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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】軸駆動発電機兼推進電動機システム
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/17 20060101AFI20221212BHJP
   B63H 21/20 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B63H21/17
B63H21/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021163418
(22)【出願日】2021-10-04
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】河合 祐樹
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-55770(JP,A)
【文献】特開2008-125155(JP,A)
【文献】特開2018-24279(JP,A)
【文献】特開2014-80175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0309242(US,A1)
【文献】特開昭61-102148(JP,A)
【文献】特開2021-24490(JP,A)
【文献】特開平5-139381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/17
B63H 21/20
B63H 23/10
B63H 23/30
B63H 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進電動機と軸発電機とを兼ねる軸発電機兼推進電動機と、
主機エンジンと前記軸発電機兼推進電動機と推進プロペラを連結するギアボックス内に設けた、前記軸発電機兼推進電動機に対して切り替え可能な滑りクラッチ及び直結クラッチと、
前記軸発電機兼推進電動機と主配電盤との間に設けた、前記軸発電機兼推進電動機を発電モードと電動モードの何れかに切り替える切替盤と、
前記発電モード時に前記軸発電機兼推進電動機の電圧を一定に制御する自動電圧調整器と、
前記電動モード時に前記軸発電機兼推進電動機の力率を一定に制御する自動力率調整器と、
前記発電モード時に前記自動電圧調整器に切り替え、前記電動モード時に前記自動力率調整器に切り替える励磁回路と
を有することを特徴とする軸駆動発電機兼推進電動機システム。
【請求項2】
前記自動力率調整器は、高負荷時には前記軸発電機兼推進電動機の力率を一定に制御する力率制御であり、低負荷時には前記軸発電機兼推進電動機の入力無効電力を一定に制御する無効電力制御であることを特徴とする請求項1記載の軸駆動発電機兼推進電動機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸発電機を搭載する船舶において、主推進(ディーゼル推進)機の代替えとして、軸発電機を推進機として使用する軸駆動発電機兼推進電動機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶に搭載される電力供給システムについて説明する。図4は、従来の電力供給システムの構成を示すブロック図である。
【0003】
図4に示すように、電力供給システムは、推進プロペラ1、主機エンジン2、ギアボックス3、軸発電機兼推進電動機4、電力変換装置5、主配電盤6が設けられる。
【0004】
主機エンジン2は、ギアボックス3と連結され、さらに、ギアボックス3は、推進プロペラ1と連結される。主機エンジン2は、ギアボックス3を介し、推進プロペラ1を回転させ、船舶を推進させる。ギアボックス3は、主機エンジン2の回転数が、推進プロペラ1に必要な回転数となるよう適切なギア比が設定されている。さらに、ギアボックス3には、軸発電機兼推進電動機4が連結される。
【0005】
発電モード時には、推進プロペラ1を駆動する主機エンジン2が駆動され、ギアボックス3を介して主機エンジン2により回転させられる軸発電機兼推進電動機4から交流電力が出力される。軸発電機兼推進電動機4から出力される電力は、電力変換装置5を介して主配電盤6に供給される。
【0006】
電動モード時には、主機エンジンの停止中に電力変換装置5を制御し、主配電盤6からの電力を使用して、軸発電機兼推進電動機4を軸電動機として始動させ、ギアボックス3を介して推進プロペラ1を駆動して走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-044839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の船舶に搭載される電力供給システムでは、電力変換装置5が設けられているが、電力変換装置5には十分な容量が必要であるため比較的寸法が大きい。このため、小型内航船等で船内の省スペース化が要求される船舶においては、電力変換装置5の配置スペースの確保ができないという問題があった。
【0009】
