(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】核酸検出定量方法、チップ、アッセイキット、核酸検出定量装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20221212BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20221212BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20221212BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20221212BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALN20221212BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
C12Q1/6876 Z
G01N27/416 336M
G01N27/416 386Z
C12N15/09 Z
C12Q1/6844 Z
(21)【出願番号】P 2021086856
(22)【出願日】2021-05-24
(62)【分割の表示】P 2017118585の分割
【原出願日】2017-06-16
【審査請求日】2021-05-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 桂子
(72)【発明者】
【氏名】稲田 美雅
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-505476(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104004652(CN,A)
【文献】国際公開第2013/063230(WO,A1)
【文献】特開2018-143197(JP,A)
【文献】Safavieh, M. et. al.,"High-throughput real-time electrochemical monitoring of LAMP for pathogenic bacteria detection",Biosens. Bioelectron.,2014年,Vol. 58,pp. 101-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の、第1の配列を含む標的核酸を定量又は検出するためのチップであって、
基板と、
前記基板の一方の面に対向し、かつ、前記一方の面との間に1つの空間を形成する被覆
体と、
前記
一方の面上の1つの空間に配置されている複数の検出領域とを有し、
前記検出領域上には核酸プローブが固定されておらず、
前記1つの空間は、前記標的核酸を含有する反応液が持ち込まれるように構成され、
前記1つの空間に前記反応液が持ち込まれることで、前記1つの空間に1つの反応場が
形成されるように構成される、チップ。
【請求項2】
前記標的核酸は、1種類の核酸である、請求項1に記載のチップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のチップと、前記第1の配列を等温増幅し前記増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅試薬とを含むアッセイキット。
【請求項4】
前記増幅産物の増加に伴って変化する電気的信号を生じる第1の標識物質及び/又は前記増幅産物の増加に伴って変化する光学的信号を生じる第2の標識物質を更に含む請求項3に記載のアッセイキット。
【請求項5】
前記複数の検出領域のそれぞれは、前記一方の面上で隣り合う他の前記検出領域との間隔が0.1mm以上10mm以下となるように配置されている、請求項4に記載のアッセイキット。
【請求項6】
前記間隔は、1mm以上10mm以下である、請求項5に記載のアッセイキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、核酸検出定量方法、チップ、アッセイキット、核酸検出定量装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、遺伝子検査技術の進展に伴い、臨床現場や犯罪捜査などの様々な場面で核酸検査が実施されている。対象遺伝子は、例えば、リアルタイムPCR法やLAMP法などによって検出又は定量されている。リアルタイムPCR法は、核酸の増幅を伴うことから感度が高く、定量範囲が広い。LAMP法は、蛍光色素などで増幅産物を標識することなく対象遺伝子を定量又は検出することが可能である。しかし、これらの方法による定量又は検出の分解精度は低い。
【0003】
より定量又は検出精度が高い技術として、デジタルPCR法が実施されている。しかしながら、デジタルPCR法は、測定対象を含む反応液を適切な濃度に調製することや、反応液を等量ずつ多数の容器に分割することが必要であり、操作が煩雑であることが課題である。
【0004】
上記のような状況において、核酸を簡便かつ高感度に定量又は検出する方法の更なる開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2014/0220667号明細書
【文献】国際公開第2013158982号
【文献】国際公開第2010018465号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Ahmed et al, Analyst 138,907-15(2013)
【文献】Yao et al, Chem Commun 50,9704-6(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、核酸を簡便かつ高感度に定量できる核酸検出定量方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に従う核酸検出定量方法は、試料中の第1の配列を含む標的核酸を定量する方法である。当該方法は、複数の検出領域が配置された基板を用意すること、基板上に、試料と、第1の配列を等温増幅し増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅酵素とを含む反応液を存在させて、1つの反応場を形成すること、反応場を等温増幅条件に維持すること、増幅産物の増加に伴って変化する検出信号を、複数の検出領域のそれぞれで検出すること、検出の結果に基づいて、複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断すること、及び陽性の検出領域の数及び/又は複数の検出領域における検出信号の立ち上がり時間から標的核酸を検出又は定量することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の核酸検出定量方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態の基板の流路を拡大した模式図である。
【
図5】実施形態の核酸検出定量方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態の核酸検出定量方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態の核酸検出定量方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態の核酸検出定量装置の一例を示すブロック図である。
【
図9】実施形態の核酸検出定量装置による核酸検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態の核酸定量部の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら種々の実施形態について説明する。各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0011】
実施形態に従う核酸検出定量方法の一例の概略フローを
図1に示す。
【0012】
当該核酸検出定量方法は、試料中の、第1の配列を含む標的核酸を定量する方法である。当該方法は、複数の検出領域が配置された基板を用意すること(S1)、基板上に、試料と、第1の配列を等温増幅し増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅酵素とを含む反応液を存在させて、1つの反応場を形成すること(S2)、反応場を等温増幅条件に維持すること(S3)、増幅産物の増加に伴って変化する検出信号を前記複数の検出領域のそれぞれで検出すること(S4)、前記検出の結果に基づいて、複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断すること(S5)及び陽性の検出領域の数及び/又は複数の検出領域における検出信号の立ち上がり時間から標的核酸を検出又は定量すること(S6)を含む。
【0013】
各工程について以下に詳細に説明する。
【0014】
工程(S1)において、複数の検出領域が配置された基板を用意する。
【0015】
基板は、後述する工程(S2)において形成される1つの反応場を支持する固相である。基板として、例えば、金属、樹脂、ガラス、又はシリコンなどを用いることができる。基板の全体的な形状は、例えば、板状、容器形状、又はそれらの一部分からなる形状であってもよい。
【0016】
基板の一例を
図2(a)に示す。基板1の一方の面2に、複数の検出領域3が配置されている。検出領域3は、後述する工程(S2)において基板1の一方の面2上に形成される反応場からの検出信号を検出するための領域である。
【0017】
検出領域3の材料として、金属、樹脂、ガラス又はシリコン等を用いることができる。検出領域3の材料は、基板の材料又は後述する工程(S4)において検出する検出信号の種類などに従って選択される。
