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特許7192048ライトシート顕微鏡法のための構成及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ライトシート顕微鏡法のための構成及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20221212BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/36
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021108602
(22)【出願日】2021-06-30
(62)【分割の表示】P 2017561681の分割
【原出願日】2016-05-25
(65)【公開番号】P2021165851
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】102015209756.0
(32)【優先日】2015-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506151659
【氏名又は名称】カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ジーベンモルゲン、イェルク
(72)【発明者】
【氏名】リッペルト、ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】カルクブレナー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クレッペ、インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォレシェンスキー、ラルフ
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0304723(US,A1)
【文献】特開2015-060202(JP,A)
【文献】特開2008-052177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0101210(US,A1)
【文献】特開2014-163961(JP,A)
【文献】特開2004-151263(JP,A)
【文献】特表2012-506060(JP,A)
【文献】特表2014-501915(JP,A)
【文献】特開2005-195582(JP,A)
【文献】Bravo-Zanoguera,M.E.,Laris,C.A.,Nguyen,L.K.,Oliva,M.& Price,J.H.,Dynamic autofocus for continuous-scanning time-delay-and-integration image acquisition in automated,Journal of Biomedical Optics,SPIE,2007年05月01日,12号,34011-1から34011-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/06-21/36
G02B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトシート顕微鏡法のための構成であって、
試料(1)を配置するための試料面(2.1)と、
光源及び照明光学ユニットを有する照明装置(3)であって、前記試料(1)の第1ストライプを照明し、前記試料(1)の第1ストライプ内で蛍光放射を励起するために、前記試料面(2.1)に対して非平行に延びる第1ライトシート(LB1)を生成するように構成されている前記照明装置(3)と、
前記蛍光放射を検出するためのセンサ(6)と、前記試料(1)の第1ストライプから前記センサ(6)の検出面内に前記蛍光放射を結像させるための結像光学ユニットと、前記第1ライトシートと70°~110°の角度範囲からの角度を形成する検出軸(9)と、を有する検出装置(4)と、を備える構成において、
前記照明装置(3)は、前記試料(1)の更なるストライプを照明し、前記試料(1)の更なるストライプ内で蛍光放射を励起するために、前記第1ライトシート(LB1)に対して平行に構成されるが、検出方向において、即ち前記検出軸に沿って且つ照明方向において前記第1ライトシート(LB1)に対して変位される少なくとも1つの更なるライトシート(LB2、LB3)を生成するように構成され、
前記検出装置(4)は、前記第1ライトシート(LB1)によって前記試料(1)の第1ストライプ内で励起された蛍光放射と、前記更なるライトシート(LB2、LB3)によって前記試料(1)の更なるストライプ内で励起された蛍光放射とを同時に検出するように構成され、
前記検出装置(4)は、前記第1ライトシート(LB1)に割り当てられる第1検出面と、前記更なるライトシート(LB2、LB3)に割り当てられる更なる検出面とを含み、前記検出装置(4)は、前記第1検出面による前記第1ライトシート(LB1)の第1焦点面及び前記更なる検出面による前記更なるライトシート(LB2、LB3)の更なる焦点面の同時合同カバレージのために構成され、
前記照明光学ユニットは、対物レンズ(28)を含み、
前記第1ライトシート(LB1)および前記更なるライトシート(LB2、LB3)は、前記照明光学ユニットの前記対物レンズ(28)からの異なる焦点距離を有し、
前記第1ライトシート(LB1)の第1焦点面は、前記検出方向において前記更なるライトシート(LB2、LB3)の更なる焦点面とずれており、
前記第1ライトシート(LB1)および前記更なるライトシート(LB2、LB3)は、同じ長さを有することを特徴とする構成。
【請求項2】
平行に構成されている、前記第1ライトシート(LB1)によって励起された前記蛍光放射及び前記更なるライトシート(LB2、LB3)によって励起された蛍光放射は、前記検出方向に相互に重畳されておらず、前記センサ(6)の別個のセンサ位置(SP1、SP2、SP3)は、それぞれの場合に、前記第1ライトシート(LB1)及び前記更なるライトシート(LB2、LB3)に割り当てられる、請求項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項3】
前記検出装置(4)は、スペクトル検出のための手段を含むこと、前記検出装置(4)は、共焦点フィルタリングのための手段を含むこと、及び前記照明装置(3)は、構造化された照明のための手段を含むことのうちの少なくとも一方を備える請求項1又は2に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項4】
前記検出装置(4)は、検出ビーム経路内に位相要素(10、10.1、10.2)を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項5】
前記結像光学ユニットは、対物レンズ(5)を含み、位相格子(10.1)は、前記対物レンズ(5)と前記センサ(6)との間に配置される、請求項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項6】
空間周波数空間内における又は実空間内における位相関数を有する空間光変調器(10.2)が存在する、請求項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項7】
前記検出装置は、
第1センサ領域(6.1)が前記第1ライトシート(LB1)に割り当てられ、且つ更なるセンサ領域(6.2、6.3)が前記更なるライトシート(LB2、LB3)に割り当てられるように構成されるセンサ(6)を含み、
前記更なるセンサ領域は、前記検出軸(9)に沿って変位される前記第1センサ領域(6.1)に対して配置される、請求項1~のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項8】
前記検出装置(4)は、複数のガラスファイバを含むファイバプレート(11)を含み、
前記複数のガラスファイバの第1端部は、結像された蛍光放射の入力結合のために設けられ、前記複数のガラスファイバの第1端部の反対側端部は、前記センサ(6)と直接接触しているか、又は光学手段(12)によって前記センサ(6)上で結像可能であり、
前記ファイバプレート(11)は、
前記第1ライトシート(LB1)に割り当てられた第1ファイバプレート部分(11.1)と、
前記更なるライトシート(LB2、LB3)に割り当てられた更なるファイバプレート部分(11.2、11.3)と、を含み、
前記蛍光放射の入力結合のための前記更なるファイバプレート部分の複数のガラスファイバの端部は、前記検出軸(9)に沿って変位して配置されている、請求項1~のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項9】
前記検出装置(4)は、
第1屈折力を有する第1タイプの第1マイクロレンズ(13.1)が前記第1ライトシート(LB1)に割り当てられ、及び更なる屈折力を有する更なるタイプのマイクロレンズアレイ(13)の更なるマイクロレンズ(13.2、13.3)が前記更なるライトシート(LB2、LB3)に割り当てられるように、前記結像光学ユニットの対物レンズ(5)と前記センサ(6)との間にマイクロレンズアレイ(13)を含み、
前記第1マイクロレンズ(13.1)の第1屈折力は、第1焦点面の空間的な向きに依存し、前記更なるマイクロレンズ(13.2、13.3)の更なる屈折力は、前記更なる焦点面の空間的な向きに依存する、請求項1~のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項10】
前記検出装置(4)は、検出ビーム経路内にビームスプリッタ(14)を有し、
前記ビームスプリッタは、前記検出ビーム経路を分割するように構成され、
前記第1ライトシート(LB1)に割り当てられた第1焦点面及び更なるライトシート(LB2)に割り当てられた更なる焦点面は、前記センサ(6)上で相互に隣接して結像される、請求項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項11】
前記試料(1)の容積走査を実行するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項12】
前記試料面(2.1)及びオブジェクトキャリア(2)の少なくとも一方に対して平行である軸に沿って、前記複数のライトシート(LB1、LB2、LB3)と前記試料(1)との間で相対的な移動を実行するための手段を含む、請求項11に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項13】
前記検出方向に対して平行である軸に沿って、前記複数のライトシート(LB1、LB2、LB3)と前記試料(1)との間で相対的な移動を実行するための手段を含む、請求項11又は12に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項14】
前記試料面(2.1)及びオブジェクトキャリア(2)の少なくとも一方に対して垂直である軸に沿って、前記複数のライトシート(LB1、LB2、LB3)と前記試料(1)との間で相対的な移動を実行するための手段を含む、請求項1113のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項15】
前記第1ライトシート(LB1)及び前記更なるライトシート(LB2、LB3)は、ガウスビーム又はベッセルビーム又はマシュービーム又はsincビームに基づいている、請求項1~14のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項16】
