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特許7192057下水道管路等の懸濁水中における壁面調査診断用装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】下水道管路等の懸濁水中における壁面調査診断用装置
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20221212BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E03F7/00
G02B23/24 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021120003
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592012650
【氏名又は名称】足立建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086036
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 仁士
(72)【発明者】
【氏名】足立 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】関根 吉史
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-056340(JP,A)
【文献】特開2012-078710(JP,A)
【文献】特開2007-267964(JP,A)
【文献】特開2021-017771(JP,A)
【文献】特開2020-063665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/00
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
満水状態の懸濁水中における壁面を調査診断する装置であって、
当該装置の診断機構部を収容するとともに該装置に浮力を与える容器部と、
上部の透明かつ軟質の透視部と下部の剛性体とにより内部に収納空間を有する収納容器が形成され、該収納容器は水密でかつ清水が満たされるとともに、該収納容器内には上方に向けて透視をなす観測器を備えてなる診断機構部を構成する透視用容器と、
前記透視用容器を上下動させる診断機構部を構成する上下動機構部と、
前記透視用容器を旋回させる診断機構部を構成する旋回機構部と、
前記観測器、上下動機構部及び旋回機構部に接続されるとともに外部に取り出される信号用・駆動用ケーブルと、
前記容器部の前後に連結される引張り用ケーブルと、
からなることを特徴とする懸濁水中における壁面調査診断用装置。
【請求項2】
透視部はシリコンゴムよりなることを特徴とする請求項1に記載の懸濁水中における壁面調査診断用装置。
【請求項3】
上下動機構部及び旋回機構部は空気圧により駆動されることを特徴とする請求項1又は2に記載の懸濁水中における壁面調査診断用装置。
【請求項4】
上下動機構部は上下動駆動部及びガイド棒を主体とし、
旋回機構部は回転駆動部を主体とし、
容器部内の中心軸に沿って配されるとともに該容器部を構成する構造体に回転自在に取り付けられる支持軸、
該支持軸に連動し、かつ一体に配される平板状の架台板、
該架台板に配され、透視用容器との間に介装される前記上下動駆動部及びガイド棒、
容器部を構成する構造体に取り付けられるとともに前記支持軸を回転させる回転駆動部、
よりなることを特徴とする請求項1~3に記載の懸濁水中における壁面調査診断用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、懸濁水中における水路構造物の壁面の調査診断用装置に関し、更に詳しくは、下水道管路等の懸濁水で満たされた水路構造物内におけるその壁面の調査診断用装置に関する。
本発明は特には、下水道管路における伏越し部の横断管路いわゆる伏越し管路に適用されて好適な調査診断用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道管路において、伏越し部は上流側及び下流側人孔、これらの人孔間を繋ぐ伏越し管路よりなる。
