャンバと基準チャンバの空気間およびその環境で生じずに行われるとみなされる。理論的考えでは、バルブX2が閉鎖されたときに想像上のピストンがバルブX2に最初に配置され、その想像上のピストンが、バルブX2が開放されて制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力を均等化するときにラインL0またはL2内を移動する。(a)圧力均等化プロセスが比較的迅速に発生する、(b)制御チャンバおよび基準チャンバ内の空気がほぼ同一の成分濃度を有する、(c)温度が同様であるため、圧力均等化が断熱的に起こるという仮定は容積測定にわずかな誤差しか導入しない。また、一実施形態では、均等化の開始後に得られる圧力は、実質的な均等化が起こる前に測定することができ、最初の圧力の測定と、ポンプチャンバ容積を判定するために使用される最後の圧力の測定間の時間をさらに低減する。たとえば、熱転写を低減するように、膜15/制御面148、カセット24、制御チャンバ171、ライン、基準チャンバなどに低伝導率材料を使用することによって、誤差をさらに低減することができる。
【0153】
バルブX2が開放されるまでバルブX2が閉鎖される状態と圧力が均等化する状態との間に断熱システムが存在すると仮定すると、以下が当てはまる。
PVγ=Constant (1)
ただし、Pは圧力であり、Vは容積であり、γは定数(たとえば、気体が空気のように二原子である場合、約1.4)に等しい。よって、以下の式は、バルブX2の開放と圧力均等化前後の、制御チャンバおよび基準チャンバの圧力および容積に関連するように書くことができる。
【0154】
PrVrγ+PdVdγ=Constant=PfVfγ (2)
ただし、PrはバルブX2の開放前の基準チャンバおよびラインL2、L3内の圧力であり、VrはバルブX2の開放前の基準チャンバおよびラインL2、L3の容積であり、PdはバルブX2の開放前の制御チャンバおよびラインL0、L1内の圧力であり、VdはバルブX2の開放前の制御チャンバおよびラインL0、L1の容積であり、PfはバルブX2の開放後の基準チャンバおよび制御チャンバ内の均等化された圧力であり、Vfは制御チャンバ、基準チャンバ、およびラインL0、L1、L2、およびL3を含むシステム全体の容積、すなわち、
Vf= Vd + Vrである。
【0155】
Pr、Vr、Pd、Pf、およびγは既知であり、Vf=Vr+Vdであるため、この式はVdを解くために使用することができる(容積値などを測定する際に「測定圧力」を使用することを、請求項を含めた本文書で言及しているが、測定圧力値がpsi単位などの特定の形式である必要はないことを理解すべきである。その代わりに、「測定圧力」または「判定圧力」は、電圧レベル、抵抗値、マルチビットデジタル数などの圧力を表す任意の値を含むことができる。たとえば、ポンプ制御チャンバ内の圧力を測定するのに使用される圧力トランデューサは、ポンプ制御チャンバ内の圧力を表すアナログ電圧レベル、抵抗、またはその他の表示を出力することができる。トランスデューサからの未処理出力は、測定圧力、および/またはトランスデューサからのアナログ出力を用いて生成されるデジタル数、psi、またはトランスデューサ出力に基づき生成されるその他の値など、出力の変形された形式として使用することができる。同じことが判定容積などの他の値にも当てはまり、必ずしも立方センチメートルなどの特定の形式である必要はない。その代わりに、判定容積は、たとえば、実際の容積、いわば立方センチメートルを生成するために使用可能な容積を表す任意の値を含むことができる)。
【0156】
ポンプによって送出される容積を判定する流体管理システム(「FMS」)技術の実施形態では、バルブX2の開放後の圧力均等化は断熱システムで生じると仮定される。よって、下記の式3は、圧力均等化前後の基準チャンバシステムの容積の関係を示す。
【0157】
Vrf=Vri(Pf/Patm)-(1/γ) (3)
ただし、Vrfは基準チャンバの容積、ラインL2およびL3の容積、および開放後にバルブX2の左または右に移動することのできる「ピストン」の移動から生じる圧力調節を含む基準チャンバシステムの最終の(均等化後)容積であり、VriはバルブX2に配置された「ピストン」とともに基準チャンバおよびラインL2、L3の最初の(均等化前)容積であり、PfはバルブX2の開放後の最終的な均等化圧力であり、PatmはバルブX2の開放前の基準チャンバの最初の圧力(本例では、大気圧)である。同様に、式4は、圧力均等化前後の制御チャンバシステムの容積の関係を示す。
【0158】
Vdf=Vdi(Pf/Pdi)-(1/γ) (4)
ただし、Vdfは制御チャンバの容積、ラインL0およびL1の容積、および開放後にバルブX2の左または右に移動することのできる「ピストン」の移動から生じる圧力調節を含む制御チャンバシステムの最終の容積であり、VdiはバルブX2に配置された「ピストン」とともに制御チャンバおよびラインL0、L1の最初の容積であり、PfはバルブX2の開放後の最終容積であり、PdiはバルブX2の開放前の制御チャンバの最初の圧力である。
【0159】
基準チャンバシステムおよび制御チャンバシステムの容積は、バルブX2が開放され、圧力が均等化した後、同じ絶対量だけ変化するが、式5に示されるように、符号は異なる(たとえば、容積の変化はバルブX2が開放したときの「ピストン」の左または右への移動によって生じるため)。
【0160】
ΔVr=(-1)ΔVd (5)
(尚、この基準チャンバおよび制御チャンバの容積の変化は、想像上のピストンの移動のみによる。基準チャンバおよび制御チャンバの容積は、通常の状況下では均等化プロセス中、実際に変化しない)。また、式3の関係を使用して、基準チャンバシステムの容積変化は、次式によって求められる。
【0161】
ΔVr=Vrf-Vri=Vri(-1+(Pf/Patm)-(1/γ)) (6)
同様に、式4を用いて、制御チャンバシステムの容積変化は、次式によって求められる。
【0162】
ΔVd=Vdf-Vdi=Vdi(-1+(Pf/Pdi)-(1/γ)) (7)
Vriは既知であり、PfおよびPatmは測定される、あるいは既知であるため、ΔVrを算出することができ、式5により(-)ΔVdに等しいと推定される。したがって、Vdi(基準チャンバとの圧力均等化前の制御チャンバシステムの容積)は式7を用いて算出することができる。本実施形態では、Vdiは制御チャンバとラインL0およびL1の容積を表し、L0およびL1は固定されており、既知の量を有する。VdiからL0およびL1を引くと、制御チャンバのみの容積が得られる。上記の式7を用いて、たとえば、圧送動作の前(Vdi1)と後(Vdi2)(たとえば、注液サイクルの最後と排液サイクルの最後で)の両方で、制御チャンバの容積変化を判定し、ポンプによって送出される(あるいはポンプによって取り込まれる)流体の容積を測定することができる。たとえば、Vdi1が注液工程の最後での制御チャンバの容積であり、Vdi2が次の送出行程の最後での制御チャンバの容積である場合、ポンプによって送出される流体の容積は、Vdi2からVdi1を引くことによって概算することができる。この測定は圧力に基づき行われるため、圧送行程の全体または一部にかかわらず、ポンプチャンバ181内の膜15/ポンプ制御領域1482のほぼ任意の位置に関して容積を判定することができる。ただし、注液行程および送出行程の最後での測定は、圧送動作および/または流速にほとんどか全く影響を及ぼさずに達成することができる。
【0163】
本発明の一態様は、制御チャンバの容積を判定する際、および/またはその他の目的で使用される圧力測定値の識別技術を含む。たとえば、制御チャンバ内の圧力と基準チャンバ内の圧力とを検知するために圧力センサを使用することができるが、感知された圧力値は、バルブの開閉、制御チャンバへの圧力導入、基準チャンバの大気圧またはその他の基準圧への排気などに応じて変動する場合がある。また、一実施形態では、断熱システムが制御チャンバと基準チャンバ間の圧力均等化前の時点から均等化後まで存在すると推定されるため、時間内に接近して測定された適切な圧力値を判定することは、誤差を低減する助けとすることができる(たとえば、複数の圧力測定間に経過する時間が短いほど、システム内で交換される熱の量が低減されるため)。よって、測定圧力値は、ポンプなどによって送出される容積の判定のために使用される適切な圧力を確保する助けとして、注意深く選択する必要があろう。
【0164】
説明のため、
図43は、バルブX2の開放前の一時点から、バルブX2が開放されてチャンバ内の圧力を均等化させた後のいくらかの時間までの、制御チャンバと基準チャンバに関する圧力値を示すグラフである。図示した本実施形態では、均等化以前は、制御チャンバ内の圧力は基準チャンバ内の圧力より高いが、注液工程中および/または注液行程の最後など、構成によっては均等化以前でも制御チャンバ圧が基準チャンバ圧よりも低くてもよいと理解すべきである。また、
図43のグラフは均等化圧力を表示する水平ラインを示しているが、このラインは明瞭化のためだけであると理解すべきである。均等化圧力は概して、バルブX2の開放前には既知ではない。本実施形態では、圧力センサは、制御チャンバと基準チャンバの両方で約2000Hzのレートで圧力を感知するが、その他の適切なサンプリングレートを使用することができる。バルブX2の開放前に、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力はほぼ一定で、空気またはその他の流体はチャンバに導入されない。よって、バルブX1およびX3は概して、バルブX2の開放前の時点では閉鎖される。また、バルブポート190および192などのポンプチャンバにつながるバルブは、ポンプチャンバ、液体供給源、および液体出口における圧力差の影響を防止するために閉鎖することができる。
【0165】
最初に、測定圧力データは、制御チャンバおよび基準チャンバに関する最初の圧力、すなわち、PdおよびPrを検知するために処理される。図示した一実施形態では、最初の圧力は、測定圧力データで使用される10ポイントスライディングウィンドウの解析に基づき識別される。この解析は、たとえば最小二乗法を用いた各ウィンドウ(またはセット)内のデータに関する最良適合ラインの生成、および最良適合ラインの傾斜の決定を含む。たとえば、制御チャンバまたは基準チャンバに対して新たな圧力が測定される度、最新の測定と過去9回の圧力測定とを含むデータセットに対して、最小二乗最良適合ラインを判定することができる。このプロセスは数セットの圧力データに対して繰り返すことができ、最小二乗最良適合ラインの傾斜が負(またはそれ以外の非ゼロ)になり、次のデータセットでさらに負が増大し続ける(あるいはそれ以外の形でゼロ傾斜から逸脱する)ときに関して判定することができる。最小二乗最良適合ラインが適切で増加し続ける非ゼロ傾斜を持ち始める点は、チャンバの最初の圧力、すなわち、バルブX2が開放される前の一時点を特定するために使用することができる。
【0166】
一実施形態では、基準チャンバおよび制御チャンバに関する最初の圧力値は、データセットの最良適合ラインの傾斜が第1のデータセットから第5のデータセットまで増加し、第1のデータセットの最良適合ラインの傾斜が最初に非ゼロとなる(すなわち、第1のデータセットに先行するデータセットの最良適合ラインの傾斜がゼロである、あるいはそれ以外の形で十分な非ゼロではない)5つの連続するデータセットのうち最後のデータセットに関して判定することができる。たとえば、圧力センサは、バルブX2が開放される前の1時点で始まる1/2ミリ秒(またはその他のサンプリングレート)毎にサンプルを取ることができる。圧力測定が行われる度に、サイクラー14は過去の9回の測定と共に最新の測定を行い、セット中の10データポイントの最良適合ラインを生成することができる。次の圧力測定後(たとえば、1/2ミリ秒後)、サイクラー14は過去の9回の測定と共に最新の測定を行い、再びセット中の10ポイントの最良適合ラインを生成することができる。このプロセスは繰り返すことができ、サイクラー14は、1セットの10データポイントの最良適合ラインの傾斜が最初に非ゼロとなる(あるいはそれ以外の形で適切な傾斜となる)とき、たとえば、5連続セットの10データポイントの最良適合ラインの傾斜が後のデータセットになる毎に増大することを判定することができる。使用する特定の圧力測定を特定するため、1つの方法は、第5のデータセットのうちの第3の測定(すなわち、最良適合ラインが一貫して傾斜を増大させており、第1の測定が時間中最も早く行われた圧力測定である第5のデータセット)を、制御チャンバまたは基準チャンバの最初の圧力、すなわち、PdまたはPrとして使用される測定として選択することである。この選択は、実証的方法、たとえば、圧力測定値をグラフ化し、どの点が最も適切に圧力が均等化プロセスを開始した時点を表すかを選択することによって選定された。当然ながら、適切な最初の圧力を選択するために他の方法も利用可能である。
