(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 13/14 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
B66B13/14 K
B66B13/14 D
(21)【出願番号】P 2021203390
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井浦 秀保
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-306085(JP,A)
【文献】特開昭56-161286(JP,A)
【文献】特開2016-74531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ装置の乗りかごの一対のドアをドアモータで開閉駆動するエレベータ制御装置において、
前記ドア間の距離を計測するドア間距離計測部と、
前記ドアの戸開制御時の異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部が異常を検出した場合、前記ドア間の距離に応じた時間を経過した後、前記異常検出部が異常を検出する前の前記ドアモータの回転方向に対して反対方向に前記ドアモータを回転させる反転指令部と、
を有するエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記反転指令部は、
前記ドア間の距離に応じた時間を設定する時間設定部と、
前記異常検出部が異常を検出してからの経過時間を計測する時間計測部と、
を有し、
前記異常検出部が異常を検出してからの経過時間が、前記時間設定部によって設定された時間を経過すると、前記異常検出部が異常を検出する前の前記ドアモータの回転方向に対して反対方向に前記ドアモータを回転させる、
請求項1に記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記時間設定部は、前記ドア間の距離が近いほど短い時間を設定する、
請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記異常検出部は、
前記ドアの開動作を指令する信号が出力されてから所定の時間を経過しても前記ドアが完全に開いた状態に至らない場合、前記ドアの戸開制御時において異常があったと判断する、
請求項1から3の何れか一項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記異常検出部は、
前記ドアモータのトルクを計測するトルクセンサで計測された値が所定の閾値を超えた場合、前記ドアの戸開制御時に異常があったと判断する、
請求項1から3の何れか一項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記ドア間距離計測部は、前記ドアモータの回転数に基づいて前記ドア間の距離を計測する、
請求項1から3の何れか一項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項7】
前記ドア間距離計測部は、レーザーを用いた距離の計測装置を用いて、前記ドア間の距離を計測する、
請求項1から3の何れか一項に記載のエレベータ制御装置。
【請求項8】
エレベータ装置の乗りかごのドアの開制御において、
前記ドア間の距離を計測する工程と、
前記ドアの戸開制御時の異常を検出する工程と、
戸開制御時の異常を検出した場合、異常を検出したときの前記ドア間の距離に応じた時間の経過を計測する工程と、
前記ドア間の距離に応じた時間の経過後に、前記異常が検出される前のドアモータの回転方向に対して反対方向に前記ドアモータを回転させる工程と、
を含むエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置の乗りかごのドアを戸開制御する際、インターロックの引っ掛かりや異物の挟まり等に起因してドアが開かない場合、所定の時間を待って戸開制御と戸閉制御とを繰り返すことで、インターロックの引っ掛かりや異物の挟まった状態等から抜け出すための制御が行われている。
【0003】
ドアが正常に戸開制御されるまでの間、ドアが閉じた状態が長いほど、乗客は閉塞感を感じる。異物の検出精度を向上させるための技術やエレベータの停止頻度を低減するための技術については、複数の報告がある。しかしながら、乗客の閉塞感を低減するための技術についての報告は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-102164号公報
