(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】洗濯バサミ
(51)【国際特許分類】
D06F 55/00 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
D06F55/00 D
(21)【出願番号】P 2018135383
(22)【出願日】2018-06-30
【審査請求日】2021-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】304049857
【氏名又は名称】今瀬 満
(72)【発明者】
【氏名】今瀬 満
(72)【発明者】
【氏名】安江 章一
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】実公昭08-009720(JP,Y1)
【文献】実公昭25-003468(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第058983(JP,Z1)
【文献】特開平08-099496(JP,A)
【文献】実開昭50-107215(JP,U)
【文献】実開平04-009782(JP,U)
【文献】特開2006-311925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本の線条材を任意形状に曲げ加工することにより形成される洗濯バサミであって、
洗濯物を挟むための略台形形状の把持部を備えており、
前記把持部が互いに前後方向にずれて噛み合うように嵌合する形状を備えていることを特徴とする洗濯バサミ。
【請求項2】
前記把持部の一方又は両方に可撓性を備えた部材を設置することを特徴とする請求項1に記載の洗濯バサミ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物干しハンガー等に使用されている、或いは、単独で使用する金属製(主にステンレス製)洗濯バサミに関する。さらに言えば、洗濯物を挟むために洗濯物を挟む先端部を開く操作の際、少しの力で摘まんで先端をしっかり開くことができ、種々の洗濯物(薄手の物から厚手の物及び軽い物から重い物)をしっかり保持でき、乾いた洗濯物を取り外す際、少しの力で簡単に洗濯物を取り外すことができる、より軽量化を目指した洗濯バサミに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的に市場に出回り消費者に使用されている金属製(主にステンレス製)洗濯バサミや物干しハンガーは、ステンレス製である事から、丈夫で長持ちする洗濯用の道具として長年多くの消費者に支持され愛用されている。しかしながら、従来の洗濯バサミは、洗濯物を挟んだり、取り外すために洗濯物を挟む動作、すなわち先端部を開く操作の際、非常に固く指先に多くの力が必要で、製品登場の頃から第一種テコの原理を利用した構造で、更に、洗濯物を挟む先端部分が大きく開かないので、使用者の指先に負担が掛かり使い難い製品も少なくない。
【0003】
この理由は、
図1に記載したように、従来のステンレス製洗濯バサミの構造上、洗濯物を挟む部分が線接触で摩擦抵抗が非常に少なく(
図1:「B従来品の採用している把持部形状の問題」参照)、挟む部分の摩擦抵抗が少ない分、挟む力を洗濯バサミのバネ力が大きくなるように設計されているためである。また、バネ力を大きくしたことで、開く操作の際、洗濯バサミ自身が大きく変形し撓まないようにするために、ステンレス材の線径を太く設定しているので、結果洗濯バサミ重量が重くなっている。元来の設計が第一テコの原理を採用しているため(
図1参照)、洗濯バサミの変形撓み(
図1:「C第一テコの原理を応用した従来品洗濯バサミの問題点」参照)は、従来の(ステンレス材の線径の)太さでも回避出来ず、その結果、洗濯バサミを力一杯摘んでも先端部は撓みの影響でしっかり開かない事も使いづらい現象に拍車を掛けている。
【0004】
従来の複数の洗濯物を干す洗濯物干しハンガー(
図4(h)参照)のように、複数の洗濯バサミが取り付けられている製品は、物干しハンガー本体枠もステンレス製品が多く、複数の洗濯バサミを取り付けた製品重量が非常に重くなり、物干しハンガーのみならず洗濯物を取り付けた状態での持ち運び移動は、使用者の肉体的負担が強いられている。即ち、従来品への使用者の悩みは、洗濯バサミを開く際、指先に掛ける力が必要であり、洗濯バサミが大きく開かない、洗濯バサミ、及び洗濯物干しハンガーが重い等、切実なものである。
