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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】前照灯および作動方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/19 20180101AFI20221212BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20221212BHJP
   F21S 41/25 20180101ALI20221212BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20221212BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20221212BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20221212BHJP
   F21W 102/10 20180101ALN20221212BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221212BHJP
【FI】
F21S41/19
F21S41/143
F21S41/25
F21V9/32
B60Q1/04 E
H01L33/58
F21W102:10
F21Y115:10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021159434
(22)【出願日】2021-09-29
(62)【分割の表示】P 2020528083の分割
【原出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2022023082
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】102017128125.8
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, 93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレッチュ シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ライル ヨアヒム
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-362840(JP,A)
【文献】特表2008-532250(JP,A)
【文献】特開2011-201400(JP,A)
【文献】特開2011-090796(JP,A)
【文献】特開2011-108589(JP,A)
【文献】特開2005-032661(JP,A)
【文献】特開2016-097805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0239746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/19
F21S 41/143
F21S 41/25
F21V 9/32
B60Q 1/04
H01L 33/58
F21W 102/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前照灯(1)であって、
-光を発生させるための、複数の画素(33)を有する第1の半導体チップ(31)と、
-光を発生させるための、複数の画素(33)を有する第2の半導体チップ(32)と、
-前記第1の半導体チップ(31)からの光を第1の倍率でベース領域(B)内に向かわせる第1の光学素子(41)と、
-前記第2の半導体チップ(32)からの光を第2の倍率で明領域(P)内に向かわせる第2の光学素子(42)と、
を有し、
-前記明領域(P)が前記ベース領域(B)より小さくなるように、前記第2の倍率は前記第1の倍率の0.3倍と0.7倍の間であり(両端を含む)、
-前記明領域(P)は、その少なくとも大部分が前記ベース領域(B)の内部にあり、
-前記第1および第2の半導体チップ(31、32)の各々は、活性ゾーン(63)を有する半導体積層体(6)を備え、
-前記半導体積層体(6)は、前記それぞれの半導体チップ(31、32)の全ての画素(33)にわたって連続して延在し、
前記第1の光学素子(41)および前記第2の光学素子(42)は、共通の出射レンズ(43)を有し、前記発生させた光は前記出射レンズ(43)において前記前照灯(1)から出射され、
前記第1および第2の光学素子(41、42)の各々は、それぞれ別個の光入射レンズ(44)を有し、
前記第1の半導体チップ(31)および前記第2の半導体チップ(32)は、対応付けられた前記光入射レンズ(44)および前記出射レンズ(43)の両方に対して、偏心配置される、
前照灯(1)。
【請求項2】
前記第1の半導体チップ(31)と前記第2の半導体チップ(32)とは構造が同一であり、
前記第1および第2の倍率は不変であり、前記明領域(P)は完全に前記ベース領域(B)の内部にある、
請求項1に記載の前照灯(1)。
【請求項3】
前記第1の光学素子(41)および前記第2の光学素子(42)の各々は、いくつかのレンズを備える、
請求項1または2に記載の前照灯(1)。
【請求項4】
前記第1の光学素子(41)および前記第2の光学素子(42)は、互いに部分的に接触する、請求項1~3の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項5】
対応する前記光入射レンズ(44)の光学軸に対するオフセット(D)は、前記共通の出射レンズ(43)の光学軸(46)に対するオフセットを打ち消すことができ、その結果、前記第1の半導体チップ(31)および前記第2の半導体チップ(32)は同じエリアを少なくとも部分的に照明する、
請求項1~4の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項6】
前記光入射レンズ(44)は、異なる焦点距離を有する、
請求項1~5の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項7】
