(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】車体底部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20221212BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B62D25/20 N
B62D25/20 K
F16B19/00 B
(21)【出願番号】P 2021068393
(22)【出願日】2021-04-14
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】中西 伸行
(72)【発明者】
【氏名】越智 博章
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6014820(JP,B2)
【文献】特開2015-217838(JP,A)
【文献】特開2005-161965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0391807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 25/08
B62D 37/02
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられて固定孔を有するブラケットと、
前記ブラケットに係合する仮保持部、および前記固定孔に合わせられる第1の固定孔を有するアンダーカバーと、
前記第1の固定孔に合わせられる第2の固定孔を有するリアバンパーと、
前記第2の固定孔、前記第1の固定孔、および前記固定孔に係合されて、前記ブラケットに前記アンダーカバーおよび前記リアバンパーを結合する結合部材と、を備える、
ことを特徴とする車体底部構造。
【請求項2】
前記仮保持部は、
前記アンダーカバーに形成されたスリットにより前記アンダーカバーから区画され、弾性変形可能に形成された舌片から成り、
前記舌片は、
前記ブラケットに係合する平坦部と、前記平坦部に対して傾斜状態に形成された傾斜部と、を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体底部構造。
【請求項3】
前記ブラケットは、傾斜状に形成されて前記平坦部に係合する先端部を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の車体底部構造。
【請求項4】
前記アンダーカバーは、
樹脂製の成形品であって、
前記舌片は、
前記アンダーカバーに平面視コ字状の前記スリットが形成されることにより設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車体底部構造。
【請求項5】
前記アンダーカバーは、
前記第1の固定孔を少なくとも2つ有し、
前記第1の固定孔の近傍に前記仮保持部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体底部構造。
【請求項6】
前記傾斜部は、
前記アンダーカバーの後端部に位置し、車体後方に向けて上り勾配に形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の車体底部構造。
【請求項7】
前記アンダーカバーは、
車幅方向に間隔をあけて形成されて車体前後方向に延びる複数のビードを有し、
前記複数のビードは、
少なくとも1つが車体前後方向において前記ブラケットと重なる位置まで延在される延長ビードを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体底部構造。
【請求項8】
前記複数のビードは、
前記仮保持部から車幅方向へ離れるに従って前端部が車体前方の側まで徐々に大きく延在され、前記アンダーカバーを補強する他の延長ビードを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の車体底部構造。
【請求項9】
前記複数のビードは、
前記アンダーカバーの上方に隆起され、
前記アンダーカバーは、
前記複数のビードのうち隣接するビードの間において、かつ、前記アンダーカバーの最下方側に形成された排水孔を有する、
ことを特徴とする請求項7に記載の車体底部構造。
【請求項10】
前記ブラケットは、
前記車体に設けられる縦板部と、
前記固定孔および前記先端部が設けられた底板部と、
前記縦板部と前記底板部とに跨って形成された凸部と、を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の車体底部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体底部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体底部構造として、車体にアッパーカバー(以下、リアバンパーという)およびアンダーカバーが取り付けられるものが知られている。具体的には、車体底部構造は、例えば、リアバンパーもしくは、アンダーカバーのリブに凹部が形成され、凹部が車体の係合孔に係合されるように構成されている。この構成によれば、車体にリアバンパーおよびアンダーカバーを取り付ける際に、凹部を車体の係合孔に係合することにより、リアバンパーとアンダーカバーとの移動を規制できる。
よって、リアバンパーにアンダーカバーの位置を合わせることができる。これにより、リアバンパーにアンダーカバーを締結部材で締結して、リアバンパーに組み付けることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体底部構造は、リアバンパーのリブを車体の係合孔に係合させるために、リアバンパーのリブに凹部を形成する必要がある。このため、リブの形状が複雑になり、リアバンパーの製造が困難となる。
【0005】