【0005】
ステンレス製洗濯バサミや物干しハンガーは、錆びにくく丈夫で長持ちし、リサイクル可能で廃棄ゴミの減量という点で、環境に配慮され使用者に支持された優良な製品である事は誰もが認める事実であるものの、今後迎えるであろう高齢化社会の高齢者の使用においては(非力な生活弱者にとって)優しくベストな利便性を兼ね備えていないともいえる。別の視点から見れば、近年危惧される、大量に廃棄されるプラスティックゴミの環境破壊問題も回避できる存在と成り得る可能性を秘めている。
【0006】
従来の洗濯バサミは、第一種テコの原理を採用した略V字形状を呈しており(
図1参照)、一般的な複数の洗濯バサミが付いている折り畳み型物干しハンガーを収納時に閉じ使用時に開く際、洗濯バサミの角状の部分が、他の洗濯バサミの角状の部分と絡み合うという問題があり、使用者の操作ストレスを招いたり、製品の故障破損の原因になっていた。物干しハンガーに採用された従来型の略V字形状の洗濯バサミにおいて、絡み防止の複数の部品点数(Y字型チェンや円形二重リング)を角部分に付加することよりかかる問題は解消されたが、絡み防止対策完成品の、製品重量軽量化、及び製造工程については簡略化できず煩雑化し、コストアップになるという問題もある。更に、使用者の利便性は解消されない。かかる現状を鑑みて、種々の洗濯バサミが開発されている。
【0007】
これらの現状の問題点を解決すべく、特許文献1には、「従来の洗濯挟みに形成突出された、角状のつまみを無くし、スマートな形状にしたことにより、洗濯挟みハンガーを閉じる、重ねるなどして収納したときに、角状のつまみが他のものと引っかかり、絡み合うという問題を解決(特許文献1:要約より抜粋)」したことにより、「絡みをほぐす手数がなくなり、忙しい主婦もいらいらすることもなく、また、絡みをほぐすために無理に引っ張って洗濯挟みを壊し、怪我をしたり衣類を破ったりするという危険がないため、安心して使用することが出来、更に、洗濯挟み全体を一体にしたことで、複数の部品を必要とせず、一種類の素材で、且つ、一工程で一体成型が出来るからまらない洗濯挟みを提供する(特許文献1:要約より抜粋)。」ことを課題として、「洗濯挟み本体を逆U字型に湾曲させてばね部とし、両端に挟み部を設け、ばね部を適宜な位置で交差させる、ことによって生じるばねの作用で洗濯ものを挟む構造とする(特許文献1:解決手段)。」からまない洗濯挟み(特許文献1:発明の名称)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に係る、「からまない洗濯挟み(特許文献1:発明の名称)」は、従来の略V字形状の洗濯挟みの角状の部分を無くした形状にしたことにより、確かに、物干しハンガーを閉じて収納し使用時に開く際、角状の部分どうしが絡み合うという問題を解決することができるし、先端部も開くようになり、洗濯挟みの形状を工夫したことで複数の部品を必要とせず、一種類の素材で、一工程で製造することができるようになった。しかし、洗濯バサミの構造は、第3種テコの原理を応用しているため、先端の把持部(作用点)にて洗濯物を挟むために、摘み部(力点)に加わる力は、第1種テコの原理を使った略V字形状より更に必要になり、少しの力だけで摘んで開く事が出来ないことに変わりは無く、現在のように高齢化社会の進行する状況において、健常者ならずとも高齢者や生活弱者が、かかる動作を日常的に行うのは大変なことであり、本発明の目的を解決できず問題があると言える。
【0010】
本発明の目的は、金属製(主にステンレス製)洗濯バサミに於いて、洗濯物を挟む時や外す時、すなわち先端部を開く操作の際、少しの力で摘まんで大きく開くことができ、更には種々の洗濯物(薄手の物から厚手の物及び軽い物から重い物)をしっかり保持でき、軽量化された洗濯バサミを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来のステンレス製洗濯バサミは、線条材を任意形状に曲げ加工することにより形成されている。一対の把持部が同一平面上の線接触で構成されているため、洗濯物を把持するための同部(線接触部)の摩擦抵抗が非常に少ない(