【0167】
図示した一実施形態では、選択されたPdおよびPr測定が行われた時間が所望の時間閾値、たとえば、互いに1~2ミリ秒内にあることを確認することができる。たとえば、上述の方法が制御チャンバ圧および基準チャンバ圧を解析し、圧力均等化が始まる直前の圧力測定(ひいては、時点)を特定するために使用される場合、圧力が測定された時点は互いに比較的接近しているべきである。さもなければ、圧力測定の一方または両方を無効にするエラーまたはその他の故障条件があったかもしれない。PdおよびPrが発生した時間が共に適切に接近していることを確認することによって、サイクラー14は最初の圧力が適切に特定されたと確認することができる。
【0168】
チャンバの測定圧力がポンプチャンバ容積を確実に判定するために使用可能であるように、いつ制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力が均等化されたかを特定するため、サイクラー14は、制御チャンバおよび基準チャンバの両方の圧力測定から一連のデータポイントを含むデータセットを解析し、データセット(たとえば、最小二乗法を用いて)データセット毎の最良適合ラインを判定し、いつ制御チャンバに関するデータセットおよび基準チャンバに関するデータセットの最良適合ラインの傾斜が適切に互いに類似するか、たとえば、傾斜がどちらもゼロに近い、あるいは互いの閾値内にある値を有するかを特定することができる。最良適合ラインの傾斜が類似する、あるいはゼロに近いとき、圧力は均等化されたと判定することができる。いずれかのデータセットに関する第1の圧力測定値が、最終均等化圧力、すなわち、Pfとして使用することができる。図示した一実施形態では、圧力均等化はバルブX2が開放された後の約200~400ミリ秒内に発生し、均等化の大半が約50ミリ秒内に発生したことが判明した。したがって、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力は、バルブX2が開放される前の時点から均等化が達成される時点までの均等化プロセス全体で約400~800回以上サンプルを抽出することができる。
【0169】
場合によっては、代替のFMS法を用いて制御チャンバ容積測定の精度を高めることが望ましいことがある。圧送される流体、制御チャンバガス、および基準チャンバガス間の大きな温度差は、圧力均等化が断熱的に生じるという仮定に基づく計算の際に大きなエラーを招く可能性がある。制御チャンバと基準チャンバ間の完全な圧力均等化まで圧力の測定を待つことは、過剰な熱転写量を生じさせる場合がある。本発明の一態様では、互いにほぼ不均等である、すなわち、完全な均等化が生じる前に測定されるポンプチャンバおよび基準チャンバの圧力値が、ポンプチャンバ容積を判定するために使用することができる。
【0170】
一実施形態では、熱転写を最小限にとどめることができ、バルブX2の開放から完全な圧力均等化までの均等化期間全体を通じてチャンバ圧を測定し、断熱計算のために均等化期間中のサンプリング点を選択することによって、断熱計算誤差を低減することができる。APDシステムの一実施形態では、制御チャンバと基準チャンバ間の完全な圧力均等化前に得られた測定チャンバ圧が、ポンプチャンバ容積を判定するために使用することができる。一実施形態では、これらの圧力値は、チャンバが最初に流体接続され、均等化が開始された後に約50ms測定することができる。上述したように、一実施形態では、完全な均等化はバルブX2の開放後約200~400msで行うことができる。よって測定圧力は、総均等化期間の約10%~50%以下である、バルブX2の開放(または均等化の開始)後の時点で得ることができる。別の言い方をすると、測定圧力は、圧力均等化の50~70%が生じた(すなわち、基準チャンバ圧とポンプチャンバ圧が最初のチャンバ圧と最後の均等化圧との差の約50~70%分変化した)時点で得ることができる。コンピュータ使用可能コントローラを使用して、均等化期間中に制御チャンバおよび基準チャンバ内の相当数の圧力測定を行い、記憶し、解析することができる(たとえば、40~100の個々の圧力測定)。均等化期間の最初の50ms中にサンプリングされた時点の中で、断熱計算を実行するのに論理上最適なサンプリング点が存在する(たとえば、最適化サンプリング点がバルブX2の開放後約50msで発生する
図43を参照)。最適化サンプリング点は、2つのチャンバの気体容積間の熱転写を最小限にとどめるが、圧力センサの特性とバルブ始動の遅延による圧力測定における大きな誤差を招かないように、バルブX2の開放後十分早い時点で発生することができる。しかし、
図43に見られるように、ポンプチャンバおよび基準チャンバの圧力はこの時点で互いに略不均等とすることができるため、均等化は完了していないかもしれない(尚、場合によっては、バルブX2、たとえば、圧力センサの固有の不正確性、バルブX2が完全に開放するのに必要な時間、およびバルブX2の開放直後の制御チャンバまたは基準チャンバの急速な最初の圧力変化のため、バルブX2の開放直後に確実な圧力測定を行うことが技術的に困難な場合がある)。
【0171】
圧力均等化中、制御チャンバおよび基準チャンバの最終圧力が同一でないとき、式2は、
PriVriγ+PdiVdiγ=Constant=PrfVrfγ+PdfVdfγ (8)
となる。
【0172】
ただし、PriはバルブX2の開放前の基準チャンバ内の圧力であり、PdiはバルブX2の開放前の制御チャンバ内の圧力であり、Prfは最終基準チャンバ圧であり、Pdfは最終制御チャンバ圧である。
【0173】
ΔVdおよびΔVrの絶対値間の差が均等化期間全体にわたり最小化される(あるいは所望の閾値未満になる)圧力均等化期間中の時点を選択する(断熱プロセスにおいて、この差は式5に示されるように理想的にはゼロであるべきである。
図43では、ΔVdおよびΔVrの絶対値間の差が最小化される時点は、「最終圧力が特定される時点」と表示される50msラインで発生する。)ために最適化アルゴリズムを使用することができる。まず、バルブX2の開放と最終圧力均等化との間のn全体で複数点j=1で、制御チャンバおよび基準チャンバから圧力データを回収することができる。圧力均等化前の基準チャンバシステムの固定容積Vriは既知であるため、(バルブX2開放後のサンプリングポイントjでの基準チャンバシステムの容積)Vrjに関する次の値が、均等化曲線に沿った各サンプリングポイントPrjで式3を用いて算出することができる。Vrjの上記各値に関しては、ΔVdの値を式5および7を用いて算出することができ、それによって、Vrjの各値は、Vdij、Vdiの推定値、圧力均等化前の制御チャンバシステムの容積をもたらす。Vrjの各値と対応するVdijの値とを用いて、および式3と4を用いて、均等化曲線に沿った各圧力測定点で、ΔVdおよびΔVrの絶対値の差を算出することができる。これらの差の自乗の和が、Vrjおよび対応するVdijの各値に関する圧力均等化中のVdiの算出値における誤差の尺度となる。|ΔVd|および|ΔVr|の自乗差の最小和をもたらす基準チャンバ圧をPrf、関連する基準チャンバの容積をVrfとすると、Vrfに対応するデータポイントPrfおよびPdfは次に、制御チャンバシステムの最初の容積であるVdiの最適推定値を算出するために使用することができる。
【0174】
PdfおよびPrfの最適値を捕捉する均等化曲線上の場所を判定する1つの方法を以下に述べる。
1)バルブX2の開放直前に始まり、PrとPdが均等に近くなって終わる、制御チャンバおよび基準チャンバからの一連の圧力データセットを取得する。Priが捕捉された第1の基準チャンバ圧である場合、
図32における次のサンプリングポイントはPrj = Pr1、Pr2、...Prnと称される。
【0175】
2)式6を用いて、Pri後の各Prjに関して、jがPri後のj番目の圧力データポイントである対応するΔVrjを算出する。
ΔVrj=Vrj-Vri=Vri(-1+(Prj/Pri)-(1/γ)
3) 上記各ΔVrjに関して、式7を用いて対応するVdijを算出する。たとえば、
【0176】
【数1】
圧力均等化中に1セットのn個の制御チャンバシステムの最初の容積(Vdi1~Vdin)を、基準チャンバ圧データポイント Pr1~Prnのセットに基づき算出した後、圧力均等化期間全体にわたる制御チャンバシステムの最初の容積(Vdi)のうちで最適測定をもたらす時点(f)を選択することができる。
【0177】
4)式7を用いて、Vdi1~Vdinのそれぞれに関して、時点k=1~n間の制御チャンバ圧測定値Pdを用いて、すべてのΔVdj、kを算出する。
Pr1に対応するVdiの場合、
【0178】
【数2】
5)ΔVrおよびΔVdj、kの絶対値間の自乗誤差和を取る。
【0179】
【数3】
6)ステップ5から最小自乗誤差和S(または所望の閾値未満の値)を生成し、選択されたPrfとなるPr1とPrn間のPrデータポイントから、Pdfと制御チャンバの最初の容積Vdiの最適推定値とを判定することができる。本例では、PdfはPrfと同時点またはほぼ同時点に発生する。
【0180】
7)上述の手順は、制御チャンバ容積の推定が望まれるときはいつでも適用することができるが、好適には各注液工程および各送出行程の最後に適用することができる。注液工程の最後での最適化されたVdiと対応する送出行程の最後での最適化されたVdiとの差は、ポンプによって送出される液体の容積を推定するために使用することができる。
【0181】
空気検知
本発明の別の態様は、ポンプチャンバ181内の空気の存在の判定と、存在する場合にはその空気の容積の判定とを含む。このような判定は、たとえば、カセット24から空気を除去する準備シーケンスの適切な実行を確実にするため、および/または空気が患者に送出されないことを確実にするため重要であり得る。特定の実施形態では、たとえば、ポンプチャンバ181の底部で下側開口部187を通って患者に流体を送出する際、ポンプチャンバに捕捉された空気またはその他の気体はポンプチャンバ181内に残る傾向があり、気体の容積がポンプチャンバ181の有効デッドスペースの容積よりも大きくない限り、当該空気またはその他の気体の患者への圧送は阻害される。後述するように、ポンプチャンバ181に含まれる空気またはその他の気体は、本発明の態様にしたがって判定することができ、気体の容積がポンプチャンバ181の有効デッドスペースの容積より大きくなる前に気体をポンプチャンバ181から一掃することができる。
【0182】
ポンプチャンバ181内の空気量の判定は注液工程の最後に行うことができ、よって、送出行程を邪魔することなく実行することができる。たとえば、膜15およびポンプ制御領域1482が制御チャンバ171の壁と接触させられるようにカセット24から遠くへ引っ張られる注液工程の最後で、バルブX2を閉鎖し、たとえば、バルブX3を開放することによって基準チャンバを大気圧まで通気することができる。その後、バルブX1およびX3を閉鎖して、想像上の「ピストン」をバルブX2に固定することができる。その後、バルブX2を開放して、上述したように、制御チャンバの容積を判定する圧力測定を実行する際に、制御チャンバおよび基準チャンバ内の圧力を均等化させることができる。
【0183】
ポンプチャンバ181内に気泡が存在しない場合、基準チャンバシステムの既知の最初の容積と基準チャンバ内の最初の圧力を用いて判定される、想像上の「ピストン」移動による基準チャンバの容積変化は、制御チャンバシステムの既知の最初の容積と制御チャンバ内の最初の圧力とを用いて判定される制御チャンバの容積変化と等しくなる(制御チャンバの最初の容積は、膜15/制御領域1482が制御チャンバの壁と接触している、あるいはポンプチャンバ181のスペーサ要素50と接触している状況で既知である)。しかし、空気がポンプチャンバ181内に存在すれば、制御チャンバの容積変化は実際には、制御チャンバ容積およびポンプチャンバ181内の気泡間で分配される。その結果、制御チャンバシステムの既知の最初の容積を用いて算出される制御チャンバの容積変化は基準チャンバの算出される容積変化とは等しくないため、ポンプチャンバ内の空気の存在を示唆することとなる。
