(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】家具ヒンジ
(51)【国際特許分類】
E06B 7/36 20060101AFI20221212BHJP
E05D 5/04 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
E06B7/36 D
E05D5/04 Z
(21)【出願番号】P 2021525866
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 AT2019060368
(87)【国際公開番号】W WO2020097645
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン デュア
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-275468(JP,A)
【文献】実開昭52-145948(JP,U)
【文献】実開昭56-112390(JP,U)
【文献】国際公開第2013/015542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/36
E06B 3/48
E05D 5/00-5/16
E05D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具ヒンジ(8)であって、
- 第1の家具部分(3a)に固定するための第1の金具部分(12)と、
- 第2の家具部分(3b)に固定するための第2の金具部分(13)と、
- 前記第1の金具部分(12)と前記第2の金具部分(13)とを互いに枢動自在に結合している少なくとも1つの枢動軸(14)とを有しており、
- 前記金具部分(12,13)は、組付け状態で前記金具部分(12,13)に結合された前記家具部分(3a,3b)が実質的に互いに同一平面を成すように整列させられた第1の位置と、組付け状態で前記金具部分(12,13)に結合された前記家具部分(3a,3b)が実質的に互いに平行に整列させられた第2の位置との間で、互いに相対的に可動であり、
- さらに、前記枢動軸(14)を中心として可動に支持されたカバー(11)であって、該カバー(11)によって、前記第1の金具部分(12)と前記第2の金具部分(13)との間に形成された間隙が少なくとも部分的にカバー可能であり、前記カバー(11)の運動が、前記家具ヒンジ(8)の運動に連動可能である、カバー(11)を有している、
家具ヒンジ(8)において、
前記第1の金具部分(12)および/または前記第2の金具部分(13)は、少なくとも1つのストッパ(20a,20b)を有しており、前記カバー(11)は、少なくとも1つの対応ストッパ(21a,21b)を有しており、前記第1の金具部分(12)および/または前記第2の金具部分(13)の前記少なくとも1つのストッパ(20a,20b)は、前記金具部分(12,13)相互の相対的な運動時に、前記カバー(11)の前記少なくとも1つの対応ストッパ(21a,21b)に当接し、前記カバー(11)は、前記少なくとも1つの対応ストッパ(21a,21b)への前記少なくとも1つのストッパ(20a,20b)の接触によって、少なくとも部分的に前記枢動軸(14)を中心として可動であ
り、
少なくとも1つの可動に支持された調整要素(17a)を備えた少なくとも1つの調整装置(17)を有し、前記少なくとも1つの調整要素(17a)の操作によって、前記第1の金具部分(12)の位置と前記第2の金具部分(13)の位置とが、前記枢動軸(14)に対して直角に延びる方向で、同期的にかつ前記少なくとも1つの枢動軸(14)に対して対称的に調整可能であることを特徴とする、家具ヒンジ(8)。
【請求項2】
前記カバー(11)は、長手方向(L2)を有し
ている、請求項1記載の家具ヒンジ。
【請求項3】
前記カバー(11)の周面が、前記長手方向(L2)に対して垂直の横断面で見て円弧状に形成されていることが特定されている、請求項2に記載の家具ヒンジ。
【請求項4】
前記カバー(11)の周面が、部分円筒形に形成され
ている、請求項1
から3までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項5】
前記カバー(11)の前記周面は、半円筒形を越える範囲にわたって延在していることが特定されている、請求項4記載の家具ヒンジ。
【請求項6】
前記家具ヒンジ(8)は、前記枢動軸(14)を中心として回動可能に支持された少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)を有しており、前記カバー(11)は、前記少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)に結合されているかまたは解離可能に結合可能である、請求項1から
5までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項7】
前記少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)は、前記少なくとも1つの枢動軸(14)に対して同軸に配置されて
いる、請求項6記載の家具ヒンジ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)は実質的に円筒形に形成されていることが特定されている、請求項7記載の家具ヒンジ。
【請求項9】
前記少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)は、少なくとも部分的に、前記カバー(11)を解離可能に固定するための刻み目(19)を有している、請求項
6から8までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項10】
前記家具ヒンジ(8)は、前記枢動軸(14)を中心として回動可能に支持された少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)を有しており、前記カバー(11)は、前記少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)に結合されているかまたは解離可能に結合可能であり、
前記少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)は、前記少なくとも1つの枢動軸(14)に対して同軸に配置されており、前記少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)は実質的に円筒形に形成されていることが特定されており、
前記少なくとも1つの枢軸体(16a,16b)は、少なくとも部分的に、前記カバー(11)を解離可能に固定するための刻み目(19)を有しており、該刻み目(19)に、前記対応ストッパ(21a,21b)を介して前記カバー(11)をスナップ式に固定することができることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項11】
少なくとも2つの枢軸体(16a,16b)が設けられていて、該枢軸体(16a,16b)は、前記枢動軸(14)に沿って互いに間隔を置いて配置されている、請求項
6から
10までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項12】
前記カバー(11)の前記少なくとも1つの対応ストッパ(21a,21b)は、前記カバー(11)の長手方向(L2)に対して実質的に平行に延在し
ている、請求項1から
11までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項13】
前記対応ストッパ(21a,21b)は、実質的に前記カバー(11)の全長にわたって延在していることが特定されている、請求項12記載の家具ヒンジ。
【請求項14】
前記カバー(11)の前記少なくとも1つの対応ストッパ(21a,21b)は、丸み付けられたウェブとして形成されている、請求項1から
13までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項15】
前記カバー(11)の前記少なくとも1つの対応ストッパ(21a,21b)は、前記第1の位置または前記第2の位置で、1つの前記金具部分(12,13)の前記少なくとも1つのストッパ(20a,20b)に接触している、請求項1から
14までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項16】
前記カバー(11)の前記少なくとも1つの対応ストッパ(21a,21b)は、前記家具ヒンジ(8)の、前記第1の位置と前記第2の位置との間にある少なくとも1つの中間位置で、前記金具部分(12,13)の前記少なくとも1つのストッパ(20a,20b)から間隔を置いて位置している、請求項1から
15までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項17】
前記少なくとも1つのストッパ(20a,20b)は、前記金具部分(12,13)のうちの1つの金具部分と一体に形成されており、かつ/または前記少なくとも1つの対応ストッパ(21a,21b)は、前記カバー(11)と一体に形成されている、請求項1から
16までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項18】
前記カバー(11)は、前記ストッパ(20a,20b)と前記対応ストッパ(21a,21b)との協働によって、第1の回動方向で前記枢動軸(14)を中心として可動で
