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特許7192185発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置
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  • 特許-発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置 図1
  • 特許-発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置 図2
  • 特許-発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置 図3
  • 特許-発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置 図4
  • 特許-発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置 図5
  • 特許-発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置 図6
  • 特許-発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/64 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
B64G1/64 100
B64G1/64 500
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021110033
(22)【出願日】2021-07-01
(62)【分割の表示】P 2019534080の分割
【原出願日】2016-12-22
(65)【公開番号】P2021183485
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】517174522
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペース,エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】リバス サンチェス、フランシスコ バビエル
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03458217(US,A)
【文献】特開2012-192863(JP,A)
【文献】特開2018-066452(JP,A)
【文献】特開2011-168176(JP,A)
【文献】米国特許第06357699(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0294589(US,A1)
【文献】米国特許第01943256(US,A)
【文献】米国特許第03362290(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0133748(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に整列された複数のクランプ(2、2’)であって、前記円周方向に整列された複数のクランプ(2、2’)の内面が、分離可能な要素のリング(6、7)上に取り付け可能とされており、且つ、2つの前記分離可能な要素の間に結合界面が構成され、
前記クランプ(2’)のうちの2つを、前記クランプ(2’)の一方の端部において接続する解放機構(3)と、を備える、
衛星を発射装置または衛星ディスペンサから分離するための接続分離装置であって、
前記解放機構(3)によって接続される2つのクランプ(2’)は、
前記解放機構(3)と接続する端部とは反対側の端部において前記クランプ(2’)の外面から突出する突出部(4)を備え、
残りの前記クランプ(2)は、前記クランプ(2’)に隣接する端部のそれぞれにおいて、残りの前記クランプ(2)の外面から突出する突出部(4)を備え、前記解放機構(3)によっては互いに接続されていないクランプの各対(2,2;2,2’)は前記突出部(4)を接続する接続手段(5)によって互いに接続されるとともに、
前記クランプ(2)の端部の前記突出部(4)は、貫通孔(8)を有し、前記接続手段(5)は、前記貫通孔(8)を貫通する接線方向に配置されたねじおよびナットシステムであって、対応する隣り合うクランプ(2)を接続し、
前記円周方向に整列された複数のクランプ(2、2’)は、前記複数のクランプ(2、2’)の外周に外側バンドを用いることなく、前記リング(6、7)に取り付けられ
前記解放機構(3)によって接続される前記クランプ(2’)の各々が、突出部(4)を含む端部の外面の円錐凹部を備え、
前記解放機構(3)が解放要素(11)と、一対の円錐状突起を有するブリッジ(12)と、ボルト(13)と、台車(14)とを備え、接続状態において、前記解放要素(11)は前記ブリッジ(12)の円錐状突起が前記クランプ(2’)の円錐凹部に収容されることを可能にする前記ボルト(13)を保持し、前記台車(14)が接続分離装置(1)の内面に隣接して配置されることを特徴とする、発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置(1)。
【請求項2】
前記接続分離装置(1)が解放されたときに、前記クランプ(2、2’)を受け入れるために、互いに角度的に分離され、前記分離可能な要素のリング(7)の1つに接続された、いくつかの装置(9)をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置(1)。
【請求項3】
前記突出部(4)の間の間隙に少なくとも1つの充填要素を備えて連続性を提供することを特徴とする、請求項1または2に記載の発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置(1)。
【請求項4】
前記クランプ(2,2’)が内部的に中空の断面を有することを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置(1)。
【請求項5】
前記クランプ(2、2’)が、格子形状の穴を有する領域を含むことを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置(1)。