前記第1の半導体チップ(31)および前記第2の半導体チップ(32)は、前記共通の出射レンズ(43)から異なる距離を有する、
請求項1~5の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項8】
前記第1の半導体チップ(31)および前記第2の半導体チップ(32)は、共通のキャリア(2)に配置され、
前記第1および第2の半導体チップ(31、32)の間の距離は、平面視で見ると、前記第1の半導体チップ(31)の対角線の長さの少なくとも半分、最大で4つの対角線の長さ、である、請求項1~7の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項9】
前記ベース領域(B)の水平開き角は25°と45°の間であり(両端を含む)、前記ベース領域(B)の鉛直開き角は5°と20°の間であり(両端を含む)、
前記ベース領域(B)のための前記第1の半導体チップ(31)の画素(33)当たりの角度分解能は、0.03°と0.4°の間であり(両端を含む)、
前記明領域(P)のための前記第2の半導体チップ(32)の画素(33)当たりの角度分解能は、前記第1の半導体チップ(31)の画素(33)当たりの前記角度分解能より少なくとも1.5倍大きい、
請求項1~8の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項10】
前記明領域(P)は、主視線方向(M)に対して横方向に対称的に向けられ、前記ベース領域(B)は前記主視線方向(M)に対して非対称的に、および/または偏心して、向けられる、
請求項1~9の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項11】
前記第1および第2の半導体チップ(31、32)の各々は、前記画素(33)を30×80と320×1050の間(両端を含む)の数だけ有し、
前記第1および第2の半導体チップ(31、32)の縦横比は、それぞれ2と6の間である、
請求項1~10の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項12】
前記第1および第2の半導体チップ(31、32)の前記画素(33)の各々は、上から見ると、10μm×10μmと0.1mm×0.1mmの間(両端を含む)のサイズを有し、
第1および第2の半導体チップ(31、32)は、作動中に射出側(30)で少なくとも200lm/mmの光束を意図どおりに射出し、
前記前照灯(1)は、25mの距離において、少なくとも30lxの照度を前記ベース領域(B)に発生させ、少なくとも150lxを前記明領域(P)に発生させる、ように適合化される、
請求項1~11の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項13】
前記第1および第2の半導体チップ(31、32)は、各々がAlInGaN材料系に基づき、各々が少なくとも1つの蛍光体(5)を備え、
前記蛍光体(5)は、前記第1および第2の半導体チップ(31、32)と同じように画素化され、
光学的絶縁物(7)が隣接画素(33)間にそれぞれ設けられる、
請求項1~12の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項14】
前記第1および第2の半導体チップ(31、32)の各々は、白色光を射出し、それぞれ発生させた光のCIE-xy色度図における色位置の相互間の差は、0.05単位以下であり、
前記色位置は不変である、
請求項1~13の何れか一項に記載の前照灯(1)。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載の前照灯(1)の作動方法であって、
前記第1および第2の半導体チップ(31、32)は、対応付けられた画素(33)のうちの一部のみが同時に発光するように、少なくとも一時的に作動され、
前記第1および第2の半導体チップ(31、32)からの光強度が前記明領域(P)内の少なくとも1つの点において重畳されるように、前記第1および第2の半導体チップ(31、32)は少なくとも一時的に作動される、
作動方法。
【請求項16】
時には前記第1の半導体チップ(31)のみが作動され、時には前記第2の半導体チップ(32)のみが作動され、
これにより生じた前記明領域(P)および前記ベース領域(B)は、画像記録デバイス(81)によって検出され、
その後、前記ベース領域(B)に対する前記明領域(P)の電子的調整、またはその逆、が行われ、調整結果が前記前照灯(1)の制御ユニット(82)に格納されるので、機械的微調整が不要である、
請求項15に記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
前照灯が規定される。加えて、前照灯のための作動方法が規定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
一つの目的は、効率的に作動可能であり、且つ高い照度レベルをもたらすことができる、前照灯を規定することである。
【0003】
この目的は、とりわけ、請求項1の特徴を有する前照灯によって解決される。その他の請求項の主題は、更なる好適な発展である。
【0004】
特に、本前照灯は、デジタル制御可能で調光可能な複数のLEDによる光学的ファーフィールドの画素微細照明のための画素化構造を有する。
【0005】
少なくとも1つの実施形態によると、前照灯は第1の半導体チップを備える。更に、前照灯は、第2の半導体チップを含む。厳密に1つの第1の半導体チップと厳密に1つの第2の半導体チップとが存在することが好ましい。
【0006】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および第2の半導体チップの各々は、光、特に可視光、を発生させるように設計される。第1および第2の半導体チップは、発光ダイオードチップ、略してLEDチップ、であることが好ましい。