ある、請求項1から
17までのいずれか1項記載の家具ヒンジ。
【請求項19】
前記第1の金具部分(12)および/または前記第2の金具部分(13)は、少なくとも1つの第2のストッパ(20a,20b)を有しており、前記カバー(11)は、少なくとも1つの第2の対応ストッパ(21a,21b)を有しており、前記カバーは、前記第2のストッパ(20a,20b)と前記第2の対応ストッパ(21a,21b)との協働によって、前記第1の回動方向とは逆向きの第2の回動方向に前記枢動軸(14)を中心として可動である、請求項18記載の家具ヒンジ。
【請求項20】
家具本体(2)と、第1の家具部分(3a)と、少なくとも1つの第2の家具部分(3b)とを有しており、前記第1の家具部分(3a)と前記第2の家具部分(3b)とが、それぞれ前記家具本体(2)に対して相対的に可動に支持されていて、請求項1から
19までのいずれか1項記載の少なくとも1つの家具ヒンジ(8)によって、互い枢動自在に結合されている、家具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具ヒンジであって、
- 第1の家具部分に固定するための第1の金具部分と、
- 第2の家具部分に固定するための第2の金具部分と、
- 第1の金具部分と第2の金具部分とを互いに枢動自在に結合している少なくとも1つの枢動軸とを有しており、
- 金具部分は、組付け状態で金具部分に結合された家具部分が実質的に互いに同一平面を成すように整列させられた第1の位置と、組付け状態で金具部分に結合された家具部分が実質的に互いに平行に整列させられた第2の位置との間で、互いに相対的に可動であり、
- さらに、枢動軸を中心として可動に支持されたカバーであって、このカバーによって、第1の金具部分と第2の金具部分との間に形成された間隙が少なくとも部分的にカバー可能であり、カバーの運動が、家具ヒンジの運動に連動可能である、カバーを有している、
家具ヒンジに関する。
【0002】
さらに、本発明は、家具本体に対して相対的に可動の少なくとも2つの家具部分と、家具部分を運動させるための、以下に記載される形式の少なくとも1つの家具ヒンジとを備えた、家具に関する。
【0003】
家具ヒンジの運動時に金具部分に対して相対的に運動するカバーを備えた家具ヒンジは、欧州特許出願公開第2899344号明細書および国際公開第99/23337号に基づいて既に公知である。カバーは、家具部分の間に形成された間隙をカバーするために形成されており、これによって、間隙内への指の進入が阻止され、家具の内部への汚れの侵入が減じられ、かつ見た目に魅力のある外観が与えられている。カバーの運動は、常にヒンジの運動に連動させられている。しかしながら、家具部分の間で形成される間隙のサイズは、家具部分相互の相対位置によって変化するので、強制連結されたカバーの存在によって、家具ヒンジの規定の運動経過は実現することができない。つまり、家具ヒンジの動作は、カバーが家具ヒンジの1つの相対位置で家具部分にまたは家具ヒンジのジョイント機構に当接し、ひいては、家具ヒンジの更なる運動が阻止されている場合に妨げられてしまう。
【0004】
英国特許出願公開第2456144号明細書には、指進入防止装置を備えた家具ヒンジが示されている。この家具ヒンジでは、指進入防止装置は、枢動軸を中心として旋回可能なカバーを有している。カバーは、金具部分の当接面によって枢動軸を中心として運動させられ、これによって、金具部分の間に形成されたヒンジ間隙がカバー可能であり、この間隙内への指進入が阻止される。この公知の構成の欠点は、この構造が、戸の最大開き角が約110°に制限されている用途にしか使用することができないということである。
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べたカテゴリーの家具ヒンジを、上で検討した欠点を回避して提供することである。
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。本発明の更なる有利な実施例は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明によれば、第1の金具部分および/または第2の金具部分は、少なくとも1つのストッパを有しており、カバーは、少なくとも1つの対応ストッパを有しており、第1の金具部分および/または第2の金具部分のストッパは、金具部分相互の相対的な運動時に、カバーの対応ストッパに当接し、カバーは、対応ストッパへのストッパの接触によって、少なくとも部分的に枢動軸を中心として可動であることが特定されている。
【0008】