【0018】
検出領域3は、例えば規則的なアレイ状に配置されている。或いは検出領域3の配置は、密度の均一なランダム配置であってもよい。検出領域3は、基板1の面2上の、後述する工程(S2)において形成される反応場に接する領域に、均一に万遍なく配置されることが好ましい。その場合、より正確に標的核酸を検出及び定量することができる。
【0019】
検出領域3が規則的なアレイ状に配置されている場合、例えばそれらがなす行列の行方向及び列方向の隣り合う検出領域間の間隔がほぼ等間隔であることが望ましい。
【0020】
1つの検出領域3の大きさは、所望の基板1の大きさと所望の検出領域3の数に依存して選択されればよいが、例えば、長さ0.001~10mm、幅0.001~10mmである。
【0021】
複数の検出領域3の各々の形状は、検出すべき所望の信号が検出できるように、信号の種類に応じて選択されればよく、例えば、丸型、四角形、その他の多角形などである。1つの基板1に設けられる検出領域3の数は、例えば、2個以上であることが好ましい。10個以上である場合、検出及び定量の精度がより高まるためより好ましい。
【0022】
また、複数の検出領域3の各々の面積及び形状は同一であることが望ましい。特に、検出領域の面積がばらつくと定量精度が低下するため、面積のばらつきは10%以下であることが好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
【0023】
検出領域3は行方向に間隔d1を空けて配置されており、列方向に間隔d2を空けて配置されている。即ち、間隔d1及びd2は、それぞれ行方向及び列方向に隣り合う2つの検出領域3の距離であり、言い換えれば隣り合う2つの検出領域3の一方の検出領域3の端から他方の検出領域3の端までの最近接の間隔である。間隔d1及びd2は、0.1mm以上であることが好ましい。間隔d1及びd2は、0.5mm以上であることがより好ましく、1mm以上であれば更に好ましい。
【0024】
間隔d1及びd2が0.1mm以上であると、特定の検出領域で検出されるべき検出信号がその付近の異なる検出領域でも検出される現象が生じにくくなり、定量精度が向上する。0.5mm以上であると、同現象がより抑制され定量精度が更に向上する。特に1mm以上では、標的核酸の長さが短く、反応時間が長い条件下にあっても特定の検出領域で検出されるべき検出信号がその付近の異なる検出領域で検出される現象を防ぐことができ、そのため検出及び定量の精度がより高まる。
【0025】
ただし、間隔d1及びd2は10mm以下であることが望ましい。間隔が広すぎると、1つの基板上に設けることのできる検出領域の数が少なくなる。その結果、定量精度が低下するとともに、所望の定量精度を得るために試料を多量に必要とする。
【0026】
基板1は、検出領域3に対応して、センサ4を備えてもよい。センサ4は、詳しくは後述するが、例えば、電極、電気化学的センサ、光学センサ又は濁度センサなどである。センサ4を備える場合、1つの基板1の各検出領域3に対応して設けられるセンサ4の各々は、全て同じ種類のセンサであることが好ましい。
【0027】
検出領域3は、光透過性の材料で構成されていてもよい。即ち、基板1の検出領域3に相当する部分が光透過性の材料から形成されていてもよい。その場合、検出信号を、例えば、基板1と別体のセンサなどで検出領域から検出することが可能である。
【0028】
以上のような基板1においては、面2上に1つの空間が形成されている。即ち、面2上の空間は、複数の検出領域3ごとに分離されていない。それによって、後述する工程(S2)において反応液を面2上に持ち込んだ際、反応液が面2上の何れの箇所へも流動可能な状態となる。その結果、1つの反応場が形成される。従って、基板1によれば1回の操作で全ての検出領域3上に反応液を持ち込むことが可能である。また、それぞれの検出領域3上の空間の体積は一定である。
【0029】
基板の更なる別の例を
図2(b)に示す。この例において、基板11の面12は、蛇行した1本の溝により構成された流路13を備える。検出領域15は、流路13の底部14に、流路13に沿って一列又は複数列で配置されることが好ましい。流路13の幅w
1は、基板11の大きさなどに応じて決定されればよいが、例えば、0.01~50mmであることが好ましい。流路の深さは、例えば、0.01~10mmであることが好ましい。1つの検出領域15の大きさは、所望の基板11の大きさ、所望の検出領域15の数、流路13の幅などに依存して選択されればよいが、例えば、長さ0.001~10mm、幅0.001~10mmなどである。
【0030】
隣り合う2つの検出領域15の距離、即ち一方の検出領域15端から他方の検出領域15の端までの最近接の間隔d3は、0.1mm以上離れて配置されていることが好ましく、0.5mm以上離れて配置されていることがより好ましく、1mm以上離れて配置されていることが更に好ましい。
【0031】
間隔d3が0.1mm以上であると、特定の検出領域で検出されるべき検出信号がその付近の異なる検出領域でも検出される現象が生じにくくなり、定量精度が向上する。0.5mm以上であると、同現象がより抑制され定量精度が更に向上する。特に1mm以上では、標的核酸の長さが短い、反応時間が長いという条件下にあっても特定の検出領域で検出されるべき検出信号がその付近の異なる検出領域で検出される現象を防ぐことができ、そのため検出及び定量の精度がより高まる。
【0032】
1つの基板11に設けられる検出領域15の数は、例えば、2個以上であることが好ましい。10個以上である場合、検出の精度がより高まるためより好ましい。
【0033】
流路13の形状は、
図2(b)のように蛇行した1本の溝の形状であってもよいし、別の形状であってもよい。例えば、
図3(a)に示す流路23のように櫛形であってもよく、
図3(b)に示す流路33のように四角形の渦巻型であってもよく、
図3(c)に示す流路43のように円形の渦巻型であってもよい。
【0034】
流路13、23及び33の曲り角は、面取りされていることが好ましい。面取りされていることによって、後述する工程(S2)において反応液を流路内に持ち込む際に、増幅反応を阻害する原因となる泡が発生し難くすることが可能である。
【0035】
基板11、21、31及び41はそれぞれ、検出領域15、25、35又は45に、それぞれ上記センサ4と同様のセンサ16、26、36、46を備えてもよい。或いは、検出領域15、25、35又は45は上述のように光透過性部材で構成されていてもよい。
【0036】
次に、工程(S2)において、基板の複数の検出領域が存在する面上に反応液を存在させて反応場を形成する。「反応場」とは、そこにおいて増幅反応が行われる領域であり、この領域は、反応液によって規定される。言い換えれば、反応場は、反応液が存在する領域である。
【0037】
反応液は、試料、プライマーセット及び増幅酵素を含む。
【0038】
試料は、標的核酸の存在の有無又は量が検査されるべき物質である。言い換えれば、試料は、実施形態の核酸検出定量方法における分析対象である。例えば、試料は、血液、血清、血球、尿、便、汗、唾液、口腔内粘膜、喀痰、リンパ液、髄液、涙液、母乳、羊水、精液、組織、バイオプシー、培養細胞などの生体物質、又は環境から採取された環境物質、人工核酸或いはそれらの混合物などであってもよい。或いはそれらを材料として用いて調製された調製物であってもよい。例えば、上記の何れかを本実施形態に従う試料として使用するために、例えば、細切、ホモジナイズ及び抽出などの公知の何れかの前処理を行ってもよい。また例えば、上記の何れかを生体又は環境などから採取し、核酸検出に適切な状態に調製してもよい。例えば、上記の何れかから公知の何れかの手段によって核酸を抽出し、得られた核酸成分を含む液体を試料としてもよい。
【0039】
標的核酸は、実施形態の核酸検出定量方法において検出又は定量されるべき核酸である。標的核酸は、第1の配列を含む。第1の配列は、標的核酸の存在の指標となる配列であり、標的核酸を検出又は定量するために実施形態の核酸検出定量方法において増幅される配列である。第1の配列は、標的核酸の全長に亘る配列から選択される配列であり、例えば、標的核酸に特異的な配列であることが好ましい。標的核酸は、一本鎖核酸である。試料中での標的核酸の状態は、一本鎖、又は標的核酸と標的核酸に相補的な核酸鎖とによって形成されている二本鎖である。標的核酸の長さは、例えば、50塩基~500塩基であることが好ましく、100塩基~300塩基であることがより好ましい。
【0040】
第1の配列の長さは、例えば、3塩基~10塩基、10塩基~20塩基、20塩基~30塩基、30塩基~40塩基、40塩基~50塩基、50塩基~60塩基、60塩基~70塩基、70塩基~80塩基、80塩基~90塩基又は90塩基~100塩基であり、好ましくは10塩基~50塩基である。
【0041】
プライマーセットは、前記第1の配列を増幅して増幅産物を得るための等温増幅用のプライマーセットである。プライマーセットに含まれる各プライマーの配列は、当該核酸検出定量方法に用いられる増幅方法の種類に基づいて、第1の配列を増幅するように設計及び/又は選択されればよい。当該核酸検出定量方法に用いられる増幅方法は、等温増幅方法である。等温増幅方法として、例えば、LAMP、RT-LAMP、SDA、NASBA、RCA、LCR、TMA、SmartAmp(登録商標)又はICAN(登録商標)などを用いることができる。例えば、プライマーセットは、第1の配列の一端部に相補的な第1のプライマーと、第1の配列の他端部と相同な第2のプライマーとを含む。これらのプライマーによって、標的核酸上の増幅されるべき範囲が規定される。
【0042】
プライマーセットがLAMP用のプライマーセットである場合、1つのプライマーセットは、第1のプライマーとしてのFIPプライマーと、第2のプライマーとしてのBIPプライマーとを含む。更に、プライマーセットは、F3プライマー、B3プライマー、LPプライマー、即ち、LFプライマー及び/又はLBプライマーを含んでいてもよい。
