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  • 特許-ポリマー三次元物体の表面仕上げ法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ポリマー三次元物体の表面仕上げ法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/30 20170101AFI20221212BHJP
   B29B 7/08 20060101ALI20221212BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20221212BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20221212BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20221212BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221212BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221212BHJP
【FI】
B29C64/30
B29B7/08
B29C64/106
B29C64/153
B29C64/295
B33Y10/00
B33Y30/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021549402
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2020054105
(87)【国際公開番号】W WO2020169532
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】19158560.3
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マイク グレーベ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ディークマン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ドミンゲス バプティスタ
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-229248(JP,A)
【文献】特開2017-100407(JP,A)
【文献】特開2018-083869(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/08
B29C 64/10,64/106,64/153,64/20,
64/295,64/30,64/40
B33Y 10/00,30/00,50/00,70/00,
80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーからアディティブ・マニュファクチャリング・プロセスで製造された三次元物体の表面仕上げ法であって、
a)前記三次元物体を材料混合物Aに浸漬するステップと、
b)前記三次元物体を前記材料混合物A中に滞留させるステップと、
c)前記材料混合物Aから前記三次元物体を取り出すステップと、
d)前記三次元物体を材料混合物Bに浸漬するステップと、
e)前記三次元物体を前記材料混合物B中に滞留させるステップと、
f)前記材料混合物Bから前記三次元物体を取り出すステップと
を含む方法において、前記材料混合物Aは、前記ポリマーの融点を上回る温度(プロセス温度A)を有し、前記材料混合物Bは、前記ポリマーの融点を下回る温度(プロセス温度B)を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記材料混合物Aは、前記プロセス温度Aで液体である少なくとも1つの材料を、前記材料混合物Aの総重量に対して少なくとも50重量%含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記材料混合物Aの密度は、前記三次元物体の前記ポリマーの密度から25%を上回って逸脱しないことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの液体材料は、材料混合物のさらなる液体成分と非混和性であり、ポリマーと液体材料との間の表面張力の差は、最大で10mN/mであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの液体材料は、前記三次元物体の少なくとも1つのポリマーと一致することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記ステップaからfまでを複数回行うことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ステップaの前に、前記三次元物体を0℃未満の温度に温度処理することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