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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】回転機器
(51)【国際特許分類】
   F16N 7/22 20060101AFI20221212BHJP
   F16N 29/00 20060101ALI20221212BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20221212BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20221212BHJP
   F16N 39/02 20060101ALI20221212BHJP
   F16N 7/02 20060101ALI20221212BHJP
   F16N 13/00 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
F16N7/22
F16N29/00 G
F16N31/00 B
F16C17/02 Z
F16N39/02
F16N7/02
F16N13/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021147808
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】森田 雅行
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-005526(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第107795585(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 7/02- 7/10
F16N 7/16- 7/24
F16N 7/38
F16N 13/00
F16H 57/04
F16C 17/00-17/26
F16C 33/00-33/28
F16C 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、
前記軸受を収容し支持するケーシングと、
前記軸受の下方に配置され潤滑油を貯留する油槽と、
前記軸受の外周側において前記軸受と共に回転することにより前記油槽から前記潤滑油を汲み上げ前記軸受へ供給する回転体と、
前記ケーシングの外部において、前記油槽に設けられた採油口と、前記ケーシングにおいて前記軸受の上方に設けられた滴下口とを接続する潤滑油移送管と、
前記潤滑油移送管に取り付けられたポンプと、
前記ポンプを駆動することにより、前記油槽から前記採油口を介し前記潤滑油を前記潤滑油移送管へ取り込み、前記滴下口を介し前記潤滑油を前記軸受へ垂らすように滴下するアクチュエータと
を有する回転機器。
【請求項2】
前記採油口は、前記油槽から前記潤滑油移送管以外の外部へも前記潤滑油を排出する排油口であり、
前記滴下口は、前記ケーシングの外部から前記回転体を目視可能な点検窓である
請求項1に記載の回転機器。
【請求項3】
前記採油口には、三つ又の1つの端部が取り付けされており、該三つ又の残りの2つの端部のうち一方の端部に前記潤滑油移送管が接続され、他方の端部に排油用のバルブが取り付けられている
請求項2に記載の回転機器。
【請求項4】
前記点検窓は、複数個設けられ、一方の前記点検窓には前記点検窓を覆う蓋が設けられており、他方の前記点検窓には前記潤滑油移送管が接続された蓋が設けられている
請求項2に記載の回転機器。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記回転軸の回転に対し独立して前記ポンプを駆動する
請求項1に記載の回転機器。
【請求項6】
前記潤滑油移送管は、銅管又はアルミ管である
請求項1に記載の回転機器。
【請求項7】
前記潤滑油移送管には、熱交換器が設けられる
請求項1に記載の回転機器。
【請求項8】
前記熱交換器は、オイルクーラーである
請求項7に記載の回転機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機器に関し、例えば回転軸を回転自在に支持する軸受を有し自己給油方式で軸受に給油を行う回転機器に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
