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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】潤滑剤特性を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/00 20060101AFI20221212BHJP
   G01N 19/00 20060101ALI20221212BHJP
   G01N 33/30 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G01N11/00 C
G01N19/00 A
G01N33/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021528995
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 DE2019100710
(87)【国際公開番号】W WO2020103969
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】102018129457.3
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランツィスカ ベアク
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0132783(US,A1)
【文献】特開2013-082882(JP,A)
【文献】特表2015-524489(JP,A)
【文献】特開2015-172153(JP,A)
【文献】特開2015-224255(JP,A)
【文献】米国特許第06571610(US,B1)
【文献】特開2006-177734(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19650616(DE,A1)
【文献】特開平04-232440(JP,A)
【文献】特開2006-132619(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105910958(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00
G01N 19/00
G01N 33/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するための潤滑剤の適合性を決定するための方法であって、
以下のサブステップを含むレオメータの第1の調整ステップと、
a) 前記レオメータを-45℃~-5℃の範囲から選択される第1の温度に平衡化すること(5、6)、
b) 前記レオメータの所定の第1の温度平衡化時間が経過した後、第1のゼロ点を設定すること(7)、
前記レオメータに潤滑剤サンプルを充填するステップ(08)と、
前記潤滑剤サンプルを変形し(09)、測定システムの前記第1のゼロ点を参照して、前記第1の温度での前記潤滑剤サンプルの剪断変形から第1の剪断応力を決定するステップと、
以下のサブステップを含む前記レオメータの第2の調整ステップと、
c) 前記レオメータを+20℃~+50℃の範囲から選択される第2の温度に平衡化すること(10、11)、
d) 前記レオメータの所定の第2の温度平衡化時間が経過した後、第2のゼロ点を設定すること(12)、
前記レオメータに潤滑剤サンプルを再充填するステップ(13)と、
前記潤滑剤サンプルを変形し(14)、前記測定システムの前記第2のゼロ点を参照して、前記第2の温度での前記潤滑剤サンプルの剪断変形から第2の剪断応力を決定するステップと、
前記決定された第1の剪断応力および前記決定された第2の剪断応力の少なくとも一方が、それぞれに対して定義された所定値を超える場合に、前記潤滑剤を偽ブリネリング損傷を防止するために不適切として分類するステップ(15、16)と、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の温度が、-30℃に選択され、前記第2の温度が、+25℃に選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記潤滑剤の偽ブリネリング防止特性が、最大1000Paの第1の剪断応力までおよび最大100Paの第2剪断応力までの第1の範囲(1)内では「非常に良好」として分類され、最大1750Paの第1の剪断応力までおよび最大275Paの第2の剪断応力までの第2の範囲(2)内では「良好」として分類され、最大2500Paの第1の剪断応力までおよび最大375Paの第2剪断応力までの第3の範囲(3)内では「条件付きで好適」として分類され、2500Pa超の第1の剪断応力および375Pa超の第2の剪断応力の第4の範囲(4)内では「不適切」として分類される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