図1参照)ので、洗濯物を把持する力が大変低い。従って、把持力を確保するために、洗濯バサミのバネ力を上げ、摩擦抵抗の低いのを補うような構造を採っている。その結果、把持部先端を開くために、指先に大きな力が必要であり、更に、バネ力を上げた事と洗濯バサミの変形撓みを押さえるため、線径が太くなり洗濯バサミ重量が重くなるという問題があった。
【0012】
従来の洗濯バサミの殆どは、第1種テコの原理を採用し、操作力(力点にかかる力)を少なくするため支点~力点間距離が長くなり、同部(支点~力点間)で撓みが多く発生して、力一杯摘んでも強いバネ力のため把持部が大きく開かないという問題があった(
図1参照)。すなわち使用者の悩みは、洗濯バサミを開く際、指先に大きな力が必要(小さな力だと洗濯バサミが大きく開かない)、洗濯バサミ、及び物干しハンガーの重量が重いと言ったものであり、本発明の解決すべき最も大きな課題は、軽い力で動作する、すなわち、いかに洗濯バサミのバネ力を下げて、且つ、洗濯物を把持する力を確保出来、そして把持部を大きく開かせ、同時に製品重量を下げて使用者の悩み解決する事であると言える。
【0013】
以上から解決すべき課題は、洗濯バサミ把持部の把持力を上げるための技術開発、強いて言えば把持部摩擦抵抗の向上と洗濯バサミの性能を向上させるためのデザインの見直しであると言える。この課題を解決する発明を以下に列記する。
【0014】
請求項1に記載された発明は、一本の線条材を任意形状に曲げ加工することにより形成される洗濯バサミであって、
洗濯物を挟むための略台形形状の把持部を備えており、
前記把持部が互いに前後方向にずれて噛み合うように嵌合する形状を備えていることを特徴とする洗濯バサミであることを特徴とするものである。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載した発明において、前記把持部の一方又は両方に可撓性を備えた部材を設置する洗濯バサミであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
把持部先端に可撓性を備えた部材(中空部材も含む)を備えた洗濯バサミの効果は、従来のステンレス製洗濯バサミに於いて、一対把持部に可撓性を備えた部材(中空部材)を設置した事で、保持力が約2倍に上昇した。この事は洗濯バサミを摘むための力が約半分で済む事を意味する(従来品は把持部を最大限に開くための摘み力は約2.5kgと大きく不便であった)。従って、バネ力を約半分に落とす事が可能となり、前記摘み力も約1.3kgと軽減でき、線径を2ミリから1.6ミリと細く設定出来、重量を下げる事が出来たり、撓みの防止が出来、把持部先端の間隔が約9ミリから12ミリと、しっかり開く洗濯バサミを提供することができた。本発明の利点は、薄手の洗濯物もしっかり把持できる事、洗濯物に洗濯バサミ後が残り難い事、デリケートな衣類に優しい事、乾いた衣類には抜群の摩擦抵抗を発揮する事が挙げられる。
【0020】
(一本の線条材を任意形状に曲げることによる)把持部先端を3次元の曲線状に、及び把持部と把持部が面接触するように加工された洗濯バサミは、一対把持部の互いが前後にずれて噛み合うように「略への字型」に曲げることで把持力が約2倍に上昇した。この事は、洗濯バサミを摘むための力が約半分で済む事を意味する。従来品は、把持部を最大限に開くための摘み力は約2.5kgと大きく不便であった、従って、バネ力を約半分に落とす事が可能で、摘み力も約1.3kgと軽減でき、線径を2ミリから1.6ミリと細く設定でき重量を下げる事が出来たり、撓みの防止が出来、把持部先端を開いた際の把持部と把持部の間隔が約9ミリから12ミリと、しっかり開く洗濯バサミを提供することができた。本発明の利点は、特に濡れた厚手ジーンズ等に有効で濡れた厚い洗濯物ほど摩擦抵抗が増えしっかり把持でき、追加部材を付加することなく洗濯バサミ性能を確保することが出来る。
【0021】
3次元の曲線及び面接触(把持部を互いに嵌合する形状にした事と関連あり)や、可撓性素材の効果により、単体機能、及び複合的に把持部摩擦抵抗を上げることが出来る洗濯バサミは、一対把持部互いが前後にズレて噛み合う「略への字型(把持部が互いに嵌合する形状)」に曲げ、更に、片側の把持部に可撓性を備えた部材を設置したことで、摩擦抵抗が上がり、更に把持力が約2.7倍に上昇した。この事は洗濯バサミを摘むための力が、従来の約半分以下で済む事を意味する(従来品は把持部を最大限に開くための摘み力は、約2.5kgと大きく不便であった)。従って、バネ力を半分以下に落とす事が可能で、摘み力も1.0kg以下と軽減でき、線径を2ミリから1.6ミリと細く設定できるため、洗濯バサミの重量を下げる事が出来たり、撓みの防止ができ、把持部先端の間隔が約9ミリから12ミリと、しっかり開く洗濯バサミを提供することができるようになった。
