(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F25B 47/02 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
F25B47/02 570A
F25B47/02 570D
F25B47/02 570E
(21)【出願番号】P 2021513075
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2019015518
(87)【国際公開番号】W WO2020208723
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】山根 宏昌
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-121798(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042611(WO,A1)
【文献】特開2005-090784(JP,A)
【文献】特開2013-108732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 5/02
F25B 6/02
F25B 13/00
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、四方弁、室外熱交換器、減圧器、室内熱交換器を接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルを有し、除霜開始条件の成立に応じて前記室外熱交換器に対する除霜運転を実行する複数の空気調和機と、
前記各空気調和機における除霜開始条件の成立時期が互いに近い場合、前記各空気調和機のうち除霜開始条件の成立時期が最も早い空気調和機の除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく直ちに実行する制御手段と、
を備え、
前記除霜開始条件は、暖房運転の継続時間tが一定時間taに達した場合に成立し、
前記制御手段は、
前記各空気調和機に設けられ、前記継続時間tが前記一定時間taより所定時間Δt前の設定時間(=ta-Δt)に達した場合に、前記除霜開始条件の成立時期が近い旨の除霜前信号を他の空気調和機に送出する第1制御手段と、
前記各空気調和機に設けられ、前記除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機の全てから前記除霜前信号を受けた場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機の除霜開始条件の成立を待つことなく直ちに実行する第2制御手段と、
前記各空気調和機に設けられ、前記除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機の全てから前記除霜前信号を受けない場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立に応じて実行する第3制御手段と、
を含む
ことを特徴とす
る空気調和装置。
【請求項2】
圧縮機、四方弁、室外熱交換器、減圧器、室内熱交換器を接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルを有し、除霜開始条件の成立に応じて前記室外熱交換器に対する除霜運転を実行する複数の空気調和機と、
前記各空気調和機における除霜開始条件の成立時期が互いに近い場合、前記各空気調和機のうち除霜開始条件の成立時期が最も早い空気調和機の除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく直ちに実行する制御手段と、
を備え、
前記各空気調和機は、少なくとも3つの空気調和機であり、
前記除霜開始条件は、暖房運転の継続時間tが一定時間taに達した場合に成立し、
前記制御手段は、
前記各空気調和機に設けられ、前記継続時間tが前記一定時間taより所定時間“2・Δt”前の設定時間(=ta-“2・Δt”)に達した場合に、前記除霜開始条件の成立時期が近い旨の第1および第2除霜前信号を他の空気調和機へと送出する第1制御手段と、
前記各空気調和機に設けられ、前記第1除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機の全てから前記第1除霜前信号を受ける第1優先条件の成立に応じて、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機の除霜開始条件の成立を待つことなく実行し、この実行の旨を他の空気調和機の全てに通知する第2制御手段と、
前記各空気調和機に設けられ、前記第1優先条件が成立しないまま前記通知を受けた場合、前記第2除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機から前記第2除霜前信号を受ける第2優先条件の成立に応じて、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機の除霜開始条件の成立を待つことなく実行する第3制御手段と、
前記各空気調和機に設けられ、前記第1優先条件が成立しないまま前記通知を受けない場合、当該空気調和機における除霜開始条件の成立に応じて当該空気調和機の除霜運転を実行する第4制御手段と、
を含む
ことを特徴とす
る空気調和装置。
【請求項3】
前記時間Δtは、前記各空気調和機の除霜運転に要する時間と同じまたはそれより長いことを特徴とする請求項
1または請求項
2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
圧縮機、四方弁、室外熱交換器、減圧器、室内熱交換器を接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルを有し、除霜開始条件の成立に応じて前記室外熱交換器に対する除霜運転を実行する複数の空気調和機と、
前記各空気調和機における除霜開始条件の成立時期が互いに近い場合、前記各空気調和機のうち除霜開始条件の成立時期が最も早い空気調和機の除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく直ちに実行する制御手段と、
を備え、