統計誤差を改善するために、2つの測定が各測定値に対して実行される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記レオメータの前記第1および第2の調整が、前記レオメータが空の状態で実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記レオメータの前記第1の温度および第2の温度への温度平衡化の前記サブステップが、ペルチェプレートおよびカバーフードを使用して実行される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記変形から前記剪断応力を決定する前記ステップが、剪断変形γを剪断速度dγ/dtに変換すること、および前記剪断速度での剪断応力値を決定することによって行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤特性を決定するための方法に関する。特に、本発明は、グリース潤滑転がり軸受内の偽ブリネリング損傷パターン(波形の特殊な形態とも呼ばれる)を防止するための潤滑剤、特に潤滑グリースの適合性を決定するための方法に関する。
【0002】
転がり軸受または玉軸受では、潤滑剤が潤滑表面間に膜を形成し、それによって互いに対して移動する表面間の直接接触を防止する。このようにして、機械的な摩擦および摩耗が低減する。潤滑グリースの粘度に関するそれらの特性は、潤滑グリースが使用される温度範囲に大きく依存する。潤滑剤としてのそれらの適合性はまた、表面が互いに対して移動する速度に依存する。速度が上がると、潤滑剤はより熱くなり、潤滑剤が分解する温度に達する場合がある。低温では、潤滑剤の粘度が上がることにより、表面間の空間への流れが非常に遅くなるため、潤滑表面間の膜が破断する場合がある。
【0003】
転がり軸受の潤滑は、主に2つの目標:摩擦を最小限に抑えることと、摩耗から保護することと、を実現する必要がある。転がり軸受の通常の操作中、軸受の速度に依存して、いわゆる「完全支持潤滑膜」が形成し得る異なる潤滑条件が区別される。潤滑剤の特性に依存して、完全支持潤滑膜の形成が促進される。重要なパラメータのうちの1つは、潤滑剤の粘度である。潤滑剤を新たに充填した新しい転がり軸受を輸送するときに特定の問題が発生する。これは、例えば、カートレイン上またはトラック輸送機上での車両輸送中の車のホイール軸受に影響する。ここで、特に複列アンギュラ玉軸受の場合、負荷がかかった玉の位置で内輪および外輪の軌道に損傷を示す繰り返し損傷パターンがある。内輪および外輪の軌道へのこの損傷は、数ミクロンの深さに達する場合があり、詳細な顕微鏡検査なしでは、最初は玉によって引き起こされた圧痕のように見える。そのような損傷パターンは、「偽ブリネリング」として知られているものに基づく場合がある。
【0004】
潤滑剤の偽ブリネリング防止特性、すなわち上述の損傷を防止する能力は、時間および費用がかかる試験であるベンチテストにおいてのみ決定することができる。潤滑剤の特性値は、レオロジー試験スタンドまたは測定デバイス内で決定される。本質的に、DIN51810-2に基づく潤滑剤を試験するための2つのレオロジー法が、実験室試験方法として使用される。DIN51810-2には、測定プロセスの構造、使用されるデバイス、および測定によって決定することができるレオロジーパラメータが記載されている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するための潤滑剤、特に潤滑グリースの適合性を迅速に決定することができる、単純かつ安価な方法を提供することである。
【0006】
この目的は、本発明によれば、添付の請求項1に記載の潤滑剤特性を決定するための方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
調査では、典型的な偽ブリネリング損傷は、転動体による軌道材料の静的な過負荷によるものではないことが示された。むしろ、このタイプの損傷は、いくつかの影響要因の相互作用を通してのみ生じる。これらの要因は、グリース潤滑転がり軸受、基本的に静止軸受内での高応力点接触であるが、この軸受は、半径方向に約±1°の微動および-20℃以下の低外気温を受ける。特に、軸受の負荷区間内の転動体/玉が既存の潤滑剤だけでなく、とりわけ、接触エリアからの潤滑グリースの遊離基油を押しのけ、温度に関係する高粘度により、接触エリアが逆流し得るのに十分に迅速に移動しないときに、偽ブリネリング損傷が生じることが見出された。これにより、ほとんど潤滑されていない転がり接触が導かれ、摩耗および腐食を引き起こす場合がある。軸受表面上の転動体間の距離で生じる、結果的に起こる表面損傷は、偽ブリネリング損傷と呼ばれ、潤滑剤の組成を変更するか、または適切な潤滑剤を選択することによって低減することができる。
【0008】
本発明の概念は、本質的に、少なくとも2つの異なる事前選択された温度で決定される検査された潤滑剤のレオロジーパラメータが、2つの温度間の温度範囲内でベアリング内の偽ブリネリング損傷を防止するための潤滑剤の適合性についての情報を提供し、また場合によってはそれを可能にするという知識に基づいている。この目的のために、2つの温度での測定されたパラメータは、値フィールド(図または値の表)内に一緒に入力され、標示または信号は、値フィールド内の得られた値ペアの位置から生成され、これは、倉庫内での偽ブリネリングによる損傷を防止するための潤滑剤の適合性を代表するものである。本発明の文脈に照らして、潤滑剤は、好ましくは、軸受内で典型的に使用されるような潤滑グリースであると理解される。
