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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】自動走行方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20221212BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20221212BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
G05D1/02 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021126076
(22)【出願日】2021-07-30
(62)【分割の表示】P 2019114954の分割
【原出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2021175407
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暁大
(72)【発明者】
【氏名】中畠 章博
(72)【発明者】
【氏名】水倉 泰治
(72)【発明者】
【氏名】北野 恵大
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列状に配置された作業対象物が複数列に配置された圃場において作業車両が自動走行を行う自動走行方法であって、
前記作業対象物の位置に基づいて生成された目標経路に従って前記作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両が前記目標経路に従って自動走行中に前記作業対象物を障害物として検出した場合に、前記目標経路上の走行目標位置と前記障害物の位置とに基づいて前記障害物を回避する衝突回避経路を生成することと、
前記作業車両を前記衝突回避経路に従って自動走行させることと、
前記衝突回避経路に既定値以上の角度変化がある変曲点が存在する場合に、前記変曲点を前記走行目標位置として設定することと、
を実行する自動走行方法。
【請求項2】
前記作業車両が前記変曲点に到達した場合に、当該変曲点から次の走行目標位置までの衝突回避経路を生成する、
請求項に記載の自動走行方法。
【請求項3】
前記衝突回避経路に前記変曲点が存在しない場合に、前記目標経路上に設定された前記走行目標位置を維持する、
請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項4】
前記作業車両が左右に配置された前記作業対象物の間を自動走行中に前記作業対象物を障害物として検出した場合に、前記衝突回避経路を生成する、
請求項1~のいずれか1項に記載の自動走行方法。
【請求項5】
前記作業車両は、前記作業対象物の複数列のうち奇数列又は偶数列を跨いで走行する、
請求項1~のいずれか1項に記載の自動走行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の自動走行を可能にする自動走行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車両用の自動走行システムとしては、事前に生成された走行経路に基づいて作業車両の走行を制御するように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
ちなみに、作業車両を自動走行させる走行経路には、例えば、所定間隔を置いて並列に並べられた複数の作業経路と、複数の作業経路を作業車両の走行順に接続する複数の旋回経路とが含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6170185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、上記のような作業車両用の自動走行システムにおいては、走行経路上に制御目標位置を設定し、その制御目標位置と走行経路との差分(ずれ量)に応じて作業車両の進行方向を調整することで、作業車両を走行経路に従って自動走行させることが提案されている。
このような自動走行システムにおいては、制御目標位置を設定するに当たり、作業車両が作業経路上に位置するときは、作業経路上又は作業経路の延長線上に制御目標位置を設定し、作業車両が旋回経路上に位置するときは、旋回経路上又は旋回経路の延長線上に制御目標位置を設定することが考えられている。
しかしながら、このように制御目標位置を設定した場合には、作業車両が旋回経路の終端に達するまで旋回走行状態が維持されるため、作業車両が旋回経路から作業経路に移行するときの作業車両の姿勢が作業経路に対して適切な姿勢でない場合がある。このような場合、作業地が例えば作業経路に隣接する果樹列や作物列などが存在する果樹園や圃場であると、作業経路に対して適切な姿勢でない作業車両が作業経路に隣接する果樹列や作物列などに衝突しないようにするためには、果樹列や作物列などの終端から大きく離れた位置に、作業経路と旋回経路との接続地点を設定する必要がある。すると、自動走行用の走行経路に含まれる旋回経路などの非作業経路が長くなり、作業時間の短縮や燃料消費量の削減などを図る上において改善の余地がある。
【0005】
つまり、作業車両の自動走行を可能にする上においては、旋回終了時における作業車両の姿勢を、作業経路での作業走行に適した姿勢にすることが極めて重要になっている。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作業車両を作業対象物への衝突を回避しつつ自動走行させることが可能な自動走行方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動走行方法は、列状に配置された作業対象物が複数列に配置された圃場において作業車両が自動走行を行う自動走行方法であって、前記作業対象物の位置に基づいて生成された目標経路に従って前記作業車両を自動走行させることと、前記作業車両が前記目標経路に従って自動走行中に前記作業対象物を障害物として検出した場合に、前記目標経路上の走行目標位置と前記障害物の位置とに基づいて前記障害物を回避する衝突回避経路を生成することと、前記作業車両を前記衝突回避経路に従って自動走行させることと、を実行する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示す図
図2】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図3】果樹園用の作業車両の構成を示す斜視図
図4】果樹園用の作業車両の構成を示す正面図
図5】果樹園用の作業車両の構成を示す背面図
図6】左カバー体を取り外した状態での果樹園用の作業車両の構成を示す右側面図
図7】右カバー体を取り外した状態での果樹園用の作業車両の構成を示す左側面図
図8】果樹園用の作業車両の構成を示す平面図
図9】果樹園用の目標経路の一例を示す平面図
図10】方位算出制御のフローチャート
図11】傾き算出処理の説明図
図12】傾きオフセット量算出処理の説明図
図13】方位算出処理の説明図
図14】障害物検出システムなどの概略構成を示すブロック図
図15】アンテナユニットの使用位置と格納位置とを示す要部の側面図
図16】作業車両が作業経路上で旋回経路との境界付近に位置していないときの制御目標位置の設定状態を示す説明図
図17】作業車両が作業経路上で旋回経路との境界付近に位置するときの制御目標位置の設定状態を示す説明図
図18】作業車両が作業経路と旋回経路との境界に位置するときの制御目標位置の設定状態を示す説明図
図19】作業車両が旋回経路上で作業経路との境界付近に位置していないときの制御目標位置の設定状態を示す説明図
図20】作業車両が旋回経路上で作業経路との境界付近に位置するときの制御目標位置の設定状態を示す説明図
図21】作業車両が旋回経路上から外れた状態で作業経路との境界付近に位置するときの制御目標位置の設定状態の比較例を示す説明図
図22】作業車両が旋回経路上から外れた状態で作業経路との境界付近に位置するときの制御目標位置の設定状態を示す説明図
図23】傾斜面で旋回走行中の作業車両における散布液の増減に伴う重心位置の変化を示す説明図
図24】傾斜面で旋回走行中の作業車両における重心位置の変化に伴う旋回中心位置及び旋回走行軌跡の変化を示す説明図
図25】異なる旋回中心位置での軌道追従制御による制御目標位置の設定状態を示す説明図
図26】異なる旋回中心位置での軌道追従制御において制御目標位置を一致させた制御目標位置の設定状態を示す説明図
図27】制御目標位置補正処理のフローチャート
図28】左右の前ライダーセンサの測定範囲を示す説明図
図29】経路補正処理のフローチャート
図30】ポテンシャル法で生成された衝突回避経路の一例を示す説明図
図31】ポテンシャル法で生成された衝突回避経路に基づく経路補正の一例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車両用の自動走行システムを、葡萄園又は林檎園などの果樹園にて複数列に並ぶ状態で植えられた葡萄又は林檎などの果樹や果樹列間の土壌などを作業対象とする果樹園用の作業車両に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
尚、本発明に係る作業車両用の自動走行システムは、果樹園以外の、例えば茶園において複数列に並ぶ状態で植えられた茶樹や茶樹列間の土壌などを作業対象とする茶園用の作業車両、圃場にて複数列に並ぶ状態で植えられた作物や作物列間の土壌などを作業対象とする作業車両、及び、トラクタ、乗用草刈機、乗用田植機、コンバイン、除雪車、ホイールローダ、運搬車、などの自動走行可能な乗用作業車両、並びに、無人耕耘機や無人草刈機などの無人作業車両に適用することができる。
