(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】マイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法
(51)【国際特許分類】
G01L 9/00 20060101AFI20221212BHJP
G01P 15/125 20060101ALI20221212BHJP
G01P 15/08 20060101ALI20221212BHJP
【FI】
G01L9/00 305C
G01P15/125 Z
G01P15/08 102A
(21)【出願番号】P 2021551752
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2020055145
(87)【国際公開番号】W WO2020178135
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】102019202794.6
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】テビェ,ラルス
(72)【発明者】
【氏名】ラインムート,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】クラッセン,ヨハネス
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0341616(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0035093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
G01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
おもて面(VS)および裏面(RS)を有する基板(S)であって、前記おもて面(VS)には、外部の加速度および/または回転を検出するための慣性構造(IE)を有する慣性センサ領域(SB1)と、外部の圧力(Pa)を検出するためのダイヤフラム領域(M)を有する圧力センサ領域(SB2)とが横方向に離間して形成されている、基板(S)と、
前記おもて面(VS)に設けられた第1のマイクロメカニカル機能層(P1)と、
前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)
上に設けられた第2のマイクロメカニカル機能層(P2)であって、前記第2のマイクロメカニカル機能層(P2)により、前記圧力センサ領域(SB2)に前記ダイヤフラム領域(M)が形成され、当該ダイヤフラム領域(M)が前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)から離間している、第2のマイクロメカニカル機能層(P2)と、
前記第2のマイクロメカニカル機能層(P2)
上に設けられた第3のマイクロメカニカル機能層(P3)であって、前記第2および/または第3のマイクロメカニカル機能層(P2、P3)から前記慣性構造(I
E)が形成されている、第3のマイクロメカニカル機能層(P3)と、
前記第3のマイクロメカニカル機能層(P3)にボンディングされ、前記慣性センサ領域(SB1)における第1のキャビティ(C1)に第1の所定基準圧力(PP1)を封入し、前記圧力センサ領域(SB2)における前記ダイヤフラム領域(M)に外圧(Pa)を印加するために第1のスルーホール(D1)を有するキャップデバイス(K)と
を備え、
前記ダイヤフラム領域(M)の下方に、第2のキャビティ(C2)が形成され、前記第2のキャビティ(C2)に第2の所定基準圧力(PP2)が封入されて
おり、
前記第1の所定基準圧力(PP1)と前記第2の所定基準圧力(PP2)とが同じになるように、前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)および/または前記第2のマイクロメカニカル機能層(P2)に、前記第1および第2のキャビティ(C1、C2)を流
体的に接続するための接続チャネル(DL)が形成されている、
マイクロメカニカルセンサ装置。
【請求項2】
前記キャップデバイス(K)は、前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)に電気的に接続されたボンディング接続領域(BO)を露出させる第2のスルーホール(D2)を有する、請求項
1に記載のマイクロメカニカルセンサ装置。
【請求項3】
前記ボンディング
接続領域(BO)は、前記第2および第3のマイクロメカニカル機能層(P2、P3)から形成されている、請求項
2に記載のマイクロメカニカルセンサ装置。
【請求項4】
前記第1および第2のマイクロメカニカル機能層(P1、P2)の間に第4のマイクロメカニカル機能層(P1a)が形成されており、前記ダイヤフラム領域(M)の下面に前記第2および第4のマイクロメカニカル機能層(P2、P1a)からスタンプ状の可動電極領域(ST)が形成されている、請求項1から
3のいずれか一項に記載のマイクロメカニカルセンサ装置。
【請求項5】