【0043】
例えば、試料中の標的核酸が一本鎖DNAであるときには、プライマーセットによって相補鎖が形成され、更にそれらを鋳型として増幅反応が進行する。また、標的核酸がRNAである場合には、逆転写反応が行われ、逆転写産物について増幅反応が行われる。
【0044】
増幅酵素は、標的核酸の種類、使用される等温増幅方法の種類、プライマーセットの種類及び逆転写反応の有無などに基づいて選択される。増幅酵素は、例えば、DNAポリメラーゼ又はRNAポリメラーゼなどである。DNAポリメラーゼは、例えば、Bst、Bst2.0、Bst3.0、GspSSD、GspM、Tin、Bsm、Csa、96-7、phi29、OminiAmp(登録商標)、Aac、BcaBEST(登録商標)、DisplaceAce(登録商標)、SD、StrandDisplace(登録商標)、TOPOTAQ、Isotherm2G、Taq又はこれらの何れかの組み合わせなどであることが好ましい。Bst、GspSSD又はTinを用いる場合、検出及び定量の感度が高くなるため、より好ましい。増幅酵素に加えて、更に何れかの逆転写酵素を用いてもよい。
【0045】
反応液は、上記成分の他にマグネシウムを含んでいてもよい。反応液中のマグネシウムの濃度は、検出信号の種類によって選択されればよいが、例えば、30mM以下である。より好ましくは、4mM~10mMである。この濃度であることによって、増幅反応が促進され、かつ配列に依存しない広い範囲の種々の配列を効率よく増幅することが可能となる。その結果、多様な配列を効率よく検出することが可能となる。
【0046】
反応液は、上述の成分に加えて、更に増幅反応に必要な所望の成分を含んでいてもよい。そのような成分は、例えば、増幅産物の増加に応じて信号を生ずる標識物質、塩、プライマーを起点とし新たなポリヌクレオチド鎖を形成する際に必要なデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)などの基質、反応試薬としての増粘剤、pH調製用緩衝材、界面活性剤、アニーリング特異性を増大するイオン、及び/又は増幅酵素の補因子となるイオンなどである。逆転写を同時に行う場合には、反応液は、更に逆転写酵素及びそれに必要な基質などを含んでいてもよい。
【0047】
標識物質は、増幅産物の増加に伴って変化する検出信号を生ずる物質である。例えば、標識物質は、そこから生ずる検出信号が、増幅産物が存在する場合に、増幅産物が存在しない場合と比較して増加又は減少する物質である。また例えば、増幅産物の存在量に従って、そこから生ずる検出信号の量が増加する又は減少する物質である。例えば、標識物質は、詳しくは後述するが、電気的信号を生ずる物質又は光学的信号を生ずる物質などである。反応液は標識物質を含まなくてもよい。その場合、反応液の濁度に相関する信号を検出信号として、標的核酸を定量又は検出することができる。
【0048】
塩は、例えば、核酸増幅反応において適切な増幅環境を維持するために用いられる公知の何れかの塩である。核酸増幅反応において適切な増幅環境を維持するとは、例えば、増幅酵素が、核酸増幅活性が最適となるようにその三次構造を保つことなどである。塩は、例えば、塩化カリウムである。反応液中の塩の濃度は、例えば、5~300mol/Lであることが好ましい。
【0049】
以上に説明した反応液を、基板の検出領域が存在する面上に存在させて1つの反応場を形成する。1つの反応場とは、1つの連続した領域に形成された反応場をいう。例えば、上記の何れかの基板の検出領域が存在する面上に反応液を持ち込むことによって、1つの反応場が形成される。
【0050】
例えば、
図2(a)に記載の基板1を用いる場合、基板1の面2上に反応液を持ち込むことによって、反応場が形成される。
図2(b)に記載の基板を用いる場合、反応液を流路13に持ち込むことによって反応場が形成される。流路13への反応液の持ち込みは、例えば、送液口13aから反応液を注入し、排液口3bから流路3内の空気を抜くことによって行うことができる。
図3(a)に記載の基板を用いる場合、流路23への反応液の持ち込みは、例えば、送液口23aから反応液を注入し、排液口23b~23fから空気を抜くことによって行うことができる。
図3(b)に記載の基板を用いる場合、流路33への反応液の持ち込みは、例えば、送液口33aから反応液を注入し、排液口33bから空気を抜くことによって行うことができる。
図3(c)に記載の基板を用いる場合、流路43への反応液の持ち込みは、例えば、送液口43aから反応液を注入し、排液口43bから空気を抜くことによって行うことができる。
【0051】
反応液の成分はそれぞれ、反応場を形成している反応液に含まれていればよい。従って、例えば、反応液の成分はそれぞれ、反応液が基板上に持ち込まれる前に反応液に含まれていてもよい。或いは、反応液の成分のそれぞれは、反応液の他の成分とは別々に用意され、反応液が基板上に持ち込まれると同時に、又は持ち込まれる前若しくは後に反応液中に持ち込まれてもよい。或いは、反応液の成分は基板上に反応液が持ち込まれる前に基板の反応場に接する面などの固相などに遊離可能に固定されていて、反応液が持ち込まれた際に反応液中に遊離して持ち込まれてもよい。
【0052】
工程(S3)において、反応場を等温増幅条件に維持する。
【0053】
等温増幅条件は、例えば、使用される等温増幅方法の種類、プライマーセットの種類、標的核酸の種類及び/又は増幅酵素の種類などに基づいて選択される。反応場を等温増幅条件に維持するとは、例えば、反応場の温度を25℃~70℃に維持することである。温度を55℃~65℃に維持することがより好ましい。等温増幅条件は、例えば、LAMP反応条件であることが好ましい。反応場を等温増幅反応条件下に維持することによって、試料中に標的核酸が存在する場合、増幅反応が起こり、その第1の配列が増幅され、増幅産物が生成される。
【0054】
増幅産物は、基板の検出領域が配置されている面上の、標的核酸が存在する位置において生成し、増加しその付近に留まる。例えば、1つの標的核酸分子から増幅した増幅産物は、当該標的核酸が当初存在していた位置から0.001~1mmの範囲内に留まる。反対に、前記面上の標的核酸が存在する位置又はその付近以外の位置には、増幅産物はほとんど存在しない。
【0055】
工程(S4)において、検出信号を複数の検出領域のそれぞれで検出する。
【0056】
検出信号は、増幅産物の増加に伴って変化する検出すべき信号である。そのような信号は、詳しくは後述するが、例えば、反応場に存在する標識物質から生じる電気的信号又は光学的信号、或いは反応液の濁度と相関する信号などである。
【0057】
上記検出信号を検出領域で検出する。検出は、検出領域に備えられた検出信号を検出できる上記センサによって行われてもよい。或いは、検出信号は、基板とは別体のセンサなどによって、検出領域から検出されてもよい。検出信号は、基板上に設けられた全ての検出領域において検出される。
【0058】
検出は、例えば、増幅反応のエンドポイントにおいて行われる。或いは、検出は経時的に行われてもよい。経時的とは、連続的であってもよいし、間欠的、即ち所望の時間間隔で複数の時点で検出することであってもよい。例えば、連続的な検出は、検出信号のモニタリングであってもよい。それによって、検出信号の立ち上がり時間を検出してもよい。
【0059】
工程(S5)において、複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断する。
【0060】
工程(S4)の検出を増幅反応のエンドポイントにおいて行った場合、基板上の、増幅産物が生成しかつ増加した位置に配置されている検出領域からの検出信号は、増幅反応前の検出信号又は標的核酸が付近に存在しない検出領域からの検出信号と比較して、増加又は減少する。従って、検出信号が増幅前若しくは他の検出領域と比較して増加又は減少した検出領域を「その付近に増幅産物が存在する(陽性)」と判断することができる。反対に、そうでない検出領域を「その付近に増幅産物が存在しない(陰性)」と判断することができる。
【0061】
「付近」とは、センサなどの用いられる検出手段によって増幅産物の存在を検出できる範囲内をいう。増幅産物の存在を検出できる範囲の一例を
図4(a)及び(b)に示す。
図4(a)は、
図2(b)の囲いBを拡大した平面図である。
図4(b)は、
図4(a)のB’-B’に沿って切断した断面図である。増幅産物の存在を検出できる範囲Rは、流路13内の反応場内の領域である。当該領域は、検出領域15の縁からの距離が、特定の値である領域であり、略半球型である。当該距離は検出手段に依存して変化するが、例えば、0~10mmである。
【0062】
前記判断に基づいて、1つの反応場における陽性及び陰性の検出領域の数を得ることができる。
【0063】
工程(S4)の検出を経時的に行った場合、基板上の、増幅産物が生成しかつ増加した位置に配置されている検出領域からの検出信号は、検出信号の大きさが予め定められた閾値を超えるまでに要する時間、即ち、立ち上がり時間が、標的核酸が付近に存在しない検出領域からの検出信号と比較して短い。従って、他の検出領域と比較してより短い時間で検出信号の増加の立ち上がりが観察された検出領域を「その付近に増幅産物が存在する(陽性)」、そうでない検出領域を「その付近に増幅産物が存在しない(陰性)」と判断することができる。それに基づいて、1つの反応場における陽性及び陰性の検出領域の数を計測することができる。
【0064】
工程(S6)において、工程(S5)によって得られた陽性の検出領域の数及び/又は複数の検出領域における検出信号の立ち上がり時間から標的核酸を検出又は定量する。
【0065】
例えば、陽性の検出領域の数が0であった場合、試料中に標的核酸が存在しないと判断される。
【0066】
陽性の検出領域と陰性の検出領域の両方が存在する場合、陽性の検出領域の数から、試料中の標的核酸の存在量を算出することができる。算出は、例えば、統計学的方法によって行うことができる。統計学的方法として、例えば、最確数(Most Probable Number(MPN))法を用いることができる。
