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特許7192115マルチスクリュユニットを備えた脱気用押出し機、および脱気用押出し機を用いてポリマー溶融物を脱気するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】マルチスクリュユニットを備えた脱気用押出し機、および脱気用押出し機を用いてポリマー溶融物を脱気するための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/44 20190101AFI20221212BHJP
   B29C 48/76 20190101ALI20221212BHJP
   B29B 7/46 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
B29C48/44
B29C48/76
B29B7/46
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021526370
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2019081697
(87)【国際公開番号】W WO2020099684
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-07-07
(31)【優先権主張番号】102018128884.0
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019127884.9
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514054214
【氏名又は名称】グノイス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Gneuss GmbH
【住所又は居所原語表記】Moenichhusen 42, D-32549 Bad Oeynhausen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン グノイス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル グノイス
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ グノイス
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101293397(CN,A)
【文献】特開2000-007822(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1775506(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96,
B29B 7/38-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチスクリュユニット(10;10’;10’’)を備える脱気用押出し機(100)であって、少なくとも、
ハウジング(30)であって、
供給開口を有する供給領域(20)、
外方にまで延在している吸込み開口(32)を有する内側のハウジング切欠き、および
排出開口を有する排出領域(40)
を備えるハウジング(30)と、
前記ハウジング切欠き内に回転可能に配置された前記マルチスクリュユニット(10;10’;10’’)であって、少なくとも、
ロータ軸コア(15;15’;15’’)の外周にわたって延在している少なくとも1つのメインスクリュウェブ(12;12’;12’’)を備えるロータ要素(11;11’;11’’)、および
回転駆動される少なくとも1つのサテライトスクリュ(16;16’)であって、前記ロータ要素(11;11’;11’’)に設けられた収容溝(13;13’;13’’)内に支持されており、前記収容溝(13;13’;13’’)は、少なくとも前記マルチスクリュユニット(10;10’;10’’)の長さの一部に沿って延在している、サテライトスクリュ(16;16’)
を含む前記マルチスクリュユニット(10;10’;10’’)と、
を備える、脱気用押出し機(100)において、
少なくとも前記吸込み開口(32)の領域において、
前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)は、前記収容溝(13;13’;13’’)の上に、前記サテライトスクリュ(16;16’)を貫通案内するためのそれぞれ1つの開口切欠き(12.1)を有し、
前記サテライトスクリュ(16;16’)の周囲が、前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)によって形成された通路(14,14.1)内では、前記ロータ軸コア(15;15’;15’’)に設けられた前記収容溝(13;13’;13’’)内で最小40%~最大70%囲繞されており、
前記サテライトスクリュ(16;16’)の横断面の囲繞率が、前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)を前記サテライトスクリュ(16;16’)が貫通して延びている軸線方向位置での前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)の範囲内では、前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)の範囲外の前記通路(14,14’,14’’)内よりも大きく、最大95%である