少なくとも前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)に、前記慣性センサ領域(SB1)および前記圧力センサ領域(SB2)に対してそれぞれの固定電極領域(SE1、SE2;SE1’、SE2’)が形成されている、請求項1から
4のいずれか一項に記載のマイクロメカニカルセンサ装置。
【請求項6】
おもて面(VS)と裏面(RS)を有する基板(S)を設けるステップであって、外部の加速度および/または回転を検出するための慣性構造(IE)を有する慣性センサ領域(SB1)と、外部の圧力(Pa)を検出するためのダイヤフラム領域(M)を有する圧力センサ領域(SB2)とが、前記おもて面(VS)に横方向に間隔を空けて形成されている、ステップと、
第1のマイクロメカニカル機能層(P1)を前記おもて面(VS)に設けてパターニングするステップと、
前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)
上に犠牲層(O2)を設けてパターニングするステップと、
前記パターニングされた犠牲層(O2)上に、第2のマイクロメカニカル機能層(P2)を設けるステップと、
形成されるべきダイヤフラム領域(M)の領域において、前記第2のマイクロメカニカル機能層(P2)上にエッチングストップ領域(AS)を形成するステップと、
前記第2のマイクロメカニカル機能層(P2)および前記エッチングストップ領域(AS)上に、第3のマイクロメカニカル機能層(P3)を堆積するステップと、
前記慣性構造(IE)が前記慣性センサ領域(SB1)に形成されるように、前記第2および/または前記第3のマイクロメカニカル機能層(P2、P3)をパターニングするステップと、
前記犠牲層(O2)を部分的に除去して、前記慣性構造(IE)の下面および当該形成されるべきダイヤフラム領域(M)の下面を露出させるステップと、
前記慣性センサ領域(SB1)において第1のキャビティ(C1)に第1の所
定基準圧力(PP1)を封入した前記第3のマイクロメカニカル機能層(P3)に対してキャップデバイス(K)をボンディングするステップと、
前記ダイヤフラム領域(M)に外部圧力(Pa)を印加するために、前記圧力センサ領域(SB2)のキャップデバイス(K)に第1のスルーホール(D1)を形成し、前記エッチングストップ領域で停止するトレンチエッチングプロセスで、前記圧力センサ領域(SB2)の前記第3のマイクロメカニカル機能層(P3)を除去することにより、前記圧力センサ領域(SB2)に前記ダイヤフラム領域(M)を形成するステップと
を備え、
前記ダイヤフラム領域(M)の下方には、第2の所
定基準圧力(PP2)が封入された第2の
キャビティ(C2)が形成されて
おり、
前記第1の所定基準圧力(PP1)と前記第2の所定基準圧力(PP1、PP2)とが同じになるように、前記第1および前記第2のキャビティ(C1、C2)を流体的に接続するための接続チャネル(DL)が、前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)および/または前記第2のマイクロメカニカル機能層(P2)に形成される、
マイクロメカニカルセンサ装置の製造方法。
【請求項7】
前記慣性構造(IE)の上方、および前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)に形成された第1のエッチングチャネル(E1)の上方に当該形成されるべきダイヤフラム領域(M)の下面と、前記慣性構造(IE)の下面とを露出させるために、前記犠牲層(O2)は単一のステップで除去される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記慣性構造(IE)の下面および当該形成されるべきダイヤフラム領域(M)の下面を露出させるために、前記犠牲層(O2)は2つのステップで除去され、第1のステップでは、当該形成されるべきダイヤフラム領域(M)の下面に前記第2のマイクロメカニカル機能層(P2)に形成されたエッチングチャネル(E2)の上方に前記エッチングストップ領域(AS)を形成する前に前記犠牲層(O2)を除去し、第2のステップでは、前記犠牲層(O2)を除去して前記慣性構造(IE)の上方に前記慣性構造(IE)の下面を露出させる、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記キャップデバイス(K)に、前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)に電気的に接続されたボンディング接続領域(BO)を露出させる第2のスルーホール(D2)が形成される、請求項
6から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ボンディング
接続領域(BO)は前記第2および第3のマイクロメカニカル機能層(P2、P3)から形成される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2のマイクロメカニカル機能層(P1、P2)の間に第4のマイクロメカニカル機能層(P1a)が形成され、前記ダイヤフラム領域(M)の下面に前記第2および第4のマイクロメカニカル機能層(P2、P1a)からスタンプ状の可動電極領域(ST)が形成される、請求項