言い換えれば、カバーは家具ヒンジに自由に回動可能に、または場合によっては蓄力器による荷重に抗して、枢動軸を中心にして可動に支持されていて、金具部分に配置されたストッパとカバーに配置された対応ストッパとの協働によって初めて、設定された旋回距離にわたって枢動軸を中心にして運動させられる。家具ヒンジの金具部分は、設定された角度範囲にわたって互いに旋回可能に支持されており、カバーは、角度範囲の第1の部分距離にわたっては運動させられず、角度範囲の、第1の部分距離に直接接続する第2の部分距離で初めて、ストッパと対応ストッパとの協働によって、金具部分の設定された終端位置に、または組付け状態で金具部分に結合された家具部分の設定された終端位置に運動させられる。
【0009】
こうして、カバーをその都度の閉鎖運動時および/または開放運動時に自動的にセンタリングすることができ、これによって、カバーは、金具部分に結合された家具部分のそれぞれの終端位置で最適に整列させられている。
【0010】
基本的に、第1の回動方向にカバーを運動させるためには、金具部分のただ1つのストッパおよびカバーのただ1つの対応ストッパが存在するだけで十分である。第1の回動方向とは逆向きの第2の回動方向へのカバーの運動のために、カバーは第2の対応ストッパを有していてよく、この第2の対応ストッパは、金具部分相互の相対運動時に、第1の金具部分および/または第2の金具部分の第2のストッパに当接し、カバーは、第2の対応ストッパへの第2のストッパの接触によって、少なくとも部分的に枢動軸を中心として可動である。
【0011】
しかしながら、金具部分の第2のストッパおよび/またはカバーの第2の対応ストッパの配置は、必ずしも必要ではない。すなわち、代替的な実施例では、カバーは、第1の回動方向で、カバーの少なくとも1つの対応ストッパへの金具部分の少なくとも1つのストッパの接触によって、蓄力器(例えば渦巻ばね)の力に抗して可動であり、これによって、蓄力器はチャージされる。次いで、カバーは、第1の回動方向とは逆向きの第2の回動方向に、蓄力器の力によって駆動可能である。
【0012】
カバーは、長手延在方向を有しており、好ましくは、カバーの周面が、長手延在方向に対して垂直の横断面で見て円弧状に形成されていることが特定されている。1つの実施例によれば、カバーの周面は、部分円筒形に形成されていてよく、好ましくは、カバーの周面は、半円筒形を越える範囲にわたって延在していることが特定されている。
【0013】
家具ヒンジは、枢動軸を中心として回動可能に支持された少なくとも1つの枢軸体を有していてよく、カバーは、枢軸体に結合されているかまたは解離可能に結合可能であり、好ましくは、カバーは、少なくとも1つの枢軸体にスナップ結合可能であることが特定されている。枢軸体は、枢動軸を中心として自由に回動可能に支持されていても、または場合によっては蓄力器の力に抗して枢動軸を中心として可動に配置されていてもよい。
【0014】
枢軸体は、少なくとも1つの枢動軸に対して同軸に回動可能に配置されており、好ましくは、少なくとも1つの枢軸体は実質的に円筒形に形成されていることが特定されている。枢軸体は、少なくとも部分的に、カバーを解離可能に固定するための刻み目を有していてよい。
【0015】
1つの実施例によれば、少なくとも2つの枢軸体が設けられていて、これらの枢軸体は、枢動軸に沿って互いに間隔を置いて配置されていることが特定されていてよい。
【0016】
1つの別の実施例によれば、カバーの対応ストッパは、カバーの長手方向軸線に対して実質的に平行に延在していてよく、好ましくは、対応ストッパは、実質的にカバーの全長にわたって延在していることが特定されている。カバーの対応ストッパは、例えば丸み付けられたウェブ、つまり小突起として形成されていてよく、このウェブは、少なくとも部分的にカバーの長手方向に延在している。
【0017】
本発明によれば、家具ヒンジの金具部分は、組付け状態で金具部分に結合された家具部分が実質的に互いに同一平面を成すように整列させられた第1の位置と、組付け状態で金具部分に結合された家具部分が実質的に互いに平行に整列させられた第2の位置との間で、互いに相対的に可動であることが特定されている。
【0018】
本発明の更なる詳細および利点は、以下の図面の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1a】家具本体と、家具本体に対して相対的に可動に支持された家具部分とを備えた家具を、1つの位置で示す斜視図である。
【
図1b】家具本体と、家具本体に対して相対的に可動に支持された家具部分とを備えた家具を、
図1aとは別の位置で示す斜視図である。
【
図2】家具ヒンジの1つの可能な実施例を示す斜視図である。
【
図3】金具部分相互の別の相対位置で、
図2に示した家具ヒンジを示す図である。
【
図5a】金具部分相互の1つの相対位置における家具ヒンジを下から見て示す図である。
【
図5b】
図5aに示した家具ヒンジの一部を拡大して示す詳細図である。
【
図5c】金具部分相互の別の相対位置における家具ヒンジを下から見て示す図である。
【
図5d】
図5cに示した家具ヒンジの一部を拡大して示す詳細図である。