ことを特徴とする、脱気用押出し機(100)。
【請求項2】
前記サテライトスクリュ(16;16’)の前記横断面の前記囲繞率は、少なくとも前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)の範囲内の複数の軸線方向ゾーンのうちの1つの軸線方向ゾーン内または前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)の範囲外の前記通路(14,14’,14’’)内で、それぞれ50%よりも大きい、請求項1記載の脱気用押出し機(100)。
【請求項3】
前記サテライトスクリュ(16;16’)のウェブが、前記少なくとも1つのメインスクリュウェブ(12;12’;12’’)の外周にまで達している、請求項1または2記載の脱気用押出し機(100)。
【請求項4】
前記サテライトスクリュ(16;16’)の中心軸線が、前記ロータ軸コア(15;15’;15’’)の直径よりも小さいピッチ円上に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の脱気用押出し機(100)。
【請求項5】
前記サテライトスクリュ(16;16’)の軸コアの横断面の80%よりも多くが、前記ロータ軸コア(15;15’;15’’)の周囲の内部に配置されている、請求項4記載の脱気用押出し機。
【請求項6】
前記ロータ要素(11;11’;11’’)に少なくとも3つの収容溝(13;13’;13’’)が形成されており、該収容溝(13;13’;13’’)内にそれぞれ1つのサテライトスクリュ(16;16’)が回転可能に支持されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の脱気用押出し機。
【請求項7】
前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)の通路深さ(TG1,TG2)が、前記収容溝(13;13’;13’’)の最大通路深さよりも大きい、請求項1から6までのいずれか1項記載の脱気用押出し機。
【請求項8】
前記サテライトスクリュ(16;16’)は、前記ロータ要素(11;11’;11’’)の回転方向とは逆向きに回転するように駆動されていて、前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)に対して逆向きにセットされた方向付けを有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の脱気用押出し機。
【請求項9】
前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)の直径Dおよびピッチtならびに前記開口切欠き(12.1)のそれぞれの開口幅xは、前記ハウジング切欠きの内壁が前記ロータ要素(11)の回転時に前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)によって完全に擦過されるように互いに適合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の脱気用押出し機。
【請求項10】
前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)のウェブ幅dと前記通路(14,14’,14’’)の通路幅との比率が、1:4よりも小さい、請求項1から9までのいずれか1項記載の脱気用押出し機。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の脱気用押出し機(100)を用いてポリマー溶融物を処理するための方法であって、少なくとも下記のステップ、すなわち、
ハウジング切欠き内に回転可能に配置されていて、回転可能に支持された少なくとも1つのサテライトスクリュ(16;16’)を備えるロータ要素(11;11’;11’’)に溶融物流を供給するステップと、
前記溶融物流を前記ロータ要素(11;11’;11’’)および前記少なくとも1つのサテライトスクリュ(16;16’)の周囲に面状に分配するステップと、
前記ポリマー溶融物を前記ロータ要素(11;11’;11’’)および前記サテライトスクリュ(16;16’)から少なくとも1つの排出通路に排出するステップと、
吸込み開口(32)への真空の印加によって前記ポリマー溶融物を脱気するステップと、
を含む方法において、
前記ロータ要素(11;11’;11’’)に分配された前記ポリマー溶融物を、前記ロータ要素(11;11’;11’’)の長さにわたって、前記ロータ要素(11;11’;11’’)の外周に配置された少なくとも1つのメインスクリュウェブ(12;12’;12’’)を用いて搬送し、このとき、前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)の通路(14,14’,14’’)内で搬送される溶融物をほぐすために、前記ロータ要素(11;11’;11’’)の外周に設けられた収容溝(13;13’;13’’)内に配置されている少なくとも1つのサテライトスクリュ(16;16’)を使用し、
マルチスクリュユニット(10)に供給される前記ポリマー溶融物の容積流と、前記マルチスクリュユニット(10)から排出される容積流とを、前記メインスクリュウェブ(12;12’;12’’)の互いに隣接した区分と、前記ロータ要素(11;11’;11’’)の外面と、前記ハウジング切欠きの内面との間に取り囲まれた搬送容積の100%未満が、前記ポリマー溶融物によって満たされているように互いに適合させる