6から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも前記第1のマイクロメカニカル機能層(P1)において、前記慣性センサ領域(SB1)および前記圧力センサ領域(SB2)にそれぞれの固定電極領域(SE1、SE2;SE1’、SE2’)が形成される、請求項
6から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ダイヤフラム領域(M)から前記エッチングストップ層(AS)が除去される、請求項
6から
11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
任意のマイクロメカニカル素子も適用可能であるが、シリコンベースの慣性センサを備えた素子を用いて、本発明とその課題について説明する。
【0003】
例えば、加速度、角速度、磁場、圧力などを測定するマイクロメカニカルセンサ装置は一般的に公知であり、自動車用および民生用領域における様々なアプリケーション向けに大量生産されている。民生用エレクトロニクスのトレンドは、特に素子の小型化、機能統合、および効果的なコスト削減である。
【0004】
現在、加速度センサと角速度センサ、さらに加速度センサと磁界センサがすでに複合センサ(6d)として製造されており、さらに、3軸の加速度センサ、角速度センサ、磁界センサを1つのセンサ装置に組み合わせた初の9dモジュールがある。
【0005】
また、マイクロメカニカル圧力センサ装置は、すでに、マイクロメカニカル慣性センサ装置と共に1つのパッケージに組み込まれているが、まだ別々のMEMSチップ上にあることが多く、1つのチップ上にすでに統合されている場合もある。慣性センサ装置と圧力センサ装置を統合するこのような提案は、例えば、DE 10 2006 011 545 A1(独国特許出願公開第102006011545号)やUS 2012/0256282 A1(米国特許出願公開第2012/0256282号)に開示されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の開示
本発明は、請求項1に記載のマイクロメカニカルセンサ装置と、請求項7に記載の対応する製造方法を提供するものである。
【0007】
好ましい改善構成は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0008】
本発明の利点
本発明に係るマイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法は、圧力センサ装置および慣性センサ装置の組み合わせを、適度な数のプロセスステップでコンパクトに統合することを可能にする。特に、本発明に係る製造方法は、媒体アクセスとしてのスルーホールを形成し、ダイヤフラム領域を目標の厚さまで薄くするために、共通の一貫したトレンチプロセスを使用することを特徴としている。
【0009】
好ましい改善構成によれば、第1および第2の基準圧力が同じになるように、第1および第2のキャビティを流体的に接続するための接続チャネルが、第1のマイクロメカニカル機能層および/または第2のマイクロメカニカル機能層に形成されている。これにより、共通の基準圧力で作業することが可能になり、製造が簡素化される。
【0010】
別の好ましい改善構成によれば、キャップデバイスは、第1のマイクロメカニカル機能層に電気的に接続されたボンディング接続領域を露出させる第2のスルーホールを有する。これにより、センサ装置を容易に電気的に接続することができる。
【0011】
別の好ましい改善構成によれば、ボンディング端子は、第2および第3のマイクロメカニカル機能層から形成される。これにより、ボンディング端子をさらなる機能部品と共に形成することができる。
【0012】
さらに好ましい改善構成によれば、第1および第2のマイクロメカニカル機能層の間に第4のマイクロメカニカル機能層が形成されており、ダイヤフラム領域の下面に第2および第4のマイクロメカニカル機能層からスタンプ状の可動電極領域が形成されている。これにより、圧力センサ領域の電気的感度が向上する。
【0013】
別の好ましい改善構成によれば、少なくとも第1のマイクロメカニカル機能層に、慣性センサ領域および圧力センサ領域にそれぞれの固定電極領域が形成されている。これにより、固定電極領域を容易に、かつ省スペースで実現することができる。
【0014】
本発明のさらなる特徴と利点を、図に関連した実施形態を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1a】本発明の第1の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置を説明する概略断面図であり、
図1aおよび
図1bは互いに異なる垂直断面を示す図である。
【
図1b】本発明の第1の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置を説明する概略断面図であり、