【0009】
このようにして得られた結果を従来の方法で得られたものなどの結果と比較することができるようにするために、本発明による方法は、好ましくは、変換係数が使用される変換ステップを有する。
【0010】
軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するための潤滑剤、特に潤滑グリースの適合性を決定するための本発明による方法は、
以下のサブステップを含むレオメータの第1の調整ステップと、
a) レオメータを第1の温度に平衡化すること、
b) レオメータの指定された第1の温度チェック時間が経過した後、第1のゼロ点を設定すること、
レオメータへの潤滑剤サンプルの第1の充填ステップと、
潤滑剤サンプルの第1の変形と、第1の温度での潤滑剤サンプルの剪断変形からの第1の剪断応力の決定ステップと、
以下のサブステップを含むレオメータの第2の調整ステップと、
c) レオメータを第2の温度に平衡化すること、
d) レオメータの指定された第2の温度チェック時間が経過した後、第2のゼロ点を設定すること、
レオメータへの潤滑剤サンプルの第2の充填ステップと、
潤滑剤サンプルの第2の変形、および第2の温度での潤滑剤サンプルの剪断変形からの第2の剪断応力の決定ステップと、
決定された第1の剪断応力および決定された第2の剪断応力の関数として、潤滑剤を偽ブリネリング損傷を防止するために好適または不適切として分類するステップと、を有する。
【0011】
軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するためのその適合性に関して、潤滑剤、特に潤滑グリースを判定するために見出された有意な温度値は、潤滑剤が現場で使用されるときに想定される最低温度、および例えば潤滑剤が倉庫に導入されたときの平常温度である。したがって、実行される方法では、第1の温度は、好ましくは-45℃~-5℃の範囲に選択され、第2の温度は、好ましくは+20℃~+50℃の範囲に選択される。特に、この方法は、-30℃の第1の温度および+25℃の第2の温度で実行される。
【0012】
数多くの試験では、第1の剪断応力が第1の温度で最大1000Paであり、第2の剪断応力が第2の温度で最大100Paの場合、軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するための潤滑剤の適合性が非常に良好であることが見出された。第1の剪断応力が最大1750Paであり、第2の剪断応力が最大275Paである場合に好適である。潤滑剤は、第1の剪断応力が最大2500Paであり、第2の剪断応力が最大375Paである場合にのみ使用が制限される。第1の剪断応力が2500Paを超え、第2の剪断応力が375Paを超える場合、偽ブリネリング損傷を防止するという観点から、この潤滑剤はあまり好適ではない。
【0013】
個々の測定において偏差が生じるため、統計誤差を改善するためには、測定値ごとに2回、3回以上の測定でこの方法を実行することが好ましい。
【0014】
本発明の1つの利点は、とりわけ、この方法が、迅速におよび装置に対する多額の出費もなく実行することができることであるため、潤滑剤は、特に軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するための潤滑剤としてのその適合性に関して迅速に判定することができる。
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による方法の一実施形態のフローチャートである。
図2】第1の測定において得られた測定値を有する図である。
図3】第2の測定において得られた測定値を有する図である。
図4】第3の測定において得られた測定値を有する図である。
図5】第4の測定において得られた測定値を有する図である。
【0017】
図1は、以下の方法ステップで、軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するための、潤滑剤、特に潤滑グリースの適合性を決定するための本発明による方法のフローチャートを示す。第1のステップ05では、レオメータは、第1の温度での潤滑剤の流れ特性を決定するように調整される。これを行うために、レオメータを第1の温度にする。レオメータは、ステップ06では、所定の温度平衡化時間の間、この第1の温度に保持される。この期間中、レオメータは緩和する、すなわち温度平衡化時間の後、レオメータ内に温度勾配が存在しなくなるはずである。この温度平衡化時間(整定時間または緩和時間とも呼ばれる)の間、温度平衡化時間がすでに終了しているかどうか、および次のステップを開始することができるかどうかを決定するために、ステップ06において連続チェックが行われる。
【0018】
温度平衡化時間が終了したとき、レオメータが調節される、すなわち第1のゼロ点がステップ07において設定され、これに第1の温度でのさらなるレオロジー測定が関連付けられる。
【0019】