記材料混合物Bは、前記ポリマーの融点よりも少なくとも20℃低い温度を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記材料混合物Bは、前記プロセス温度Bで液体であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記材料混合物Bは、前記ポリマーの溶解度が10g/L未満である材料を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのポリマーからアディティブ・マニュファクチャリング・プロセスで製造された三次元物体の表面仕上げ装置であって、前記ポリマーの融点を上回る温度(プロセス温度A)を有する材料混合物Aを収容する容器A(1)と、前記ポリマーの融点を下回る温度(プロセス温度B)を有する材料混合物Bを収容する容器B(2)とを備え、さらに容器Aから容器Bへのベルトコンベアを備えた、装置。
【請求項12】
容器A内に撹拌装置(6)を備えた、請求項11記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのポリマーからアディティブ・マニュファクチャリング・プロセスで製造された三次元物体の表面仕上げに関する。さらに本発明は、表面仕上げ装置、および該方法により処理された成形体に関する。
【0002】
試作品や少量生産品を迅速に提供することは、近年頻繁に提起されている課題である。三次元物体の迅速な製造を可能にするプロセスは、ラピッドプロトタイピング、ラピッドマニュファクチャリング、アディティブファブリケーションプロセス、または3Dプリンティングと呼ばれている。ISO/ASTM 52900では、これらのプロセスはアディティブ・マニュファクチャリングにまとめられている。
【0003】
ストランドを何層にも重ねて三次元物体を製造するプロセスは、材料押出形成法という概念にまとめられている。材料押出形成法の一例として、FDM(Fused Deposition Modelling、熱溶解積層法)がある。このプロセスは、米国特許第5121329号明細書に詳細に記載されている。
【0004】
特に適しているのは、粉末状の材料を選択的に溶融および/または凝固させることで、所望の構造体を一層ずつ製造するプロセスである。この原理を利用したプロセスは、「Powder Bed Fusion(粉末床溶融結合法)」という上位概念でまとめられている。粉末床溶融結合技術には、特に、選択的加熱焼結(SHS)、選択的レーザー焼結(SLS)、選択的吸収焼結(SAS)、および選択的抑制焼結(SIS)が含まれる。レーザー焼結については、米国特許第6136948号明細書や国際公開第9606881号に詳細に記載されている。粉末床溶融結合プロセスのさらなる例は、米国特許第6531086号明細書および欧州特許第1740367号明細書(米国特許出願公開第2007/238056号明細書)に記載されている。独国特許第19747309号明細書(米国特許第6245281号明細書)には、粉末床溶融結合プロセスへの応用に好適な粉末が開示されている。
【0005】
上述のプロセスの欠点の1つに、これらのプロセスによって製造された物体が均一で平滑な表面を有しないことが挙げられる。多くの用途では、審美的または技術的な理由から、物体の表面が平滑であることが望ましいかまたは必要とされるため、上述のプロセスを用いて製造された物体は使用できない。
【0006】
表面をより平滑に(すなわち、粗さを少なく)するためには、様々な表面仕上げ法がある。表面仕上げのための一般的でシンプルな機械的方法は、例えば砂やガラスビーズなどの噴射材を用いたブラストである。しかし、この方法では表面の平滑化が不十分にしかできない。もう1つの機械的な方法は、振動仕上げまたはバレル仕上げである。この方法では平滑な表面が得られるが、内側の角の仕上がりが悪く、露出した角は過剰な仕上がりとなる。また、この方法ではデリケートな部材に損傷を与える危険性もある。
【0007】
米国特許出願公開第2005/0173838号明細書では、三次元物体の表面を平滑にするために、蒸気の溶媒が使用されている。この場合、三次元物体のすべての点で平滑化が達成されるが、ポリマー材料を溶解させる溶媒が必要である。しかし、最も一般的なポリマーを溶解させる溶媒は、腐食性を示すか、または少なくとも健康や環境に有害である。有機物の蒸気の場合には、さらに爆発の危険性も高くなる。
【0008】
米国特許出願公開第2017/327658号明細書には、表面仕上げ法が記載されている。この方法では、物体が濃縮された酸の中に入れられ、次いで加熱される。
【0009】
独国特許出願公開第102009047237号明細書には、3D印刷された造形体の支持材を溶解除去するための装置が記載されている。この装置は、造形体をすすぐことができるように、複数の液槽で構成されている。
【0010】
したがって、本発明の課題は、三次元物体の表面を平滑にする、あるいは表面の粗さを低減させる、簡便で低コストの表面仕上げ法を提供することであった。平滑になった表面は、可能な限り均一であることが望ましい。この方法では、有害物質や健康に害を及ぼす物質を使用しないことが望ましい。また、物体の破断時伸びが高められることが望ましい。