前記除霜開始条件は、前記室外熱交換器の着霜量Hが規定量H2に達した場合に成立し、
前記制御手段は、
前記各空気調和機に設けられ、前記室外熱交換器の着霜量Hが前記規定量H2より所定量ΔH少ない設定量H1に達した場合に、前記除霜開始条件の成立時期が近い旨の除霜前信号を他の空気調和機に送出する第1制御手段と、
前記各空気調和機に設けられ、前記除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機の全てから前記除霜前信号を受けた場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機の除霜開始条件の成立を待つことなく直ちに実行する第2制御手段と、
前記各空気調和機に設けられ、前記除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機の全てから前記除霜前信号を受けない場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機の除霜開始条件の成立に応じて実行する第3制御手段と、
を含む
ことを特徴とす
る空気調和装置。
【請求項5】
前記第2制御手段は、前記除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機の全てから前記除霜前信号を受けた場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機の除霜開始条件の成立を待つことなく直ちに実行し、この実行の旨を他の空気調和機に通知する、
前記第3制御手段は、前記除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機の全てから前記除霜前信号を受けないまま前記通知を受けた場合、当該空気調和機の暖房能力を低減するとともに、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立に応じて実行する
ことを特徴とする請求項
4に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空気調和機を備えた空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、四方弁、室外熱交換器、減圧器、室内熱交換器を順に配管接続して冷媒を循環させるヒートポンプ式冷凍サイクルを備え、外気から熱を汲み上げて室内空気を暖房する空気調和機では、暖房の進行に伴い、蒸発器として機能する室外熱交換器の表面に徐々に霜が付着し、その着霜量が多くなると外気からの汲み上げ熱量が減少して暖房能力が減少する。
【0003】
対策として、上記空気調和機は、室外熱交換器の温度などから室外熱交換器の着霜状態を監視し、着霜が増えた場合に圧縮機の吐出冷媒(高温冷媒)を室外熱交換器に直接的に供給し、その高温冷媒の熱で室外熱交換器の霜を解かす除霜運転を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の空気調和機で同一の空調エリアを空調する空気調和装置の場合、複数の空気調和機が同時に除霜運転に入ってそれぞれの暖房が共に中断すると、空調エリアの室内温度が大きく低下し、居住者に不快感を与える。
【0006】
本実施形態の目的は、除霜による室内温度の低下をできるだけ抑える空気調和装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の空気調和装置は、圧縮機、四方弁、室外熱交換器、減圧器、室内熱交換器を接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルを有し、除霜開始条件の成立に応じて前記室外熱交換器に対する除霜運転を実行する複数の空気調和機と;前記各空気調和機における除霜開始条件の成立時期が互いに近い場合、前記各空気調和機のうち除霜開始条件の成立時期が最も早い空気調和機の除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく実行する制御手段と;を備える。前記除霜開始条件は、暖房運転の継続時間tが一定時間taに達した場合に成立する。前記制御手段は、前記各空気調和機に設けられ、前記継続時間tが前記一定時間taより所定時間Δt前の設定時間(=ta-Δt)に達した場合に、前記除霜開始条件の成立時期が近い旨の除霜前信号を他の空気調和機に送出する第1制御手段と;前記各空気調和機に設けられ、前記除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機の全てから前記除霜前信号を受けた場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機の除霜開始条件の成立を待つことなく直ちに実行する第2制御手段と;前記各空気調和機に設けられ、前記除霜前信号を送出してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機の全てから前記除霜前信号を受けない場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立に応じて実行する第3制御手段と;を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1実施形態の各空気調和機の制御を示すフローチャート。
【
図3】第1実施形態の各空気調和機の動作を示すタイムチャート。
【
図5】第2実施形態の各空気調和機の制御を示すフローチャート。
【
図6】第2実施形態の各空気調和機の動作を示すタイムチャート。
【
図7】第3実施形態の各空気調和機の制御を示すフローチャート。
【
図8】第3実施形態の各空気調和機の動作を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]本発明の第1実施形態について説明する。
【0010】
図1に示すように、空気調和装置を構成する複数たとえば2つの空気調和機1a,1bが同一の空調エリアRに対し配置されている。空気調和機1aは少なくとも1つの室外ユニット10および複数の室内ユニット20a~20nを有し、空気調和機1bも少なくとも1つの室外ユニット10および複数の室内ユニット20a~20nを有する。
【0011】