【0007】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の半導体チップおよび第2の半導体チップの各々は、いくつかの画素に分割される。これら画素は、互いに独立に電気的に制御可能である。これにより、これら画素は、互いに独立に光を発生させることができる。第1ならびに第2の半導体チップ内の全ての画素は、構造が同一であることが好ましい。これら画素内に更なる細分割が存在しないことが好ましい。これが意味するのは、各画素が半導体チップの最小の電気光学単位を表すことである。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によると、前照灯は第1の光学素子を備える。この第1の光学素子は、第1の半導体チップの光学的に下流にある。第1の半導体チップからの光は、第1の光学素子を介して、第1の倍率でベース領域内に向けられる。ベース領域は、例えば、矩形である。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によると、前照灯は、第2の光学素子を含む。第2の光学素子は、第2の半導体チップからの光を第2の倍率で明領域内に向かわせる。明領域も、例えば、矩形である。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によると、第2の倍率は、第1の光学素子の倍率の少なくとも0.3倍または0.4倍、および/または最大で0.7倍または0.6倍である。特に、第2の倍率は、第1の倍率の0.5倍である。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によると、明領域はベース領域より小さい。明領域のサイズは、ベース領域の少なくとも10%または15%または20%、および/または最大で60%または50%または35%、であることが好ましい。特に、ベース領域は、明領域より4倍大きい。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によると、明領域はその一部分、大部分、または全体、がベース領域内にある。大部分とは、好ましくは少なくとも50%または75%または90%を意味する。特に、明領域は、ベース領域の連続した途切れない経路によって周囲全体が取り囲まれる。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によると、明領域とベース領域とは、基本的な幾何学的形状が同じであり、例えば矩形の基本形状を有する。明領域の基本形状は、ベース領域の基本形状と同じように向けられることが好ましい。これが意味するのは、この2つの基本形状の間に捩れがないことである。例えば、それぞれの基本形状を形成するそれぞれの矩形の長辺の向きは、互いに平行である。
【0014】
本前照灯は、自動車などの自動車両向けである。本前照灯は、自動車用前照灯であり得る。
【0015】
少なくとも1つの実施形態において、本前照灯は、光を発生させるための第1の半導体チップと、同じく光を発生させるための第2の半導体チップとを備える。第1の半導体チップおよび第2の半導体チップの各々は、いくつかの画素を備える。第1の光学素子は、第1の半導体チップからの光を第1の倍率でベース領域内に向かわせるように構成される。第2の光学素子は、第2の半導体チップからの光を第2の倍率で明領域内に向かわせる。明領域がベース領域より小さくなるように、第2の倍率は第1の倍率の0.3倍と0.7倍の間、好ましくは0.4倍と0.6倍の間、である。明領域は、少なくとも大部分がベース領域内にある。
【0016】
本願明細書に記載の前照灯においては、視野(FoV:field of view)としても公知の光学的ファーフィールドの照明が、μAFS(AFS:adaptive headlamp)としても公知の、2つのハイブリッド集積LEDアレイチップによって実現される。これら半導体チップの各々の縦横比は、必要な照明範囲の縦横比にほぼ対応する、例えば、半導体チップの約4:1の縦横比に対して、水平に40°、鉛直に10°であることが好ましい。この照明範囲は、特に明領域に対応する。ここで、倍率が互いに異なる2つの同一の半導体チップは、光学的ファーフィールドに結像されることが好ましい。
【0017】
一方の半導体チップ、特に第1の半導体チップ、は、FoV全体を照明し、第2の半導体チップは鉛直および水平方向に半分の倍率でFoV内に結像されることが好ましい。明領域は、第2の半導体チップが発生させているとき、ベース領域の水平方向中心に、または中心から僅かに外れて、位置合わせされていることが好ましい。前照灯のプレフィールドおよびカットオフラインを基本的に照明するために、明領域は、鉛直方向に、好ましくはその大部分または全体が鉛直0°線の前方にあり、したがって下方に結像される。第2の半導体チップのほぼ半分の倍率は、画素分解能を鉛直および水平方向に基本的に倍増させ、したがって強度を倍増させる。
【0018】
例えば、ベース領域の全角度範囲にわたって結像される第1の半導体チップは、0.1°の角度分解能を実現する。より小さなスケールで結像される第2の半導体チップは、ほぼ0.05°の角度分解能を実現することが好ましい。
【0019】
2つの半導体チップの相互作用の故に、ベース領域に相当する背景より中心の明領域を明るく照明できる。更に、明領域における分解能は、取り囲んでいる残りのベース領域における分解能より高い。これにより、前照灯のより微細な範囲調整が可能になる。加えて、第2の半導体チップによって、前照灯用の単一の半導体チップだけの場合に比べ、より高い光強度を明領域において実現できる。2つの半導体チップを合わせたチップ面積を、全体の照射を可能にする相応により大きな単一の半導体チップのチップ面積より小さくすることができる。2つの半導体チップへの分割によるこのチップ面積節減は、コストの削減を可能にする。両半導体チップにおける光の強度が150lm/mm~400lm/mmの範囲内であるとき、ほぼ40μm~30μmの画素サイズで、ほぼ1/20°という高い角度分解能を中心明領域において実現できる。
【0020】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の半導体チップと第2の半導体チップとは、構造が同一である。これが意味するのは、同一の半導体チップを製造公差内で使用できることである。これが意味するのは、両半導体チップは同じサイズであり、同じ分光組成の光を発生させ、複数画素への細分割も同じであることである。