本発明は、リアバンパーもしくは、アンダーカバーに複雑な構造を設けることなく、アンダーカバーの組付け作業を容易にできる車体底部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る車体底部構造は、車体に設けられて固定孔(例えば、実施形態の固定孔37)を有するブラケット(例えば、実施形態のブラケット13,14)と、前記ブラケットに係合する仮保持部(例えば、実施形態の仮保持部48,49)、および前記固定孔に合わせられる第1の固定孔(例えば、実施形態の第1の固定孔51,52)を有するアンダーカバー(例えば、実施形態のアンダーカバー17)と、前記第1の固定孔に合わせられる第2の固定孔(例えば、実施形態の第2の固定孔27,28)を有するリアバンパー(例えば、実施形態のリアバンパー16)と、前記第2の固定孔、前記第1の固定孔、および前記固定孔に係合されて、前記ブラケットに前記アンダーカバーおよび前記リアバンパーを結合する結合部材(例えば、実施形態のクリップ18,19)と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、アンダーカバーに仮保持部(舌片)を形成した。この仮保持部をブラケットに係合させる(引っ掛ける)ことにより、ブラケットに対してアンダーカバーを仮保持できる。この状態において、アンダーカバーの第1の固定孔がブラケットの固定孔に合わせられる。さらに、ブラケットに仮保持されたアンダーカバーの前部を車体のフロアパネルに固定することにより、アンダーカバーが車体に支持された状態に保たれる。
【0008】
つぎに、リアバンパーを車体後方から車体前方に向けて移動させることにより、アンダーカバーの第1の固定孔にリアバンパーの第2の固定孔が合わせられる。よって、ブラケットの固定孔、アンダーカバーの第1の固定孔、およびリアバンパーの第2の固定孔が合わせられる。合わせられた固定孔、第1の固定孔、および第2の固定孔に結合部材が係合される。
これにより、ブラケットにアンダーカバーおよびリアバンパーが結合部材(クリップなど)により結合され、アンダーカバーおよびリアバンパーがブラケットに組み付けられる。
【0009】
このように、アンダーカバーに仮保持部を形成して仮保持部でアンダーカバーをブラケットに位置決めすることにより、リアバンパーに複雑な構造を設けることなく、アンダーカバーおよびリアバンパーをブラケット(すなわち、車体)に組み付けることができる。
また、アンダーカバーの仮保持部をブラケットに係合させることにより、ブラケットに対して位置決めした状態にアンダーカバーを仮保持できる。これにより、アンダーカバーの組付け作業を容易におこなうことができる。
【0010】
さらに、固定孔、第1の固定孔、および第2の固定孔に係合する結合部材として、例えばクリップなどのような簡易な固定構造を使用することができる。これにより、固定孔、第1の固定孔、および第2の固定孔にクリップを差し込むだけでアンダーカバーおよびリアバンパーをブラケット(車体)に組み付けることができ、アンダーカバーの組付け性を一層向上させることができる。
【0011】
(2)前記仮保持部は、前記アンダーカバーに形成されたスリット(例えば、実施形態のスリット72)により前記アンダーカバーから区画され、弾性変形可能に形成された舌片(例えば、実施形態の舌片48,49)から成り、前記舌片は、前記ブラケットに係合する平坦部(例えば、実施形態の平坦部65)と、前記平坦部に対して傾斜状態に形成された傾斜部(例えば、実施形態の傾斜部66)と、を有してもよい。
【0012】
この構成によれば、仮保持部としての舌片に平坦部と傾斜部とを形成した。舌片を傾斜部と平坦部とにまたがって設けることにより、舌片の剛性を高めることができる。これにより、舌片を弾性変形させてブラケットに係合させる(挟むように引っ掛ける)際に、舌片を折れ難くでき、アンダーカバーやリアバンパーの組付け性を一層向上させることができる。
【0013】
(3)前記ブラケットは、傾斜状に形成されて前記平坦部に係合する先端部(例えば、実施形態の底板先端部38)を有してもよい。
【0014】
ここで、舌片を弾性変形させてブラケットに係合させる際には、例えば、ブラケットの下方に配置された舌片を上方に弾性変形させる。舌片が所定位置まで上昇した状態において、ブラケットが舌片の下方へ潜り込んでいく。よって、ブラケットの先端部が舌片の復元力により下方に押圧されて、先端部が舌片とアンダーカバーとの間に挟み込まれる。これにより、舌片は、ブラケットをアンダーカバーとともに挟むように引っ掛けた状態でブラケットに係合する。
【0015】
そこで、ブラケットの先端部を傾斜させた。よって、ブラケットが舌片の下方へ潜り込んでいく際に、傾斜状の先端部を舌片に沿って円滑にスライド(摺動)させることができる。これにより、舌片を先端部に容易に係合させることができ、アンダーカバーやリアバンパーの組付け性を一層向上させることができる。
【0016】
(4)前記アンダーカバーは、樹脂製の成形品であって、前記舌片は、前記アンダーカバーに平面視コ字状の前記スリットが形成されることにより設けられていてもよい。
【0017】
この構成によれば、例えば、アンダーカバーをシートスタンピング成形で成形し、成形したアンダーカバーに平面視コ字状のスリットを形成するだけで舌片を設けることができる。これにより、舌片(すなわち、仮保持部)を備えたアンダーカバーを安価に製造できる。
加えて、リアバンパーは、従来技術のように、リアバンパーにリブを備えて、リブでリアバンパーを車体に係合する必要がない。これにより、リアバンパー(すなわち、車体底部構造)の軽量化を図ることができる。
【0018】
(5)前記アンダーカバーは、前記第1の固定孔を少なくとも2つ有し、前記第1の固定孔の近傍に前記仮保持部を有していてもよい。
【0019】
この構成によれば、アンダーカバーに第1の固定孔を少なくとも2つ有し、第1の固定孔の近傍に仮保持部(すなわち、舌片)を配置した。よって、ブラケットは、仮保持部が係合する先端部の近傍に固定孔を形成できる。これにより、ブラケットのうち、先端部および固定孔を有する部位の長さを短くしても、先端部に仮保持部を係合させた状態で、固定孔に第1の固定孔を合わせることができる。したがって、ブラケット(すなわち、車体底部構造)の軽量化を図ることができる。
さらに、ブラケットのうち、先端部および固定孔を有する部位の長さを短くすることにより、剛性を確保できる。これにより、ブラケットの先端部に仮保持部を係合させる際に、ブラケットの変形を抑制でき、アンダーカバーやリアバンパーの組付け性を一層向上させることができる。
【0020】