【0067】
最確数法とは、試料中の標的核酸の存在量の最尤推定値(最確数:MPN)を以下の式1で得る方法である。
【0068】
MPN=(Σgi)/(ΣtjmjΣ(tj-gj)mj)1/2・・・・・・式1
式中、Σgiは陽性の数の和である。
【0069】
Σtjmjは(検出領域数×希釈率)の和である。
【0070】
Σ(tj-gj)mjは(陰性数×希釈率)の和である。
【0071】
反応液を希釈しない場合、最確数(MPN)は以下の式2で得ることができる。
【0072】
MPN=1/m×2.303×log((検出領域数)/(陰性数))・・・・・・式2
式中、mは1検出領域当たりの反応体積である。
【0073】
1検出領域当たりの反応体積は、例えば、濃度既知の標準試料核酸を、使用する基板上で増幅し、検出信号を検出することによって得られる陽性数と、標準試料核酸の濃度と、基板の検出領域数とを式2に当てはめ、mを算出することによって得られる。この方法によって、例えば、試料中に含まれる1~104コピー/mLの標的核酸を検出することが可能である。
【0074】
或いは、試料中に標的核酸が多く存在する場合、全ての検出領域付近に標的核酸が存在し、陽性と判断される可能性がある。その場合は、試料中に存在する標的核酸の存在量が多いほど、全ての検出領域においてより短い時間で検出信号の増加の立ち上がりが観察される。その場合は、例えば、以下のようにして標的核酸を検出又は定量することができる。核酸の存在量が既知である異なる複数の標準試料核酸を用いて、核酸の存在量に対する検出信号の立ち上がり時間の検量線を作成し、この検量線と、標的核酸における立ち上がり時間の測定結果とを比較する。それによって、試料中の標的核酸の存在量を算出することができる。この方法によって、例えば、試料中に含まれる104~109コピー/mLの標的核酸を検出することが可能である。
【0075】
以上に説明した工程(S6)によって試料中の標的核酸を検出又は定量することができる。
【0076】
以上に説明した核酸検出定量方法によれば、試料を希釈したり反応液を分割したりする必要が無く、1つの連続した領域に基板上に反応液を持ち込む、即ち、1つの反応場を形成するという単純な工程によって、標的核酸をより精度よく検出することができる。例えば、実施形態の方法によれば、試料中に含まれる1~109コピー/mLの標的核酸を検出することが可能である。
【0077】
このことは、増幅方法が等温増幅であるために実現する。即ち、温度変化を伴うPCR法などの増幅方法を用いると、反応中に反応液の対流が発生し、それに伴って増幅産物の拡散が生じるため、生成した増幅産物がもともと標的核酸が存在しない検出領域の位置にまで移動する可能性がある。そのために、所定の検出領域付近に存在する増幅産物の有無及び/又は量を正確に検出することができない。しかしながら、実施形態の方法は等温増幅を用いるため、生成した増幅産物が移動せず、もともと標的核酸が存在した位置に留まる。従って、標的核酸が存在する検出領域を正確に識別することができ、かつ増幅産物の存在量が正確に検出信号に反映される。そのため、正確な標的核酸の定量及び検出が可能である。
【0078】
例えば、上記の何れかのような流路を備える基板を用いれば、反応液の移動が更に起こりづらいため、更に精度よく標的核酸を定量及び検出することができる。
【0079】
また、実施形態の核酸検出定量方法においては、予め定められた位置に存在する複数の検出領域を備える基板上で増幅反応を行い、検出領域の全てから検出信号を得る。そのために、標的核酸が反応場のどの位置に存在しているかに関わらず、反応場全体に亘る情報が偏りなく得られる。従って、標的核酸が存在する位置をより正確に推定することが可能である。その結果、標的核酸のより精度の高い検出及び定量が可能である。例えば、複数の対象から得られた試料の標的核酸の検出又は定量行う場合であっても、それぞれ実施形態の核酸検出定量方法に従って同じ構成の基板を用いて行えば、試料に関わらず同じ精度の結果が得られる。そのため、より信頼度の高い検出及び定量が可能である。試料毎に得られた結果を比較する場合も、より信頼度の高い比較結果が得られる。
【0080】
以上に説明した核酸検出定量方法の、検出信号として電気的信号、光学的信号又は濁度に相関する信号を用いる例を以下に詳細に説明する。
【0081】
・電気的信号を用いる核酸検出定量方法
電気的信号を用いる核酸検出定量方法の概略フローを
図5に示す。
【0082】
当該核酸検出定量方法は、電極を備える複数の検出領域が配置された基板を用意すること(S101)、基板上に、試料と、第1の配列を等温増幅し増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅酵素と、増幅産物の増加に伴って変化する電気的信号を生じる第1の標識物質とを含む反応液を存在させて、1つの反応場を形成すること(S102)、反応場を等温増幅条件に維持すること(S103)、電極のそれぞれで電気的信号を検出すること(S104)、前記検出の結果に基づいて、複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断すること(S105)及び陽性の検出領域の数及び/又は複数の検出領域おける電気的信号の立ち上がり時間から標的核酸を検出又は定量すること(S106)を含む。
【0083】
工程(S101)において、電極を備える複数の検出領域が配置された基板を用意する。
【0084】
基板として、例えば、複数の検出領域に対応して電極を備える
図2、
図3に示した何れかの基板を用いることができる。電極は、例えば、基板上の検出領域それぞれにドット状などの所望の形状の金属パターンを形成することによって得ることができる。金属パターンの形成は、例えば、フォトリソグラフィー法を用いて行うことができる。その場合、より多くの電極を基板上に形成することができるため、好ましい。金属は、例えば金であることが感度が良好であるため好ましい。
【0085】
検出領域、即ち、電極は、例えば、1つの基板につき2個以上形成されることが好ましい。10個以上である場合、精度が向上するため、より好ましい。
【0086】
各電極はそれぞれ、反応場に存在する第1の標識物質からの電気的信号を検出できるように配置されている。即ち、各電極は、基板上に反応液が持ち込まれて反応場が形成された際、各電極の少なくとも一部が反応液に接触するように配置されている。
【0087】
上記各基板は、更にパットを備えていてもよい。パットは、電極と電気的に接続されており、そこから電極で得られた電気的信号に関する情報を取り出すことができる。また、基板は、更に参照電極及び対極を備えていてもよい。
【0088】
工程(S102)において、基板の複数の検出領域が存在する面上に反応液を存在させて反応場を形成する。
【0089】
反応液は、試料、プライマーセット、増幅酵素及び第1の標識物質を含む。試料、プライマーセット、増幅酵素は、上述した何れかのものを用いることができる。
【0090】
第1の標識物質は、増幅産物の増加に伴って電気的信号を生じる物質である。例えば、第1の標識物質は、その酸化還元電位が電気的信号となり得る酸化剤などである。
【0091】
第1の標識物質は、例えば、フェリシアン化物イオン、フェロシアン化物イオン、鉄錯イオン、ルテニウム錯イオン、コバルト錯イオンなどである。これらの標識物質は、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、鉄錯体、ルテニウム錯体、コバルト錯体を反応液に溶解することにより得られる。それらの反応液中の濃度は、例えば、10μM~100mMであってもよく、また例えば約1mMであってもよい。
【0092】
例えば、第1の標識物質としてフェリシアン化物イオン(Fe(CN)6
4-)を用いた場合には、Fe(CN)6
4-がFe(CN)6
3-になる酸化反応により電子が放出される。これらは、負の電荷を有する増幅産物と反発して増幅産物から遠ざかるため、付近に増幅産物が存在する電極においては、増幅産物の増加に伴って、検出される電流(電気的信号)が減少する。
【0093】
第1の標識物質は、他の標識物質と組み合わせて用いてもよい。反応場において負又は正の電荷を有する電気化学的に活性な物質と、例えば、フェロセンで標識した核酸プローブとを組み合わせて用いると、フェロセンがメディエーターとして働き、電気的信号を増幅するので、感度がより向上する。
【0094】
或いは、第1の標識物質はレドックスプローブであってもよい。レドックスプローブは、例えば、-0.5V~0.5Vの酸化還元電位を有する物質であり、反応液中で増幅産物と静電気的に結合する。電極に電圧をかけることによって、増幅産物と結合したレドックスプローブが酸化又は還元され、その反応によって電子が放出される。そのため、例えば、増幅産物が存在する位置に配置されている電極においては、増幅産物の増加に伴って検出される電流(電気的信号)が増加するか、或いは検出される酸化還元電位のピーク電位が負方向へシフトする。
【0095】
付近に増幅産物が存在する電極において、増幅産物の増加に伴って検出される電流(電気的信号)が増加するのか、又は検出される酸化還元電位のピーク電位が負方向へシフトするのかは、例えば、反応液中のマグネシウム濃度を変化させることによって調節することができる。例えば、マグネシウム濃度が4mM~30mMである場合、増幅産物の増加に伴って、検出される電流が増加し得る。或いは、増幅産物の増加に伴って、検出される酸化還元電位のピーク電位が負方向へシフトし得る。従って、電気信号に加えて更に酸化還元電位のピーク電位を検出することによって、より精度の高い測定を行うことも可能である。
【0096】
