(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-09
(45)【発行日】2022-12-19
(54)【発明の名称】ロータリーダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 7/06 20060101AFI20221212BHJP
【FI】
F16F7/06
(21)【出願番号】P 2022088512
(22)【出願日】2022-05-31
【審査請求日】2022-06-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】藤川 知寿
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-316912(JP,A)
【文献】特開2013-053635(JP,A)
【文献】特開平11-082586(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101520078(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0265729(US,A1)
【文献】実開昭58-134571(JP,U)
【文献】米国特許第01025388(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00-11/12
F16F 7/00- 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄螺条が形成された雄部材と、前記雄螺条と螺合する雌螺条が形成された雌部材と、前記雄部材及び前記雌部材の間に介在して前記雄部材及び前記雌部材を付勢する
皿ばねとを具備し、
前記雄部材が前記雌部材に対して螺進することで、前記
皿ばねは圧縮せしめられ、前記雄部材が前記雌部材に対して回転する際の抵抗トルクが漸次増大するロータリーダンパーにおいて、
前記雌部材において前記雌螺条が形成された穴には底壁が設けられており、前記
皿ばねは前記穴に収容されて前記底壁によって支持され
、
前記穴には前記底壁によって支持される円環形状の補助リングも収容されており、前記皿ばねは前記補助リングの内側に配置されてこれによって支持される、ことを特徴とするロータリーダンパー。
【請求項2】
前記雄部材及び前記底壁には夫々、前記雄螺条及び前記雌螺条の中心軸上で軸方向に貫通する貫通穴が形成されている、請求項
1に記載のロータリーダンパー。
【請求項3】
前記雄部材の内径は前記皿ばねの内径よりも小さい、請求項
2に記載のロータリーダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機のカバーや炊飯器の蓋等の旋回部材はヒンジ手段を介して本体部に取り付けられ、本体部に対しヒンジ手段を旋回中心として、本体部の上面を覆う閉位置と上面を露呈させる開位置との間で往復旋回自在である。旋回部材が複写機のカバー等の場合、旋回部材は本体部に対して手動で操作される。そのため、旋回部材が開位置から閉位置まで旋回する際には、旋回部材は重力によって加速しながら(つまり付勢されて)旋回する。一方、旋回部材が炊飯器の蓋等の場合、旋回部材は任意の付勢手段によって付勢された状態で閉位置に保持され、適宜の操作によって上記保持が解除されると、旋回部材は付勢されて閉位置から開位置へ旋回する。付勢されて旋回する旋回部材は閉位置又は開位置にて本体部と激しく衝突して損傷する虞があることから、かような衝突を回避するためにロータリーダンパーが用いられることがある。
【0003】
ロータリーダンパーの一例として、下記特許文献1には、雄螺条が形成された雄部材と、前記雄螺条と螺合する雌螺条が形成された雌部材と、前記雄部材及び前記雌部材の間に介在して前記雄部材及び前記雌部材を付勢する弾性部材とを具備し、前記雄部材が前記雌部材に対して螺進することで、前記弾性部材は圧縮せしめられ、前記雄部材が前記雌部材に対して回転する際の抵抗トルクが漸次増大するロータリーダンパーが開示されている。かようなダンパーは揺動ダンパー又はダンパーヒンジと称されることもある。上述したロータリーダンパーにおいて、雄部材及び雌部材のいずれか一方を旋回部材に、いずれか他方を本体部に夫々連結すれば、付勢されて旋回する旋回部材が閉位置又は開位置にて本体部と激しく衝突することは回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上記特許文献1に開示されたロータリーダンパーにあっては、弾性部材である皿ばねは雄部材に形成された雄螺条の外周面を囲繞した状態で雄部材と雌部材との間に配設されている、つまり弾性部材は雌部材において雌螺条が形成された穴の外側に配設されていることに起因して、弾性部材と雄部材又は雌部材との間にごみや塵等の異物が侵入し、安定的な動作が困難、又は使用寿命が低下する等の虞がある。