この伏越し部はことの性質上、懸濁水すなわち汚濁水により常時満水状態となっており、かつその流速も速く、潜水士を含め作業者が立ち入ることは困難であり、更には、懸濁水により視界が極めて不良であり、経年劣化により伏越し管路の管壁面に損傷が発生している場合であっても、伏越し部の流れを遮断することなくその劣化状態を目視により観測することは困難である。一方、伏越し部の流れを遮断して観測作業を行う場合においては、この観測作業を実施するための工事が大型化し、費用が嵩む欠点がある。
このため、下水道管路の供用をなしつつ、すなわち下水道水の流下状態を保ったまま当該伏越し管路内の損傷個所を目視診断できる手段を得ることが期待されている。
なお、本出願人において先に、伏越し管路内の断面の計測につき、特開2015-31026号公報、特開2015-31087号公報、特開2015-48602号公報等を提案したところであるが、これらはいずれも伏越し管路断面の間接的計測に係り、管路内の損傷個所の目視すなわち直接的な診断をなすものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-262332号公報
【文献】実全昭56-83712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、懸濁水で満たされ視界不良な状況下で水路構造物の壁面の状態、特には下水道管路の伏越し部における伏越し管路の壁面の劣化状態を鮮明かつ容易に目視診断できる調査診断用装置を得ることを目的(課題)とする。
本発明は上記目的を達成するため、目視診断用手段としてのカメラ(撮像器)を収納する収納容器において一定の条件を備え、この収容容器を壁面に押し付けて目視診断することにより、この課題を達成できるとの知見に基づいてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の懸濁水中における壁面調査診断用装置は具体的には以下の構成を採る。
本発明の懸濁水中における壁面調査診断用装置の主たる構成は、請求項1に記載のとおり、
満水状態の懸濁水中における壁面を調査診断する装置であって、
当該装置の診断機構部を収容するとともに該装置に浮力を与える容器部と、
上部の透明かつ軟質の透視部と下部の剛性体とにより内部に収納空間を有する収納容器が形成され、該収納容器は水密でかつ清水が満たされるとともに、該収納容器内には上方に向けて透視をなす観測器を備えてなる診断機構部を構成する透視用容器と、
前記透視用容器を上下動させる診断機構部を構成する上下動機構部と、
前記透視用容器を旋回させる診断機構部を構成する旋回機構部と、
前記観測器、上下動機構部に接続されるとともに外部に取り出される信号用・駆動用ケーブルと、
前記容器部の前後に連結される引張り用ケーブルと、
からなることを特徴とする。
本発明は、以下の実施形態でより具体的に示され、かつはその実施形態より抽出される発明概念である。
本発明において、透視用容器を動作させる機構いわゆる動作機構は、上下動機構部、旋回機構部よりなる。
上記において、
a)「上部」、「上方」は本調査診断用装置の浮力による浮き上がり方向を指す。
また、上記構成において、
1)容器部の浮力発生手段として発泡スチロールであること、
2)容器部の浮力発生手段として密封隔室であること、
3)透視部の透明かつ軟質体はシリコンゴムであること、
4)上下動機構部の作動は空気圧(圧縮空気)駆動によること、
5)旋回機構部の作動は空気圧(圧縮空気)駆動によること、
は適宜採択される選択的事項である。
【0006】
(作用)
(1)
本懸濁水中における壁面調査診断用装置の使用において、本調査診断用装置を懸濁水で満たされた水路構造物(例えば伏越し管路)中に導くと、容器部の浮力により上昇し、該調査診断用装置の上部は水路構造物の上面(天井面)に密接する。
(2)
この状態より、透視用容器を上昇させると、透視用容器の透視部は水路構造物の上面からの反力を受けてその上面部の一定部分は変形を受つつ本調査診断用装置を押し下げる。透視用容器は清水で満たされ内圧を生じ、当該透視部の変形は外に凸を保ったまま偏平状の変形となり、曲面に皺などの乱れが生じない。かつ、透視用容器内の清水を介して観測器により鮮明な像すなわち壁面の状態が得られる。当該像は信号ケーブルを介して外部に取り出され、モニター画面に映し出され、更には必要に応じて記録される。
(3)
上記(2)の工程に続き、あるいは(2)の工程とともに、透視用容器を旋回させ、透視用容器内の観測器により初期位置の周辺部の壁面の状態を観測する。
(4)
次に、引張り用ケーブルによる本調査診断用装置の移動をなす。移動に先立って、透視用容器を下降させ、あるいは(2)の工程を維持したまま、次の観測位置で前記(2)(3)の工程を実施する。
(5)