【0021】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および第2の変倍率は不変である。これが意味するのは、前照灯が意図どおりに作動されたとき、それぞれの倍率が変化しないことである。換言すると、第1の光学素子および第2の光学素子の各々は、好ましくは可動部品が皆無の、固定光学システムであり得る。特に、前照灯が意図どおりに作動されたとき、両半導体チップおよびこれらに対応付けられた光学素子の間の距離は変化しない。
【0022】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の光学素子および/または第2の光学素子は、いくつかのレンズを備える。これらレンズはガラスレンズであり得る。これらレンズは、例えば、凸または両凸収束レンズ、フレネルレンズ、またはマイクロレンズアレイ、として設計される。これら光学素子ひいてはレンズは、例えば、円柱レンズ、または円柱レンズと同様に設計されたレンズ、の場合、回転対称、または対称軸のみ、を有することができる。それぞれの光学素子のレンズは、それぞれの半導体チップから離れる方向に光路に沿って配置されることが好ましい。
【0023】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の光学素子および第2の光学素子は、互いに独立している。これが特に意味するのは、第1および第2の光学素子は、光学的に有効な部品を一切共有しないことである。これにより可能になるのは、第1の半導体チップを第1の光学素子と共に、第2の半導体チップおよび第2の光学素子とは独立に取り扱えることである。
【0024】
第1の半導体チップは、第1の光学素子と共に、別個に取り扱い可能なモジュールを形成し、第2の半導体チップは、第2の光学素子と共に、別のモジュールを形成することが可能であり、場合によっては、それぞれハウジングまたはハウジングの一部と共に、モジュールを形成することが可能である。これらモジュールは、互いに独立に取り付け可能であることが好ましく、自動車または自動車両内に装着および/または交換可能である。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の光学素子と第2の光学素子とは互いに部分的に接触する。例えば、1つ以上の接触点、または1つ以上の接触線、または一接触面が第1の光学素子と第2の光学素子との間に存在する。第1および第2の光学素子が接触しているという事実は、両光学素子が互いに光学的に独立している可能性を排除しない。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の光学素子と第2の光学素子とは、互いに部分的にのみ独立している。これが意味するのは、例えば、第1および第2の光学素子は共通の部品を少なくとも1つ有することである。この共通の部品は、例えば、発生させた光を前照灯がそこから射出する出射レンズである。このような出射レンズを、第1および第2の光学素子に共通の単一の光学活性部品とすることが可能である。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の光学ユニットおよび第2の光学ユニットの各々は、それぞれ専用の光入射レンズを有する。これが意味するのは、これら光入射レンズは、互いに独立に選択可能であることである。複数の光入射レンズが存在する場合、それぞれの光学素子の更なるレンズが、例えば共通の出射レンズとそれに対応付けられたそれぞれの光入射レンズとの間に、存在し得る。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の半導体チップおよび/または第2の半導体チップは、対応付けられた光入射レンズに対して、および/または対応付けられた出射レンズに対して、偏心配置される。光入射レンズに対するこれら半導体チップの偏心配置は、出射レンズに対する偏心配置を打ち消すことができる。これが特に当てはまるのは、第1および第2の半導体チップに対して共通の1つの出射レンズが存在する場合である。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の半導体チップと第2の半導体チップとは、共通のキャリアに、特に互いに隣接して、配置される。このキャリアは、放熱板および/または印刷回路基板でもよい。例えば、キャリアは、放熱板、セラミック板、メタルコアボード、または印刷回路基板、略してPCB、である。キャリアは、半導体チップ同士を接続するための導体経路を複数有することが好ましい。
【0030】
キャリアは、PCBまたはメタルコアPCBが取り付けられた放熱板で構成可能である。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および第2の半導体チップ間の距離は、第1の半導体チップの対角線の長さの少なくとも半分または全長である。代わりに、または加えて、この距離は、第1の半導体チップの対角線の長さの最大で6または4または3つ分である。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によると、ファーフィールドにおけるベース領域の水平開き角は、例えば前照灯の光射出面から、少なくとも25°または30°である。代わりに、または加えて、この開き角は、最大で55°または60°である。ベース領域のための好適な水平開き角は、約35°である。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によると、ベース領域の鉛直開き角は、少なくとも3°または5°である。代わりに、または加えて、この鉛直開き角は、最大で20°または15°または13°である。特に、この鉛直開き角は、ほぼ10°である。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によると、ベース領域のための第1の半導体チップの画素当たりのファーフィールド角度分解能は、少なくとも0.03°または0.06°である。代わりに、または加えて、この角度分解能は、最大で0.4°または0.2°または0.15°である。この角度分解能は、鉛直および水平方向に同じでもよく、例えば、ほぼ0.1°である。