【0011】
図1~2に示すように、本実施形態に例示された果樹園用の作業車両Vは、作業車両用の自動走行システムを使用することで、作業地の一例である果樹園における自動走行が可能になっている。作業車両用の自動走行システムには、作業車両Vの車体1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と無線通信可能に通信設定された無線通信機器の一例である携帯通信端末3、などが含まれている。携帯通信端末3には、自動走行に関する各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の表示デバイス(例えば液晶パネル)3Aなどが備えられている。
【0012】
図1~8に示すように、作業車両Vは、果樹園にて複数列に並べて植えられた葡萄又は林檎などの果樹を跨いで走行する門型の車体1、果樹に対して薬液や水などの散布液を散布する散布装置4、衛星測位システムの一例であるGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して車体1の現在位置や現在方位などを測定する測位ユニット(位置情報取得部の一例)5、車体1の周囲を監視してその周囲に存在する障害物を検出する障害物検出システム(障害物検出部の一例)6、及び、車体1の前方側と後方側とを撮影するカメラユニット7、などが備えられている。障害物検出システム6は、果樹園に植えられた果樹などを障害物として検出する。
【0013】
尚、この作業車両Vには、散布装置4に代えて又は加えて、果樹の枝葉を摘み取るバリカン型の摘心装置(図示せず)、及び、果樹間の土壌に対して除草や砕土などを行うカルチ(図示せず)、などの作業装置を備えることができる。携帯通信端末3には、HMIタブレットやスマートフォンなどを採用することができる。無線通信には、Wi-Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信などを採用することができる。
【0014】
図1図3~8に示すように、車体1は、前後方向視で門型に形成された車体フレーム10と、車体フレーム10における左右の下端部に連結された左右のクローラ11とを有している。車体1の左側部位には、エンジン12やバッテリ13などが搭載されている。車体1の右側部位には、横向きL字状に形成された鋼板製のオイルタンク14や散布装置4の貯留タンク(貯留部の一例)4Aなどが備えられている。車体1の天井部には、天井部の前部側に配置された前アンテナユニット15、天井部の後部側に配置された後アンテナユニット16、及び、車体1の走行状態を表示する積層形の表示灯17、などが備えられている。エンジン12やバッテリ13などは、車体1における左側の外面を形成する左カバー体18にて覆われている。オイルタンク14や貯留タンク4Aなどは、車体1における右側の外面を形成する右カバー体19にて覆われている。
【0015】
図3~8に示すように、車体フレーム10は、左右方向に所定間隔を置いて平行に配置された左右のサイドフレーム20、左右のサイドフレーム20における前端側の上端部同士に架設された前クロスメンバ21、及び、左右のサイドフレーム20における後端側の上端部同士に架設された後クロスメンバ22、などを有している。これにより、車体フレーム10は、左右のサイドフレーム20の間に果樹の通過を許容する空間が確保された門型に形成されている。左右の各サイドフレーム20には、車体1における左右の内側面を形成する内壁体23が取り付けられている。
【0016】
図4~7に示すように、各サイドフレーム20は、車体1の前後方向に延びるベース部材20A、ベース部材20Aの前端部から上方に延びる前支柱部材20B、ベース部材20Aの後端部から上方に延びる後支柱部材20C、及び、前支柱部材20Bの上端部と後支柱部材20Cの上端部とに架設された上側部材20D、などを有している。これにより、左右のサイドフレーム20は左右方向視で矩形状に形成されている。
【0017】
図3~6に示すように、左右のサイドフレーム20のうち、左サイドフレーム20は、エンジン12やバッテリ13などが載置される載置台24を支持している。載置台24は、左サイドフレーム20の下部から左方に張り出すことで、左側のクローラ11の真上に当該クローラ11に近接した状態で配置されている。図6に示すように、載置台24には、マフラ25や燃料タンク26を支持する第1支持部24Aが備えられている。
【0018】
図4~5、図7に示すように、右サイドフレーム20には、その下部から右方に張り出す状態でオイルタンク14が連結されている。これにより、オイルタンク14は、右側のクローラ11の真上に当該クローラ11に近接した状態で配置されている。
【0019】
つまり、この作業車両Vにおいては、重量の大きいエンジン12やバッテリ13、及び、オイルが貯留されることで重量が大きくなるオイルタンク14などが、車体1の下部にて左右に振り分けた状態で配置されている。これにより、この作業車両Vは、左右バランスの均衡化が図られた状態で低重心化が図られている。その結果、作業車両Vは、果樹園の斜面での等高線走行などを安定して行うことができる。
【0020】
図3図6~7に示すように、左右のクローラ11は、それらのトラックフレームにサイドフレーム20のベース部材20Aが兼用されている。左右の各クローラ11において、トラックフレーム(ベース部材)20Aの前端部には、駆動スプロケット11Aと第1転輪11Bとが回転可能に支持されている。トラックフレーム20Aの後端部には、テンション用の遊輪11Cが前後方向に変位可能に支持されている。トラックフレーム20Aの前後中間部には、トラックフレーム20Aから横外方に延びる前後の支軸11Dを支点にして上下方向に天秤揺動する前後のイコライザアーム11Eが備えられている。各イコライザアーム11Eにおける前後の遊端部には、第2転輪11Fが回転可能に支持されている。つまり、トラックフレーム20Aの前後中間部には、4つの第2転輪11Fが上下方向に揺動変位可能に支持されている。駆動スプロケット11Aと各転輪11B,11Fと遊輪11Cには、クローラベルト11Gが回し掛けられている。トラックフレーム20Aの後部には、遊輪11Cを後方に変位付勢することでクローラベルト11Gを緊張状態に維持するテンション機構(図示せず)が備えられている。
【0021】
図3~6に示すように、左側のクローラ11において、前後の支軸11Dは、それらの左端部が左側の支持プレート27を介して載置台24の左端部に連結されている。図4~5、図7に示すように、右側のクローラ11において、前後の支軸11Dは、それらの右端部が右側の支持プレート27を介してオイルタンク14の右端部に連結されている。つまり、この作業車両Vにおいては、車体フレーム10と左右のクローラ11とが一体構造に構成されている。
【0022】
図4図6~7に示すように、各クローラ11の駆動スプロケット11Aには、エンジン12からの動力が一対の静油圧式無段変速装置(以下、HSTと称する)30と左右のチェーン式伝動装置31とを介して伝えられている。各HST30には、可変容量形でアキシャルプランジャ形の油圧ポンプ30A、固定容量形でアキシャルプランジャ形の油圧モータ30B、及び、油圧ポンプ30Aと油圧モータ30Bとを接続する複数の油圧配管30C、などを有する分離型HSTが採用されている。
【0023】
上記の構成により、左右のクローラ11は、対応するHST30による独立変速が可能な状態でエンジン12からの動力で駆動されている。これにより、この車体1は、左右のクローラ11が前進方向に等速駆動されることで前進方向に直進する前進状態になり、左右のクローラ11が後進方向に等速駆動されることで後進方向に直進する後進状態になる。車体1は、左右のクローラ11が前進方向に不等速駆動されることで前進しながら緩旋回する前進旋回状態になり、左右のクローラ11が後進方向に不等速駆動されることで後進しながら緩旋回する後進旋回状態になる。車体1は、左右いずれか一方のクローラ11が駆動停止された状態で他方のクローラ11が駆動されることでピボット旋回状態になり、左右のクローラ11が前進方向と後進方向とに等速駆動されることでスピン旋回状態になる。車体1は、左右のクローラ11が駆動停止されることで走行停止状態になる。
【0024】
尚、左右のクローラ11は、それらの駆動スプロケット11Aが左右の電動モータにて駆動される電動式に構成されていてもよい。
【0025】
図6に示すように、各HST30において、それらの油圧ポンプ30Aは、エンジン12の出力軸12Aに直結された単一のポンプ軸(図示せず)で駆動される二連式である。二連式の油圧ポンプ30Aは、燃料タンク26の真下に位置する配置で載置台24に載置されている。図3~4、図6~7に示すように、左右の油圧モータ30Bは、各サイドフレーム20の前端下部に連結された伝動ケース29の上部に取り付けられている。各油圧配管30Cは、車体フレーム10に沿って敷設されている。左右のチェーン式伝動装置31は、対応する伝動ケース29の内部において、油圧モータ30Bの出力軸(図示せず)から、クローラ11の駆動スプロケット11Aと一体回転する駆動軸(図示せず)に伝動している。
【0026】
図3図5~8に示すように、散布装置4は、薬液などを貯留する貯留タンク4A、薬液などを圧送する散布用ポンプ4B、散布用ポンプ4Bを駆動する電動式の散布モータ4C、散布モータ4Cから散布用ポンプ4Bに伝動するベルト式伝動装置4D、車体1の背部において縦向き姿勢で左右に2本ずつ並列に備えられた散布管4E、各散布管4Eに3個ずつ備えられた合計12個の散布ノズル4F、薬液などの散布量や散布パターンを変更する電子制御式のバルブユニット4G、及び、これらを接続する複数の散布用配管(図示せず)、などを有している。