レドックスプローブは、例えば、金属錯体である。レドックスプローブとして使用される金属錯体において、中心金属は、例えば、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、オスミウム(Os)、鉄(Fe)又は銀(Ag)などである。当該金属錯体は、例えば、アンミン錯体、シアノ錯体、ハロゲン錯体、ヒドロキシ錯体、シクロペンタジエニル錯体、フェナントロリン錯体及びビピリジン錯体などである。また、メチレンブルー、ナイルブルー、クリスタルバイオレット等のレドックスプローブも使用することができる。
【0097】
例えば、第1の標識物質は、ルテニウムヘキサンアミン(RuHex)である。その場合、増幅産物が存在する場合、増幅産物と結合したRuHex3+が電極に電圧をかけることによって、RuHex2+に還元され、電子が放出される。この電子が電極に流れることによって、増幅産物を検出することがきできる。
【0098】
レドックスプローブの反応液中の濃度は、例えば、0.1μM~100mMであるが、25μM~3mMが好ましく、更に1mMであれば、核酸検出の感度が高まるためより好ましい。少なすぎると増幅産物との結合が十分ではなく、感度が低下するおそれがあり、また多すぎると増幅反応を阻害する。特に第1の標識物質がルテニウムヘキサンアミン(RuHex)である場合、RuHexは、反応液中に25μM以上3mM以下含まれることが望ましい。
【0099】
反応液は、上述したように第1の標識物質の種類又は検出信号の種類などに基づいて選択される所望の濃度でマグネシウムを含んでいてもよい。反応液は、更に、塩、プライマーを起点とし新たなポリヌクレオチド鎖を形成する際に必要なデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)などの基質、反応試薬としての増粘剤、pH調製用緩衝材、界面活性剤、アニーリング特異性を増大するイオン、及び/又は増幅酵素の補因子となるイオンを含んでいてもよい。逆転写を同時に行う場合には、反応液は、逆転写酵素及びそれに必要な基質などの増幅反応に必要な所望の成分を含んでいてもよい。
【0100】
以上に説明した反応液を、基板上の検出領域が配置された面上に存在させ、1つの反応場を形成する。反応場の形成は、上記の何れかの方法と同様の方法によって行うことができる。
【0101】
工程(S103)において、反応場を等温増幅条件に維持する。この工程は、例えば、前記工程(S3)と同様の方法で行うことができる。
【0102】
工程(S104)において、複数の検出領域において電極によって電気的信号を検出する。
【0103】
電気的信号は、第1の標識物質から得られるものである。電気的信号は、例えば、電流値、電位値、電気容量値又はインピーダンス値などである。それらの信号を複数の検出領域に設けられた各電極によって検出する。例えば、電流値及び電位値等、複数種の電気的信号を測定しても良い。検出は、例えば、前記工程(S4)で説明した方法と同様に行ってよく、反応のエンドポイントで行ってもよいし、経時的に行ってもよい。
【0104】
工程(S105)において、前記検出の結果に基づいて、複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断する。この工程は、例えば、前記工程(S5)と同様の方法で行うことができる。この実施形態において、「付近」は、例えば、複数の検出領域に備えられた電極の縁からの距離が0~10mmの範囲の反応場内の領域である。
【0105】
工程(S106)において、陽性の検出領域の数及び/又は電気的信号の立ち上がり時間から標的核酸を定量する。この工程は、例えば、上記工程(S6)と同じ方法によって行うことができる。
【0106】
以上に説明した方法によれば、標的核酸を簡便かつ高感度に定量することができる。
【0107】
電気的信号を用いる核酸検出定量方法を用いる別の実施形態において、電極の代わりに、電気化学的センサを用いてもよい。電気化学的センサは、上記第1の標識物質からの電気的信号を検出することができる公知の電気化学的センサであればよい。
【0108】
・光学的信号を用いる核酸検出定量方法
光学的信号を用いる核酸検出定量方法の概略フローを
図6に示す。
【0109】
当該核酸検出定量方法は、光学センサを備える複数の検出領域が配置された基板を用意すること(S201)、基板上に、試料と、第1の配列を等温増幅し増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅酵素と、増幅産物の増加に伴って変化する光学的信号を生じる第2の標識物質とを含む反応液を存在させて、1つの反応場を形成すること(S202)、反応場を等温増幅条件に維持すること(S203)、光学センサのそれぞれで光学的信号を検出すること(S204)、前記検出の結果に基づいて、複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断すること(S205)及び陽性の検出領域の数及び/又は複数の検出領域における光学的信号の立ち上がり時間から標的核酸を検出又は定量すること(S206)を含む。
【0110】
工程(S201)において、光学センサを備える複数の検出領域が配置された基板を用意する。
【0111】
基板として、例えば、複数の検出領域に対応して光学センサを備える
図2、
図3に示した何れかの基板を用いることができる。光学センサは、反応場に存在する第2の標識物質からの光学的信号を検出できるように配置されている。光学センサは、蛍光又は発光などを検出できる公知の何れかのセンサであればよい。例えば、光学センサは、蛍光又は発光などの光学的信号を検出し、電気的信号に変換する素子などである。
【0112】
或いは、基板として、例えば、複数の検出領域のそれぞれが光透過性の材料で構成されている
図2、
図3に示した何れかの基板を用いることができる。光透過性の材料は、例えば、樹脂などである。この場合、例えば、基板と別体の光学センサなどで信号を検出することができる。或いは、このような複数の検出領域全ての画像を取得し、当該画像の検出領域に相当する領域の色及び/又は明度などを解析することによって各検出領域の光学的信号を取得してもよい。
【0113】
工程(S202)において、反応液によって基板上に反応場を形成する。
【0114】
反応液は、試料、プライマーセット、増幅酵素及び第2の標識物質を含む。
【0115】
試料、プライマーセット及び増幅酵素は上述した何れかのものを用いればよい。
【0116】
第2の標識物質は、増幅産物の増加に伴って光学的信号を生じる物質である。光学的信号は、例えば、特定の波長を有する光、例えば、蛍光又は発光などである。例えば、第2の標識物質は、予め蛍光を生じている物質であり、増幅産物と結合して、その検出領域における蛍光値が増大する物質であり得る。第2の標識物質として、例えば、SYBRGreen、EvaGreen、SYTO、Berberine、Calcein又はHNBなどを使用することができる。このような標識物質は、反応液中に0.001μM以上10mM以下の濃度で含まれることが好ましい。
【0117】
反応液は、これらの成分に加えて、更に、マグネシウム、塩、プライマーを起点とし新たなポリヌクレオチド鎖を形成する際に必要なデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)などの基質、反応試薬としての増粘剤、pH調製用緩衝材、界面活性剤、アニーリング特異性を増大するイオン、及び/又は増幅酵素の補因子となるイオンを含んでいてもよい。逆転写を同時に行う場合には、反応液は、逆転写酵素及びそれに必要な基質などの増幅反応に必要な所望の成分を含んでいてもよい。
【0118】
以上に説明した反応液を、基板上の検出領域が配置された面上に存在させ、1つの反応場を形成する。反応場の形成は、上述した何れかの方法によって行うことができる。
【0119】
工程(S203)において、反応場を等温増幅条件に維持する。この工程は、例えば、前記工程(S3)と同様の方法で行うことができる。
【0120】
工程(S204)において、複数の検出領域において光学センサによって光学的信号を検出する。光学的信号は、第2の標識物質から生じる上述の光学的信号である。検出は、例えば、前記工程(S4)で説明した方法と同様に行ってよく、反応のエンドポイントで行ってもよいし、経時的に行ってもよい。
【0121】
工程(S205)において、前記検出の結果に基づいて、複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断する。この工程は、例えば、前記工程(S5)と同様の方法で行うことができる。この実施形態において、「付近」は、例えば、複数の検出領域の縁からの距離が0~10mmの範囲の反応場内の領域である。
【0122】
工程(S206)において、陽性の検出領域の数及び/又は光学的信号の立ち上がり時間から標的核酸を定量する。この工程は、例えば、上記工程(S6)と同じ方法によって行うことができる。
【0123】
以上に説明した方法によれば、標的核酸を簡便かつ高感度に定量することができる。
【0124】
・濁度と相関する信号を用いる核酸検出定量方法
検出信号として濁度と相関する信号を用いる核酸検出定量方法の概略フローを
図7に示す。
【0125】
当該核酸検出定量方法は、濁度センサを備える複数の検出領域が配置された基板を用意すること(S301)、基板上に、試料と、第1の配列を等温増幅し増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅酵素とを含む反応液を存在させて、1つの反応場を形成すること(S302)、反応場を等温増幅条件に維持すること(S303)、濁度センサのそれぞれで濁度と相関する信号を検出すること(S304)、前記検出の結果に基づいて、複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断すること(S305)及び陽性の検出領域の数及び/又は複数の検出領域における濁度と相関する信号の立ち上がり時間から標的核酸を検出又は定量すること(S306)を含む。
【0126】