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によると、明領域のための第2の半導体チップの画素当たりのファーフィールド角度分解能は、ベース領域のための第1の半導体チップの画素当たりの角度分解能を少なくとも1.5または1.8または2倍上回る。このコンテキストにおいて、上回るとは、角度分解能が言及した倍数だけより良好であること、すなわち、角領域のためにより精確なラスタが存在すること、を意味する。例えば、明領域のための第2の半導体チップの角度分解能は、少なくとも0.025°および/または最大で0.125°、特にほぼ0.05°、である。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によると、明領域は、主視線方向に対して左右横方向に対称に向けられる。主視線方向は、前照灯が設置された自動車両の直線状の視線に相当し得る。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によると、ベース領域は、主視線方向に対して左右方向に非対称的に、および/または偏心して、向けられる。非対称的とは、ベース領域の形状が矩形でないことを意味し得る。ベース領域を非対称的に、および/または偏心させて、設計することによって、車道エリアの照明をより狙いどおりに行うことができる。非対称は、例えば、第2の半導体チップに対して第1の半導体チップを傾斜させることによって実現できる。ただし、第1および第2の半導体チップは、互いに等しい向きで、長手方向の辺が平行であることが好ましい。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および第2の半導体チップの各々は、少なくとも30×80画素または50×150画素を有する。代わりに、または加えて、第1および第2の半導体チップの画素数は、最大で500×1500または320×1050である。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によると、平面図で見た、第1および第2の半導体チップの縦横比は、少なくとも2または3である。代わりに、または加えて、この縦横比は、最大で8または5または4である。この縦横比は、平面図で見た、半導体チップの長辺対短辺の比である。
【0040】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および/または第2の半導体チップの画素の各々は、平面図で見たときに、少なくとも10μm×10μmまたは20μm×20μmのサイズを有する。代わりに、または加えて、このサイズは、最大で0.2mm×0.2mmまたは0.1mm×0.1mmまたは60μm×60μmである。全ての画素の構造が同一であることが好ましい。これら画素は、上から見たときに、例えば、正方形または矩形の平面を有する。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および/または第2の半導体チップは、意図どおりの作動中、1つの射出側で、少なくとも150lm/mmまたは200lm/mmまたは250lm/mmの光束を射出する。代わりに、または加えて、射出側の光束は、最大で500lm/mmまたは400lm/mmである。上記の値は、特に前照灯の定常動作中に該当し、したがって、ウォームアップフェーズでは上記の値を超える、または下回る、こともあり得る。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によると、前照灯は、少なくとも30lxまたは50lxの照度を25mの距離でベース領域に生じさせるように構成される。第1および第2の両半導体チップが明領域を照明する場合は、少なくとも150lxまたは250lxの照度が明領域に実現されることが好ましい。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および/または第2の半導体チップの各々は、1つの半導体積層体を有する。半導体積層体は、それぞれの光を電界発光によって発生させるための活性ゾーンを有する。
【0044】
半導体積層体は、III-V族化合物半導体材料に基づくことが好ましい。この半導体材料は、例えば、AlIn1-n-mGaNなどの窒化物化合物半導体材料、またはAlIn1-n-mGaPなどのリン化物化合物半導体材料、またはAlIn1-n-mGaAsなどの、またはAlGaIn1-n-mAs1-kなどの、ヒ化物化合物半導体材料であり、ここで、0≦n≦1、0≦m≦1、およびn+m≦1、および0≦k<1がそれぞれ適用される。半導体積層体の少なくとも1つの層または全ての層について、0<n≦0.8、0.4≦m<1、およびn+m≦0.95、ならびに0<k≦0.5が成り立つことが好ましい。半導体積層体は、ドーパントならびに追加成分を含み得る。ただし、簡素化のために、少量の他の物質で部分的に置換および/または補完され得る場合でも、半導体積層体の結晶格子の基本成分のみ、すなわち、Al、As、Ga、In、N、またはP、が示されている。
【0045】
好ましくは、半導体チップは、材料系AlInGaNに基づき、青色光あるいは近紫外線を好ましくは少なくとも360nmまたは385nm、および/または最大で420nmまたは410nm、の最大強度の波長で射出する。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および/または第2の半導体チップの各々は、1つ以上の蛍光体を備える。半導体積層体自体において発生させた光の部分または全変換は、少なくとも1つの蛍光体を介して作動される。特に、両半導体チップからの青色光が蛍光体からのほぼ黄色の光と混合されて、全体として白色混合光が射出されるように、部分変換が行われる。
【0047】