以後(4)の工程を継続し、壁面の状態をモニターをもって目視診断し、引張りケーブルの移動を記録し、またモニター画像の記録も適宜なされる。
(6)
以上の工程が終了すると、本調査診断用装置を初期状態すなわち上記(1)の状態とし、初期位置に戻すかあるいは終端位置に移動させ、本調査診断用装置を水路構造物から取り出す。
【発明の効果】
【0007】
本発明の懸濁水中における壁面調査診断用装置によれば、その浮力をもって自動的に水路構造物の上面に当接し、また、本装置における透視用容器は、その透明な透視部と該透視用容器内の清水とにより懸濁水中にあっても鮮明な視界が得られるとともに、かつ、本装置における透視用容器の上昇動作により、その透視部の軟質性により壁面への密接を保ったまま壁面に沿う変形がなされ観測器の視界面が広がり、広範囲での壁面の状態を目視診断することができ、懸濁水中における壁面の目視診断用手段として画期的である。
更に本発明では、本装置における透視用容器の旋回動作により、観測器による壁面状態の目視診断を更に広範囲になすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の適用される下水道管路の伏越し部の概略構成図。
図2本発明の壁面調査診断用装置の全体構成を示す中央縦断面図。
図3図2の3-3線矢視(部分断面)図。
図4】本壁面調査診断用装置の要部の診断機構部の構成を示す断面図。
図5】本壁面調査診断用装置の要部の動作機構部の構成を示す正面・中央断面図。
図6図5の6-6線矢視図。
図7】操作盤の平面構成図。
図8】本壁面調査診断用装置の動作機構の空気圧制御回路図。
図9】本壁面調査診断用装置に接続される信号・駆動配管用ケーブル系の全体配設図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の下水道管路等の懸濁水中における壁面調査診断用装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1図9は本発明の一実施形態の水路構造物である下水道管路の伏越し部への適用を示し、図1は本発明の適用される下水道管路の伏越し部の概略構成を示し、図2図9は本壁面調査診断用装置の全体並びに各部及び各関連系統の構成を示す。
【0010】
図1は一般的な下水道管路の伏越し部を示す。図において、1は人孔(1Aは上流側人孔、1Bは下流側人孔)、2は人孔1A,1B間の伏越し管路(横断管路とも称す)、3Aは上流側管路、3Bは下流側管路を示す。また、Hは地表の路盤、Iは伏越し人孔部内の土砂等の付着物である。
図示されるように、伏越し管路2は満水状態となっている。また、該伏越し管路2の下底に土砂等の付着物が堆積する場合が多い、
しかして、この伏越し部において、人孔1内にレール材5が建て込まれ、該レール材5に案内されて通線6が誘導される。地上には人孔1の開口部1aに臨んで作業装置Jが配され、該作業装置Jに搭載されたウインチ7(上流側ウインチ7A、下流側ウインチ7B)により、通線6の両端を巻き取り・巻き戻して通線6を移動させ、かつ該通線6に所要の張力を導入する。
上記レール材5、通線6、作業装置J、ウインチ7は、本出願人が先に公開公報をもって提案した特開2015-31026号公報(発明の名称:流体管路における横断管への通線方法、及びその一部に作業体が取り付けられた作業用通線の通線方法、並びに該方法に使用される装置。本公報では作業装置S)により公知であって、本発明の実施に当たってそれらの適用が図られるが、それらと同等のものの使用を除外しない。更には、適宜それらの省略も可能である。
【0011】
図2図8に懸濁水中における壁面調査診断用装置(以下単に「診断装置」という。)Sの詳細構成を示す。
本診断装置Sは上記した下水道管路の伏越し部における満水状態の伏越し管路2内に誘導されて使用される。
本診断装置Sは(左右、前後及び上下は図面におけるもの)、図2にその全体を示すように、容器部10と、該容器部10内に収納設置される診断機構部11と、該診断機構部11を上下に進退動させる上下動機構部12と、同じく該診断機構部11を支持軸(後記)回りに回転させる旋回機構部13と、更には本診断装置Sと地上部との連携をなすケーブル系15とを備えてなる。
【0012】
以下、更に詳しく述べる。
容器部10図2図3参照)
容器部10は、実質的に円筒体をなす容器本体20と、該容器本体20の内壁面に沿って配される浮体21とからなる。
更に詳しくは、容器本体20は、円筒を形成する側面板20a、該側面板20aの内面に所定間隔を保って固設される所要数(本実施例では4)の円板状をなす隔壁20b、円筒体前後のテーパー状をなす縮径部20cからなり、これら(特には側面板20aと隔壁20bと)は互いに剛接されて剛性を保持する。すなわち、容器本体20は本観測装置Sの構造体(フレーム)を構成する。