【0011】
驚くべきことに、この課題は、少なくとも1つのポリマーからアディティブ・マニュファクチャリング・プロセスで製造された三次元物体の表面仕上げ法によって解決された。本発明による方法は、
a)三次元物体を材料混合物Aに浸漬するステップと、
b)三次元物体を材料混合物A中に滞留させるステップと、
c)材料混合物Aから三次元物体を取り出すステップと、
d)三次元物体を材料混合物Bに浸漬するステップと、
e)三次元物体を材料混合物B中に滞留させるステップと、
f)材料混合物Bから三次元物体を取り出すステップと
を含む。
【0012】
材料混合物Aは、ポリマーの融点を上回る温度を有する。この温度をプロセス温度Aと呼ぶ。材料混合物Bは、ポリマーの融点を下回る温度を有する。これは、プロセス温度Bに相当する。三次元物体の製造時に複数のポリマーが使用される場合、特に断りのない限り、ポリマーの混合物には、前述の条件に加え、以下の条件も適用される。
【0013】
本発明による方法によって、粗さが低減された、あるいは表面の平滑性が向上して均一である成形体を提供することが可能となる。さらに、該成形体は、破断時伸びの向上を示す。
【0014】
アディティブ・マニュファクチャリング・プロセスにより得られる物体は、規格に準拠して層ごとに製造される。
【0015】
本願では、材料混合物には、材料混合物AあるいはBが単一の材料からなるという特殊なケースも含まれる。
【0016】
本方法の好ましい実施形態では、ステップa)の前に、三次元物体を0℃未満の温度に温度処理する。特に好ましくは、温度処理は-20℃未満であり、特に好ましくは-40℃未満である。これらの冷却条件は、完成した三次元物体が望ましい温度を有することが保証されるように選択しなければならない。
【0017】
材料混合物Aの好ましい材料は、少なくとも150g/molの分子量を有する。そのような化合物の例は、アルカン、アレーン、グリコールなどの多価アルコールを含むアルコール、シロキサン、スルホキシド、およびアルケンから選択される。
【0018】
材料混合物Aは、有利に、プロセス温度Aで液体である材料を、材料混合物Aの総重量に対して少なくとも50重量%含む。好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%の液体材料が含まれている。材料混合物の残りの割合は、プロセス温度Aで固体の形態で存在する。
【0019】
材料混合物Aの、プロセス温度Aで液体である材料は、互いに混和性であってもよいし(単一の均質な相の形成)、互いに非混和性であってもよい(複数の相の形成)。
【0020】
好ましくは、材料混合物Aの少なくとも1つの液体材料は、材料混合物Aの、存在し得るさらなる液体成分と非混和性である。この場合、1つの液体材料は、三次元物体のポリマー材料と良好な相容性または適合性を有するべきであり、すなわち、ポリマーと液体材料との間の表面張力の差は、最大で10mN/m、有利に最大で5mN/mである。非常に特に好ましくは、少なくとも1つの液体材料は、三次元物体のポリマーまたはポリマー混合物と一致する。
【0021】
さらなる液体成分は、有利に、該成分がCRC Handbook of Chemistry and Physics, 94th Editionにより三次元物体のポリマー材料を溶解しないかまたは低度にのみ溶解する(すなわち、ポリマーの溶解度が23℃で10g/L未満である)ように選択される。
【0022】
それぞれの表面張力の差は、液体材料と三次元物体のポリマーとの間の相容性および/または適合性の指標として考慮することができる(ペンダントドロップ法に従って測定され、本発明による方法のプロセス温度AでData Physics社製表面張力計OCA 20を用いて求められる)。
【0023】
少なくとも1つの液体材料は、三次元物体の表面に1つ以上の付加的な効果、例えば、色/色彩効果、電気伝導性、硬度、難燃性、耐薬品性/耐候性、摩擦特性、または触覚を生じさせることができる添加剤を含むことができる。
【0024】
本方法は、aからfの順に行われ、方法ステップaからcまで、あるいはdからfまでを複数回行うことができる。それにより、液体材料の複数の層を材料混合物に施与する、あるいは表面を複数回処理することができる。さらに、物体を異なる材料混合物Aに浸漬することで、それぞれ異なる特性を有する層を三次元物体に施与することができる。
【0025】
本方法の好ましい実施形態では、材料混合物Aの施与後に、成形体の表面を、120℃を上回る温度に加熱しない。同様に、材料混合物Bの施与後に、成形体の表面を、120℃を上回る温度に加熱しないことが好ましい。材料混合物の施与後に、表面の加熱を行わないことが特に好ましい。また、表面を冷却することもできる。
【0026】
材料混合物Aの温度は、三次元物体のポリマーに応じて選択される。複数の融点を有する材料では、主要な融点が材料混合物Aの温度に決定的な影響を与える。主要な融点とは、DSC曲線の中で最も高いピーク、つまり、さらに温度を上げるために最も高いエネルギーが必要となる温度のことである。
【0027】