前記第1ライトシート(LB1)及び前記更なるライトシート(LB2、LB3)の少なくとも一方の長さは、前記試料(1)の厚さ(d)にマッチングされる、請求項1~15のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のライトシート顕微鏡法のための構成が使用されるライトシート顕微鏡法のための方法であって、
試料(1)は、相互に平行に且つ検出軸(9)に対して垂直に構成されるが、検出方向において、即ち前記検出軸に沿って且つ照明方向において互いに対して変位されている少なくとも2つのライトシート(LB1、LB2、LB3)によって照明され、
前記ライトシート(LB1、LB2、LB3)は、前記試料(1)内の個々のストライプ内で蛍光放射を生成し、
前記蛍光放射は、結像光学ユニット(5、7)によって焦点面内で結像され、且つセンサ(6)によって検出され、
ライトシート(LB1、LB2、LB3)の焦点面は、前記試料(1)の個々のストライプの蛍光放射を検出するために、前記個々のライトシート(LB1、LB2、LB3)の検出面と対応して配置され、
前記試料(1)の個々のストライプ内で励起された蛍光放射は同時に検出される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料のストライプを照明し、且つ蛍光放射を励起するためのライトシートを生成するための光源及び照明光学ユニットを含む照明装置を有し、且つ蛍光放射を検出するための検出面を有するセンサと、試料によって放出された蛍光放射をセンサ上で結像させる結像光学ユニットと、ライトシートに対して垂直な検出軸とを含む検出装置を有する、試料面を有するライトシート顕微鏡法のための構成に関する。更に、本発明は、ライトシート顕微鏡法のための対応する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照明ビーム経路と検出ビーム経路とが相互に実質的に垂直に構成され、これにより、試料が結像対物レンズ又は検出対物レンズの焦点面内で、即ちその光軸に対して垂直にライトシートによって照明される顕微鏡は、選択的平面照明顕微鏡法(SPIM:selective plane illumination microscopy)、即ちライトシート顕微鏡法に従って試料を検査するように設計される。ライトシートによる照明の結果として、ライトシートによって照明された試料のストライプ内で蛍光放射が生成される。このために、試料は、蛍光に適した色素を更に含むこともできる。3次元試料が異なる深さにおいて個々の面内で場所毎に走査され、且つプロセスで得られた画像情報は、試料の3次元画像を形成するために後に合成される、共焦点レーザ走査顕微鏡法(LSM:laser scanning microscopy)とは対照的に、SPIM技術は広視野顕微鏡法に基づき、且つ試料の個々の面を通じた光学セクションに基づく試料の画像表現を促進する。
【0003】
SPIM技術の利点は、特に、画像情報がキャプチャされる相対的に大きい速度、生物学的試料の鮮度が漸減する相対的に低いリスク、及び試料内への焦点の浸透深さの増大を含む。
【0004】
ライトシート顕微鏡法の主要な用途の1つは、数百μm~最大数ミリメートルの寸法を有する中間サイズの有機体の撮像にある。原則として、これらの有機体は、アガロースに埋め込まれ、次いで、このアガロースがガラス毛細管内に配置される。ガラス毛細管は、水が充填された試料チャンバに上方又は下方から導入され、且つ試料が毛細管からわずかに押し出される。アガロース中の試料は、例えば、非特許文献1又は特許文献1に示されるように、ライトシートによって照明され、蛍光は、ライトシートに対して垂直であり、且つライトシート光学ユニットに対しても垂直である検出対物レンズによりカメラ上で結像される。
【0005】
このライトシート顕微鏡法のための方法は、3つの大きい欠点を有する。第1に、検査対象の試料が相対的に大きく、通常の試料は発生生物学に由来する。更に、ライトシートは相対的に厚く、その結果、取得可能な軸方向分解能が試料調製及び試料チャンバの寸法によって制限される。更に、試料の調製が複雑であり、且つ細胞の蛍光顕微鏡法で一般的に使用される標準的な試料調製及び標準的な試料ホルダに適合しない。
【0006】
これらの制限を部分的に回避するために、近年、新しいライトシート顕微鏡法の構造が実現され、この場合、照明対物レンズ及び検出対物レンズが相互に垂直であり、且つα1=α2=45°の角度において上方から試料上に方向付けられる。例として、このようなSPIM構造は、例えば、特許文献2又は特許文献3に開示されている。
【0007】
図1は、このような直立型45°SPIM構成を概略的に示す。ここで、試料P1は、ペトリ皿P2の底部上に配置される。ペトリ皿は、例えば、水などの液体P3により充填され、且つ2つのSPIM対物レンズ、即ち照明対物レンズP4及び検出対物レンズP5が液体P3中に浸漬される。このような構成は、相対的に高い軸方向分解能の利点を提供し、なぜなら、相対的に薄いライトシートP6を生成し得るからである。また、相対的に高い分解能に起因して、相対的に小さい試料を検査することもできる。この場合、試料調製が格段に容易になる。但し、試料調製及び試料ホルダが、細胞の蛍光顕微鏡法で一般に使用される標準的な試料調製及び標準的な試料ホルダに依然として対応していない点は大きい欠点であり続けている。従って、ペトリ皿は、2つのSPIM対物レンズが、皿のエッジに当接することなく、ペトリ皿内に配置された液体中に浸漬され得るように相対的に大きくなければならない。生物学の多くの領域で標準となっているマルチ井戸プレートは、この方法で使用することができず、なぜなら、対物レンズをプレートの非常に小さい井戸内に浸漬することができないからである。更に、例えば、様々な試料の汚染を回避するために、試料の変更時に対物レンズを洗浄しなければならないため、高スループットを有するスクリーニングが容易に可能でない点でも、この方法は不利である。
【0008】
これらの問題点は、図2に示されるいわゆる倒立型45°SPIM構成により回避される。この場合、45°構成が維持されるが、2つのSPIM対物レンズ、即ち照明対物レンズP4及び検出対物レンズP5は、ここで、もはや上方から試料上に方向付けられておらず、代わりに試料ホルダの透明な底部を通じて下方から試料が照明され、且つ蛍光が検出される。このような構成は、本出願人により特許文献4及び特許文献5に開示されている。この結果、例えば、マルチ井戸プレート、ペトリ皿、及びオブジェクトキャリアなど、すべての通常の試料ホルダを使用することが可能であり、且つ高スループットスクリーニング時の試料の汚染の可能性がもはや存在しない。
【0009】
本明細書に記述されるライトシート顕微鏡法の2つの変形形態に共通するのは、ライトシートが2つのSPIM対物レンズのうちの1つによって生成され、且つ蛍光が2つのSPIM対物レンズのうちの第2のものによって検出される点である。ここで、検出対物レンズの像平面は、ライトシート内に位置し、従って照明された領域の鮮明な結像が検出器上に存在する。
【0010】
ライトシート顕微鏡法が導出された従来の広視野顕微鏡法では、複数の像平面を検出器上で同時に結像させ得る方法が記述される。非特許文献2は、特別な格子の支援により、複数の像平面を検出器上で同時に結像させ得る方法について説明する。非特許文献3は、特別な格子の支援により且つ更なる補正要素により、これを解決し得る方法について記述する。このために、特別な位相格子が検出ビーム経路に導入され、これにより試料全体に由来する光がリソートされる。オリジナルの像平面に対して平行である様々な面からの光は、相互に隣接すると共に相互に上下に配置された領域において、検出器上で同時に再合焦及び結像される。従って、検出器は、例えば、3×3個の場に分割され、且つ面は、これらの場のそれぞれの内部において合焦状態で結像される。但し、この場合の欠点は、個々に考慮される検出面との関係において、焦点はずれ光も、同様に但し非合焦状態において、対応する検出面の検出器の場において結像される点である。
【0011】
ライトシート顕微鏡を使用した対処を要する重要な試料の種類は、図3に示されるように、オブジェクトキャリアP2上に粘着細胞の層を有する試料P1である。細胞は、約20~30μmの厚さdを有する連続層を形成する。ライトシートを有する直立型又は倒立型の45°構成に従って、この層を通じた照明が存在する場合、約30~40μmの長さを有する試料の領域のみが励起され、且つ相応して検出される。この結果、200μmの実視野(FOV:field of view)にもかかわらず、検出器上で可視状態となるのは狭いストライプのみであろう。
【0012】
例として、試料が20μmの厚さを有し、且つライトシートが45°で試料上に照射された場合、試料内における照明領域は28μmの長さを有する。ここで、検出対物レンズの開口数がNA=1.1である場合、ナイキスト基準によるサンプリング周波数は、従って、約100nm/ピクセルである。この結果、照明領域は、検出器上で280ピクセルを占有する。例として、これが2560×2160個のピクセル(pco.edge)を有するsCMOSカメラである場合、センサのほぼ9/10が使用されない状態に留まるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2004/053558号パンフレット
【文献】国際公開第2012/110488号パンフレット
【文献】国際公開第2012/122027号パンフレット
【文献】独国特許出願公開第102013107297号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013107298号明細書
【非特許文献】
【0014】
【文献】フイスケンら(Huisken et al.)著、「発生生物学における選択的面照明顕微鏡法の技法(Selective plane illumination microscopy techniques in developmental biology)」、ディベロップメント(Development)、2009年、第136巻、p.1963
【文献】ダルガーノら(Dalgarno et al.)著、「多面撮像及び3次元ナノスケール粒子追跡(Multiplane imaging and three dimensional nanoscale particle tracking)」、オプティクス・エクスプレス(OptExpr)、2010年、第18巻、p.877
【文献】アブラハムソンら(Abrahamsson et al.)著、「収差補正多焦点顕微鏡法を使用した高速多色3D撮像(Fast multicolor 3D imaging using aberration-corrected multifocus microscopy)」、ネイチャー・メソッズ(NatMeth)、2013年、第10巻、p.60
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、結像品質の劣化又は試料の放射露光の増大を伴うことなく記録速度を格段に増大させることができる、ライトシート顕微鏡法のための構成及びライトシート顕微鏡法のための方法について記述することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、請求項1で特許請求されるライトシート顕微鏡法のための構成及び請求項19で特許請求されるライトシート顕微鏡法のための方法によって実現される。