空気調和機1aは、圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、膨張弁14、複数の流量調整弁21、複数の室内熱交換器22を配管接続してなるヒートポンプ式冷凍サイクルを備える。冷房運転時は、圧縮機11から吐出される冷媒が四方弁12を通って室外熱交換器(凝縮器)13に流入し、その室外熱交換器13から流出する冷媒が膨張弁14および各流量調整弁21を通って各室内熱交換器(蒸発器)22に流入し、その各室内熱交換器22から流出する冷媒が四方弁12を通って圧縮機11に吸込まれる。暖房運転時は、空気調和機1aにおいて矢印で示すように、四方弁12の流路が切換わることより、圧縮機11から吐出される冷媒が四方弁12を通って各室内熱交換器(凝縮器)22に流入し、その各室内熱交換器22から流出する冷媒が各流量調整弁21および膨張弁14を通って室外熱交換器(蒸発器)13に流入し、その室外熱交換器13から流出する冷媒が四方弁12を通って圧縮機11に吸込まれる。
【0012】
この暖房運転中、室外熱交換器13に対する除霜運転が定期的または必要に応じて実行される。この除霜運転では、空気調和機1bにおいて矢印で示すように、四方弁12の流路が元の状態に復帰することにより、冷房運転時と同じ方向に冷媒が流れる。
【0013】
外気を吸込んで室外熱交換器13に通す室外ファン15が室外熱交換器13の近傍に配置され、外気温度Toを検知する外気温度センサ16が室外ファン15の吸込み風路に配置され、熱交換器温度Teを検知する熱交温度センサ17が室外熱交換器13に取付けられている。空調エリアRの室内空気を吸込んで各室内熱交換器22に通す各室内ファン23が各室内熱交換器22の近傍に配置され、室内空気の温度(室内温度という)Taを検知する各室内温度センサ24が各室内ファン23の吸込み風路に配置されている。
【0014】
室外ユニット10には、空気調和機1aの制御の中枢を担う室外コントローラ18が、上記圧縮機11、四方弁12、室外熱交換器13、膨張弁14、室外ファン15、外気温度センサ16、熱交温度センサ17と共に室外ユニット10に収容されている。室内ユニット20a~20nには、それぞれ室内コントローラ25が、上記各流量調整弁21、各室内熱交換器22、各室内ファン22、各室内温度センサ24と共に収容されている。
【0015】
室外ユニット10の室外コントローラ18と室内ユニット20aの室内コントローラ25とが制御用およびデータ伝送用のバスライン31により相互接続され、その室内ユニット20aの室内コントローラ25と室内ユニット20b~20nのそれぞれ室内コントローラ25とが同バスライン31により相互接続されている。そして、室内ユニット20aの室内コントローラ25に、運転操作用および運転条件設定用のリモートコントロール式の操作器(リモコンと略称する)33が電源電圧同期のシリアル信号ライン32により接続されている。リモコン33は、空調エリアの壁面等に取付けられ、ユーザによる容易な操作が可能である。
【0016】
室外ユニット10の室外コントローラ18は、マイクロコンピュータおよびその周辺回路からなり、室内ユニット20a~20nの各室内コントローラ25との通信をバスライン31を介して定期的および必要に応じて実行しながら、各室内コントローラ25からの指示および伝送データに応じて圧縮機11の能力、四方弁12の流路、膨張弁14の開度、室外ファン15の運転などを制御する。すなわち、室外コントローラ18は、冷房運転時および暖房運転時、各室内温度センサ24の検知温度とリモコン33の設定温度との差に基づく室内ユニット20a~20nの要求能力の総和に応じて圧縮機11の能力(運転周波数F)を制御する。とくに、室外コントローラ18は、当該空気調和機1aの室外熱交換器13に対する除霜開始条件を予め内部メモリに記憶しており、暖房運転中にこの除霜開始条件が成立した場合に室外熱交換器13に対する除霜運転を実行する。除霜開始条件は、例えば、空気調和機1aの暖房運転の継続時間tが一定時間taに達するごとに成立する。
【0017】
空気調和機1bの室外ユニット10および室内ユニット20a~20nも、空気調和機1aの室外ユニット10および室内ユニット20a~20nと同じ構成を有する。そして、空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18が制御用およびデータ伝送用の上記バスライン31により相互接続されている。空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18は、このバスライン31を介した相互通信により、除霜運転に関し互いに連係する制御を実行する。すなわち、空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18は、それぞれの除霜開始条件の成立時期が互いに近い場合に、具体的にはそれぞれの除霜開始条件の成立時期が所定時間Δtの範囲に収まる近接状態にある場合に、除霜開始条件の成立時期が早い方の空気調和機の除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する。なお、除霜開始条件の成立時期が互いに同じである場合、空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18は、予め定めている優先順位が高い方の空気調和機の除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する。
【0018】
この制御を実現するため、空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18は、主要な機能として次の制御部(第1~第3制御手段)51a~51cを含む。
【0019】
制御部51aは、暖房運転の継続時間tが除霜開始条件の成立要素である一定時間taより所定時間Δt前の設定時間(=ta-Δt)に達した場合に、当該空気調和機における除霜開始条件の成立時期が近い旨の論理“1”の除霜前信号Xを他の空気調和機に送出する。所定時間Δtは、当該空気調和機の除霜運転に要する時間tdと同じまたはそれより長い時間である。除霜運転に要する時間tdとは、どのような環境下でも除霜運転が完了する時間のことであり、実験等により求めた最適な時間が選定されている。一定時間taは例えば60分間、所定時間Δtは例えば10分間である。
【0020】