ことを特徴とする、方法。
【請求項12】
脱気時に、前記通路(14,14’,14’’)内で利用可能な前記搬送容積の80%未満が、前記ポリマー溶融物によって満たされている、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を有する、マルチスクリュユニットを備えた脱気用押出し機、および脱気用押出し機を用いてポリマー溶融物を脱気するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重縮合物、例えば特にポリエステルの調製時には、ポリマー鎖長さを増大させるかまたは少なくとも維持して、溶融されたポリマーの更なる減成を阻止するために、分裂生成物(たいていは水)を継続的に排出することが重要である。このことは、まさに、要求の多い製造技術、例えば、高いポリマー品質と、特に高い固有粘度とを必要とする極細の紡糸繊維の製造時に重要となる。
【0003】
国際公開第2013180941号には、リサイクルポリエステルから嵩高連続カーペット長繊維(カーペット用BCF)を製造するための方法が記載されている。この方法では、溶融されたポリマーの1つの流れを少なくとも2つの個別流に分割することが提案されている。個別流は、互いに別個に、それぞれ個別の押出し機における真空の印加および保持によって脱気されることが望まれており、その後で、個別流が再び1つの全溶融物流にまとめられ、次いで、全溶融物流が、後置された紡糸装置に直接供給されるようになっている。しかしながら、互いに並列に配置された押出し機において処理される複数の個別流への分割は、装置のコストが高くなり、所要スペースが大きくなり、また同期化などに関して手間がかかる。この方法を実施するために、さらに、実施例として多軸押出し機が選択されており、この多軸押出し機は、複数の別個の押出し機の機能をただ1つの構造ユニットにおいて実現し、別個の溶融物流を互いに無関係に脱気するようになっており、これらの溶融物流が後で再び1つにまとめられる。そのために、マルチ回転ユニットが、複数のサテライトスクリュが回転可能に支持されている1つの中心軸を中心にして回転する。脱気のために、真空ポンプに接続されている開口を有しているハウジングが設けられている。互いに別個の部分溶融物流への分割は、確かに、単一流に対して、ガス交換を行うことができるポリマー表面が増大されているという利点を有している。しかしながら、サテライトスクリュを介して導かれる個々の溶融物流の脱気は、マルチスクリュユニットの回転中にそれぞれのサテライトスクリュの部分溶融流がハウジング内の開口のそばを通過する、短い時間でしか行うことができない。したがって、この公知の解決策では、所属のサテライトスクリュは常に短い時間しかハウジングの開口を通って通過せず、このとき、回転の残りに対しては真空の影響領域外にあるにもかかわらず、それぞれの部分溶融物流においては、脱気を目的とした一定の低い圧力の持続的な維持を保つことが望ましいということが未解決のままである。
【0004】
国際公開第2003/033240号には、複数のサテライトスクリュを含むMRSシステムが記載されている。これらのサテライトスクリュは、ポリマー溶融物の表面を著しく増大させ、溶融物品質を著しく改良する。ロータ要素を越えて1つのサテライトスクリュから次のサテライトスクリュへと流れる横方向流が可能であり、かつ望まれている。サテライトスクリュには、ポリマー溶融物の搬送の主部分が課せられており、これに対して、ロータ要素において僅かしか突出していないスクリュウェブは、搬送に関して比較的僅かしか関与しておらず、スクリュウェブは、主として、ロータ要素を溶融物によって取り囲み、これによって、いわばハウジング内での潤滑を生じさせる働きをする。
【0005】
中国特許出願公開第101293397号明細書および中国特許出願公開第101837633号明細書にそれぞれ記載されたマルチスクリュユニットでは、サテライトスクリュは、中央のロータ要素上のメインスクリュウェブのスクリュ通路の内部に完全に位置している。したがって、サテライトスクリュはそのウェブを介して、ポリマー溶融物を、ロータ要素のコアに対して平行に長手方向に搬送する。サテライトスクリュの全横断面がメインスクリュウェブを貫いて延在しているので、溶融物は、メインスクリュウェブに沿って搬送されるのみならず、メインスクリュをバイパスする部分流を発生させる。このことは、脱気のために必要な渦流形成および吸込み開口の領域における長い滞在時間を阻止する。
【0006】
中国特許出願公開第1775506号明細書に記載されたマルチスクリュユニットは、脱気するように構成されていない。サテライトスクリュは、それぞれその全横断面のほとんどの部分が、中央のロータ要素における収容溝の壁によって囲繞されている。サテライトスクリュ上のスクリュ螺条は、極めて小さなウェブ高さを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、内部で処理されるポリマー溶融物の品質を高めることができる脱気用押出し機を提供することである。特に、そのための前提条件として、ポリマー溶融物が吸込み開口を通過する場合に、または既に通過前でも、大きなポリマー表面を生じさせ、かつ/または、ポリマー溶融物における高い表面交換を生じさせることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する、マルチスクリュユニットを備えた脱気用押出し機によって解決される。