ライトシート顕微鏡法のための構成は、試料を配置するための試料面を有する。この試料面は、試料を配置又は他に配置及び係留するための試料ステージにより実施することができる。但し、試料面は、試料チャンバ又はホルダによって決定することもでき、この場合、試料は、例えば、この試料チャンバの開口部内又はホルダ内に係留することにより固定位置に保持され、且つこの結果、試料面が画定される。これは、例えば、試料ステージ、試料チャンバ、又は任意の他の試料ホルダの構造により、陰影が試料の中央部分内で生成されることなく、試料面内に位置した試料が照明され得ると共に、試料によって放出された放射が、同様に障害物なく検出され得るように実施される。従って、試料面は、障害物がライトシート顕微鏡法のための構成の光路内に生じないように構成される。これは、試料ステージ、試料チャンバ若しくは試料ホルダのための、又は光路内若しくはその近傍に配置された少なくともその一部分のための適切な光学的に透明な材料の選択により、又は例えば試料、オブジェクトキャリア、又は試料容器が直接的に照明されると共に、試料によって放出された放射が直接的に検出可能であるように、試料ステージ、試料チャンバ又は試料ホルダ内の適切なアパーチャにより得られる。更に、試料面は、空間内のその位置が少なくとも1つの方向、好ましくは空間の2又は3次元において変更可能であるような移動可能な実施形態を有することもでき、これは、例えば、試料ステージ、試料チャンバ又は試料ホルダの移動によって実現されてもよい。試料は、適切な光による照明時の試料からの蛍光放射を支援するように調製でき、且つ試料は、透明な容器内に、又は他に例えば透明なプレート上などのオブジェクトキャリア上に、又は例えば2つのガラスプレートなどの2つの透明なプレート間に配置することができる。
【0017】
ライトシート顕微鏡法のための構成は、光源と、照明光学ユニットとを有する照明装置を更に有する。照明装置は、試料の第1ストライプを照明し、且つ試料のこの第1ストライプ内で蛍光放射を励起するために、試料面に対してとの関係において非平行にな方式で、即ち、例えば試料ステージの面に対して非平行に延在する第1ライトシートを生成するように構成される。例として、静的ライトシート顕微鏡法(SPIM:static light sheet microscopy)の原理によれば、このようなライトシートは、円筒形レンズを使用して生成することができる。また、原則的には、ライトシートは、レーザビームを合焦し、且つこの合焦されたレーザビームを光軸に対して垂直に延在するラインの2つの終点間で双方向に迅速に走査することにより、生成することもできる(走査レーザライトシート蛍光顕微鏡法)。このプロセスで使用される光又はレーザ源は、単色光を生成する。ここで、複数の波長を有する光を使用することが可能であり、これによれば、試料は、異なる波長との関係において、例えば、時間シーケンシャル式に照明される。このようなSPIM構造に由来する試料内の照明されたストライプは非常に狭い。通常、これは、0.1μm~10μmの厚さを有し、特に0.4~1μmの厚さを有する。
【0018】
最終的に、ライトシート顕微鏡法のための構成は、試料によって放出された蛍光放射を検出する能力を有するセンサを有し、即ち検出器又は検出手段を有する検出装置を含む。この場合、蛍光放射の空間分解検出のためのエリアセンサ又は異なる空間分解検出手段が好ましい。
【0019】
更に、検出装置は、試料によって放出された蛍光放射をセンサの検出面内に結像させる結像光学ユニットを含む。ここで、検出面とは、結像の信号がセンサによって検出される形態で提供される面である。
【0020】
好適な一実施形態では、結像光学ユニットは、対物レンズと、チューブレンズとを含む。チューブレンズは、検出ビーム経路内で様々な位置に配置でき、従って、更なる光学要素を対物レンズとチューブレンズとの間に配置することができる。
【0021】
検出装置は検出軸を有する。この検出軸は、ライトシートと70°~110°の角度範囲、好ましくは80°~100°の角度範囲からの角度を形成する。検出装置がライトシートに対して垂直の検出軸を有する構成が特に好ましい。
【0022】
本発明によれば、ライトシート顕微鏡法のための構成は、照明装置が、試料の更なるストライプを照明し、且つ試料のこの更なるストライプ内で蛍光放射を励起するために、第1ライトシートに対して平行に構成される少なくとも1つの更なるライトシートを生成するように構成される点を特徴とする。この更なるライトシートは、検出方向、即ち検出軸に沿ってのみならず、照明方向にも第1ライトシートに対してとの関係で変位される。
【0023】
本発明による構成では、照明方向、検出方向、及び試料面は三角形を形成し、この場合、照明方向と試料面との間の角度及び平行なライトシート間の距離は、有利には、第1ライトシートにより且つ更なるライトシートにより照明された試料のストライプが、検出方向に観察された際に相互に上下に位置しないように、試料の厚さに応じて選択される。
【0024】
2つ以上の平行なライトシートは、1つのレーザモジュールが1つのレーザビームを生成するように生成され得る。レーザビームは、ガウスであり得、又は例えばベッセルビーム、マシュービーム、若しくはsincビームに基づくものであり得、即ち非回折制限ビームの形態に基づき得る。空間周波数空間には、レーザビームによって照明される空間光変調器(SLM:spatial light modulator)が存在する。位相パターンは、位相パターンが、複数の平行な焦点変位ライトシートのスペクトルを生成するようにSLM上でエンコーディングされる。SLM面のスペクトルは、更なるレンズにより実空間内に転送される。ここで、例えば、絞りによるフィルタリングが存在する。絞り面に後続するレンズ構成により、且つ2つの方向における走査を許容するスキャナにより、前記絞り面は試料上に操向される。これは、偏向ミラーの支援により実現でき、偏向ミラーは、偏向ミラー上に存在する光分布を試料内に結像させるチューブレンズ及び照明対物レンズをその下流に配設している。
【0025】
相互に平行に構成された複数のライトシートによって試料を照明することにより、記録速度を増大させ得ると共にセンサを理想的な方法で使用し得、なぜなら、例えば、様々なライトシートが相互に隣接した様々なセンサ位置を使用することができるようにライトシートを構成し得るからである。従って、記録速度の可能な最大の増大のために、複数のライトシートによる照明を同時に実現することができる。また、ここで、「同時に」は、試料がセンサ検出時間T、即ち、例えばカメラ露光時間内に複数のライトシートによって照明されることも意味することを理解されたい。このようなセンサ検出時間は、通常、1ms~100msの範囲である。また、従って、すべてのn(n≧2)回のライトシートの露光がT内で発生する場合、この照明を迅速に順番に実現することができる。ここで、それぞれのライトシートの照明時間は、T/nとなるように選択することができるが、例えば、複数のライトシートが異なる色を有する場合、輝度差を補償するために、これを逸脱した個々のライトシートの分布を選択することもできる。このようなライトシート顕微鏡法のための構成における検出装置は、ライトシートによって照明される2つ以上のプレーン内で検出を実行するように、即ちライトシートによって照明された試料のストライプを合焦状態で結像させるように構成される。また、これらのライトシートが時間シーケンシャル式に使用される場合、且つ検出装置がこれに対してマッチングされる場合、原則的に、容易且つ迅速に変更可能な対物レンズの焦点など、従来技術に対する相対的に小さい変更を有する、従来技術によるライトシート顕微鏡法のための構成用の検出構成を使用することもできる。但し、これは、記録速度を増大させるための選択肢を理想的に活用したものではない。
【0026】
従って、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成は、第1ライトシートによって試料の第1ストライプ内で励起された蛍光放射と、更なるライトシートによって試料の更なるストライプ内で励起された蛍光放射とを同時に検出するように構成された検出装置を更なる特徴とする。これは、第1ライトシートによって脱励起された試料の第1ストライプからの蛍光放射と、第2ライトシートによって励起された試料の第2ストライプからの蛍光放射とが同時に合焦状態で結像及び検出されることを意味する。
【0027】
更なる利点は、第1ライトシートに割り当てられる第1検出面と、更なるライトシートに割り当てられる更なる検出面とを含む検出装置を有する、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成である。この検出装置は、第1検出面による第1ライトシートの第1焦点面及び更なる検出面による更なるライトシートの更なる焦点面の同時合同カバレージ(congruent coverage)のために構成される。焦点面とは、個々のライトシートによって照明された試料のストライプ(stripe)の結像光学ユニットによる鮮明な結像の面である。また、これはシャープネス面とも呼称される。ここで、合同カバレージとは、個々の焦点面が、関連する検出面と対応関係又はカバレージ関係にされることを意味する。このような構成は、ここで、相互に平行に構成された複数のライトシートによる試料の同時照明を許容し、これには、同時に、ライトシートによって照明されたすべてのストライプの鮮明な結像が伴う。
【0028】
ここで、これらの信号は、前記信号がセンサによって同一の形態で検出され得るように検出面内で直接的に検出されるか、又は検出面からセンサに送信されるか、又はセンサ面内で結像される。また、従って、検出面内で受け取られた信号をセンサに転送する手段が検出面とセンサとの間で利用可能である場合、検出面は実際のセンサの外部に配置することもできる。
【0029】
その検出面によるライトシートの個々の焦点面の合同カバレージのために更なる手段が必要とされる場合、これらの手段は、本明細書で規定される条件を充足するために、すべてのライトシートについて存在する必要はない。特に、第1ライトシートは、適切な構成では、更なる手段を伴うことなく対処することもできる。
【0030】
この結果、本発明による構成は、第1ライトシートに対して平行な1つの更なるライトシート、又は他に第1ライトシートに対して平行な複数の更なるライトシートを生成するために使用でき、且つ本発明による構成は、様々なライトシートによって励起される試料のすべてのストライプの同時合焦検出を不可能にする、このプロセスにおいて通常生じる異なる焦点面を克服し得る。この結果、試料が検査され得る速度の大きい増大が存在し、検出装置のセンサは、理想的な方法によって使用され、且つそれにもかかわらず、ライトシートによって励起された試料のすべてのストライプの鮮明な結像が実現される。
【0031】
従って、本発明による好適な解決策は、複数のライトシートが試料の狭いストライプを同時に照明する点で弁別される。ここで、ライトシートは、相互に平行に位置し、且つ検出軸に対して垂直に構成される。但し、これらは、検出方向に相互に変位され、これにより、個々のライトシートから検出装置の結像光学ユニットまでの、試料によって放出された蛍光放射の異なる長さの光路がもたらされる。これは、様々なライトシートによって照明される試料のストライプの異なる焦点面をもたらし、従って、これは、様々なライトシートによって照明された試料内のストライプが様々な面内で検出されるか、又は検出される準備が完了した信号が様々な面内に記録されるか、又は個々のライトシートの焦点面が、すべてのライトシートについて均一な検出面内に更なる光学要素によって移動させられるように、検出装置の構造及び機能において考慮され、従って、例えば、通過する光波の位相を変更する手段が検出装置内に配置され得るか、異なる焦点面がセンサの部品の空間的向きの変位によって補償され得るか、又は異なる焦点面が個々のライトシートの異なる波長を使用することにより相殺される。