本発明による方法では、材料混合物Aに対して、ポリマーの融点を上回る温度が選択される。好ましくは、材料混合物Aの温度は、ポリマーの融点よりも少なくとも10℃高く、特に好ましくは少なくとも20℃高く、非常に特に好ましくは少なくとも30℃高い。
【0028】
ここで、材料混合物Aの沸点は、有利に、ポリマーの融点よりも少なくとも20℃高く、好ましくは少なくとも30℃高く、非常に特に好ましくは少なくとも40℃高い。
【0029】
好ましくは、密度が三次元物体のポリマーの密度(いずれも23℃における密度)から25%を上回って逸脱しない材料混合物Aが選択される。特に好ましくは、密度が15%を上回って、非常に特に好ましくは5%を上回って逸脱しない材料混合物Aが選択される。
【0030】
本発明による方法では、三次元物体は、有利に、最大60秒間、好ましくは最大40秒間、特に好ましくは最大20秒間、非常に特に好ましくは最大10秒間、材料混合物AあるいはBに浸漬される。ステップが複数回行われる場合には、これらの時間のデータはそれぞれ、繰り返される個々のステップに関するものである。Aから取り出してBに浸漬するまでの時間間隔は、できるだけ短くすることが望ましい。例えば、この時間間隔は、1秒間~30秒間、有利に2秒間~10秒間である。
【0031】
本発明による方法では、材料混合物Bについて、三次元物体の融点を下回る温度が選択される。好ましくは、材料混合物Bの温度は、三次元物体の融点よりも少なくとも20℃低く、特に好ましくは少なくとも40℃低く、非常に特に好ましくは少なくとも80℃低い。
【0032】
材料混合物Bは、プロセス温度Bで液体であることが好ましい。
【0033】
好ましくは、材料混合物Bは、該混合物の個々の成分がCRC Handbook of Chemistry and Physics, 94th Editionにより三次元物体のポリマー材料を溶解しないかまたは低度にのみ溶解する(すなわち、ポリマーの溶解度が23℃で10g/L未満である)ように選択される。各成分は、ポリマーに対して化学的に不活性であることが望ましい。また、比較的高い比熱容量、すなわち少なくとも2kJ/(kg・K)、有利に少なくとも3kJ/(kg・K)、好ましくは少なくとも4kJ/(kg・K)の比熱容量を有することが望ましい。適切な材料混合物Bは、例えば、油または水であり、水が好ましい。
【0034】
材料混合物AおよびBで処理することにより、有利にpH中性の表面を有する成形体が得られる。この点で、当業者によりこれに応じて材料混合物AおよびBが選択される。ここで、材料混合物Bは、理想的には中性または(材料混合物Aが酸性である場合には)アルカリ性、あるいは(材料混合物Bがアルカリ性である場合には)酸性であることが望ましい。
【0035】
いずれの溶融/沸騰温度も、DSC(DIN 53765、Perkin Elmer社製DSC 7、昇温/冷却速度20K/分)で測定した常圧での値を示している。
【0036】
三次元物体の製造に適したポリマーは、例えば、ポリアミド、ポリアリールエーテルケトン、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、またはポリプロピレン、ポリエステルアミド、ポリ乳酸、ならびにアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体から選択される。好ましいのはポリアミドである。好ましいポリアミドは、例えば、ポリアミド11、ポリアミド12、またはポリアミド6.13である。
【0037】
本発明の他の対象は、本発明による方法によって三次元物体の表面を平滑化する装置であり、その装置を図1に示す。本装置は、材料混合物Aの収容に適した少なくとも1つの容器A(1)と、材料混合物Bの収容に適した容器B(2)とを備えている。本装置のさらなる構成要素は、容器A(1)内の材料混合物を加熱することができる加熱体(4)である。好ましくは、本装置は、容器A(1)の温度を調整できるように制御部(5)を備えている。容器A(1)は、有利に、材料混合物にせん断を導入するための撹拌装置(6)を備えている。本発明による装置の任意の構成要素は、格子状の容器(3)であり、これにより、三次元物体を容器A(1)および容器B(2)中のそれぞれの液体に浸漬し、再び取り出すことができる。
【0038】
本装置は、連続的な変形形態で実現される。この変形形態では、三次元物体は、ベルトコンベアによって容器Aに搬送され、そこから容器Bに搬送される。
【0039】
本発明のもう1つの対象は、アディティブ・マニュファクチャリング・プロセスによる成形体であって、本発明による方法により得られる成形体である。本発明の一実施形態では、材料混合物Aおよび/または材料混合物Bの施与後に、成形体の表面は、120℃を上回る温度に加熱されない。さらなる実施形態では、成形体は、pH中性の表面を有する。成形体は、有利に、ポリアミド、ポリアリールエーテルケトン、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、またはポリプロピレン、ポリエステルアミド、ポリ乳酸、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、およびそれらの混合物から選択されるポリマーを含む。好ましいのはポリアミドである。好ましいポリアミドは、例えば、ポリアミド11、ポリアミド12、またはポリアミド6.13である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明による方法によって三次元物体の表面を平滑化する装置を示す図。