この構成において、隔壁20b、特には中間部の2つの隔壁(中間隔壁)20bは、本診断装置Sの要部をなす診断機構部11及びその関連機構(12,13)を取付け、支持する用に供せられ、十分な強度・剛性を有する。更に、該隔壁20bはケーブル系15のケーブルを挿通する孔も開設される。
容器本体20は剛性とともに軽量な素材が選ばれるが、その剛性を高めるため側面板20aさらには隔壁20bにおいて補剛材としてのリブが設けられ、またその軽量化を更に図るため側面板20aさらには隔壁20bにおいて複数の空隙孔が開設され得る。
容器本体20の中間部の2つの隔壁20b間において、上半部が解放される。 浮体21は水中にあって浮力を与える軽量素材よりなり、容器本体20の内壁面に沿って固定して配される。本実施形態では、そのような素材として発泡スチロールが採用される。
該容器部10は内部に後記する診断機構部11、上下動機構部12、旋回機構部13等の重量物、その他配線類を収容して水中内において浮力をもって上方へ浮上する。
【0013】
診断機構部11図2図3図4参照)
診断機構部11は、容器部10内に収納設置され、該容器部10に出入されるとともに旋回動される「透過体」を主体とする透視用容器11Aと、該透視用容器11A内に収納される観測器(カメラ部)11Bとを主体とする。
(透視用容器11A、透視部23、レジューサー24、接手部25)
透視用容器11Aは、上部のドーム状をなす透明・軟質の透視部23と、該透視部23の下部に固設されるろと状をなす剛性のレジューサー24とから容器体を形成し、全体として水密を保持する。
更に詳しくは、透視部23は透明・水密・軟質性状の素材をもってドーム(半球殻)状に形成されてなり、当該素材としてはシリコンゴムが好適である。
レジューサー24は、金属、合成樹脂材等の硬質(剛性)素材をもって成形され、上方(図において)に開口して広口をなし、側面部は下方に至るにつれ縮径し、底面部を有し、剛性の容器体をなす。
透視部23とレジューサー24とは接手部25を介して密封され、内部に収容空間を有する収納容器が形成される。
しかして、透視用容器11A内には清水が満たされるとともに、観測器11Bが収納される。
【0014】
図4に透視部23とレジューサー24との接手部25を示す。
この接手部25では、透視部23の下縁に該透視部23と同質の外方に張り出す鍔部23aが一体成形され、レジューサー24の上縁には前記鍔部23aに対応して外方に張り出す硬質の鍔部24aが配され、更にまた該鍔部23aの上面には接手部25の一部をなす硬質の接合円環25aが当接され、鍔部23a,24aの間にOリング25bが介装される。なお、本実施形態ではレジューサー24における鍔部24aは後記する支持板27と兼用され、その一部に形成される。そして、接合円環25a及び鍔部23aにはねじ挿通孔が周方向に適宜間隔を保って開設されるとともに鍔部24aには該ねじ挿通孔に対応する位置にねじ孔が開設され、それらの孔に締め具(ボルト)25cが装着(挿通・螺合)されてなる。しかして、締め具25cの締込みにより透視部23とレジューサー24とは水密に接合される。
【0015】
(支持板27)
そして、上記の透視用容器11Aの外面に支持板27が固設される。
支持板27は実質的に一定厚さ、一定幅、矩形状の平板体をなし、容器部10の円筒長手方向に沿って水平を保って両方向に延設される。本実施形態ではレジューサー24の上縁の鍔部24aが両方向に延設された態様を採る。
【0016】
(観測器11B、カメラ部29)
更に、図4に示されるように、観測器11Bはカメラ部29を主体とし、レジューサー24の内壁面に固設された取付け台30に固定される。カメラ部29のカメラ本体29aはテレビカメラ、好ましくはハイビジョンカメラが使用され、カメラ本体29aの周囲には照明灯29bが配され、そのケーブル系(信号線・電力線)15Aはレジューサー24の底面部の密封部24bを介して外部に取り出される。
カメラ部29の細部の構成について述べると、前記カメラ本体29a、照明灯29bは円筒状の収容筐体29c内にその上面に配されるアクリル製の透明円板29dをもって密封(水密)を保って収容される。そして該透明板29dの上面に円環状の開孔付き蓋29eが載置され、該孔付き蓋29eは長ボルトとナットとからなる締め具29fをもって収容筐体29cの底板との間で締め付けられ、それにより透明円板29dは開孔付き蓋29eを介して収容筐体29cに圧接されるものである。該収容筐体29cはその底板をボルトと介装材とからなる取付け材29gを介して取付け台30へ固定される。