レオロジー測定は、ステップ08においてレオメータに潤滑剤サンプル(潤滑グリース)を充填した状態で始まる。ステップ09では、所定の剪断変形が潤滑剤サンプルに加えられるため、潤滑剤サンプルはレオメータ内で変形される。剪断変形のサイズおよび加えられた剪断応力に加えて、貯蔵弾性率および損失弾性率など、検査された潤滑剤の他のレオロジーパラメータがそれぞれの測定温度で決定される。基本的に、レオロジー測定は当業者に知られているため、詳細の説明はここでは省かれ得る。
【0020】
ここで、ステップ10において第2の温度での第2の調整を実行するために、潤滑剤サンプルがレオメータから除去される。ステップ10では、この目的のためにレオメータを第2の温度にする。ステップ11では、第2の温度平衡化時間の順守が監視され、ステップ12では第2のゼロ点が設定され、これに第2の温度でのさらなるレオロジー測定が関連付けられる。
【0021】
この第2の調整およびステップ13においてレオメータに同じ潤滑剤のさらなるサンプルを新たに充填した後、第2の温度でレオロジー調査を実行することができる。ステップ14では、所定の剪断変形がさらなる潤滑剤サンプルに加えられ、剪断応力が決定される。
【0022】
第1の温度での特定の剪断応力および第2の温度での特定の剪断応力の両方が、軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するための潤滑剤の適合性の後続の決定のために考慮される。初めに、記録された剪断変形が剪断速度に変換され、関連する剪断応力がこれについて決定されると、ステップ15において値ペアが形成される。したがって、そのような値ペアは、第1の温度での剪断応力値および第2の温度での剪断応力値を含む。値ペアは、二次元の値フィールド内の位置を規定し、この位置は、潤滑剤が使用されるべき軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するための潤滑剤の適合性の尺度である。
【0023】
本発明をより良好に理解するために、この値フィールドは、第1の温度での剪断応力がx軸上にプロットされ、第2の温度での剪断応力がy軸上プロットされた状態で、異なる潤滑剤の値ペアが入力された図として示すことができる。
【0024】
値ペアを使用して、すなわち値フィールド内の値ペアの位置から、軸受内の偽ブリネリング損傷を防止するための潤滑剤の適合性がステップ16において決定され、第1の剪断応力および第2の剪断応力が評価に含まれる。
【0025】
本発明の方法による測定値およびそれらの分類を記録するための特定の実施例を下記で説明する。
【0026】
-30℃での準備および測定=第1の温度:
最初に、測定システムを含むレオメータを、-30℃に平衡化する。約30分の温度平衡化時間が経過した後、第1のゼロ点を設定する。-30℃は室温よりもかなり低いため、水蒸気の凝縮および0℃未満での霜の形成を防止するために、第1のゼロ点を設定した後、および潤滑剤サンプルを塗布する前に、レオメータを再び室温にする。レオメータを室温まで戻した後、レオメータに潤滑剤サンプルを充填する。次いで、測定システムは、潤滑剤サンプルを-30℃まで冷却した状態で開始する。-30℃に達すると、この温度を約30分間一定に保ち、測定システムおよび潤滑剤サンプルが実際に-30℃の第1の温度を有することを保証する。ここで、振幅スイープを実行して、第1の温度での剪断応力を決定する。剪断変形は、0.01%~1000%まで増加する。ここで、測定の第1の部が終わったため、レオメータを空にし、洗浄することができる。
【0027】
+25℃での準備および測定=第2の温度
最初に、測定システムを含むレオメータを25℃に平衡化する。約5分の温度平衡化時間が経過した後、第2のゼロ点を設定する。次いで、レオメータは、同じ潤滑剤サンプルを再充填される。測定システムおよびサンプルを+25℃に平衡化し、次いで第2の振幅スイープを実行して、第2の剪断応力を決定する。剪断変形は、0.01%~1000%まで増加する。これで測定が終了し、測定値をさらに処理する。
【0028】
上記の実施例では、レオロジー変数は、振幅スイープにおいて-30℃(第1の温度)で1回および+25℃(第2の温度)で1回決定される。振幅スイープでは、潤滑剤の剪断変形は、0.01%~1000%で変わる。振幅は、10rad/秒の一定周波数で変化し、10の累乗で増加する。測定値は、例えば、10年ごとに5点または10点または20点で記録することができる。適用される剪断変形は、測定の一部として明記される。この仕様および測定値から、剪断応力は、それ自体で知られている様態で決定され、さらなるデバイス定数および材料値を考慮することができる。
【0029】
この目的のために、+25℃での振幅スイープを評価するとき、0.36s-1の剪断速度での剪断応力値が測定データを使用して決定される。-30℃での振幅スイープでは、記録された剪断変形は、初めに同じ方法で剪断速度に変換され、次いで、例えば保存された値の表から、または実装された数学的関係の助けによって決定される。+25℃での特性値および-30℃での特性値から値ペアが形成される。この値ペアは、値フィールドの位置を規定し、値フィールドは、例えばメモリ内に保存することができるか、またはソフトウェアによって実行することができる数学関数によって記載することもできる。明確にするために、値のペアはまた、図に自動的に入力することができ、図は、例えば、表示または印刷される。