【0032】
有利な一実施形態では、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成は、平行に構成されている、第1ライトシートによって励起された蛍光放射及び更なるライトシートによって励起された蛍光放射が検出方向に相互に重畳されておらず、及びセンサの別個のセンサ位置、即ちセンサの排他的検出領域が、それぞれの場合に、第1ライトシート及び更なるライトシートに割り当てられるように構成される。従って、検出方向におけるライトシートの投射は、この構成ではオーバーラップしない。このような相互に平行である複数のライトシートを有するライトシート顕微鏡法のための構成では、様々なライトシート内で励起された蛍光放射の検出はあまり複雑でない。
【0033】
更なる一実施形態では、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成は、検出装置が、スペクトル検出のための手段を含むか、又は検出装置が共焦点フィルタリング、即ち「焦点はずれ」の抑制のための手段を含むか、又は他に照明装置が構造化された照明のための手段を含むように構成される。これは、様々なライトシートからセンサ上に入射する蛍光放射の分離を支援する。これらの場合、検出方向におけるライトシートの投射は、完全に又は部分的にオーバーラップしてもよい。
【0034】
従って、センサが、異なる波長を有する光を検出すると共に波長に応じて光を分離する能力を有する場合、第1ライトシート及び更なるライトシートと、更に任意選択的に複数の更なるライトシートとは、異なる波長を有していてもよく、又は他に試料は、ライトシートによって励起される2つ以上の色素を含むこともできる。
【0035】
相互に平行なライトシートが検出方向にその投射の観点でオーバーラップするにもかかわらず、同一の波長を有する場合、ライトシートのそれぞれのために、又は平行なライトシートのうちの1つによって照明されたそれぞれのストライプ内で放出される蛍光放射のために、バックグラウンド抑制のための手段が必要とされる。例として、提案される同時に内部に放射される射入する複数の平行なライトシートによる照明の場合、相対的に厚い試料の場合には焦点はずれ成分が一層出現し、前記焦点はずれ成分は、個々のセンサ領域内において合焦状態で結像されない他のライトシートに由来する。
【0036】
共焦点検出によれば、個々の他の試料領域からの焦点はずれ光と、ひいてはつまり、従って非合焦光とを抑制することができる。このために、例えば、「ローリングシャッタ」法を使用することができる。「ローリングシャッタ」とは、CMOS又はsCMOS技術、即ち相補型金属酸化膜半導体技術又は科学的CMOS技術における「アクティブピクセル」画像センサの読み出しプロセスを意味する。CCDセンサとは対照的に、これらのセンサのピクセルは、エリアセンサの個々の光感知部分が、像露光において、センサ領域にわたって迅速に延在する狭いセンサストライプのみによって形成されるように行毎又は列毎に起動され、且つ読み取られる。ライン照明の走査移動が、この相互に平行に延在するライトシートによる読み出し移動と同期化された場合、これにより「仮想」的な共焦点スロットアパーチャが得られ、他の試料領域からの焦点はずれ光と、ひいては、つまり、従って非合焦光とが抑制され、なぜなら、これらの光が、「ローリングシャッタ」のアクティブピクセルラインの前面又は背後の、それぞれ現時点で休止状態にあるセンサ領域上に入射するからである。
【0037】
ここで、薄い試料の場合、「ローリングシャッタ」は複数のライトシートについて利用可能である。対照的に、相対的に厚い試料又は相対的に長いライトシートの場合、適切な作動によって複数の「ローリングシャッタ」を空間的に相互にオフセットさせると共に、恐らく試料がライトシートによって走査される際に、これらがCMOSセンサ上で相互にオフセットされた状態で延在するようにすることが有利である。
【0038】
相互に平行であり、同一の波長を有し、且つ検出方向におけるその投射の観点でオーバーラップするライトシートを使用するための更なる選択肢は、構造化された照明を有する。これは、インコヒーレントな構造化により又は他にコヒーレントな構造化により可能である。
【0039】
インコヒーレントな構造化の場合、走査されたライトシートが仮定され、即ち、例えばカメラ露光時間などのセンサ検出時間との関係において高速であるビームの走査プロセスによって延在するライトシートが仮定される。この結果、レーザによる露光がこの走査プロセスにおいて正確に定義された時点で中断された場合、格子を「試料内に書き込む」ことができる。
【0040】
対照的に、コヒーレントな構造化の場合、格子又は構造化は干渉によって生成される。
ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の有利な一構成は、第1検出面による第1焦点面の合同カバレージ及び更なる検出面による更なる焦点面の合同カバレージのための位相要素を含む検出装置を有する。位相要素の使用は、その内部に刻み込まれた光学機能により、焦点面を検出面内に移動させる相対的に単純な解決策を構成する。ここで、位相要素は、検出対物レンズとセンサとの間の検出ビーム経路内に導入される。位相要素の選択に応じて、更に鮮明な結像を促進するために、個々のライトシートの画像の再合焦が可能である。これは、位相要素が対応して調節可能である場合に当てはまる。
【0041】
第1検出面を第1焦点面と重畳させると共に更なる検出面を更なる焦点面と重畳させるため、即ちこれらを合同カバレージ状態にするために、検出ビーム経路内に位相要素を有するライトシート顕微鏡法のすべての構成は、3つ以上の相互に平行なライトシートによる試料の照明を許容する。これらは、複数のライトシートによる同時照明、ライトシートの個々の検出面による個々の焦点面の同時合同カバレージ、ひいては及び従ってライトシートによって照明されたすべてのストライプの同時検出が可能であるように使用することができる。但し、これらは、様々なライトシートの検出面が調節可能な位相要素により連続的に非常に迅速に掃引される場合、複数のライトシートの時間シーケンシャル検出のために使用することもできるが、この非常に高い速度は、検出装置の要素を機械的に移動させなければならない場合には実現できない。
【0042】
その結像光学ユニットが対物レンズを含む、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の検出装置内に位相要素を配置するための第1の選択肢は、対物レンズとセンサとの間の検出ビーム経路内における位相格子の配置である。
【0043】
この結果、第1ライトシートによって照明されたストライプのみが、第1ライトシートに割り当てられた領域内の第1位置で、センサ上において合焦状態で結像される。対照的に、更なるライトシートによって照明されたストライプは、第1ライトシートに割り当てられた領域内の第2位置において、焦点はずれ状態で結像される。但し、試料の対応する画像を再構築するために考慮されるのは、合焦状態で結像された個々のライトシートに割り当てられたセンサの領域内の位置のみである。
【0044】
更に、位相格子に加えて、更なる補正要素が検出ビーム経路に挿入されてもよい。
更に、このような構成は、45°SPIM構成、倒立型45°SPIM構成、及び従来のSPIM構成で可能である。
【0045】
ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の検出装置内に位相要素を配置するための更なる選択肢は、例えば、結像光学ユニットの対物レンズの瞳孔内など、空間周波数空間内における位相関数を有する空間光変調器(SLM)の構成である。この場合、組み合わせられた伝達関数は、それぞれのライトシートについて、光学基本要素の個々の伝達関数の乗算から特定される。ここで、空間光変調器内にエンコーディングされる必要のある全体位相関数は、試料を照明するために使用されるすべてのライトシートの組み合わせられた伝達関数の加算によって得られる。
【0046】
更に、色補正を目的として補正要素をビーム経路内に配置することもできる。
代わりに、このような位相関数を有する空間光変調器(SLM)は、実空間、即ち、例えば中間像平面内に存在することもできる。この場合、位相関数は、マイクロレンズアレイを再現することができる。この構成は、ライトシートによって励起された試料のストライプ内で放出されるすべての光子を検出のために使用することができる点で有利である。
【0047】
一代替構成では、ライトシート顕微鏡の本発明による構成は、第1センサ領域が第1ライトシートに割り当てられ、且つ更なるセンサ領域が更なるライトシートに割り当てられ、この場合、更なるセンサ領域は、検出軸に沿って変位してされる方法で第1センサ領域に対応してとの関係で配置されるように構成されるセンサを含む検出装置に起因して、幾何学的な方法により、第1検出面による第1焦点面及び更なる検出面による更なる焦点面の合同カバレージを実現する検出装置を有する。従って、個々のセンサ領域は、相互の関係において階段形状式に構成され、且つ一緒に階段センサを形成し、この場合、階段の高さ及び幅は、それぞれの場合に、第1ライトシートによって照明された試料の第1ストライプが第1センサ領域上において合焦状態で結像され、且つ更なるライトシートによって照明された試料の更なるストライプが更なるセンサ領域上において合焦状態で結像されるように選択される。ここで、このようなセンサ領域は自律的な方式で動作可能であり得、又は他に均一な方法で作動する階段センサの一部分であり得る。
【0048】
第1焦点面を第1検出面により、且つ更なる焦点面を更なる検出面により合同カバレージ状態にするために、検出ビーム経路内に相互の関係において階段形状式に構成された階段センサ又はセンサ領域を有するライトシート顕微鏡法のすべての構成は、3つ以上の相互に平行なライトシートによる試料の照明を許容する。これらは、複数のライトシートによる同時照明、ライトシートの個々の検出面による個々の焦点面の同時合同カバレージ、ひいては、及び従ってライトシートによって照明されたすべてのストライプの同時検出が可能であるように使用することができる。但し、これらは、時間シーケンシャル検出のために使用することもできる。
【0049】
更なる一代替構成では、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成は、その第1端部が、結像された蛍光放射の入力結合のために構成され、且つその反対側の端部が、センサと直接的に接触しているか、又は光学手段によってセンサ上で結像可能である、ガラスファイバを含むファイバプレートを有する検出装置に起因して、第1検出面による第1焦点面及び更なる検出面による更なる焦点面の合同カバレージを実現する検出装置を有する。
【0050】
ここで、ファイバプレートは、第1ライトシートに割り当てられた第1ファイバプレート部分と、更なるライトシートに割り当てられた更なるファイバプレート部分とを含み、入力結合のための前記更なるファイバプレート部分の端部は、検出軸に沿って変位してされる方法で配置構成される。従って、このファイバプレートも、第1ライトシートによって照明された試料のストライプがファイバプレートの第1部分上において合焦状態で結像され、且つ更なるライトシートによって照明された試料のストライプが階段によって第1部分とは分離されたファイバプレートの更なる部分上において合焦状態で結像される、このような階段形状の実施形態を有する。