【0184】
ポンプチャンバ181内に空気が存在する場合、制御チャンバシステムの最初の容積Vdiは実際には、式9に示されるように、制御チャンバおよびラインL0およびL1の容積の和(Vdfixと称する)とポンプチャンバ181内の気泡の最初の容積(Vbiと称する)とを加算したものに等しい。
【0185】
Vdi=Vbi+Vdfix (9)
注液工程の最後で膜15/制御領域1482が制御チャンバの壁に押し当てられている状態で、たとえば、制御チャンバ壁の溝またはその他の特徴の存在による制御チャンバ内の空気空間の容積とラインL0およびL1の容積-合わせてVdfix-とは、かなり正確に知ることができる(同様に、膜15/制御領域1482がポンプチャンバ181のスペーサ要素50に押し当てられている状態で、制御チャンバの容積とラインL0およびL1の容積も正確に知ることができる)。注液工程後、制御チャンバシステムの容積は、正の制御チャンバプレチャージを用いてテストされる。このテスト容積と注液工程の最後でのテスト容積との不一致は、ある容積の空気がポンプチャンバ内に存在することを示す。式9を式7に代入すると、制御チャンバΔVdの容積変化は次式によって求められる。
【0186】
ΔVd=(Vbi+Vdfix)(-1+(Pdf/Pdi)-(1/γ)) (10)
ΔVrは式6から算出でき、ΔVr=(-1)ΔVdであることが式5から既知であるため、式10は、
(-1)ΔVr=(Vbi+Vdfix)(-1+(Pdf/Pdi)-(1/γ))
(11)
と書き直すことができ、
Vbi=(-1)ΔVr/(-1+(Pdf/Pdi)-(1/γ)) (12)
と再度書き直すことができる。
【0187】
したがって、サイクラー14は、ポンプチャンバ181内に空気が存在するか否か、および式12を用いて気泡の概算容積を判定することができる。この気泡容積の計算は、たとえば、ΔVr(式6から判定)およびΔVd(Vdi=Vdfixを用いて式7から判定)の絶対値が互いに等しくないことが判明した場合に実行することができる。すなわち、ポンプチャンバ181内に気泡が存在しない場合にはVdiはVdfixと等しいはずであるため、Vdiの代わりにVdfixを用いて式7によって与えられるΔVdの絶対値はΔVrと等しくなる。
【0188】
注液工程の完了後、空気が上述した方法により検出されれば、空気がポンプチャンバ側にあるのか、あるいは膜15の制御側にあるのかを判定するのは困難かもしれない。気泡は圧送されている液体中に存在する可能性がある、あるいは、不完全な圧送行程を引き起こした圧送およびポンプチャンバの不完全な注液中の状況(たとえば、遮断)のため、ポンプ膜15の制御(空気圧)側に空気が残っている可能性がある。この時点で、負のポンプチャンバプレチャージを用いて断熱FMS測定を実行することができる。このFMS容積が正のプレチャージでのFMS容積と一致すれば、膜は両方向に自由に移動できる、つまり、このことはポンプチャンバが部分的にのみ注入されていることを示唆する(可能性としては、たとえば遮断のため)。膜15/領域1482が制御チャンバの壁と接触しているときに、負のポンプチャンバプレチャージFMS容積の値が名目制御チャンバ空気容積と等しい場合、可撓膜のポンプチャンバ側の液体内に気泡があると結論づけることができる。
【0189】
頭高検知
状況によっては、カセット24またはシステムのその他の部分に対する患者の高さ方向の位置を判定することが有用であり得る。たとえば、状況によっては、透析患者は、注液または排液動作中に患者の腹膜腔を出入りして流れる流体による「引っ張り」またはその他の運動を感じることがある。この感覚を低減するため、サイクラー14は注液および/または排液動作中に患者ライン34に印加される圧力を低減することができる。しかし、患者ライン34の圧力を適切に設定するため、サイクラー14は、サイクラー14、加熱バッグ22、システムの排液口またはその他の部分に対する患者の高さを判定することができる。たとえば、注液動作を実行するとき、患者の腹膜腔が加熱バッグ22またはカセット24の5フィート(約1.5m)上方に位置する場合、サイクラー14は、患者の腹膜腔がサイクラー14の5フィート(約1.5m)下方に位置する場合よりも、透析液を送出する患者ライン34内で高い圧力を使用する必要がある。圧力は、所望の目標ポンプチャンバ圧を達成するために可変時間間隔をおいてバイナリ気圧源バルブを交互に開閉することによって調節することができる。平均の所望目標圧は、たとえば、ポンプチャンバ圧が目標圧よりも特定量低い場合はバルブを開放させておき、ポンプチャンバ圧が目標圧よりも特定量高い場合はバルブを閉鎖させておくように時間間隔を調節することによって維持することができる。完全な行程容積の送出を維持するための調節は、ポンプチャンバの注液および/または送出回数を調節することによって実行することができる。可変開口ソースバルブが使用される場合、目標ポンプチャンバ圧は、バルブを開閉する間隔のタイミングに加えてソースバルブの開口を変動させることによって達成することができる。患者位置を調節するため、サイクラー14は瞬間的に流体の圧送を停止して、(たとえば、カセット24内の適切なバルブポートを開放することによって)患者ライン34をカセット内の1または複数のポンプチャンバ181と開放流体連通させることができる。しかし、ポンプチャンバ181用の上側バルブポート192などの他の流体ラインは閉鎖することができる。この状況で、ポンプのうちの1つの制御チャンバ内の圧力を測定することができる。当該技術において公知であるように、この圧力は患者の「頭」高と相関しており、患者への流体の送出圧力を制御するためにサイクラー14によって利用することができる。加熱バッグ22および/または溶液容器20などの頭高(通常は既知である)が適切に流体を圧送するのに必要な圧力に影響を及ぼす場合、これらの構成要素の頭高を判定するために同様の手法を使用することができる。
【0190】
サイクラーのノイズ低減特徴
本発明の態様では、サイクラー14は、動作中および/またはアイドリング時にサイクラー14によって生成されるノイズを低減する1または複数の特徴を含むことができる。本発明の一態様によると、サイクラー14は、サイクラー14の各種空気圧システムを制御するのに使用される圧力と真空の両方を生成する単独のポンプを含むことができる。一実施形態では、ポンプは圧力と真空の両方を同時に生成できることによって、全体の実行時間を低減し、ポンプをさらに低速で(よって、さらに静かに)作動させることができる。別の実施形態では、エアポンプの始動および/または停止は傾斜をつけることができる、たとえば、始動時にはポンプの速度またはパワー出力を緩やかに増加させ、および/または切断時にはポンプの速度またはパワー出力を緩やかに低減させる。この構成はエアポンプの始動および停止に関わる「オン/オフ」ノイズの低減を助けることができるため、ポンプのノイズはさほど顕著でない。別の実施形態では、切断とは対照的にエアポンプが動作し続けて結局は短時間後にオンにされるように、目標出力圧力または容積流速に近づくと、エアポンプは下側デューティサイクルで作動させることができる。その結果、エアポンプのオンオフサイクルの反復によって生じる混乱を回避できる。
【0191】
図44は、ハウジング82の上部が取り外されたサイクラー14の内側部分の斜視図である。図示した本実施形態では、サイクラー14は、遮音エンクロージャ内に収容される実際のポンプとモータ駆動装置とを含む単独のエアポンプ83を含む。遮音エンクロージャは、金属またはプラスチック製フレームなどの外装と、外装内で、モータおよびポンプを少なくとも部分的に囲む遮音材料とを含む。このエアポンプ83は、たとえば一対のアキュムレータタンク84に空気圧と真空を同時に提供することができる。一方のタンク84は正圧の空気を保管し、他方のタンクは真空を保管する。サイクラー14の構成部品に供給される空気圧/真空を提供および制御するように、適切なマニホルドおよびバルブ構造をタンク84に接続することができる。
【0192】
本発明の別の態様によると、サイクラー動作中に比較的一定の圧力または真空の供給を要するオクルーダなどの構成部品は、少なくとも比較的長期間、空気圧/真空源から隔離することができる。たとえば、サイクラー14内のオクルーダ147は通常、患者ラインおよび排液ラインが流れのため開放されたままでいるように、オクルーダ空気袋166内に一定の空気圧を要する。サイクラー14が停電などがなく適切に動作し続ける場合、空気袋166はシステム動作の開始時にいったん膨張させ、切断するまで膨張を維持することができる。発明者らは、状況によっては、空気袋166などの比較的静的な空気式装置は、供給される空気圧のわずかな変動に応答して「きしむ」あるいはその他の形でノイズを発する場合があることを認識した。このような変動により、空気袋166はわずかにサイズを変え、それにより関連の機械部品が移動してノイズを発生する可能性がある。一態様によると、空気袋166および類似の空気圧要件を有するその他の構成部品は、空気袋またはその他の空気圧構成部品内の圧力変動を低減して、圧力変動の結果生じる場合のあるノイズを低減するように、たとえばバルブを閉鎖することによって、エアポンプ83および/またはタンク84から隔離することができる。空気圧供給源から隔離可能な別の構成要素は、ドア141が閉じられるときにカセット24を制御面148に押し付けるように膨張する、カセット搭載部145のドア141の空気袋である。その他の適切な構成部品も所望に応じて隔離することができる。
【0193】
本発明の別の態様によると、空気圧構成部品を始動する速度および/または力は、構成要素の動作によって生じるノイズを低減するように制御することができる。たとえば、カセット24上のバルブポートを開放または閉鎖するように、バルブ制御領域1481を移動させてカセット膜15の対応部分を移動させることで、膜15がカセット24に当たる、および/またはカセット24から離れて引っ張られる際に「発砲」音が生じることがある。このようなノイズは、バルブ制御領域1481の動作速度を制御することによって、たとえば、制御領域1481を移動させるために使用される空気の流速を制限することによって低減することができる。空気流は、たとえば関連の制御チャンバにつながるライン、またはその他の経路に適切な小型の開口を設けることによって制限することができる。
【0194】
コントローラは、サイクラー14のマニホルドの1または複数の空気圧源バルブの始動にパルス幅変調(「PWM」)を適用するようにプログラムすることもできる。カセット24の各種バルブおよびポンプに送出される空気圧は、カセット24内のバルブまたはポンプの始動期間中に関連のマニホルドソースバルブを繰り返し開閉させることによって制御することができる。次に、膜15/制御面148に対する圧力の上昇または低下速度は、始動期間中に特定のマニホルドバルブの「オン」部分の継続期間を調節することによって制御することができる。PWMをマニホルドソースバルブに適用するさらなる利点は、より高価で信頼性の低い可変開口ソースバルブを使用する代わりにバイナリ(オン-オフ)ソースバルブの身を用いて、カセット24の構成部品に可変空気圧を送出できることである。
【0195】
本発明の別の態様によると、1または複数のバルブ要素の移動は、バルブサイクルによって生じるノイズを低減するように適切に抑えることができる。たとえば、流体(たとえば強磁性流体)に、要素の移動を抑える、および/または開位置と閉位置との間でのバルブ要素の移動によって生じるノイズを低減するため、高周波ソレノイドバルブのバルブ要素を設けることができる。
【0196】
別の実施形態によると、空気圧または真空の解放に関連するノイズを低減するように、空気圧制御ライン通気口を一緒に接続する、および/または共通の遮音空間へ方向づけることができる。たとえば、オクルーダ空気袋166が、バネ板165を互いに向かって移動させて1または複数のラインを遮断するように通気される場合、解放される空気圧は、解放に関連するノイズをより容易に聞き取れる空間に解放されるのとは対照的に、遮音エンクロージャへと解放される。別の実施形態では、空気圧を開放するように配置されるラインを、真空を開放するように配置されるラインとともに接続することができる。これに関連し(大気への通機口、アキュムレータ、またはその他を含むことができる)、圧力/真空の解放によって生じるノイズをさらに低減することができる。
【0197】
制御システム