【
図6a】金具部分相互のさらに別の相対位置における家具ヒンジを下から見て示す図である。
【
図6b】
図6aに示した家具ヒンジの一部を拡大して示す詳細図である。
【
図6c】金具部分相互のさらに別の相対位置における家具ヒンジを下から見て示す図である。
【
図6d】
図6cに示した家具ヒンジの一部を拡大して示す詳細図である。
【0020】
図1aには、家具本体2と家具部分3a,3b;4a,4bとを備えた家具1が示してある。家具部分3a,3b;家具部分4a,4bはそれぞれ家具本体2に対して可動に支持されている。家具部分3aと家具部分3bとは、2つまたはそれ以上の家具ヒンジ8を介して互いに枢動自在に結合されている。家具ヒンジ8は、高さ方向で互いに間隔を置いて家具部分3a,3bの背側に固定されている。他方の両家具部分4a,4bも同様に、高さ方向で互いに間隔を置いて配置された2つまたはそれ以上の家具ヒンジ8を介して、互いに旋回可能に結合されている。図中、家具部分3a,3b;4a,4bは第1の位置にある。この第1の位置で家具部分3a,3b;4a,4bは、互いに実質的に同一平面を成すように互いに整列させられている。家具部分3a,3b;4a,4bは、家具本体2に対して相対的にガイドシステム6によって可動である。このガイドシステム6は、ガイドレール7と、ガイドレール7の長手方向(L)で摺動可能に支持された走行キャリッジ5a,5bとを含んでいる。ガイドレール7は、組付け状態で実質的に家具本体2の前縁に対して平行に配置されている。第1の走行キャリッジ5aが、家具部分3aに枢動自在に結合されているのに対して、第2の走行キャリッジ5bは、家具部分4bに旋回可能に結合されている。
【0021】
図1bには、
図1aに示した家具1が示してある。この家具1では、家具部分3a,3b;4a,4bは第2の位置にある。この第2の位置で家具部分3a,3b;4a,4bは、実質的に互いに平行に整列させられている。家具部分3a,3bは、相互に平行な位置で、第1の走行キャリッジ5aと一緒に、奥行き方向(Z)に第1の側方の押込みポケット9a内に押し込むことができる。他方の家具部分4a,4bは、相互に平行な位置で、第2の走行キャリッジ5bと一緒に、奥行き方向(Z)に第2の側方の押込みポケット9b内に押し込むことができる。家具部分3a,3b;4a,4bの間には、それぞれ1つの間隙が形成されており、この間隙は、家具ヒンジ8の少なくとも1つの相対位置において、カバー11によって少なくとも部分的にカバー可能である。家具部分3a,3b;4a,4bの平行な位置で、カバー11は家具部分3a,3b;4a,4bの間に配置されている。カバー11は、金属またはプラスチック製の細長い成形品として形成されており、カバー11は、実質的に家具部分3a,3b;4a,4bの全高にわたって延在している。
図1aと
図1bの直接的な比較から明らかなように、家具部分3a,3b;4a,4bが実質的に互いに同一平面を成すように整列させられている第1の位置(
図1a)では、内側本体10は、室の領域から完全に隔離することができる。家具部分3a,3b;4a,4bが実質的に互いに平行に整列させられている第2の位置では、内側本体10には、人が自由にアクセスすることができる。内側本体10は、例えばキッチンブロック、オフィスのニッチ、物置、棚、またはウォークインクローゼットの形態で形成されていてよい。
【0022】
図2には、家具ヒンジ8の1つの可能な実施例が斜視図で示してある。この家具ヒンジ8は、家具部分3aにおける固定のための第1の金具部分12と、第2の家具部分3bにおける固定のための第2の金具部分13とを有している。第1の金具部分12と第2の金具部分13は、少なくとも1つの枢動軸14を介して互いに旋回可能に結合されている。両金具部分12,13はそれぞれ、家具部分3a,3bの、平坦に形成された内側面における固定のために、平坦に形成された接触面を有していてよい。第1の金具部分12および/または第2の金具部分13は、例えば孔の形態の少なくとも1つまたは複数の固定箇所15を有していてよい。この固定箇所15を通して、金具部分12,13は、例えば、ねじを用いて家具部分3a,3bに固定することができる。金具部分12,13は、
図2では、家具部分3a,3bが互いに同一平面にある第1の位置(
図1a)に相当する位置にある。
【0023】