【0051】
従って、ライトシートによって励起された個々のストライプは、この場合、ファイバプレートの関連する階段上において合焦状態で結像される。光は、プレートのガラスファイバ内に入力結合され、且つファイバプレートの反対側のフラットな側部まで導かれる。そこで、光はセンサによって直接的に検出されるか、又は光は更なる結像光学ユニットにより検出器上で結像される。
【0052】
第1焦点面を第1検出面により、且つ更なる焦点面を更なる検出面により合同のカバレージ状態にするために、検出ビーム経路内に階段形状の構成を有するファイバプレートを有するライトシート顕微鏡法のすべての構成は、3つ以上の相互に平行なライトシートによる試料の照明を許容する。これらは、複数のライトシートによる同時照明、ライトシートの個々の検出面による個々の焦点面の同時合同カバレージ、ひいては、及び従ってライトシートによって照明されたすべてのストライプの同時検出が可能であるように使用することができる。但し、これらは、時間シーケンシャル検出のために使用することもできる。
【0053】
ライトシート顕微鏡法の更なる一代替構成では、検出装置は、第1検出面による第1焦点面及び更なる検出面による更なる焦点面の合同カバレージのために、結像光学ユニットの対物レンズとセンサとの間にマイクロレンズアレイを有する。マイクロレンズアレイは、第1屈折力を有する第1タイプの第1マイクロレンズが第1ライトシートに割り当てられ、且つ更なる屈折力を有する更なるタイプのマイクロレンズアレイの更なるマイクロレンズが更なるライトシートに割り当てられる、このような構成を有する。ここで、第1マイクロレンズの第1屈折力は、第1焦点面の空間的向きに依存し、且つ更なるマイクロレンズの更なる屈折力は、更なる焦点面の空間的な向きに依存する。マイクロレンズアレイは、個々の焦点面を1つの共通センサ面内に結像させるように検出ビーム経路内に配置される。
【0054】
また、第1検出面により第1焦点面を、且つ更なる検出面により更なる焦点面を合同カバレージ状態にするために、結像光学ユニットの対物レンズとセンサとの間の検出ビーム経路内にマイクロレンズアレイを含むライトシート顕微鏡法のための構成は、3つ以上の相互に平行なライトシートによる試料の照明を許容する。これらは、複数のライトシートによる同時照明、ライトシートの個々の検出面による個々の焦点面の同時合同カバレージ、ひいては、及び従ってライトシートによって照明されたすべてのストライプの同時検出が可能であるように使用することができる。但し、これらは、時間シーケンシャル検出のために使用することもできる。
【0055】
ライトシート顕微鏡法の更なる一代替構成では、検出装置は、検出ビーム経路内にビームスプリッタを有し、前記ビームスプリッタは、好ましくは、第1検出面による第1焦点面及び更なる検出面による更なる焦点面の合同カバレージのために、結像光学ユニットの対物レンズの背後に配置される。ここで、ビームスプリッタは、ビーム経路を分割すると共に、第1ライトシートに割り当てられた第1焦点面及び更なるライトシートに割り当てられた更なる焦点面がセンサ上で相互に隣接して結像されるように検出ビーム経路内に配置される。更に、この構成は、第1ライトシートに割り当てられた第1チューブレンズと、更なるライトシートに割り当てられた更なるチューブレンズとを有することができ、又は他にチューブレンズの代わりに、個々のライトシートに割り当てられた他の光学要素を有することもできる。更なるライトシートによって照明された試料のストライプから放出される信号は、原則的に、第1ライトシート及び更なるライトシートのビーム経路が最終的に相互に隣接してセンサ上で検出され得るように、ビームスプリッタによって偏向された放射の別の方向の変更を促進する更なるミラー又は別の構成を使用することにより、ビームスプリッタにより、例えば、更なるチューブレンズに対して偏向される。このために、第1ライトシートと第2ライトシートとのいずれかは、個々に異なる波長を有するように製造しなければならず、又は試料は、個々に異なる波長を有する蛍光放射が異なるライトシートからの個々の照明されたストライプから放出されるように、蛍光放射を放出し得る異なる色素を含んでいなければならない。
【0056】
また、原則的に、このような構成では、相互に平行な3つ以上のライトシートによって試料を照明することもできる。但し、これは、更なるビームスプリッタと、偏向された放射の方向を変更するための更なる構成とを有する格段に複雑な構造を意味するであろう。このような構成は、複数のライトシートによる同時照明、ライトシートの個々の検出面による個々の焦点面の同時合同カバレージ、ひいては、及び従ってライトシートによって照明されたすべてのストライプの同時検出が可能であるように使用することができる。但し、これはまた時間シーケンシャル検出のために使用することもできる。
【0057】
ライトシート顕微鏡法の好ましい構成は、試料の容積走査を実行するように構成される。このような構成を使用することにより、試料の容積全体を記録することができる。これらの目的のため、構成は、ライトシートと試料との間で相対的な移動を実行するための手段を含む。これらにより、それぞれのライトシートのzスタックの記録が可能となる。例として、このような手段は、固定された試料面内で移動可能である、移動可能な試料面又はオブジェクトキャリアであり、このオブジェクトキャリアは、x方向、y方向、若しくはz方向又はこれらの3つの方向の組合せで変位可能である。但し、相対的な移動は、ライトシートが固定された試料内で変位される、少なくとも1つのスキャナ及びビーム偏向のための任意選択的な更なる手段により実現することもできる。
【0058】
個々のzスタックは、計算により、記録中又はその後に3次元容積に組み合わせられ、この容積内で試料の全体像が結像される。これらの目的のため、ライトシート顕微鏡法のための構成は制御及び計算ユニットを含む。
【0059】
ここで、試料の容積走査を実行するように構成されたライトシート顕微鏡法の第1の特に好適な構成は、オブジェクトキャリアに対して平行である軸に沿ってライトシートと試料との間で相対移動を実行するための手段を含む。このような構成によれば、短いライトシート長が許容される。更に、試料容積内へのエネルギーの流入が非常に小さく、且つその結果、試料の鮮度の漸減及び他の光毒性の影響が可能な限り低く維持される。
【0060】
試料の容積走査を実行するように構成されたライトシート顕微鏡法の更なる構成は、検出方向に対して平行な軸に沿ってライトシートと試料との間で相対移動を実行するための手段を含む。また、このような構成では、短いライトシート長を使用することもできる。
【0061】
試料の容積走査を実行するように構成されたライトシート顕微鏡法の第3の構成は、オブジェクトキャリアに対して垂直の軸に沿ってライトシートと試料との間で相対移動を実行するための手段を含む。
【0062】
また、ここで、相対移動は、試料の容積走査を実行するように構成されたライトシート顕微鏡法の特別な構成により、複数の軸に沿って実行することもできる。
ライトシート顕微鏡法のための構成の第1ライトシート及び更なるライトシートは、例えば、ガウスビーム又はベッセルビーム又はマシュービーム又はsincビームに基づき得る。
【0063】
ライトシート顕微鏡法の特別な構成では、第1ライトシート及び/又は更なるライトシートの長さが更に試料の厚さにマッチングされる。
ライトシート顕微鏡法のための本発明による方法では、試料は、相互に平行に且つ検出軸に対して垂直に構成される少なくとも2つのライトシートによって照明される。これらのライトシートは、個々のライトシートに割り当てられた試料のストライプ内で蛍光放射を生成し、前記蛍光放射は、結像光学ユニットを使用して焦点面内で結像され、且つセンサによって検出される。ここで、試料の個々のストライプの蛍光放射の検出を目的として、1つのライトシートの焦点面は、個々のライトシートの検出面と対応関係にされ、この場合、試料の個々のストライプ内で励起された蛍光放射は同時に検出される。
【0064】
これは、個々の検出面を個々のライトシートの焦点面内に変位させることにより実現でき、これは、1つのセンサ領域がそれぞれ1つのライトシートの検出のために使用される実際的な方法では、例えば、検出軸に沿って相互にの関係で変位されたセンサ領域を使用することによって実現され、又は前記ファイバプレートが焦点面内で信号を受信し、且つこれらをセンサに送信する理想的な方法では、例えば、受信された信号を送信するためのガラスファイバを含むと共に階段形状の構造を有するファイバプレートを使用することによって実現され、この場合、検出面内で受信された信号が次いで実際に検出される。
【0065】
代わりに、これは、例えば、更なるマイクロレンズを使用することにより、個々のライトシートの焦点面を固定された検出面内に変位させるか又は結像させることにより実現することもでき、この場合、それぞれ1つのマイクロレンズが1つのライトシートに割り当てられ、且つ前記マイクロレンズの屈折力は、個々のライトシートによって照明される試料のストライプのセンサ上への鮮明な結像が実現されるように対応してマッチングされる。
【0066】
ライトシート顕微鏡法のための方法の好適な一構成では、ライトシート顕微鏡法のための本発明による上述の構成が使用される。
以下では、例示的な実施形態に基づいて本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】上述のような従来技術による45°構成における直立型ライトシート顕微鏡を示す。
図2】上述のような従来技術による45°構成における倒立型ライトシート顕微鏡を示す。
図3】上述のような、結果的に薄い試料を形成する、オブジェクトキャリア上における粘着細胞を例示的に示す。
図4】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第1実施形態を示す。
図5】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第2実施形態の変形形態におけるSLM位相関数及びその組成を示す。
図6】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第2実施形態を示す。
図7】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第3実施形態を示す。
図8】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第4実施形態を示す。
図9】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第5実施形態を示す。
図10】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第6実施形態を示す。
図11】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第7実施形態を示す。
図12a】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成を使用した試料の容積走査用の様々な走査方式を示す。
図12b】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成を使用した試料の容積走査用の様々な走査方式を示す。
図12c】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成を使用した試料の容積走査用の様々な走査方式を示す。