また、弾性部材によって付勢された雄部材及び雌部材の間で生じる軸方向の力は全て雄螺条及び雌螺条に作用するところ、雄螺条及び雌螺条のねじ径は皿ばねの内径よりも小さく設定されることから雄螺条及び雌螺条の径は小さく、雄螺条及び雌螺条が受ける上記力の単位面積当たりの大きさは大きくなってしまう。そのため、抵抗トルクを増大せしめるべく弾性部材による付勢を強めた場合には、上記力によって雄螺条及び雌螺条が損傷してしまう虞もある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、弾性部材と雄部材及び雌部材との間に異物が侵入することが可及的に防止されることで安定的に動作して且つ長寿命であり、更に比較的大きな抵抗トルクをも設定可能な、新規且つ改良されたロータリーダンパーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、雌螺条が形成された穴に底壁を設け、弾性部材が穴に収容されて底壁に支持されるように構成することで、上記主たる技術的課題を解決できることを見出した。
【0008】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決するロータリーダンパーとして、雄螺条が形成された雄部材と、前記雄螺条と螺合する雌螺条が形成された雌部材と、前記雄部材及び前記雌部材の間に介在して前記雄部材及び前記雌部材を付勢する皿ばねとを具備し、
前記雄部材が前記雌部材に対して螺進することで、前記皿ばねは圧縮せしめられ、前記雄部材が前記雌部材に対して回転する際の抵抗トルクが漸次増大するロータリーダンパーにおいて、
前記雌部材において前記雌螺条が形成された穴には底壁が設けられており、前記皿ばねは前記穴に収容されて前記底壁によって支持され、
前記穴には前記底壁によって支持される円環形状の補助リングも収容されており、前記皿ばねは前記補助リングの内側に配置されてこれによって支持される、ことを特徴とするロータリーダンパーが提供される。
【0009】
好ましくは、前記雄部材及び前記底壁には夫々、前記雄螺条及び前記雌螺条の中心軸上で軸方向に貫通する貫通穴が形成されている。前記雄部材の内径は前記皿ばねの内径よりも小さいのが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のロータリーダンパーにあっては、弾性部材は雌螺条が形成された穴に収容されることから、弾性部材と雄部材及び雌部材との間に異物が侵入することが可及的に防止され、動作の安定性が良好となり使用寿命も延びる。更に、雄螺条及び雌螺条のねじ径は皿ばねの外径以上となるため、雄螺条及び雌螺条が受ける軸方向の力(弾性部材によって付勢された雄部材及び雌部材の間で生じる軸方向の力)の単位面積当たりの大きさを小さくすることができる。これにより、抵抗トルクを大きく設定するために弾性部材による付勢を強めても、上記力によって雄螺条及び雌螺条が損傷することは防止されるため、大きな抵抗トルクをも設定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成された好適実施形態のロータリーダンパーの正面図。
【
図4】
図1に示すロータリーダンパーのA-A線断面図。
【
図5】
図1に示すロータリーダンパーを構成する各部品の分解斜視図。
【
図6】
図1に示すロータリーダンパーにおいて雄部材が雌部材に対して螺進した状態のA-A線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成されたロータリーダンパーの好適実施形態を示す添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0013】
図1乃至
図5を参照して説明すると、全体を番号2で示すロータリーダンパーは、雄部材4と、雌部材6と、弾性部材8とを具備する。
【0014】
雄部材4は所要軸方向長さを有し、外周面には軸方向に向かって螺旋状に延びる雄螺条10が形成されている。雄螺条10は右螺子であって雄部材4の外周面全体に亘って存在する。図示の実施形態においては、雄部材4には雄螺条10の中心軸上で軸方向に貫通する断面円形の貫通穴12が形成されている。雄部材4の軸方向片側面の径方向中間部には、軸方向他側に向かって軸方向に延びる円形で有底の接続穴14が周方向に等角度間隔をおいて4つ形成されている。この接続穴14を介して雄部材4は図示しない旋回部材に連結せしめられてこれと一体的に回転する。
【0015】
図示の実施形態においては、雌部材6は円筒形状であり、内周面には雄部材4の雄螺条10と螺合する雌螺条16が形成されている。雌螺条16が形成された穴(この穴を「ねじ穴」と称して番号18で示す。