制御部51bは、上記除霜前信号Xの送出を開始してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間(=所定時間Δt)に他の空気調和機の全てから除霜前信号Xの立上り部を受けた場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する。なお、除霜前信号Xの送出を開始するタイミングと他の空気調和機から送出された除霜前信号Xの立上り部を受けるタイミングが同時の場合、制御部51bは、当該空気調和機の優先順位が他の空気調和機より高いことを条件に、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する。
【0021】
制御部51cは、上記除霜前信号Xの送出を開始してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間(=所定時間Δt)に他の空気調和機の全てから除霜前信号Xの立上り部を受けない場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立に応じて実行する。
【0022】
つぎに、空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18が実行する制御を、空気調和機1a,1bの制御として、
図2のフローチャートおよび
図3のタイムチャートを参照しながら説明する。フローチャート中のステップS1,S2…については、単にS1,S2…と略称する。タイムチャート中の除霜タイミング“オン”は、除霜開始条件の成立時期を示している。
【0023】
暖房運転の開始操作がリモコン33でなされた場合(S1のYES)、空気調和機1a,1bは、暖房運転を実行し(S2)、それぞれの暖房運転の継続時間tを計測するタイムカウントtを実行する(S3)。そして、空気調和機1a,1bは、タイムカウントtが設定時間(=ta-Δt)以上かつ一定時間ta未満の範囲に入っているか否かを判定する(S4)。この判定結果が否定の場合(S4のNO)、空気調和機1a,1bは、タイムカウントtが一定時間ta以上であるか否かを判定する(S5)。この判定結果が否定の場合(S5のNO)、空気調和機1a,1bは、後段のS11の停止指示の判定に移行する。
【0024】
タイムカウントtが設定時間(=ta-Δt)に達した場合(S4のYES)、空気調和機1a,1bは、当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間(=所定時間Δt)において、除霜開始条件の成立時期が近い旨の論理“1”の除霜前信号Xを他方の空気調和機へと送出する(S6)。そして、空気調和機1a,1bは、この除霜前信号Xの送出を開始した後、それぞれの空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間(=所定時間Δt)において、他方の空気調和機から除霜前信号Xの立上り部を受ける優先条件の成立を監視する(S7)。除霜前信号Xの立上り部は、除霜開始条件の成立時期に対応する。
【0025】
図3において、空気調和機1aにおける除霜開始条件の1つ目の成立時期(除霜タイミング“オン”)は空気調和機1bにおける除霜開始条件の1つ目の成立時期より早く、これら成立時期の相互間には所定時間Δtより大きい時間差がある。この場合、空気調和機1aから送出される除霜前信号Xに対し、空気調和機1bから送出される除霜前信号Xの立上り部が時期的に重ならないので、優先条件は成立しない(S7のNO)。優先条件が成立しない場合(S7のNO)、空気調和機1aは、後段のS11の停止指示の判定に移行する。
【0026】
図3において、空気調和機1aにおける除霜開始条件の3つ目の成立時期は空気調和機1bにおける除霜開始条件の3つ目の成立時期より早く、これら成立時期の相互間には所定時間Δtに満たない時間差が存在する。この場合、空気調和機1aから送出される除霜前信号(図示斜線)Xに対し、空気調和機1bから送出される除霜前信号(図示斜線)Xの立上り部が時期的に重なるので、優先条件が成立する(S7のYES)。
【0027】
空気調和機1aは、優先条件が成立した場合(S7のYES)、室外熱交換器13に対する除霜運転を当該空気調和機1aにおける除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する(S8)。この優先実行に伴い、空気調和機1aは、室外熱交換器13における除霜の完了を例えば熱交温度センサ17の検知温度Teに基づいて監視する(S9)。除霜が完了しない場合(S9のNO)、空気調和機1aは、上記S8に戻って除霜運転を継続する(S8)。
【0028】
除霜が完了した場合(S9のYES)、空気調和機1aは、タイムカウントtをクリアし(S10)、S11の停止指示の判定に移行する。停止指示がない場合(S11のNO)、空気調和機1aは、上記S2に戻って除霜から暖房に復帰し(除霜運転の終了)、タイムカウントtを零から再開する(S3)。停止指示がある場合(S11のYES)、空気調和機1aは、全ての運転を停止する(S12)。
【0029】
空気調和機1aが除霜運転を実行しているとき、空気調和機1bでは優先条件が成立しない(S7のNO)。このまま空気調和機1bにおいて停止指示がなければ(S11のNO)、タイムカウントtが一定時間taに達して空気調和機1bの除霜開始条件が成立する(S4のNO,S5のYES)。空気調和機1bは、この除霜開始条件の成立に応じて除霜運転を実行する(S8)。この除霜運転の実行に際してはすでに空気調和機1aの除霜運転が終了しており、空気調和機1a,1bの除霜運転が時期的に重なることはない。
【0030】
空気調和機1a,1bで同一の空調エリアRを空調する場合、空気調和機1a,1bの除霜運転が時期的に重なってそれぞれの暖房が中断すると、空調エリアRの室内温度が大きく低下し、居住者に不快感を与える。これに対し、本実施形態では、空気調和機1a,1bにおける除霜開始条件の成立時期が所定時間Δtの範囲に収まる近接状態にある場合、除霜開始条件の成立時期が早い方の空気調和機の除霜運転を直ちに実行し、この除霜運転の完了後に残りの空気調和機の除霜運転を実行するので、空気調和機1aの除霜運転による暖房の中断と空気調和機1bの除霜運転による暖房の中断とが時期的に重ならない。したがって、空調エリアRの室内温度低下を抑えることができる。
【0031】
[2]本発明の第2実施形態について説明する。
【0032】