(6)前記傾斜部は、前記アンダーカバーの後端部(例えば、実施形態のアンダーカバー平坦部の後端部44a)に位置し、車体後方に向けて上り勾配に形成されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、アンダーカバーの後端部は、アンダーカバーの剛性を確保するために剛性が高く形成されている。よって、アンダーカバーの後端部に舌片(すなわち、仮保持部)の傾斜部を形成することにより、舌片の剛性を高めることができる。
また、傾斜部を車体後方に向けて上り勾配に形成した。これにより、例えば、アンダーカバーの下面側を経て傾斜部の下方に流れる空気を傾斜部で整流し、整流した空気を傾斜部から車体後方に流すことができる。
【0022】
(7)前記アンダーカバーは、車幅方向に間隔をあけて形成されて車体前後方向に延びる複数のビード(例えば、実施形態の複数のビード53…,54…,55…)を有し、前記複数のビードは、少なくとも1つが車体前後方向において前記ブラケットと重なる位置まで延在される延長ビード(例えば、実施形態の第1延長ビード54)を含んでいてもよい。
【0023】
この構成によれば、アンダーカバーに複数のビードを形成し、複数のビードのうち、少なくとも1つの延長ビートを車体前後方向(車体進行方向)においてブラケットと重なる位置まで延在した。よって、延長ビートを車体前後方向においてアンダーカバーの仮保持部と重ねることができる。これにより、仮保持部を延長ビードで補強できる。したがって、ブラケットに仮保持部を係合させた状態において、アンダーカバーをブラケットにより支えやすくできる。
【0024】
(8)前記複数のビードは、前記仮保持部から車幅方向へ離れるに従って前端部(例えば、実施形態の前端部55a)が車体前方の側まで徐々に大きく延在され、前記アンダーカバーを補強する他の延長ビード(例えば、実施形態の第2延長ビード55)を含んでいてもよい。
【0025】
この構成によれば、複数のビードに他の延長ビードを含ませた。他の延長ビードは、仮保持部から車幅方向へ離れるに従って(離れるほど)前端部が車体前方へ傾斜状に徐々に大きく延在されている。よって、アンダーカバーのうち仮保持部から車幅方向へ離れる部位を、他の延長ビードにより補強できる。これにより、アンダーカバーの全体の強度、剛性を確保でき、アンダーカバーをブラケットやリアバンパーで安定して保持できる。
【0026】
(9)前記複数のビードは、前記アンダーカバーの上方に隆起され、前記アンダーカバーは、前記複数のビードのうち隣接するビードの間において、かつ、前記アンダーカバーの最下方側に形成された排水孔(例えば、実施形態の排水孔56)を有してもよい。
【0027】
この構成によれば、隣接するビードの間に排水孔を形成し、排水孔をアンダーカバーの最下方側(最下方部位)に配置した。よって、ビードが樋のような役割を果たすことができる。これにより、アンダーカバーの上面の水をビードで排水孔まで案内して排水孔から良好に排水できる。
【0028】
(10)前記ブラケットは、前記車体に設けられる縦板部(例えば、実施形態の縦板部33)と、前記固定孔および前記先端部が設けられた底板部(例えば、実施形態の底板部34)と、前記縦板部と前記底板部とに跨って形成された凸部(例えば、実施形態の凸部35)と、を有してもよい。
【0029】
ここで、舌片を弾性変形させてブラケットに係合させる際には、例えば、底板部の下方に配置された舌片を上方に弾性変形させる。舌片が所定位置まで上昇した状態において、底板部の先端部が舌片の下方へ潜り込んでいく。よって、底板部の先端部が舌片の復元力により下方に押圧され、先端部が舌片とアンダーカバーとの間に挟み込まれる。これにより、舌片は、底板部(具体的には、先端部)をアンダーカバーとともに挟むように引っ掛けた状態で先端部に係合する。
【0030】
そこで、ブラケットの縦板部と底板部34とに跨って凸部を形成した。よって、ブラケットの強度、剛性を高めることができる。これにより、ブラケットの底板部で舌片(すなわち、アンダーカバー)の仮保持状態を維持できる剛性を、底板部の先端部に与えることができる。このように、舌片(アンダーカバー)の仮保持状態を底板部の先端部で維持できるので、アンダーカバーやリアバンパーの組付け性を一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、リアバンパーに複雑な構造を設けることなく、アンダーカバーの組付け作業を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る一実施形態の車体底部構造を前左側方からみた斜視図である。
【
図2】
図1の車体底部構造にリアパネルを備えた状態において車体底部構造をII-II線で破断した斜視図である。
【
図4】
図3の車体底部構造を分解した斜視図である。
【
図5】一実用新案の車体底部構造に備えるアンダーカバーを示す斜視図である。
【
図7】
図6の舌片を上方に弾性変形した斜視図である。
【
図8】
図1の車体底部構造を上方からみた斜視図である。
【
図9】一実施形態のアンダーカバーを下方から組付け位置に配置して舌片を押し上げる組付け手順を説明する断面図である。
【
図10】一実施形態のアンダーカバーを舌片で仮保持する組付け手順を説明する断面図である。
【
図11】一実施形態の第2の固定孔、第1の固定孔および固定孔にクリップを差し込む組付け手順を説明する断面図である。
【
図12】一実施形態のアンダーカバーおよびリアバンパーをブラケットにクリップで組み付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて車体底部構造を説明する。なお、図面において、矢印FRは車両の前方、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の左側方を示す。
<車体底部構造>
図1、
図2に示すように、車体底部構造10は、例えば、リアパネル(車体)12と、複数のブラケット13,14と、リアバンパービーム15と、リアバンパーフェイス(リアバンパー)16と、アンダーカバー17と、複数の結合部材(実施形態ではクリップ)18,19と、を備えている。以下、リアバンパーフェイス16を「リアバンパー16」ということもある。
【0034】
<リアパネル>
リアパネル12は、右端部12aが右リアフレーム(図示せず)の後端部に固定され、左端部が左リアフレーム(図示せず)の後端部に固定されている。すなわち、リアパネル12は、右リアフレームおよび左リアフレームの各端部にかけ渡され、車両の荷室後部を仕切る部材である。すなわち、リアパネル12は、車体の一部を構成する部材である。