図5を参照されたい。)には底壁20が設けられている。図示の実施形態においては、底壁20は軸方向に対して垂直であって、雌部材6の軸方向片側端に設けられている。底壁20の中心には軸方向に貫通する円形の貫通穴22が形成されている。雌部材6の外周面には軸方向に直線状に延びる断面弧状の凹溝24が周方向に等角度間隔をおいて3つ形成されている。この凹溝24を介して雌部材6は図示しない壁等の本体部に固定される。
【0016】
弾性部材8は雄部材4及び雌部材6の間に介在して雄部材4及び雌部材6を付勢する。本発明のロータリーダンパーにおいては、弾性部材8が雌部材6において雌螺条16が形成された穴(つまりねじ穴18)に収容されて底壁20によって支持されることが重要である。
弾性部材8は皿ばねであって(以下では、皿ばねを番号8で示す)、複数(図示の実施形態においては4つ)の皿ばね8が軸方向に積層して配置されている。
図4を参照することによって理解されるとおり、皿ばね8は何らの力も付与されていない自由状態においては円錐台形状をしており、裾側が底壁20によって軸方向に支持される。皿ばね8の内径は雄部材4の内径(つまり貫通穴12の径)よりも大きい。
ねじ穴18には底壁20によって支持される円環形状の補助リング26も収容されており、皿ばね8は補助リング26の内側に配置される。補助リング26の軸方向幅は、軸方向に積層された複数の皿ばね8の各々の板厚の合計と略同一である。これにより、皿ばね8は雌螺条16ではなく補助リング26によって径方向から支持されるため、皿ばね8がねじ穴18内で倒れることが防止される。皿ばね8及び補助リング26が所要とおりにねじ穴18に配置された後に、雄部材4の雄螺条10が雌部材6の雌螺条16に螺合せしめられる。これにより、皿ばね8及び補助リング26は雄部材4の軸方向端面と雌部材6の底壁20との間の閉空間に配置される。
【0017】
次に、
図4と共に
図6を参照してロータリーダンパー2の作動について説明する。
図4に示す状態から、雄部材4が雌部材6に対して時計方向(
図4の左側から見て)に回転すると、雄部材4は雌部材6に対して螺進する。つまり雄部材4の雄螺条10と雌部材6の雌螺条16との螺合によって、雄部材4は雌部材6に対して紙面上右方向に進行する。そうすると、
図4と
図6とを比較参照することによって理解されるとおり、雄部材4の軸方向端面と雌部材6の底壁20との間の閉空間の軸方向距離が漸次低減せしめられ、雄部材4の軸方向端面が皿ばね8を軸方向に押圧してこれを圧縮する。つまり、雄部材4は皿ばね8による付勢に抗して進行する。このとき、雄部材4が進行するに従って弾性体である皿ばね8の変位量は漸次増大することから、フックの法則により、雄部材4が皿ばね8から受ける抵抗も漸次増大する。これにより、雄部材4が雌部材6に対して回転する際の抵抗トルクが漸次増大する。
【0018】
本発明のロータリーダンパーにあっては、皿ばね8(弾性部材)は雌螺条16が形成されたねじ穴18に収容されることから、皿ばね8(弾性部材)と雄部材4及び雌部材6との間に異物が侵入することが可及的に防止され、動作の安定性が良好となり使用寿命も延びる。更に、雄螺条10及び雌螺条16のねじ径は皿ばね8(弾性部材)の外径以上となるため、雄螺条10及び雌螺条16が受ける軸方向の力(図示の実施形態では皿ばね8である弾性部材によって付勢された雄部材4及び雌部材6の間で生じる軸方向の力)の単位面積当たりの大きさを小さくする、換言すれば上記力を分散する、ことができる。これにより、抵抗トルクを大きく設定するために皿ばね8(弾性部材)による付勢を強めても、上記力によって雄螺条10及び雌螺条16が損傷することは防止されるため、大きな抵抗トルクをも設定可能となる。図示の実施形態においては、雄部材4及び底壁20には夫々、雄螺条10及び雌螺条16の中心軸上で軸方向に貫通する貫通穴12、22が形成されていることから、所要用途によっては貫通穴12、22に配線を通すことができる。なお、貫通穴12、22を閉塞すれば、皿ばね8(弾性部材)と雄部材4及び雌部材6との間に異物が侵入することをより一層効果的に防止することができる。
【0019】
以上、本発明に従って構成されたロータリーダンパーについて添付した図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。例えば、図示の実施形態においては、弾性部材である皿ばねは軸方向に積層して複数配置されていたが、皿ばねは単一であってもよい。また皿ばねの材質も金属製に限定されず合成樹脂製であってもよい。雄部材及び雌部材も任意の材質で良い。
【符号の説明】
【0020】
2:ロータリーダンパー
4:雄部材
6:雌部材
8:弾性部材
10:雄螺条
16:雌螺条
18:(ねじ)穴
20:底壁
26:補助リング
【要約】
【課題】弾性部材と雄部材及び雌部材との間に異物が侵入することが可及的に防止されることで安定的に動作して且つ長寿命であり、更に比較的大きな抵抗トルクをも設定可能な、新規のロータリーダンパーを提供すること。
【解決手段】雌螺条16が形成された穴18に底壁20を設け、弾性部材8が穴18に収容されて底壁20に支持されるように構成する。
【選択図】
図4