図4に示すように、空気調和装置を構成する複数たとえば3つの空気調和機1a,1b,1cが同一の空調エリアRに配置されている。空気調和機1a,1bは第1実施形態の空気調和機1a,1bの構成と同じであり、空気調和機1cも空気調和機1a,1bの構成と同じである。
【0033】
空気調和機1a,1b,1cにおける各室外ユニット10のそれぞれ室外コントローラ18は、制御用およびデータ伝送用のバスライン31により相互接続されている。空気調和機1a,1b,1cのそれぞれ室外コントローラ18は、このバスライン31を介した相互通信により、除霜運転に関し互いに連係する制御を実行する。すなわち、空気調和機1a,1b,1cのそれぞれ室外コントローラ18は、少なくとも2つの空気調和機における除霜開始条件の成立時期が互いに近い場合に、具体的にはそれぞれの除霜開始条件の成立時期が所定時間“2・Δt”の範囲に収まる近接状態にある場合に、除霜開始条件の成立時期が最も早い空気調和機の除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく直ちに実行する。なお、2つまたは3つの空気調和機における除霜開始条件の成立時期が互いに同じである場合、空気調和機1a,1b,1cのそれぞれ室外コントローラ18は、予め定めている優先順位が高い方から順に、それぞれの除霜運転をそれぞれの除霜開始条件の成立を待つことなく実行する。所定時間“2・Δt”は、第1実施形態における所定時間Δtの2倍の時間である。
【0034】
この制御を実現するため、空気調和機1a,1b,1cのそれぞれ室外コントローラ18は、主要な機能として次の制御部(第1~第4制御手段)61a~61dを含む。
【0035】
制御部61aは、暖房運転の継続時間tが除霜開始条件の成立要素である一定時間taより所定時間“2・Δt”前の設定時間(=ta-“2・Δt”)に達した場合に、当該空気調和機における除霜開始条件の成立時期が近い旨の論理“1”の連続する除霜前信号(第1および第2除霜前信号)X1,X2を、当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間(=所定時間“2・Δt”)において、他の全ての空気調和機に送出する。除霜前信号X1は所定時間“2・Δt”における前半1/2の期間において論理“1”となる信号であり、除霜前信号X2は所定時間“2・Δt”における後半1/2の期間において論理“1”となる信号である。
【0036】
制御部61bは、上記除霜前信号X1の送出を開始してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間(=所定時間“2・Δt”)において、他の全ての空気調和機から除霜前信号X1の立上り部を受ける第1優先条件の成立を監視し、この第1優先条件の成立に応じて当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行し、この優先実行の旨を他の全ての空気調和機に通知する。なお、第1優先条件は、除霜前信号X1の送出を開始するタイミングと他の空気調和機の全てから除霜前信号X1の立上り部を受けるタイミングが同時である場合にも成立する。この同時の場合の成立に際し、制御部61bは、当該空気調和機の優先順位が他の全ての空気調和機より高いことを条件に、当該空気調和機の除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行し、この優先実行の旨を他の全ての空気調和機に通知する。
【0037】
制御部61cは、上記第1優先条件が成立しないまま上記通知を受けた場合、上記除霜前信号X2の送出を開始してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間(=所定時間Δt)において、他の空気調和機から除霜前信号X2の立上り部を受ける第2優先条件の成立を監視し、この第2優先条件の成立に応じて当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する。
【0038】
制御部61dは、上記第1優先条件が成立しないまま上記通知も受けない場合、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立に応じて実行する。
【0039】
つぎに、空気調和機1a,1b,1cのそれぞれ室外コントローラ18が実行する制御を、空気調和機1a,1b,1cの制御として、
図5のフローチャートおよび
図6のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0040】
暖房運転の開始操作がリモコン33でなされた場合(S21のYES)、空気調和機1a,1b,1cは、暖房運転を実行し(S22)、それぞれの暖房運転の継続時間tを計測するタイムカウントtを実行する(S23)。そして、空気調和機1a,1b,1cは、タイムカウントtが設定時間(=ta-“2・Δt”)以上かつ一定時間ta未満の範囲に入っているか否かを判定する(S24)。この判定結果が否定の場合(S24のNO)、空気調和機1a,1b,1cは、タイムカウントtが一定時間ta以上であるか否かを判定する(S25)。この判定結果が否定の場合(S25のNO)、空気調和機1a,1b,1cは、後段のS32の停止指示の判定に移行する。
【0041】
タイムカウントtが設定時間(=ta-“2・Δt”)に達した場合(S24のYES)、空気調和機1a,1b,1cは、除霜開始条件が成立するまでの所定時間“2・Δt”の期間において、除霜開始条件の成立時期が近い旨の論理“1”の除霜前信号X1,X2を他の2つの空気調和機に送出する(S26)。そして、空気調和機1a,1b,1cは、除霜前信号X1の送出を開始してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの所定時間“2・Δt”の期間において、他の2つの空気調和機の全てから除霜前信号X1の立上り部を受ける第1優先条件の成立を監視する(S27)。
【0042】
図6において、空気調和機1aにおける除霜開始条件の1つ目の成立時期(除霜タイミング“オン”)は空気調和機1bにおける除霜開始条件の1つ目の成立時期より早く、空気調和機1bにおける除霜開始条件の1つ目の成立時期は空気調和機1cにおける除霜開始条件の1つ目の成立時期より早い。これら成立時期の相互間には、所定時間“2・Δt”より大きい時間差がそれぞれ存在する。