少なくとも1つの蛍光体は、(Ca,Sr)AlSiN:Eu2+、Sr(Ca,Sr)SiAl:Eu2+、(Sr,Ca)AlSiN*SiO:Eu2+、(Ca,Ba,Sr)Si:Eu2+、(Sr,Ca)[LiA1]:Eu2+などのEu2+によってドープされた窒化物、一般系(Gd,Lu,Tb,Y)(Al,Ga,D)(O,X)12:REのガーネット(Xはハライド、N、または二価元素、Dは三価または四価元素、REはLu(All-xGal2:Ce3+、Y(Al1-xGa12:Ce3+などの希土類金属類)、Eu2+、(Ca,Sr,Ba)S:Eu2+などのEu2+によってドープされた硫化物類、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu2+などのEu2+によってドープされたSiON類、系LiLnSi12-(m+n)Al(m+n)16-nからのβ-SiAlON類(REは希土類金属類)、系Si6-xAl8-y:RE(REは希土類金属類)からのβ-SiAlON類、AE2-x-aREEuSiO4-xまたはAE2-x-aREEuSi1-y4-x-2y(REは希土類金属およびAEはアルカリ土類金属)のような、または(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu2+などの、ニトリド-オルトケイ酸塩類、CaMg(SiOCl:Eu2+などのクロロシリケート類、(Sr,Ba,Ca,Mg)10(POCl:Eu2+などのクロロリン酸塩類、BaMgAl1017:Eu2+などのBaO-MgO-Al系からのBAM蛍光体類、M(PO(Cl,F):(Eu2+,Sb2+,Mn2+)などのハロリン酸塩類、(Sr,Ba,Ca)(POCl:Eu2+などのSCAP蛍光体類から成る群から選択されることが好ましい。加えて、所謂量子ドットを変換体材料として導入することもできる。II-VI族化合物、および/またはIII-V族化合物、および/またはIV-VI族化合物、および/または金属ナノ結晶、を含むナノ結晶材料の形態の量子ドットが好適である。更に、蛍光体は、量子井戸構造を有してもよく、エピタキシャル成長させてもよい。
【0048】
少なくとも1つの実施形態によると、蛍光体は、対応付けられた第1および/または第2の半導体チップと同じように画素化される。したがって、蛍光体内の光学的クロストークを回避できる。あるいは、蛍光体を、対応付けられた半導体チップの画素のうちの一部または全てにわたって連続して延在させることもできる。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によると、第1の半導体チップ、および/または第2の半導体チップ、および/またはそれぞれの蛍光体、の隣接画素間に光学的絶縁物が存在する。光学的絶縁物は、可視光に対して不透明、または殆ど不透明、である。光学的絶縁物は、金属層などの鏡面反射材料によって、または白色に見える封止体などの拡散性反射部品によって、あるいは、吸収性の、例えば黒色、部品によって、形成可能である。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によると、半導体積層体は、それぞれの半導体チップのいくつか、または全て、の画素にわたって連続して延在する。活性ゾーンも半導体チップのいくつか、または全て、にわたって連続して延在させることが可能である。ただし、活性ゾーンは複数の画素に細分割されることが好ましい。
【0051】
あるいは、隣接画間の半導体積層体を完全に除去可能である。この場合、全ての画素が同じ半導体積層体を有することが好ましい。これは、例えば、半導体積層体内の個々のサブ層の厚さ、およびこれらサブ層の精確なシーケンス、によって認識可能である。これらサブ層は、これら画素が実際に同じ半導体積層体に基づいているかどうかを識別するために使用できる一種の指紋を提供する。
【0052】
半導体積層体が複数の画素に個片化されている場合は、画素相互間の相対位置が変化しないことが好ましい。これにより、画素間の距離を特に小さくできる。したがって、隣接画間の間隙は、少なくとも0.3μmまたは1μm、および/または最大で20μmまたは10μmまたは5μmであることが好ましい。画素間の間隙は、フォトリソグラフィによって形成でき、ひいては特に小さくできる。
【0053】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および第2の半導体チップは、白色光を射出する。代わりに、または加えて、発生した光のCIE-xy標準色度図における色位置は、最大で0.04単位または0.01単位または0.003単位互いに異なる。これが意味するのは、2つの半導体チップが発生させた光の色位置は、観察者にとって、互いに異ならないか、または著しくは異ならないことである。色位置は、不変であって調整不能であることが好ましい。これが意味するのは、前照灯は特定の変更不能な色の光、特に白色光、を意図どおりに射出することである。
【0054】
加えて、前照灯のための作動方法が規定される。前照灯は、上記の実施形態のうちの1つ以上に関連して、上記のように設計される。したがって、作動方法の特徴は、前照灯についても、およびこの逆についても、開示されている。
【0055】
作動方法の少なくとも1つの実施形態において、第1および第2の半導体チップは、対応付けられた画素のうちの一部のみが光を発生させるように、永続的または一時的に作動される。これにより、走行エリアの照明を狙いどおりに行える。
【0056】
少なくとも1つの実施形態によると、第1および第2の半導体チップからの光強度が明領域内の少なくとも1つの点において合わされるように、第1および第2の半導体チップは一時的または永続的に作動される。これが意味するのは、これらの点は、高い明度を実現するために、第1および第2の半導体チップによって同時に照明されることである。
【0057】
本方法の少なくともの1つの実施形態によると、第1の半導体チップのみが、時には第2の半導体チップのみが、作動される。明領域全体およびベース領域全体の検出を画像記録デバイスによって行うことが可能である。この画像記録デバイスは、外部デバイスとすることも、前照灯が設置された自動車両に組み込むことも可能である。例えば、運転者支援のために、または自動運転用のために、自動車両に設置されたカメラが画像記録デバイスとしての役割を担うことができる。
【0058】
少なくとも1つの実施形態によると、ベース領域に対する明領域の、またはその逆の、電子調整が行われる。この調整は、明領域およびベース領域からの画像記録デバイスのデータに基づき、ソフトウェアによって行われることが好ましい。調整結果は、前照灯の制御ユニットまたは車両に格納される。これにより、明領域およびベース領域をカメラ調整によって電子的に整合できるので、複雑な機械的微調整が不要になる。