カバー11は、長手方向(L2)を有している。カバー11の周面は、長手方向(L2)に対して垂直の横断面で見て円弧状に形成されていてよい。1つの可能な実施例によれば、カバー11の周面は部分円筒形に形成されていてよい。好ましくは、カバー11の周面は、半円筒形を越える範囲にわたって延在していることが特定されている。カバー11は、家具ヒンジ8に結合されているかまたは解離可能に結合可能である。図示の実施例では、カバー11は、少なくとも1つの枢軸体16aに解離可能に結合可能である。好ましくは、カバー11は枢軸体16aにスナップ結合によって解離可能に結合されていることが特定されている。枢軸体16aは、枢動軸14を中心として、自由に回動可能に、または場合によっては蓄力器の作用に抗して枢動軸14を中心として可動に支持されている。少なくとも1つの枢軸体16aは、枢動軸14に対して同軸に配置されていてよい。好ましくは、少なくとも1つの枢軸体16aは、実質的に円筒形に形成されていることが特定されている。図示の実施例では、枢動軸14に沿って互いに間隔を置いて配置された、同一に形成された2つの枢軸体16a,16bが設けられている。
【0024】
家具ヒンジ8は、少なくとも1つの可動に支持された調整要素17aを備えた少なくとも1つの調整装置17を有している。少なくとも1つの調整要素17aの操作によって、第1の金具部分12の位置が、第2の金具部分13に対して相対的に調整可能である。1つの可能な実施例では、少なくとも1つの調整要素17aの操作によって、第1の金具部分12の位置と第2の金具部分13の位置とが、好ましくは枢動軸14に対して直角に延びる方向で、同期的にかつ少なくとも1つの枢動軸14に対して対称的に調整可能である。このことは、例えば、枢動軸14が少なくとも部分的にねじスピンドルとして形成されていることによって達成することができる。このねじスピンドルは、2つまたはそれ以上のねじナット18a,18b,18cと螺合している。ねじナット18bが第1の金具部分12に結合されているのに対して、他のねじナット18a,18cは第2の金具部分13に結合されている。調整要素17aの回転によって、ねじナット18a,18b,18cは枢動軸14に沿って移動可能であり、これによって、金具部分12,13は、同期的にかつ枢動軸14に対して対称的に調整可能となる。調整要素17aは、工具のための収容装置を有していてよく、このようになっていると、調整要素17aは工具を用いた回転によって回転可能となる。調整要素17aの回転時に、枢軸体16a,16bは回動不能である。それというのは、枢軸体16a,16bは枢動軸14の周りにルーズに支持されているからである。図示するように、枢動軸14に沿って互いに間隔を置いて配置された2つの調整要素17a,17bが設けられている。こうして調整要素17a,17bは、金具部分12,13相互の位置を調整するために、上方および下方から、好ましくはねじ回しの形態の工具を用いて操作することができる。
【0025】
図3に斜視図で示された家具ヒンジ8では、金具部分12,13は、家具部分3a,3bが互いに平行な第2の位置(
図1b)に相当する位置にある。カバー11は、このとき、金具部分12,13に関してセンタリングされた位置にあるので、カバー11は、家具部分3a,3bが互いに平行に整列させられている場合に、家具部分3a,3bの間に形成された間隙を少なくとも部分的にカバーしている。このとき、カバー11は家具部分3a,3b相互の平行な位置において、家具部分3a,3bの間に配置されていることが特定されていてよく、これによって、カバー11の目立たないコンパクトな配置形態が可能となる。
【0026】
図4には、家具ヒンジ8が分解図で示してある。第1の金具部分12と第2の金具部分13とは、少なくとも1つの枢動軸14を介して互いに旋回可能に結合されている。この枢動軸14は、第1の金具部分12と第2の金具部分13との間の相対位置を調整するための調整装置17の調整要素17a,17bによって回転可能である。実質的に円筒形の枢軸体16a,16bの周面には、刻み目19が設けられていてよく、この刻み目19によってカバー11は、環状の枢軸体16a,16bに解離可能に固定することができる。第1の金具部分12および/または第2の金具部分13には、例えば金具部分12,13に一体に形成された制御縁の形態の少なくとも1つのストッパ20a,20bが形成されている。カバー11には、少なくとも1つの対応ストッパ21a,21bが配置されているかまたは形成されている。この対応ストッパ21a,21bは、カバー11の長手方向(L2)に対して実質的に平行に延在している。好ましくは、カバー11の対応ストッパ21a,21bは実質的にカバー11の全長にわたって延在していることが特定されている。図中、カバー11の対応ストッパ21a,21bは、丸み付けされたウェブ(つまり小突起)として形成されており、このウェブは、少なくとも部分的にカバー11の長手方向(L2)に沿って延在している。つまり、金具部分12,13が、図示の
図4から出発して、組付け状態で金具部分12,13に結合された家具部分3a,3bが実質的に互いに平行に整列させられている、
図3に示した位置に移動すると、金具部分12,13のストッパ20aは、カバー11の対応ストッパ21aに当接し、カバー11は、ストッパ20aと対応ストッパ21aとの協働によって、枢動軸14を中心とした回動方向で連行される。これによって、カバー11は、最終的に