【文献】特開2011-131996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の事情によりなされたもので、乗客の閉塞感を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための実施形態に係るエレベータ制御装置は、エレベータ装置の乗りかごの一対のドアをドアモータで開閉駆動する制御装置である。エレベータ制御装置は、ドア間距離計測部と異常検出部と反転指令部とを有する。ドア間距離計測部は、ドア間の距離を計測する。異常検出部は、ドアの戸開制御時の異常を検出する。反転指令部は、異常検出部が異常を検出した場合、ドア間の距離に応じた時間を経過した後、異常検出部が異常を検出する前のドアモータの回転方向に対して反対方向にドアモータを回転させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係るエレベータ装置の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るエレベータ装置の制御系を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係る制御ユニットの物理的ブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る制御ユニットの機能的ブロック図である。
【
図5】本実施形態に係るエレベータ制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係るエレベータ制御装置の動作を説明するための図である。
【
図7】本実施形態に係るエレベータ制御装置の動作を説明するための図である。
【
図8】本実施形態に係るエレベータ制御装置の動作を説明するための図である。
【
図9】本実施形態に係るエレベータ制御装置の動作を説明するための図である。
【
図10】本実施形態に係るエレベータ制御装置の動作を説明するための図である。
【
図11】本実施形態に係るエレベータ装置の制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。本実施形態の説明に用いる図およびフローチャートは一例を示すものである。
【0009】
本実施形態に係るエレベータ制御装置は、ドアの戸開制御時において異常を検出した場合、停止したドアのドア間距離に応じた待ち時間を経過した後、異常状態から復旧するために、異常を検出する前のドアモータの回転方向に対して反対方向にドアモータを回転させる。本実施形態に係るエレベータ制御装置は、ドア間距離が近いほど短い待ち時間を設定することで、戸開制御時の異常状態から復旧する際におけるドアが閉じている時間を短くし、乗客の閉塞感を低減する。
【0010】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係るエレベータ装置10の斜視図である。エレベータ装置10は、商業施設や居住施設などの建築物に設けられた昇降路100の内部に配置されている。
図1に示されるように、エレベータ装置10は、乗りかご31、カウンタウエイト50、昇降モータ40、ガイドレール21~24、制御盤70(エレベータ制御装置)を有している。
【0011】
ガイドレール21~24それぞれは、長手方向をZ軸方向とする部材である。ガイドレール21,22は、乗りかご31を昇降自在にガイドするための一対の部材である。また、ガイドレール23,24は、カウンタウエイト50を昇降自在にガイドするための一対の部材である。ガイドレール21とガイドレール22は、Y軸方向に離間して配置されている。また、ガイドレール23,24も、同様にY軸方向に相互に離間して配置されている。
図1では、カウンタウエイト50のガイドレール23,24が、乗りかご31のガイドレール21,22に対してX軸方向に離間して配置されている。なお、ガイドレール21~24の配置は、
図1に示される配置に限定されるものではない。
【0012】
乗りかご31は、利用者を収容して昇降路100を昇降するユニットである。乗りかご31は、ガイドレール21,22の間に配置され、ガイドレール21,22に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0013】
乗りかご31の+X側の側面には、内部に出入りするための開口部31aが形成されている。開口部31aは、乗りかご31の側面に沿って移動する一対のドア32(右側ドア32a、左側ドア32b)によって、閉塞或いは開放される。ドア32は、ドアモータ(
図1では、図示略)によって開閉される。
【0014】
カウンタウエイト50は、ガイドレール23,24に対して、上下方向に移動可能に取り付けられている。カウンタウエイト50の重量は、乗りかご31の重量に対して所定の割合になるように調整されている。