【0009】
本発明に係るアプローチは、いわゆるマルチローテーションシステムの形態の上述の従来技術とは真逆であり、既に専門用語において従来技術とは区別されている。本発明に係るマルチスクリュユニットは、「脱気用のモノロータ押出し機」とも呼ぶことができる。なぜなら、搬送作用はまったく主として、中央の(モノ)ロータ要素に切り込まれた複数の通路によって行われ、サテライトスクリュ自体は搬送することなしに脱気作用を改善するからである。
【0010】
搬送作用は、まったく主として、ロータ要素の外側に形成されている少なくとも1つのメインスクリュウェブによって行われる。搬送作用がメインスクリュウェブだけによって提供されるように、メインスクリュウェブには、ロータ要素の軸コアを越えて高く形成されているかまたはウェブの間に形成された通路が、深く切り込まれている。これに対して、サテライトスクリュの搬送作用は、著しく低下しているか、またはもはや搬送作用にほとんど関与していない。その代わりに、サテライトスクリュは、ポリマー溶融物の循環、ほぐし(Auflockerung)、および混合のために役立っている。このことは、サテライトスクリュが可能な限り深くロータ軸内に支持されているからであり、これによって、サテライトスクリュの搬送作用が、十分に阻止されているか、または著しく低減されている。
【0011】
本発明によって得られる利点は、改善された混合および改善された脱気にだけあるのではない。さらに、ポリマーの剪断も回避される。機械的な剪断の減少によって、それだけで既に改善された溶融物品質につながる。さらに、剪断がより僅かなことによって、溶融物への入熱が低減される。すなわち、過熱が回避される。
【0012】
サテライトスクリュの周面の大部分が、ロータ要素から突出していないことによって、メインスクリュの表面が相応に増大する。比較的大きな表面は、面への広がりを強化し、脱気作用を改善する。
【0013】
メインスクリュウェブのウェブ高さは、好ましくは収容溝の最大通路深さよりも大きい。メインスクリュウェブのウェブ高さは、好ましくは、サテライトにおけるスクリュウェブの高さと少なくとも同じ高さであり、特に少なくとも2倍の高さである。
【0014】
好ましくは、スクリュを備えたサテライト要素の回転方向は、メインウェブを備えたロータ要素の回転方向に対して逆向きであり、サテライトスクリュウェブの方向付けは、メインスクリュウェブの方向付けとは逆向きである。そもそも搬送作用がサテライトスクリュに由来しているとすると、サテライトスクリュの搬送作用は、軸線方向においてメインスクリュウェブによる搬送と同じ方向に向けられている。それにもかかわらず、メインスクリュの通路の内部では、ロータ要素とそれぞれのサテライトスクリュとの間に逆向きの相対運動が生じ、このことは、搬送される溶融物のほぐし、ひいては、溶融物の脱気を改善する。構造的な利点としては、サテライトスクリュが端部側にピニオンを備えていてよいことがあり、これらのピニオンは、ロータ要素に形成されているまたは固定されているリングギヤに直接噛合している。
【0015】
サテライトスクリュがメインスクリュウェブを貫通している場所では、サテライトスクリュは、好ましくは周囲の少なくとも70%が囲繞されている。このように構成されていると、僅かな流れしか、ロータ要素に沿って残っている自由空間を通って、メインスクリュウェブとサテライトスクリュとの間に達することができない。メインスクリュウェブの搬送作用は維持されたままである。これに対して、メインスクリュウェブの互いに隣接した部分の間の長さ領域では、サテライトスクリュは、サテライトスクリュが配置されている収容溝によって、著しく僅かしか囲繞されておらず、少なくとも半分が露出している。したがって、サテライトスクリュは、押出し機におけるような搬送要素をもはや形成せず、特にポリマー溶融物のための混合要素である。
【0016】
本発明の意味では、サテライト混合要素の周囲の、ロータ要素の壁とロータ要素のメインスクリュウェブの壁とによって遮蔽されている部分と、全周囲との比率が、「囲繞率(Einfassungsgrad)」と呼ばれる。
【0017】
ロータ要素は、ほぼ中断されていない少なくとも1つのメインスクリュウェブが延びているその大きな直径および周囲で、溶融物流が広げられる大きな表面を提供している。このことは、ポリマー溶融物が、真空が印加されているハウジング吸込み開口に沿って案内される場合に、例えばポリマー溶融物の脱気を促進する。他方では、メインスクリュウェブの互いに隣接した部分の間に位置しているスクリュ通路は、多くの個々の溶融物流の代わりに、一貫した溶融物流を案内する。一貫した溶融物流は、ロータ要素の回転に基づいて、真空が印加されているハウジング吸込み開口のそばを目的に合わせて何度も通過する。つまり、特に真空の影響領域において、規定の滞在時間が存在している。
【0018】
サテライトスクリュは、本発明によれば、既に述べたように、個々の溶融物流の搬送のために働くのではなく、むしろロータ要素のスクリュ通路の内部に深く位置しており、サテライトスクリュは、メインスクリュ通路内へと開放しているが、この開放の程度は、サテライトスクリュが、メインスクリュウェブ内のスクリュ通路の下部、つまり、基部に位置している溶融物部分を循環させることを前提条件としている。これによって、サテライトスクリュは、メインスクリュの通路を貫いて延びている、その他の点では、一貫した溶融物流の個々の部分のほぐし、混合、および位置変化を生じさせ、真空による脱気作用が、外側に位置している部分においてだけではなく、ロータ要素を介して搬送される全溶融物流において継続的に行われるように働く。