図1に関連づけて説明する制御システム16は、透析治療の制御や透析治療に関連する情報の通信などの各種機能を有する。これらの機能は単独のコンピュータまたはプロセッサによって実行されるが、これらの機能の実現が物理的および概念的に分離されておくように異なる機能には異なるコンピュータを使用することが望ましいことがある。たとえば、透析器の制御に1つのコンピュータを使用し、ユーザインターフェースの制御に別のコンピュータを使用することが望ましいことがある。
【0198】
図45は、制御システム16の例示の具体例を示すブロック図であり、制御システムは透析器を制御するコンピュータ(「自動コンピュータ」300)と、ユーザインターフェースを制御する別のコンピュータ(「ユーザインターフェースコンピュータ」302)とを備える。後述するように、安全を最重視すべきシステム機能は自動コンピュータ300でのみ実行させることができるため、ユーザインターフェースコンピュータ302は機能の実行から隔離される。
【0199】
自動コンピュータ300は、透析治療を実行するバルブ、ヒータ、およびポンプなどのハードウェアを制御する。また、自動コンピュータ300は、治療を順序付け、本文書でさらに説明するように、ユーザインターフェースの「モデル」を維持する。図示したように、自動コンピュータ300は、コンピュータ処理ユニット(CPU)/メモリ304、フラッシュディスクファイルシステム306、ネットワークインターフェース308、およびハードウェアインターフェース310を備える。ハードウェアインターフェース310はセンサ/アクチュエータ312に接続される。この接続により、自動コンピュータ300はセンサを読み取り、APDシステムのハードウェアアクチュエータを制御して治療動作を監視および実行することができる。ネットワークインターフェース308は、自動コンピュータ300をユーザインターフェースコンピュータ302に接続するインターフェースを提供する。
【0200】
ユーザインターフェースコンピュータ302は、ユーザおよび外部装置および実体を含め、外界とのデータ交換を可能にする構成部品を制御する。ユーザインターフェースコンピュータ302はコンピュータ処理ユニット(CPU)/メモリ314、フラッシュディスクファイルシステム316、およびネットワークインターフェース318を備え、そのそれぞれが、自動コンピュータ300の対応物と同一または類似のものにすることができる。Linuxオペレーティングシステムは、自動コンピュータ300およびユーザインターフェースコンピュータ302のそれぞれで作動することができる。自動コンピュータ300のCPUとしての使用および/またはユーザインターフェースコンピュータ302のCPUとしての使用に適した例示のプロセッサは、FreescaleのPower PC5200B(登録商標)である。
【0201】
ネットワークインターフェース318を介して、ユーザインターフェースコンピュータ302を自動コンピュータ300に接続することができる。自動コンピュータ300とユーザインターフェースコンピュータ302のいずれも、APDシステムの同じシャーシ内に含めることができる。もしくは、一方または両方のコンピュータまたは前記コンピュータの一部(たとえば、ディスプレイ324)は、シャーシ外に配置することができる。自動コンピュータ300およびユーザインターフェースコンピュータ302は、広域ネットワーク、構内ネットワーク、バス構造、無線接続、および/またはその他のデータ転送媒体によって接続することができる。
【0202】
ネットワークインターフェース318は、ユーザインターフェースコンピュータ302をインターネット320および/またはその他のネットワークに接続するためにも使用することができる。このようなネットワーク接続は、たとえば、病院または医師との接続を開始し、治療データを遠隔データベースサーバにアップロードし、医師から新たな処方を入手し、アプリケーションソフトウェアをアップグレードし、サービスサポートを取得し、供給品を要求し、および/または保全用のデータをエクスポートするために使用することができる。一例によると、コールセンターの技術者が、ネットワークインターフェース318を通じてインターネット320上で遠隔から警報ログおよび機械構成情報にアクセスすることができる。所望すれば、ユーザインターフェースコンピュータ302は、接続が遠隔開始プログラムによってではなく、ユーザによって、あるいはその他の方法で局地的にシステムによって開始させることができるように構成することができる。
【0203】
ユーザインターフェースコンピュータ302は、
図10に関連して説明したユーザインターフェース144などのユーザインターフェースに接続されるグラフィックインターフェース322も備える。例示の一具体例によると、ユーザインターフェースは、液晶ディスプレイ(LCD)を含み、タッチスクリーンと対応づけられるディスプレイ324を備える。たとえば、ユーザが指やスタイラスなどでディスプレイに触れることによってユーザインターフェースコンピュータ302に入力することができるように、タッチスクリーンはLCD上に載せられる。ディスプレイは、特に音声プロンプトと記録された発話とを再生することのできる音声システムと関連付けることができる。ユーザは、環境と好みに基づきディスプレイ324の輝度を調節することができる。任意で、APDシステムは光センサを含み、ディスプレイの輝度は、光センサによって検知される周囲光に応じて自動的に調節することができる。
【0204】
また、ユーザインターフェースコンピュータ302は、USBインターフェース326を備える。USBフラッシュドライブなどのデータ記憶装置328は、USBインターフェース326を介してユーザインターフェースコンピュータ302に選択的に接続することができる。データ記憶装置328は、患者固有のデータを記憶するのに使用される「患者データキー」を備えることができる。透析治療からのデータおよび/または調査の質問(たとえば、体重、血圧)は患者データキーに記録される。このように、患者データは、USBインターフェース326に接続されるときはユーザインターフェースコンピュータ302にアクセス可能であり、インターフェースから取り外されるときは携帯可能にすることができる。患者データキーは、サイクラー交換中にあるシステムまたはサイクラーから別のシステムまたはサイクラーにデータを転送し、臨床ソフトウェアからシステムに新たな治療およびサイクラー構成データを転送し、システムから臨床ソフトウェアに治療履歴および装置履歴情報を転送するために使用することができる。例示の患者データキー325を
図65に示す。
【0205】
図示したように、患者データキー325は、コネクタ327とコネクタに接続されるハウジング329とを備える。患者データキー325は、専用USBポート331に任意に関連付けることができる。ポート331は、凹部333(たとえば、APDシステムのシャーシ内)と、この凹部内に配置されるコネクタ335とを備える。凹部は、ポート331に関連付けられるハウジング337によって少なくとも部分的に画定することができる。患者データキーコネクタ327およびポートコネクタ335は、選択的に電気的および機械的に互いに接続されるよう適応することができる。
図65から認識されるように、患者データキーコネクタ327とポートコネクタ335とが接続され、患者データ記憶装置325のハウジング329が凹部333内に少なくとも部分的に収容される。
【0206】
患者データキー325のハウジング329は、それが関連付けられるポートを示す可視キューを備える、および/または不正確な挿入を避けるような形状にすることができる。たとえば、ポート331の凹部333および/またはハウジング337は、患者データキー325のハウジング329の形状に対応する形状を有することができる。たとえば、それぞれが、たとえば
図65に示されるような上側に凹みのある楕円形状など、非矩形またはその他の不規則な形状を有することができる。ポート331の凹部333および/またはハウジング337と患者データキー325のハウジング329は、それらの関連付けを示すさらなる可視キューを含むことができる。たとえば、それぞれが、同じ材料で形成される、および/または同一または類似の色および/またはパターンを有することができる。
【0207】
もしくはまたはさらに、患者データキー325は、患者データキーが予測される種類および/または出所であることを検証するために、APDシステムにより読取可能な検証コードを備えることができる。このような検証コードは患者データキー325のメモリに記憶し、患者データキーから読み取り、APDシステムのプロセッサによって処理することができる。もしくはあるいはさらに、このような検証コードは、患者データキー325の外側に、たとえば、バーコードまたは数字コードとして含めることができる。この場合、カメラおよび関連付けられたプロセッサ、バーコードスキャナ、または別のコード読取装置により読み取ることができる。
【0208】
システムの電源が入っているときに患者データキーが挿入されない場合、キーを挿入するように要求する警告を生成することができる。しかし、以前に構成されている限り、システムは患者データキーなしでも動作することができてもよい。よって、患者データキーを紛失した患者は、交換キーを入手できるまで治療を受けることができる。データは直接患者データキーに記憶させることができる、あるいはユーザインターフェースコンピュータ302への記憶後に患者データキーに転送することができる。データは、患者データキーからユーザインターフェースコンピュータ302に転送することもできる。
【0209】
また、たとえば、近傍のブルートゥース対応装置とのデータ交換を可能にするため、USBブルートゥースアダプタ330をUSBインターフェース326を介してユーザインターフェースコンピュータ302に接続することができる。たとえば、APDシステムの近傍のブルートゥース対応スケールは、USBブルートゥースアダプタ330を用いるUSBインターフェース326を介してシステムに患者の体重に関する情報を無線で転送することができる。同様に、ブルートゥース対応の血圧カフは、USBブルートゥースアダプタ330を用いてシステムに患者の血圧に関する情報を無線で転送することができる。ブルートゥースアダプタは、ユーザインターフェースコンピュータ302に内蔵させてもよくあるいは外部装置であってもよい(たとえば、ブルートゥースドングル)。
【0210】
USBインターフェース326はいくつかのポートを備えることができ、これらのポートは様々な物理的位置におかれて、様々なUSB機器のために使用することができる。たとえば、機械の正面からアクセス可能な患者データキー用のUSBポートを設ける一方、を機械の裏面からアクセス可能な別のUSBポートを設けることが望ましい。ブルートゥース接続用のUSBポートをシャーシの外側に含める、あるいはその代わりに、たとえば機械の内部またはバッテリドアの中に配置することができる。
【0211】
上述したように、安全を最重視すべき含意を有する可能性のある機能は、自動コンピュータ上で隔離させておくことができる。安全を最重視すべき情報はAPDシステムの動作に関連する。たとえば、安全を最重視すべき情報は、APD手順の状態および/または治療を実行または監視するアルゴリズムを含むことができる。非安全を最重視すべき情報は、APDシステムの動作にとって重要でないスクリーンディスプレイの視覚表示に関する情報を含むことができる。
【0212】
安全を最重視すべき含意を含む可能性のある機能を自動コンピュータ300上で隔離することによって、ユーザインターフェースコンピュータ302は安全を最重視すべき動作を処理する負担を低減することができる。よって、ユーザインターフェースコンピュータ302上で実行するソフトウェアに伴う問題または該ソフトウェアへの変更は、患者の治療の送出には影響を及ぼさない。ユーザインターフェースビューの開発に必要な時間を低減するためユーザインターフェースコンピュータ302によって使用可能であるグラフィックライブラリ(たとえば、TrolltechのQt(登録商標)ツールキット)の例を考えると、これらのライブラリは自動コンピュータ300とは別のプロセスおよびプロセッサによって処理されるため、自動コンピュータは、同じプロセッサまたはプロセスによって処理されたとすれば、システムの残り(安全を最重視すべき機能を含む)に影響を及ぼしかねないライブラリの瑕疵から守られる。
【0213】