右リアフレームおよび左リアフレームは、車体の車幅方向外側において車体前後方向に延び、車体の骨格部材の一部を構成する強度、剛性の高いである。
【0035】
リアパネル12には、複数(実施形態では2つ)のブラケット13,14が設けられている。2つのブラケット13,14は、リアパネル12の下部12bにおいて、車幅方向に間隔をあけて設けられている。ブラケット13,14の個数は任意に選択可能である。
なお、2つのブラケット13,14は、概ね同様の部材である。よって、以下、2つのブラケット13,14の各部位に同じ符号を付して、2つのブラケット13,14のうち車幅方向右側のブラケット13を代表例として説明する。
【0036】
<リアバンパー>
リアパネル12の車体後方にリアバンパービーム15が配置されている。リアバンパービーム15は、右端部15aが右エクステンション22およびリアパネル12を介して右リアフレームの後端部に固定されている。また、リアバンパービーム15は、左端部15bが左エクステンション23およびリアパネル12を介して左リアフレームの後端部に固定されている。すなわち、リアバンパービーム15は、車幅方向に延在され、右エクステンション22および左エクステンション23かけ渡されている。
【0037】
リアバンパー16は、例えば、バンパー中央部16aがリアバンパービーム15に取り付けられることにより、リアバンパービーム15の車体後方に設けられている。また、リアバンパー16は、例えば、バンパー中央部16aの右端部からバンパー右側部16bが左リアフェンダ(図示せず)の下側まで延びている。また、リアバンパー16は、バンパー中央部16aの左端部からバンパー左側部16cが右リアフェンダ(図示せず)の下側まで延びている。
【0038】
リアバンパー16は、複数(実施形態では2つ)の突片25,26(突片25は
図4参照、突片26は図示せず)と、複数(実施形態では2つ)の第2の固定孔27,28(第2の固定孔27は
図4参照、第2の固定孔28は図示せず)と、を有する。
2つの突片25,26は、バンパー中央部16aの下端部16dにおいて、車幅方向に間隔をあけて2つのブラケット13,14の底板部34(後述する)の下方に設けられている。2つの突片25,26は、2つのブラケット13,14の各底板部34に沿って車体前方へ向けて突出されている。2つの第2の固定孔27,28は、2つの突片25,26において上下方向に向けて貫通されている。突片25,26および第2の固定孔27,28の個数は任意に選択可能である。
なお、2つの突片25,26および2つの第2の固定孔27,28は、概ね同様の部位である。よって、以下、2つの突片25,26および2つの第2の固定孔27,28のうち車幅方向右側の突片25および第2の固定孔27を代表例として説明する。
【0039】
<ブラケット>
図2から
図4に示すように、ブラケット13は、縦板部33と、底板部34と、凸部35と、を有する。縦板部33は、リアパネル12の右端部12aのうち下部12bにおいて上下方向に向けて設けられている。縦板部33は、例えば、下端部33aがブラケット13の下部12bから下方に突出されている。縦板部33の下端部33aから底板部34が車体後方に向けて折り曲げられている。
【0040】
底板部34は、底板平坦部36と、固定孔37と、底板先端部(先端部)38と、を有する。底板平坦部36は、後述するアンダーカバー17の隆起部46,47の上面に沿って、縦板部33の下端部33aから車体後方に向けて延びている。底板平坦部36および縦板部33は、概ね側面視で概ねL字に折り曲げられている。底板平坦部36には固定孔37が形成されている。
【0041】
固定孔37は、底板平坦部36の中央において上下方向に貫通されている。固定孔37は、隆起部46,47に形成された第1の固定孔51,52(後述する)と、リアバンパー16の突片25に形成された第2の固定孔27に上下方向において合わされた位置に配置されている。底板平坦部36の先端には底板先端部38が形成されている。
【0042】
底板先端部38は、底板平坦部36のうち車体後方側の先端から車体後方に向かうに従って上方に向けて上り勾配の傾斜状に延びている。底板先端部38は、アンダーカバー17の仮保持部48(後述する)に係合する。
【0043】
縦板部33および底板平坦部36の折曲部39には、凸部35が縦板部33の下端部33aと底板平坦部36の基端部とに跨って形成されている。具体的には、凸部35は、車体後方上側に向けて傾斜状のリブ状に突出され、例えば側面視で三角形に形成されている。よって、縦板部33と底板平坦部36との折曲部39が凸部35により補強され、ブラケット13の強度、剛性が高められている。
【0044】
<アンダーカバー>
図1、
図4、
図5に示すように、2つのブラケット13,14の各底板部34およびリアバンパー16の2つの突片25,26(突片26は図示せず)にはアンダーカバー17が結合されている。
アンダーカバー17は、車体の下方に配置された状態において、後端部がバンパー中央部16aの下端部16dに沿って配置されている。アンダーカバー17は、例えば、シートスタンピング成形で成形された樹脂製の成形品である。
アンダーカバー17は、アンダーカバー平坦部44と、アンダーカバー傾斜部45と、複数(実施形態では2つ)の隆起部46,47と、複数(実施形態では2つ)の仮保持部48,49と、少なくとも2つ(実施形態では2つ)の第1の固定孔51,52と、複数のビード53…,54…,55…と、複数の排水孔56と、を有する。
【0045】
アンダーカバー平坦部44は、アンダーカバー17のうち後半部に形成され、車体前後方向および車幅方向に対して概ね平坦に形成されている。アンダーカバー平坦部44は、後端部44a(すなわち、アンダーカバー17の後端部)がバンパー中央部16aの下端部16dに沿って車幅方向に向けて延びている。また、アンダーカバー平坦部44は、前端部に第1前端部44bと、第2前端部44cと、を有する。
第1前端部44bは、アンダーカバー平坦部44の前端部のうち、車幅方向において2つの隆起部46,47の範囲に位置している。第1前端部44bは、車幅方向に延びている。第2前端部44cは、アンダーカバー平坦部44の前端部のうち、車幅方向において2つの隆起部46,47の範囲に対して車幅方向左外側に位置している。第2前端部44cは、車幅方向左外側に向かうに従って車体前方に傾斜状に延びている。
