(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】回転角測定システム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
G01D5/245 W
G01D5/245 110L
G01D5/245 H
(21)【出願番号】P 2021520467
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2019068690
(87)【国際公開番号】W WO2020016098
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】102018117600.7
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517258925
【氏名又は名称】フラバ ベスローテン ヴェンノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】FRABA B.V.
【住所又は居所原語表記】Jan Campertstraat 11,6416 SG Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハラ-マン, フローリアン
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー, ハノ
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0213927(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009051978(DE,A1)
【文献】特表2012-505390(JP,A)
【文献】特表2016-503174(JP,A)
【文献】特開2013-156255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(12)の回転運動を検出するための回転角測定システム(10)であって、
相対的に回転しないような態様で前記シャフト(12)に接続されていると共に前記シャフト(12)を径方向において取り囲む、少なくとも1つのセンサー磁石(24)を備えるローターユニット(18)と、
ステータープレート(26)を備える固定されたステーターユニット(20)と、
前記
ステータープレート(26)上で前記シャフト(12)に対して径方向に間隔をあけて配置されていると共に、シャフト回転を検出するために前記センサー磁石(24)と機能的に協働するマルチターン・センサーユニット(30)と、
を備え、
前記マルチターン・センサーユニット(30)は、
ウィーガンドセンサー(34)と、
少なくとも1つのホールセンサー(40)と、
前記ウィーガンドセンサー(34)及び前記ホールセンサー(40)と電気的に接続された評価ユニット(38)とを有し、
前記マルチターン・センサーユニット(30)は別個のセンサーユニット・プレート(32)を備え、前記センサーユニット・プレート(32)は、前記
ステータープレート(26)に固定されており、前記センサーユニット・プレート(32)の上には、前記ウィーガンドセンサー(34)、前記少なくとも1つのホールセンサー(40)及び前記評価ユニット(38)が配置されている、ことを特徴とする回転角測定システム(10)。
【請求項2】
前記ウィーガンドセンサー(34)及び前記ホールセンサー(40)は、前記センサーユニット・プレート(32)の上で
前記シャフト(12)の円周方向に互い
に間隔をあけて配置されている、請求項1に記載の回転角測定システム(10)。
【請求項3】
前記ウィーガンドセンサー(34)は、前記センサーユニット・プレート(32)の第1の軸方向の面(A1)の上に配置されており、前記ホールセンサー(40)は、前記センサーユニット・プレート(32)の前記第1の軸方向の面(A1)とは反対側の第2の軸方向の面(A2)の上に配置されている、請求項1又は2に記載の回転角測定システム(10)。
【請求項4】
前記マルチターン・センサーユニット(30)は集積回路(36)を備え、前記集積回路(36)によって前記評価ユニット(38)及び前記ホールセンサー(40)が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の回転角測定システム(10)。
【請求項5】
前記集積回路(36)は前記センサーユニット・プレート(32)
の第2の軸方向の面(A2)の上に配置されており、前記ステータープレート(26)は前記ローターユニット(18)とは反対側の軸方向の面に凹部(42)を備え、前記集積回路(36)は少なくとも部分的に前記凹部(42)内に埋没している、請求項4に記載の回転角測定システム(10)。
【請求項6】
前記ローターユニット(18)は、円周に沿って均等に配分された4つのセンサー磁石(24)を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の回転角測定システム(10)。
【請求項7】
前記シャフト(12)は中空シャフトである、請求項1~6のいずれか1項に記載の回転角測定システム(10)。