回転機器の高効率化及び出力の増大に伴い、回転機器は大型化及び高速回転化が進んでいる。また、舶用の回転機器の中には主機の回転軸と連れ回りを伴うものがあり、船の運航状況等により回転数が一定にならず低回転から高回転まで様々な回転数で運転されるものがある。
【0003】
大型、高速回転機器の多くは油潤滑方式の軸受が用いられているが、潤滑油の供給は、大きく分けると、回転機器の外部に潤滑装置が設置されポンプ等により給油される強制給油方式と、回転軸の外周側にオイルリングやオイルディスクを設置し油槽から潤滑油を揚油する自己給油方式との2種類が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
強制給油方式は、給油量は十分であるが、高圧ポンプ、油タンクや高圧配管等の付帯設備が必要で高価となる。また強制給油方式は、軸受から付帯設備までの配管へ油を充てんする必要があるため、保有油量が多く必要となる。さらに強制給油方式は、軸受から発生した熱を油で冷却するため、軸受内部に高い圧力をかけながら給油する必要があり、ポンプ及び給油配管は高圧のものが必要となる。さらに、回転機器が重要機器の場合は、ポンプ等の故障による回転機器の停止が困難となるため、バックアップやメンテナンスを目的にポンプ等の付帯設備の二重化を行う必要がある。
【0005】
一方、自己給油方式について、オイルリング方式は高速域における追従性が悪く、給油量が高速域で低下するため高速機には適さない。またオイルリング方式は、回転軸の回転速度が一定でない場合給油量も一定とならないため、運用の条件によっては給油量が不足し軸受が損傷することも考えられる。さらにオイルリング方式は、軸受から発生した熱を放熱するためには油槽の表面積を増やす必要があるため、一般的に油槽は複雑な形状となることが多い。
【0006】
オイルディスク方式は、オイルリング方式と異なり、回転軸とオイルディスクとが一体で回転するため給油量はある程度安定するが、他の方式と比べ軸受サイズが大きくなる欠点がある。またオイルディスク方式は、オイルリング方式と同様に軸受から発生した熱を放熱するためには油槽の表面積を増やす必要があるため、一般的に油槽は複雑な形状となることが多い。
【0007】
以上のことから、一般的に軽荷重、低回転数の回転機器にはオイルリング方式の自己給油方式が採用され、重荷重、高回転数の回転機器には強制給油方式が採用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平3-186612公報
【文献】特開昭59-200897公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような回転機器においては、自己給油方式において、装置の大型化を抑えつつ軸受への給油量の裕度を増加させることが望まれている。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、自己給油方式において、装置の大型化を抑えつつ軸受への給油量の裕度を増加させ得る回転機器を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の回転機器においては、回転軸と、回転軸を回転自在に支持する軸受と、軸受を収容し支持するケーシングと、軸受の下方に配置され潤滑油を貯留する油槽と、軸受の外周側において軸受と共に回転することにより油槽から潤滑油を汲み上げ軸受へ供給する回転体と、ケーシングの外部において、油槽に設けられた採油口と、ケーシングにおいて軸受の上方に設けられた滴下口とを接続する潤滑油移送管と、潤滑油移送管に取り付けられたポンプと、ポンプを駆動することにより、油槽から採油口を介し潤滑油を潤滑油移送管へ取り込み、滴下口を介し潤滑油を軸受へ垂らすように滴下するアクチュエータとを設けるようにした。
【0012】
本発明は、回転体から軸受に潤滑油を供給することに加えて、ケーシングの外部に設けられた簡易な構成のポンプにより油槽から潤滑油を移送し、軸受へ滴下できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自己給油方式において、装置の大型化を抑えつつ軸受への給油量の裕度を増加させ得る回転機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】潤滑油移送管取外状態の回転機器の構成を示し、(A)は(B)におけるA-A矢視断面図、(B)は回転軸の中心軸を通り中心軸に沿う方向から見た断面図である。