【0043】
この場合、空気調和機1aから送出される除霜前信号X1,X2に対し、空気調和機1b,1cからそれぞれ送出される除霜前信号X1の立上り部が時期的に重ならないので、空気調和機1aにおいて第1優先条件は成立しない(S27のNO)。
【0044】
空気調和機1aは、第1優先条件が成立しない場合(S27のNO)、除霜前信号X1の送出後において他の空気調和機1bまたは空気調和機1cから優先実行の通知を受けているか否かを監視する(S34)。第1優先条件の成立がなく(S27のNO)、優先実行の通知も受けていない場合(S34のNO)空気調和機1aは、後段のS32の停止指示の判定に移行する。
【0045】
図6において、空気調和機1aにおける除霜開始条件の4つ目の成立時期と空気調和機1bにおける除霜開始条件の4つ目の成立時期との間の時間差は所定時間“2・Δt”より小さく、空気調和機1bにおける除霜開始条件の4つ目の成立時期と空気調和機1cにおける除霜開始条件の4つ目の成立時期との間の時間差も所定時間“2・Δt”より小さい。
【0046】
この場合、空気調和機1aから送出される除霜前信号(図示斜線)X1,X2に対し、空気調和機1b,1cからそれぞれ送出される除霜前信号(図示斜線)X1の立上り部が両方とも時期的に重なるので、空気調和機1aにおいて第1優先条件が成立する(S27のYES)。
【0047】
空気調和機1aは、第1優先条件が成立した場合(S27のYES)、除霜運転を優先実行する旨を空気調和機1b,1cに通知するとともに(S28)、室外熱交換器13に対する除霜運転を当該空気調和機1aにおける除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する(S29)。この優先実行に伴い、空気調和機1aは、室外熱交換器13の除霜が完了したかどうかを例えば熱交温度センサ17の検知温度Teに基づいて監視する(S30)。除霜が完了しない場合(S30のNO)、空気調和機1aは、上記S29に戻って除霜運転を継続する(S29)。
【0048】
除霜が完了した場合(S30のYES)、空気調和機1aは、タイムカウントtをクリアし(S31)、上記S32の停止指示の判定に移行する。停止指示がない場合(S32のNO)、空気調和機1aは、上記S22に戻って除霜から暖房に復帰し(除霜運転の終了)、タイムカウントtを零から再開する(S23)。停止指示がある場合(S32のYES)、空気調和機1aは、全ての運転を停止する(S33)。
【0049】
空気調和機1aで除霜運転の優先実行が開始されるのに伴い、空気調和機1b,1cでは第1優先条件が成立しなくなるとともに(S27のNO)、空気調和機1aから発せられる優先実行の通知が空気調和機1b,1cに入る(S34のYES)。
【0050】
空気調和機1bは、第1優先条件の成立がないまま空気調和機1aから優先実行の通知を受けた場合(S27のNO,S34のYES)、除霜前信号X2の送出を開始してから当該空気調和機1bにおける除霜開始条件が成立するまでの所定時間Δtの期間において、空気調和機1cから除霜前信号X2の立上り部を受ける第2優先条件の成立を確認する(S35)。同様に、空気調和機1cは、第1優先条件の成立がないまま空気調和機1aから優先実行の通知を受けた場合(S27のNO,S34のYES)、除霜前信号X2の送出を開始してから当該空気調和機1cにおける除霜開始条件が成立するまでの所定時間Δtの期間において、空気調和機1bから除霜前信号X2の立上り部を受ける第2優先条件の成立を確認する(S35)。
【0051】
図6のタイムチャートでは、空気調和機1bから送出される除霜前信号(図示斜線)X2に対し、空気調和機1cから送出される除霜前信号(図示斜線)X2の立上り部が時期的に重なるので、空気調和機1bにおいて第2優先条件が成立する(S35のYES)。
【0052】
空気調和機1bは、第2優先条件の成立に応じて(S35のYES)、室外熱交換器13に対する除霜運転を当該空気調和機1bにおける除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する(S29)。この除霜運転の実行に際してはすでに空気調和機1aの除霜運転が終了しており、空気調和機1a,1bの除霜運転が時期的に重なることはない。
【0053】
この除霜運転の優先実行に伴い、空気調和機1bは、室外熱交換器13における除霜の完了を例えば熱交温度センサ17の検知温度Teに基づいて監視する(S30)。除霜が完了しない場合(S30のNO)、空気調和機1bは、上記S22に戻って除霜運転の実行を継続する(S22)。
【0054】
除霜が完了した場合(S30のYES)、空気調和機1bは、タイムカウントtをクリアし(S31)、S32の停止指示の判定に移行する。停止指示がない場合(S32のNO)、空気調和機1bは、上記S22に戻って除霜から暖房に復帰し(除霜運転の終了)、タイムカウントtを零から再開する(S23)。停止指示がある場合(S32のYES)、空気調和機1bは、全ての運転を停止する(S33)。
【0055】
残りの空気調和機1cでは、空気調和機1bと同じく第1優先条件の成立がないまま空気調和機1aから優先実行の通知を受けるが(S27のNO,S34のYES)、除霜前信号X2の送出を開始してから当該空気調和機1cにおける除霜開始条件が成立するまでの期間(=所定時間Δt)に他の空気調和機1aまたは空気調和機1bから除霜前信号X2の立上り部を受ける第2優先条件は成立しない(S35のNO)。このまま空気調和機1cにおいて停止指示がなければ(S32のNO)、タイムカウントtが一定時間taに達して空気調和機1cにおける除霜開始条件が成立する(S24のNO,S25のYES)。空気調和機1cは、この除霜開始条件の成立に応じて除霜運転を実行する(S29)。この除霜運転の実行に際しては空気調和機1a,1bの除霜運転が既に終了しており、空気調和機1a,1b,1cの除霜運転が時期的に重ならない。
【0056】
空気調和機1a,1b,1cで同一の空調エリアRを空調する場合、空気調和機1a,1b,1cのうち少なくとも2つの空気調和機の除霜運転が時期的に重なってそれぞれの暖房が中断すると、空調エリアRの室内温度が大きく低下し、居住者に不快感を与える。
【0057】