当然ながら、ユーザインターフェースコンピュータ302がユーザに対するインターフェースの表示に関与する一方、ユーザによって、ユーザインターフェースコンピュータ302を用いて、たとえば、ディスプレイ324を介してデータを入力することもできる。自動コンピュータ300の機能とユーザインターフェースコンピュータ302の機能との隔離を維持するため、ディスプレイ324を介して受信したデータは、解釈に自動コンピュータに送信し、表示用にユーザインターフェースコンピュータに戻すことができる。
【0214】
図45は2つの個別のコンピュータを示すが、記憶装置からの安全を最重視すべき機能の保管および/または実行、および/または安全を最重視すべき機能以外の機能の保管および/または実行との分離は、CPU/メモリコンポーネント304および314などの別々のプロセッサを含む単独のコンピュータを有することによって提供することができる。よって、個別のプロセッサまたは「コンピュータ」を設けることは必要でないと認識しておくべきである。さらに、上述の機能を実行するために単独のプロセッサを用いることができる。この場合、透析器を制御するソフトウェア構成部品の実行および/または保管を、ユーザインターフェースを制御するソフトウェア構成部品の実行および/または保管と機能的に隔離することが望ましいかもしれないが、本発明はこれに限定されない。
【0215】
安全性の懸念に対応するためにシステムアーキテクチャの他の態様を設計することもできる。たとえば、自動コンピュータ300およびユーザインターフェースコンピュータ302は、各コンピュータ上でCPUを動作可能または動作不能にすることのできる「安全ライン」を含むことができる。安全ラインは、APDシステムのセンサ/アクチュエータ312の少なくともいくつかを動作可能にするのに十分な電圧(たとえば、12V)を生成する電圧供給源に接続することができる。自動コンピュータ300のCPUとユーザインターフェースコンピュータ302のCPUの両方が安全ラインにイネーブル信号を送信すると、電圧供給源によって生成された電圧がセンサ/アクチュエータに送られ、構成部品を活性化する、および動作不能にすることができる。電圧はたとえば、空気圧バルブおよびポンプを活性化し、オクルーダを動作不能にし、ヒータを活性化することができる。いずれかのCPUが安全ラインへのイネーブル信号の送信を中止すると、電圧経路が(たとえば、機械的リレーによって)妨害されて空気圧バルブおよびポンプを非活性化し、オクルーダを動作可能にし、ヒータを非活性化する。このように、自動コンピュータ300とユーザインターフェースコンピュータ302のいずれかが必要とみなせば、患者は迅速に流体路から隔離され、加熱や圧送などのその他の活動も中止させることができる。各CPUは、何時でも、安全を最重視すべきエラーが検出される、あるいはソフトウェアウォッチドッグがエラーを検出するとき、安全ラインを動作不能にすることができる。システムは、いったん動作不能にされれば、自動コンピュータ300およびユーザインターフェースコンピュータ302の両方が自己テストを完了するまで安全ラインが再度動作可能にされることがないように構成することができる。
【0216】
図46は、ユーザインターフェースコンピュータ302および自動コンピュータ300のソフトウェアサブシステムのブロック図である。本例では、「サブシステム」は、特定セットの関連システム機能に割り当てられる、ソフトウェア、およびおそらくはハードウェアの集合である。「プロセス」は、独自の仮想アドレス空間で動作し、プロセス間通信設備を用いて他のプロセスにデータを送る独立した実行ファイルであってもよい。
【0217】
エグゼクティブサブシステム332は、自動コンピュータ300のCPUとユーザインターフェースコンピュータ302のCPUで動作するソフトウェアの実行を在庫にし、認証し、開始し、および監視するために使用されるソフトウェアおよびスクリプトを含む。カスタムエグゼクティブプロセスは、上述の各CPU上で動作する。各エグゼクティブプロセスは、独自のプロセッサ上にソフトウェアを搭載して監視し、他のプロセッサ上のエグゼクティブを監視する。
【0218】
ユーザインターフェース(UI)サブシステム334は、ユーザと病院間のシステム相互作用を扱う。UIサブシステム334は、データ表示(「ビュー」)とデータ自体(「モデル」)とを分離する「モデル-ビュー-コントローラ」設計パターンにより実行される。具体的には、システム状態およびデータ修正機能(「モデル」)とサイクラー制御機能(「コントローラ」)は自動コンピュータ300上のUIモデルおよびサイクラーコントローラ336によって扱われ、サブシステムの「ビュー」部はUIコンピュータ302上のUIスクリーンビュー338によって扱われる。ログ閲覧やリモートアクセスなどのデータ表示およびエクスポート機能は、全体をUIスクリーンビュー338によって扱うことができる。UIスクリーンビュー338は、ログ閲覧と医師インターフェースを提供するアプリケーションなどのさらなるアプリケーションを監視し制御する。これらのアプリケーションは、警告、警報、またはエラーの場合に制御をUIスクリーンビュー338に戻すことができるように、UIスクリーンビュー338により制御されるウィンドウ内に作成される。
【0219】
治療サブシステム340は、透析治療送出を指図し、時間を指定する。該システムは処方の確認と、処方、時間、および利用可能な流体に基づく治療サイクルの回数及び期間の算出と、治療サイクルの制御と、加熱バッグ内の流体の追跡と、供給バッグ内の流体の追跡と、患者内の流体量の追跡と、患者から限外濾過で除去された量の追跡と、警告または警報状況検出の役割をする。
【0220】
機械制御サブシステム342は透析治療を実行するのに使用される機会を制御し、治療サブシステム340によって要求される際に高レベルな圧送および制御機能を調整する。具体的には、以下の制御機能、エアコンプレッサ制御、ヒータ制御、流体送出制御(ポンピング)、および流体容積測定を機械制御サブシステム342によって実行することができる。さらに、機械制御サブシステム342は、後述するI/Oサブシステム344によってセンサの読取を信号で送る。
【0221】
自動コンピュータ300のI/Oサブシステム344は、治療を制御するのに使用されるセンサおよびアクチュエータへのアクセスを制御する。本具体例では、I/Oサブシステム344は、ハードウェアへの直接アクセスを有する唯一のアプリケーションプロセスである。よって、I/Oサブシステム344は、他のプロセスがハードウェア入力の状態を取得し、ハードウェア出力の状態を設定できるようにインターフェースを発行する。
【0222】
データベースサブシステム346は、ユーザインターフェースコンピュータ302上で、機械、患者、処方、ユーザ入力、および治療履歴情報の実装記憶のために使用されるデータベースに全データを記憶し、該データベースから全データを検索する。これにより、上記情報がシステムによって必要とされるときの共通アクセスポイントが提供される。データベースサブシステム346によって提供されるインターフェースは、データ記憶ニーズのためのいくつかのプロセスによって使用される。データベースサブシステム346は、データベースファイルの保全とバックアップも管理する。
【0223】
UIスクリーンビュー338は、治療履歴データベースを走査するために治療ログ照会アプリケーションを呼び出すことができる。もしくは複数のアプリケーションとして実装可能な本アプリケーションを用いて、ユーザは自分の治療履歴、処方および/または履歴機械ステータス情報を図で検討することができる。アプリケーションはデータベース問合せをデータベースサブシステム346に送信する。アプリケーションは、患者が透析している間、その機械の安全な動作を邪魔せずに実行され得る。
【0224】
単独のアプリケーションまたは複数のアプリケーションとして実行することのできる遠隔アクセスアプリケーションは、解析および/または遠隔システム上の表示のために治療および機械診断データをエクスポートする機能を提供する。治療ログ問合せアプリケーションは要求された情報を検索するのに使用することができ、データは移送用にXMLなどの機械中立フォーマット(machine neutral format)に再フォーマット化することができる。フォーマット化されたデータはメモリ記憶装置、直接ネットワーク接続、またはその他の外部インターフェース348によってオフボードに移送することができる。ネットワーク接続は、ユーザによる要求に応じてAPDシステムにより開始させることができる。
【0225】
治療進行中でないとき、サービスインターフェース356をユーザによって選択することができる。サービスインターフェース356は、テスト結果を記録し、たとえば診断センターに対してアップロード可能なテストレポートを任意に生成する1または複数の特別アプリケーションを備えることができる。メディアプレイヤー358は、たとえば、ユーザに提示される音声および/または映像を再生することができる。
【0226】
例示の一具体例によると、上述のデータベースは、独立言語型サーバレスゼロ構成トランザクショナルDQLデータベースエンジンを実現するソフトウェアライブラリSQLiteを用いて実現される。
【0227】
エグゼクティブサブシステム332は、2つのエグゼクティブモジュール、つまりユーザインターフェースコンピュータ302上のユーザインターフェースコンピュータ(UIC)エグゼクティブ352と自動コンピュータ300上の自動コンピュータ(AC)エグゼクティブ354とを実装する。各エグゼクティブは、オペレーティングシステムが起動された後に実行するスタートアップスプリクトによって始動され、始動するプロセスのリストを含む。エグゼクティブが各自のプロセスリストを通過するにつれ、各プロセス画像がチェックされてプロセスの開始前にファイルシステムの一貫性を確保する。エグゼクティブは、それぞれが予測されるとおり確実に開始されるように関連の子プロセスを監視し、実行している間、たとえばLinuxの親子プロセス通知を用いて子プロセスの監視を継続する。子プロセスが終了あるいは失敗すると、(UIビューの場合のように)エグゼクティブは子プロセスを再開するか、あるいは機械が安全に作用するように確保するためシステムを二重安全モードにする。エグゼクティブプロセスは、機械が電源オフするときにオペレーティングシステムを確実にシャットダウンする役割をする。
【0228】
エグゼクティブプロセスは互いに通信して、各種アプリケーション構成部品のスタートアップとシャットダウンを協調させることができる。ステータス情報は2つのエグゼクティブ間で定期的に共有されて、プロセッサ間のウォッチドッグ機能をサポートする。エグゼクティブサブシステム332は、安全ラインを動作可能にする、あるいは動作不能にする役割をする。UICエグゼクティブ352とACエグゼクティブ354の両方が安全ラインを動作可能にする場合、ポンプ、ヒータ、およびバルブが動作することができる。ラインを動作可能にする前に、エグゼクティブは、適切な動作を確保するために各ラインを個別にテストする。また、各エグゼクティブは、他の安全なラインの状態を監視する。
【0229】
UICエグゼクティブ352とACエグゼクティブ354は協働して、ユーザインターフェースコンピュータ302と自動コンピュータ300間の時間を同期させる。時間ベースは、スタートアップ時にアクセスされるユーザインターフェースコンピュータ302上の電池式リアルタイムクロックを介して構成される。ユーザインターフェースコンピュータ302は、自動コンピュータ300のCPUをリアルタイムクロックに対して初期化する。その後、各コンピュータのオペレーティングシステムが自己の内部時間を維持する。エグゼクティブは協働して、電源投入自己テストを定期的に実行することによって十分な時間管理を確保する。自動コンピュータ時間とユーザインターフェースコンピュータ時間との間の不一致が所与の閾値を越えた場合に警告を発することができる。
【0230】
図47は、APDシステムの各種サブシステムおよびプロセス間の情報フローを示す。上述したように、UIモデル360およびサイクラーコントローラ362は自動コンピュータ上で作動する。ユーザインターフェース設計は、UIビュー338によって制御されるスクリーンディスプレイを、サイクラーコントローラ362によって制御されるスクリーン間フロー、およびUIモデル360によって制御される表示可能なデータ項目から分離する。これにより、実行中の治療ソフトウェアに影響を及ぼさずに、スクリーンディスプレイの視覚的表示を変更することができる。すべての治療値および内容はUIモデル360に記憶されて、UIビュー338と安全を重視すべき治療機能とを隔離する。