【0041】
実施例
例1:サンドブラスト加工したSLS部材PA12(本発明によらない)
ポリアミド12(EOSINT PA2200)製のSLSにより製造した試験体(DIN EN ISO 527-1およびUL94に準拠)から、ガラスビーズブラストにより粉末残留物を除去する。
【0042】
例2:サンドブラスト加工したSLS部材PEA(本発明によらない)
ポリエステルアミドPEA(EOSINT Primepart ST)製のSLSにより製造した試験体(DIN EN ISO 527-1およびUL94に準拠)から、ガラスビーズブラストにより粉末残留物を除去する。
【0043】
例3:サンドブラスト加工したSLS部材PA613(本発明によらない)
PA613沈殿粉末製のSLSにより製造した試験体(DIN EN ISO 527-1およびUL94に準拠)から、ガラスビーズブラストにより粉末残留物を除去する。
【0044】
例4:未処理のFDM部材(本発明によらない)
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンABS製のFDMにより製造した試験体(DIN EN ISO 527-1およびUL94に準拠)から支持形状体を取り外し、洗浄する。
【0045】
例5:未処理のFDM部材(本発明によらない)
ポリ乳酸PLA製のFDMにより製造した試験体(DIN EN ISO 527-1およびUL94に準拠)から支持形状体を取り外し、洗浄する。
【0046】
例6:200℃で表面仕上げしたSLS部材PA12(本発明による)
例1のように製造して後仕上げした試験体を、さらに油浴(MARLOTHERM N)に205℃で20秒間浸漬する。その後、この試験体を取り出し、水浴(25℃)に10秒間浸漬する。
【0047】
例7:170℃で表面処理したSLS部材(本発明による)
例2のように製造して後仕上げした試験体を、さらにグリセリン浴に170℃で20秒間浸漬する。その後、この試験体を取り出し、水浴(25℃)に10秒間浸漬する。
【0048】
例8:230℃で表面処理したSLS部材(本発明による)
例3のように製造して後仕上げした試験体を、さらに油浴(MARLOTHERM N)に240℃で10秒間浸漬する。その後、この試験体を取り出し、水浴(25℃)に10秒間浸漬する。
【0049】
例9:120℃で表面処理したFDM部材(本発明による)
例4のように製造して後仕上げした試験体を、さらに1,2-プロパンジオール浴に150℃で20秒間浸漬する。その後、この試験体を取り出し、水浴(25℃)に10秒間浸漬する。
【0050】
例10:160℃で表面処理したFDM部材(本発明による)
例5のように製造して後仕上げした試験体を、さらにエチレングリコールの油浴に180℃で20秒間浸漬する。その後、この試験体を取り出し、水浴(25℃)に10秒間浸漬する。
【0051】
例11:200℃で表面処理したSLS部材PA12(本発明による)
例1のように製造して後仕上げした試験体を、冷却室で4時間かけて温度処理して-30℃にする。その後、この試験体をさらに材料混合物に200℃で20秒間浸漬する。この材料混合物は、80重量%の熱伝導オイル(MARLOTHERM N)と20%のポリアミド12(VESTAMID L1723 blk sw)で構成されている。材料混合物は、撹拌機によって常に混合されている。その後、この試験体を取り出し、水浴(25℃)に10秒間浸漬する。
【0052】
実施例12:190℃で表面処理したSLS部材PA12(本発明による)
例1のように製造して後仕上げした試験体/UL試験体を、冷却室で16時間かけて温度処理して-60℃にする。その後、この引張試験体/UL試験体をさらに材料混合物に190℃で40秒間浸漬する。この材料混合物は、80重量%の熱媒油(MARLOTHERM N)と20%のポリアミド12(VESTAMID X7166 nc)とからなる。この材料混合物を、撹拌機によって常に混合する。その後、この試験体を取り出し、水浴(25℃)に10秒間浸漬する。
【0053】
【表1】
【0054】
これらの試験体を、DIN EN ISO 527-1およびUL94に準拠して試験した。粗さの指標として、平均算術高さ(Sa)を用いた。Saは、Keyence社製マイクロスコープVHX6000を用いて試験体の下面で求めた。実施例試験の結果を表1に示す。本発明による方法により、三次元物体の粗さを大幅に低減できることがわかる。本発明による例では三次元物体の破断時伸びが大幅に向上し、他の機械的特性値は同レベルに保つことができた。例11では、さらに黒色の表面が得られた。例12では、難燃性の効果が得られた。
【0055】
このように、本発明による方法によって、三次元物体のより低い表面粗さを達成することができた。さらに、本発明による方法によって、色や難燃性などの付加的な効果を達成することができた。
図1