これに対し、本実施形態では、空気調和機1a,1b,1cにおける除霜開始条件の成立時期が所定時間“2・Δt”の範囲に収まる近接状態にある場合、除霜開始条件の成立時期が最も早い1つの空気調和機の除霜運転を第1優先として実行し、この第1優先の除霜運転が完了してから残りの2つの空気調和機のうち除霜開始条件の成立時期が早い方の除霜運転を第2優先として実行し、この第2優先の除霜運転が完了してから残りの1つの空気調和機の除霜運転をその空気調和機における除霜開始条件の成立に応じて実行するので、空気調和機1a,1b,1cのそれぞれの除霜運転による暖房の中断が時期的に重ならない。したがって、空調エリアRの室内温度低下を抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態では、空気調和機1a,1b,1cのうち2つ例えば空気調和機1a,1bにおける除霜開始条件の成立時期が所定時間“2・Δt”の範囲に収まる近接状態にある場合には、除霜開始条件の成立時期が早い方の例えば空気調和機1aの除霜運転を第1優先して実行し、この第1優先の除霜運転が完了した後、残りの空気調和機1bの除霜運転をその空気調和機における除霜開始条件の成立に応じて実行する。よって、空気調和機1a,1bのそれぞれの除霜運転による暖房の中断が時期的に重なることはなく、空調エリアRの室内温度低下を抑えることができる。
【0059】
[3]本発明の第3実施形態について説明する。
【0060】
図1の第1実施形態と同じく、2つの空気調和機1a,1bが同一の空調エリアRに配置されている。空気調和機1a,1bの構成は第1実施形態の
図1と同じである。
【0061】
空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18は、室外熱交換器13に対する除霜開始条件を予め内部メモリに記憶しており、暖房運転においてこの除霜開始条件が成立した場合に室外熱交換器13に対する除霜運転を実行する。除霜開始条件は、室外熱交換器13の着霜量Hが規定量H2に達した場合に成立する。空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18は、室外熱交換器13の着霜量Hを例えば熱交温度センサ17の検知温度Teに基づいて検出する。
【0062】
そして、空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18は、それぞれの除霜開始条件の成立時期が互いに近い場合に、具体的には空気調和機1a,1bにおける除霜開始条件の成立時期が後述の所定時間Δtmの範囲に収まる近接状態にある場合に、除霜開始条件の成立時期が早い方の空気調和機の除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に実行する。なお、除霜開始条件の成立時期が互いに同じである場合、空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18は、予め定めている優先順位が高い方の空気調和機たとえば空気調和機1aの除霜運転をその除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に実行する。
【0063】
この制御を実現するため、空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18は、主要な機能として次の制御部(第1~第3制御手段)51a~51cを含む。
【0064】
制御部51aは、室外熱交換器13の着霜量Hが規定量H2より所定量ΔH少ない設定量H1(=H2-ΔH)に達した場合に、当該空気調和機における除霜開始条件の成立時期が近い旨の論理“1”の除霜前信号Xを他の空気調和機に送出する。室外熱交換器13の着霜量Hが設定量H1(=H2-ΔH)に達してから規定量H2に至るまでの所定時間Δtmは、当該空気調和機の除霜運転に要する時間tdと同じまたはそれより長い。この所定時間Δtmを十分に確保するべく所定量ΔHの値が選定されている。除霜運転に要する時間tdとは、どのような環境下でも除霜運転が完了する時間のことであり、実験等により求めた最適な時間が選定されている。
【0065】
制御部51bは、上記除霜前信号Xの送出を開始してから当該空気調和機の除霜開始条件が成立するまでの期間に他の空気調和機から除霜前信号Xの立上り部を受ける優先条件の成立に応じて、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機の除霜開始条件の成立を待つことなく直ちに実行し、この優先実行の旨を他の空気調和機に通知する。なお、除霜前信号Xの送出を開始するタイミングと他の空気調和機から送出された除霜前信号Xの立上り部を受けるタイミングが同時である場合、制御部51bは、当該空気調和機の優先順位が他の空気調和機より高いことを条件に、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機の除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行し、この実行の旨を他の空気調和機に通知する。
【0066】
制御部51cは、上記優先条件の成立がないまま他の空気調和機から上記通知を受けた場合、圧縮機11の運転周波数Fを所定周波数ΔFだけ低減し、これにより当該空気調和機の暖房能力を各室内コントローラ25の総要求能力に対応する値より少し低い値に低減して室外熱交換器13における着霜の進行を抑えるとともに、当該空気調和機の除霜運転を当該空気調和機における除霜開始条件の成立に応じて実行する。
【0067】
つぎに、空気調和機1a,1bのそれぞれ室外コントローラ18が実行する制御を、空気調和機1a,1bの制御として、
図7のフローチャートおよび
図8のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0068】
暖房運転の開始操作がリモコン33でなされた場合(S41のYES)、空気調和機1a,1bは、暖房運転を開始し(S42)、それぞれの室外熱交換器13の着霜量Hを検出する(S43)。そして、空気調和機1a,1bは、検出した着霜量Hが設定量H1以上かつ規定量H2未満の範囲に入っているか否かを判定する(S44)。この判定結果が否定の場合(S44のNO)、空気調和機1a,1bは、着霜量Hが規定量H2以上であるか否かを判定する(S45)。この判定結果が否定の場合(S45のNO)、空気調和機1a,1bは、後段のS51の停止指示の判定に移行する。
【0069】