図1aおよび
図1bは互いに異なる垂直断面を示す図である。
【
図2a】本発明の第2の実施形態に係る
図1aおよび
図1bによるマイクロメカニカルセンサ装置の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図2b】本発明の第2の実施形態に係る
図1aおよび
図1bによるマイクロメカニカルセンサ装置の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図2c】本発明の第2の実施形態に係る
図1aおよび
図1bによるマイクロメカニカルセンサ装置の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図2d】本発明の第2の実施形態に係る
図1aおよび
図1bによるマイクロメカニカルセンサ装置の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図2e】本発明の第2の実施形態に係る
図1aおよび
図1bによるマイクロメカニカルセンサ装置の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図2f】本発明の第2の実施形態に係る
図1aおよび
図1bによるマイクロメカニカルセンサ装置の製造方法を説明する概略断面図である。
【
図3a】本発明の第3の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法を説明する概略断面図である。
【
図3b】本発明の第3の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法を説明する概略断面図である。
【
図3c】本発明の第3の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法を説明する概略断面図である。
【
図3d】本発明の第3の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法を説明する概略断面図である。
【
図3e】本発明の第3の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法を説明する概略断面図である。
【
図3f】本発明の第3の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法を説明する概略断面図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置を説明する概略断面図である。
【
図5】本発明の第1~第4の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置の例示的な製品パッケージを説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図中、同一の参照符号は、同一または機能的に同一の要素を示す。
【0017】
図1aおよび
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置を説明する概略断面図であり、
図1aおよび
図1bは異なる垂直断面を示しています。
【0018】
図1aおよび
図1bにおいて、参照符号Sは、おもて面VSと裏面RSを有する基板、例えば、シリコンウェハ基板を示す。
【0019】
おもて面VSには、例えば酸化シリコン層である第1の絶縁層О1と、例えば窒化シリコン層である第2の絶縁層Nとが設けられている。
【0020】
さらに、おもて面VSには、外部の加速度を検出するための慣性構造IEを有する慣性センサ領域SB1と、外部の圧力Paを検出するためのダイヤフラム領域Mを有する圧力センサ領域SB2とが横方向に離間して形成されている。
【0021】
特に、第2の絶縁層N上には、例えばポリシリコン層などの第1のマイクロメカニカル機能層P1が設けられている。第1のマイクロメカニカル機能層P1は、慣性センサ領域SB1と圧力センサ領域SB2にそれぞれ固定電極領域SE1、SE2を有する構造となっている。また、第1のマイクロメカニカル機能層P1は、以下でさらに説明するように、センサ装置の機能に寄与しないが、この第1の実施形態ではその製造に役割を果たす第1のエッチングチャネルE1を有する。このようなエッチングチャネルは、例えば、DE 10 2013 213 065 A1(独国特許出願公開第102013213065号)から公知である。
【0022】
例えば同様にポリシリコン層である第2のマイクロメカニカル機能層P2が、第1のマイクロメカニカル機能層P1上に形成されており、圧力センサ領域SB2においては、第1のマイクロメカニカル機能層P1から離間したダイヤフラム領域Mを形成するようなパターニングがなされている。第1および第2のマイクロメカニカル機能層P1、P2の間には、例えばシリコン酸化物層である第3の絶縁層О2が配置されている。この第3の絶縁層О2は、製造工程において犠牲層として機能する。
【0023】
第2の機械的機能層P2上には、第3のマイクロメカニカル機能層P3が設けられている。慣性構造IEは、第2および第3のマイクロメカニカル機能層P2、P3から、例え