【0027】
貯留タンク4Aは、オイルタンク14の上面に備えられた前後の支持フレーム32,33を介してオイルタンク14に支持されている。散布用ポンプ4Bは、載置台24の後部に載置されている。散布モータ4Cは、載置台24の後部に備えられた第2支持部24Bに支持されている。散布モータ4Cは、散布用ポンプ4Bの真上に配置されている。左側の2本の散布管4Eは、それぞれ、左サイドフレーム20に備えられた平面視L字状の支持部材20Eに、上下に延びる配管ホルダ34と、配管ホルダ34の上下中間部に連結されたブラケット35とを介して取り付けられている。右側の2本の散布管4Eは、それぞれ、右サイドフレーム20に備えられた平面視L字状の支持部材20Eに、上下に延びる配管ホルダ34と、配管ホルダ34の上下中間部に連結されたブラケット35とを介して取り付けられている。
【0028】
各散布ノズル4Fは、対応する散布管4Eに上下方向に位置変更可能に取り付けられている。これにより、各散布ノズル4Fは、それらの上下間隔及び散布管4Eに対する高さ位置を散布対象に応じて変更することができる。各配管ホルダ34は、対応するブラケット35に上下方向に位置変更可能にピン連結されている。これにより、各散布ノズル4Fは、それらの車体1に対する高さ位置を散布対象に応じて配管ホルダ34ごとに変更することができる。各ブラケット35は、対応する支持部材20Eに左右方向に位置変更可能にピン連結されている。これにより、各散布ノズル4Fは、それらの車体1に対する左右位置を散布対象に応じてブラケット35ごとに変更することができる。
【0029】
尚、散布装置4において、各散布管4Eに備えられる散布ノズル4Fの数量は、果樹の種類や各散布管4Eの長さなどに応じて種々の変更が可能である。
【0030】
図3図5~9に示すように、各散布ノズル4Fのうち、最左端の散布管4Eに備えられた3個の散布ノズル4Fは、車体1の左外方に位置する果樹Zに向けて薬液などを左向きに散布する。各散布ノズル4Fのうち、最左端の散布管4Eに隣接する左中側の散布管4Eに備えられた3個の散布ノズル4Fは、車体1における左右中央の空間に位置する果樹Zに向けて薬液などを右向きに散布する。各散布ノズル4Fのうち、最右端の散布管4Eに備えられた3個の散布ノズル4Fは、車体1の右外方に位置する果樹Zに向けて薬液などを右向きに散布する。各散布ノズル4Fのうち、最右端の散布管4Eに隣接する右中側の散布管4Eに備えられた3個の散布ノズル4Fは、車体1における左右中央の空間に位置する果樹Zに向けて薬液などを左向きに散布する。
【0031】
上記の構成により、この散布装置4においては、車体1の左側背部に備えられた2本の散布管4Eと6個の散布ノズル4Fとが左側の液体散布部4L(作業部の一例)として機能する。又、車体1の右側背部に備えられた2本の散布管4Eと6個の散布ノズル4Fとが右側の液体散布部(作業部の一例)4Rとして機能する。そして、左右の液体散布部4L,4Rは、車体1の背部において、左右方向への散布が可能な状態で、左右の液体散布部4L,4Rの間に果樹Zの通過を許容する左右間隔を置いて配置されている。
【0032】
散布装置4において、左右の液体散布部4L,4Rによる散布パターンには、左右それぞれの液体散布部4L,4Rが左右の両方向に散布する4方向散布パターンと、左右の液体散布部4L,4Rによる散布方向が限定された方向限定散布パターンとが含まれている。方向限定散布パターンには、左側の液体散布部4Lが左右の両方向に散布し、かつ、右側の液体散布部4Rが左方向のみに散布する左側3方向散布パターンと、左側の液体散布部4Lが右方向のみに散布し、かつ、右側の液体散布部4Rが左右の両方向に散布する右側3方向散布パターンと、左側の液体散布部4Lが右方向のみに散布し、かつ、右側の液体散布部4Rが左方向のみに散布する2方向散布パターンとが含まれている。
【0033】
図7に示すように、オイルタンク14は、その左端部が右サイドフレーム20のベース部材20Aに支持されている。オイルタンク14の右端部には支持プレート36が連結されている。支持プレート36は、その上端部が前後の支持部材37を介して右サイドフレーム20の上側部材20Dに連結されている。これにより、オイルタンク14の右端部は、支持プレート36と前後の支持部材37とを介して右サイドフレーム20の上側部材20Dに支持されている。
【0034】
つまり、オイルタンク14は、その左右の両端部が右サイドフレーム20に両持ち支持されることで、貯留タンク4Aが載置される載置台として使用可能な高い支持強度を有している。尚、オイルタンク14は、その平面視の形状が載置台24の平面視形状と左右対称になっている。
【0035】
図2に示すように、車体1には、測位ユニット5からの測位情報などに基づいて車体1を果樹園の目標経路P(図9参照)に従って自動走行させる自動走行制御部40、エンジン12に関する制御を行うエンジン制御部41、各HST30に関する制御を行うHST制御部42、及び、散布装置4などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部43、などが搭載されている。各制御部40~43は、マイクロコントローラなどが搭載された電子制御ユニットや、マイクロコントローラの不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリなどのEEPROM)に記憶された各種の情報や制御プログラムなどによって構築されている。不揮発性メモリに記憶された各種の情報には、事前に作業対象の果樹園に応じて生成された目標経路Pなどが含まれている。
【0036】
各制御部40~43は、車載ネットワークの一例であるCAN(Controller Area Network)を介して相互通信可能に接続されている。尚、車載ネットワークには、例えば、車載EthernetやCAN-FD(CAN with FLexible Data rate)などを採用してもよい。
【0037】
図9に示すように、目標経路Pには、所定間隔を置いて並列に並べられた複数の作業経路Pwと、複数の作業経路Pwを作業車両Vの走行順に接続する複数の旋回経路Ptとが含まれている。各作業経路Pwは、複数列に並べて植えられた果樹Zに対して作業車両Vが作業を行いながら走行する経路である。各旋回経路Ptは、作業車両Vが作業を行わずに旋回走行する経路である。目標経路Pには、各経路Pw,Ptにおける車体1の走行方向、設定車速、走行状態、及び、作業状態、などの自動走行に関する各種の情報が含まれている。
【0038】
ちなみに、各作業経路Pwにおいては、各作業経路Pwが複数列に並べて植えられた果樹Zに対応する直線経路又はそれに近い略直線経路であることから、車速が比較的速い速度(作業速度)に設定されている。又、各旋回経路Ptにおいては、旋回経路Ptからの作業車両Vの逸脱を防止するために、車速が作業経路Pwでの車速よりも低い速度(旋回速度)に設定されている。
【0039】
尚、図9に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路Pは、車体1に備える作業装置の種類や作業形態などの車両情報、及び、果樹園ごとに異なる果樹Zの配列状態や列数などの作業地情報、などに応じて種々の変更が可能である。
【0040】
図2に示すように、携帯通信端末3には、表示デバイス3Aなどに関する制御を行う端末制御部3Bが備えられている。端末制御部3Bは、マイクロコントローラなどが搭載された電子制御ユニット、及び、マイクロコントローラの不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリなどのEEPROM)に記憶された各種の情報や制御プログラムなどによって構築されている。端末制御部3Bには、表示デバイス3Aなどに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部3Ba、及び、果樹Zが複数列に並ぶ果樹園での作業車両Vの自動走行を可能にする目標経路P(図9参照)を生成する目標経路生成部3Bb、などが含まれている。表示制御部3Ba及び目標経路生成部3Bbは、端末制御部3Bの不揮発性メモリに記憶された各種の制御プログラムなどによって構築されている。不揮発性メモリに記憶された各種の情報には、作業地情報や目標経路P(図9参照)などが含まれている。これにより、携帯通信端末3の表示デバイス3Aにて作業地情報や目標経路Pなどを表示させることができる。
【0041】
車体1及び携帯通信端末3には、自動走行制御部40と端末制御部3Bとの間での無線通信を可能にする通信モジュール28,3Cが備えられている。車体1の通信モジュール28は、携帯通信端末3との無線通信にWi-Fiが採用される場合には、通信情報をCANとWi-Fiとの双方向に変換する変換器として機能する。端末制御部3Bは、自動走行制御部40との無線通信にて車体1の現在位置や現在方位などを含む車体1に関する各種の情報を取得することができる。これにより、携帯通信端末3の表示デバイス3Aにて、目標経路Pに対する車体1の現在位置や現在方位などを含む各種の情報を表示させることができる。
【0042】
図2図8に示すように、測位ユニット5には、複数の測位衛星8(図1参照)から送信された電波を受信する2つのGNSSアンテナ5A,5B、各GNSSアンテナ5A,5Bが受信した電波を利用して各GNSSアンテナ5A,5Bの位置(以下、単にアンテナ位置と称することがある)を測定する2つのGNSS受信機5C,5D、車体1の姿勢や方位などを計測する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)5E、及び、各GNSS受信機5C,5Dからの位置情報や慣性計測装置5Eからの計測情報に基づいて車体1の現在位置や現在方位などを算出する測位モジュール5F、などが含まれている。