【請求項6】
前記クランプ(2、2’)はそれらの外面および前記突出部(4)の近傍に、接続手段(5)を受け入れることができる凹部領域(10)を有することを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置(1)。
【請求項7】
前記解放機構(3)が、分離のアクチュエータとして使用される形状記憶SMAを有する材料からなることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置(1)。
【請求項8】
前記解放機構(3)が火工要素であることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発射装置または衛星ディスペンサから衛星を分離するための接続分離装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飛行中に、例えば発射装置または衛星ディスペンサから分離されなければならない衛星のための接続分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙船の部分を分離するための手段を備えた様々なシステムが知られている。これらの従来技術のシステムの1つは、EP0267279A1に記載された宇宙船用のクランプ接続アセンブリである。このクランプは宇宙船の2つの分離可能な部分を結合し、その各々は、その円周上に溝を有する面取りされたリムを有する。クランプは、前記分離可能部分のリムに適合するように内部に構成され、テンションバンドの手段によって接合されたリテーナを備え、それぞれのリテーナは前記リムの対応する溝部に係合し、宇宙船の2つの分離可能部分の間で荷重を直接的に伝達する剪断ピンを含む。
【0003】
衛星を取り付け、分離するための別のシステムは、EP0768241A1に記載されている。それは、打ち上げロケットのアダプタの上側リングにねじ込まれる締結片と、衛星を締結するための、2部品の金属バンド、湾曲した金属部品からなるテンションストリップであって、いくつかのラグによって形成されたその下部に金属回転シャフトを有する薄壁の円筒形本体を有し、それらの上部を介して衛星の下側リング上に載置され、衛星を取り囲み、それを押圧する、2部品の金属バンド、湾曲した金属部品からなるテンションストリップと、2つの回転シャフトをそれぞれ有し、一方が前記金属部品である。このシステムの目的は、発射ロケットへの衛星の固定および軌道に入る際のその解放を簡略化することである。
【0004】
EP0905022A1は、その内周に形成されたチャンネルを有する開放リング又は金属バンドを備えた衛星を取り付け、分離するためのシステムであって、顎が前記チャンネル内でスライドできる不連続な方法で一体化され、前記リングの端部に固定された2つの端部片と、前記2つの端部を連結するテンションボルトと、衛星の打上げ装置の構造に固定されたリングを保持するための3つの支持体とを備えるシステムを記載している。
【0005】
EP1944237A1は、複数のクランプをスライド自在に収容する内側チャネルを有するストリップを備え、2つの車両間の接続インターフェースを形成するリングに対して適用される、発射車両と衛星とを接続/分離するための装置に関する。この装置はまた、ストリップとクランプとを含む組立体を半径方向に締め付けるための手段と、その端部を結合/分離するための装置とを含み、この装置はロック及びロック解除装置と共に、ストリップを2つの段階で制御された開放を可能にする機構、すなわち、端部がリングとの接触を維持しながら移動し、それによって摩擦手段によってストリップの締め付けに対応する弾性エネルギを散逸させる第1の段階と、ストリップが駐車位置に達するまでリングから分離する第2の段階とを含む。
【0006】
テンションバンドを有するこれらの接続分離システムの大部分は、伝達される単位長さ当たりの荷重が高いときに示される。しかし、特定の状況(例えば、重量の少ない衛星、または、ミッションの大部分の間に分離されるべき要素と接続分離システムが共存しなければならない場合)では接続分離システムの比較的高い重量が問題を引き起こす可能性がある(例えば、衛星自体に利用可能な質量が低減される可能性がある)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は宇宙船または発射装置の要素のための接続分離装置を提供することであり、この接続分離装置は軽量であり、2つの分離可能な要素の間の接続界面の全周にわたって均一な張力を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、衛星を発射装置または衛星ディスペンサから分離するための接続分離装置であって、2つの分離可能な要素の間の結合界面を構成する、分離可能なリングの円周方向に整列され、前記リングに内面で取り付け可能な複数のクランプと、前記クランプの一方の端部にある2つのクランプを接続する解放機構と、を備え、前記解放機構によって接続される2つのクランプは、解放機構と接続する端部とは反対側の端部でそれらの外面から突出する突出部を備え、残りのクランプは隣接するクランプに隣接する端部のそれぞれにおいて、前記残りのクランプの外面から突出する突出部を備え、前記解放機構によって互いに接続されない、隣接するクランプの各対は前記突出部を接続する手段によって互いに接続される、接続分離装置、を提供する。
【0009】
本発明の接続分離装置の設計は2つの分離可能なリングの間の結合界面の周囲に均質な張力をかけることを可能にし、追加の要素(外側バンドなど)を欠くことによって、より軽いシステムを達成する。
【0010】
したがって、提案された解決策は、重量が調整係数である場合(例えば、マイクロ衛星およびミニ衛星を備えたミッションの場合)に非常に適している。
【0011】
本発明の別の利点は、荷重が界面の全周にわたって分散されるので、点荷重、したがって構造内の局所的な補強が回避され、構造の重量が最適化されることである。
【0012】
別の利点は、従来のシステムと比較して、解放機構がバンドのゆっくりとした開放を強制するので、衝撃が減少することである。
【0013】
さらなる有利な実施形態は、従属請求項に記載される。
【0014】