ば1つまたは複数の櫛形電極領域の形態で形成される。
【0024】
第3のマイクロメカニカル機能層P3には、ボンディングフレームBRを用いて、例えばシリコンキャップウェハなどのキャップデバイスKがボンディングされている。キャップデバイスKは、第1のスルーホールD1を有し、この第1のスルーホールD1は、慣性センサ領域SB1において第1のキャビティC1に第1の所定基準圧力PP1を封入し、圧力センサ領域SB2においてダイヤフラム領域Mに外圧Paを印加するためのものである。
【0025】
さらに、ダイヤフラム領域Mの下方には、第2の所定基準圧力PP2が封入される第2のキャビティC2が形成されている。
【0026】
キャップデバイスKは、第2のスルーホールD2を有し、この第2のスルーホールD2は、慣性センサ領域SB1および圧力センサ領域SB2に隣接して配置され、第2および第3のマイクロメカニカル機能層P2、P3を介して第1のマイクロメカニカル機能層P1に電気的に接続されたボンディング接続領域BOを露出させるものである。
【0027】
ボンディング接続領域BOには、例えばアルミニウムからなるボンディングコンタクト領域BR1が設けられている。
【0028】
図1bは、
図1aの表示を別の垂直断面図で示すものであって、第1の実施形態では、第1の基準圧力PP1と第2の基準圧力PP2が同じになるように、すなわちPP1=PP2であるように、第1および第2のキャビティC1、C2を流体的に接続するための接続チャネルDLが、第1および第2のマイクロメカニカル機能層P1、P2に形成されていることを示すものである。
【0029】
さらに、接続チャネルDLは、犠牲層エッチング時にダイヤフラム領域Mを露出させて、ダイヤフラム領域Mの下方の犠牲層としての第3の絶縁層О2に対してエッチング液、例えばガス状のHFガスを誘導する役割を果たす。
【0030】
これにより、センサ装置の基準圧力PP1=PP2を、ウェハボンディング時に設定されたキャビティ圧力によって定めることができる。一般的に、非常に低い基準圧力は、加速度/角速度センサの動作にも必要であるので、圧力センサ装置にとって特に有利である。
【0031】
代替的に、ウェハボンディング時にキャビティC1、C2内の圧力を設定せず、この場合、ウェハボンディング後にキャップ方向Kに開口部を形成し、所望の基準圧力を設定した後、開口部をレーザで閉鎖するという、いわゆるレーザリシールによって圧力を定めることも可能です。
【0032】
図2a~
図2fは、本発明の第2の実施形態に係る
図1aおよび
図1bによるマイクロメカニカルセンサ装置の製造方法を説明する概略断面図である。
【0033】
図2aによると、まず、基板Sのおもて面側VSに、酸化シリコンからなる第1の絶縁層О1と窒化シリコンからなる第2の絶縁層Nを堆積する。続いて、ポリシリコンからなる第1のマイクロメカニカル機能層P1の堆積とパターニングが行われる。パターニングは、2段階のエッチングプロセスで行われる。まず、DRIE(深堀りRIE:Deep Reactive Ion Etching)を用いて短いトレンチエッチングを行い、垂直方向に小さいトレンチを形成し、続いて短い等方性エッチングを行って、例えばDE 10 2013 213 065 A1(独国特許出願公開第102013213065号)に詳細が記載されているように、第1のマイクロメカニカル機能層P1内に略円形の断面プロファイルを有するエッチングチャネルE1を設ける。
【0034】
続いて、酸化シリコンからなる第3の絶縁層О2を堆積してパターニングし、後の方法ステップで犠牲層として部分的に除去する。第3の絶縁層О2の堆積時に、第1のマイクロメカニカル機能層P1のエッチングチャネルE1の小さな上部開口部が完全に閉鎖される。しかし、エッチングチャネルE1は、部分的にしか充填されていないため、犠牲層として第3の絶縁層О2をエッチングするためのエッチングガス、例えばHFガスに対して、その長手方向の透過性を維持している。
図2aでは、表示面内に延在して円形断面を持つエッチングチャネルE1と、図面に対して左方から右方へ平行に延在するエッチングチャネルが示されている。
【0035】
さらに、
図2bを参照すると、第2のマイクロメカニカル機能層P2およびエッチングストップ層AS、例えば同様にシリコン酸化物層、または代替的にシリコン酸窒化物層を組み合わせた層、の堆積およびパターニングが行われる。エッチングストップ層ASは、後に形成されるべきダイヤフラム領域Mの上方の領域に残るようにパターニングされる。
【0036】
続いて、
図2cに示すように、ポリシリコンからなる第3のマイクロメカニカル機能層P3を、第2のマイクロメカニカル機能層P2およびエッチングストップ層AS上に堆積し、パターニングする。本実施形態では、第3のマイクロメカニカル機能層P3の厚さは、第1および第2のマイクロメカニカル機能層P1、P2の厚さよりも実質的に大きい。
【0037】