【0043】
各GNSS受信機5C,5D及び慣性計測装置5Eは、自動走行制御部40にCANを介して相互通信可能に接続されている。慣性計測装置5Eは、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサなどを有している。測位モジュール5Fは、自動走行制御部40の不揮発性メモリに記憶された測位用の制御プログラムなどによって構築されている。
【0044】
GNSSを利用した測位方法には、DGNSS(Differential GNSS:相対測位方式)やRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS:干渉測位方式)などがある。この実施形態では、移動体の測位に適した精度の高いRTK-GNSSが採用されている。そのため、果樹園周辺の既知位置には、RTK-GNSSによる測位を可能にする基地局9が設置されている。
【0045】
図1~2に示すように、基地局9には、複数の測位衛星8から送信された電波を受信するGNSSアンテナ9A、GNSSアンテナ9Aが受信した電波を利用してGNSSアンテナ9Aの位置(以下、単にアンテナ位置と称することがある)を測定するGNSS受信機9Bが備えられている。GNSS受信機9Bは、測定したアンテナ位置と基地局9の設置位置とに基づいて位置補正情報を取得する。測位ユニット5及び基地局9には、測位ユニット5の各GNSS受信機5C,5Dと基地局9のGNSS受信機9Bとの間での無線通信を可能にする通信モジュール5G,5H,9Cが備えられている。これにより、測位ユニット5の各GNSS受信機5C,5Dは、基地局9のGNSS受信機9Bから位置補正情報を受け取ることができる。
【0046】
測位ユニット5の各GNSS受信機5C,5Dは、それらが測定した各アンテナ位置を、基地局9のGNSS受信機9Bからの位置補正情報に基づいて補正する。これにより、各GNSS受信機5C,5Dは、各GNSSアンテナ5A,5Bの位置(グローバル座標系での緯度、経度、高度)を高い精度で測定することができる。測位ユニット5は、GNSS受信機5C,5Dと慣性計測装置5Eとを有することにより、周囲環境の悪化などに起因したGNSS受信機5C,5Dにおける測位精度の低下を慣性計測装置5Eにて補完することができる。測位ユニット5は、慣性計測装置5Eに蓄積される計測誤差を、GNSS受信機5C,5Dが測定したアンテナ位置に基づいて補正することができる。測位ユニット5は、各GNSSアンテナ5A,5Bの受信感度を高めるために各GNSSアンテナ5A,5Bが車体1の最上部に配置されていても、車体1のローリングに起因した目標経路Pに対する各アンテナ位置の車体左右方向での位置ずれを、各GNSSアンテナ5A,5Bの設置高さと慣性計測装置5Eが計測する車体1のロール角とに基づいて補正することができる。これにより、測位ユニット5は、車体1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高い精度で測定することができる。
【0047】
図8に示すように、測位ユニット5の各GNSSアンテナ5A,5Bは、車体1の天井部における車体前後方向に所定間隔を置いた前後2箇所の位置に分散して設置されている。前後のGNSSアンテナ5A,5Bは、それらの高さ位置が同じ高さに設定されている。前後のGNSSアンテナ5A,5Bのうち、前GNSSアンテナ5Aは、前GNSSアンテナ5Aに対応するGNSS受信機5Cに接続された通信モジュール5Gなどとともに前アンテナユニット15に含まれている。後GNSSアンテナ5Bは、この後GNSSアンテナ5Bに対応するGNSS受信機5Dに接続された通信モジュール5H、慣性計測装置5E、及び、携帯通信端末3に対する通信モジュール28、などとともに後アンテナユニット16に含まれている。前後のGNSSアンテナ5A,5Bにおけるアンテナ間の位置関係及び設置高さなどは、自動走行制御部40の不揮発性メモリに記憶されている。
【0048】
測位モジュール5Fは、基本的には、前後のGNSS受信機5C,5Dが測定する前後のアンテナ位置のうち、後GNSS受信機5Dが測定する後アンテナ位置を基準にして車体1の現在位置を算出する。測位モジュール5Fは、後GNSS受信機5Dの測位精度のみが低下した場合には、前GNSS受信機5Cが測定する前アンテナ位置を基準にして車体1の現在位置を算出する。これにより、測位モジュール5Fは、車体1の現在位置を高い精度で算出することができる。又、自動走行制御部40は、測位モジュール5Fが算出した精度の高い車体1の現在位置などに基づいて作業車両Vを目標経路Pに従って自動走行させることができる。
【0049】
尚、測位モジュール5Fが算出する車体1の現在位置は、種々の設定が可能であり、例えば、車体1の上端における左右中心上の前端位置、車体1の上端における左右中心上の後端位置、車体1の上端における左右中心上の前後中間位置、車体1の中心位置、車体1の重心位置、又は、スピン旋回状態での旋回中心位置、などに設定することが考えられる。
【0050】
測位モジュール5Fは、前後のGNSS受信機5C,5Dが測定する前後のアンテナ位置に基づいて車体1の現在方位を算出する方位算出制御を実行する。
【0051】
図10のフローチャート及び図11~13に基づいて、方位算出制御における測位モジュール5Fの制御作動について説明すると、測位モジュール5Fは、先ず、各GNSS受信機5C,5Dが測定した前後のアンテナ位置p1,p2を、前後いずれか一方のアンテナ位置(ここでは後アンテナ位置p2)を原点としたNED座標系に座標変換する座標変換処理を行う(ステップ#1)。次に、測位モジュール5Fは、NED座標系での後アンテナ位置p2に対する前アンテナ位置p1のX方向の差分ΔxとY方向の差分ΔyとからX軸(北:N)を0度としたアンテナ間を結ぶ直線Lの傾きθLを算出する傾き算出処理を行う(ステップ#2、図11参照)。又、測位モジュール5Fは、自動走行制御部40の不揮発性メモリに記憶された前後のGNSSアンテナ5A,5B間の位置関係から車体1を真北(N)に向けた場合のアンテナ間の傾きオフセット量Δθを算出する傾きオフセット量算出処理を行う(ステップ#3、図12参照)。そして、測位モジュール5Fは、傾き算出処理で得た直線Lの傾きθLと傾きオフセット量算出処理で得たアンテナ間の傾きオフセット量Δθとの差分から車体1の方位θvを算出する方位算出処理を行う(ステップ#4、図13参照)。
【0052】
つまり、この作業車両Vにおいては、測位モジュール5Fが、前後のアンテナ位置に基づいて車体1の現在方位を算出することから、単一のアンテナ位置から車体1の現在方位を算出する場合のように、その過程において車体1の移動ベクトルを求める必要がなくなる。そのため、車体1の移動ベクトルを求めることが難しい旋回半径の小さい旋回走行時、又は、車体1の移動ベクトルを求めることができない車体1の走行停止時においても、車体1の現在方位を高い精度で算出することができる。
【0053】
自動走行制御部40は、携帯通信端末3の表示デバイス3Aに対するユーザのタッチ操作で自動走行の開始が指令された場合に、不揮発性メモリに記憶された散布作業用の目標経路P、及び、測位モジュール5Fからの測位情報、などに基づいて、車体1(作業車両V)を目標経路Pに従って自動走行させる自動走行制御を実行する。
【0054】
自動走行制御には、エンジン12に関する制御指令をエンジン制御部41に送信するエンジン用指令処理、HST30に関する制御指令をHST制御部42に送信するHST用指令処理、及び、散布装置4に関する制御指令を作業装置制御部43に送信する作業用指令処理、などが含まれている。
【0055】
自動走行制御部40は、エンジン用指令処理においては、目標経路Pに含まれた設定エンジン回転数に基づいてエンジン回転数の変更を指示するエンジン回転数変更指令、などをエンジン制御部46Aに送信する。エンジン制御部46Aは、自動走行制御部46Fから送信されたエンジン回転数変更指令に応じてエンジン回転数を変更するエンジン回転数制御、などを実行する。
【0056】
自動走行制御部40は、HST用指令処理においては、目標経路Pに含まれた車体1の走行状態に基づいて走行状態の切り換えを指示する走行状態切り換え指令、及び、目標経路Pに含まれた設定車速に基づいて車速の変更を指示する車速変更指令、などをHST制御部42に送信する。HST制御部42は、自動走行制御部40から送信された走行状態切り換え指令に応じて各HST30の作動を制御する走行状態切り換え制御、及び、自動走行制御部40から送信された車速変更指令に応じて各HST30の作動を制御する車速制御、などを実行する。
【0057】
自動走行制御部40は、作業用指令処理においては、目標経路Pの各作業経路Pwに含まれた散布パターンに基づいて左右の液体散布部4L,4Rによる散布パターンの切り換えを指示する散布パターン切り換え指令、目標経路Pに含まれた作業開始地点に基づいて左右の液体散布部4L,4Rによる薬液などの散布の開始を指示する散布開始指令、及び、目標経路Pに含まれた作業停止地点に基づいて左右の液体散布部4L,4Rによる薬液などの散布の停止を指示する散布停止指令、などを作業装置制御部43に送信する。作業装置制御部43は、自動走行制御部40から送信された散布パターン切り換え指令、散布開始指令、及び、散布停止指令、などに応じてバルブユニット4Gの作動を制御して左右の液体散布部4L,4Rによる薬液などの散布状態を制御する散布制御、などを実行する。
【0058】
図示は省略するが、車体1には、エンジン12の出力回転数を検出する第1回転センサ、各HST30における油圧モータ30Bの出力回転数を検出する左右の第2回転センサ、及び、燃料タンク26における燃料の残量を検出する残量センサ、などの各種の検出機器が備えられている。