【0017】
(上下動機構部12及び旋回機構部13、支持体系)
本実施形態では、上記した透視用容器11Aの他、前記した上下動機構部12及び旋回機構部13の動作機構に特徴を有する。
これら上下動機構部12、旋回機構部13は共に容器部10の2つの中間隔壁20bにそれぞれ回転自在に固設された支持軸32に支持されるものであって、当該支持軸32、該支持軸32の端部に固設されたアーム部33、該アーム部33に取り付けられる架台板34をもって支持体系をなす。
すなわち、左右の支持軸32は短軸をなし、それぞれ円板状の中間隔壁20bの中心に回転のみを許容する軸受(回転軸受)32aを介して固設される。アーム部33は、扇状(あるいは逆三角形状)の平板体をなし、その下部を支持軸32の端部に剛的に固設され、上方に幅広をなす。架台板34は、所定の幅及び厚さの矩形状の平板体をなし、アーム部33の幅広部に剛的に固設される。該架台板34には前記した診断機構部11のレジューサー24が挿通される孔34aが開設される。これら支持軸32、アーム部33、架台板34は一体をなす。
しかして、この支持体系において、架台板34に載荷される荷重はアーム部33を介して支持軸32に作用し、中間隔壁20bに回転(旋回)を許容して支持される。
【0018】
上下動機構部12図2図3図5図6参照)
上下動機構部12は、容器部10内において前記診断機構部11を上下に進退動させる機構であって、前記した支持体系の架台板34とレジューサー24の外側面に固設された支持板27との間に介装され、2個の持上げ駆動部36を主体とし、支持板27から垂設される2本のガイド(案内)棒37、からなる。2個の持上げ駆動部36及び2本のガイド棒37は、架台板34においてその中心点に対して点対称に配置される。このため、架台板34にはこれらの持上げ駆動部36、ガイド棒37の配設用の挿通孔34a,34bが対称を保って開設されている。
更に詳しくは、持上げ駆動部36は、2個の進退動アクチュエーター36A,36Bからなり、各アクチュエーター36A,36Bは下部のシリンダー36aと該シリンダー36aから上方へ繰り出されるピストン36bとからなり、シリンダー36aは架台板34の下面に固定されて取り付けられ、ピストン36bは架台板34の挿通孔34bに遊挿状に挿通され、その上端はレジューサー24の支持板27の下面に固設される。該持上げ駆動部36は空気圧をもって駆動され、可撓性配管(すなわちホース体)をもって外部に取り出される。
2本のガイド棒37は、剛性をなすとともに支持板27並びに架台板34の中心点に対して点対称に配され、それぞれその上端を支持板27の下面に固定され、支持板27の下面より垂設されてなる。該ガイド棒37は十分に長く、各対応する架台板34の挿通孔34cに摺接状態をもって挿通され、持上げ駆動部36のピストン36bのストローク分を保持して架台板34の下方に伸長され、支持板27の上下移動、ひいては診断機構部11の上下動を案内する。
(作用)
上下動機構部12は、持上げ駆動部36の上下動駆動がなされ、そのピストン36bの上下動により支持板27の上下動をなし、支持板27は2本のガイド棒37により安定的に案内され、診断機構部11をぶれることなく上下動をなす。
【0019】
旋回機構部13図2図3図5図6参照)
旋回機構部13は、容器部10において診断機構部11を支持軸32回りに旋回動させる機構であって、一方(本実施形態では右側)の支持軸32の端部に配されたロータリーアクチュエーターよりなる回転駆動部39を主体とする。当該回転駆動部39の回転(角度、向き)は外部からの信号をもって制御される。
該旋回機構部13において、回転駆動部39の回転動は支持軸32、アーム部33、架台板34、持上げ駆動部36のピストン36b、ガイド棒37を介して支持板27に伝達され、ひいては診断機構部11を旋回動させる。回転駆動部39の回転角(旋回角)は中心面を対称軸としてプラス・マイナス(±)45°を採る。
なお、回転駆動部39は、前記した上下動機構部12の持上げ駆動部36と同様、空気圧をもって駆動され、可撓性配管(すなわちホース体)をもって外部に取り出される。
【0020】
ケーブル系15図2図9参照)
ケーブル系15は、観測器11Bに対する信号・電力用ケーブル系15Aと、上下動機構部12及び旋回機構部13に対する信号用・駆動用ケーブル系15Bと、容器部10に対する引張りケーブル系15Cとからなる。