本発明は上記状況に対処するためになされたもので、船内の省スペース化を実現することが可能な軸駆動発電機兼推進電動機システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明による軸駆動発電機兼推進電動機システムは、推進電動機と軸発電機とを兼ねる軸発電機兼推進電動機と、主機エンジンと前記軸発電機兼推進電動機と推進プロペラを連結するギアボックス内に設けた、前記軸発電機兼推進電動機に対して切り替え可能な滑りクラッチ及び直結クラッチと、前記軸発電機兼推進電動機と主配電盤との間に設けた、前記軸発電機兼推進電動機を発電モードと電動モードの何れかに切り替える切替盤と、前記発電モード時に前記軸発電機兼推進電動機の電圧を一定に制御する自動電圧調整器と、前記電動モード時に前記軸発電機兼推進電動機の力率を一定に制御する自動力率調整器と、前記発電モード時に前記自動電圧調整器に切り替え、前記電動モード時に前記自動力率調整器に切り替える励磁回路とを有する。
【0011】
請求項2に記載の発明による軸駆動発電機兼推進電動機システムは、請求項1記載の軸駆動発電機兼推進電動機システムにおいて、前記自動力率調整器は、高負荷時は前記軸発電機兼推進電動機の力率を一定に制御する力率制御であり、低負荷時は前記軸発電機兼推進電動機の入力無効電力を一定に制御する無効電力制御である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軸駆動発電機兼推進電動機システムによれば、電力変換装置を削減することで、システム全体の設置体積が削減でき、船内の省スペース化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態における軸駆動発電機兼推進電動機システムの構成を示すブロック図。
図2】本実施形態における軸駆動発電機兼推進電動機システムの発電モード時の運転フローを示す図。
図3】本実施形態における軸駆動発電機兼推進電動機システムの電動モード時の運転フローを示す図。
図4】従来の電力供給システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態における軸駆動発電機兼推進電動機システム(電力供給システム)の構成を示すブロック図である。
【0016】
図1において、軸駆動発電機兼推進電動機システムは、推進プロペラ1、主機エンジン2、ギアボックス3、軸発電機兼推進電動機4、主配電盤6、切替盤7、励磁回路8、自動電圧調整器9及び自動力率調整器10が設けられる。なお、図4と同一符号を付した構成は、図4にシステムと基本的に同じ構成として詳細な説明を省略する。
【0017】
主機エンジン2は、ギアボックス3と連結され、さらに、ギアボックス3は、推進プロペラ1と連結される。主機エンジン2は、ギアボックス3を介し、推進プロペラ1を回転させ、船舶を推進させる。
【0018】
軸発電機兼推進電動機4は、発電モード時には軸発電機として使用され、電動モードには推進電動機として使用される。
【0019】
本実施形態におけるギアボックス3には、滑りクラッチ31及び直結クラッチ32が設けられる。滑りクラッチ31及び直結クラッチ32は、軸発電機兼推進電動機4に対して、発電モードあるいは電動モードに応じて切り替えて使用される。すなわち、発電モード時には滑りクラッチ31に切り替えられ、電動モード時には直結クラッチ32に切り替えられる。
【0020】
滑りクラッチ31は、主軸と従動軸が滑りながら結合し、回転力を伝達させ、滑り制御により、軸発電機兼推進電動機4の回転数(周波数)を一定に制御する。直結クラッチ32は、主軸と従動軸を機械的に結合し、軸を一体で回転力を伝達させる。
【0021】
切替盤7は、軸発電機兼推進電動機4と主配電盤6との間に設けられ、発電モードと電動モードを切り替える。
【0022】
励磁回路8は、切替盤7により切り替えられる発電モードあるいは電動モードに応じて、自動電圧調整器9あるいは自動力率調整器10の何れかに切り替えて動作させる。励磁回路8は、発電モード時には自動電圧調整器9に切り替え、電動モード時には自動力率調整器10に切り替える。
【0023】
自動電圧調整器9は、軸発電機兼推進電動機4の電圧を自動で一定に制御する装置である。自動電圧調整器9は、船内の負荷変動に対して、電圧を自動で一定に維持し、また、負荷遮断時の電圧上昇を抑制する制御を行う。
【0024】
自動力率調整器10は、軸発電機兼推進電動機4の力率を自動で一定に制御する装置である。自動力率調整器10は、力率制御と無効電力制御をする。自動力率調整器10は、高負荷時には軸発電機兼推進電動機4の力率を一定に制御する力率制御を行い、低負荷時には力率制御が不安定となるため、軸発電機兼推進電動機4の入力無効電力を一定に制御する無効電力制御を行う。これにより、同期はずれを防ぐことができる。
次に、本実施形態における軸駆動発電機兼推進電動機システムの動作について説明する。
【0025】
図2は、本実施形態における軸駆動発電機兼推進電動機システムの発電モード時の運転フローを示す図である。
【0026】
まず、切替盤7の切替スイッチが発電モード「閉」の状態にされることで、発電モードへ切り替えられる(ステップA7)。励磁回路8は、自動電圧調整器9「閉」(ステップA5)、自動力率調整器10「開」(ステップA6)とすることで、自動電圧調整器9による電圧調整が実行される状態に切り替える。
【0027】
また、軸発電機兼推進電動機4が停止中(ステップA1)、主機エンジン2が運転状態(ステップA2)において、ギアボックス3では、直結クラッチ32「脱」(ステップA3)、滑りクラッチ31「嵌」(閉)(ステップA4)として、滑りクラッチ31に切り替えられる。
【0028】