図2】潤滑油移送管取付状態の回転機器の構成を示し、(A)は(B)におけるA-A矢視断面図、(B)は回転軸の中心軸を通り中心軸に沿う方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0016】
[1.回転機器の構成]
図1に、潤滑油移送管30(後述する)が取り外された潤滑油移送管取外状態の回転機器1を示し、図2に、潤滑油移送管30が取り付けられた潤滑油移送管取付状態の回転機器1を示すように、回転機器1は、主に、回転軸10と、軸受12と、ケーシング14とにより構成されている。回転機器1は、横軸型回転機であり、各機構を回転させることにより、例えば発電を行う。以下では、回転軸10が沿う方向を軸方向とし、回転軸10が回転する方向を周方向とする。
【0017】
回転軸10は、ほぼ水平方向に沿う軸方向に沿って延設された円柱形状であり、その一端側がエンジン(図示せず)等の駆動機に連結されており、この駆動機によって回転される。軸受12は、例えば滑り軸受であり、回転軸10を回転自在に支持する。
【0018】
ケーシング14は、内部空間を有し、回転軸10の一部分と軸受12とを内部に収容し、軸受12を支持する。このケーシング14における、回転軸10及び軸受12の下方には、油槽16が形成されている。油槽16は、上方が開放された空間を有し、軸受12を潤滑する潤滑剤である潤滑油18を貯留する。油槽16は、ほぼ水平方向に沿う底部が形成されている。
【0019】
また、ケーシング14における、回転軸10の中心軸の真下には、油槽16の底部の上面から下面まで貫通し、ケーシング14の内部空間と外部空間とを連通させる採油口20が穿設されている。潤滑油移送管取外状態(図1)において採油口20は、不要になった潤滑油18を油槽16から外部に排出するための孔部である排油口として用いられる。実際の運用においては、採油口20にY字形状の三つ又の1つの端部が取り付けされ、残りの2つの端部のうち一方の端部に潤滑油移送管30が接続され、他方の端部に排油用のバルブが取り付けられている。
【0020】
さらに、ケーシング14における、回転軸10の中心軸の真上において、それぞれのオイルリング28の上方には、ケーシング14の天板の上面から下面まで貫通し、ケーシング14の内部空間と外部空間とを連通させる滴下口22が穿設されている。潤滑油移送管取外状態(図1)において滴下口22は、オイルリング28の様子を外部から点検するためのオイルリング点検窓24として用いられる。オイルリング点検窓24は、オイルリング28それぞれの上方に互いにほぼ同一形状で1つずつ設けられており、ケーシング14の天板の上面から下面まで貫通する孔部に、鉄製の蓋が開閉可能に固定されている。実際の運用においては、潤滑油移送管取付状態(図2)の場合、2つのオイルリング点検窓24のうち1つオイルリング点検窓24の鉄製の蓋が、潤滑油滴下ノズル40付きの蓋に取り替えられ、その蓋に潤滑油移送管30の他端が接続される。
【0021】
軸受12には、円環形状のオイルリング28が2個吊り下げられている。このオイルリング28は、その内径が回転軸10の外径よりも大きく形成されており、油槽16に貯留された潤滑油18の油面に下部が浸っている。オイルリング28は、回転軸10の回転に伴って連れ回るように回転し、潤滑油18を油槽16から掻き揚げて回転軸10まで汲み上げ、軸受12に(すなわち回転軸10と軸受12との間に)上方から該潤滑油18を滴下する。
【0022】
潤滑油移送管取付状態(図2)の回転機器1においては、ケーシング14における採油口20に潤滑油移送管30の一端が、滴下口22に潤滑油移送管30の他端が、それぞれ接続されている。潤滑油移送管30は、例えば、銅管、アルミ管又は鋼管等の金属製の円筒形状のパイプである。
【0023】
また潤滑油移送管30の他端には、潤滑油滴下ノズル40が接続されている。潤滑油移送管30は、油槽16から潤滑油滴下ノズル40まで延びており、油槽16と潤滑油滴下ノズル40とを接続し、油槽16内の潤滑油18を移送する。潤滑油滴下ノズル40は、その供給口が軸受12を向いた状態(すなわち下向き状態)で、軸受12の上方に配置されており、潤滑油18を軸受12及びオイルリング28に滴下する。この潤滑油滴下ノズル40は、潤滑油18を軸受12に滴下する滴下ノズルが用いられる。
【0024】
潤滑油移送管30には、給油ポンプ32が取り付けられている。給油ポンプ32は、例えば小流量ポンプである。潤滑油移送管30における油槽16と給油ポンプ32との間には、フィルタ36が取り付けられている。フィルタ36は、潤滑油18に含まれる異物を除去する。また潤滑油移送管30におけるフィルタ36と油槽16との間には、開閉弁34が取り付けられている。開閉弁34は、保守員に操作されることにより、潤滑油移送管30の流路を開閉する。保守員は、開閉弁34を閉じることにより給油ポンプ32を潤滑油移送管30から切り離すことができ、給油ポンプ32のメンテナンスを行うことができる。