詳しくは、信号・電力用ケーブル系15Aの端部は前記した観測器11Bにおけるカメラ部29のカメラ本体29a及び照明灯29bに接続され、信号用・駆動用ケーブル系15Bの端部は上下動機構部12及び旋回機構部13の各駆動部36,39及びその変位部に配される変位センサーに接続され、当該信号用、信号用・駆動用ケーブル系15A,15Bの他端は地上部へ導かれる。また、引張りケーブル系15Cは本診断装置Sを介して、一方は巻取り側に、他方は繰出し側に配され、それぞれの端部は本診断装置Sの容器部10の端部に固定され、他端は継手41更には通線6を介して地上部の巻取り・繰出し機構すなわち作業装置Jにおけるウインチ7に導かれる。
【0021】
操作盤43図7参照)
前記した上下動機構部12及び旋回機構部13への駆動指示は、地上部における操作盤43によりなされる。
操作盤43には、図7に示すように、カメラ上下動つまみ(ボタン)44、カメラ旋回動つまみ(ボタン)45が配されるとともに、カメラ角度をディジタル表示するカメラ角度表示部46が配される。これらは上下動機構部12及び旋回機構部13に対する信号用・駆動用ケーブル系15Bにおける信号線すなわち信号用ケーブルを介して上下動機構部12及び旋回機構部13における制御機器(切替え弁)、センサーと信号の授受をなし、アクチュエーター(空気圧シリンダー)を作動させる。
該操作盤43には適宜、照明灯29bのオン・オフスイッチ等、その他のスイッチが配され得る。
【0022】
制御系図8参照)
本診断装置Sにおいて、上下動機構部12、旋回機構部13の各駆動部36,39は信号用・駆動用ケーブル系15Bを介して地上部の空圧源(圧縮機)48に接続され、操作盤43での操作に従って上下動・旋回動の制御がなされる。
【0023】
(診断装置Sと地上部との接続)(図9参照)
上記した伏越し管路2内にある本診断装置Sの各動作機器はケーブル系15を介して地上部に配した各機器に接続される。
図9は本診断装置Sと地上部とのケーブル系15(引張りケーブル系15Cを除く。)を介してなされる接続を示す。
すなわち、本診断装置S内の観測器11Bのカメラ部29は信号・電力用ケーブル系15A(信号線)を介して地上部に引き出され、モニター50に接続される。また、上下動機構部12及び旋回機構部13の各駆動部36,39は信号用・駆動用ケーブル系15Bの駆動用ホースを介して地上部に引き出され、該ホースを巻取り・巻戻すリール49を介して空気圧縮機(コンプレッサー)48に接続される。信号用・駆動用ケーブル系15Bの信号線は地上部の操作盤43に接続されている。なお、信号・電力用ケーブル系15A(信号線)、信号用・駆動用ケーブル系15Bの信号線においても、適宜巻取り・巻戻す作用をなすリールが介装される。
【0024】
本診断装置Sによる伏越し管路2の観測
以下、本診断装置Sを使用してなされる下水道管路の伏越し部における伏越し管路2の壁面の観測につき、その実施手順並びに本診断装置Sの作用について述べる。
本診断装置Sは図1に示す下水道管路の伏越し部における伏越し管路2に誘導されるが、本出願人が先に提案した公知の方法が利用されるものである。
図1は該診断装置Sの誘導に先立って準備される伏越し部の状態を示し、以下、下記(1) ~ (3)の工程により当該図1に示す状態を得る。
【0025】
(1) 通線6の導通
通線6を上流側地上より上流側人孔1A、伏越し管路2、下流側人孔1B、そして下流側地上に導通する。
通線6の伏越し管路2内への導通については、従来より使用されている噴射ノズルを用いることも、他の適宜の方法を採ることは自由である。当該噴射ノズルは本出願人らの特許第2791502号(特許公報では下水道管用洗浄装置)により公知である。
【0026】
(2) レール材5設置
上流側人孔1A、下流側人孔1Bにレール材5を設置する。レール材5は、長尺の鋼(特にはステンレス鋼)製の型材いわゆるC型チャンネルよりなり、上位より鉛直部5a、曲がり部5b、水平部5cの各部位よりなるとともに、鉛直部5aは適宜分割され、継ぎ足されて長尺体を形成する。該型材は前面に溝、その内部に溝空間が形成され、前面を人孔1(1A,1B)の中心に向け、後面を壁面に沿って配される。
(2a)
レール材5を地上部より人孔1内に挿入し、該レール材5の下端が伏越し管路2の管口に臨む位置になるとき、水平部5cの上面を該管口の頂部より一定の間隔を保持しつつ押し込み、しかる後、レール材5を引き上げ、水平部5cの上面を該管口の頂部に当接させる。レール材5の鉛直部5aは人孔1の内壁面と所定の間隔をもって配される。
地上部においては、レール材5の上端が固定される。
【0027】
(3) 通線の定置