続いて、第3のマイクロメカニカル機能層P3上に、アルミニウムからなるボンディングコンタクト領域BR1を堆積し、パターニングする。続いて、第3の絶縁層О2または犠牲層上で停止するトレンチエッチングにより、慣性センサ領域SB1に慣性構造IEが形成される。ここで、第3のマイクロメカニカル機能層P3は、後に形成されるべきダイヤフラム領域Mの領域でマスキングされており、すなわち、まだエッチングされていない。このことは、慣性センサ領域SB1のトレンチエッチングでは、慣性構造IEに非常に狭いトレンチを開口する必要があるために、有利である。
【0038】
仮に、ダイヤフラム領域Mの第3のマイクロメカニカル機能層P3が同じプロセスステップですでに除去されていた場合、慣性センサ領域SB1の非常に狭いトレンチと、圧力センサ領域SB2の大きな領域またはトレンチを同時に形成する必要がある。このことは、一般に広い面積やトレンチは、狭いトレンチよりも速くエッチングされるため(いわゆるARDE効果、Aspect Ratio Dependent Etching)、エッチングプロセスの均質性に関して重要である。狭いトレンチであっても、表面全体に確実に開口する必要があるため、大きな開口部では横方向に強いエッチングが行われることがあり、典型的にはエッチングストップ層ASとの界面において特に強く発生することが多い。この効果はノッチングとも呼ばれている。本例では、ノッチング加工により、ダイヤフラム領域Mの横方向の寸法が十分に定められず、ひいては、基板S上または基板間でのセンサ素子の感度のばらつきが生じる可能性がある。また、オーバーエッチングが大きい場合には、第2のマイクロメカニカル機能層P2上のエッチングストップ層ASによるパッシベーションが強いアタックを受けたり、あるいはそれどころか完全に損傷を受けたりする可能性があり、ダイヤフラム領域Mの第2のマイクロメカニカル機能層に対する意図しないエッチング・アタックが行われる危険性がある。
【0039】
図2dは、犠牲層О2を部分的に除去した後の状態を示しており、この除去は、好ましくは、犠牲層の慣性構造IEの間隙およびエッチングチャネルE1に広がるHFガスを用いて行われる。ここで、犠牲層О2は、慣性構造I
Eの領域と、形成されるべきダイヤフラム領域Mの下方の領域の両方で除去される。したがって、慣性構造I
Eは露出しており移動可能である。これに対し、ダイヤフラム領域Mは、第2および第3のマイクロメカニカル機能層P2、P3の全体的な剛性が非常に高いため、まだほとんど動かない。
【0040】
さらに、
図2dを参照すると、キャップデバイスKは、例えばシリコンキャップウェハの形態で設けられている。キャップデバイスKのボンディングコンタクト領域BR2は、例えば、ボンディングコンタクト領域BR2と接続される、第3のマイクロメカニカル機能層P3上のボンディングコンタクト領域BR1に対向するゲルマニウム領域によって実現される。これにより、アルミニウムからなるボンディングコンタクト領域BR1とゲルマニウムからなるボンディングコンタクト領域BR2との間で共晶ボンディングが可能となり、ボンディングフレームBRが形成される。
【0041】
当然ながら、ボンディングコンタクト領域BR1をゲルマニウムで形成し、ボンディングコンタクト領域BR2をアルミニウムで形成することも可能である。
【0042】
また、例えばガラスフリット、銅-錫、金-シリコンなどの他の金属ボンディング方法、またはダイレクトボンディングも代替的に可能である。
【0043】
図2eは、キャップデバイスKと第3のマイクロメカニカル機能層P3との間のボンディングフレームBRを介したボンディングを行った後の状態を示す。慣性センサ領域SBの第1のキャビティC1内の基準圧力PP1は、まだ完成していないダイヤフラム領域Mの下方の第2のキャビティC2内の第2の基準圧力PP2と等しい。
【0044】
本実施例では、この共通基準圧力PP1=PP2をボンディング時にすぐ設定する。すでに上述したように、さらに低い基準圧力や、基板S全体で特に均一な基準圧力を設定するために、このプロセス段階で、例えば、レーザリシール処理を実行することも可能である。しかし、そのためには、基板S上にある全ての部品の全てのキャビティC1を開口する必要がある。
【0045】
図2fに示すように、次のプロセスステップは、キャップデバイスKのトレンチエッチングステップである。このトレンチエッチングステップによって、その上にあるボンディングフレーム領域BR1を有するボンディング接続領域BOが、スルーホールD2を介して露出すると同時に圧力センサ領域SB2の媒体アクセス用スルーホールD1も形成される。さらに、このエッチングステップでは、第3のマイクロメカニカル機能層P3がエッチングストップ領域ASの上方で除去され、エッチングストップ領域ASは、トレンチエッチングプロセスのためのエッチングストップとして機能する。
【0046】
任意のプロセスステップ(図示せず)にて、エッチングストップ領域ASをダイヤフラム領域Mから除去してもよい。残りのエッチングストップ層の種類と厚さによって、ダイヤフラム領域Mの応力バランスを場合によって最適化することができ、それも特に、温度変化に伴うダイヤフラム領域Mのたわみの変化に関して最適化することができる。
【0047】
図3a~
図3fは、本発明の第3の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置とこれに対応する製造方法を説明する概略断面図である。