【0025】
給油ポンプ32には、該給油ポンプ32を駆動する電動機等のアクチュエータ38が接続されている。アクチュエータ38は、回転軸10の回転とは独立して給油ポンプ32を駆動する。本実施の形態においては、給油ポンプ32及びアクチュエータ38には、トコロイド(登録商標)ポンプが用いられる。アクチュエータ38によって給油ポンプ32が駆動されると、油槽16内の潤滑油18は潤滑油移送管30を通じて潤滑油滴下ノズル40まで移送され、潤滑油滴下ノズル40から軸受12に滴下される。油槽16は軸受12の下方に位置しているため、軸受12に滴下された潤滑油18は油槽16内に落下する。
【0026】
[2.効果等]
ところで、オイルリング28から軸受12に供給可能な潤滑油18の油量は理論式より算出することが可能であるが、オイルリング28の寸法や回転数等により制限されるため、多くの潤滑油18を軸受12に供給するためにはオイルリング28が大型化し、油槽16のサイズが大きくなってしまう。また、オイルリング28の重量と回転数とに関しても関係があり、オイルリング28を大型化しても軸受12に供給できる油量が増加しない条件が存在する。すなわち、自己給油方式の給油量には、構造による給油量の制約があった。このように、オイルリング28のみから潤滑油18を軸受12へ供給する場合、オイルリング28が大型化して油槽16のサイズが大きくなってしまうと共に、オイルリング28を大型化しても軸受12に供給できる油量が増加しない場合があった。
【0027】
これに対し本実施の形態による回転機器1は、オイルリング28から軸受12に潤滑油18を供給することに加えて、軸受12とは独立して可動する給油ポンプ32により油槽16から潤滑油滴下ノズル40へ潤滑油18を移送し、潤滑油滴下ノズル40から軸受12に潤滑油18を滴下して供給するようにした。このため回転機器1は、従来の回転機器と比較して、装置の大型化を抑えつつ、軸受12への給油量の裕度を増加させることができる。
【0028】
また回転機器1は、回転軸10の変化に伴ってオイルリング28による給油量に変化があった場合であっても、オイルリング28による供給量と、給油ポンプ32による供給量とを合わせることにより、軸受12に供給できる潤滑油18の油量を増加させることができる。このため回転機器1は、回転軸10の回転数の変化による軸受12の温度上昇を低減させることができる。
【0029】
さらに回転機器1は、給油ポンプ32等の付帯設備に不具合が生じたりメンテナンスが行われたりする場合であっても、必要な油量をオイルリング28から軸受12に供給できる。このため回転機器1は、給油ポンプ32を重要補機扱いすることなくあくまで付帯設備とし二重化する必要をなくして、装置を停止させることなく動作させ続けつつ、付帯設備の交換やメンテナンスを行わせることができる。
【0030】
さらに回転機器1は、軸受12の上方に形成された滴下口22の潤滑油滴下ノズル40を介し、給油ポンプ32から軸受12へ潤滑油18を滴下するようにした。このため回転機器1は、必要な油量を滴下させるだけの供給圧力で足りるため、強制給油方式と比較して、低圧動作する小容量ポンプと、低圧配管である潤滑油移送管30とを利用できる。それに加えて回転機器1は、潤滑油18を軸受12にスプレーする潤滑油スプレーノズルや、ミスト状の潤滑油18を軸受12へ噴出する潤滑油ミストノズルではなく、潤滑油18を滴下する潤滑油滴下ノズル40を用いるようにした。このため回転機器1は、必要な油量を滴下させるだけの供給圧力で足りるため、潤滑油スプレーノズルや潤滑油ミストノズルを用いる場合と比較しても、低圧動作する小容量ポンプと、低圧配管である潤滑油移送管30とを利用できる。
【0031】
さらに回転機器1は、従来から存在する排油口を採油口20として流用し、オイルリング点検窓24を滴下口22として流用するようにした。このため回転機器1は、既設の回転機器1に対しても、最小限の改造を行うだけで給油ポンプ32から潤滑油18を軸受12に滴下できる。これにより回転機器1は、仕様変更で回転軸10の回転数等が変更となった場合であっても、最低限の設備を追加するだけで柔軟に対応することができる。
【0032】