【0015】
昇降モータ40は、乗りかご31を昇降させるためのモータである。昇降モータ40は、昇降路100の上部に、回転軸がY軸に平行になるように配置されている。昇降モータ40の回転軸にはプーリー42が固定されている。
【0016】
昇降モータ40のプーリー42には、ワイヤ43が巻き回されている。ワイヤ43は、一端が、乗りかご31に固定され、他端が、カウンタウエイト50に固定されている。
【0017】
制御盤70は、昇降路100に配置されている。制御盤70には、昇降モータ40や、乗りかご31に設けられた機器を制御するための制御装置が収容されている。
【0018】
図2は、エレベータ装置10の制御系を示すブロック図である。制御系は、制御盤70(エレベータ制御装置)に収容される制御ユニット80および駆動ユニット91と、乗りかご31に設けられる操作パネル36と入出力装置35と右側ドア完開検知センサ34aおよび左側ドア完開検知センサ34bとを含んで構成される。
【0019】
操作パネル36は、乗りかご31の内壁面に設けられている。操作パネル36は、乗りかご31の利用者から、行き先階などを受け付けるためのインタフェースである。利用者は、操作パネル36を操作することで、乗りかご31の行き先階などの登録や、ドア32の開閉を行うことができる。入出力装置35は、スピーカ、ディスプレイ、マイクロフォン等で構成されている。
【0020】
右側ドア完開検知センサ34aおよび左側ドア完開検知センサ34bは、ドア32(右側ドア32aおよび左側ドア32b)が完全に開いた状態であることを検知するためのセンサである。右側ドア完開検知センサ34aおよび左側ドア完開検知センサ34bは、タッチセンサや押しボタンスイッチ等で構成されている。右側ドア完開検知センサ34aは、右側ドア32aが完全に開いた位置に達すると右側ドア32aが右側ドア完開検知センサ34aと接触する位置に配置される。右側ドア完開検知センサ34aは、右側ドア32aが完全に開いた状態にあることを検知すると、例えば、ハイレベルの信号を出力する。左側ドア完開検知センサ34bは、左側ドア32bが完全に開いた位置に達すると左側ドア32bが左側ドア完開検知センサ34bと接触する位置に配置される。左側ドア完開検知センサ34bは、左側ドア32bが完全に開いた状態にあることを検知すると、例えば、ハイレベルの信号を出力する。
【0021】
上述した操作パネル36と入出力装置35と右側ドア完開検知センサ34aおよび左側ドア完開検知センサ34bは、
図1に示されるケーブル44を介して、制御盤70に収容される制御ユニット80に接続されている。
【0022】
図2に示す駆動ユニット91は、昇降モータ40と、乗りかご31のドア32を駆動するドアモータ41(
図1では図示略)に電力を供給することで、昇降モータ40とドアモータ41とを駆動する。駆動ユニット91は、制御ユニット80からの指示に基づいて、昇降モータ40を駆動する。また、駆動ユニット91は、制御ユニット80からの指示に基づいて、ドアモータ41を駆動する。
【0023】
ドアモータ41は、右側ドア32aを開閉駆動するモータと左側ドア32bを開閉駆動するモータの2つのモータから構成されている。ドアモータ41は、回転軸の回転数に応じて(例えば、回転軸が1回転するごとに)パルスを制御ユニット80に送信する。
【0024】
図3は、制御ユニット80の物理的なブロック図である。制御ユニット80は、バス85を介して相互接続されるCPU(Central Processing Unit)81、主記憶部82、補助記憶部83、およびインタフェース部84を有するコンピュータである。CPU81は、補助記憶部83に記憶されているプログラムに従って、後述する処理を実行する。主記憶部82は、RAM(Random Access Memory)等を有している。主記憶部82は、CPU81の作業領域として用いられる。補助記憶部83は、ROM(Read Only Memory)、半導体メモリ等の不揮発性メモリを有している。補助記憶部83は、CPU81が実行するプログラム、および各種パラメータなどを記憶している。
【0025】
インタフェース部84は、シリアルインタフェース、パラレルインタフェース、無線LANインタフェースなどを有している。操作パネル36と、入出力装置35と、右側ドア完開検知センサ34aと、左側ドア完開検知センサ34bと、ドアモータ41と、駆動ユニット91とは、インタフェース部84を介して、CPU81に接続される。
【0026】
図4は、制御ユニット80の機能的なブロック図である。制御ユニット80のCPU81は、補助記憶部83に記憶されているプログラムを実行することで、モータ制御部71と異常時対応部72とを実現する。
【0027】