【0059】
図14に示すように、障害物検出システム6には、左右の前ライダーセンサ6Aと単一の後ライダーセンサ6Bとが含まれている。図3~4、図6に示すように、左右の前ライダーセンサ6Aのうち、左側の前ライダーセンサ6Aは、車体1の天井部における左側の前端部に、車体1の左前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、左側の前ライダーセンサ6Aは、車体左前方側の所定範囲が測定範囲に設定されている。図3~4、図7に示すように、右側の前ライダーセンサ6Aは、車体1の天井部における右側の前端部に、車体1の右前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、右側の前ライダーセンサ6Aは、車体右前方側の所定範囲が測定範囲に設定されている。図5~7に示すように、後ライダーセンサ6Bは、車体1の天井部における左右中央の後端部に、車体1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後ライダーセンサ6Bは、車体後方側の所定範囲が測定範囲に設定されている。
【0060】
各ライダーセンサ6A,6Bは、照射したレーザ光が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各ライダーセンサ6A,6Bから測定範囲の各測距点(測定対象物)までの距離を測定する。各ライダーセンサ6A,6Bは、それらの測定範囲の全体にわたってレーザ光を高速で縦横に走査し、走査角(座標)ごとの測距点までの距離を順次測定する。各ライダーセンサ6A,6Bは、測定した各測距点までの距離や各測距点に対する走査角(座標)などの測定情報から距離画像を生成するとともに障害物と推定される測距点群を抽出し、抽出した測距点群に関する測定情報を、障害物に関する測定情報として自動走行制御部40に送信する。
【0061】
図14に示すように、障害物検出システム6には、左右の前超音波センサ6C、前後の左超音波センサ6D、前後の右超音波センサ6E、及び、単一の障害物探知部6Fが含まれている。図3~4、図6~7に示すように、左右の前超音波センサ6Cは、車体1における左右の前端部に前向き姿勢で配置されている。これにより、左右の前超音波センサ6Cは、車体前方側における左右の所定範囲が測定範囲に設定されている。図3に示すように、前後の左超音波センサ6Dは、車体1における前後の左側端部に左向き姿勢で配置されている。これにより、前後の左超音波センサ6Dは、車体1の左外方側における前後の所定範囲が測定範囲に設定されている。前後の右超音波センサ6Eは、車体1における前後の右側端部に右向き姿勢で配置されている。これにより、前後の右超音波センサ6Eは、車体1の右外方側における前後の所定範囲が測定範囲に設定されている。
【0062】
障害物探知部6Fは、各超音波センサ6C~6Eでの超音波の送受信に基づいて、各超音波センサ6C~6Eの測定範囲における測定対象物の存否を判定する。障害物探知部6Fは、発信した超音波が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各超音波センサ6C~6Eから測定対象物までの距離を測定する。障害物探知部6Fは、測定した測定対象物までの距離と測定対象物の方向とを、障害物に関する測定情報として自動走行制御部40に送信する。
【0063】
各ライダーセンサ6A,6B及び障害物探知部6Fには、マイクロコントローラなどが搭載された電子制御ユニットや、マイクロコントローラの不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリなどのEEPROM)に記憶された各種の制御プログラムなどが含まれている。各ライダーセンサ6A,6B及び障害物探知部6Fは、自動走行制御部40にCANを介して相互通信可能に接続されている。
【0064】
図2図14に示すように、自動走行制御部40には、各ライダーセンサ6A,6B及び障害物探知部6Fからの障害物に関する測定情報に基づいて、作業車両Vが障害物に衝突する虞を回避する衝突回避モジュール40Aが含まれている。衝突回避モジュール40Aは、自動走行制御部40の不揮発性メモリに記憶された衝突回避用の制御プログラムなどによって構築されている。
【0065】
図14に示すように、カメラユニット7には、車体1の前方側を撮影する左右の前カメラ7A、車体1の後方側を撮影する単一の後カメラ7B、及び、各カメラ7A,7Bからの画像を処理する画像処理装置7C、が備えられている。図3~4、図6図8に示すように、左右の前カメラ7Aのうち、左側の前カメラ7Aは、車体1の天井部における左側の前端部に、車体1の左前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、左側の前カメラ7Aは、車体左前方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。図3~4、図7~8に示すように、右側の前カメラ7Aは、車体1の天井部における右側の前端部に、車体1の右前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、右側の前カメラ7Aは、車体右前方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。図5~8に示すように、後カメラ7Bは、車体1の天井部における左右中央の後端部に、車体1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後カメラ7Bは、車体後方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。
【0066】
画像処理装置7Cには、マイクロコントローラなどが搭載された電子制御ユニットや、マイクロコントローラの不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリなどのEEPROM)に記憶された各種の制御プログラムなどが含まれている。画像処理装置7Cには、果樹園の果樹などを認識するための学習処理が施されている。画像処理装置7Cは、自動走行制御部40にCANを介して相互通信可能に接続されている。画像処理装置7Cは、各カメラ7A,7Bからの情報を処理して、車体左前方画像、車体右前方画像、及び、車体後方画像、などを生成して自動走行制御部40に送信する。自動走行制御部40は、送信された各画像を携帯通信端末3の端末制御部3Bに転送する。これにより、車体左前方画像、車体右前方画像、及び、車体後方画像、などを携帯通信端末3の表示デバイス3Aにて表示させることができる。そして、ユーザは、表示デバイス3Aに表示された各画像を目視することで、車体前方側の状況及び車体後方側の状況を容易に把握することができる。
【0067】
尚、カメラユニット7を障害物検出システム6に含めるようにしてもよい。この場合、測距精度の高い各ライダーセンサ6A,6B及び各超音波センサ6C~6Eからの障害物に関する情報と、物体の判別精度が高いカメラユニット7からの障害物に関する情報とに基づいて、障害物の検出をより高い精度で行うことができる。
【0068】
つまり、前述した自動走行ユニット2には、測位ユニット5、障害物検出システム6、カメラユニット7、自動走行制御部40、エンジン制御部41、HST制御部42、及び、作業装置制御部43、などが含まれている。そして、これらが適正に作動することにより、作業車両Vを目標経路Pに従って精度よく自動走行させることができるとともに、散布装置4による薬液などの散布作業を適正に行うことができる。
【0069】
図3~4、図8図15に示すように、車体フレーム10の前クロスメンバ21には、前アンテナユニット15を支持する平面視U字状の支持部材50が取り付けられている。図4図15に示すように、支持部材50には、側面視の形状が下向きL字状に形成された左右の支持プレート51が含まれている。図15に示すように、各支持プレート51は、それらの上端部において車体前後方向に延びる長孔51Aが形成されている。各支持プレート51には、それらの長孔51Aを利用して、前アンテナユニット15の底部に備えられた左右のブラケット52が、前後一対のボルト53などを介して連結されている。
この構成により、前アンテナユニット15は、前側のボルト53などによる各支持プレート51との連結を解除した後、後側のボルト53などによる各支持プレート51との連結を緩めることで、図15に実線で示す車体上方の使用位置から図15に二点鎖線で示す車体前方の格納位置に位置変更することができる。
【0070】
図3図5~8に示すように、車体フレーム10の後クロスメンバ22には、後アンテナユニット16を支持する平面視U字状の支持部材54が取り付けられている。図5~7に示すように、支持部材54には、側面視の形状が下向きL字状に形成された左右の支持プレート55が含まれている。各支持プレート55は、それらの上端部に車体前後方向に延びる長孔55Aが形成されている。各支持プレート55には、それらの長孔55Aを利用して、後アンテナユニット16の底部に備えられた左右のブラケット(図示せず)が、前後一対のボルト56などを介して連結されている。
この構成により、後アンテナユニット16は、後側のボルト56などによる各支持プレート55との連結を解除した後、後側のボルト56などによる各支持プレート55との連結を緩めることで、車体上方の使用位置から車体後方の格納位置に位置変更することができる。
【0071】