【0231】
UIモデル360はシステムおよび患者の現在の状態を説明する情報を集計し、ユーザインターフェースを介して保管可能な情報を保持する。UIモデル360は、オペレータにとって現在可視ではない、あるいはそれ以外で認識可能ではない状態を更新することができる。ユーザが新たなスクリーンに移動すると、UIモデル360は、新たなスクリーンとその内容に関する情報をUIビュー338に提供する。UIモデル36は、UIビュー338またはその他のプロセスが現在のユーザインターフェーススクリーンとその内容を照会できるインターフェースをディスプレイに露出させる。よって、UIモデル360は、遠隔ユーザインターフェースやオンラインアシスタンスなどのインターフェースがシステムの現在の動作状況を取得できる共通のポイントを提供する。
【0232】
サイクラーコントローラ362は、オペレータ入力、時間、および治療層状態に基づき、システムの状態の変化を処理する。許容可能な変化がUIモデル360に反映される。サイクラーコントローラ362は治療層コマンド、治療ステータス、ユーザ要求、および時間事象を調整し、UIモデル360の更新を介してビュースクリーン制御を提供する階層状態機械として実装される。また、サイクラーコントローラ362はユーザ入力を検査する。ユーザ入力が許可されれば、ユーザ入力に関する新たな値がUIモデル360を介してUIビュー338に再度反映される。治療プロセス368は、サイクラーコントローラ362へのサーバとしての役割を果たす。サイクラーコントローラ362からの治療コマンドは治療プロセス368によって受信される。
【0233】
UIコンピュータ302上で作動するUIビュー338は、ユーザインターフェーススクリーンディスプレイを制御し、タッチスクリーンからのユーザ入力に応答する。UIビュー338は局地スクリーン状態を追跡するが、機械状態情報を保持しない。機械状態および表示されたデータ値は、ユーザにより変更中でない限りUIモデル360から調達される。UIビュー338が終了し、再開される場合、現在のデータで現在の状態に関するベーススクリーンを表示する。UIビュー338は、スクリーンの表示をUIビューに委ねるUIモデル360からどのクラスのスクリーンを表示すべきかを判定する。ユーザインターフェースのAUの安全を最重視すべき態様は、UIモデル360とサイクラーコントローラ362によって処理される。
【0234】
UIビュー338は、ユーザインターフェースコンピュータ302上でその他のアプリケーション364を搭載し実行する。これらのアプリケーションは非治療制御タスクを実行することができる。例示のアプリケーションは、ログビューア、サービスインターフェース、および遠隔アクセスアプリケーションを含む。UIビュー338は、UIビューによって制御されるウィンドウ内にこれらのアプリケーションを置き、該ウィンドウによりUIビューは適宜、ステータス、エラー、および警告スクリーンを表示することができる。特定のアプリケーションは能動的な治療中に実行させることができる。たとえば、ログビューアは能動的な治療中に実行させることができるが、サービスインターフェースおよび遠隔アクセスアプリケーションは通常実行できない。UIビュー338に派生するアプリケーションが実行中であり、ユーザが進行中の治療に注意を向ける必要があるとき、UIビュー338はアプリケーションを中止して、スクリーンおよび入力機能の制御を回復することができる。中止されたアプリケーションは、UIビュー338によって再開または中途終了させることができる。
【0235】
図48は、
図46に関連して説明した治療サブシステム340の動作を示す。治療サブシステム340の機能は、治療制御、治療計算、および溶液管理の3つのプロセスに分割される。これにより、機能の分解、テストの簡易化、および更新の簡易化が可能になる。
【0236】
治療制御モジュール370は、タスクを完了するために治療計算モジュール372、溶液管理モジュール374、および機械制御サブシステム342(
図46)のサービスを使用する。治療制御モジュール370の責務は、加熱バッグ内の液体容積の追跡、患者内の液体容積の追跡、患者排液容積と限外濾過の追跡、サイクル容積の追跡と記録、治療容積の追跡と記録、透析治療(排液-注液-貯留)の調整と実行、および治療セットアップ動作の制御などである。治療制御モジュール370は、治療計算モジュール370によって指示されるように治療の各段階を実行する。
【0237】
治療制御モジュール370は、腹膜透析治療を備える排液-注液-貯留サイクルを追跡し再計算する。患者の処方を用いて、治療計算モジュール372はサイクル数、貯留時間、必要な溶液量(総治療量)を計算する。治療が進行するにつれ、これらの値のサブセットが再計算され、実際の経過時間を明らかにする。治療計算モジュール372は治療シーケンスを追跡し、要求に応じて治療段階およびパラメータを治療制御モジュール370に渡す。
【0238】
溶液管理モジュール374は、溶液供給バッグの設置をマッピングし、各供給バッグ内の容積を追跡し、溶液データベース内の処方箋に基づき溶液の混合を命令し、要求された容積の混合済みまたは未混合の溶液の過熱バッグへの移送を命令し、溶液処方箋と利用可能なバッグ容積を用いて利用可能な混合液の容積を追跡する。
【0239】
図49は、最初の補液中の上述した治療モジュールプロセスと治療の透析部との例示の相互作用を示すシーケンス図である。例示の最初の補液プロセス376中、治療制御モジュール370は、治療計算モジュール372から溶液IDと最初の注液の容積とを取り出す。溶液IDは、患者ラインと最初の患者注液を提供する準備として、加熱バッグに溶液を注入する要求と共に溶液管理モジュール374に渡される。溶液管理モジュール374は、溶液の加熱バッグへの圧送を開始するように機械制御サブシステム342に要求する。
【0240】
例示の透析プロセス378中、治療制御モジュール370は1度に1サイクル(最初の排液、注液、貯留-補液、および排液)を実行し、治療計算モジュール372の制御下で、これらのサイクルを順序づける。治療中、治療計算モジュール372は実際のサイクルタイミングで更新されるため、必要に応じて残りの治療を再計算することができる。
【0241】
本例では、治療計算モジュール372はその段階を「最初の排液」として特定し、治療制御モジュールはそれを機械制御サブシステム342に要求する。治療計算モジュール372によって特定される次の段階が「注液」である。その指示が機械制御サブシステム342に送られる。治療計算モジュール372は、「貯留」段階中に加熱バッグに流体を補給するよう要求する治療制御モジュール370によって再度呼び出される。溶液管理モジュール374は治療制御モジュール370に呼び出されて、機械制御サブシステム342を呼び出すことによって加熱バッグに補給を行う。次の段階に進むため、治療制御モジュール370が治療計算モジュール372を呼び出してプロセスが継続する。さらなる段階がなくなり、治療が完了するまでこれが繰り返される。
【0242】
警告警報機能
APDシステムにおける状況または事象は、記録される、ユーザに表示される、あるいはその両方の警告および/または警報を始動させることができる。これらの警告および警報はユーザインターフェースサブシステム内にあるユーザインターフェース構成体であり、システムの任意の部分で発生する状況によって始動させることができる。これらの状況は、(1)システムエラー状況、(2)治療状況、および(3)システム動作状況の3つのカテゴリに分類することができる。
【0243】
「システムエラー状況」は、ソフトウェア、メモリ、またはAPDシステムのプロセッサのその他の態様において検知されるエラーに関する。これらのエラーは、システムの信頼性に疑念を生じさせ、「修復不能」とみなされる場合もある。システムエラー状況は、ユーザに対して表示される、あるいはその他の方法で知らせる警報を起動させる。警報は記録することもできる。システムエラー状況の事例でシステムの完全性を保証できない場合、システムは本文書に記載の安全ラインが動作不能にされる二重安全モードに入ることができる。
【0244】
図46に関連して説明する各サブシステムは、自己のセットのシステムエラーを検知する役割をする。サブシステム間のシステムエラーはユーザインターフェースコンピュータエグゼクティブ352と自動コンピュータエグゼクティブ354によって監視される。システムエラーがユーザインターフェースコンピュータ302上で動作するプロセスから発生するとき、システムエラーを報告するプロセスが終了する。UIスクリーンビューサブシステム338が終了すれば、ユーザインターフェースコンピュータエグゼクティブ352はたとえば、最大3回それを再開しようと試みる。UIスクリーンビュー338の再開に失敗し、治療が進行中の場合、ユーザインターフェースコンピュータエグゼクティブ352は機械を二重安全モードに移行させる。
【0245】
システムエラーが自動コンピュータ300上で動作するプロセスから発生している場合、プロセスが終了する。自動コンピュータエグゼクティブ354は、プロセスが終了していることを検知し、治療が進行中の場合は安全状態に移行する。
【0246】
システムエラーが報告されるとき、ユーザに、たとえば、視覚および/または音声フィードバックを伝えるだけでなく、データベースにエラーを記録する試みがなされる。システムエラーの処理は、回復不能な事象の一様な処理を確保するためエグゼクティブサブシステム332に封入される。UICエグゼクティブ352およびACエグゼクティブ354のエグゼクティブプロセスは、一方のエグゼクティブプロセスが治療中に失敗すれば、他方のエグゼクティブが機械を安全状態に移行させるように互いに監視し合う。
【0247】
「治療状況」は、許容可能な境界外の治療に関連するステータスまたは変数によって生じる。たとえば、治療状況は、境界外のセンサ読取によって生じさせることができる。これらの状況は警告または警報と関連づけられた後、記録される。警報は、概して即時の行動を必要とする重大な事象である。警報は重要度に基づき、たとえば低、中、高の優先順位を付けることができる。警告は警報ほど重大ではなく、通常は治療の失敗または不快以外の関連リスクを含まない。警告は、メッセージ警告、漸増警告、およびユーザ警告の3つのカテゴリのうちの1つに分類することができる。
【0248】
警報または警告状況を生じさせることのある治療状況を検知する役割は、UIモデルと治療サブシステム間で分担される。UIモデルサブシステム360(
図47)は、治療前および治療後の警報および警告状況を検知する役割をする。治療サブシステム340(
図46)は、治療中の警報および警告状況を検知する役割をする。
【0249】
治療状況に関連する警告または警報を処理する役割も、UIモデルと治療サブシステム間で分担される。治療前と治療後は、UIモデルサブシステム360が警報または警告状況を処理する役割をする。治療セッション中は、治療サブシステム340が、警報または警告状況を処理し、警報または警告状況が存在することをUIモデルサブシステムに通知する役割をする。UIモデルサブシステム360は漸増警告と、UIビューサブシステム338と協調して、警報または警告状況が検知されたときにユーザに視覚的および/または音声フィードバックを提供する役割をする。
【0250】
「システム動作状況」は、関連する警告または警報を持たない。これらの状況は単に記録されて、システム動作の記録を提供するだけである。音声または視覚フィードバックを提供する必要はない。
【0251】
上述のシステムエラー状況、治療状況、またはシステム動作状況に応答して取り得る対策は、状況を検知したサブシステム(または層)によって実行され、該サブシステムはステータスを高位のサブシステムに送信する。状況を検知したサブシステムは状況を記録し、その状況に関連する安全性の配慮を引き受けることができる。これらの安全性の配慮は、治療を中止する、オクルーダを係合する、必要に応じて状態とタイマをクリアする、ヒータを動作不能にする、治療全体を終了する、安全ラインを非活性化してオクルーダを閉鎖する、ヒータを切断する、バルブへの電力を停止する、電源サイクルが運転再開を要求する場合でのサイクラーが治療を実行することを防止する、のうち任意の1つまたはその組み合わせを含むことができる。UIサブシステム334は、自動的に解消できる状況(すなわち、非ラッチ状況)とラッチされ、ユーザとの対話によってのみ解消可能なユーザ修復可能状況とに役割をすることができる。
【0252】