図13】ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成における平行なライトシートを生成する装置の例示的な一実施形態を示す。
図14】平行なライトシートを生成する装置の例示的な実施形態により、平行なライトシートを生成するためのSLM位相関数及びその組成を示す。
図15a-b】図15aは、共焦点検出のために構成されたセンサを有する、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第8実施形態を平面図で示し、図15bは、例示的な第8実施形態のセンサを正面図で示す。
図16a-b】図16aは、共焦点検出のために構成されたセンサを有する、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第9実施形態を平面図で示し、図16bは、例示的な第9実施形態のセンサを正面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
ライトシート顕微鏡法のための構成の本発明によるすべての解決策は、複数の相互に平行なライトシートLB1、LB2、LB3が試料1の相互に平行なストライプを照明するように生成される、照明装置3を有する。図4及び図6図11には照明方向8が個々に表記される。このような平行なライトシートLB1、LB2、LB3の生成は、図13及び図14を参照して説明されるが、最初に、図4図11は、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な実施形態を示し、この構成は、平行なライトシートLB1、LB2、LB3によって照明された試料1のすべてのストライプが合焦状態で同時に結像されることを許容する。
【0069】
図4は、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第1実施形態を示す。この例では、45°構成における倒立型ライトシート顕微鏡の構成が、試料1の複数の面、即ち相互に平行なライトシートLB1、LB2、LB3によって照明された試料の複数のストライプを同時に結像させる位相要素10、この場合には位相格子10.1の支援により使用される。試料1は、試料面2.1(図4には図示されていない)内でオブジェクトキャリア2上に配置される。これは、約20μmの厚さdを有する。例として、試料1は、3つのライトシートLB1、LB2、LB3によって照明され、ライトシートのそれぞれは、約35μmの長さを有する。ライトシートLB1、LB2、LB3のそれぞれは、関連する像平面BE1、BE2、BE3を画定する。利用されるカメラセンサ6の視野FOVが約200μmであるため、3つの面、即ち、この場合には3つのライトシートLB1、LB2、LB3によって励起される試料1のストライプを同時に結像させることができる。
【0070】
この場合、位相格子10.1は、検出軸9に沿って検出ビーム経路内に配置される。この位相格子10.1は、第1に、個々の像平面BE1、BE2、BE3の画像がオーバーラップしないように、個々の像平面BE1、BE2、BE3が、相互に隣接して及び/又は相互に上下してカメラのセンサ6上で位置決めされるという効果を結像に対して有する。従って、センサ位置SP1、SP2、SP3は、個々に、それぞれのライトシートLB1、LB2、LB3に対してセンサ6上で用意される。第2に、更に、対応する像平面BE1、BE2、BE3と、従って具体的には個々のライトシートLB1、LB2、LB3によって励起される試料1の対応するストライプとが、センサSP1、SP2、SP3の個々の領域上において合焦状態で結像されるように再合焦が存在する。
【0071】
ここで、像平面BE1の全体は、位置SP1においてセンサ6上で結像され、像平面BE2は、相応してセンサ位置SP2上に結像され、且つ像平面BE3は、センサ位置SP3上に結像される。ライトシートLB1、LB2、LB3は、個々のライトシートLB1、LB2、LB3によって照明された試料1のストライプの検出された蛍光がオーバーラップしないように位置決めされるため、ライトシートLB1によって試料1内で照明されたストライプは、ライトシートLB2及びLB3からの焦点はずれ光と干渉することなく、センサ位置SP1の領域内でサブ位置1.1内のセンサ6上で結像される。ライトシートLB2及びLB3からの蛍光は、焦点はずれ状態でサブ位置1.2及び1.3上に結像される。従って、焦点はずれ光との干渉を伴うことのない、ライトシートLB2及びLB3によって照明された試料のストライプの鮮明な画像がそれぞれセンサ位置SP2及びSP3の領域内でそれぞれサブ位置2.2及び3.3上で得られる。
【0072】
この構成では、格子に加えて更なる補正要素が導入され得る。更に、この方法は45°構成に限定されず、原則的には、適切な試料位置決めの場合、標準的なライトシート顕微鏡に適用することもできる。例示的な第1実施形態で記述されるライトシート顕微鏡法のための本発明による構成のこのような構成に伴う唯一の欠点は、利用可能な光が理想的な方法で使用されない点である。これは、例えば、ライトシートLB1からの光子がセンサ6のすべての3つのセンサ位置SP1、SP2、SP3間でサブ分割されるが、試料の再構築に使用されるのはサブ位置1.1のみであるという事実によって示される。この結果、実際には、放出された光子の1/nのみが使用され、この場合、nは、結像される面の数又は照明用に使用されるライトシートの数である。
【0073】
また、例示的な第1実施形態で使用される位相格子10.1の特性は、適切な位相関数及び照明を有する空間光変調器(SLM)10.2によって得ることもできる。ここで、位相関数は、基本位相関数の重畳によって得られる。
【0074】
図5には、2つのライトシートの例を使用した、個々の成分、即ち基本位相関数からのこのようなSLM位相関数又はその組成の構築が示される。
ライトシート面が合焦状態で結像されるように選択された仮想的なレンズの焦点長fと、
【0075】
【数1】
とを有する脱合焦伝達関数
【0076】
【数2】
は、個々の照明された面がセンサ6上又は検出器上において合焦状態で結像されるように設計され、ここで、xはSLMのx座標を規定し、且つyはSLMのy座標を規定し、且つSLMの座標は個々のピクセルを記述する。像は、ブレーズド格子又はウェッジの伝達関数T(x,y)=exp(ixd+iyd)の支援により、センサ6上の個々のサイト上に配置され、センサ6上又はセンサチップ上における像の位置dxは、x軸におけるものであり、且つセンサ6上又はセンサチップ上における像の位置dyは、y軸におけるものである。組合せ、即ち組み合わせられた伝達関数は、個々の伝達関数の乗算T12=T・Tから得られる。組み合わせられた伝達関数T12,kがすべてのライトシートk=1,2,3,...,nについて算出される。最終的に空間光変調器(SLM)上に転送される全体的な位相関数φは、複合全体伝達関数
【0077】
【数3】
を形成するための個々の組み合わせられた伝達関数の加算と、φ=角度(T)によるこの複合伝達関数Tの角度の特定とから得られる。
【0078】
図6は、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第2実施形態を示す。この例では、45°構成における倒立型ライトシート顕微鏡の構成が再度使用されるが、この場合、相互に平行なライトシートLB1、LB2、LB3によって照明された試料の複数のストライプを同時に結像させるための空間光変調器(SLM)10.2の支援を伴う。試料1は、オブジェクトキャリア2上に配置される。ここで、SLM10.2は、周波数空間、即ち、例えば結像光学ユニット5、7の対物レンズ5の瞳孔内で検出装置4内に配置される。3つのライトシートLB1、LB2、LB3によって照明された試料1のストライプは、個々のライトシートLB1、LB2、LB3に割り当てられたセンサ位置SP1、SP2、SP3において、再度、センサ6上のチューブレンズ7を介して結像される。
【0079】
また、例示的な第1実施形態と同様に、試料1の全体表現のために使用されるセンサ位置SP1、SP2、SP3上へのこの結像は、この場合にも、所定数のn個の結像面又は試料1を照明するために相互に平行に構成されたn個のライトシートで放出された光子の1/nのみの使用を伴う。ここでも、更に、色補正を目的として補正要素をビーム経路に導入することができる。
【0080】
但し、図10に示される、以下に例示する例示的な第6実施形態と類似して、一変形形態では、マイクロレンズアレイ13の代わりに、空間光変調器(SLM)10.2を中間画像内に配置することもでき、且つ前記SLMは、その場所において、マイクロレンズ13の位相関数を再現することができる。このように、試料内で放出されたすべての光子を検出のために使用することができる点で有利である。
【0081】
図7は、この場合にも、45°構成における倒立型ライトシート顕微鏡の構成を有する、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第3実施形態を示し、これは、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成のこの構成をこの倒立型45°構成に限定するものではない。数十μmの厚さdを有する試料1は、この場合にもオブジェクトキャリア2上に配置される。
【0082】
試料1の3つの面、即ち相互に平行なライトシートLB1、LB2、LB3によって照明される試料1の3つのストライプを同時に結像させることを目的として、例示的な第3実施形態では、3つのセンサ6.1、6.2、6.3が使用され、前記センサは、個々のライトシートLB1、LB2、LB3の焦点面が個々のセンサ6.1、6.2、6.3の検出面と合致するように、検出装置4のチューブレンズ7から異なる距離に配置される。図7に具体的に示されるように、この発展形態は、階段状のセンサを使用し、即ち平面的な表面を形成することなく、階段6.1、6.2、6.3を有するセンサ6を使用する。ここで、階段状のセンサの階段6.1、6.2、6.3の高さ及び幅は、ライトシートLB1、LB2、及びLB3によって照明された試料1のストライプが、それぞれ対応する階段、即ちそれぞれセンサ位置SP1、SP2、及びSP3上において合焦状態で結像されるように適合される。
【0083】
図8には、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第4実施形態が示される。この例でも、倒立型45°ライトシート顕微鏡構成が使用されるが、これは、本発明による構成のこの実施形態をこの構成に限定するものではない。試料1は、この場合にもオブジェクトキャリア2上に配置される。
【0084】
光の導波のためにガラスファイバを含むファイバプレート11の支援により、相互に平行なライトシートLB1、LB2、LB3によって照明された試料1の3つのストライプは、検出装置4の対物レンズ5により合焦状態で同時に結像され、且つセンサ6によって検出される。このために、ファイバプレート11は、階段形状の形態を有する。個々のライトシートLB1、LB2、又はLB3によって照明された試料1のストライプは、それぞれこのライトシートLB1、LB2、又はLB3に属するこの階段形状のファイバプレート11の階段上、即ち個々のライトシートLB1、LB2、又はLB3の焦点面が入射するそのファイバプレート部分11.1、11.2、11.3上において合焦状態で結像される。光は、ファイバプレート11のガラスファイバ内に入力結合され、且つファイバプレート11の反対側のフラットな側部まで導かれる。ここには、フラットなセンサ6が存在し、センサ6は、ファイバプレート11のフラットな側部と直接的に接触しているか、又はこのファイバプレート11から数マイクロメートルの小さい距離に位置し、且つガラスファイバによってセンサ6上に導かれた信号を検出する(個々のライトシートLB1、LB2、LB3に提供されたセンサ位置SP1、SP2、SP3において)。