工程(S301)において、濁度センサを備える複数の検出領域が配置された基板を用意する。
【0127】
基板として、例えば、複数の検出領域のそれぞれに濁度センサを備える
図2、
図3に示した何れかの基板を用いることができる。濁度センサは濁度と相関する信号を検出できる公知の何れかのセンサであればよい。濁度と相関する信号とは、反応液の濁度と相関があり、濁度を推定することのできる信号であり、例えば、反応液の色、反応液に光を当てた際の透過光強度又は散乱光強度などである。例えば、濁度センサは、濁度に相関する信号を検出し、電気的信号に変換する素子などである。濁度センサは、当該信号を検出できるように配置されている。
【0128】
基板として、例えば、複数の検出領域のそれぞれが光透過性の材料で構成されている
図2、
図3に示した何れかの基板を用いることができる。光透過性の材料は、例えば、樹脂などである。この場合、例えば、基板と別体の濁度センサなどによって濁度と相関する信号を検出することができる。或いは、このような複数の検出領域の画像を取得し、当該画像の検出領域に相当する領域の色及び/又は明度などを解析することによって各検出領域の濁度に相関する信号を取得してもよい。
【0129】
工程(S302)において、反応液によって基板上に反応場を形成する。
【0130】
反応液は、試料、プライマーセット及び増幅酵素を含む。
【0131】
試料、プライマーセット及び増幅酵素は上述した何れかのものを用いればよい。
【0132】
反応液は、これらの成分に加えて、更に、マグネシウム、塩、プライマーを起点とし新たなポリヌクレオチド鎖を形成する際に必要なデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)などの基質、反応試薬としての増粘剤、pH調製用緩衝材、界面活性剤、アニーリング特異性を増大するイオン、及び/又は増幅酵素の補因子となるイオンを含んでいてもよい。逆転写を同時に行う場合には、反応液は、逆転写酵素及びそれに必要な基質などの増幅反応に必要な所望の成分を含んでいてもよい。
【0133】
以上に説明した反応液を、基板上の検出領域が配置された面上に存在させ、1つの反応場を形成する。反応場の形成方法は、上述した何れかの方法によって行うことができる。
【0134】
工程(S303)において、反応場を等温増幅条件に維持する。この工程は、例えば、前記工程(S3)と同様の方法で行うことができる。
【0135】
工程(S304)において、複数の検出領域において濁度センサによって濁度と相関する信号を検出する。濁度と相関する信号の検出は、例えば、前記工程(S4)で説明した方法と同様に行ってよく、反応のエンドポイントで行ってもよいし、経時的に行ってもよい。
【0136】
工程(S305)において、前記検出の結果に基づいて、複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断する。この工程は、例えば、前記工程(S5)と同様の方法で行うことができる。この実施形態において、「付近」は、例えば、複数の検出領域の縁からの距離が0~10mmの範囲の反応場内の領域である。
【0137】
工程(S306)において、陽性の検出領域の数及び/又は濁度と相関する信号の立ち上がり時間から標的核酸を定量する。この工程は、例えば、上記工程(S6)と同じ方法によって行うことができる。
【0138】
以上に説明した方法によれば、標的核酸を簡便かつ高感度に定量することができる。
【0139】
・チップ
更なる実施形態によれば、試料中の標的核酸を定量及び検出するためのチップが提供される。チップは、基板と、基板の一方の面上の1つの空間に配置されている複数の検出領域とを有する。隣り合う2つの検出領域の距離、即ち、隣り合う2つの検出領域の一方の検出領域の端から他方の検出領域の端の最近接の間隔は、0.1mm以上10mm以下である。前記間隔は、1mm以上10mm以下であればより検出精度が向上するため好ましい。
【0140】
チップは、基板上に、試料と、第1の配列を等温増幅し増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅酵素とを含む反応液を存在させて1つの反応場を形成し、反応場で増幅反応を起こし、増幅産物の増加に伴って変化する検出信号を複数の検出領域のそれぞれで検出し、検出の結果に基づいて複数の検出領域それぞれについて、その付近に増幅産物が存在する(陽性)か、増幅産物が存在しない(陰性)かを判断し、陽性の検出領域の数及び/又は複数の検出領域における検出信号の立ち上がり時間から標的核酸を検出又は定量するためのチップである。
【0141】
チップは、例えば、隣り合う2つの検出領域の距離が0.1mm以上10mm以下である上述の何れかの複数の検出領域が配置された基板である。例えば、このような基板は、
図2又は
図3に示す基板1、11、21、31、41である。チップは、基板の検出領域が配置された面を覆う被覆体を更に備えていてもよい。
【0142】
以上に説明したチップによれば、試料を希釈したり反応液を分割したりする必要が無く、1つの連続した領域に基板上に反応液を持ち込むという単純な工程によって、標的核酸をより精度よく検出することができる。例えば、実施形態のチップによれば、試料中に含まれる1~109コピー/mLの標的核酸を検出することが可能である。
【0143】
・アッセイキット
更なる実施形態によれば、試料中の標的核酸を定量及び検出するためのアッセイキットが提供される。アッセイキットは、上記の何れかのチップと、第1の配列を等温増幅し増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅試薬とを含む。
【0144】
プライマーセットとして、例えば、上記の何れかのプライマーセットを用いることができる。増幅試薬は、例えば、増幅酵素、塩、デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)などの基質、増粘剤、pH調製用緩衝材、界面活性剤、アニーリング特異性を増大するイオン、及び/又は増幅酵素の補因子となるイオン、逆転写酵素又はこれらの何れかの組み合わせなどを含む。これらの増幅試薬の成分として、それぞれ上述した何れかのものを用いることができる。
【0145】
アッセイキットは、上記第1の標識物質及び/又は第2の標識物質を更に含んでいてもよい。
【0146】
以上に説明したアッセイキットによれば、試料を希釈したり反応液を分割したりする必要が無く、1つの連続した領域に基板上に反応液を持ち込むという単純な工程によって、標的核酸をより精度よく検出することができる。例えば、実施形態のアッセイキットによれば、試料中に含まれる1~109コピー/mLの標的核酸を検出することが可能である。
【0147】
・核酸検出定量装置
核酸検出定量装置の一例を
図8に示す。
図8は、核酸検出定量装置50の一例を示すブロック図である。核酸検出定量装置50は、第1のメモリ60、プロセッサ70、第2のメモリ80、出力部90、及び測定ユニット100などを備える。第1のメモリ60、プロセッサ70、第2のメモリ80、出力部90、及び測定ユニット100は、バス110を介して電気的に接続されている。
【0148】
第1のメモリ60は、例えばハードディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどにより構成され、第2のメモリ80とともに記憶領域を構成する。
【0149】
第1のメモリ60は、各種ソフトウェア又はデータを格納する。各種ソフトウェアは、オペレーティングシステム(OS)、データ管理プログラム、及び各種アプリケーションプログラム等を含む。第1のメモリ60は、プログラムPを格納する。
【0150】
プロセッサ70は、前記各種ソフトウェア(プログラム)を実行し、核酸検出定量装置50全体を制御する。プロセッサ70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などである。
【0151】
プロセッサ70は、例えば、第1のメモリ60に格納され、又は、第1のメモリ60から第2のメモリ80に読み出されたプログラムPを実行することにより、例えば、測定制御部71又は核酸定量部72として機能する。
【0152】
測定制御部71は、測定ユニット100に含まれる装置(例えば、後述するチップ101、測定装置102、送液装置103、温度制御装置104など)を制御し、測定ユニット100より得られた測定データDを第1のメモリ60に格納する制御手段である。
【0153】
核酸定量部72は、第1のメモリ60に格納された測定データDに基づいて、試料中の標的核酸を定量する定量手段である。また、核酸定量部72は、試料中の標的核酸の定量結果を示す定量データRを第1のメモリ60に格納する。
【0154】
出力制御部73は、第1のメモリ60に格納された定量データRを、出力部90へ送信する。なお、出力制御部73は、測定制御部71及び/又は核酸定量部72に含まれていてもよい。
【0155】
測定データD及び/又は定量データRは、第2のメモリ80に格納されてもよい。
【0156】
メインメモリとしての第2のメモリ80は、例えばRAM(Random Access Memory)により構成され、ワークエリアなどとして使用される。ワークエリアは、プロセッサ70が各種ソフトウェアを実行する際に使用される。
【0157】
出力部90は、出力制御部73の制御により、定量データRを出力する。出力部90は、例えばディスプレイ又はプリンタなどであってもよい。
【0158】
第1のメモリ60は、複数に分割されていてもよい。第2のメモリ80は、複数に分割されていてもよい。又は、第1のメモリ60と第2のメモリ80とを1つのメモリとしてもよい。第1のメモリ60、プロセッサ70、第2のメモリ80、出力部90、バス110は、情報処理装置に備えられているとしてもよい。
【0159】
測定ユニット100は、チップ101と、測定装置102と、送液装置103と、温度制御装置104とを含む。
【0160】