【0030】
値フィールド内の値ペアの位置は、検査された潤滑剤の偽ブリネリング防止特性が、良好であるか不良であるかの尺度である。その上、2つの剪断応力値の値ペアから、偽ブリネリング防止特性が良好であるか不良であるかだけでなく、どの程度かを決定することも可能である。
【0031】
本発明による方法により、偽ブリネリング防止特性が良好な流れ特性に起因し得る潤滑剤、特に潤滑グリースを検査することができる。レオロジープロセスによって-30℃まで下がったグリースの偽ブリネリング防止特性を決定するために、測定システムは、初めに工業用エタノール、変性アルコール、イソプロパノール、工業用アセトン、または工業用スピリットで洗浄することが好ましい。測定システムは、ペルチェプレート(Peltier plate)を備えるレオメータ、好ましくはφ25mmのサイズを備えるレオメータ用のプレート測定システムを含む。ペルチェプレートに加えて、測定システムを所望の温度にするために、温度制御されたカバーフードも測定システムに使用する必要がある。ペルチェ素子を使用する場合、逆冷却する必要がある。これには、クライオスタットまたはサーモスタットを使用することが好ましい。洗浄後、測定システムは、例えばへらを使用して、潤滑剤サンプルを充填する。
【0032】
測定システムを充填するとき、下部プレートの中央に、わずかに余る約0.5gの十分な量の潤滑剤が塗布される。次いで、上部プレートは、下部プレートから1.025mmの距離、いわゆるトリム位置まで下げられ、へらを用いて余分な潤滑剤が除去される。次いで、1,000mmの最終測定位置は、接近させることができる。トリミング中に測定ギャップから潤滑剤を除去することはできず、さもなければ、ギャップが正しく充填されず、測定値の改ざんになるであろう。
【0033】
実際の測定は、それぞれの温度で行われる。当然のことながら、第1の測定温度として低い温度と高い温度のどちらを選択するかは重要ではない。測定温度ごとに2回以上の測定を実行することが好ましい。このようにして、測定の統計誤差を低減することができる。
【0034】
測定を評価し、偽ブリネリング防止潤滑剤としての潤滑グリースの適合性についての情報を提供するために、剪断変形の測定値は、剪断速度に変換される。検査した潤滑剤の特性値を決定するために、剪断変形γついての測定値は、以下の式に従って剪断速度dγ/dtに変換される。
【0035】
dγ/dt(計算された)=γ(測定された)*0.071
【0036】
次いで、計算された剪断速度が0.36s-1であるその測定値が求められることが好ましく、関連する剪断応力値が読み取られるか、または値フィールドから自動的に決定される。
【0037】
決定された2つの特性値は、値のペアとして組み合わされ、値フィールド内の値のペアの位置を評価することにより、偽ブリネリング防止潤滑剤としての適合性を決定するために使用される。この評価は、値ペアをメモリ内に保存された値フィールドと比較するか、ソフトウェアを使用してマッピングすることができる数学的関係に基づいて実行することができる。
【0038】
値のペアの位置のこの決定は、図2~5に示すような図を用いて図示することができる。図2では、-30℃での潤滑グリースの特性値は横軸としてプロットされ、+25℃での潤滑グリースの特性値は縦軸としてプロットされる。図または値フィールド内の値のペアの位置に依存して、グリースの偽ブリネリング防止特性は、非常に良好、良好、最低限、または不適切として分類される。
【0039】
図2~5では、測定値ペアの各々を白丸で示す。分類に対するそれぞれの範囲制限も示される。図2では、値のペアは内部領域1に該当し、これは-30℃で最大1000Paおよび+25℃で100Paの値のペアを含有する。値ペアがこのエリア1に該当する潤滑剤は、偽ブリネリング損傷を防止するために「非常に良好」と分類される。
【0040】
-30℃で1000Paおよび+25℃で100Paのエリア制限を有するエリア1に加えて、図3は、-30℃で1750Paおよび+25℃で275Paのエリア制限を有する第2のエリア2を示す。値ペアがこのエリア2に該当する潤滑剤は、偽ブリネリング損傷を防止するために「良好」に分類される。図3に示す例では、9つの値ペアがこの条件を満たしている。
【0041】
図4は、-30℃で2500Paおよび+25℃で375Paのエリア制限を有する第3のエリア3を示す。値のペアがこのエリア3に該当する潤滑剤は、偽ブリネリング損傷を防止するために「依然として条件付きで好適」として分類される。示す例では、値の2つのペアがこの条件を満たす。
【0042】
図5は、第4のエリア4として、-30℃で2500Paおよび+25℃で375Paを超えるエリアを示す。値のペアがこの範囲に該当する潤滑剤は、偽ブリネリング損傷を防止するために「不十分」として分類される。示す例では、4つの値ペアがある。
【符号の説明】
【0043】
01 第1のエリア=「非常に良好」
02 第2のエリア=「良好」
03 第3のエリア=「依然として条件付きで好適」
04 第4のエリア=「不十分」
05~14→プロセスステップ
図1
図2
図3
図4
図5