通線6を作業装置Jのウインチ7に繋ぎ、作業装置Jの上流側ウインチ7A、下流側ウインチ7Bを駆動し、緩み状態にある通線6をレール材5の鉛直部5a及び曲がり部5bの溝より溝空間内に導き、該溝空間内に沿わせて下流側ウインチ7Bに巻き取る。これにより、通線6は伏越し部において、上流より下流にかけて一貫して所定状態に張設される。
【0028】
(4) 本診断装置Sの設置
通線6の定置がなされた後、以下の作業手順により本診断装置Sの定置がなされる。
(4a)本診断装置Sの接続
地上部において、通線6の所要位置で、本診断装置Sを適宜の接続器具をもって介装設置する。
すなわち、本診断装置Sの前後の引張りケーブル系15Cは短いものであり、本診断装置Sは通線6に継手41を介して接続される。また、ケーブル系15A,15Bは十分に長く、そのまま地上部に残され、それぞれの末端は地上部の各機器に接続される。
(4b)本診断装置Sの引込み
作業装置Jのウインチ7(7A,7B)を駆動して本診断装置Sを地上より上流側人孔1A内に導き、レール材5の案内作用により人孔1Aの下端に導き、レール材5の曲がり部5bを介して伏越し管路2の管口すなわち初期位置に臨ませる。
【0029】
(5) 本診断装置Sによる観測
伏越し管路2の管口部に誘導された本診断装置Sにより伏越し管路2の管壁の観測が開始される。
(5a)本診断装置Sの浮上
本診断装置Sは、その容器本体20に設置された浮体21により大きな浮力を受け、本診断装置Sの上面は伏越し管路部2の内壁面頂部に押し付けられることになる。
【0030】
(5b)透視用容器11Aの上昇
上記(5a)の状態で、操作盤43での上昇指示により上下動機構部12の持上げ駆動部36を作動させて透視用容器11Aを上昇させ、透視部23を伏越し管路部2の上壁面に強く押し付ける。
この透視用容器11Aの上昇において、上下動機構部12に配された2本のガイド棒34の案内を受け、透視用容器11Aはぶれることなく円滑に上昇する。
また、透視部23は軟質体をもって形成されていることからこの押付け作用により容易に変形し、その上面部分は伏越し管路部2の上壁面の一定範囲(α)にわたって同一曲面をもって密着する。このとき、透視用容器11Aは清水をもって密封された状態であるので、カメラ部29のカメラ本体29aの視界に乱反射等の乱れを生じさせることがなく、該カメラ本体29aを介して伏越し管路部2の内壁面の状態を鮮明に見ることができる。これにより、懸濁水により視界を邪魔されることがなく、伏越し管路部2の壁面の状態を鮮明かつ精確に把握することができる。
留意すべきは、透視部23の変形によっても透視用容器11Aの容積すなわち清水の量は一定を保ち、更には清水の内圧の高まりにより透視部23は常に外方への押付け力を保持し、凸状態を保つ。
【0031】
(5c)透視用容器11Aの旋回
観測領域を管周方向に広めるため透視用容器11Aの旋回が行われる。
すなわち、操作盤43での左右旋回指示により、回転駆動部39を駆動させて透視用容器11Aはそのまま、すなわち透視部23の突出状態を保ったまま、管周方向への旋回がなされる。本(5c)の工程においても、透視用容器11Aは清水をもって密封された状態であるので、カメラ本体29の視界に乱反射等の乱れを生じさせることがなく、該カメラ本体29を介して伏越し管路部2の内壁面の状態を鮮明に見ることができる。これにより、懸濁水により視界を邪魔されることがなく、伏越し管路部2の壁面の状態を更に広い範囲において鮮明かつ精確に把握することができる。
【0032】
(6) 本診断装置Sの移動
本診断装置Sは、当該装置Sによる1地点(例えば初期位置)での伏越し管路部2の管壁状態が観測されると、次の地点への管軸方向への移動がなされる。
この移動に先立って、本診断装置Sは初期状態すなわち前記(5a)の状態とし、あるいは透視用容器11Aを上昇状態すなわち前記(5b)の状態のままとし、移動をなす。この移動はウィンチ7の操作によるが、移動中の距離の記録、カメラによる映像表示・記録は継続される。透視用容器11Aの上昇状態においてカメラによる観測は継続してなされる。
(6a)移動後の観測
次地点に至ると、前記した(5b)の工程を実施する。
(6b)旋回操作
当該地点において、観測領域を更に管周方向に広める場合には前記(5c)の工程を実施し、透視用容器11Aの旋回操作を行う。
(6c)移動の継続
以後、所期の地点に至るまで上記(6a)(6b)の工程を継続して実施する。
【0033】
(7) 本診断装置Sの取出し
本診断装置Sによる観測が終了すると、本診断装置Sをウインチ7の操作により下流側人孔1Bへ引き出し、あるいは上流側人孔1Aへ引き戻し、しかる後、人孔1B又は人孔1Aに配したレール材5を介して地上部へ搬出する。