【0085】
例示的な第4実施形態の発展形態として、図9は、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第5実施形態を示し、この場合にもライトシートLB1、LB2、LB3に割り当てられたファイバプレート部分11.1、11.2、11.3を有する階段形状のファイバプレート11が存在し、ライトシートLB1、LB2、LB3は、3つのライトシートLB1、LB2、LB3のそれぞれが、そのファイバプレート部分11.1、11.2、11.3上、即ちファイバプレート11の階段上において合焦状態で結像され、その結果、光がガラスファイバ内に結合され、且つ最終的に検出ビーム経路内に更に配置された望遠鏡レンズ12により、ファイバプレート11の後ろ向きのフラットな側部によりセンサ6又は検出器上に合焦状態で結像されるように、検出装置4の検出ビーム経路内で検出軸9に沿って配置される。
【0086】
ファイバプレート11の個々のガラスファイバは、例示的な第4実施形態又は例示的な第5実施形態で必ずしも直線である必要はない。ガラスファイバが折り曲げられ、ひいては、ファイバプレート11の端部表面がもはやオリジナルの検出軸9に対して垂直ではないことも想定可能である。これは、結像特性を変化させることなく、ライトシート顕微鏡法のこのような構成の構造及び設計における自由を提供し、その結果、センサ6又は検出器を望ましい場所に配置することができる。
【0087】
図10は、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第6実施形態を示す。既に上述した例示的な実施形態の構成に類似した設計の場合、本明細書では、同一の参照符号は同一の特徴を表記する。ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第6実施形態では、マイクロレンズアレイ13は、チューブレンズ7とセンサ6との間で検出ビーム経路内の中間像平面内に配置される。試料1は、この場合にも3つのライトシートLB1、LB2、LB3により照明される。マイクロレンズアレイのそれぞれのマイクロレンズ13.1、13.2、13.3は、ライトシートLB1、LB2、LB3に割り当てられる。マイクロレンズ13.1、13.2、13.3は、対応して異なる屈折力を有し、且つライトシートLB1、LB2、LB3に割り当てられた個々の面の脱合焦を補正する。この結果、試料1のすべての3つの照明されたストライプは、フラットなセンサ6上の対応するセンサ位置SP1、SP2、SP3内に合焦状態で結像される。
【0088】
図11は、相互に平行なライトシートLB1、LB2、LB3によって照明された試料1の2つのストライプを同時に結像させるための2面検出を伴う倒立型45°構成を有する、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第7実施形態を示す。20μmの厚さdを有する試料1が、この場合にもオブジェクトキャリア2上に配置される。
【0089】
本出願人による独国特許出願公開第102009060490号明細書は、3次元光起動型局所化顕微鏡法(3D-PALM:three-dimensional photo-activated localization microscopy)の方法及び対応する顕微鏡について記述する。3D-PALMの2面方式と同様に、ライトシート顕微鏡により両方の面をセンサ6上で結像させ得、この場合、試料1の2つのストライプは、相互に平行に構成された2つのライトシートLB1、LB2により照明される。このために、検出ビーム経路を2つの部分ビームに分割するビームスプリッタ14と、ビームスプリッタ14によって偏向された第2部分ビームを再度センサ6上に操向するミラーとが検出ビーム経路に挿入される。部分ビームは、チューブレンズ7.1、7.2により、カメラのセンサ6上の対応するセンサ位置SP1、SP2において相互に隣接して結像され、この場合、試料1内の異なる面は、異なる長さを有する光路の結果として合焦状態で結像される。2つの部分ビームの場合、ビームスプリッタ14は、例えば、50:50ビームスプリッタ14であり得、又は他に波長依存型のビームスプリッタ14であり得る。後者の場合、2つのライトシートLB1、LB2によって照明された試料1のストライプからの異なる周波数を有する蛍光放射に伴い、作業を実行する必要がある。独国特許出願公開第102009060490号明細書と同様に、可変調節可能な対物面距離を有する実施形態が可能である。
【0090】
また、検出装置4におけるこのような構成は、3つ以上の相互に平行なライトシートLB1、LB2、LB3による試料1の照明の場合、多面構成としても可能であり、このために、検出ビーム経路を複数の部分ビームに分割するビームスプリッタ14を前記検出ビーム経路内に配置しなければならない。
【0091】
例示的な実施形態において本明細書で記述される本発明によるすべての構成には、異なる波長を検出器の異なる部分上に結像させるためのスペクトルフィルタ又はビームスプリッタが更に提供されてもよい。この場合、個々のライトシートの蛍光はオーバーラップすることができる。
【0092】
次に、試料1の容積走査を実行するために、且つ従って最終的に試料1の全体を表現し得るように、図12a、図12b、及び図12cは、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成を使用した試料1の容積走査用の異なる走査方式を示す。
【0093】
試料1の容積全体を記録するには、結果的に、それぞれのライトシートLB1、LB2、LB3のzスタックを記録するために、試料1とライトシートLB1、LB2、LB3との間で相対的な移動を実行する必要がある。これらの個々のzスタックは、試料1の3D容積を形成するために計算により後に組み合わせられる。相対的な移動は、試料1又はライトシートLB1、LB2、LB3を変位させることにより実行することができる。ここで、好ましくは、図12aに示されるような検出方向に対して平行な相対移動、図12bに示されるようなオブジェクトキャリア2に対して平行な相対移動、及び図12cに示されるようなオブジェクトキャリア2に対して垂直の相対移動の3つの走査方式が想定可能である。
【0094】
ここで、それぞれの場合の図12a~図12cは、試料1を通じたその経路上における、異なる時点t、t、tなどにおける相互に平行に構成された3つのライトシートLB1、LB2、LB3を示す。ここで、図12aの検出方向における走査方向16又は図12bのオブジェクトキャリア2に対して平行な走査方向16が特に有利であり、なぜなら、これにより、可能な最短のライトシート長の使用が許容されるからである。図12bのオブジェクトキャリア2に対して平行な移動は、試料容積内へのエネルギー流入が最低となり、且つその結果、試料1の鮮度の漸減と、試料1に対する放射の光毒性とが低減されるという更なる利点を提供する。
【0095】
図13には、ライトシート顕微鏡法のための構成及び方法のための相互に平行に構成された複数のライトシートLB1、LB2による試料1の適切な照明を目的として、相互に平行に構成されると共に照明装置3内に相互に異なる焦点面を有するライトシートLB1、LB2を生成する装置の例示的な一実施形態が示される。
【0096】
レーザモジュール20は、ガウスレーザビーム21を生成する。このレーザビーム21は、空間周波数空間、即ち瞳孔に対して共役状態にある面内に位置するSLM23全体を均一に照明するようにレンズ22.1及び22.2によって拡幅される。この例では、空間光変調器(SLM)23は、ネマチックSLM、即ち液晶相を含む空間光変調器であり、その液晶分子は優先方向を有する。その全体位相関数φ及び生成が図14に示される適切な位相パターンが、SLM23に対してエンコーディングされる。その結果、複数の平行な焦点変位ライトシートLB1、LB2のスペクトルが生成される。SLM面のスペクトルは、レンズ22.3により実空間内に転送される。ここで、例えば、絞り24によるフィルタリングが存在し得る。絞り面は、レンズ22.4及び22.5により偏向ミラー26上に結像され、前記偏向ミラーは、相互に平行に構成されると共に結像光学ユニット27、28を介して試料1上にビーム内にエンコーディングされた複数のライトシートを操向し、結像光学ユニット27、28は、チューブレンズ27と照明対物レンズ28との組合せであり、前記試料は、試料面2.1内で透明なオブジェクトキャリア2上に配置される。レンズ22.4及び22.5間において、スキャナミラーのペア25は、相互に平行に構成されると共にビーム内にエンコーディングされた複数のライトシートのx方向及びy方向における適切な偏向を保証する。
【0097】
ライトシートLB1、LB2によって照明された試料1の2つのストライプ内では、蛍光放射がそれぞれの場合に励起され、この蛍光放射は、ライトシート顕微鏡法で使用される任意の検出装置により、時間に伴って順番に検出でき、又は他にライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の好適な検出装置4により同時に検出でき、この場合、検出装置4は図13にのみ示される。
【0098】
図14では、異なる焦点位置を有する2つの平行なガウスライトシートの生成の例を使用することにより、個々の成分、即ち基本位相関数からのSLM位相関数φ又はその組成の構築が示される。
【0099】
仮想的なレンズの焦点長fと、
【0100】
【数4】
と、を有する脱合焦伝達関数
【0101】
【数5】
は、個々の焦点がライトシートLB1、LB2の望ましい面BE1、BE2内に位置するように設計され、ここで、xはSLMのx座標を規定し、且つyはSLMのy座標を規定し、且つ空間光変調器(SLM)の座標は個々のピクセルを記述する。
【0102】
ライトシートLB1、LB2は、ブレーズド格子又はウェッジの伝達関数T(x,y)=exp(ixd+iyd)の支援により試料1内に位置決めされ、試料1内のライトシートLB1、L2の位置dxは、x軸におけるものであり、且つ試料1内のライトシートLB1、LB2の位置dyは、y軸におけるものである。組合せ、即ち組み合わせられた伝達関数は、個々の伝達関数の乗算T12=T・Tから得られる。組み合わせられた伝達関数T12,kがすべてのライトシートk=1,2,3,...,nについて算出される。図13で空間光変調器(SLM)23上に最終的に転送される全体位相関数φは、複合全体伝達関数
【0103】
【数6】
を形成するための個々の組み合わせられた伝達関数の加算と、φ=角度(T)によるこの複合伝達関数Tの角度の特定とから得られる。
【0104】