【0019】
ただ1つのサテライトスクリュだけでも、ポリマー溶融物の混合および表面増大が改善される。好ましくは少なくとも3つのサテライトが、均等な角度分割でロータ要素に配置されている。サテライトスクリュの数の選択のために下記のことが考察される、すなわち、
・脱気用押出し機が特に、複数の成分を混合するためまたは1つの成分を均一化するために使用される場合には、混合作用は、サテライトスクリュの数を増加させることによって高めることができる。
・脱気に焦点が当てられている場合には、脱気効果に対する混合作用の影響が生じる。サテライトスクリュの数の増加時に、必要な部分圧を脱気室内で高めることができ、つまり、真空の影響領域における圧力を高めることができる。
【0020】
このようにすると、与えられている適用では、サテライトスクリュの数が決定され、簡単な試験によって、方法実施のための所望の最適な圧力領域が形成される。この場合、段階的に、例えば0.1mbar未満から1barを超えるまでの圧力が印加され、このようにして処理された製品が複数の試験段階のために分析される。
【0021】
メインスクリュ通路における横断面は、脱気用押出し機のための定格容積流に対する関係において、横断面が通常運転では完全には満たされていないように選択されている。低い充填率に基づいて、真空の吸込み作用は、ロータ要素における、ハウジング開口の領域に直接的に位置していないすべての周囲領域においても、間接的に伝播することができる。
【0022】
本発明にとって重要なことは、サテライトスクリュがメインスクリュウェブを貫通している箇所に、メインスクリュウェブがそれぞれ可能な限り小さな開口しか有していないということである。ここでは、サテライトスクリュの周囲の、メインスクリュウェブ同士の間の軸線方向領域よりも大きな部分が、メインスクリュウェブを含んだロータ要素の横断面によって囲繞されている。
【0023】
通路内でのサテライトスクリュの囲繞率が50%以下であると、このことは、周囲の180°またはそれ以上が露出していることを意味している。このとき、収容溝内でのサテライトスクリュの形状結合式の案内は、このゾーンでは与えられておらず、したがって、サテライトスクリュの、メインスクリュウェブによって付加的に与えられた囲繞は、そこで周囲の180°よりも大きな範囲が囲繞されていること、つまり、囲繞率が50%よりも大きい値であるような大きさであることが望ましい。このように構成されていると、案内は、必然的に、メインスクリュウェブの領域内の十分に大きな囲繞によって行われる。しかも、驚いたことに、機械構造的に、比較的短いウェブ区分による案内で十分である。
【0024】
サテライトスクリュの囲繞は、収容溝内で50%よりも大きくなくてはならないか、またはこれが不可能な場合には、少なくともメインスクリュウェブを貫通している箇所で50%よりも大きな値でなくてはならない。好ましくは、サテライトスクリュの軸線方向での延在長さにおいて、囲繞率は、少なくとも1つの箇所で70%よりも大きな値であることが望ましい。これによって、多くの場合、背側端部に取り付けられている駆動ピニオンと一緒に、サテライトスクリュの形状結合式の案内のために少なくとも2つの支持点が生じる。
【0025】
サテライトスクリュがそれぞれメインスクリュウェブを貫通している箇所での、可能な限り大きな囲繞率は、メインスクリュウェブにおける小さな開口切欠きがメインスクリュウェブの搬送作用を維持していることによっても好適である。すなわち、溶融物は、開口切欠きが小さくない場合には、ほとんど横方向流を形成することができず、むしろ、不可避にメインスクリュウェブの経過に追従しなくてはならない。このとき、溶融物は、何回もハウジング開口のそばを通過させられ、脱気作用が改善される。
【0026】
本発明に係る脱気用押出し機では、下記のパラメータ、すなわち、
・メインスクリュウェブの上縁部において測定された、ロータ要素の外径、
・ロータコアの上におけるメインスクリュウェブの高さ、
・メインスクリュウェブの幅、
・少なくとも1つのサテライトスクリュが配置されている、ロータ要素におけるピッチ円の直径、および
・サテライトスクリュの直径およびサテライトスクリュのサテライトスクリュウェブの高さ
を互いに適合させることが望ましい。
【0027】
これによって、メインスクリュウェブにおける開口切欠きの開口幅または開き角度がもたらされる。
【0028】
小さな定格直径と相応に少数の3~5つのサテライトスクリュとを備えたマルチスクリュユニットでは、好ましくは、サテライトスクリュのコア、つまり、外側に位置しているサテライトスクリュウェブを抜いた、サテライトスクリュの中央の横断面部分が、完全にまたはほぼ完全にロータコアの周囲線の内部に位置していることが提案されている。このように構成されていると、サテライトスクリュウェブの高さが、メインスクリュウェブの高さとほぼ等しい高さになり、サテライトスクリュは、メインスクリュウェブにおける搬送容積を制限しなくなる。
【0029】
ピッチ円の直径とサテライトスクリュウェブの直径との総和は、ロータ要素の外径よりも大きくあってはならない。すなわち、サテライトスクリュのスクリュウェブは、決して半径方向でメインスクリュウェブの上縁部を越えて突出していない。これによって、メインスクリュウェブの外縁部とハウジング切欠きとの間の間隙を極めて小さく保つことができる。
【0030】