モータ制御部71は、操作パネル36もしくは各フロアの呼びパネルからの入力に基づいて、駆動ユニット91を介して乗りかご31を昇降制御するとともにドア32を開閉制御する。例えば、モータ制御部71が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ40を正転させると、乗りかご31が上昇するとともに、カウンタウエイト50が下降する。モータ制御部71が、駆動ユニット91を介して、昇降モータ40を逆転させると、乗りかご31が下降するとともに、カウンタウエイト50が上昇する。また、モータ制御部71が、駆動ユニット91を介して、ドアモータ41を正転させると、乗りかご31のドア32および各階の乗り場に設けられたドアは戸開制御され、ドアモータ41を逆転させると、乗りかご31のドア32および各階の乗り場に設けられたドアは戸閉制御される。
【0028】
異常時対応部72は、ドア32の戸開制御時において異常を検出した場合、右側ドア32aと左側ドア32bとの間のドア間距離Lに応じた待ち時間Twを経過した後、異常を検出する前のドアモータ41の回転方向に対して反対方向にドアモータ41を回転させる反転指令の信号をモータ制御部71に出力する。異常時対応部72は、異常検出部73と、ドア間距離計測部74と、反転指令部76とを有する。
【0029】
異常検出部73は、ドア32の戸開制御時の異常を検出する。異常検出部73は、モータ制御部71からドア32の開動作を指令する戸開信号が出力されてからの経過時間を計測するタイマーを有している。このタイマーは、右側ドア完開検知センサ34aと左側ドア完開検知センサ34bの両方のセンサからドア32が完全に開いた状態になったことを示す信号を受信するまで、経過時間の計測を継続する。異常検出部73は、タイマーによる計測値が所定の時間(例えば、10秒)を経過すると、異常を検出したことを示す信号を出力する。
【0030】
ドア間距離計測部74は、一対のドア(右側ドア32aと左側ドア32b)間のドア間距離Lを計測する。ドア32は、ドアモータ41の回転数に応じた距離を移動する。異物等でドア32の移動が停止されると、ドアモータ41の回転は停止する。ドアモータ41は、例えば、回転軸が1回転するごとにパルス信号を出力する。ドア間距離計測部74は、このパルス信号をカウントすることで、右側ドア32aと左側ドア32bの位置を計測し、右側ドア32aと左側ドア32bとの間のドア間距離Lを計測する。
【0031】
反転指令部76は、時間設定部77と、時間計測部78とを有する。時間設定部77は、異常検出部73が異常を検出したときのドア間距離Lに応じた待ち時間Twを設定する。例えば、時間設定部77は、(式1)に基づいて待ち時間Twを設定する。Lは、ドア間の距離である。例えば、関数f(L)は、待ち時間Twの最大値を10秒、最小値を2秒とする、単調増加関数である。
Tw=f(L) (式1)
【0032】
時間計測部78は、時間設定部77が設定した待ち時間Twを計測し、待ち時間Twが経過すると、異常検出部73が異常を検出する前のドアモータ41の回転方向に対して反対方向にドアモータ41を回転させる反転指令の信号をモータ制御部71に出力する。
【0033】
次に、
図5に示されるフローチャートを参照しながら、ドア間距離Lに応じたエレベータ制御方法について説明する。下記の制御は、補助記憶部83に記憶されたプログラムに基づいて行われ、制御の主体はCPU81である。乗りかご31が目的階に着床し、モータ制御部71から戸開信号が出力されると、戸開制御時の異常時対応処理が開始される。
【0034】
モータ制御部71から戸開信号が出力されると、異常検出部73は、戸開信号が出力されてから所定時間(例えば、10秒)経過するまでに、右側ドア完開検知センサ34aと左側ドア完開検知センサ34bの両方のセンサからドア32が完全に開いた状態になったことを示す信号を受信した否かを監視する(ステップS11)。異常検出部73が、戸開信号が出力されてから所定時間が経過するまでに、右側ドア完開検知センサ34aと左側ドア完開検知センサ34bの両方のセンサからドア32が完全に開いた状態になったことを示す信号を受信した場合(ステップS11:Yes)、戸開制御時の異常時対応処理は終了される。一方、異常検出部73は、戸開信号が出力されてから所定時間(例えば、10秒)経過するまでに、右側ドア完開検知センサ34aと左側ドア完開検知センサ34bの両方のセンサからドアが完全に開いた状態になったことを示す信号を受信しない場合(ステップS11:No)、異常を検出したことを示す信号を時間設定部77に送信する。
【0035】
時間設定部77は、異常を検出したことを示す信号を受信すると、ドア間距離計測部74からドア間距離Lを取得する(ステップS12)。次に、時間設定部77は、(式1)を用いてドア間距離Lに応じた待ち時間Twを設定する(ステップS13)。例えば、時間設定部77は、