【0048】
第3の実施形態では、
図3aによれば、第1のマイクロメカニカル機能層P1にはエッチングトレンチが設けられておらず、電極領域を生成する部分がトレンチ化されているのみである。第2のマイクロメカニカル機能層P2は、形成されるべきダイヤフラム領域に微細なエッチングトレンチE2でパターニングされる。
【0049】
続いて、
図3bを参照すると、その下に位置する第3の絶縁層О2を犠牲層として除去することにより、形成すべきダイヤフラム領域Mを露出させる第1の犠牲エッチングステップを行う。続いて、ダイヤフラム領域MにおけるエッチングトレンチE2の微細なトレンチ開口部は、ダイヤフラム領域Mにおいて第1の実施形態における類似したエッチングストップ層を介して閉鎖され、
図3cに示すように、形成されるべきダイヤフラム領域Mには、再びエッチングストップ層ASが残される。
【0050】
図3dは、第3のマイクロメカニカル機能層P3の堆積とパターニング、およびアルミニウムからなるボンディングコンタクト領域BR1の堆積とパターニングを行った後の状態を示すものである。
【0051】
図3eによると、さらなる犠牲エッチングステップでは、下に位置する第3の絶縁層О2を除去することにより、慣性構造IEも露出する。続いて、先の実施形態に関連してすでに説明したように、キャップデバイスKをボンディングのために設け、続いて共通トレンチエッチングステップを行って、ボンディングコンタクト領域BOを露出させ、スルーホールD1、D2を形成する。
【0052】
本実施形態では、第2キャビティC2内の第2基準圧力PP2は、第1キャビティC2内に第1基準圧力PP1が設定されるキャッピング装置Kのボンディングステップではなく、エッチングストップ領域ASによってエッチングチャネルE2が閉鎖されるステップで設定される。したがって、基準圧力PP1とPP2は異なるように設定することができる。
【0053】
当然ながら、本実施形態においても、基準圧PP1、PP2を調整するための接続チャネルを設けることは当然代替的に可能である。
【0054】
図4は、本発明の第4の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置を説明する概略断面図である。
【0055】
第4の実施形態では、上述した実施形態とは異なり、第1および第2のマイクロメカニカル機能層P1、P2の間に、例えばポリシリコンからなる第4のマイクロメカニカル機能層P1aが形成されている。第4の実施形態では、ダイヤフラム領域Mの下面に、第2および第4のマイクロメカニカル機能層P2、P1Aのスタンプ状の可動電極領域STを形成することにより、ダイヤフラム領域Mを中央領域で剛性化している。このように、電極領域STは、圧力が変化すると、第1のマイクロメカニカル機能層P1の下に位置する固定電極SE2’に向かって、略平面平行板のように移動することができる。これにより、センサ装置の圧力センサ領域SB2の電気的な感度を特に高くすることができる。
【0056】
慣性センサ領域SB1の固定電極SE1’も同様に、第1および第4のマイクロメカニカル機能層P1、P4から生成されている。
【0057】
有利には、この実施形態では、マイクロメカニカル機能層P2,P3間および/またはマイクロメカニカル機能層P3,P1Aの間の距離によって定められる慣性センサ領域SBの有用なギャップとは無関係に、第1および第2のマイクロメカニカル機能層P1、P2の間の犠牲層の厚さによって有用なギャップを定めることができる。このように、圧力センサ領域SB2と慣性センサ領域の機械的および電気的な特性を個別に最適化することが、特に効果的に可能である。
【0058】
図5は、本発明の第1~第4の実施形態に係るマイクロメカニカルセンサ装置の例示的な製品パッケージを説明する概略断面図である。
【0059】
図5の例では、既に上述したセンサ装置の一つであるセンサ装置SVが、ASICチップASC上に配置され、ワイヤボンディングB1を介してASICチップASCと電気的に接続されている。ASICチップASCの外部電気接点は、ワイヤボンディングB2を介してベアリングプレート基板LPに案内される。続いて、モールドパッケージMOを生成するために構成体の成形プロセスを行い、チップはモールド材MOで横方向に充填されるが、センサ装置SVの上面は、特に圧力センサ領域のための第1のスルーホールの領域において、媒体アクセス用に変更可能である。必要に応じて、第1のスルーホールD1の領域におけるダイヤフラム領域Mのさらなるゲル化(図示せず)を行って、媒体および湿気に対するセンサ装置のロバスト性を向上させてもよい。製品パッケージは、LGA(Land Grid Array)として実現されるか、または
図5に示すように、はんだ領域Lを有するBGA(Ball Grid Array)として実現される場合がある。
【0060】
本発明を好ましい実施例を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。特に、上記の材料や幾何学的形状は例示的なものであり、説明されている例に限定されない。