検出動作でのその投射9におけるオーバーラップにもかかわらず、隣接するライトシートLB1、LB2、LB3のストライプからの焦点はずれ光からの干渉を伴うことなく、同一の波長を有する、相互に平行なライトシートLB1、LB2、LB3の異なるストライプから蛍光放射を検出することができるように、図15aは、共焦点検出のために構成されたセンサ6を有するライトシート顕微鏡法のための本発明による構成の例示的な第8実施形態を平面図で示す。図4の例示的な第1実施形態に対応する、ライトシートLB1、LB2、LB3によって照明されたオブジェクトキャリア2上の試料1のストライプからセンサ6までの、それら自体間の光学要素の構成のこの表現は、原則的に、図6図11の例示的な第2~第7実施形態の構成のいずれかにより置換可能であるが、本明細書に図示されていない他の実施形態によって置換することもできる。図15aで重要なことは、これが非常に薄い試料1であるという点にあり、この厚さdは、10μm~30μmの範囲であり、且つ任意選択的に更には10μm未満である。このような薄い試料1の場合、相互に平行に構成されると共にセンサ6上で相互に隣接して結像される複数のライトシートLB1、LB2、LB3からの蛍光放射の共焦点検出は、CMOSカメラがセンサ6として使用される場合、単一のローリングシャッタRSにより可能である。これは、例示的な第8実施形態のセンサ6の正面図を示す図15bに示される。相互に平行に構成されたライトシートLB1、LB2、LB3によってこの薄い試料1で生成された蛍光放射は、このプロセスでは、「ローリングシャッタ」RS内で相互に隣接して検出される。従って、図15bと同様に、ライトシートLB1、LB2、LB3との関係においてセンサ6を方向付けしなければならない。
【0105】
相対的に長いライトシートLB1、LB2、LB3又は相対的に厚い試料1の場合、ライトシートLB1、LB2、LB3(又はその蛍光放射)は、恐らくもはやローリングシャッタRS内で相互に隣接して「フィット」しないであろう。この場合、検出における平行化は、ローリングシャッタRSの移動方向に沿って実現でき、且つそれぞれのライトシートLB1、LB2、LB3に1つのローリングシャッタRS1、RS2、RS3を生成することができる。
【0106】
従って、試料1が20又は30μmよりも相当に厚い場合、複数のローリングシャッタRS1、RS2、RS3による共焦点検出が必要である。図16aには、相対的に厚い試料1の共焦点検出のために構成されたセンサ6を有するライトシート顕微鏡法のための本発明による構成のこのような例示的な第9実施形態が平面図で示される。図4の例示的な第1実施形態に対応する、ライトシートLB1、LB2、LB3によって照明されたオブジェクトキャリア2上の試料1のストライプからセンサ6までの、それら自体間の光学要素の構成のこの表現は、原則的に、図6図11の例示的な第2~第7実施形態の構成のいずれかにより置換可能であるが、本明細書に図示されていない他の実施形態によっても置換可能である。
【0107】
図16bは、この場合、例示的な第9実施形態の検出器6を正面図で示し、適切な作動により、複数のローリングシャッタRS1、RS2、RS3は、CMOSセンサ6の上方で空間的オフセットを伴って延在する。従って、平行化は、他方のセンサ座標に沿って実現される。このために、その検出面による個々のライトシートLB1、LB2、LB3の焦点面の合同カバレージを目的として、その効果に応じて、格子やマイクロレンズなどの結像長を適合させる手段を90度だけ回転させなければならない。この場合、それぞれのローリングシャッタRS1、RS2、RS3への干渉を伴うことなく上方を通過し得るセンサ領域は、ローリングシャッタ又はライトシートの数がnに等しい場合、センサ寸法のn分の1の部分に制限され、次いで、これがライトシートの走査方向における使用可能な視野の制限に結び付く。
【0108】
また、図15図15a及び図16図16aに示された例示的な実施形態に加えて、複数の相互に平行なライトシートの共焦点検出用の更なる代替解決策も可能であり、市販のsCMOSカメラは、相互に隣接して配置された2つのセンサ半体を使用し、これらの半体は、大きい像場(image field)の場合、フレームレートの加速を目的として別個に読み取られる。これは、2つの「ローリングシャッタ」を有するsCMOSカメラを条件とする。これらが同一の方向に延在する場合、このようなカメラは、本明細書で提案される平行化のために、この場合、2倍の倍率で直接的に使用することができる。
【0109】
但し、現時点で市販されているsCMOSカメラシステムでは、2つのローリングシャッタは反対の方向に延在する。但し、このようなカメラも、チャネルのうちの1つについて光学反転を依然として導入することにより、検出の2重の平行化のために使用することができる。このような光学反転は、例えば、マイクロレンズアレイによる更なる結像により、1つのセンサ半体について実現することができる。また、光学反転は、奇数回の反射を伴うミラー構成によっても可能である。また、特に光学反転は、例えば、奇数回の反射を同様に有するルーフペンタプリズムなどの反転プリズムを使用することによっても可能である。この変形形態は特に有利であり、なぜなら、ガラス材料を通じた放射の通過により、且つプリズムを通じたビーム経路の折り曲げにより、画像の反転に加えて背面焦点距離の変化が更に導入され、次いで、この背面焦点距離の変化は、平行化のために必要とされる焦点面の変位のために即座に使用することもでき、且つ相応して設計し得るからである。
【0110】
但し、反対方向のローリングシャッタを有するこのようなカメラを直接的に使用するために、同様に励起時に第2ライトシートの走査方向を反転させることもできるであろう。これは瞳分割により実現でき、この目的のために第2照明ビーム経路及び第2シャッタが必要とされる。
【0111】
共焦点検出の更なる例示的な実施形態は、非常に高速のカメラを有する「デジタルスロットアパーチャ」の実現であり、カメラフレームがそれぞれのライトシート位置毎に記録され、且つ個々のライトシート位置に対応するピクセルのみが評価される。但し、カメラ画像は、この場合、それぞれのライトシート位置毎に記録及び評価しなければならない。
【0112】
また、検出ビーム経路内の第2スキャナにより、デスキャニング(descanning)構成を実現できる。ここで、第2スキャナは、ラインが静止状態に留まるようにライトシートスキャナと同期化される。この結果、上述のように、デジタルスロットアパーチャを有するラインセンサ又は高速エリアセンサを使用でき、又は他にエリアセンサの上流のビーム経路内に真の共焦点スロットアパーチャの構成を有する高速エリアセンサを使用することもできる。
【0113】
上述のように、ライトシートの蛍光放射を検出する際、構造化された照明は、分解能を増大させると共に、バックグラウンド、即ち他のライトシートの焦点はずれ成分を抑制するための更なる選択肢である。
【0114】
照明のインコヒーレントな構造化は、走査されたライトシートから、即ち、例えばガウスビーム、ベッセルビーム、又は類似の非回折制限ビームなどのビームの走査プロセスによって延在するライトシートから得られ、この場合、走査プロセスは、カメラ露光時間との関係において高速である。レーザによる露光が、ここで、例えば音響-光変調器によって形成され得る「ブランキング」により、この走査プロセスにおいて正確に定義された時点で中断される場合、格子を「試料内に書き込む」ことができる。3つの相互に平行なライトシートによる照明の場合、例えば、対応する位相シフトを生成するために、次いで、同一の試料領域の2回の後続の走査で格子周期の1/3だけ格子を変位させなければならない。これは、「ブランキング」の時間的なシフトによって実現される。その後、焦点はずれ成分を除去するために、3つの画像は計算により組み合わせられる。
【0115】
照明のコヒーレントな構造化の場合、格子又は構造化は干渉によって生成される。このようなコヒーレントな構造化の例は、ガスタフソン(Gustafsson)著、「構造化照明顕微鏡法を使用した横方向分解能限度の2倍の超越(Surpassing the lateral resolution limit by a factor of two using structured illumination microscopy)」、ジャーナル・オブ・マイクロスコピー(J.Microsc.)、2000年、第198巻、第2号、p.82~87、及びライトシート顕微鏡法に関連してチェンら(Chen et al.)著、「格子ライトシート顕微鏡法:高時空分解能における胚に対する分子の撮像(Lattice light-sheet microscopy:Imaging molecules to embryos at high spatiotemporal resolution)」、サイエンス(Science)、2014年、第346巻、第6208号:1257998又は国際公開第2014/005682号パンフレットに記述されている。
【0116】
本明細書で取り扱われている、相対的に厚い試料用のライトシート顕微鏡法の平行化の場合、望ましくないバックグラウンド蛍光、特に個々の他のライトシート内のバックグラウンド蛍光を抑圧するために構造化の両方の変形形態を使用することができる。ここで、次いで、複数の相互に平行なライトシートによる試料の同期照明のために以下の動作モードが可能である。
【0117】
照明のインコヒーレントな構造化は、同一の波長を有するn個のライトシートにより単色式で実現することができる。構造化は、「ブランキング」、即ち音響光学チューニング可能なフィルタ(AOTF:acousto-optic tunable filter)、即ち音響光学変調器によって生成される走査プロセスの中断によって実現される。位相シフトは、ライトシートの走査時の「ブランキング」の時間的な変位により実現される。
【0118】
照明のインコヒーレントな構造化は、n個のセンサ領域上で検出される、n個の波長を有するn個のライトシートにより多色式で実現することができる。構造化は、n個の波長におけるAOTFによる同時「ブランキング」により実現される。位相シフトは、ライトシートの走査時の「ブランキング」の時間的な変位により実現される。
【0119】
ライトシートのコヒーレントな構造化による照明は、同一の波長を有するn個のライトシートにより単色式で実現することができる。例えば、sincビーム、又はマシュービーム、又はベッセルビームのコヒーレントな重畳などのいくつかの有利なビーム形態の場合、構造化は、本質的に、SLM上における位相パターンの適切な選択により存在し得る。位相シフトは、スキャナにより、構造化されたライトシートを変位させることによって実現される。
【0120】
ライトシートのコヒーレントな構造化による照明は、n個の波長を有するn個のライトシートにより多色式で実現することができる。例えば、sincビーム、又はマシュービーム、又はベッセルビームのコヒーレントな重畳などのいくつかの有利なビーム形態の場合、構造化は、本質的に、SLM上における位相パターンの適切な選択により存在し得る。n個の色を有するn個のライトシートの場合、SLM上における位相パターンは、異なる色のライトシートについて、平行化される方法で設定される必要がある。位相シフトは、スキャナにより、構造化されたライトシートを変位させることによって実現される。ここで、異なる波長のライトシートの構造化は、すべてのライトシートの位相シフトが1つの共通スキャナによって実現される場合、同一になるように選択する必要があることに留意されたい。
【0121】
この場合、様々な例示的な実施形態で説明される本発明の上述の特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、例示的に規定される組合せのみならず、他の組合せでも又はそれら単独でも使用することができる。
【0122】
更に、ライトシート顕微鏡法のための本発明による構成は、相互に平行に構成された4つ以上のライトシートにより試料1を照明することもでき、相互に平行に構成された2つ又は3つのライトシートLB1、LB2、LB3を使用した用途例の説明は、ここで理解の改善を理由として行われている。
【0123】
装置の特徴に関係する説明は、同様に、これらの特徴に関する限り、対応する方法にも適用されるものであり、方法の特徴は、記述される装置の対応する機能的な特徴を表す。
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図15a-b】
図16a-b】