【0022】
濡れた厚手のジーンズ等は、可撓性を備えた部材で滑りやすい傾向を、可撓性を備えていない側の「略への字型」に曲げられた噛み合う把持部が補い、薄手衣類の把持力や洗濯物が乾いてくると、保持力が低下してくる可撓性を備えていない「略への字型」に曲げられた噛み合う把持部に代わり、可撓性を備えている把持部側が補うと言った、ハイブリッド効果が認められた。すなわち薄手の洗濯物から厚手の洗濯物、又乾いた衣類から濡れた衣類まで万遍無く把持することができるようになった。もちろん、把持部の両方に可撓性を備えた部材を設置しても、同等かそれ以上の効果が得られるのは言うまでも無い。
【0023】
把持部先端が大きく広がり(把持部と把持部の間隔が、従来品の約9ミリから25ミリ以上となり)、製品線径は1,6ミリと細くでき、重量は、従来品の約12gから約6g、操作に要する力が、従来品の約2.5kgから1.3kgと大きく性能を上げる事が出来た。特記すべきは、把持部先端が開き始めてから従来品と同じ間隔まで開くまでにかかる力が、従来品の1.3kgから0.3kgになり、更に、指を動かすストロークも従来品の約30ミリから約12ミリと指にかかる負担が激減出来る事である。
【0024】
線条材の両先端部の其々を略三角形に折り曲げることにより、一対の把持部(洗濯物を挟む部位)を形成し、把持部に隣接するように略円形状の一対の摘み部(洗濯物を挟むために指先で摘む部位)を形成し、さらに、線条材の略中心部に左右に開く方向に付勢された、弾性部を備えている。第三種テコの原理を利用する事で、従来の第一種テコの原理を応用した洗濯バサミに比べ2倍以上に1対の把持部を最大限に開く事が出来、摘むに要する指の動きも半分以下少なくできる事に加え、更に把持部先端が開き始めてから同部先端が12ミリ(第一種テコの原理を応用した洗濯バサミが最大に開く巾)に開くため、指にかかる力は半分以下と指にかかる負担が少ない利点が生まれる。一本の線条材から製造でき、製品重量も減らせ、絡み防止のための追加部品も不要であるため製造コスト、製造工程の低減が期待できる。
【0025】
把持部先端形状と可撓性部材の把持力向上の複合効果でバネ力を少なく設定できる。把持部先端が大きく広がり、従来品の約9ミリから25ミリ以上となり、製品線径は1.5ミリと細くでき、重量は従来品の約12gから約6g、操作に要する力が従来品の約2.5kgから1.3kgと大きく性能を上げる事が出来た。特記すべきは把持部先端が開き始めてから従来品と同じ大きさに開くまでにかかる力が従来品の1.3kgから0.3kgになり、更に指を動かすストロークも従来品の約30ミリから約12ミリと指にかかる負担が激減出来る事である(
図5参照)。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】従来品洗濯バサミの問題点を説明するための図である。
【
図2】実施例1に係る洗濯バサミの全体図(含むP視図、Q視図)である。
【
図3】実施例2に係る洗濯バサミの全体図(含むP視図、Q視図)である。
【
図4】洗濯バサミの使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<洗濯バサミの構造>
以下、本発明に係る洗濯バサミ10(実施例1)、及び洗濯バサミ100(実施例2)の実施形態について、
図2~
図4に基づいて詳細に説明する。
図2は、実施例1に係る洗濯バサミ10の全体図(摘んで無い状態(a)摘んだ状態(b)、及び(a)の状態におけるQ視図(c))である。
【0028】
実施例1に係る洗濯バサミ10(
図2参照)は、第一テコの原理を応用した形状であり、一本の線条材(一例として、ステンレス鋼:φ0.8mm~φ1.5mm程度、洗濯バサミ10のサイズ大きさや長さ等は自由に選択することができる:尚、ステンレス鋼についても、材質等により分類された各グレードを自由に選択することができる)を、