【0059】
制御ユニットは、半導体チップの一部、および/または半導体チップが取り付けられるキャリアの一部、とすることができる。この目的のために、両半導体チップの半導体積層体の各々を機能化基板、例えばCMOS技術の、例えば集積回路付きシリコン基板、に取り付けることができる。
【0060】
以下においては、本願明細書に記載の前照灯および本願明細書に記載の作動方法を複数の例示的実施形態を使用し、図面を参照して、より詳細に説明する。個々の図において、同様の参照符号は同様の要素を示している。ただし、ここにはスケール基準は示されていない。代わりに、より良好な理解のために、個々の要素は誇張されたサイズで示されている場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1A】本願明細書に記載の前照灯の一例示的実施形態の概略断面図を示す。
図1B図1Aの前照灯の概略平面図である。
図2】本願明細書に記載の前照灯の一例示的実施形態の概略上面図を示す。
図3A】本願明細書に記載の前照灯の一例示的実施形態の概略斜視図を示す。
図3B図3Aの前照灯の概略平面図である。
図4】本願明細書に記載の前照灯の一例示的実施形態の概略上面図を示す。
図5】本願明細書に記載の前照灯の一例示的実施形態の概略斜視断面図を示す。
図6】本願明細書に記載の前照灯の明領域およびベース領域の一例示的実施形態の概略図を示す。
図7】本願明細書に記載の前照灯のための半導体チップの一例示的実施形態の概略上面図を示す。
図8】本願明細書に記載の前照灯のための半導体チップの一例示的実施形態の概略断面図を示す。
図9】本願明細書に記載の前照灯のための半導体チップの一例示的実施形態の概略断面図を示す。
図10】本願明細書に記載の前照灯のための半導体チップの一例示的実施形態の概略断面図を示す。
図11】本願明細書に記載の前照灯を調整するための一作動方法の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1には、例えば自動車用の、前照灯1の一例が示されている。前照灯1はキャリア2を備え、そこに第1の画素化された半導体チップ31と第2の画素化された半導体チップ32とが取り付けられる。場合によっては、半導体チップ31、32用の制御ユニット82がキャリア2内に、または半導体チップ31、32自体内に、設置される。
【0063】
第1の光学素子41および第2の光学素子42が半導体チップ31、32に割り当てられる。光学素子41、42は、それぞれ異なる倍率を有する。これら倍率の差は、約2倍であることが好ましい。光学素子41、42の各々は、半導体チップ31、32に近い光入射レンズ44と出射レンズ43とを有する。半導体チップ31、32および対応するレンズ43、44は、光学軸46に沿って中心を揃えて配置できる。図1Aを参照。
【0064】
場合によっては、光学素子41、42および半導体チップ31、32を収容するハウジング25が存在する。出射レンズ43間の接続も、ハウジング25の一部によって実現され得る。
【0065】
場合によっては、光学的絶縁物7、例えば不透明な隔壁、が、例えばハウジング25の一部として、光学素子41、42および半導体チップ31、32の間に配置される。このような隔壁は、半導体チップ31、32を、それぞれの光学素子41、42共に、それぞれ個別に管理可能なモジュールとして、例えば差し込みまたはネジ込みによって、キャリア2に取り付けることも可能にする。
【0066】
光学素子41、42は互いに独立しており、特に上から見ると、互いに離れている。図1Bを参照。
【0067】
図2の上面図には、代わりに、光学素子41、42が単一の接触点47において接触して省スペース化されていることが示されている。それにも拘わらず、光学素子41、42を互いから光学的に独立させることができる。
【0068】
図3Aの例示的実施形態には、より大きな出射レンズ43は球面状の光射出面を有するが、このレンズは所定寸法に切断され、ひいては、平面図で見ると、ほぼ矩形の横断面を有することが示されている。図3Bを参照。光入射レンズ44は、回転対称形状であり得る。光入射レンズ44を所定寸法に切断することによって、特に省スペースな配置を実現できる。
【0069】
図3Bによると、光学素子41、42は、平面図では、長手方向軸線に沿って直線状に配置される。他方、光学素子41、42は、図4に示されているように、長手方向に配置される。これが意味するのは、レンズ41、42は、特に両出射レンズ43によって画成された、線に沿って、または平面において、互いに接触できることである。
【0070】
図5は、レンズ41、42が共通の出射レンズ43を有することを示す。出射レンズ43は、前照灯1の光射出面も構成する。加えて、光学素子41、42の各々は、それぞれ専用の光入射レンズ44を有する。半導体チップ31、32の向きは、入射レンズ44の光学軸46から偏心し、共通の出射レンズ43の光学軸46からも偏心している。光入射レンズ44の光学軸に対する対応するオフセットDによって、共通の出射レンズ43の光学軸46に対するオフセットを打ち消すことができるので、半導体チップ31、32は同じエリアを少なくとも部分的に照明する。両光入射レンズ44は、それぞれ異なる倍率を実現するために、それぞれ異なる焦点距離を有する。
【0071】
図5の説明図の一代替案として、両半導体チップ31、32から共通の出射レンズ43までのそれぞれの距離を違えることも可能である。これは、例えば、不図示の段付きキャリアの使用によって、またはハウジングを相応に設計することによって、実現できる。
【0072】
図6は、水平角度aおよび鉛直角度bに沿った前照灯1の照明パターンを示す。角度a、bのための軸線の交点は、前照灯1の主視線方向Mに対応する。主視線方向Mは、前照灯が設置された車両の直線移動方向に一致し得る。道路の路面標識線91および中心線92も示されている。
【0073】