図6に示すように、ドア開口率が0%(ドア32が完全に閉じた状態であり、ドア間距離L=0)である場合、待ち時間Twを2秒に設定する。時間設定部77は、
図7に示すように、ドア開口率が25%である場合、待ち時間Twを4秒に設定する。時間設定部77は、
図8に示すように、ドア開口率が80%である場合、待ち時間Twを8.4秒に設定する。
【0036】
次に、時間計測部78は、設定された待ち時間Twを計測する(ステップS14)。時間計測部78は、待ち時間Twが経過すると(ステップS14:Yes)、ドアモータ41を反転制御する反転指令の信号をモータ制御部71に出力する。モータ制御部71は、駆動ユニット91を介してドアモータ41を反転制御する(ステップS15)。
【0037】
次に、異常時対応部72は、反転制御を行った回数Kをカウントする(ステップS16)。異常時対応部72は、反転制御を行った回数Kが所定の回数(例えば、5回)未満であった場合(ステップS17:No)、処理をステップS11に戻し、再度戸開制御を行う。2回目以後のステップS11の処理では、所定の時間をステップS13で設定した待ち時間Twに変更して処理が行われる。2回目のステップS13の処理では、1回目のドア間距離Lと2回目のドア間距離Lが異なる場合、1回目と異なる待ち時間Twが設定される。一方、異常時対応部72は、反転制御を行った回数Kが所定の回数以上であった場合(ステップS17:Yes)、ドア32の反転制御を停止する。そして、処理はステップS18に移行される。
【0038】
制御ユニット80は、ステップS11~S17までの処理を繰り返すことで、インターロックの引っ掛かりや異物の挟まった状態等から抜け出すことを試みる。ステップS11~S17までの処理がK回行われても異常状態から復旧することができない場合、制御ユニット80は、戸開時に異常が発生したことを監視センタ等に通知するとともに、戸開時に異常が発生したことを入出力装置35から乗客に通知する(ステップS18)。ここでは、
図9に示すように、ドア間距離Lに応じた3つの状態が設定されており、制御ユニット80がその状態に応じた通知を行う場合について説明する。
図9に示すようなテーブルは、補助記憶部83に記憶されている。ドア間距離Lの最大は1600mmであるとする。ドア間距離Lが0乃至400mmである状態1の場合、ドア32の隙間から降車することは困難である。状態1の場合、制御ユニット80は、「ドアから離れて待機してください。」等の通知を行う。その際、乗客の閉塞感を緩和するために、「係員に連絡中です。」等の通知を行う。ドア間距離Lが400乃至800mmである状態2の場合、子供などの小柄な人はドア32の隙間から降車することが可能であるが、大柄な人は降車することが困難である。状態2の場合、制御ユニット80は、「無理な降車はやめてください。」等の通知を行う。ドア間距離Lが800乃至1600mmである状態3の場合、ドア32の隙間から降車することは可能である。状態3の場合、「乗りかごから降車可能です。降車の際には注意してください。」等の通知を行う。乗客への通知が終了すると、戸開制御時の異常検出時対応処理は終了される。
【0039】
以上に説明したように、実施形態1に係るエレベータ制御装置(制御盤70)は、ドア32の戸開制御時において、異常検出部73が異常を検出した場合、ドア間距離Lに応じた時間を経過した後、異常検出部73が異常を検出する前のドアモータ41の回転方向に対して反対方向にドアモータ41を回転させる。本実施形態1に係るエレベータ制御装置は、ドア間距離Lが近いほどドア32への反転指令を出すまでの待ち時間Twを短く設定している。したがって、本実施形態1に係るエレベータ制御装置は、ドア間距離Lに応じて待ち時間Twを変えない場合と比較して、戸開制御時の異常状態から復旧する際におけるドア32が閉じている時間を短くすることができる。よって、乗客の閉塞感を低減することができる。
【0040】
本実施形態1に係るエレベータ制御装置は、戸開制御時の異常状態から復旧するためのステップS11からS17までの処理を繰り返す回数Kの値が大きいほど、ドア間距離Lに応じて待ち時間Twを変えない場合と比較して、戸開制御時の異常状態から復旧する際におけるドア32が閉じている時間を短くすることができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態によって限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、制御盤70をエレベータ制御装置として説明したが、制御ユニット80と駆動ユニット91とが別装置に実装されている場合、制御ユニット80をエレベータ制御装置としてもよい。
【0042】