他方、サテライトスクリュのピッチ円および直径は、サテライトスクリュウェブのほぐし作用を得ることができるようにするために、サテライトスクリュウェブが総じて十分にメインスクリュウェブにおけるスクリュ通路の底部を越えて突出するように選択されていなくてはならない。
【0031】
好ましくは、サテライトスクリュが、メインスクリュウェブによって貫通案内されている箇所の外側で、その周囲の最小40%~最大70%の範囲で、収容溝の側面によって囲繞されており、それ以外のその外側ではスクリュ通路内に露出しているように、適合が行われている。
【0032】
通路深さの増大と共に、サテライトスクリュが、ロータ要素に設けられた収容溝内の囲繞部によってもはや良好には案内されていないという問題がある。収容溝における囲繞率は、ピッチ円直径がロータコアの直径よりも大きいと、60%未満に急速に低下する。このことは特に、ロータ直径が比較的大きい場合に必要である。なぜならば、サテライトスクリュのサイズおよびサテライトスクリュのウェブ高さは制限されており、ロータコアの直径に比例して増大しないからである。
【0033】
まとめると、本発明によればサテライトスクリュの囲繞に関して下記の幾何学的な要求が生じている。すなわち、
・メインスクリュウェブの間の通路の内部では、収容溝による囲繞の値は50%未満であることが望ましく、このように構成されていると、サテライトスクリュは、実質的な搬送作用をもはやほとんど発生させず、その代わりに、ロータの周囲を越えてより良好な溶融物交換が達成される。
・メインスクリュウェブを貫く貫通路の内部で、囲繞部は、メインスクリュウェブによって生じない、長手方向での搬送を阻止するために、可能な限り大きいことが望ましい。しかしながら、メインスクリュウェブにおける囲繞率は、いずれにせよ通路の開放領域における囲繞率よりも大きくなくてはならない。
・通路内の開放領域かまたはメインスクリュウェブを貫く貫通路においては、ロータ要素におけるサテライトスクリュの形状結合式の機械的な案内を生ぜしめるために、少なくとも1つの箇所で、50%を上回る、特に少なくとも60%の囲繞率が得られなければならない。
【0034】
横断面に関するこれらの幾何学的な関係の他に、長さに関する、ロータユニットにおけるスクリュの案内の考察は下記の通りである。すなわち、
・ロータ要素の、脱気のために有効な長さの70%よりも大きな長さにわたって、ロータ軸コアによる囲繞が行われ、かつ
・長さの5%よりも大きいが20%未満の長さにわたって、ウェブによる囲繞が行われる。
【0035】
ウェブ幅と通路幅との割合を考察すると、比率は最大で1:4であり、むしろ、それよりも小さいことが望ましく、つまり、ウェブ幅は、スクリュのピッチの20%以下であることが望ましく、このように構成されていると、溶融物搬送および溶融物脱気のための可能な限り大きな搬送容積を得ることができ、搬送容積をメインスクリュウェブによって可能な限り僅かしか占有しなくすることができる。
【0036】
ポリマー溶融物を処理するために本発明に係る脱気用押出し機を適用する場合には、少なくとも下記の方法ステップ、すなわち、
・ハウジング切欠き内に回転可能に配置されていて、周囲に複数の回転可能なサテライトスクリュを有しているロータ要素に、溶融物流を供給するステップであって、駆動をハウジング切欠き内の内歯列を介して行い、この内歯列に、サテライトスクリュの、同様に歯列を備えた端部が、直接または間接的に噛合している、ステップと、
・ハウジングに対するロータ要素の回転によって、溶融物流をロータ要素の周囲およびサテライトスクリュに面状に分配するステップと、
・ポリマー溶融物をロータ要素およびサテライトスクリュから少なくとも1つの排出通路に排出するステップと、
が提案されている。
【0037】
この方法ステップでは、ロータ要素に分配されたポリマー溶融物が、ロータ要素の長さにわたって、ロータ要素の外周に配置された少なくとも1つのメインスクリュウェブを用いて搬送され、このとき、少なくとも1つのサテライトスクリュによって、通路の底部からほぐされる。複数のサテライトスクリュが設けられていると、これによって、同時にポリマー溶融物が、互いに隣接したサテライトスクリュの間で交換される。
【0038】
この方法において好ましくは、マルチスクリュユニットに供給されるポリマー溶融物の容積流と、マルチスクリュユニットから排出されるポリマー溶融物とは、メインスクリュウェブの互いに隣接した区分と、ロータ要素の外面と、ハウジング切欠きの内面とによって取り囲まれた搬送容積またはロータ要素の縦断面で見た搬送横断面の100%未満しか、特に80%未満しか、ポリマー溶融物によって満たされていないように互いに適合される。いわゆる、充填率の低減によって多くの自由空間を得ることができ、これによって、ポリマー溶融物をサテライトスクリュによって渦動させることができ、表面を増大させることができ、溶融物流の互いに隣接した部分の混合を強化することができる。
【0039】
本発明に係る脱気用押出し機を使用した処理方法によって、特に下記のポリマー溶融物、すなわち、
・様々な使用分野のためのポリエステル、特に、カーペット製造のために適している嵩高連続長繊維(BCF)のような様々な繊維形態のポリエステルを処理することができる。この場合、本発明に係る脱気用押出し機において処理されたポリエステルは、紡糸プロセスに直接導入することができる。
・ポリアミドを処理することができる。
【0040】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】脱気用押出し機を示す側面図である。
図2】ロータ要素を示す斜視図である。
図3】マルチスクリュユニットの一部を示す側面図である。
図4】ロータ要素の周囲を概略的に示す展開図である。