【0046】
アンダーカバー平坦部44の前端部(すなわち、第1前端部44bおよび第2前端部44c)にはアンダーカバー傾斜部45が形成されている。アンダーカバー傾斜部45は、アンダーカバー平坦部44の前端部から車体前方に向かうに従って上方に向けて上り勾配に傾斜されている。
【0047】
また、アンダーカバー平坦部44の後端部44aのうち、右端部および中央部に隆起部46,47がそれぞれ形成されている。2つの隆起部46,47は、アンダーカバー平坦部44から上方に向けて隆起されている。2つの隆起部46,47は、それぞれ、隆起平坦部61と、隆起傾斜部62と、を有する。
なお、2つの隆起部46,47は、概ね左右対称の部材である。よって、2つの隆起部46,47を形成する隆起平坦部61および隆起傾斜部62に同じ符号を付して説明する。
隆起平坦部61は、アンダーカバー平坦部44に沿って平坦に形成されている。隆起傾斜部62は、隆起平坦部61の後辺から車体後方に向かうに従って上方に向けて上り勾配に形成されている。
【0048】
2つの隆起部46,47にはそれぞれ、仮保持部48,49が形成されている。2つの仮保持部48,49は、概ね左右対称の部材である。よって、以下、2つの仮保持部48,49のうち車幅方向右側の仮保持部48を代表例として説明する。また、2つの隆起部46,47についても、車幅方向右側の隆起部46を代表例として説明する。
【0049】
図3、
図6に示すように、仮保持部48は、隆起平坦部61および隆起傾斜部62に平面視コ字状(U字状)のスリット72が形成されることにより、隆起平坦部61および隆起傾斜部62から区画されている。スリット72は、両端部72aが車幅方向に間隔をあけて隆起傾斜部62に位置する。また、スリット72は、一対の縦スリット72bが両端部72aから車体前方に向けて隆起平坦部61まで車幅方向に一定の間隔をあけて延びている。さらに、スリット72は、一対の縦スリット72bの前端部が横スリット72cで連結されている。横スリット72cは、車幅方向に延びている。
【0050】
すなわち、仮保持部48は、一対の縦スリット72bにより両側辺が隆起平坦部61および隆起傾斜部62から区画され、かつ、横スリット72cにより先端辺が隆起平坦部61から区画されている。また、仮保持部48は、基端48aが隆起傾斜部62に連結されている。
このように、仮保持部48は、隆起平坦部61および隆起傾斜部62から区画されることにより、概ね矩形状の舌片状に形成されている。すなわち、仮保持部48は、舌片から成るように形成されている。以下、仮保持部48を「舌片48」ということもある。
舌片48は、スリット72に沿って概ね矩形状に形成されている。
【0051】
ここで、アンダーカバー17は、前述したように、シートスタンピング成形で成形されている。さらに、舌片48は、アンダーカバー17に平面視コ字状のスリット72を形成するだけで設けることができる。これにより、舌片48を備えたアンダーカバー17を安価に製造できる。
【0052】
舌片48は、平坦部65と、傾斜部66と、折曲部67と、を有する。平坦部65は、スリット72で隆起平坦部61から区画されることにより形成されている。よって、平坦部65は、隆起平坦部61と同様に、アンダーカバー平坦部44に沿って平坦に形成されている。
傾斜部66は、スリット72で隆起傾斜部62から区画されることにより形成されている。よって、傾斜部66は、隆起傾斜部62と同様に、平坦部65の後端(すなわち、折曲部67)から車体後方に向かうに従って上方に向けて上り勾配に形成されている。平坦部65の後端は、隆起平坦部61の後辺に相当する部位である。すなわち、傾斜部66は、アンダーカバー平坦部44の後端部44aに形成されている。
傾斜部66は、ブラケット13の底板部34から離れるように車体後方に向けて上り勾配の傾斜状態に形成されている。よって、傾斜部66は、平坦部65に対して上り勾配に形成されている。
【0053】
ここで、アンダーカバー平坦部44の後端部44aは、アンダーカバー17の剛性を確保するために剛性が高く形成されている。よって、アンダーカバー平坦部44の後端部44aに舌片48の傾斜部66を形成することにより、舌片48の剛性を高めることができる。
また、傾斜部66を車体後方に向けて上り勾配に形成した。これにより、例えば、アンダーカバー17の下面側を経て傾斜部66の下方に流れる空気を傾斜部66で整流し、整流した空気を傾斜部66から車体後方に流すことができる。
【0054】
さらに、傾斜部66は、ブラケット13の底板部34から離れるように車体後方に向けて上り勾配の傾斜状態に形成されている。よって、舌片48は、平坦部65および傾斜部66でV字状に形成されている。よって、舌片48は、平坦部65と傾斜部66との交差部により折曲部67が形成されている。折曲部67は、車幅方向に対して車体前後方向へ傾斜するように延びている。よって、平坦部65は、面積が大きく確保されている。
なお、舌片48の折曲部67を車体前後方向に傾斜させて平坦部65の面積を大きく確保する理由については、後で詳しく説明する。
また、舌片48を平坦部65と傾斜部66とによりV字状に形成することにより、例えば、舌片全体を平坦に形成した場合と比べて、舌片48の車体前後方向の長さを短く抑えることができる。
なお、舌片48をV字状に形成して車体前後方向の長さを短く抑える理由については、後で詳しく説明する。
【0055】
図3、
図4、
図7に示すように、舌片48は、基端48aを軸にして上下方向(すなわち、矢印A方向)に弾性変形可能に形成されている。舌片48は、上方向に弾性変形した状態においてブラケット13の底板先端部38に係合する。具体的には、舌片48が基端48aを軸にして上方向に弾性変形した状態において底板先端部38の先端38aが当接して、舌片48の復元力で底板先端部38の先端38aを下方に押し下げる。よって、底板先端部38(すなわち、ブラケット13の底板部34)が舌片48と隆起平坦部61とにより挟み込まれる。これにより、舌片48は、底板部34を隆起平坦部61とともに挟むように引っ掛けた状態で底板部34に係合する。
【0056】
ここで、
図6、