本発明をより良く理解するために、添付の図面を参照して、これを以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、バンドの端部の結合分離機構を有する従来技術のバンドクランプアセンブリの図を示す。
図2図2は、本発明の接続分離装置の斜視図である。
図3図3は、2つの分離可能な要素間の接続の界面を形成するリングに取り付けられた本発明の接続分離装置の斜視図である。
図4図4は、2つの分離可能な要素間の接続の界面を形成するリング上の本発明の接続分離装置の詳細図である。
図5図5は、本発明の接続分離装置のクランプの一端の詳細図である。
図6図6は、本発明の接続分離装置の解放機構の斜視図である。
図7図7は、本発明の接続分離装置の2つの対応するクランプに取り付けられた図6の解放機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、バンドの端部のための結合分離機構を備えた従来技術のバンドクランプアセンブリを示す。この図から分かるように、この装置は、複数のクランプが配置された内側チャネルを有する外側バンドを有する。
【0017】
当該装置は、EP1944237A1のLPSS(低衝撃/大ペイロード分離システム)として知られる、重い荷重に適した出願人の分離システムに対応する。
【0018】
図2は、本発明の接続分離装置1の斜視図を示す。装置は複数の円周方向に整列されたクランプ2、2’を含み、クランプの数は、界面の直径に依存することに留意されたい。図2図3及び図4に最も良く示されているように、これらのクランプ2、2’は、2つの分離可能なリング間の結合界面(union interface)を構成する分離可能なリング6、7に内面で結合することができる。また、本発明の接続分離装置1は、クランプ2’の2つをクランプ2’の端部の1つに接続する解放機構3を含む。解放機構3によって接続された2つのクランプ2’は、解放機構3と接続する端部とは反対側の端部において、それらの外面から突出する突出部4を備える。残りのクランプ2は隣接するクランプ2、2’に隣接する端部の各々に、その外面から突出する突出部4を有する。図2図3、及び図4は、隣り合うクランプ2がそれらのそれぞれの突出部4を連結する連結手段5によって互いに又はクランプ2’に連結されていることを示している。
【0019】
図2図7の実施形態では、クランプ2の端部(クランプ2’の端部の1つにも位置する)の突出部4がスルーホール8を有することが分かる。また、前記実施形態で実施される取付手段5は対応する隣り合うクランプ2、2’を接続するために、突出部4の貫通孔8を貫通する接線方向に配置されたねじ及びナットシステムである。これらの接続手段5は、本発明の接続分離装置1を便利に引っ張ることを可能にする。
【0020】
図3及び図5において、クランプ2、2’はそれらの外面及び突出部4の近傍に、接続手段5を収容することができる凹部領域10を有することが分かる。
【0021】
図3は、本発明の接続分離装置1を解放したときにクランプ2、2’を受け入れるための装置9を示す。該装置9は分離可能な要素のリング7に取り付けられるだけであり、落下時にクランプ2、2’を受けるハウジングまたはレセプタクルを備える。これらの装置9のいくつかは、クランプ2、2’を受け入れるために、互いに角度的に間隔を置いて配置されている。
【0022】
本発明の接続分離装置1がより剛性であるために、隣接するクランプ2、2’の端部の突出部4の間に充填要素(図3参照)として追加の要素を挿入することが可能であり、したがって、連続性およびリングにより近い一般的な形状を提供する。前記充填要素は、粘弾性材料であってもよい。
【0023】
クランプ2、2’は内部に中空の断面を有することができ、これにより、アセンブリの重量を軽くすることができる。その目的のために、それらは、添加剤層製造(ALM)技術を用いて製造することができる。
【0024】
同様に、クランプ2、2’は、格子状の穴(図2、3および5を参照)を有する領域を備え得、これはまた、アセンブリの重量が軽量化されることを可能にする。
【0025】
図7は、クランプ2’の間に配置された解放機構3を示す。形状記憶材料(SMA、または形状記憶合金)は電流が印加されると、それが加熱され、その結晶状態が変化し、解放機構3が開放されることを可能にするように、解放機構3に使用されてもよい。
【0026】
解放機構3は、本発明の接続分離装置1自体の展開中に発生する衝撃の低減のための制御された解放を可能にする。衝撃は、既存の低衝撃バンドよりも小さい。
【0027】
解放機構3(図2図6および図7参照)は火工品(pyrotechnic)または非爆発物(SMA、溶融等)であってもよい解放要素11自体から構成され、この解放要素はボルト13の荷重が台車14を介して下側リング7に作用したときにブリッジ12を所定位置に維持するボルト13を保持する。ブリッジ12は、クランプ2’(図7)の対応する円錐形穴に受け入れられる2つの雄円錐形接点を有する。接続分離装置1の張力は、ブリッジ12の雄型コーンとクランプ2’の雌型コーンとの間の摺動によってゆっくりと緩和され、それによって受動的衝撃低減システムが得られる。
【0028】
図7では、接続状態において、台車14が接続分離装置1の内面に隣接して配置されていることが分かる。
【0029】
本発明の接続分離装置1は、従来の装置に比べて質量が大幅に低減されている。例えば、LPSSとして知られる上述のシステムで作られた直径1666mmのバンドは約23.2kgの重さであり、一方、本発明のシステムでは、2.7kgの重さである。380mmの直径の場合、本発明の装置の重量は約750gである。これは、例えば、マイクロ衛星およびミニ衛星のために、高い負荷容量が必要とされない場合に、非常に便利なシステムとなる。
【0030】
本発明は、次のタイプのミッションに特に適用可能である。
重量が重要な要因であるミッション。
小型衛星(軽量、小径インタフェース)。
軽量(1トン未満)であるが、分離システムが任務の大部分の間に衛星と共存する大径インターフェースを有する衛星。これらの場合、バンド張力は高すぎてはならない(<20kN)。
【0031】
本発明を好ましい実施形態に関連して説明してきたが、その範囲内の修正を導入することができ、そのような実施形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の内容のみに限定されるべきであることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7