図3~4、図8図15に示すように、左右の支持プレート51は、それらの前下部に左右の支持金具57を介して左右の前照灯58が取り付けられている。左右の支持金具57は、上下方向への角度調節が可能な状態で左右の支持プレート51にボルト連結されている。左右の前照灯58は、左右方向への揺動変位が可能な状態で左右の支持金具57にボルト連結されている。
この構成により、左右の前照灯58は、それらの照明方向を上下方向と左右方向とに調整することができる。又、図15に示すように、前アンテナユニット15を図15に実線で示す使用位置から図15に二点鎖線で示す格納位置に位置変更させる場合には、左右の前照灯58を、前向きの使用位置から横外向きの退避位置に位置変更しておくことにより、前アンテナユニット15と左右の前照灯58との干渉を回避することができる。
【0072】
図3~6、図8図15に示すように、支持部材50の左側部には、前述した表示灯17が着脱可能に取り付けられるブラケット59が連結されている。
【0073】
上記の構成により、この作業車両Vにおいては、各アンテナユニット15,16の位置を使用位置から格納位置に変更し、表示灯17をブラケット59から取り外すことで、作業車両Vを納屋などに格納する場合や搬送車などで搬送する場合に、各アンテナユニット15,16及び表示灯17が他物に接触して破損する不都合の発生を抑制することができる。
【0074】
図3図5~8に示すように、左右の支持プレート55には、停止ランプとバックランプとを有する左右のコンビネーションランプ60が取り付けられている。左右のコンビネーションランプ60は、前述した後アンテナユニット16の位置変更に支障を来たさない位置に配置されている。
【0075】
図3~4、図6図8に示すように、車体1の左側において、表示灯17を支持するブラケット59には、バッテリ13から各制御部40~43などの各電装品への給電を断続する電源スイッチ61が取り付けられている。左側の支持プレート27には、ユーザの立ち乗りを可能にするステップ62が取り付けられている。左カバー体18は、その前後中間部に位置する上部カバー18A(図3参照)が上下方向に開閉揺動可能に備えられている。そして、車体1の左側内部には、上部カバー18Aを開位置に保持した場合に手動操作が可能になる十字揺動式の操縦レバー63(図6参照)が備えられている。操縦レバー63は、その操作方向及び操作量を検出するセンサユニット(図示せず)などを介して自動走行制御部40に接続されている。自動走行制御部40は、センサユニットから送信される操縦レバー63の操作方向及び操作量に応じて、車体1の走行状態の切り換えをHST制御部42に送信する。HST制御部42は、自動走行制御部40から送信された走行状態の切り換えに応じて各HST30の作動を制御する。
【0076】
つまり、この作業車両Vにおいては、ユーザがステップ62に立ち乗りすることにより、電源スイッチ61の操作を容易に行うことができる。又、上部カバー18Aを開位置に保持した状態で、ユーザがステップ62に立ち乗りすることにより、操縦レバー63を利用した手動による移動走行が可能になっている。
【0077】
自動走行制御部40による自動走行制御には、図16~20に示すように、作業車両V(車体1)の現在位置p0から進行方向に所定距離(例えば1m)L1を置いた目標経路P上の位置に作業車両Vの制御目標位置pvを設定し、この制御目標位置pvを追従するように作業車両Vを自動走行させる軌道追従制御が含まれている。これにより、自動走行制御部40は、作業車両Vを目標経路Pに従って自動走行させることができる。
【0078】
軌道追従制御について詳述すると、自動走行制御部40は、図16に示すように、作業車両Vが作業経路Pw上で次の旋回経路Ptとの境界付近に位置するまでの間、言い換えると、作業車両Vの現在位置p0が作業経路Pwの終端と旋回経路Ptの始端との第1接続地点Pa(境界)から所定距離L1以上離れた作業経路Pw上に位置する間は、作業経路Pw上に制御目標位置pvを設定し、この制御目標位置pvを追従するように作業車両Vを自動走行させる。これにより、自動走行制御部40は、作業車両Vが作業経路Pw上で次の旋回経路Ptとの境界付近に移動するまでの間は、作業車両Vを作業経路Pwに従って自動走行させることができる。その結果、作業車両Vが作業経路Pwから逸脱して作業車両Vの空間又はその左右に位置する果樹Zに衝突する虞を回避することができる。
【0079】
自動走行制御部40は、図17に示すように、作業車両Vが作業経路Pw上で次の旋回経路Ptとの境界付近に位置するとき、言い換えると、作業車両Vの現在位置p0が前述した第1接続地点Paから所定距離L1以内の作業経路Pw上に位置する間は、作業経路Pwの延長線Lw上に制御目標位置pvを設定し、この制御目標位置pvを追従するように作業車両Vを自動走行させる。これにより、作業車両Vが作業経路Pwから次の旋回経路Ptに移行する間際まで、作業車両Vを、その姿勢を作業経路Pwに沿った姿勢に維持しながら、作業経路Pwに従って自動走行させることができる。その結果、作業車両Vが、作業経路Pwと旋回経路Ptとの境界付近において、果樹列Zr上及び果樹列Zr間から完全に抜け出す前に旋回を開始して果樹Zに衝突する経路を取る虞を回避することができる。
【0080】
自動走行制御部40は、図18に示すように、作業車両Vが作業経路Pwと次の旋回経路Ptとの境界に達したとき、言い換えると、作業車両Vの現在位置p0が前述した第1接続地点Pa上に位置するときに、制御目標位置pvを作業経路Pwの延長線Lw上から旋回経路Pt上に切り換える。そして、自動走行制御部40は、図19に示すように、作業車両Vが旋回経路Pt上で作業経路Pwとの境界付近に位置するまでの間、言い換えると、作業車両Vの現在位置p0が旋回経路Ptの終端と作業経路Pwの始端との第2接続地点Pb(境界)から所定距離L1以上離れた旋回経路Pt上に位置する間は、旋回経路Pt上に制御目標位置pvを設定し、この制御目標位置pvを追従するように作業車両Vを自動走行させる。これにより、作業車両Vが旋回経路Pt上で次の作業経路Pwとの境界付近に位置するまでの間は、作業車両Vを旋回経路Ptに従って自動走行させることができる。
【0081】
自動走行制御部40は、図20に示すように、作業車両Vが旋回経路Pt上で次の作業経路Pwとの境界付近に位置するとき、言い換えると、作業車両Vの現在位置p0が前述した第2接続地点Pbから所定距離L1以内の旋回経路Pt上に位置するときは、作業経路Pw上に制御目標位置pvを設定し、この制御目標位置pvを追従するように作業車両Vを自動走行させる。これにより、作業車両Vが旋回経路Pt上で次の作業経路Pwとの境界付近に位置するときは、作業車両Vを旋回経路Ptに従って自動走行させながら、作業車両Vが作業経路Pwに近づくに連れて、作業車両Vの姿勢を作業経路Pwでの走行に適した姿勢に近づけることができる。その結果、作業車両Vが旋回経路Pt上での旋回走行を終了したときには、作業車両Vの位置及び姿勢を、作業車両Vが次の果樹列Zr上及び果樹列Zr間に移動するのに適した位置及び姿勢にすることができる。
【0082】
自動走行制御部40は、作業車両Vが旋回経路Ptと次の作業経路Pwとの境界を通過し、次の作業経路Pw上で次の旋回経路Ptとの境界付近に位置するまでの間、言い換えると、作業車両Vの現在位置p0が前述した第2接続地点Pbを通過し、次の作業経路Pwにおける前述した第1接続地点Paから所定距離L1以上離れた経路上に位置する間も、作業経路Pw上に制御目標位置pvを設定し、この制御目標位置pvを追従するように作業車両Vを自動走行させる(図16参照)。
【0083】
このように、自動走行制御部40が制御目標位置pvを設定し、この制御目標位置pvを追従するように作業車両Vを自動走行させることにより、作業車両Vが果樹列Zr上及び果樹列Zr間を走行している場合だけでなく、作業車両Vが果樹列Zr上及び果樹列Zr間から抜け出すとき、及び、作業車両Vが次の果樹列Zr上及び果樹列Zr間に移動するときに、作業車両Vが不適切な姿勢や経路を取って果樹Zに衝突する虞を回避することができる。
【0084】
しかも、このような衝突回避を可能にする上において、果樹列Zrに対する作業経路Pwの長さをあまり長くする必要がないことから、目標経路Pに含まれる旋回経路Ptなどの非作業経路を極力短くすることができ、作業時間の短縮や燃料消費量の削減などを図ることができる。
【0085】
又、自動走行制御部40は、作業車両Vが旋回経路Pt上に位置する間は、制御目標位置pvを旋回経路Ptの延長線Lt上に設定しないことから、制御目標位置pvが旋回経路Ptの延長線Lt上に設定されることに起因して、作業車両Vが旋回経路Ptから逸脱する虞を回避することができる。
【0086】
そして、図21~22に示すように、作業車両Vが旋回経路Ptでの旋回走行中に旋回経路Pt上から位置ずれしたとしても、自動走行制御部40は、図21に示すように旋回経路Ptの延長線Lt上に制御目標位置pvを設定することはなく、図22に示すように作業経路Pw上に制御目標位置pvを設定することから、作業車両Vが旋回経路Pt上から位置ずれした場合においても、作業車両Vが次の果樹列Zr上及び果樹列Zr間に移動するときには、作業車両Vの位置及び姿勢を、次の果樹列Zr上及び果樹列Zr間に移動するのに適した位置及び姿勢にすることができる。
【0087】
ワイン用の葡萄などは、日当たりの関係から、傾斜地において、等高線に沿う果樹列が傾斜方向に所定間隔を置いて並ぶ状態で栽培されている。このような果樹園に対して生成される目標経路Pは、各作業経路Pwが等高線に沿って生成され、各旋回経路Ptが上下の作業経路Pwにわたって生成されている。そのため、このような目標経路Pに従って作業車両Vを自動走行させる場合には、作業車両Vは、旋回経路Ptに従って傾斜方向に旋回走行することになる。
【0088】