【請求項8】
シャフトの部分的な回転を検出するために容量性のシングルターン・センサーユニットが設けられており、前記シングルターン・センサーユニットは、相対的に回転しないような態様で前記シャフトに接続された第1のシングルターン・センサー素子と、固定された第2のシングルターン・センサー素子とを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の回転角測定システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャフトの回転運動を検出するための回転角測定システムであって、相対的に回転しないような態様で前記シャフトに接続されていると共に前記シャフトを径方向において取り囲む、少なくとも1つのセンサー磁石を備えるローターユニットと、固定されたステーターユニットと、前記ステーターユニット上で前記シャフトに対して径方向に間隔をあけて配置されていると共に、シャフト回転を検出するために前記センサー磁石と機能的に協働するマルチターン・センサーユニットと、備え、前記マルチターン・センサーユニットは、ウィーガンドセンサーと、少なくとも1つのホールセンサーと、前記ウィーガンドセンサー及び前記ホールセンサーと電気的に接続された評価ユニットとを有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような回転角測定システムは、シャフトの回転運動を測定するために用いられ、しばしば、角度測定装置、回転角センサー又はロータリーエンコーダとも呼ばれる。そのようなシステムは、特に、機械、装置又は乗り物の電気モーター、特にサーボモーターを制御及び監視するために使用される。その際、非接触の回転角測定システム、例えば光学的な又は磁気的に誘起されたシステムは、摩耗しないセンサーに起因して長い耐用年数を有するため、特別な役割を果たす。
【0003】
特許文献1から、シャフトの回転運動を検出するための例えば磁石ベースの回転角測定システムが知られている。磁石ベースの回転角測定システムにおいて、シャフトの回転は、測定システムによって、純粋に磁気的に又は磁気光学的に検出される。測定システムは、複数のセンサー磁石がその上に配置された回転するローターユニットと、ウィーガンドセンサー、ホールセンサー及び評価ユニットを有するマルチターン・センサーユニットがシャフトに対して径方向に間隔をあけてその上に配置された固定されたステーターユニットと、を含んでいる。ローターユニットは、相対的に回転しないような態様でシャフトに接続されており、その結果、シャフトの回転時、センサー磁石は、固定されたマルチターン・センサーユニットの傍を通過して移動し、センサー磁石の磁界は、マルチターン・センサーユニットのウィーガンドセンサー及びホールセンサーによって検出される。
【0004】
適用分野に応じて、回転角測定システムによって検出されるシャフトは、異なる態様で設計されることができ、特に、異なる外径を有することもできる。シャフトの回転運動の確実な検出を可能とするために、回転角測定システムは、個別のシャフト形状に適合されなければならない。この場合、シャフトの回転時に、センサー磁石の磁界がマルチターン・センサーユニットによって確実に検出され得るよう、ローターユニットのセンサー磁石と、マルチターン・センサーユニットのウィーガンドセンサー及びホールセンサーとの間の、正確な位置合わせがとりわけ重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102009019719号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって課題は、簡単な方法で異なるシャフト形状に適合させることができる、シャフトの回転運動を検出するための回転角測定システムを創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、主請求項1の特徴を有する、シャフトの回転運動を検出するための回転角測定システムによって解決される。
【0008】
本発明によれば、マルチターン・センサーユニットは別個のセンサーユニット・プレートを備え、当該センサーユニット・プレートはステーターユニットに固定されており、当該センサーユニット・プレートの上には、ウィーガンドセンサー、少なくとも1つのホールセンサー及び評価ユニットが配置されている。したがって、マルチターン・センサーユニットは、シャフト形状に応じて、センサー磁石の磁界の確実な検出を、ひいてはシャフトの回転運動の確実な検出を保証するために、簡単な方法でステーターユニット上において異なる態様で位置決め及び位置合わせされ得る、独自のモジュールとして設計されている。したがって、本発明による回転角測定システムは、簡単な方法で様々なシャフト形状に適合させることができる。
【0009】
好ましくは、ウィーガンドセンサー及びホールセンサーは、横方向に、即ちシャフトの円周方向に、センサーユニット・プレート上で互いに間隔をあけて配置されている。したがって、シャフトの回転方向に応じて、センサー磁石は、その磁界がウィーガンドセンサーによって検出される時点において、ホールセンサーに対向するウィーガンドセンサーの側面の上、又は、ホールセンサーとは反対側のウィーガンドセンサーの側面の上のいずれかにあり、したがって、ホールセンサーに対して異なる距離にある。このことから、回転方向に応じて、この時点において異なるホールセンサー測定値が得られ、その結果、この時点のホールセンサー測定値を評価することによって、シャフトの回転方向を簡単な方法で決定することができる。