図2に記載したような形状に曲げ加工することにより形成される洗濯バサミ10である。一本の線条材の中心に弾性部(コイルバネ)40を形成し(コイルバネの巻数や直径で弾性力を調整出来る)弾性部40より、おのおのの両先端部から略台形に曲げ加工することにより一対の把持部20が形成され、更に本発明の特徴であるおのおのの把持部先端20を「略への字状」に加工し、それぞれの把持部20は前後方向に咬み合わせ嵌合している。把持部20からそれぞれの両端は力点である摘み部30を「略涙目型状」を最遠端で備えており、日常的に見慣れた、洗濯バサミ10を形成する。
【0029】
図3は、実施例2に係る洗濯バサミ10の全体図(摘んで無い状態(a)摘んだ状態(b)、及び(a)の状態におけるQ視図(c))である。実施例2に係る洗濯バサミ100(
図3参照)は、一本の線条材(一例として、ステンレス鋼:φ0.8mm~φ1.5mm程度、洗濯バサミ100のサイズ大きさや長さ等は自由に選択することができる:尚、ステンレス鋼についても、材質等により分類された各グレードを自由に選択することができる)を、
図3に記載したような形状に曲げ加工することにより形成される洗濯バサミ100である。
【0030】
一本の線条材の両先端部の其々を略三角形に曲げ加工することにより形成された一対の把持部200、把持部200に隣接する位置に略円形状に曲げ加工することにより形成された一対の摘み部300を備えており、さらに、線条材の略中心部に左右に開く方向に付勢するように形成された弾性部400は、ねじりバネ(バネ、コイルバネ等、バネ性を有すれば限定しない)を備えている。更に本発明の特徴である、おのおのの把持部先端300を「略への字状」に加工し、それぞれの把持部200は前後方向に咬み合わせ嵌合している。又、片方の「略への字状」の把持部200先端に可撓性中空部材500(本実施例では遠位側(長い方)把持部200に備えているが、遠位側(長い方)、近位側(短い方)いずれの把持部に装着しても効果は同じであるため、装着側を限定しない。)を具備している事で、目新しい意匠の洗濯バサミ100が形成される。
【0031】
実施例1及び実施例2は、従来型の洗濯バサミには見られない構造として、把持部20先端が咬み合い嵌合すること、及び実施例2では、把持部200先端が咬み合い嵌合することに加え、可撓性中空部材500(長い実施例の素材はシリコンゴム、素材は塩化ビニール、フッ素ゴム等滑り止め効果があれば限定しない。)を設置している(
図2、及び
図3参照)。把持部200先端に可撓性中空部材500を設置することで、線条材末端から取付交換、及び増設も可能な構造(
図4(e)参照)とし、可撓性中空部材500が損傷や劣化等による交換可能な構造(
図3参照)で製品寿命の向上に有効である。
【0032】
実施例2において可撓性中空部材500は、洗濯バサミ100を形成する線条材の一対の先端部(把持部200を形成する線条材の両先端部:線条材を切断した際の断端部とも言うが、要するに、線条材を切断した時の先端)から挿入されて装着されている。断端部は「略への字状」に曲げられ、摘み部300の一部に引っ掛けることで末端処理され、断端部が使用の際、衣類を引っ掛けたり、指先が当たらないよう摘み部300の内側に曲げ込んでいる(
図3参照)。尚、本実施例2に係る洗濯バサミ100を実際に使用する際は、
図3(f)→
図3(g)に記載したように、予め、把持部200を互いに交差させておく必要がある。
【0033】
<洗濯バサミの使用方法>
図4は、洗濯バサミの使用方法を説明するための図である。(a)、及び(b)は実施例1に係る洗濯バサミ10であり、(c)~(g)は実施例2に係る洗濯バサミ100である。(注:実施例2の係る洗濯バサミ100の使用時においては、
図4に記載したように、(f)の状態から、把持部200を互いに交差させて(g)の状態にする)。
【0034】
実施例2に係る洗濯バサミ100は、
図4(f)(g)に記載したように、予め、把持部200を互いに交差させておく必要がある。使用の際は、摘み部300において手先(親指と人差し指等)を使って内側に向けて力を加える(要するに、摘む)ことにより、把持部200が開き、洗濯物を挟んでから内側に向かった力を開放することにより、弾性部400の弾性力(弾性部400の弾性力が働く方向については
図4(g)↑↓参照)を開放することで、洗濯物を挟むことができる仕組みになっている。
【0035】
<洗濯バサミの効果>