一方、本実施形態で例示する作業車両Vは、散布作業用であることから、作業走行に伴って貯留タンク4Aにおける散布液の残量が低下すると、この残量の低下が、作業地での旋回経路Ptに従って作業車両Vが傾斜方向に旋回走行するときの旋回性能に影響を及ぼすことになる。
【0089】
具体的には、例えば、図23~25に示すように、作業車両Vが傾斜方向の上方に向けて旋回するときには、貯留タンク4A内の散布液が多い状態(図23(a)参照)よりも、貯留タンク4A内の散布液が少ない状態(図23(b)参照)の方が、車体1の重心位置pcが車体1の後側に変化し、この重心位置pcを地面に投影させた位置も変化する。これにより、図24に示すように、貯留タンク4A内の散布液が多い状態での左右のクローラ11による旋回中心位置pt1と、貯留タンク4A内の散布液が少ない状態での左右のクローラ11による旋回中心位置pt2とに差が生じてしまい、左右のクローラ11を一定の速度差で駆動させた場合には、散布液が多い状態での作業車両Vの旋回走行軌跡t1よりも散布液が少ない状態での作業車両Vの旋回走行軌跡t2の方が旋回中心側に変位する。よって、貯留タンク4A内の散布液が少なくなるほど、旋回後の作業車両Aが作業経路Pwに対して傾斜方向に位置ずれし易くなる。
【0090】
そこで、上記のような不都合の発生を防止するために、図26に示すように、散布液が少ない状態で作業車両Aが旋回経路Ptに従って旋回走行するときの制御目標位置pv1を、散布液が多い状態で作業車両Aが旋回経路Ptに従って旋回走行するときの制御目標位置pv2に一致させることが考えられるが、従来では、図25に示すように、自動走行制御部40が設定する制御目標位置pv1、pv2は、作業車両Aから進行方向に一定距離L1を置いた目標経路P上の位置に規定されていることから、このような解決策を講じることができず、改善の余地がある。
【0091】
そこで、この作業車両用の自動走行システムにおいては、作業車両Aが旋回経路Pt上に位置する場合には、自動走行制御部40が、作業地の傾斜情報と散布液の残量とに基づく制御目標位置pvの補正を可能にしている。具体的には、前述した軌道追従制御においては、作業車両Vが旋回経路Pt上に位置する場合に、自動走行制御部40が、作業車両Vが旋回経路Ptで旋回走行するごとに異なる貯留タンク4A内の散布液量の影響による作業車両Vの旋回中心位置の位置ずれ(図24~25に示す旋回中心位置pt1,pt2の位置ずれ)に基づいて、旋回経路Pt上に設定する制御目標位置pvを補正する制御目標位置補正処理を行うようにしている。
【0092】
以下、図27のフローチャートに基づいて、制御目標位置補正処理での自動走行制御部40の制御作動について説明する。
【0093】
自動走行制御部40は、作業車両Vが旋回経路Pt上で旋回走行するごとに、貯留タンク4Aにおける散布液の残量を検出する残量センサ(残量検出部の一例)45(図2参照)からの検出情報と、慣性計測装置5Eからの計測情報とを取得する情報取得処理を行う(ステップ#1)。
【0094】
自動走行制御部40は、慣性計測装置5Eからの計測情報に含まれた車体1の姿勢情報に基づいて作業地の傾斜情報を取得する傾斜情報取得処理を行う(ステップ#2)。又、自動走行制御部40は、取得した作業地の傾斜情報と散布液の残量とに基づいて、旋回経路Ptごとの作業車両Vの旋回中心位置pt1,pt2を算出する旋回中心位置算出処理を行う(ステップ#3)。
【0095】
自動走行制御部40は、今回の旋回経路Ptで算出した作業車両Vの旋回中心位置pt2と前回の旋回経路Ptで算出した作業車両Vの旋回中心位置pt1との変化量Δptを算出する変化量算出処理を行い(ステップ#4)、この変化量Δptを前回の制御目標位置pv1に対する今回の制御目標位置pv2の補正量Δpvとして、今回の旋回経路Ptでの作業車両Vの現在位置p0から制御目標位置pvまでの離隔距離(所定距離)L1を変更する離隔距離変更処理を行う(ステップ#5)。
【0096】
これにより、自動走行制御部40は、作業車両Vを傾斜面の傾斜方向に向けて旋回走行させるために制御目標位置pvを旋回経路Pt上に設定する場合には、旋回経路Ptごとに異なる貯留タンク4A内の散布液量に起因した作業車両Vの旋回中心位置の変化に関係なく、今回の旋回経路Pt上に設定する制御目標位置pv(図26の制御目標位置pv2)を、前回の旋回経路Pt上に設定した制御目標位置pv(図26の制御目標位置pv1)と同じ位置に設定(補正)することができる。そして、作業車両Vは、その補正後の適正な制御目標位置pv(pv2)に追従する状態で旋回経路Ptに従って旋回走行する。
【0097】
つまり、旋回経路Ptごとに異なる貯留タンク4A内の散布液量に起因して作業車両Vの旋回中心位置に変化が生じても、その変化を考慮した状態で作業車両Vを旋回経路Ptに従って旋回させることができる。その結果、旋回経路Ptごとに異なる貯留タンク4A内の散布液量にかかわらず、各旋回経路Ptでの作業車両Aの旋回性能を略同じにすることができ、旋回後の作業車両Aが作業経路Pwに対して傾斜方向に位置ずれすることを防止することができる。
【0098】
これにより、作業走行に伴う貯留タンク4A内での散布液の減少にかかわらず、作業車両Vを傾斜地の傾斜方向に旋回走行させる場合においても、作業車両Vを目標経路Pに従って精度よく自動走行させることができる。
【0099】
尚、この作業車両Vにおいては、慣性計測装置5Eと自動走行制御部40とが、目標経路Pが生成される作業地の傾斜情報を取得する傾斜情報取得部として機能している。
又、自動走行制御部40には、各旋回経路Ptに対して事前に設定された経路ごとの又は共通の制御目標位置pvの補正量Δpvが記憶されていてもよい。これに代えて、目標経路Pの旋回経路Ptに制御目標位置pvの補正量Δpvを備えさせるようにしてもよい。
【0100】
ところで、作業車両Vが傾斜方向に旋回走行するときには、作業地の傾斜と散布液の残量に起因して傾斜方向の下側にスリップすることで、旋回中の作業車両Aが、旋回経路Ptに対して傾斜方向の下側に位置ずれすることが考えられる。このような場合には、自動走行制御部40が、作業地の傾斜情報と散布液の残量とに基づいて、スリップ量に対応する補正量を算出することで、この補正量による制御目標位置pvの補正を可能にすれば、旋回経路Ptに対する制御目標位置pvを、スリップ量を見込んだ旋回経路Pt外に設定することができる。これにより、旋回中の作業車両Aが、旋回経路Ptに対して傾斜方向の下側に位置ずれするのを防止することができる。
【0101】
図28に示すように、左右の前ライダーセンサ6A,6Bは、作業車両Vが作業経路Pwに従って自動走行している場合に、作業車両Vの空間を通る果樹Zを障害物として検出しないように、各ライダーセンサ6A,6Bの測定範囲Aa,Abのうち、各測定範囲Aa,Abの左右中心から車体内側の範囲Aai,Abiにマスキング処理が施されている。これにより、左右の前ライダーセンサ6A,6Bは、作業車両Vが作業経路Pwに従って自動走行している場合に、作業車両Vの左右に存在する果樹Zなどを障害物として検出する。
【0102】
衝突回避モジュール40Aは、自動走行制御部40にて設定された作業車両Vの走行目標位置pdと果樹Zなどの障害物の位置とにポテンシャル関数を定義し、この関数の勾配に応じて進行方向を定めることで衝突回避経路Pe(図30参照)を生成するポテンシャル法を用いて、目標経路Pにおける作業車両Vの現在位置p0から所定の走行目標位置pdまでの経路を補正する経路補正制御を行う。
【0103】
以下、図29のフローチャート及び図30~31の説明図に基づいて、経路補正制御での衝突回避モジュール40Aの制御作動について説明する。
【0104】
衝突回避モジュール40Aは、作業車両Vの走行目標位置pdと、左右の前ライダーセンサ6A,6Bからの障害物に関する測定情報とを取得する情報取得処理を行う(ステップ#11)。
【0105】
衝突回避モジュール40Aは、少なくとも左右いずれか一方の前ライダーセンサ6A,6Bにて障害物が検出されているか否かを判定する第1判定処理を行い(ステップ#12)、障害物が検出されている場合に、走行目標位置座標に引力ポテンシャルが生成され、障害物座標に斥力ポテンシャルが生成されたポテンシャルフィールドを生成するポテンシャルフィールド生成処理を行う(ステップ#13)。
【0106】
衝突回避モジュール40Aは、第1判定処理にて左右の前ライダーセンサ6A,6Bにて障害物が検出されていない場合は、障害物が検出されるまで待機する。
【0107】
衝突回避モジュール40Aは、生成したポテンシャルフィールドの勾配に基づいて、作業車両Vの現在位置p0から走行目標位置pdまでの衝突回避経路Peを生成する経路生成処理を行い(ステップ#14)、衝突回避経路Peに既定値以上の角度変化がある変曲点peが存在するか否かを判定する第2判定処理を行う(ステップ#15)。
【0108】
衝突回避モジュール40Aは、第2判定処理にて変曲点peが存在する場合は、変曲点peを走行目標位置pdに設定する目標位置設定処理を行い(ステップ#16)、作業車両Vの現在位置p0から変曲点peを通る走行基準線Lsを生成する基準線生成処理を行う(ステップ#17)。そして、衝突回避モジュール40Aは、制御目標位置pvを作業経路Pw上から走行基準線Ls上に設定変更する制御目標位置変更処理を行う(ステップ#18)。
【0109】
衝突回避モジュール40Aは、第2判定処理にて変曲点peが存在しない場合は、ステップ#11に戻り、制御目標位置pvが作業経路Pw上に設定された状態を維持する。
【0110】
衝突回避モジュール40Aは、制御目標位置変更処理を行った後、作業車両Vの現在位置p0が変曲点pe(走行目標位置pd)に達したか否かを判定する第3判定処理を行い(ステップ#19)、変曲点peに達した場合に、ステップ#11に戻り、変曲点pe(作業車両Vの現在位置p0)から次の走行目標位置pdまでの衝突回避経路Peを生成する。変曲点peに達していない場合は、作業車両Vの現在位置p0が変曲点peに達するまで待機する。