図7に示すように、スリット72の両端部72aは隆起傾斜部62に位置している。よって、スリット72の両端部72aは、隆起平坦部61より高い位置に配置されている。これにより、舌片48を弾性変形させる際の支軸(すなわち、基端48a)を隆起平坦部61より高い位置に配置できる。なお、舌片48の支軸(基端48a)を隆起平坦部61より高い位置に配置した理由については、後で詳しく説明する。
【0057】
また、
図4から
図6に示すように、2つの隆起平坦部61には、それぞれ第1の固定孔51,52が形成されている。2つの第1の固定孔51,52は、同じ形状に形成されている。よって、以下、2つの第1の固定孔51,52のうち車幅方向右側の第1の固定孔51を代表例として説明する。
第1の固定孔51は、隆起平坦部61において舌片48の平坦部65に対して車体前方で、かつ、平坦部65の近傍に位置し、上下方向に貫通されている。換言すれば、第1の固定孔51の近傍に舌片48が設けられている。
第1の固定孔51は、ブラケット13の底板部34に形成された固定孔37と、リアバンパー16の突片25に形成された第2の固定孔27に上下方向において合わされた位置に配置されている。
【0058】
図5、
図8に示すように、アンダーカバー17のアンダーカバー平坦部44およびアンダーカバー傾斜部45には複数のビード53…,54…,55…が形成されている。複数のビード53…,54…,55…は、アンダーカバー17(具体的には、アンダーカバー平坦部44およびアンダーカバー傾斜部45)の各表面から上方に隆起され、車幅方向に間隔をあけて形成されて車体前後方向(すなわち、車体進行方向)に延びている。複数のビード53…,54…,55…は、複数のベースビード53と、少なくとも1つ(実施形態では2つ)の第1延長ビード(延長ビード)54と、複数の第2延長ビード(他の延長ビード)55と、を含む。
【0059】
複数のベースビード53は、例えば、2つの隆起部46,47の車体前方側に形成され、さらに、2つの隆起部46,47の間において車幅方向の中央に形成されている。複数のベースビード53は、例えば、前端部53aがアンダーカバー傾斜部45に形成されることにより、前端部53aがアンダーカバー傾斜部45に沿って傾斜状に折り曲げられている。よって、複数のベースビード53は、強度、剛性が高められている。
【0060】
2つの第1延長ビード54は、2つの隆起部46,47の間で、かつ、車幅方向において2つの隆起部46,47の近傍に形成されている。2つの第1延長ビード54は、ベースビード53と同様に、前端部54aがアンダーカバー傾斜部45に形成されることにより、前端部54aがアンダーカバー傾斜部45に沿って傾斜状に折り曲げられている。よって、複数のベースビード53は、強度、剛性が高められている。
さらに、2つの第1延長ビード54は、例えば、後端部54bが車体前後方向(すなわち、車体進行方向)において2つのブラケット13,14や2つの隆起部46,47と重なる位置まで車体後方に延在されている。よって、2つの第1延長ビード54は、車体前後方向において2つの舌片48,49(舌片49は仮保持部49である)に対して重ねられている。これにより、2つの舌片48,49は、第1延長ビード54で補強されている。
【0061】
複数の第2延長ビード55は、舌片49から車幅方向の左側へ離れるに従って(すなわち、離れるほど)それぞれの前端部55aが第2前端部44cに沿って傾斜状に徐々に車体前方へ大きく延在されている。よって、アンダーカバー17のうち舌片49から車幅方向左外側(車幅方向)へ離れる部位は、複数の第2延長ビード55により補強されて強度、剛性が高められている。
【0062】
複数の排水孔56は、複数のビード53…,54…,55…のうち隣接するビードの間に形成されている。さらに、複数の排水孔56は、例えば、アンダーカバー平坦部44とアンダーカバー傾斜部45との境界部(すなわち、第1前端部44b)、および境界部(すなわち、第2前端部44c)の近傍に形成されている。
ここで、第1前端部44bおよび第2前端部44cの近傍は、アンダーカバー17のうち最下方部位(最下方側)を形成する。よって、複数の排水孔56は、アンダーカバー17のうち最下方部位(最下方側)に配置されている。これにより、複数のビード53…,54…,55…が樋のような役割を果たし、アンダーカバー17の上面の水を複数のビード53…,54…,55…で複数の排水孔56まで案内して各排水孔56から良好に排水できる。
【0063】
図3から
図5、
図8に示すように、リアバンパーの2つの突片25(突片26は図示せず)にはそれぞれ第2の固定孔27,28(第2の固定孔28は図示せず)が形成されている。また、2つのブラケット13,14の底板部34(具体的には、底板平坦部36)にはそれぞれ固定孔37が形成されている。さらに、アンダーカバーの2つの隆起部46,47にはそれぞれ第1の固定孔51が形成されている。
2つの固定孔37の下方に2つの第1の固定孔51,52が上下方向においてそれぞれ合わされた状態に配置されている。また、2つの第1の固定孔51,52の下方に2つの第2の固定孔27,28が上下方向においてそれぞれ合わされた状態に配置されている。
【0064】
2つの第2の固定孔27,28の一方、2つの第1の固定孔51,52の一方、2つの固定孔37の一方、には、クリップ18が下方から係合されている。また、2つの第2の固定孔27,28の他方、2つの第1の固定孔51,52の他方、2つの固定孔37の他方には、クリップ19が下方から係合されている。すなわち、実施形態では、複数の締結部材として2つのクリップ18,19が例示されている。
2つのクリップ18,19により一定のブラケット13,14(すなわち、車体)に、アンダーカバー17およびリアバンパー16が結合されている。
【0065】
<組付け手順>
つぎに、車体底部構造10の車体にアンダーカバー17を組み付ける組付け手順を
図9から
図11に基づいて説明する。
図9に示すように、アンダーカバー17を下方から組付け位置に配置する。これにより、アンダーカバー17の隆起平坦部61をブラケット13の底板部34に下方から当接する。底板部34の固定孔37に隆起平坦部61の第1の固定孔51を下方から合わせる。底板部34の底板先端部38の下方にアンダーカバー17の舌片48が位置する。この状態において、舌片48を下方から押圧力F1で押し上げる。
ここで、舌片48の折曲部67(