さらに回転機器1は、潤滑油移送管30、給油ポンプ32、開閉弁34、フィルタ36及びアクチュエータ38をケーシング14の外部に設けるようにした。このため回転機器1は、潤滑油移送管30、給油ポンプ32、開閉弁34、フィルタ36及びアクチュエータ38がケーシング14の内部に設けられている場合と比較して、これら潤滑油移送管30、給油ポンプ32、開閉弁34、フィルタ36及びアクチュエータ38のメンテナンスを容易に行わせることができる。
【0033】
ところで、従来、オイルリング方式では潤滑油の安定的な供給特性を得ることができないため、ポンプで油槽から潤滑油を吸い上げ軸受へ供給する給油ポンプ方式を採用する回転機器があった。換言すると、そのような回転機器は、オイルリング方式を採用せずに、あえて給油ポンプ方式を採用していた。これに対し本実施の形態による回転機器1は、基本的にはオイルリング方式を採用しつつ、その欠点を補うために給油ポンプ32を追加するようにした。すなわち回転機器1は、オイルリング方式と給油ポンプ32とを組み合わせることにより、オイルリング方式のみでは高速回転域では採用できないため適用範囲が限られることと、強制給油方式ではコストが増大することとを防ぐことができる。
【0034】
以上の構成によれば回転機器1は、回転軸10と、回転軸10を回転自在に支持する軸受12と、軸受12を収容し支持するケーシング14と、軸受12の下方に配置され潤滑油18を貯留する油槽16と、軸受12の外周側において軸受12と共に回転することにより油槽16から潤滑油18を汲み上げ軸受12へ供給するオイルリング28と、ケーシング14の外部において、油槽16に設けられた採油口20とケーシング14において軸受12の上方に設けられた滴下口22とを接続する潤滑油移送管30と、潤滑油移送管30に取り付けられた給油ポンプ32と、給油ポンプ32を駆動することにより、油槽16から採油口20を介し潤滑油18を潤滑油移送管30へ取り込み、滴下口22を介し潤滑油18を軸受12へ滴下するアクチュエータ38とを設けるようにした。
【0035】
このため回転機器1は、オイルリング28から軸受12に潤滑油18を供給することに加えて、ケーシング14の外部に設けられた簡易な構成の給油ポンプ32により油槽16から潤滑油18を移送し、軸受12へ滴下できる。
【0036】
[3.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、潤滑油移送管30を銅管、アルミ管又は鋼管等により構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、潤滑油移送管30を他の材質により構成しても良い。但し、熱通過率の良い材質であることが好ましい。
【0037】
また上述した実施の形態において、潤滑油移送管30を、金属の管に螺旋状に放熱板(フィン)が巻き付けられたフィンチューブとすることにより、伝熱面積を増加させ放熱効率を向上させても良い。さらに、潤滑油移送管30に、熱交換器としてのオイルクーラーを設けても良い。一般的なオイルリング方式の場合、油槽表面が熱交換器の役割を兼ねており、潤滑油を油槽の外部へ排出する方法がないため、熱交換器が搭載されることは考えにくい。これに対し回転機器1においては、採油口20から潤滑油18を油槽16の外部へ排出する構成であるため、オイルリング方式であっても熱交換器の搭載が可能になり、油槽16を小型化できる。
【0038】
さらに上述した実施の形態においては、従来から存在する排油口を採油口20として流用し、オイルリング点検窓24を滴下口22として流用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、排油口及びオイルリング点検窓24に加えて、採油口20及び滴下口22を別途形成しても良い。
【0039】
さらに上述した実施の形態においては、回転機器1に、1組の採油口20、潤滑油移送管30、給油ポンプ32、アクチュエータ38、開閉弁34、フィルタ36、滴下口22及び潤滑油滴下ノズル40を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、回転機器1に、2組以上の任意の組数の採油口20、潤滑油移送管30、給油ポンプ32、アクチュエータ38、開閉弁34、フィルタ36、滴下口22及び潤滑油滴下ノズル40を設けても良い。
【0040】
さらに上述した実施の形態においては、油槽16の底部に形成された採油口20に潤滑油移送管30の一端を接続する場合について述べた。本発明はこれに限らず、油槽16の底部から上方へ立設する、油槽16の側壁に採油口を形成し、該採油口に潤滑油移送管30の一端を接続しても良い。その場合、油槽16の底部よりも上側に潤滑油移送管30の一端が接続され、油槽16の底部に溜まった異物が潤滑油移送管30内に導入されてしまう可能性は低くなるため、フィルタ36を省略しても良い。