各状況は、ソフトウェアが状況の重大度に従い作用できるように特定の情報を含むよう定義することができる。この情報は、優先順位、エラーの記述名(すなわち、状況名)、状況を検知したサブシステム、どんなステータスまたはエラーが状況を引き起こしたかの説明、および状況が上述の1または複数の行為を実現するか否かのフラグを定義するルックアップテーブルと組み合わせて使用可能な数値識別子を含むことができる。
【0253】
複数の状況が発生するとき、より高い優先順位の状況が最初に対処されるように、状況を優先順位でランク付けすることができる。この優先順位のランク付けは、その状況が治療の投与を中止するか否かに基づくことができる。治療を中止させる状況が発生する場合、この状況はステータスを次の高位のサブシステムに中継する際に優先順位が高い。上述するように、状況を検知するサブシステムが、状況を処理し上記サブシステムにステータス情報を送信する。受信したステータス情報に基づき、上位のサブシステムは、異なる行為とそれに関連する異なる警告/警報を有することのできる異なる状況を引き起こすことができる。各サブシステムは、新たな状況に関連づけられる任意のさらなる行為を実行し、上記サブシステムにステータス情報を送る。例示の一具体例によると、UIサブシステムは、所与の時間に1つの警告/警報を表示するだけである。この場合、UIモデルは、優先順位によってすべての実行中の事象をソートし、最も高い優先順位の事象に関連づけられる警告/警報を表示する。
【0254】
優先順位は、起こり得る被害の重大度と被害の発生とに基づく警報に割り当てることができる。下記の表1は、優先順位がこのようにして割り当てられる例を示す。
【0255】
【表1】
表1の状況では、起こり得る被害の発生は、損傷が発生しているときを指し、損傷が発現しているときを指すものではない。「直後」と指定される発生を有する起こり得る被害は、マニュアルの矯正措置を取るには通常不十分な時間内に進展する可能性のある被害を指す。「即発」と指定される発生を有する起こり得る被害は、マニュアルの矯正措置を取るのに通常十分な時間内に進展する可能性のある被害を指す。「後発」と指定される発生を有する起こり得る被害は、「即発」の場合よりも長い不定時間内に進展する可能性のある被害を指す。
【0256】
図50~55は、タッチスクリーンユーザインターフェースに表示される警告および警報に関連するスクリーンビューの例を示す。
図50は、ユーザに移送セットを閉鎖するよう命じる
図380およびテキスト382を含む警報の第1のスクリーンを示す。スクリーンは可視警告384を含み、音声警告とも関連づけられる。音声警告は、タッチスクリーン上の「音声オフ」オプション386を選択することによってオフにすることができる。ユーザは移送セットを閉じ、ユーザはタッチスクリーン上の「承認」オプション388を選択する。
図51は、移送セットを閉鎖するようにユーザに命じる同様の警報スクリーンを示す。この場合、排液が一時停止されたという表示390、「治療終了」を選択する指示が出されたという表示392が提供される。
【0257】
上述したように、警告は通常、治療の失敗または不快以外の関連リスクを持たない。よって、警告は、治療の一時停止を引き起こしても引き起こさなくてもよい。警告は、事象が消失すれば警告が自動的に消失するように「自動修復可能」であるか、あるいは警告を解消するためにユーザとユーザインターフェースとの対話が必要とされる「ユーザ修復可能」のいずれかである。警告にユーザの注目を引くために、特定の限度内で変動可能な音量を有することのできる可聴警告プロンプトを使用することができる。また、情報または指示をユーザに表示することができる。そのような情報または指示がユーザに見えるように、警告中、ユーザインターフェースの自動調光特徴は動作不能とされる。
【0258】
ユーザの混乱を低減するため、警告は、警告がどのくらい重要であるか、およびユーザの対応がどのくらい迅速に要求されるかに基づき異なる種類に分類することができる。3つの例示種類の警告は、「メッセージ警告」、「漸増警告」、および「ユーザ警告」である。これらの警告は、どんな情報が視覚的にユーザに提示されるか、およびどのように可聴プロンプトが使用されるかに基づき異なる特性を有する。
【0259】
「メッセージ警告」は、ステータススクリーンの最上部に表示させることができ、ユーザとの対話が必要でないときに情報提供のために使用される。警告を解除するための行動は必要でないため、可聴プロンプトは通常、患者を邪魔したりおそらくは目覚めさせるのを回避するため使用されない。しかし、可聴警告を任意で提供してもよい。
図52は例示のメッセージ警告を示す。具体的には、
図52は、透析液が所望の温度範囲未満になったことをユーザに通知するために使用される低温メッセージ警告394を示す。この場合、ユーザは何らの行動をする必要はないが、透析液が加熱される間治療が遅れると通知される。もし患者が追加情報を必要とするならば、「ビュー」オプション396をタッチスクリーン上で選択することができる。
図53に示すように、これにより警告に関する追加情報398がスクリーン上に出現する。メッセージ警告は、ユーザが修正しようとしている低流事象があるときにも使用することができる。この場合、低流事象が解消されて、ユーザが問題を解決したか否かに関するフィードバックをユーザに提供するまで、メッセージ警告を表示しておくことができる。
【0260】
「漸増警告」は、不快を与えない形で措置を講じるようユーザに促すことを目的とする。漸増警告中、可視プロンプトをタッチスクリーンに表示し、可聴プロンプトを提供することができる(たとえば、1回)。所与の時間の経過後、警告を引き起こした事象が解消されていない場合、より強力な可聴プロンプトを提供することができる。警告を生じさせる事象がさらなる時間経過後も解消されなければ、警告は「ユーザ警告」へと格上げされる。ユーザ警告の例示の一具体例によると、警告が解消され、無音にできる可聴プロンプトが提供されるまで、可視プロンプトが表示される。UIサブシステムは、漸増警告からユーザ警告への移行を処理しない。そうではなく、最初の事象を引き起こしたサブシステムは、ユーザ警告に関連づけられる新たな事象を引き起こす。
図54は、漸増警告に関する情報を表示するスクリーンビューを示す。この例示の警告は、スクリーン上警告メッセージ400と、排液ラインがよじれたり閉鎖して締め付けられたりしていないかチェックするようにユーザに命じるプロンプト402および可聴プロンプトとを含む。ユーザが無音にするまで可聴プロンプトを継続させておくことができる。
図55は、可聴プロンプトを無音にするように選択可能な「音声オフ」オプション404を含むスクリーンビューを示す。この警告は、直接または漸増警告スキームの一部として使用することができる。
【0261】
各警告/警報は、警告/警報に対する固有の識別子である警告/警報コード、警告/警報の記述名である警告/警報名、警告の種類または警報のレベルを含む警告/警報の種類、可聴プロンプトが警告/警報に関連づけられるか否かの表示、警告および関連事象がユーザによってバイパスできるか(または無視できるか)否かの表示、および警告/警報を引き起こす事象の事象コードによって特定される。
【0262】
警報中、漸増警告およびユーザ警告、事象コード(上述したように、警告または警報コードと異なっていてもよい)は、ユーザが必要に応じてサービス担当者に対してコードを読み出すことができるようにスクリーン上に表示させることができる。もしくはまたはさらに、遠隔コールセンターに接続されている場合、システムがシステム構成、状態、およびエラーコードについての関連情報を発声することができるように、音声ガイダンスシステムを使用することができる。システムは、ネットワーク、電話接続、またはその他の手段を介して遠隔コールセンターに接続することができる。
【0263】
治療サブシステムによって検知される状況の例を、
図56に関連して以下に述べる。空気管理にとって重要なことだが、APDシステムが水平面に配置されていないときにこの状況は生じる。より具体的には、この状況は、APDシステムが水平面に対してたとえば35度などの所定の閾値を越えて傾斜していることを傾斜センサが検知したときに生じる。上述したように、傾斜センサが所定閾値より大きな絶対値の角度を検知すれば、治療サブシステムによって修復可能ユーザ警告を生成することができる。不愉快な警報を避けるため、ユーザは治療の開始前にAPDシステムを水平に保つよう指図することができる。傾斜閾値はこの治療前期間中に低くすることができる(たとえば、35度)。問題が矯正されているか否かに関する所与のフィードバックをユーザに与えることもできる。
【0264】
傾斜センサが治療中に閾値を超える傾斜角度を検知すると、機械サブシステム342は、ポンプチャンバ内に空気を検知したときと同様にポンプを停止することによって対応する。治療サブシステム340はステータスを尋ね、機械層342が傾斜により圧送を一時停止したと判定する。該サブシステムは、機械の角度に関するステータス情報も受信する。この時点で、治療サブシステム340は傾斜状況を生成し、治療を一時停止し、圧送を一時停止するように機械サブシステム342にコマンドを送信する。このコマンドにより、流体測定システム(FMS)の測定や患者バルブの閉鎖などのクリーンアップが開始される。また、治療サブシステム340はタイマを始動させ、UIモデル360に自動修復可能傾斜状況を送信し、該モデルがその状況をUIビュー338に送信する。UIビュー338はその状況を漸増警告にマッピングする。治療サブシステム340は傾斜センサの読取を監視し続け、その示度が閾値未満に下がったら、この状況を解消して治療を再開する。タイマの終了までにその状況が解消されなければ、治療サブシステム340は、自動修復可能傾斜状況に優先するユーザ修復可能「傾斜タイムアウト」状況を引き起こす。治療サブシステム340はこの状況をUIモデル360に送信し、該モデルはその状況をUIビュー338に送信する。UIビュー338はその状況をユーザ警告にマッピングする。UIサブシステムが再開治療コマンドを受信する(たとえば、ユーザが再開ボタンを押す)までこの状況を解消することはできない。傾斜センサの読取値が閾値未満に下がれば、治療が再開される。読取値が閾値未満に下がらなければ、治療層が自動修復可能傾斜状況を引き起こし、タイマを始動させる。
【0265】
スクリーンディスプレイ
上述したように、UIビューサブシステム338(
図47)はインターフェースをユーザに提供する役割をする。UIビューサブシステムはクライエントであり、自動コンピュータ上で作動するUIモデルサブシステム360(
図47)とのインターフェースをとる。たとえば、UIビューサブシステムはUIモデルサブシステムと通信し、所与の時間にどのスクリーンをユーザに表示すべきかを判定する。UIビューはスクリーンビュー用のテンプレートを含むことができ、表示言語、スキン、音声言語、および文化的に重要な動画などの地域固有の設定を処理することができる。
【0266】
UIビューサブシステムで生じる事象は基本的に3種類ある。個々のスクリーンによって処理される局地スクリーン事象、スクリーン事象をUIモデルサブシステムまで伝播しなければならないモデル事象、およびステータスに関してUIモデルサブシステムのタイマと問合せ上で発生するポーリング事象である。局地スクリーン事象は、UIビューレベルに影響を与えるだけである。これらの事象は局地スクリーン遷移とすることができ(たとえば、単独モデル状態に対する複数のスクリーンの場合)、ビュー設定(たとえば、地域および言語オプション)を更新し、所与のスクリーンからメディアクリップ(たとえば、指示的な動画または音声プロンプト)を再生するように要求する。モデル事象は、事象をどのように扱うかを決定するためにUIビューサブシステムがUIモデルサブシステムと協議しなければならないときに発生する。このカテゴリに属する例は、治療パラメータを確認すること、または「治療開始」ボタンを押すことである。これらの事象はUIビューサブシステムによって始動されるが、UIモデルサブシステムによって処理される。UIモデルサブシステムは事象を処理し、その結果をUIビューサブシステムに返す。この結果は、UIビューサブシステムの内部状態を推進する。ポーリング事象は、タイマがタイミング信号を生成し、UIモデルサブシステムがポーリングされるときに発生する。ポーリング事象の場合、現在のUIビューサブシステムの現状が、評価のためにUIモデルサブシステムに送られる。UIモデルサブシステムは状態情報を評価して、UIビューサブシステムの所望の状態で応答する。これは、(1)状態の変更、たとえば、UIモデルサブシステムとUIビューサブシステムの主要な状態が異なる場合、(2)スクリーンの更新、たとえば、UIモデルサブシステムからの値がスクリーンに表示される値を変更する場合、または(3)状態の変更なし、たとえば、UIモデルサブシステムおよびUIビューサブシステムの状態が同一な場合、から構成することができる。
