(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】テラヘルツ装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/329 20060101AFI20221213BHJP
H01L 29/88 20060101ALI20221213BHJP
H03B 7/08 20060101ALI20221213BHJP
H01L 29/866 20060101ALI20221213BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20221213BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20221213BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20221213BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20221213BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20221213BHJP
H01L 29/66 20060101ALI20221213BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20221213BHJP
H01L 29/201 20060101ALI20221213BHJP
H01L 29/205 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01L29/88 S
H03B7/08
H01L29/90 D
H01L29/91 L
H01L29/91 K
H01L21/28 301B
H01L27/04 H
H01L29/66 T
H01L29/66 Z
H01L29/06 601W
H01L29/201
H01L29/205
(21)【出願番号】P 2018155898
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2017201992
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【氏名又は名称】土居 史明
(72)【発明者】
【氏名】向井 俊和
(72)【発明者】
【氏名】金 在瑛
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 一魁
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-180049(JP,A)
【文献】特開2017-069678(JP,A)
【文献】特開2010-206683(JP,A)
【文献】国際公開第2005/055366(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/88
H01L 29/868
H01L 29/866
H01L 29/861
H01L 21/329
H01L 21/822
H01L 27/04
H03B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に配置されたテラヘルツ素子と、
前記テラヘルツ素子と電気的に並列接続された第1整流素子と、
前記テラヘルツ素子と前記第1整流素子とのいずれにも電気的に並列接続された第2整流素子と、を備える、テラヘルツ装置。
【請求項2】
前記第1整流素子および前記第2整流素子は各々、第1端子および第2端子を含み、前記第1整流素子および前記第2整流素子の各々において、前記第1端子から前記第2端子に向かう電気的な方向が順方向であり、
前記第1整流素子の前記第1端子は、前記第2整流素子の前記第2端子に導通している、請求項
1に記載のテラヘルツ装置。
【請求項3】
前記第1整流素子は、第1立ち上がり電圧値および第1降伏電圧値を有し、前記第2整流素子は、第2立ち上がり電圧値および第2降伏電圧値を有し、
前記第1立ち上がり電圧値の絶対値は、前記第1降伏電圧値の絶対値よりも小さく、
前記第2立ち上がり電圧値の絶対値は、前記第2降伏電圧値の絶対値よりも小さく、
前記第1立ち上がり電圧値および前記第2立ち上がり電圧値は、前記テラヘルツ素子がテラヘルツ波を発振する電圧領域における値の絶対値の下限よりも、大きい、請求項
2に記載のテラヘルツ装置。
【請求項4】
前記第1立ち上がり電圧値および前記第2立ち上がり電圧値は、前記テラヘルツ素子がテラヘルツ波を発振する電圧領域における値の絶対値の上限よりも、大きい、請求項
3に記載のテラヘルツ装置。
【請求項5】
前記半導体基板上に各々形成され、互いに絶縁された第1導電体層および第2導電体層を更に備え、
前記第1整流素子および前記第2整流素子はいずれも、前記半導体基板上に形成され、且つ、前記第1導電体層および前記第2導電体層の間に電気的に介在している、請求項2ないし請求項
4のいずれかに記載のテラヘルツ装置。
【請求項6】
前記半導体基板上に各々形成され、且つ、互いに積層された第1半導体層および第2半導体層を更に備え、
前記第1半導体層は、第1導電型を有し、前記第2半導体層は、前記第1導電型とは反対の第2導電型を有し、