【0010】
本発明の有利な実施形態において、ウィーガンドセンサーは、センサーユニット・プレートの第1の軸方向の面の上に配置されており、ホールセンサーは、センサーユニット・プレートの第1の軸方向の面とは反対側の第2の軸方向の面に配置されている。この場合、ホールセンサーは、一般に、センサーユニット・プレートのうちローターユニットに対向する軸方向の面に配置されており、その結果、センサー磁石は、非常に小さな軸方向距離でホールセンサーの傍を通過して案内される。このように、センサー磁界は、ホールセンサーの位置において大きな軸方向の磁界成分を有しており、その結果、当該センサー磁界を、ホールセンサーによって確実に検出することができる。ウィーガンドセンサーは、一般に、センサーユニット・プレートのうちローターユニットとは反対側の軸方向の面に配置されており、したがって、センサー磁石に対してより大きな距離で配置されている。したがって、センサー磁界は、ウィーガンドセンサーの位置において大きな横方向の磁界成分を有しており、その結果、センサー磁界を、ウィーガンドセンサーのウィーガンドワイヤーによって確実に検出することができ、当該ウィーガンドワイヤーは、一般に、シャフトに対して径方向に、したがって横断面内を延びている。ウィーガンドセンサー及びホールセンサーをセンサーユニット・プレートの対向する軸方向の面に配置することにより、シャフトの回転運動の確実かつ正確な検出が保証される。
【0011】
有利には、マルチターン・センサーユニットは集積回路を備えており、当該集積回路によって評価ユニット及びホールセンサーが形成されている。このような集積回路は市販されており、簡単な方法でセンサーユニット・プレートの上に配置することができる。これにより、低価格で信頼性の高い回転角測定システムが可能となる。
【0012】
本発明の特に有利な実施形態において、集積回路は、センサーユニット・プレートのうちローターユニットに対向する軸方向の面上に配置され、ステーターユニットは、ローターユニットとは反対側の軸方向の面に凹部を備えており、ホールセンサーを有する集積回路は、当該凹部内に少なくとも部分的に埋没している。したがって、センサー磁石とホールセンサーとの間の軸方向間隔は非常に小さく、その結果、センサー磁界をホールセンサーによって確実に検出することができる。
【0013】
好ましくは、ローターユニットは、円周に沿って均等に配分された4つのセンサー磁石を備えている。こうして、ウィーガンドセンサーによって既にシャフトの半回転を検出することができ、それにより、シャフトの回転運動の確実な検出が可能となる。
【0014】
本発明の有利な実施形態において、シャフトは中空シャフトである。本発明による回転角測定システムは、特に、シャフトの軸方向端部における従来のセンサー配置が特別な対策なしには不可能な、中空シャフトの回転運動の検出にも適している。
【0015】
有利には、シャフトの部分的な回転を検出するために容量性のシングルターン・センサーユニットが設けられており、当該シングルターン・センサーユニットは、相対的に回転しないような態様でシャフトに接続された第1のシングルターン・センサー素子と、固定された第2のシングルターン・センサー素子とを含んでいる。容量性のシングルターン・センサーユニットは、簡単な方法で回転角測定システムに組み込むことができ、シャフトの回転運動の特に正確な検出を可能とする。
【0016】
本発明による回転角測定システムの実施例が、以下において、添付図面に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による回転角測定システムの縦断面図を示している。
【
図2】
図1の回転角測定システムのステーターユニットの軸方向における下面の平面図であり、当該下面の上にはマルチターン・センサーユニットが配置されている。
【
図3】線IIIーIIIに沿って切断された、
図2のステーターユニット及びセンサーユニットの断面図を示している。
【
図4】
図1の回転角測定システムのローターユニットの軸方向における上面の斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、シャフト12の回転運動を検出するための回転角測定システム10を示している。シャフト12は、本実施例においては、実質的に軸方向に延び、静止モーターハウジング16を有する駆動モーター14によって駆動される中空シャフトである。回転角測定システム10は、ローターユニット18及びステーターユニット20を含んでいる。
【0019】
ローターユニット18は、シャフト12を径方向において取り囲み、シャフト12に直接的に固定されたロータープレート22を備えている。したがって、ローターユニット18は、相対的に回転しないような態様でシャフト12に接続されている。ロータープレート22の軸方向における上面の上には、その円周に沿って均等に配分された4つのセンサー磁石24が配置されている。ステーターユニット20は、シャフト12を径方向において取り囲むステータープレート26を備えている。ステータープレート26は、複数のステーター固定手段28を介して、静止モーターハウジング16に固定的に取り付けられている。