図6も参照)が車体前後方向に傾斜されることにより平坦部65の面積が大きく確保されている。よって、舌片48を押し上げる際に、押し上げる指が車体前後方向で多少ずれていても、舌片48を容易に持ち上げることができる。
【0066】
図10に示すように、舌片48が押上力F1により弾性変形して基端48aを軸に矢印Bの如く所定位置まで押し上げられる。
ここで、舌片48の基端48a(すなわち、支軸)は、隆起平坦部61より高い位置に配置されている。よって、舌片48を押し上げる際に、舌片48の弾性変形量を小さく抑えた状態で、舌片48が必要とする押上量を確保できる。これにより、舌片48を押し上げる際に、舌片48を折れ難くできる。
舌片48が所定位置まで押し上げられた状態において、舌片48とともに弾性変形した底板部34の底板先端部38が、底板部34の復元力で元の形状に復元して舌片48の下方へ潜り込んでいく。ここで、舌片48の下方に潜り込ませる底板先端部38は、傾斜状に形成されている。よって、舌片48に沿って底板先端部38を円滑にスライド(摺動)させて、舌片48の下方へ円滑に潜り込ませることができる。
【0067】
また、ブラケット13の縦板部33と底板部34とに跨って凸部35が形成されている。よって、ブラケット13の強度、剛性が高められている。これにより、弾性変形した底板部34が元の形状に復元する際に、底板部34の復元力が増し、底板先端部38を舌片48の下方に一層円滑に潜り込ませることができる。
【0068】
図11に示すように、舌片48の下方へ底板部34の底板先端部38を潜り込ませた状態において、舌片48から押上力F1(
図9参照)を解除する。舌片48の平坦部65が底板先端部38の先端38aに当接して、底板先端部38の先端38aを舌片48の復元力F2により下方に向けて押圧する。
【0069】
ここで、舌片48の基端48a(すなわち、支軸)は、隆起平坦部61より高い位置に配置されている。よって、舌片48の復元力を底板先端部38の先端38aに効率よく伝えることができ、舌片48の復元力により底板先端部38の保持力を確保できる。これにより、底板先端部38が舌片48の平坦部65と隆起平坦部61との間に好適に挟み込まれ、舌片48が底板先端部38に仮保持される。
【0070】
また、ブラケット13の縦板部33と底板部34とに跨って凸部35が形成されている。よって、ブラケット13の強度、剛性が高められている。これにより、ブラケット13の底板部34で舌片48(すなわち、アンダーカバー17)の仮保持状態を維持できる剛性を、底板部34の底板先端部38に与えることができる。すなわち、舌片48(アンダーカバー17)の仮保持状態を底板先端部38で維持できる。
【0071】
これにより、舌片48は、底板部34(具体的には、底板先端部38)をアンダーカバー17の隆起平坦部61とともに挟むように引っ掛けた状態で底板先端部38に係合する。よって、アンダーカバー17の後端部(アンダーカバー平坦部44の後端部44a)がブラケット13を介してリアパネル12(すなわち、車体)に仮保持される。この状態において、アンダーカバー17の前端部が車体のフロアパネル(図示せず)にクリップなどの締結部材により締結される。よって。アンダーカバー17の全体が車体の下側に仮保持される。
【0072】
図11に示すように、アンダーカバー17が車体の下側に仮保持された状態において、リアバンパー16の突片25を隆起平坦部61の下方に配置する。配置した突片25の第2の固定孔27を、隆起平坦部61の第1の固定孔51および底板部34の固定孔37に下方から合わせる。この状態において、第2の固定孔27、第1の固定孔51および固定孔37にクリップ18を下方から矢印Cの如く差し込む。
【0073】
ここで、
図11、
図12に示すように、舌片48は、V字状に形成されることにより車体前後方向の長さLが短く抑えられている。よって、舌片48が固定孔37から突出したクリップ18の先端部18aに干渉することを防止できる。これにより、第2の固定孔27、第1の固定孔51および固定孔37にクリップ18を容易に差し込むことができる。
よって、クリップ18が第2の固定孔27、第1の固定孔51および固定孔37に係合して、隆起平坦部61が底板部34および突片25に結合される。これにより、アンダーカバー17およびリアバンパー16がブラケット13に組み付けられ、アンダーカバー17を車体に組み付ける手順が完了する。
【0074】
以上説明したように、実施形態の車体底部構造10によれば、
図3、
図4に示すように、アンダーカバー17に仮保持部として舌片48を形成した。この舌片48をブラケット13の底板先端部38に係合させる(引っ掛ける)ことにより、ブラケット13に対してアンダーカバー17を仮保持できる。この状態において、例えば、アンダーカバー17の第1の固定孔51がブラケット13の固定孔37に上下方向において合わせられる。さらに、ブラケット13に仮保持されたアンダーカバー17の前端部を車体のフロアパネルに固定することにより、アンダーカバー17が車体に仮保持された状態に保たれる。
【0075】
つぎに、リアバンパー16を車体後方から車体前方に向けて移動させることにより、アンダーカバー17の第1の固定孔51にリアバンパー16の第2の固定孔27が上下方向において合わせられる。よって、ブラケット13の固定孔37、アンダーカバー17の第1の固定孔51、およびリアバンパー16の第2の固定孔27が上下方向において合わせられる。合わせられた固定孔37、第1の固定孔51、および第2の固定孔27にクリップ18が係合される。
これにより、ブラケット13にアンダーカバー17およびリアバンパー16がクリップ18により結合され、アンダーカバー17およびリアバンパー16がブラケット13に組み付けられる。
【0076】
このように、アンダーカバー17に舌片48を形成して舌片48でアンダーカバー17をブラケット13に位置決めする。これにより、リアバンパー16に複雑な構造を設けることなく、アンダーカバー17およびリアバンパー16をブラケット13(すなわち、車体)に組み付けることができる。
また、アンダーカバー17の舌片48をブラケット13に係合させることにより、ブラケット13に対して位置決めした状態にアンダーカバー17を仮保持できる。これにより、アンダーカバー17の組付け作業を容易におこなうことができる。
【0077】