図6は、比較的大きなベース領域Bが第1の半導体チップ31によって照明され、パンチエリアとしても公知の、比較的小さな明領域Pが第2の半導体チップ32によって照明されることを示している。明領域Pは、ベース領域Bの完全に内部にあり、且つ鉛直角度bのための軸線を中心にその周囲に位置する。両領域B、Pは、水平角度aのための軸線から偏心して位置合わせされている。ベース領域Bは、鉛直角度bのための軸線に対しても偏心している。
【0074】
水平方向aに、例えば、明領域Pは弱-9°から弱+9°にわたり、ベース領域Bは-12°から+23°にわたる。鉛直方向に、例えば、明領域Pは-4.0°から+1.0°にわたり、したがって、大部分が水平角度aのための軸線より下にある。ベース領域Bは、角度bに沿って-5°から+5°にわたる。
【0075】
ベース領域Bのための第1の半導体チップ31の画素化の故の角度分解能は、鉛直および水平方向に、ほぼ0.125°である。これは、25mの距離において5.5cmの空間分解能に相当する。第1の半導体チップ31を使用すると、54lxの照度が25mの距離において実現される。倍率がより小さい第2の半導体チップ32によって、0.0625°の角度分解能が実現される。これは、25mの距離において2.7cmの空間分解能に相当する。第2の半導体チップ32のみによる照度は、例えば、217lxであるので、両半導体チップ31、32が作動されると、約270lxの照度を明領域Pにおいて実現できる。
【0076】
図7は、半導体チップ31、32が、多数の、好ましくは正方格子の、画素33に細分割されていることを示す。画素33は、上から見ると、例えば40μmの、エッジ長を有する正方形である。半導体チップ31、32の縦横比は、ほぼ3.5:1であり、例えば、長さが11.2mm、幅が3.2mmであり、35.8mmの面積に相当する。半導体チップ31、32は、例えば、80×280画素を有する。
【0077】
図8は、半導体チップ31、32の各々が、発光用の活性ゾーン63を有する半導体積層体6を有することを示す。半導体積層体6は、例えば、材料系InGaNに基づく。半導体積層体6は、隣接画素33間から完全に除去される。画素33間の距離は極めて小さく、1μmのオーダーである。半導体積層体6は、成長基板から取り外され、交換基板35、例えばシリコン基板、に取り付けられる。制御ユニット82の一部または全体を交換基板35に組み込むことができる。成長基板が取り外されて交換基板35に取り付けられたとき、隣接画素33間の距離が変化しないことが好ましい。
【0078】
更に、場合によっては、蛍光体5の利用が可能である。蛍光体5は、成長基板に画素精度で取り付け可能であり、画素33への細分割も可能である。好ましくは白色混合光を発生させるために、活性ゾーン33からの放射と共に、蛍光体5が使用される。
【0079】
場合によっては、光学的絶縁物7の利用が可能である。これは、例えば、シリコンを二酸化チタン散乱粒子によって封入することによって、形成される。光学的絶縁物7は、図8の説明図と異なり、蛍光体5の個々のエリア間の間隙を埋めることもできる。
【0080】
図9の例示的実施形態において、半導体積層体6は、全ての画素33にわたって連続して延在する。これは、蛍光体5にも当てはまる。活性ゾーン63も全ての画素33にわたって連続して延在させることが可能である。隣接画素33間のエリアは、光学的絶縁物7によって完全または部分的に埋められ得る。
【0081】
これら画素33の互いから電気的に独立した制御が実現されるのは、残りの半導体積層体6のクロス導電率が極めて低い、および/または無視できる、という事実による。
【0082】
図10によると、画素33間の半導体積層体6は、部分的に除去されている。活性ゾーン63も除去されている。半導体積層体6のエリアには、隣接画素33間にキャビティ38が形成され得る。これらキャビティ38は、空にされる、または、例えばガスで充填される。図10によると、光学的絶縁物7は、画素化された蛍光体5のエリア間にのみ延在するが、場合によっては、キャビティ38内まで延在させることもできる。
【0083】
半導体積層体6、複数の画素33への細分割、蛍光体5の画素化、および光学的絶縁物7、のための図8図10に示されている構成は、互いに組み合わせ可能であり、したがって、全ての例示的実施形態に存在させることができる。
【0084】
図11は、領域B、Pの互いに対する調整を示す。最初に、初期明領域P’を使用して照明が行われる。これは、カメラのような画像記録デバイス81によって検出される。カメラ81からのデータを使用して、対応付けられた半導体チップからの射出は、所望の明領域Pに電子的に調整される。この調整は、特定の画素33を零点として設定することによって、および/または特定の画素列を水平線として規定することによって、行われる。同じように、初期ベース領域B’からベース領域Bに電子的に修正される。キャリブレーションデータを制御ユニット82に格納できる。
【0085】
これにより、電子または電気光学的な微調整の実施が可能になるので、光学素子41、42とこれらに対応付けられた半導体チップ31、32の更なる機械的調整の必要がない。
【0086】
本願明細書に記載の発明は、各例示的実施形態を使用した説明によって制限されない。むしろ、本発明は、あらゆる新しい特徴、ならびに特徴のあらゆる組み合わせ、を包含する。これらは、特に、特許請求の範囲内の特徴のあらゆる組み合わせを含む。これは、この特徴またはこの組み合わせ自体が特許請求の範囲または例示的実施形態に明記されていない場合でも、当てはまる。
【0087】
本特許出願は、独国特許出願第10 2017 128 125.8号の優先権を主張する。これにより、その開示内容は参照によって本願明細書に組み込まれるものとする。
【符号の説明】
【0088】
1 前照灯
2 キャリア
25 ハウジング
30 半導体チップの射出側
31 第1の画素化された半導体チップ
32 第2の画素化された半導体チップ
33 画素
35 基板
38 キャビティ
41 第1の光学素子
42 第2の光学素子
43 出射レンズ
44 光入射レンズ
46 光学軸
47 接触点
5 蛍光体
6 半導体積層体
63 活性ゾーン
7 光学的絶縁物
81 画像記録デバイス
82 制御ユニット
91 車道境界
92 中心線
a 角度水平
b 角度鉛直
B ベース領域
D オフセット
M 主視線方向
P 明領域
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11