また、上記の説明では、(式1)の関数が単調増加関数である場合について説明したが、これに限定されない。(式1)の関数は、ドア間距離Lが近いほど待ち時間Twが短くなる関数であればよい。例えば、(式1)の関数は単調増加関数ではなく、Log関数等であってもよい。また、待ち時間Twの最大値および最小値は任意の時間でよい。
【0043】
また、上記の
図5に示すフローチャートを用いた説明では、ステップS11~S17の処理をK回繰り返した後で乗客への通知(ステップS18)を行う場合について説明したが、乗客へ通知するタイミングはこれに限定されない。乗客への通知は、ドア間距離Lを取得した後であれば、どのタイミングで行ってもよい。例えば、条約への通知をステップS12の後で行ってもよいし、ステップS14の後で行ってもよい。
【0044】
また、戸開制御時の異常の原因が乗りかご31のドア32ではなく、各階の乗り場に設けられたドアであることが分かっている場合、制御ユニット80は、乗りかご31を最寄りのフロアに移動させ、戸開制御を行ってもよい。この場合、制御ユニット80は、「最寄りのフロアに移動してドアを開きます。ドアから離れてお待ちください。」等の通知を行う。
【0045】
(実施形態2)
実施形態1では、時間設定部77が(式1)に基づいて待ち時間Twを設定する場合について説明した。しかし、ドア間距離Lに応じた待ち時間Twの設定方法はこれに限定されない。実施形態2では、時間設定部77が
図10に示すテーブルを用いて待ち時間Twの設定を行う場合について説明する。時間設定部77以外については、実施形態1の説明と同じであるので、説明を省略する。
【0046】
補助記憶部83には、ドア間距離に応じて待ち時間Twが設定されたテーブルが記憶されている。
図10に示すテーブルの例では、ドア間距離Lに応じて3つの状態が設定されている。ドア間距離Lが0乃至400mmである状態1の場合の待ち時間Twが2秒に設定されている。ドア間距離Lが400乃至800mmである状態2の場合の待ち時間Twが6秒に設定されている。ドア間距離Lが800乃至1600mmである状態3の場合の待ち時間Twが10秒に設定されている。時間設定部77は、異常検出部73から異常を検出したことを示す信号を受信すると、ドア間距離計測部74からドア間距離Lの値を取得する。そして、時間設定部77は、
図10に示すテーブルを参照してドア間距離Lに応じた待ち時間Twを設定する。
【0047】
(実施形態3)
実施形態1では、異常検出部73が戸開信号が出力されてからドア32が完全に開いたことを検知するまでの時間に基づいて異常を検出する場合について説明した。しかし、戸開制御時の異常検出方法はこれに限定されない。例えば、
図11に示すように、ドアモータ41のトルクを計測するトルクセンサ39を設け、トルクセンサ39で計測されたトルクの値が閾値を超えた場合、異常検出部73が戸開時に異常が発生したと判断するようにしてもよい。
【0048】
(実施形態4)
実施形態1では、ドア間距離計測部74がドアモータ41の回転数に基づいてドア間距離Lを計測する場合について説明した。しかし、ドア間距離Lの計測方法はこれに限定されない。例えば、
図11に示すように、レーザーを用いた距離計測装置38を乗りかご31に設けることで、ドア間距離Lを計測するようにしてもよい。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 エレベータ装置
21~24 ガイドレール
31 乗りかご
31a 開口部
32 ドア
32a 右側ドア
32b 左側ドア
34a 右側ドア完開検知センサ
34b 左側ドア完開検知センサ
35 入出力装置
36 操作パネル
38 距離計測装置
39 トルクセンサ
40 昇降モータ
41 ドアモータ
42 プーリー
43 ワイヤ
44 ケーブル
50 カウンタウエイト
70 制御盤
71 モータ制御部
72 異常時対応部
73 異常検出部
74 ドア間距離計測部
76 反転指令部
77 時間設定部
78 時間計測部
80 制御ユニット
81 CPU
82 主記憶部
83 補助記憶部
84 インタフェース部
85 バス
91 駆動ユニット
100 昇降路
【要約】
【課題】乗客の閉塞感を低減する。
【解決手段】実施形態に係るエレベータ制御装置は、エレベータ装置の乗りかごの一対のドアをドアモータで開閉駆動する制御装置である。エレベータ制御装置は、ドア間距離計測部と異常検出部と反転指令部とを有する。ドア間距離計測部は、ドア間の距離を計測する。異常検出部は、ドアの戸開制御時の異常を検出する。反転指令部は、異常検出部が異常を検出した場合、ドア間の距離に応じた時間を経過した後、異常検出部が異常を検出する前のドアモータの回転方向に対して反対方向にドアモータを回転させる。
【選択図】
図4