【0020】
ステータープレート26の軸方向における下面の上には、シャフト12に対して径方向に間隔をあけて、マルチターン・センサーユニット30が配置されている。マルチターン・センサーユニット30は別個のセンサーユニット・プレート32を備えており、当該センサーユニット・プレート32の上には、ウィーガンドセンサー34及び集積回路36が配置されている。センサーユニット・プレート32は、例えば接着接続又はプラグ接続を介して、ステータープレート26の軸方向における下面に固定されている。集積回路36は、電気的に互いに接続された評価ユニット38及びホールセンサー40を含んでいる。評価ユニット38は更に、電気的にウィーガンドセンサー34に接続されていると共に、不揮発性データメモリー(詳細には図示せず)に信号接続されており、当該不揮発性データメモリー内では、評価ユニット38によって回転カウント値が保存され読み出される。集積回路36は更に、制御ロジック(詳細には図示せず)及びエネルギー管理システム(詳細には図示せず)を含んでおり、これらは、ウィーガンドセンサー34から得られた電気エネルギーによって、マルチターン・センサーユニット30のエネルギー自給駆動を可能とする。マルチターン・センサーユニット30の基本的な作動原理は、実質的に、独国特許発明第10259223号明細書から見て取ることができ、これは、この関連において明示的に参照される。
【0021】
ウィーガンドセンサー34は、センサーユニット・プレート32の第1の軸方向の面A1、ここでは軸方向における下面に配置されていると共に、センサーユニット・プレート32に固定されている。集積回路36は、センサーユニット・プレート32の第1の軸方向の面A1とは反対側の第2の軸方向の面A2、ここでは軸方向における上面に配置されていると共に、センサーユニット・プレート32に固定されている。集積回路36は、ステータープレート26の軸方向における下面の上に形成された対応するステータープレート凹部42内に、実質的に完全に埋没している。マルチターン・センサーユニット30は、シャフト12の回転時に、シャフト12と共に回転するセンサー磁石24の磁界が、ウィーガンドセンサー34及びホールセンサー40の両方によって確実に検出されるように、位置決め及び位置合わせされている。ウィーガンドセンサー34と集積回路36は、センサーユニット・プレート32上で互いに横方向に間隔を置いて配置されており、その結果、ウィーガンドセンサー34とホールセンサー40は、周方向において互いにオフセットして位置決めされている。ウィーガンドセンサー34がセンサー磁石24の磁界を検出すると直ちに、ホールセンサー40によって検出されたホールセンサー測定値が評価ユニット38によって評価される。シャフト12の回転方向に応じて、センサー磁石24は、この検出時点において、ホールセンサー40に対向するウィーガンドセンサー34の側面の上、又は、ホールセンサー40とは反対側のウィーガンドセンサー34の側面の上のいずれかにあり、したがって、ホールセンサー40に対して異なる距離にある。このことから、回転方向に応じて検出時点において異なるホールセンサー測定値が得られ、その結果、検出時点におけるホールセンサー測定値を評価することにより、シャフト12の回転方向を簡単な方法で決定することができる。
【0022】
角度分解能を改善するために、回転角測定システム10は、ローターユニット18の軸方向における下面に配置され、したがって相対的に回転しないような態様でシャフト12に接続された第1のシングルターン・センサー素子と、ステーターユニット20の軸方向における上面に固定的に配置された第2のセンサー素子とを有する、容量性のシングルターン・センサーユニット(詳細には図示せず)を含んでいる。回転角測定システム10は更に、中央論理ユニット(詳細には図示せず)を備えており、当該中央論理ユニットは、シャフト回転の絶対値及びシャフトの現在の相対回転角の両方を決定するために、マルチターン・センサーユニット34及びシングルターン・センサーユニットに信号接続されている。中央論理ユニットは、例えば、マイクロコントローラーによって、又は、いわゆる「フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ」(FPGA)によって形成することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 回転角測定システム
12 シャフト
14 駆動モーター
16 モーターハウジング
18 ローターユニット
20 ステーターユニット
22 ロータープレート
24 センサー磁石
26 ステータープレート
28 ステーター固定手段
30 マルチターン・センサーユニット
32 センサーユニット・プレート
34 ウィーガンドセンサー
36 集積回路
38 評価ユニット
40 ホールセンサー
42 ステータープレート凹部
A1 第1の軸方向の面
A2 第2の軸方向の面