図5】ロータ要素を示す断面図である。
図6】第2の実施形態のロータ要素を示す断面図である。
図7】第3の実施形態のロータ要素を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1には、脱気用押出し機100が側面図で示されている。脱気用押出し機100は、ハウジング30のそばで側方に供給領域20を有しており、この供給領域20は、図示された実施例では細長く形成されている。供給領域20は、内部に位置している供給通路内に回転するスクリュ軸21を有している。さらに、ハウジング30の他方の側には、内部に位置している排出通路を備えた排出領域40が接続されており、排出通路内にも同様に回転するスクリュ軸41が配置されている。ハウジング30は、図1では、2つのハウジング開口32を並んで有している側から見て示されており、両ハウジング開口32は、1つの共通のフランジ領域31の内部に配置されており、このフランジ領域31には、さらに真空吸込み管路を取り付けることができる。ハウジング開口32を通して、内部にマルチスクリュユニット10の部分を見ることができ、特に従来技術との比較では、ロータ要素11の外周にわたって延在しているメインスクリュウェブ12の著しく増大した通路深さまたはウェブ高さが目に付く。
【0043】
図2には、ロータ要素11が斜視図で示されている。軸コア15がその外周においてメインスクリュウェブ12によって取り囲まれている。さらに、外周には、サテライトスクリュのための、互いにそれぞれ45°ずらされて配置された全部で8つの収容溝13が形成されている。図2中で既に認識できるように、メインスクリュウェブ12に形成された通路14には、比較的大きな通路深さが設けられている。
【0044】
このことは、マルチスクリュユニット10の一部、つまり、流れ方向において前端部を示す側面図である図3でも特に明らかであり、前端部は、移行円錐42において搬出スクリュ41に移行している。ロータ要素11は、移行円錐42の直ぐ前にだけ、僅かな深さを有する通路14.1を有している。この部分から右の残りの領域では、通路14は明らかに比較的深く切り込まれており、ここで、通路深さは、半径方向においてメインスクリュウェブ12の外周から軸コア15の外周に至るまで測定される。
【0045】
ロータ要素11の直径はDで示されており、tがメインスクリュウェブ12のピッチを示しており、ピッチtは、通常、直径Dに関連して同じ角度位置におけるウェブ区分の軸線方向間隔の関係を示す、寸法なしの数字として記載される。通路ピッチは、1つのウェブ縁部から、同じ角度位置において測定された次のウェブ縁部に至るまでの、メインスクリュウェブ上で測定可能な間隔であり、直径Dとピッチtとの積として計算される。その結果、通路14の幅は、通路ピッチD*tとウェブ幅dとの間の差として定められる。
【0046】
この定義に従ったt=1のピッチは、1つのスクリュウェブ前縁部と次のスクリュウェブ前縁部との間の、周囲上の同じ角度位置で測定された軸線方向間隔が、直径と正確に同じ大きさであるということを意味している。ポリマー脱気の目的のためには、t<Dであり、これによって、ポリマー溶融物の滞在時間が長くなり、ガス吸込みの作用を発揮することができる。さらに、図3から明らかに分かるように、メインスクリュウェブ12は、サテライトスクリュウェブ17とは逆向きの方向付けを有している。ロータ要素11とサテライトスクリュ16とは逆向きに回転する。なぜなら、ロータ要素11とサテライトスクリュ16とは歯列を有していて、互いに直接噛合しているからである。
【0047】
横断面に対して記載されたサテライトスクリュ16の囲繞率に関する本発明の特徴は、図2に認めることができる長手方向でのロータ要素の経過に関連した別の特徴と重要な関係にある。すなわち、サテライトスクリュ16の横断面の、従来技術に対して増大した囲繞によって、本発明のマルチスクリュユニット10を備えたマルチスクリュユニットでは、セルフクリーニング効果が生じる。なぜなら、メインスクリュウェブ12が、ハウジング切欠きの全長および全周にわたって、ハウジング内の内壁に沿って削り取り、これにより、場合によっては固着しているポリマー残留物を除去するからである。
【0048】
したがって、サテライトスクリュ16の、本発明のように設定された囲繞率によって、メインスクリュウェブ12における中断が、上述したセルフクリーニング作用が与えられていることに基づいて十分に短くなる。この関係については、図4および図5を用いて述べる。
【0049】
図5には、ロータ要素11が横断面図で示されている。8つの収容溝13のためにそれぞれ中断されたメインスクリュウェブ12は、それぞれ1つの開口切欠き12.1を収容溝13の上に有している。上に位置している収容溝13は、空の状態で示されている。太い実線は、通路14の内部におけるサテライトスクリュ16の囲繞率を、メインスクリュウェブ12の平行な区分の間の軸線方向領域として表現している。その右側の、収容溝13における破線は、サテライトスクリュ16がメインスクリュウェブ12を貫通している箇所での囲繞率を表現している。
【0050】
図4には、メインスクリュウェブ12と、サテライトスクリュのための開口切欠き12.1とを備えたロータ要素11の外周が展開図で概略的に示されている。メインスクリュウェブ12の孔直径または外径Dは、押出し機の所望の処理量または処理すべきポリマーの粘性などの観点で決定される。したがって、外径Dは、マルチスクリュユニットの更なる構造上の構成のために定数と見なされている。したがって、周囲の長さ:
U=D・π