発電機停止中、主機エンジン2運転、直結クラッチ32「脱」、滑りクラッチ31「嵌」、自動電圧調整器9「閉」、自動力率調整器10「開」、切替盤7の切替スイッチが発電モード「閉」の状態において(ステップA8)、主機エンジン2の運転に伴って、ギアボックス3の滑りクラッチ31を介して、軸発電機兼推進電動機4が回転される。
【0029】
軸発電機兼推進電動機4が定格回転数となれば(ステップA9、YES)、発電機運転準備完了となる(ステップA10)。発電機運転準備完了の状態において、運転操作があると(ステップA11,A12)、軸発電機兼推進電動機4の電圧・周波数が定格電圧まで確立された後(ステップA13)、主配電盤6のACB(Air Circuit Breaker)「閉」によって(ステップA14)、軸発電機兼推進電動機4から出力される電力が主配電盤6に供給される。軸発電機兼推進電動機4から出力される電力については自動電圧調整器9により電圧が一定となるように制御される。軸発電機兼推進電動機4による発電機運転による電力は、主配電盤6を通じて船内給電される。
【0030】
こうして、発電モード時には、滑りクラッチ32に切り替えられることで軸発電機兼推進電動機4の回転数(周波数)が一定に制御され、また自動電圧調整器9により電圧が一定に制御されて、軸発電機兼推進電動機4から主配電盤6に電力供給される。
【0031】
図3は、本実施形態における軸駆動発電機兼推進電動機システムの電動モード時の運転フローである。
【0032】
まず、切替盤7の切替スイッチが電動モード「閉」の状態にされることで、電動モードへ切り替えられる(ステップB7)。励磁回路8は、自動電圧調整器9「開」(ステップB5)、自動力率調整器10「閉」(ステップB6)とすることで、自動力率調整器10による力率調整が実行される状態に切り替える。
【0033】
また、軸発電機兼推進電動機4が停止中(ステップB1)、主機エンジン2が停止状態(ステップB2)において、ギアボックス3では、直結クラッチ32「脱」(ステップB3)、滑りクラッチ31「脱」(ステップB4)とする。
【0034】
電動機停止中、主機エンジン2停止、直結クラッチ32「脱」、滑りクラッチ31「脱」、自動電圧調整器9「開」、自動力率調整器10「閉」、切替盤7の切替スイッチが電動モード「閉」の状態において(ステップB8)、主配電盤6のACB「閉」として(ステップB9)、主配電盤6から軸発電機兼推進電動機4へ電圧を印加し、電動機起動を行う(ステップB10)。
【0035】
軸発電機兼推進電動機4が同期回転数付近まで加速した後(ステップB11、YES)、直結クラッチ32「嵌」とする(ステップB12)。軸発電機兼推進電動機4が同期回転数付近となり、直結クラッチ32に切り替えられた状態において、運転操作があると(ステップB13,B14)、自動力率調整器10による力率制御(高負荷時)をして、電動機運転を行う。
【0036】
なお、自動力率調整器10は、高負荷時には軸発電機兼推進電動機4の力率を一定に制御する力率制御を行うが、低負荷時には力率制御が不安定となるため、軸発電機兼推進電動機4の入力無効電力を一定に制御する無効電力制御を行う。これにより、同期はずれを防ぐ。
【0037】
こうして、電動モード時には、主機エンジン2の停止中に主配電盤6からの電力を使用して、軸発電機兼推進電動機4を軸電動機として始動させ、直結クラッチ32を介して推進プロペラ1を駆動して走行することができる。また、電動モード時には、自動力率調整器を動作させることで、無効電力を一定に制御して同期外れを防ぐことができる。
【0038】
このようにして、本実施形態における軸駆動発電機兼推進電動機システムでは、発電モードと電動モードを切り替える切替盤7、発電モードあるいは電動モードに応じて切り替えられる滑りクラッチ31及び直結クラッチ32を有するギアボックス3と、励磁回路8により切り替えて動作させる自動電圧調整器9及び自動力率調整器10を設けることで、従来の電力供給システムに設けられた電力変換装置を省くことかできる。本実施形態における軸駆動発電機兼推進電動機システムにおいて、従来の電力変換装置に代えて設けた構成の寸法は、電力変換装置と比較して十分小さい。従って、電力変換装置を省くことで、システム全体の設置体積を削減し、船内の省スペース化を実現することができる。
【0039】
なお、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…推進プロペラ
2…主機エンジン
3…ギアボックス
31…滑りクラッチ
32…直結クラッチ
4…軸発電機兼推進電動機
6…主配電盤
7…切替盤
8…励磁回路
9…自動電圧調整器
10…自動力率調整器
【要約】
【課題】船内の省スペース化を実現することが可能な軸駆動発電機兼推進電動機システムを提供すること。
【解決手段】軸駆動発電機兼推進電動機システムは、推進電動機と軸発電機とを兼ねる軸発電機兼推進電動機と、主機エンジンと前記軸発電機兼推進電動機と推進プロペラを連結するギアボックス内に設けた、前記軸発電機兼推進電動機に対して切り替え可能な滑りクラッチ及び直結クラッチと、前記軸発電機兼推進電動機と主配電盤との間に設けた、前記軸発電機兼推進電動機を発電モードと電動モードの何れかに切り替える切替盤と、前記発電モード時に前記軸発電機兼推進電動機の電圧を一定に制御する自動電圧調整器と、前記電動モード時に前記軸発電機兼推進電動機の力率を一定に制御する自動力率調整器と、前記発電モード時に前記自動電圧調整器に切り替え、前記電動モード時に前記自動力率調整器に切り替える励磁回路とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4