チップ101は、核酸検出定量装置50に対して着脱可能に配置される。チップ101は、基板1(
図2(a)参照)と、基板1上に固定された図示しない被覆体とを備える。基板1は、1つの面上に、例えばセンサ4(
図2(a)参照)を備える複数の検出領域を備える。センサ4は、例えば、核酸の検出に電気的信号を用いる場合は電極であり、光学的信号を用いる場合は光学センサであり、濁度に相関する信号を用いる場合は濁度センサである。
【0161】
なお、以下では、測定ユニット100のチップ101には基板1及びセンサ4が含まれるとして説明する。しかしながら、
図2(b)、
図3(a)~(c)に示すように、センサ4を備える基板1に代えてセンサ16,26,36,46をそれぞれ備える基板11,21,31,41などが用いられてもよい。
【0162】
基板1と、被覆体とで形成された空間に反応液を持ち込むことによって反応場が形成され、この反応場において所望の増幅反応が行われる。増幅反応は、例えば上記の等温増幅反応などである。被覆体上面には、反応液を持ち込むための送入口と、空気を抜く及び/又は反応液を排出するための排出口とが設けられている。
【0163】
測定装置102は、チップ101に含まれるセンサ4と電気的に接続されており、センサ4により送信される検出信号を受信する測定手段である。センサ4が電極である場合、測定装置102は、センサ4により送信される検出信号を受信するために、このセンサ4の電極に電圧を印加することができる。測定装置102は、測定制御部71の制御により、受信した検出信号に基づいて測定データDを生成する。測定データDには、例えば、センサ4において得られた検出信号の有無、強度及び/又は検出時間などのデジタル値などが含まれる。
【0164】
送液装置103は、チップ101への反応液の送り及び/又は出しを行う送液手段である。送液装置103は、例えば、チップ101とのインタフェース103a、及び反応液などの液体が収容される容器103bを備える。送液装置103は、測定制御部71の制御により必要に応じて、容器103b内の液体をインタフェース103aを介してチップ101内に送る。
【0165】
なお、核酸検出定量装置50は、送液装置103を備えなくともよい。この場合、チップ101への反応液の送液及び排出は、チップ101が核酸検出定量装置50から取り外されている際に、核酸検出定量装置50と別体の送液装置によって行われてもよい。
【0166】
温度制御装置104は、測定制御部71の制御により、チップ101の温度制御を行う温度制御手段である。温度制御装置104は、例えばヒーター又はペルティエ素子などを備えていてもよい。
【0167】
なお、核酸検出定量装置50は、温度制御装置104を備えなくともよい。この場合、チップ101の温度制御は、核酸検出定量装置50と別体の温度制御装置によって行われてもよい。
【0168】
また、プロセッサ70、第1のメモリ60、第2のメモリ80、出力部90のうち少なくとも1つは、測定ユニット100に含まれていてもよい。この場合、プロセッサ70は、第1のメモリ60、第2のメモリ80、出力部90のうち少なくとも1つは、測定装置102に含まれることが好ましい。
【0169】
このような核酸検出定量装置50による核酸検出は、例えば
図9に示す手順により、以下のように行われ得る。
図9は、核酸検出定量装置50による核酸検出処理の一例を示すフローチャートである。
【0170】
実施者は、予めチップ101を挿入などにより測定ユニット100に装着しておく。また、送液装置103の容器103bには、予め反応液が充填されているものとする。その後、例えば実施者の操作により、核酸検出定量装置50による核酸検出定量処理が開始される。核酸検出定量処理において、測定制御部71は工程(S401)~(S404)の処理を実行し、核酸定量部72は工程(S405)の処理を実行し、出力制御部73は工程(S406)の処理を実行する。
【0171】
工程(S401)において、送液装置103は、測定制御部71の制御により、容器103bの反応液をチップ101の基板1の複数の検出領域が配置された面上に送る。
【0172】
工程(S402)において、温度制御装置104は、測定制御部71の制御により、反応場の温度を調節する。反応場が等温増幅条件に維持されると、反応場において等温増幅反応が開始される。
【0173】
工程(S403)において、測定装置102は、測定制御部71の制御により、センサ4より送信された検出信号を受信する。
【0174】
工程(S404)において、測定制御部71は、測定装置102が受信した検出信号より測定データDを生成し、得られた測定データDを第1のメモリ60に格納する。
【0175】
工程(S405)において、核酸定量部72は、第1のメモリ60より測定データDを読み出し、読み出した測定データDに基づいて、試料中の標的核酸を定量する。核酸定量部72の処理の詳細については、
図10において後述する。なお、測定データDは、第2のメモリ80に格納されてもよい。更に、核酸定量部72は、標的核酸の定量結果を示す定量データRを、第1のメモリ60に格納する。
【0176】
工程(S406)において、出力制御部73は、第1のメモリ60より定量データRを読み出し、出力部90を介して出力する。より具体的には、定量データRは、例えばディスプレイ又はプリンタなどに出力されてもよい。
【0177】
図10は、核酸定量部72の処理の一例を示すフローチャートである。
図10は、核酸定量部72により実行される
図9の工程(S405)の処理に対応する。
【0178】
核酸定量部72は、以下の工程(S501)~(S503)の処理を実行する。
【0179】
工程(S501)において、核酸定量部72に備えられた定量手段は、工程(S404)において第1のメモリ60又は第2のメモリ80に格納された測定データDを読み出す。
【0180】
工程(S502)において、核酸定量部72は、測定データDに含まれるデータ、すなわちセンサ4より受信した信号値の時間的な増減及び/又は立ち上がり時間などを検出することにより、検出領域ごとに増幅産物が付近に存在する(陽性)か、又は、増幅産物が付近に存在しない(陰性)かを判断する。
【0181】
工程(S503)において、核酸定量部72は、1つのチップ当たりの陽性及び陰性の検出領域の数を集計する。
【0182】
次に、核酸定量部72は、以下に示す3段階の工程(α)~(γ)において、陽性を示す検出領域の数に基づいて試料中の標的核酸の存在量を算出する。
【0183】
工程(α)において、核酸定量部72は、陽性を示す検出領域の数が0であると判断した場合(工程(S504))、試料中に標的核酸が存在しないと判断する(工程(S505))。
【0184】
工程(β)において、核酸定量部72は、陽性を示す検出領域と陰性を示す検出領域との両方が存在すると判断した場合(工程(S506))、陽性を示す検出領域の数から、例えば、上記の統計学的方法によって試料中の標的核酸の存在量を算出する(工程(S507))。
【0185】
工程(γ)において、核酸定量部72は、全ての検出領域が陽性を示すと判断した場合(工程(S508))、上述のように、標準試料核酸の存在量と信号の立ち上がり時間の予め設定された検量線とを比較し、試料中の標的核酸の存在量を算出する(工程(S509))。
【0186】
さらに、核酸定量部72は、工程(510)において、上記の工程(α)~(γ)により得られた標的核酸の定量結果を示す定量データRを、第1のメモリ60に格納する。
【0187】
実施形態に従う核酸検出定量装置は、従来よりも高い精度で簡便に標的核酸を検出又は定量することが可能である。また、当該核酸検出定量装置によれば、従来よりも短時間で標的核酸に関する検査を行うことが可能である。
【0188】
[例]
<例1>
アレイ状の電極を備える基板用いて、異なるコピー数の増幅産物を含む反応液における電流及び電位立ち上がり時間の経時的変化を調査した。
【0189】
・基板の作製
Pyrex(登録商標)(d=0.8mm)ガラス表面に、幅×高さ=1mm×1mmの流路を設け、基板を形成した。その後、流路の底部にレジストAZP4620のパターンをマスクとしてチタン(500nm)及び金(2000nm)の薄膜を選択的にエッチングした。それによって8個の金/チタン電極(φ=200μm)(作用極)を形成した。2つの作用極ごとにそれらに対応する参照電極と対極とを形成した。
【0190】
・反応液の調製
0コピー、10
2コピー、10
3コピー、10
4コピー、10
5コピー、10
6コピーのパルボウイルスの人工配列(1μL)(表1に配列番号1として示す)、表2に示すLAMPプライマーとしてのF3プライマー(配列番号2)、B3プライマー(配列番号3)、FIPプライマー(配列番号4)、BIPプライマー(配列番号5)及びLbプライマー(配列番号6)、RuHex(25μM)、KCl(60mM)、マグネシウムイオン(8mM)、アンモニウムイオン(10mM)、ベタイン(0.8M)、dNTPs(各1.4mM)並びにポリメラーゼ(GspSSD)(8unit)を含む反応液を調製した。
【表1】
【0191】
【0192】
・LAMP増幅反応
基板の電極を有する面上に反応液を持ち込み、反応液をそれぞれ67℃の等温で加温し、等温増幅反応を開始した。等温増幅反応と並行して、電気的信号をLSV法で測定した(掃引速度:0.5V/s)。反応開始から60分以内に、1nA/min以上の信号が検出された電極を有する検出領域を「陽性」とし、1nA/min未満の電極を有する検出領域を「陰性」とした。その結果を
図11に示す。
図11(a)は初期鋳型量と陽性率との関係、(b)は初期鋳型量と電流値の増加時間(立ち上がり時間)との関係を示す。
【0193】
初期鋳型量が103コピー以上である条件では、陽性率が100%であった。また、この条件においては、初期鋳型量と電流値の増加時間は直線的な関係にあり、相関係数(R2)は0.93、傾きは-2.2を示した。この結果から、初期鋳型量が103コピー以上である場合は、電流値から初期鋳型量が定量可能であることが示唆された。