図3に示した回動位置に達する。
【0027】
図示の実施例では、カバー11は第2の対応ストッパ21bを有しており、この第2の対応ストッパ21bは、第1の対応ストッパ21aと同一に形成されている。第1の金具部分12および/または第2の金具部分13には、第2のストッパ20bが形成されていてよく、この第2のストッパ20bは、カバー11の第2の対応ストッパ21bと協働することができる。金具部分12,13が、組付け状態で金具部分12,13に結合された家具部分3a,3bが実質的に互いに平行に整列させられている、
図3に示した位置から出発して、家具部分3a,3bが実質的に互いに同一平面を成すように整列させられた、
図2に示した位置に移動すると、金具部分12,13の第2のストッパ20bは、カバー11の第2の対応ストッパ21bに当接し、カバー11は、第2のストッパ20bと第2の対応ストッパ21bとの協働によって、枢動軸14を中心として第2の回動方向に連行される。これによって、カバー11は、最終的に
図2に示した回動位置に達する。
【0028】
既に冒頭で述べたように、金具部分12,13の第2のストッパ20bの配置とカバー11の第2の対応ストッパ21bの配置とは、必ずしも必要ではない。それというのは、カバー11は、第1の回動方向で、第1のストッパ20aと第1の対応ストッパ21aとの協働によって、蓄力器の力に抗して運動することができるからであり、これによって、カバー11は、第2の回動方向では蓄力器の力によって少なくとも部分的に枢動軸14を中心として駆動可能である。しかしながら、カバー11に2つの対応ストッパ21a,21bを配置することは、カバー11を両対応ストッパ21a,21bを介して枢軸体16a,16bの刻み目19にスナップ式に固定するという可能性を提供し、カバー11は、固定された状態では、カバー11の材料弾性によって十分な保持力をもって枢軸体16a,16bに保持されている。
【0029】
金具部分12,13の第1のストッパ20aとカバー11の第1の対応ストッパ21aとの協働と、金具部分12,13の第2のストッパ20bとカバー11の第2の対応ストッパ21bとの協働とによって、カバー11はその都度の開放運動時および閉鎖運動時に新たにセンタリングされる。1つの実施例によれば、少なくとも1つのストッパ20a,20bは、金具部分12,13のうちの1つの金具部分と一体に形成されており、かつ/または少なくとも1つの対応ストッパ21a,21bは、カバー11と一体に形成されていることが特定されている。
【0030】
図5aは、下から見た家具ヒンジ8の図を示している。この
図5aでは、組付け状態で金具部分12,13に結合された家具部分3a,3bは、実質的に互いに同一平面を成すように整列させられている。両対応ストッパ21a,21bを備えたカバー11が認識可能である。図示した図では、金具部分12,13のストッパ20aは、カバー11の対応ストッパ21aに接触している。
図5bには、
図5aで丸く囲まれた領域が拡大して示してある。
【0031】
いまや金具部分12,13が互いに向かって運動させられると、金具部分12,13のストッパ20aは、カバー11の対応ストッパ21aから離れ(
図5c)、カバー11はその相対位置に留まる、つまり、枢動軸14を中心としてもはや回動されない。金具部分12,13のこの中間位置で、金具部分12,13のストッパ20a,20bは、カバー11の対応ストッパ21a,21bから間隔を置いて位置している。
図5dには、
図5cで丸く囲まれた領域が拡大して示してある。この
図5dで認識できるように、ストッパ20a,20bは、互いに約90°ずらされて、金具部分12,13のうちの少なくとも1つの金具部分に配置することができる。
【0032】
図6aには、下から見た家具ヒンジ8の、金具部分12,13相互の別の相対位置が示してある。この
図6aでは、組付け状態で金具部分12,13に結合された家具部分3a,3bは、互いに約90°の角度を成している。この
図6aで認識できるように、金具部分12,13のストッパ20bは、カバー11の対応ストッパ21bに当接しており、これによって、枢動軸14を中心としたカバー11の旋回運動が開始される。
図6bには、
図6aの丸く囲まれた領域が拡大して示してある。
【0033】
金具部分12,13相互の移動が続けられることによって、カバー11は、ストッパ20bと対応ストッパ21bとの協働によって反時計回りで旋回させられる。
図6cでは金具部分12,13は、組付け状態で金具部分12,13に結合された家具部分3a,3bが、実質的に互いに平行に整列させられている(
図1b)位置にある。カバー11は、
図6aから出発して、金具部分12,13のストッパ20bによって、枢動軸14を中心とした家具ヒンジ8の最大の旋回角度範囲の部分距離にわたって移動している。このとき、カバー11は、金具部分12,13に対して相対的にセンタリングされて整列させられている。