さらに、固定孔37、第1の固定孔51、および第2の固定孔27に係合する結合部材として、例えばクリップ18などのような簡易な固定構造を使用することができる。これにより、固定孔37、第1の固定孔51、および第2の固定孔27にクリップ18を差し込むだけでアンダーカバー17およびリアバンパー16をブラケット13(車体)に組み付けることができ、アンダーカバー17の組付け性を一層向上させることができる。
【0078】
加えて、リアバンパー16は、従来技術のように、リアバンパーにリブを備えて、リブでリアバンパーを車体に係合する必要がない。これにより、リアバンパー16(すなわち、車体底部構造)の軽量化を図ることができる。
【0079】
また、舌片48の基端48a(すなわち、支軸)は、隆起平坦部61より高い位置に配置されている。よって、舌片48を押し上げる際に、舌片48の弾性変形量を小さく抑えた状態で、舌片48が必要とする押上量を確保できる。これにより、舌片48を押し上げる際に、舌片48を折れ難くでき、アンダーカバー17やリアバンパー16の組付け性を一層向上させることができる。
【0080】
さらに、舌片48の先端が当接する底板先端部38は、傾斜状に形成されている。よって、ブラケット13の底板先端部38が舌片48の下方へ潜り込んでいく際に、傾斜状の底板先端部38を舌片48に沿って円滑にスライド(摺動)させることができる。これにより、舌片48を底板先端部38に容易に係合させることができ、アンダーカバー17やリアバンパー16の組付け性を一層向上させることができる。
【0081】
加えて、アンダーカバー17に第1の固定孔51が形成され、第1の固定孔51の近傍に舌片48が配置されている。よって、ブラケット13の底板部34は、舌片48の平坦部65が係合する底板先端部38の近傍に固定孔37を形成できる。これにより、ブラケット13のうち、底板先端部38および固定孔37を有する底板部34の長さを短くしても、底板先端部38に舌片48の平坦部65を係合させた状態で、固定孔37に第1の固定孔51を合わせることができる。したがって、ブラケット13(すなわち、車体底部構造10)の軽量化を図ることができる。
【0082】
さらに、ブラケット13のうち、底板先端部38および固定孔37を有する底板部34の長さ(具体的には、車体前後方向の)を短くすることにより、ブラケット13の剛性を確保できる。これにより、ブラケット13の底板先端部38に舌片48を係合させる際に、ブラケット13の底板部34の変形を抑制でき、アンダーカバー17やリアバンパー16の組付け性を一層向上させることができる。
【0083】
また、
図5、
図8に示すように、アンダーカバー17に複数のビード53…,54…,55…が形成され、複数のビード53…,54…,55…のうち、2つの第1延長ビード54が車体前後方向においてブラケット13と重なる位置まで延在されている。よって、2つの第1延長ビード54を車体前後方向においてアンダーカバー17の2つの舌片48と重ねることができる。これにより、2つの舌片48を2つの第1延長ビード54で補強できる。したがって、ブラケット13の底板先端部38に舌片48を係合させた状態において、アンダーカバー17をブラケット13により支えやすくできる。
【0084】
さらに、複数のビード53…,54…,55…には複数の第2延長ビード55が含まれている。複数の第2延長ビード55は、舌片49から車幅方向左外側へ離れるに従ってそれぞれの前端部55aが車体前方へ傾斜状に徐々に大きく延在されている。よって、アンダーカバー17のうち舌片49から車幅方向左外側へ離れる部位を、複数の第2延長ビード55により補強できる。これにより、アンダーカバー17の全体の強度、剛性を確保でき、アンダーカバー17をブラケット13やリアバンパー16で安定して保持できる。
【0085】
加えて、
図3、
図4に示すように、ブラケット13の縦板部33と底板部34とに跨って凸部35が形成されることにより、ブラケットの強度、剛性が高められている。これにより、ブラケット13の底板部34で舌片48(すなわち、アンダーカバー17)の仮保持状態を維持できる剛性を、底板部34の底板先端部38に与えることができる。このように、舌片48(アンダーカバー17)の仮保持状態を底板先端部38で維持できるので、アンダーカバー17やリアバンパー16の組付け性を一層向上させることができる。
【0086】
また、ブラケット13の強度、剛性を凸部35で高めることにより、弾性変形した底板部34が元の形状に復元する際に、底板部34の復元力が増し、底板先端部38を舌片48の下方に円滑に潜り込ませることができる。これにより、舌片48を底板先端部38に容易に係合させることができ、アンダーカバー17やリアバンパー16の組付け性を一層向上させることができる。
【0087】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、締結部材としてクリップ18,19を例に説明したが、締結部材はクリップ18,19に限らない。その他の例として、ボルト、ナットやリベットなどの他の締結部材を使用してもよい。
【0088】
また、前記実施形態では、ブラケット13,14、クリップ18,19、第2の固定孔27,28、および仮保持部(舌片)48,49をそれぞれ2つ備えた例について説明したが各部の個数は2つに限らない。その他の例として、ブラケット13,14、クリップ18,19、第2の固定孔27,28、および仮保持部(舌片)48,49の個数を任意に選択してもよい。
【0089】
さらに、前記実施形態では、第1延長ビード54を2つ備えた例について説明したが第1延長ビード54の個数は2つに限らない。その他の例として、第1延長ビード54の個数を任意に選択してもよい。
【0090】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 車体底部構造
13,14 ブラケット
17 アンダーカバー
16 リアバンパー
18,19 クリップ(締結部材)
27,28 第2の固定孔
33 縦板部
34 底板部
35 凸部
37 固定孔
38 底板先端部(先端部)
44 アンダーカバー平坦部
44a 後端部(アンダーカバーの後端部)
48,49 仮保持部(舌片)
51,52 第1の固定孔
53…,54…,55… 複数のビード
54 第1延長ビード(延長ビード)
55 第2延長ビード(他の延長ビード)
55a 前端部
56 排水孔
65 平坦部
66 傾斜部
72 スリット