【0194】
一方、初期鋳型量が102コピー以下である条件では、陰性の検出領域が存在し、陽性率は102コピーで88%、101コピーで25%であった。この結果から、103コピー未満である場合は、陽性率から初期鋳型量が定量可能であることが示唆された。
【0195】
<例2>
例1の結果を用いて、例1の基板を用いて試料中の103コピー未満の標的核酸を定量する場合に、陽性率から標的核酸の濃度を推定するための算定表を作成した。
【0196】
・1電極当たりの反応体積の算出
陽性率から標的核酸の濃度を推定するのに、以下の式を用いて最確数(標的核酸の推定存在量:MPN)を推定する最確数法を利用した。
【0197】
MPN=1/m×2.303×log((検出領域数)/(陰性数))・・・式3
式中、mは、1電極当たりの反応体積(μL)である。
【0198】
最確数を算出するために必要なパラメータである反応体積を例1の結果から算出した。
【0199】
式3を変形すると、
m=2.303×log((電極の総数)(陰性の数))/MPN
である。例1の102コピー/50μL、即ち、2コピー/μLの結果からmを求めると、mは、1.03μLであった。例1の101コピー/50μL、即ち、0.2コピー/μLの結果からmを求めると、mは、1.44μLであった。この2つの値の平均をとり、m=1.2μLとして算定表に利用した。最確数の計算は、MPN Calculatorを使用して行った。
【0200】
また、電極を80個備える基板においても同様に実験し、算定表を作成した。
【0201】
【0202】
以上の実験から、実施形態の方法によれば、低濃度の標的核酸を検量線を作成せずに、陽性率から定量することができることが明らかとなった。また、電極数を増やすことによって、低濃度の標的核酸の定量の精度を大幅に向上できることが示された。また、試料を希釈しない場合、MPN法は低濃度の標的核酸の定量に適応可能であるが、中~高濃度(≧103コピー/500μL)の標的核酸については、予め検量線を作成しておくことで、信号の立ち上がり時間から定量することが可能であることが示された。
【0203】
<例3>
例1の基板を用いて最適な電極間距離について検討を行った。
【0204】
流路は、幅×高さ=1mm×1mmであることから、例2で算出された反応体積より、
電極は、電極の縁からの距離が約0.6mm以内である領域からの信号を検出できると考
えられた。集積度を上げるためには電極の間隔は短い方が望ましいが、短すぎると複数の
電極で1つの標的核酸から生成した増幅産物が検出される可能性がある。従って、隣り合
う電極の端から端までの距離は少なくとも1mm以上にする必要があることが明らかとな
った。
以下、本出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
試料中の、第1の配列を含む標的核酸を定量する方法であって、
複数の検出領域が配置された基板を用意すること、
前記基板上に、試料と、前記第1の配列を等温増幅し増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅酵素とを含む反応液を存在させて、1つの反応場を形成すること、
前記反応場を等温増幅条件に維持すること、
前記増幅産物の増加に伴って変化する検出信号を、前記複数の検出領域のそれぞれで検出すること、
前記検出の結果に基づいて、前記複数の検出領域それぞれについて、その付近に前記増幅産物が存在する(陽性)か、前記増幅産物が存在しない(陰性)かを判断すること、及び陽性の前記検出領域の数及び/又は前記複数の検出領域における前記検出信号の立ち上がり時間から前記標的核酸を検出又は定量すること
を含む方法。
[2]
前記等温増幅条件がLAMP反応条件である[1]に記載の方法。
[3]
前記基板が前記検出領域に対応して電極を備え、前記反応液が、更に前記増幅産物の増加に伴って変化する電気的信号を生じる第1の標識物質を含み、前記検出信号は前記第1の標識物質の酸化又は還元反応により得られる電気的信号である[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
前記第1の標識物質がルテニウムヘキサンアミンである[3]に記載の方法。
[5]
前記基板が前記検出領域に対応して光学センサを備え、前記反応液が、更に前記増幅産物の増加に伴って変化する光学的信号を生じる第2の標識物質を含み、前記検出信号は光学的信号である[1]又は[2]に記載の方法。
[6]
前記基板が前記検出領域に対応して濁度センサを備え、前記検出信号が反応液の濁度に相関する信号である[1]又は[2]に記載の方法。
[7]
隣り合う前記複数の検出領域の距離が、それぞれ1mm以上である[1]に記載の方法。
[8]
試料中の、第1の配列を含む標的核酸を定量又は検出するためのチップであって、
基板と、前記基板の一方の面上の1つの空間に配置されている複数の検出領域とを有し、隣り合う前記検出領域の距離が、1mm以上10mm以下であり、
前記基板上に、前記試料と、前記第1の配列を等温増幅し増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅酵素とを含む反応液を存在させて1つの反応場を形成し、前記反応場で増幅反応を起こし、前記増幅産物の増加に伴って変化する検出信号を前記複数の検出領域のそれぞれで検出し、前記検出の結果に基づいて前記複数の検出領域それぞれについて、その付近に前記増幅産物が存在する(陽性)か、前記増幅産物が存在しない(陰性)かを判断し、陽性の前記検出領域の数及び/又は前記複数の検出領域における前記検出信号の立ち上がり時間から前記標的核酸を検出又は定量するためのチップ。
[9]
[8]に記載のチップと、前記第1の配列を等温増幅し前記増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅試薬とを含むアッセイキット。
[10]
前記増幅産物の増加に伴って変化する電気的信号を生じる第1の標識物質及び/又は前記増幅産物の増加に伴って変化する光学的信号を生じる第2の標識物質を更に含む[9]に記載のアッセイキット。
[11]
複数の検出領域が配置された基板を有するチップの、前記検出領域からの検出信号を受信する測定手段と、
前記測定手段を制御し、前記検出信号より測定データを生成し、前記測定データをメモリに格納する制御手段と、
前記測定データに基づいて、試料中の標的核酸を定量する定量手段と
を備え、
前記定量手段は、
前記メモリに格納された前記測定データを読み出し、
読み出した前記測定データに基づいて前記複数の検出領域それぞれの付近に前記標的核酸が存在する陽性を示すか、又は前記標的核酸が存在しない陰性を示すかを判断し、
前記陽性を示す前記検出領域の数及び前記陰性を示す前記検出領域の数を集計し、
前記陽性を示す前記検出領域の数が0である場合に、前記試料中に前記標的核酸が存在しないと判断し、
前記陽性を示す前記検出領域と前記陰性を示す前記検出領域との両方が存在する場合に、前記陽性を示す前記検出領域の数から前記試料中の前記標的核酸の存在量を算出し、
全ての前記検出領域が前記陽性を示す場合に、前記信号の立ち上がり時間から前記試料中の前記標的核酸の存在量を算出する
核酸検出定量装置。
[12]
前記制御手段による制御により、容器に格納された液体を前記チップに送り及び/又は出しを行う送液手段をさらに備える[11]に記載の核酸検出定量装置。
[13]
前記制御手段による制御により、前記チップの温度を制御する温度制御手段をさらに備える[11]又は[12]に記載の核酸検出定量装置。
[14]
コンピュータを、
複数の検出領域が配置された基板を有するチップの前記複数の検出領域からの検出信号を受信する測定手段と、
前記測定手段を制御し、前記検出信号より測定データを生成し、前記測定データをメモリに格納する制御手段と、
前記測定データに基づいて、試料中の標的核酸を定量する定量手段と、
して機能させるためのプログラムであって、
前記定量手段は、
前記メモリに格納された前記測定データを読み出し、
読み出した前記測定データに基づいて前記複数の検出領域それぞれの付近に前記標的核酸が存在する陽性を示すか、又は前記標的核酸が存在しない陰性を示すかを判断し、
前記陽性を示す前記検出領域の数及び前記陰性を示す前記検出領域の数を集計し、
前記陽性を示す前記検出領域の数が0である場合に、前記試料中に前記標的核酸が存在しないと判断し、
前記陽性を示す前記検出領域と前記陰性を示す前記検出領域との両方が存在する場合に、前記陽性を示す前記検出領域の数から前記試料中の前記標的核酸の存在量を算出し、
全ての前記検出領域が前記陽性を示す場合に、前記信号の立ち上がり時間から前記試料中の前記標的核酸の存在量を算出する
プログラム。
さらに、以下、本出願に係る、2022年5月12日付の手続補正書に記載された発明を付記する。
[1]
試料中の、第1の配列を含む標的核酸を定量又は検出するためのチップであって、基板と、前記基板の一方の面上の1つの空間に配置されている複数の検出領域とを有し、前記検出領域上には核酸プローブが固定されていない、チップ。
[2]
前記標的核酸は、1種類の核酸である、[1]に記載のチップ。
[3]
前記面が前記検出領域ごとに分割されていない、[1]又は[2]に記載のチップ。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のチップと、前記第1の配列を等温増幅し前記増幅産物を得るためのプライマーセットと、増幅試薬とを含むアッセイキット。
[5]
前記増幅産物の増加に伴って変化する電気的信号を生じる第1の標識物質及び/又は前記増幅産物の増加に伴って変化する光学的信号を生じる第2の標識物質を更に含む[4]に記載のアッセイキット。
【符号の説明】
【0205】
1、11、21、31、41…基板
2…面
3、15、25、35、45…検出領域
4、16、26、36、46…センサ
60…メモリ
71…制御手段
72…定量手段
101…チップ
102…測定手段。
【配列表】