本発明に係る洗濯バサミ10及び洗濯バサミ100は、一本の(ステンレス鋼を素材とする)線条材を任意形状に曲げることにより形成される。ステンレス鋼を素材としているので、例えば、線条材の径を小さくすることで、摘んだ際の感覚において柔らかく、製品重量を軽くすることもできる。さらに、製造工程において、洗濯バサミ10及び洗濯バサミ100の形状を一本のステンレス鋼から製作することができるようにしたことで、特に洗濯バサミ10に於いて、部品点数を最低限まで減らすことができ、かつ、従来の製造工程を移行でき、単純な折り曲げ工程で製造することができるようになったため、本発明に係る洗濯バサミにおいて、製造に関わる設備投資や開発費用、製造コスト強いては製品コストが一番抑える事が出来た。洗濯バサミ100は、絡み防止部材を使うことなく絡み防止機能があり、最良の操作感と共に製品のパフォーマンスを得られた。従来品と本発明に係る洗濯バサミ10(実施例1)、洗濯バサミ100(実施例2)の効果、及び、特徴を
図5に纏めた。
【0036】
図5に記載したように、実施例1に係る洗濯バサミ10では第一テコの原理を応用しており、従来品位比べ約半分の摘み力で開く事が出来る。保持力は従来品の把持力を担保しつつ、バネ力が約半分に少なく出来た事から、洗濯バサミ10の撓みが抑えられ、把持部20が大きく開く事が出来た。更に洗濯バサミ10の重量も約半分に抑える事が出来、本発明の解決したい課題をクリアできた。
【0037】
実施例2に係る洗濯バサミ100は、実施例1に係る洗濯バサミとは異なり、第3テコの原理を応用している事から、摘み部である力点が弾性部である支点から遠位側にあり挟み部である作用点に近位にあることから少しの指の動きで(ストローク)把持部が大きく開き、支点から作用点までが最大長で長くとれる事から、摘み部が開き初めから、開き終わるまでの係る力が少なく済む事が特記すべき特徴である。従って、洗濯バサミ100の利用者は洗濯バサミ10や従来品に比べ使い心地に優れ、指に係る力が少なく把持部が大きく開き、製品重量の軽い利便性は高く本発明の解決したい課題をクリアできた。又、本実施例2を使用して洗濯物干しハンガーを試作した所、従来品1.1kgに対し0.62kgの製品が完成した。
【0037】
<洗濯バサミの変更例>
本発明に係る洗濯バサミは、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、把持部、摘み部、弾性部、中空部材、可撓材等の形状や構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。例えば、線条材(ステンレス鋼等)の径についても、必要に応じて種々の材質(表面メッキ処理を含む)や寸法のものを選択することができるし、線条材断面形状も円形・楕円・角形・小判型・偏平型など、限定しない。把持部の立体構造も摩擦力が期待できる曲げ方であれば、その形や構造を限定しない。弾性体の中の一つであるバネの巻き数やバネの径についても、自由に選択することができる。中空部材の素材は塩化ビニールやシリコンゴム、フッ素ゴム以外であっても、可撓性を有し摩擦抵抗の期待できる素材であれば何でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る洗濯バサミは、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、洗濯物を挟んだり、取り外す動作に於いて先端部を開く際、少しの力で摘まんで大きく開くことができ、且つ、種々の洗濯物をまんべんなくしっかり把持が出来、更には洗濯バサミ重量が少なくでき、複数の洗濯バサミを取り付けた洗濯ハンガーの製品重量を少なくする事が出来た。すなわち、これまでのステンレス製洗濯バサミの問題点を克服した次世代の製品と成り得るポテンシャルを有するばかりか、今後の高齢化社会や生活弱者の受け皿や環境問題に一石を投じる可能性を秘めた製品として期待できる。又ステンレス素材とシリコン又はフッ素素材は高熱や錆に強く腐食等が少ない安定した素材である事から、一般市場は元より、医療用・産業用としてのニーズも期待出来る。本発明は洗濯バサミに限定した発案であるが、洗濯バサミに関わらず、物を挟む動作を行う製品や仕組みに利用可能である事も言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
10・・洗濯バサミ(実施例1)
20・・把持部
30・・摘み部
40・・弾性部
100・・洗濯バサミ(実施例2)
200・・把持部
300・・摘み部
400・・弾性部
500・・可撓性中空部材