という式が成り立つ。
【0051】
開口切欠き12.1の開口幅xは、開き角度α(図5参照)によって算定される:
【数1】
【0052】
マルチスクリュユニット10のセルフクリーニング作用に関する機能的な要求は、開口切欠き12.1を画定する縁部12.2と縁部12.3との間に軸線方向で僅かなオーバラップが存在していなくてはならないことを定めており、このことは、図4にオーバラップゾーン12.4として示されている。
【0053】
計算による算定に対しては、軸線方向における間隙が存在しないようにするために、縁部12.2,12.3が少なくとも軸線方向において同じ高さに位置していなくてはならないということが言える。なぜならば、間隙が存在していると、ハウジング切欠きの内壁の、ロータ要素のこの区分によって覆われている領域がクリーニングされないおそれがあるからである。
【0054】
そのことから、メインスクリュウェブ12のウェブ幅dに対しては、開き角度α(図5参照)およびピッチtとの関係において下記の式が成り立つ:
【数2】
【0055】
通路幅とウェブ高さとによって算定された、メインスクリュウェブ12の区分の間の通路14の搬送容積を可能な限り大きくするためには、ウェブ幅dは、可能な限り小さいことが望ましい。既に上述したように、ウェブ幅dと通路幅との関係は、下記のように選択されていることが望ましい:
【数3】
【0056】
ピッチtに関しては、ウェブ幅dに対して下記の式が成り立つ:
【数4】
【0057】
上に述べた、ピッチの20%のウェブ幅限界によって、開き角度αに対しては下記の式が成り立つ:
【数5】
【0058】
本発明によるマルチスクリュユニット10の更なる関係は、以下の図における断面図から分かる。
【0059】
図5には、マルチスクリュユニット10が断面図で、つまり、図3中のIV-IV線の領域における断面図で示されている。収容溝13およびサテライトスクリュ16の中心の位置を設定するピッチ円19は、ロータ要素11の軸コア15の直径とほぼ同じ大きさの直径を有している。サテライト軸16のコア横断面の一部は、それぞれロータ軸コア15の周囲線を越えて突出している。このことは、一方では、サテライトスクリュ16の実質的な搬送作用を発生させないようにすることを目的として、サテライトスクリュ16のサイズを制限して保つために必要であり、他方では、サテライトスクリュウェブ17がメインスクリュウェブ12の外縁部にまでまたは少なくともその近傍に到達させるために必要である。外方に向かってのサテライトスクリュウェブ17の、このような広幅の半径方向延在長さが選択されると、これによって、メインスクリュウェブにおける開口の、サテライトスクリュがそのウェブ17と一緒に投影された横断面によって再び覆われない部分を小さいままにしておくことができる。これによって、結果的に生じる通路内でのサテライトスクリュ16の囲繞率EG1は、太線で示された円弧線によって表されている。囲繞率EG1は、この例では50%未満である。メインスクリュウェブ12における通路14の通路深さはTG1で示されている。同時に、図4中で認識できるように、メインスクリュウェブ12における開口の、サテライトスクリュ16の投影された面によって再び覆われていない部分は小さいままである。
【0060】
図6には、図5におけるのと極めて似た図示でマルチスクリュユニット10’が示されている。メインスクリュウェブ12’の外径、サテライトスクリュ16’の外径、および収容溝13’とサテライトスクリュ16’とが配置されているピッチ円19’は、それぞれ図5に示した例と同じである。図5との比較において異なっているのは、メインスクリュウェブ12’に形成された通路14’が相対的に大きな通路深さTG2>TG1を有していることであり、これによって、ロータ軸コア15’の直径は減少している。これによって、通路14’における、太く示された円弧線によって特徴付けられている囲繞率EG2も同様に小さくなり、これに対して、メインスクリュウェブ12’を貫通している箇所におけるサテライトスクリュ16’の囲繞率ES2は一定のままである。
【0061】
図7に示したマルチスクリュユニット10’’の軸コア15’’には、5つの丸い収容溝13’’がフライス加工されており、これらの収容溝13’’は、互いに72°ずらされて1つの共通のピッチ円19’’上に配置されている。ピッチ円19’’は、この例では軸コア15’’の直径よりも小さい。これによって、サテライトスクリュ16’’のそれぞれのコア領域の横断面は、ほぼ完全にロータ軸コア15’’の周囲線の内部に位置しており、すなわち、メインスクリュウェブ12’’の通路14’’における搬送容積はほぼ完全に保たれており、サテライトスクリュ16’’によってほとんど狭められない。
【0062】
収容溝13’’の、ロータ軸コア15’’に形成された側面は、それぞれ180°よりも大きな角度にわたって延在している。したがって、50%よりも大きな値の囲繞率が得られる。これによって、サテライトスクリュ16’’は収容溝13’’内に形状結合式に支持されている。サテライトスクリュ16’’はその周囲の残っている部分が、メインスクリュウェブ12’’における通路14’’の内部に露出している。これによって、サテライトスクリュ16’’のサテライトスクリュウェブ17’’は、溶融物を通路14’’の底部から良好にほぐすことができる。同時に、サテライトスクリュウェブ17’’はメインスクリュウェブ12’’の外周にまで達していて、逆向きに回転するので、循環は特に効果的である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7