【0111】
つまり、衝突回避モジュール40Aは、作業車両Vが作業経路Pw上に位置する場合に、作業経路Pwに隣接する果樹列Zrの果樹Zなどが左右の前ライダーセンサ6A,6Bにて障害物として検出されたときには、左右の前ライダーセンサ6A,6Bの検出に基づいて、制御目標位置pvを作業経路Pwから外れた衝突回避用の走行基準線Ls上に設定変更することができる。
【0112】
これにより、制御目標位置pvに作業車両Vを追従させる軌道追従制御においては、作業車両Vが作業経路Pwに隣接する果樹列Zrの果樹Zなどに衝突する虞を回避しながら、作業車両Vを作業経路Pwに略従った状態で自動走行させることができる。
【0113】
そして、このような衝突回避を、目標経路Pの周囲に果樹Zなどの多数の障害物が存在する果樹園においても、ポテンシャル法を用いた衝突回避経路Peの生成で容易に精度良く行うことができる。
【0114】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0115】
(1)作業車両Vは、例えば、エンジン12及び一対のHST30の代わりに、左右のクローラ11を独立駆動する左右の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
【0116】
(2)作業車両Vは、車体フレーム10に対して、左右のクローラ11のいずれか一方又は双方が昇降駆動ユニットを介して昇降可能に連結されていてもよい。
【0117】
(3)作業車両Vは、左右のクローラ11の左右間隔とともに車体1の左右幅が変更可能に構成されていてもよい。
【0118】
(4)作業車両Vは、左右の前輪と左右の後輪とを備えるホイール仕様、又は、左右の後輪に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様、などに構成されていてもよい。
【0119】
[発明の付記]
本発明の第1特徴構成は、作業車両用の自動走行システムにおいて、
作業車両の位置情報を取得する位置情報取得部と、事前に生成された目標経路に従って前記作業車両を自動走行させる自動走行制御部とを有し、
前記目標経路には、所定間隔を置いて並列に並べられた複数の作業経路と、複数の前記作業経路を前記作業車両の走行順に接続する複数の旋回経路とが含まれており、
前記自動走行制御部は、制御目標位置を設定することで前記目標経路に従った前記作業車両の自動走行を可能にし、
前記自動走行制御部は、前記作業車両が前記作業経路上で前記旋回経路との境界付近に位置するときは、前記作業経路の延長線上に前記制御目標位置を設定し、
前記自動走行制御部は、前記作業車両が前記旋回経路上で前記作業経路との境界付近に位置するときは、前記作業経路上に前記制御目標位置を設定する点にある。
【0120】
本構成によれば、作業車両は、作業経路上における旋回経路との境界付近に位置している間は、自動走行制御部にて作業経路の延長線上に設定された制御目標位置を追従する状態で作業経路に従って走行する。これにより、作業車両は、作業経路から旋回経路に移行する間際まで、作業経路に沿った姿勢を維持しながら作業経路に従って走行する。
【0121】
又、作業車両は、旋回経路上における作業経路との境界付近に位置している間は、自動走行制御部にて次の作業経路上に設定された制御目標位置を追従する状態で旋回経路に従って走行する。これにより、作業車両は、旋回経路から作業経路に移行するまでの間においては、作業経路に近づくに連れて、その姿勢を作業経路での走行に適した作業経路に沿う姿勢に近づけながら旋回経路に従って走行する。
【0122】
つまり、作業車両が作業経路から旋回経路に移行する際には、作業車両が旋回経路に移行する間際まで、作業車両の姿勢を作業経路での走行に適した姿勢に維持することができる。又、作業車両が旋回経路から作業経路に移行する際には、作業車両が旋回経路から作業経路に移行する初期段階から、作業車両の姿勢を作業経路での走行に適した姿勢にすることができる。
【0123】
これにより、作業地が例えば作業経路に隣接する果樹列や作物列などが存在する果樹園や圃場である場合であっても、作業経路と旋回経路との接続地点を、果樹列や作物列などの終端から大きく離れた位置に設定しなくても、作業車両が作業経路から旋回経路に移行する際や旋回経路から作業経路に移行する際に、作業車両が果樹列や作物列などに衝突する虞を回避することができる。
【0124】
その結果、自動走行用の目標経路に含まれる旋回経路などの非作業経路を極力短くして、作業時間の短縮や燃料消費量の削減などを図れるようにしながらも、作業経路と旋回経路との間での作業車両の移行時に作業車両が果樹列や作物列などに衝突する虞を回避することができる作業車両用の自動走行システムを提供することができる。
【0125】
本発明の第2特徴構成は、
前記自動走行制御部は、前記作業車両が前記旋回経路上に位置するときは、前記制御目標位置を前記旋回経路の延長線上に設定しない点にある。
【0126】
本構成によれば、作業車両が旋回経路上に位置するときに、自動走行制御部にて制御目標位置が旋回経路の延長線上に設定されることに起因して、作業車両が旋回経路から逸脱する虞を回避することができる。
【0127】
又、作業車両が旋回経路での旋回走行中に旋回経路上から位置ずれしたとしても、自動走行制御部にて、旋回経路の延長線上に制御目標位置が設定されることはなく、作業経路上又は旋回経路上に制御目標位置が設定されることになる。よって、作業車両が旋回経路上から位置ずれした場合においても、作業車両が次の作業経路に移動するときには、作業車両の位置及び姿勢を、作業経路での走行に適した姿勢にすることができる。
【0128】
本発明の第3特徴構成は、
前記目標経路が生成される作業地の傾斜情報を取得する傾斜情報取得部を有し、
前記作業車両には、散布液を散布する散布部と、前記散布液を貯留する貯留部と、前記貯留部における前記散布液の残量を検出する残量検出部とが備えられ、
前記自動走行制御部は、前記作業車両が前記旋回経路上に位置する場合は、前記傾斜情報と前記散布液の残量とに基づく前記制御目標位置の補正を可能にする点にある。
【0129】
例えば、作業車両が散布作業用であると、作業車両が作業経路から旋回経路に移行するたびに、貯留タンクにおける散布液の残量が変化(低下)していることになる。そして、旋回経路が、作業車両を傾斜面の上方に向けて旋回走行させるように設定されていると、作業車両が旋回経路に従って傾斜方向の上方に向けて旋回するときには、貯留タンク内の散布液が多い状態よりも、貯留タンク内の散布液が少ない状態の方が、作業車両の重心位置が作業車両の後側に変化し、この重心位置を地面に投影させた位置も変化する。
【0130】
これにより、貯留タンク内の散布液が多い状態で作業車両が旋回経路に従って旋回走行するときの旋回中心位置と、貯留タンク内の散布液が少ない状態で作業車両が旋回経路に従って旋回走行するときの旋回中心位置とに差が生じてしまい、作業車両を一定の旋回角で旋回走行させた場合には、散布液が多い状態で作業車両が旋回走行したときの旋回走行軌跡よりも、散布液が少ない状態で作業車両が旋回走行したときの旋回走行軌跡の方が旋回中心側に変位する。よって、旋回後の作業車両が作業経路に対して傾斜方向に位置ずれし易くなる。
【0131】
この点を考慮して、本構成では、作業車両が旋回経路上に位置する場合には、自動走行制御部が、作業地の傾斜情報と散布液の残量とに基づく制御目標位置の補正を可能にしている。
【0132】
具体的には、作業車両が傾斜面の傾斜方向に向けて旋回走行することで、このときの作業地の傾斜と散布液の残量とに応じて作業車両の旋回中心位置が傾斜面の下方側に変位する場合には、自動走行制御部が、このときの作業地の傾斜情報と散布液の残量とに基づいて制御目標位置を補正する。そして、この補正により、作業車両の旋回中心位置が傾斜面の下方側に変位することに起因して作業車両が旋回経路上から外れることを防止している。
【0133】
これにより、作業車両が旋回経路で旋回走行するごとに異なる貯留タンク内の散布液量にかかわらず、作業車両を傾斜地の傾斜方向に旋回走行させる場合においても、作業車両を目標経路に従って精度よく自動走行させることができる。
【0134】
本発明の第4特徴構成は、
障害物を検出する障害物検出部を有し、
前記自動走行制御部は、前記作業車両が前記作業経路上に位置する場合に、前記障害物検出部にて前記作業車両の進行方向に存在する前記障害物が検出されたときは、前記障害物検出部の検出に基づいて前記制御目標位置を前記作業経路外に設定する点にある。
【0135】
本構成によれば、作業車両が作業経路上に位置する場合に、障害物検出部にて作業車両の進行方向に存在する障害物が検出されると、自動走行制御部が、障害物検出部の検出に基づいて、障害物から離れる側で作業経路から外れた位置に制御目標位置を設定し、この制御目標位置に追従する状態で作業車両を走行させる。
【0136】
つまり、通常は作業経路上に設定される制御目標位置を、作業経路から外れた位置に設定変更することにより、作業車両の進行方向に存在する障害物に作業車両が衝突する虞を回避することができる。
【符号の説明】
【0137】
4A 貯留部
4L 散布部
4R 散布部
5 位置情報取得部
5E,40 傾斜情報取得部
6 障害物検出部
40 自動走行制御部
45 残量検出部
Lt 旋回経路の延長線
Lw 作業経路の延長線
P 目標経路
Pt 旋回経路
Pw 作業経路
pv 制御目標位置
V 作業車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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