【0034】
(8) 作業の終了
以上の(4) ~(7) の工程をもって本診断装置Sによる伏越し管路2の壁面の観測作業は終了する。
【0035】
(本診断装置Sの諸元)
本診断装置Sの諸元の一例を示すと、
・全長(L):80cm(中央の隔壁20b間:28cm)
・径(φ):40cm
また、診断機構部11につき、
・透視部23の円周径:16cm
・レジューサー24の高さ:15cm
・全高(自然状態):20cm
を採る。
【0036】
(実施形態の効果)
本実施形態では、満水状態の伏越し管路2内に誘導された本診断装置Sにつき、その容器部10が発揮する浮力をもって該診断装置Sの上面部が伏越し管路2の上面に密接し、更には上下動機構部12の作動すなわち透視用容器11Aの上昇作用により、浮力に抗して伏越し管路2の上面に押し付けられる。このとき、透視用容器11Aの透視部23は軟質体をもって形成されていることからこの押付け作用により容易に変形し、その上面部分は伏越し管路部2の上壁面の一定範囲にわたって同一曲面をもって密着する。そして、透視用容器11Aは清水をもって密封された状態であるので、カメラ本体29aの視界に乱反射等の乱れを生じさせることがなく、該カメラ本体29aを介して伏越し管路部2の内壁面を一定範囲に亘って鮮明に見ることができる。これにより、懸濁水により視界を邪魔されることがなく、伏越し管路部2の壁面の状態を鮮明かつ精確に把握することができる。
また、旋回機構部13の作動すなわち透視用容器11Aの旋回作用により、広範囲に壁面の状況を観測(診断、モニター画面で診断)することができる。
【0037】
本実施形態において、以下の各態様が採られる。
(変形例1)
支持軸32、アーム部33及び駆動部39を廃し、架台板34を中間隔壁20bに直接的に固設する態様、すなわち架台板34を固定する態様。
この場合、架台板34の取付け位置は本実施形態での架台板34と同一位置に限定されず、容器部10の中心位置にすることができる。
(変形例2)
透視用容器11Aの支持構造において、支持板27をレジューサー24の鍔部24aと分離し、レジューサー24の側面に直接的に固設する態様。
(変形例3)
容器部10の構造は本実施形態に限定されず、浮力の生ずる金属製の閉パイプにより円周上所定間隔を保って配して側面部を構成し、該側面部の内側に同じく閉パイプで間隔を保って隔壁を構成してなる態様を採ることができる。
(その他の態様)
(a) レジューサー24の形状は本実施形態に限定されず、直円筒あるいは円錐台の形状の態様を採ることができる。
(b) 上下動機構部12につき、持上げ駆動部36は1個のアクチュエーターとし、3本のガイド棒37は3本として、それらを対称に配する態様。
(c) 上記(5b)工程の初期位置において透視用容器11Aを管周方向に一定角度に旋回させ、その角度を保ったまま本診断装置Sを伏越し管路2の軸方向に移動させる態様。この態様により、管内周の頂部に限定されない管壁の目視調査が実施される。
【0038】
本発明は叙上の実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想の範囲内で種々設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
S…壁面調査診断用装置、1…人孔、1A…上流側人孔、1B…下流側人孔、2…伏越し管路、3A…上流側管路、3B…下流側管路、5…レール材、6…通線、7…ウインチ、7A…上流側ウインチ、7B…下流側ウインチ、
10…容器部、11…診断機構部、11A…透視用容器、11B…観測器(カメラ部)、12…上下動機構部、13…旋回機構部、15…ケーブル系、20…容器本体、20a…側面板、20b…隔壁、21…浮体、23…透視部、24…レジューサー、27…支持板、29…カメラ部、32…支持軸、33…アーム部、34…架台板、36…持上げ駆動部、37…ガイド棒、39…回転駆動部、43…操作盤
【要約】
【目的】 下水道管路等の懸濁水中の観察困難な対象に対し、その劣化等の状態を鮮明かつ容易に観測できる観測装置を得ること。
【構成】 前部の透明かつ軟質の透視部と後部の剛性体とにより透視用容器が形成され、該透視用容器は水密でかつ清水が満たされ、該透視用容器内には前方に向けて透視をなす観測器が配されることを要部とする。更に前記透視用容器を上
下動・旋回させる動作機構部を有する観測装置。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9