着霜量Hが設定量H1に達した場合(S44のYES)、空気調和機1a,1bは、着霜量Hが規定量H2に達するまでの期間において、除霜開始条件の成立時期が近い旨の論理“1”の除霜前信号Xを他方の空気調和機に送出する(S46)。そして、空気調和機1a,1bは、除霜前信号Xの送出を開始してから着霜量Hが規定量H2に達するまでの期間において、他方の空気調和機から除霜前信号Xの立上り部を受ける優先条件の成立を監視する(S47)。優先条件が成立しない場合(S47のNO)、空気調和機1a,1bは、後段のS11の停止指示の判定に移行する。
【0070】
図8において、空気調和機1aにおける除霜開始条件の成立時期は空気調和機1bにおける除霜開始条件の成立時期より早く、空気調和機1aから送出される除霜前信号Xに対し空気調和機1bから送出される除霜前信号Xの立上り部が時期的に重なる。この場合、優先条件が成立する(S47のYES)。
【0071】
空気調和機1aは、優先条件が成立した場合(S47のYES)、除霜運転を優先実行する旨を空気調和機1bに通知し(S48)、室外熱交換器13に対する除霜運転を当該空気調和機1aにおける除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する(S49)。この優先実行に伴い、空気調和機1aは、着霜量Hが設定量H1未満となる除霜完了を監視する(S50)。除霜が完了しない場合(S50のNO)、空気調和機1aは、上記S49に戻って除霜運転を継続する(S49)。
【0072】
除霜が完了した場合(S50のYES)、空気調和機1aは、S51の停止指示の判定に移行する。停止指示がない場合(S51のNO)、空気調和機1aは、上記S42に戻って暖房に復帰する(除霜運転を終了する)。停止指示がある場合(S51のYES)、空気調和機1aは、全ての運転を停止する(S52)。
【0073】
空気調和機1aが除霜運転を実行しているとき、空気調和機1bでは優先条件が成立しない(S47のNO)。第1優先条件が成立しない場合(S47のNO)、空気調和機1bは、除霜前信号Xの送出後に空気調和機1aから優先実行の通知を受けているか否かを監視する(S53)。優先条件の成立がなく(S47のNO)、優先実行の通知も受けていない場合(S53のNO)空気調和機1bは、S51の停止指示の判定に移行する。
【0074】
図8において、空気調和機1aにおける除霜開始条件の成立時期と空気調和機1bにおける除霜開始条件の成立時期との間の時間差は小さい。この場合、空気調和機1aから送出される除霜前信号Xに対し、空気調和機1bから送出される除霜前信号Xの立上り部が時期的に重なるので、空気調和機1aにおいて優先条件が成立する(S47のYES)。
【0075】
空気調和機1aは、優先条件が成立した場合(S47のYES)、除霜運転を優先実行する旨を空気調和機1bに通知するとともに(S48)、室外熱交換器13に対する除霜運転を当該空気調和機1aにおける除霜開始条件の成立を待つことなく優先的に直ちに実行する(S49)。この優先実行に伴い、空気調和機1aは、室外熱交換器13の除霜が完了したかどうかを例えば熱交温度センサ17の検知温度Teに基づいて監視する(S50)。除霜が完了しない場合(S50のNO)、空気調和機1aは、上記S49に戻って除霜を継続する(S49)。
【0076】
除霜が完了した場合(S50のYES)、空気調和機1aは、S51の停止指示の判定に移行する。停止指示がない場合(S51のNO)、空気調和機1aは、上記S42に戻って除霜から暖房に復帰し(除霜運転の終了)、室外熱交換器13の着霜量Hを検出する(S43)。停止指示がある場合(S51のYES)、空気調和機1aは、全ての運転を停止する(S52)。
【0077】
空気調和機1aで除霜運転の優先実行が開始されるのに伴い、空気調和機1bでは優先条件が成立しなくなるとともに(S47のNO)、空気調和機1aから発せられる優先実行の通知が空気調和機1bに入る(S53のYES)。
【0078】
空気調和機1bは、優先条件の成立がないまま空気調和機1aから優先実行の通知を受けた場合(S47のNO,S53のYES)、圧縮機11の運転周波数Fを所定周波数ΔFだけ低減し(S54)、これにより当該空気調和機1bの暖房能力を各室内コントローラ25の要求能力の総和に対応する値より少しだけ低い値に低減する。この暖房能力の低減により、室外熱交換器13における着霜の進行が遅くなり、その分だけ空気調和機1bにおける除霜開始条件の成立が遅れる。
【0079】
このまま空気調和機1bにおいて停止指示がなければ(S51のNO)、着霜量Hが規定量H2に達して空気調和機1bにおける除霜開始条件が成立する(S44のNO,S45のYES)。空気調和機1bは、この除霜開始条件の成立に応じて、これまでの運転周波数Fの低減を解除し(S55)、除霜運転を実行する(S48)。この除霜運転の実行に際しては、上記暖房能力の低減による除霜遅れも加味されるので、すでに空気調和機1aの除霜運転が終了した状態にある。したがって、空気調和機1a,1bの除霜運転が時期的に重ならない。空気調和機1a,1bのそれぞれの除霜運転による暖房の中断が時期的に重ならないので、空調エリアRの室内温度低下を抑えることができる。
【0080】
[変形例]
上記各実施形態では、暖房運転の継続時間tまたは室外熱交換器13の着霜量Hを除霜開始条件の成立要素として用いたが、その成立要素に外気温度センサ16の検知による外気温度Toを加えてもよい。
【0081】
上記各実施形態では、各空気調和機が1つの室外ユニット10を有する場合を例に説明したが、各空気調和機が複数の室外ユニット10を有する場合についても同様に実施可能である。この場合、空気調和機1aにおける各室外ユニット10のうち1つが親機となって残りが子機となり、親機の室外コントローラ18がバスライン31によって室内ユニット20aの室内コントローラ25に接続される。空気調和機1bにおいても、各室外ユニット10のうち1つが親機となって残りが子機となり、親機の室外コントローラ18がバスライン31によって室内ユニット20aの室内コントローラ25に接続される。
【0082】
その他、上記各実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1a,1b,1c……空気調和機、10…室外ユニット、11…圧縮機、13…室外熱交換器、18…室外コントローラ、20a…20n……室内ユニット、25…室内コントローラ