【0041】
さらに上述した実施の形態において、潤滑油移送管30における油槽16と潤滑油滴下ノズル40との間に、開閉弁を追加して取り付けても良い。
【0042】
さらに上述した実施の形態においては、ケーシング14の一部分を油槽16として形成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、油槽16はケーシング14と別体でも良い。
【0043】
さらに上述した実施の形態においては、回転軸10の回転とは独立して駆動するアクチュエータ38により給油ポンプ32を駆動する場合について述べた。本発明はこれに限らず、回転軸10の回転によって給油ポンプ32を駆動しても良い。
【0044】
さらに上述した実施の形態においては、オイルリング方式の回転機器1に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、回転軸10に固定されたオイルディスクが回転軸10と共に回転し潤滑油18を油槽16から掻き揚げて軸受12に供給する、オイルディスク方式の回転機器に本発明を適用しても良い。要は、軸受12の外周側において軸受12と共に回転することにより油槽16から潤滑油18を汲み上げ軸受12へ供給する回転体であれば良い。
【0045】
さらに上述した実施の形態においては、滑り軸受である軸受12を有する回転機器1に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば転がり軸受等、他の種々の構成の軸受12を有する回転機器に本発明を適用しても良い。
【0046】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも本発明の適用範囲が及ぶものである。また、本発明は、上述した各実施の形態及び上述した他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用する場合や、該抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加する場合にも本発明の適用範囲が及ぶものである。
【0047】
さらに上述した実施の形態においては、回転軸としての回転軸10と、軸受としての軸受12と、ケーシングとしてのケーシング14と、油槽としての油槽16と、回転体としてのオイルリング28と、潤滑油移送管としての潤滑油移送管30と、ポンプとしての給油ポンプ32と、アクチュエータとしてのアクチュエータ38とによって、回転機器としての回転機器1を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる回転軸と、軸受と、ケーシングと、油槽と、回転体と、潤滑油移送管と、ポンプと、アクチュエータとによって、回転機器を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、回転軸を回転自在に指示する軸受を有し自己給油方式で軸受に給油を行う回転機器において利用できる。
【符号の説明】
【0049】
1……回転機器、10…回転軸、12……軸受、14……ケーシング、16……油槽、18……潤滑油、20……採油口、22……滴下口、24……オイルリング点検窓、28……オイルリング、30……潤滑油移送管、32……給油ポンプ、34……開閉弁、36……フィルタ、38……アクチュエータ、40……潤滑油滴下ノズル。

【要約】
【課題】自己給油方式において、装置の大型化を抑えつつ軸受への給油量の裕度を増加させる。
【解決手段】回転機器1は、回転軸10と、回転軸10を回転自在に支持する軸受12と、軸受12を収容し支持するケーシング14と、軸受12の下方に配置され潤滑油18を貯留する油槽16と、軸受12の外周側において軸受12と共に回転することにより油槽16から潤滑油18を汲み上げ軸受12へ供給するオイルリング28と、ケーシング14の外部において、油槽16に設けられた採油口20と、ケーシング14において軸受12の上方に設けられた滴下口22とを接続する潤滑油移送管30と、潤滑油移送管30に取り付けられた給油ポンプ32と、給油ポンプ32を駆動することにより、油槽16から採油口20を介し潤滑油18を潤滑油移送管30へ取り込み、滴下口22を介し潤滑油16を軸受12へ滴下するアクチュエータ38とを設ける。
【選択図】図2

図1
図2