図57は、上述した機能を実行するUIビューサブシステム338の例示のモジュールを示す。
【0267】
図57に示すように、UIモデルクライエントモジュール406は事象をUIモデルに通信するために使用される。このモジュール406は、現在のステータスに関してUIモデルにポーリングするために使用される。応答ステータスメッセージ内に、UIモデルサブシステムは、自動コンピュータおよびユーザインターフェースコンピュータの時計との同期化のために使用する時間を埋め込むことができる。
【0268】
グローバルスロットモジュール408は、所与の事象(信号)が生じたときに通知されるように複数のコールバックルーチン(スロット)が加入することのできる機構を提供する。これは、始動時に呼び出されるように、1つのスロットは多数の信号に連結され、同様に1つの信号は多数のスロットに連結されるという「多数対多数」の関係である。グローバルスロットモジュール408は、UIモデルポーリング用のアプリケーションレベルタイマまたはスクリーン外で生じるボタン押し(たとえば、音声プロンプトボタン)などの非スクリーン特定スロットに対処する。
【0269】
スクリーンリストクラス410は、テンプレートおよびデータテーブルの形状で全スクリーンのリストを含む。スクリーンは、テンプレートと、スクリーンを装着するために使用される関連のデータテーブルとから構成される。テンプレートは、概括的にレイアウトされたウィジェットを有するウィンドウであり、内容はウィジェットに割り当てられていない。データテーブルは、ウィジェットを装着するために使用される内容とウィジェットの状態を記載する記録を含む。ウィジェットの状態は、可視であるか隠されているか、あるいは動作可能か動作不能かを、チェックする、あるいはノーチェックにすることができる(チェックボックススタイルウィジェットの場合)。データテーブルは、ボタンを押した結果として生じる行為を記載することもできる。たとえば、テンプレート「1」から得られるウィンドウ「A」上のボタンはUIモデルまで事象を送信することができる一方、同じくテンプレート「1」から得られるウィンドウ「B」上の同じボタンは、UIモデルまで事象を伝播せずに単に局地スクリーン遷移を引き起こすことができるだけである。データテーブルは、インデックスを状況依存型ヘルプシステムに含めることもできる。
【0270】
スクリーンリストクラス410は、UIモデルからのデータを意図するスクリーンに送り、UIモデルから適切なスクリーンベースのデータを選択し、スクリーンを表示する。スクリーンリストクラス410は、UIモデルによって報告される状態と、UIビューの内部状態の2つの要因に基づきどのスクリーンを表示するかを選択する。いくつかの場合、UIモデルは、カテゴリ内のスクリーン表示が許可されたことをUIビューに通知することだけができる。たとえば、UIモデルは、機械がアイドリング中である(たとえば、治療が開始されていない、あるいはセットアップ段階がまだ発生していない)ことを報告することができる。この場合、いつユーザがメニューからサブメニューに進行するかをUIモデルと協議する必要はない。変更を追跡するため、UIビューは現在のスクリーンを局地的に記憶する。このスクリーンの局地的順序付けは、上述のテーブルエントリによって処理される。テーブルエントリは、各ボタンが押されたときに開始する行為をリストアップしている。
【0271】
言語マネージャクラス412は、インベントリを実行し、翻訳を管理する役割をする。翻訳のいずれかが改悪されている、あるいは失われている場合、UIビューに警告するため、インストールされた言語リストに関するチェックサムを実行することができる。翻訳されたストリングを必要とするクラスは、それを実行するよう言語マネージャクラス412に要求する。翻訳はライブラリ(たとえば、Qt(登録商標))によって処理することができる。好適には、翻訳はレンダリング時間とできるだけ近くなるように要求される。このため、大部分のスクリーンテンプレート部材アクセス方法は、レンダリングのためにウィジェットに渡す前に翻訳権を要求する。
【0272】
スキンは、ユーザインターフェースの「外観と感触」を決定するスタイルシートおよび画像を備える。スタイルシートは、フォント、色、およびウィジェットが様々な状態(通常、押されている、動作不能にされているなど)を表示するための画像などを制御する。表示されるウィジェットは、スキン変更によって変更される外観を有することができる。スキンマネージャモジュール414は、スクリーンリスト、ひいては、スタイルシートとスキングラフィックを表示すべきスクリーンウィジェットを通知する役割をする。スキンマネージャモジュール414は、アプリケーションが表示したいと思う任意の動画ファイルも含む。スキン変更事象時、スキンマネージャは、動作中のセットディレクトリの画像およびスタイルシートを、アーカイブから検索した適切なセットで更新する。
【0273】
ビデオマネージャモジュール416は、特定の映像を表示する要求に応じて局地的に適切な映像を再生する役割をする。局地的な変更事象の際、ビデオマネージャは、動作中のセットディレクトリの映像および動画をアーカイブからの適切なセットで更新する。ビデオマネージャは、音声マネージャモジュール418内の添付音声を有する映像も再生する。これらの映像の再生時、ビデオマネージャモジュール416は、最初に要求されたビデオクリップに属する記録を再生するように音声マネージャモジュール418に適切な要求を出す。
【0274】
同様に、音声マネージャモジュール418は、特定の音声クリップを再生する要求に応じて局地的に適切な音声を再生する役割をする。局地的な変更事象の際、音声マネージャは、動作中のセットディレクトリの音声クリップをアーカイブからの適切なセットで更新する。音声マネージャモジュール418は、UIビューによって開始されるすべての音声を処理する。これには、動画用のダビングと音声プロンプト用の音声クリップが含まれる。
【0275】
データベースクライエントモジュール420は、UIビューサブシステムとデータベースサーバ366(
図47)との間のインターフェースを処理するデータベースマネージャプロセスと通信するために使用される。UIビューはこのインターフェースを使用して、設定を記憶および検索し、変数(たとえば、体重、および血圧)に関する質問に対するユーザの回答を治療ログに補完する。
【0276】
ヘルプマネージャモジュール422は、状況依存型ヘルプシステムを管理するために使用される。ヘルプボタンを表示するスクリーンリストの各ページは、状況依存型ヘルプシステムへのインデックスを含むことができる。このインデックスは、ヘルプマネージャがページに関連付けられるヘルプスクリーンを表示できるように使用される。ヘルプスクリーンはテキスト、画像、音声、および映像を含むことができる。
【0277】
自動IDマネージャ424は治療前セットアップ中に呼び出される。このモジュールは、溶液バッグコード(たとえば、データ行列コード)の画像(たとえば、写真画像)を捕捉する役割をする。その後、画像から抽出されたデータが、溶液バッグの内容およびコードに含まれるその他の情報(たとえば、供給源)を特定するため、治療サブシステムによって使用される機械制御サブシステムに送信される。
【0278】
上述のモジュールを用いて、UIビューサブシステム338は、ユーザインターフェース(たとえば、
図45のディスプレイ324)を介してユーザに表示されるスクリーンビューを与える。
図58~64は、UIビューサブシステムが与えることのできる例示のスクリーンビューを示す。これらのスクリーンビューは、たとえば、例示の入力機構、表示フォーマット、スクリーン遷移、アイコン、およびレイアウトを示す。図示したスクリーンは通常治療中または治療前に表示されるが、スクリーンビューの態様は図示したものと異なる入出力機能のために使用することもできる。
【0279】
図58に示すスクリーンは、指定された治療428を開始する「治療開始」426または設定を変更する「設定」430のいずれかを選択するオプションをユーザに提供する最初のスクリーンである。アイコン432および434はそれぞれ輝度レベルと音声レベルを調節するために設けられ、情報アイコン436はユーザがさらなる情報を求めることのできるように設けられる。これらのアイコンは、同様に他のスクリーン上にも出現させることができる。
【0280】
図59は、治療のステータスに関する情報を提供するステータススクリーンを示す。具体的には、該スクリーンは、実行中の治療の種類438、推定完了時間440、および現在の注液サイクル数と注液サイクルの総数442を示す。現在の注液サイクルの完了パーセント444と治療全体の完了パーセント446はいずれも数字とグラフで表示される。ユーザは、治療を一時停止するために「一時停止」オプション448を選択することができる。
【0281】
図60は、各種快適性設定を有するメニュースクリーンを示す。メニューは輝度矢印450、音量矢印452、および温度矢印454を含む。各対の上または下矢印のいずれかを選択することによって、ユーザはスクリーン輝度、音量、および流体温度を増減させることができる。現在の輝度パーセント、音量パーセント、および温度も表示される。所望したように設定されたとき、ユーザは「OK」ボタン456を選択することができる。
【0282】
図61は、たとえば、前回のスクリーンでヘルプまたは情報ボタンを押すことによって到達できるヘルプメニューを示す。ヘルプメニューは、ユーザを助けるテキスト458および/または
図460を含むことができる。テキストおよび/または図は、「文脈依存」であってもよいし、あるいは、前回のスクリーンの内容に基づいてもよい。たとえばマルチステッププロセスの場合のように、ユーザに提供される情報が1つのスクリーンでは簡便に提供できない場合、ユーザが一連のスクリーン間を前後して移動できるように矢印462を設けることができる。ユーザが所望の情報を取得した場合、ユーザは「戻る」ボタン464を選択することができる。さらなる助けが必要な場合、ユーザはシステムをコールサービスセンターと連絡させるために「コールサービスセンター」オプション466を選択することができる。
【0283】
図62は、ユーザが1セットのパラメータを設定できるスクリーンを示す。たとえば、該スクリーンは現在の治療モード468と最小排液量470を表示し、ユーザがこれらのパラメータの変更を選択できるようにする。パラメータは、多くの方法で、たとえば、現在のスクリーン上のラウンドロビンスタイルメニューから所望のオプションを選択することによって変更することができる。もしくは、ユーザが変更するパラメータを選択すると、
図63に示されるような新たなスクリーンを出現させることができる。
図63のスクリーンは、キーパッド474を使用して数値472を入力することによってユーザが最小排液量を調節するのを可能にする。いったん入力されると、ユーザは、ボタン476および478を用いてその値を承認または解除することができる。再度
図62を参照すると、ユーザは、それぞれが異なるセットのパラメータを含む一連のパラメータスクリーンを移動するため、「戻る」および「次に」矢印480、482を使用することができる。
【0284】
いったんすべての所望のパラメータが設定または変更されれば(たとえば、ユーザが一連のパラメータスクリーンを移動したとき)、
図64に示されるようなスクリーンが提示されて、ユーザは設定を再検討し確認することができる。変更されたパラメータは、ユーザの注目を引くように何らかの方法で任意で強調することができる。所望するように設定されたとき、ユーザは「確認」ボタン486を選択することができる。
【0285】
本発明の態様を特定の実施形態と併せて説明したが、多くの代替、変更、および変形が当業者にとって自明となることは明らかである。したがって、本明細書で説明した本発明の実施形態は、限定的ではなく説明的であることを目的とする。本発明の精神と範囲を逸脱せずに様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0286】
15:可撓膜,18:本体,24:流体ハンドリングカセット,152,154:ラインポート。