前記第1整流素子の前記第1端子と、前記第2整流素子の前記第2端子とは、前記第1導電体層によって構成され、
前記第1整流素子の前記第2端子と、前記第2整流素子の前記第1端子とは、前記第2導電体層によって構成されている、請求項
5に記載のテラヘルツ装置。
【請求項7】
互いに絶縁された第1導電部位および第2導電部位を更に備え、
前記テラヘルツ素子は、前記第1導電部位および前記第2導電部位の間に電気的に介在しており、
前記第1導電部位は、平面視において、前記テラヘルツ素子の位置する側から第1方向に沿って延びており、前記第2導電部位は、平面視において、前記テラヘルツ素子の位置する側から
前記第1方向とは反対方向に沿って延びている、請求項
1ないし請求項
4のいずれかに記載のテラヘルツ装置。
【請求項8】
前記半導体基板が配置された支持体を更に備え、
前記テラヘルツ素子および前記支持体に接合された第1ワイヤを更に備え、
前記第1ワイヤは、平面視において、前記第1導電部位に沿って延びる仮想直線を避けて形成されている、請求項
7に記載のテラヘルツ装置。
【請求項9】
前記テラヘルツ素子および前記支持体に接合された第2ワイヤを更に備え、
前記第2ワイヤは、平面視において、前記仮想直線を避けて形成されている、請求項
8に記載のテラヘルツ装置。
【請求項10】
前記第1整流素子および前記第2整流素子は、平面視において、前記仮想直線を挟んで互いに反対側に配置されている、請求項
8または請求項
9に記載のテラヘルツ装置。
【請求項11】
前記支持体は、互いに絶縁された第1導電エレメントおよび第2導電エレメントを含み、
前記テラヘルツ装置および前記第1整流素子は、前記第1導電エレメントに配置されており、前記第2整流素子は、前記第2導電エレメントに配置されている、請求項8ないし請求項
10のいずれかに記載のテラヘルツ装置。
【請求項12】
前記第1導電エレメントは、第1部位と、前記第2導電エレメントに向かって前記第1部位から延び出る第2部位と、を含み、
前記テラヘルツ装置は、前記第1導電エレメントにおける前記第2部位に配置されている、請求項
11に記載のテラヘルツ装置。
【請求項13】
前記第1整流素子は、前記第1導電エレメントの前記第2部位に配置されている、請求項
12に記載のテラヘルツ装置。
【請求項14】
前記第2導電エレメントは、前記第1部位に対向する部位を含み、前記第2整流素子は、前記第2導電エレメントにおける前記部位に配置されている、請求項12または請求項
13に記載のテラヘルツ装置。
【請求項15】
前記テラヘルツ素子を包囲する空間が形成された樹脂部と、
前記樹脂部に配置され、前記空
間に露出した部材と、を更に備え、
前記空間には、気体が充填されている、請求項1ないし請求項
14のいずれかに記載のテラヘルツ装置。
【請求項16】
前記部材は、前記樹脂部に配置された第1部分と、前記第1部分に配置された第2部分と、を含み、
前記第2部分は、導電材料よりなる、請求項
15に記載のテラヘルツ装置。
【請求項17】
前記第2部分は、少なくとも1つの帯状部分、少なくとも1つの環状部分、および少なくとも1つのドットの少なくともいずれかを含む、請求項
16に記載のテラヘルツ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テラヘルツ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、トランジスタなどの電子デバイスの微細化が進み、その大きさがナノサイズになってきたため、量子効果と呼ばれる新しい現象が観測されるようになっている。そして、この量子効果を利用した超高速デバイスや新機能デバイスの実現を目指した開発が進められている。そのような環境の中で、特に、テラヘルツ帯と呼ばれる、周波数が0.1THz~10THzの周波数領域を利用して大容量通信や情報処理、あるいはイメージングや計測などを行う試みが行われている。この周波数領域は、光と電波の中間の未開拓領域であり、この周波数帯で動作するデバイスが実現されれば、上述したイメージング、大容量通信・情報処理のほか、物性、天文、生物などのさまざまな分野における計測など、多くの用途に利用されることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、より好ましいテラヘルツ装置を提供することをその主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の側面によると、半導体基板と、前記半導体基板上に配置されたテラヘルツ素子と、前記テラヘルツ素子と電気的に並列接続された第1整流素子と、を備える、テラヘルツ装置が提供される。
【0006】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のテラヘルツ装置の斜視図である。
【
図5】第1実施形態のテラヘルツ素子の詳細を示す断面図である。
【
図7】
図2のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】
図2のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図10】
図2のIX-IX線の沿う他の断面図である。
【
図12】
図2のXII-XII線に沿う断面図である。
【
図13】
図2のXII-XII線に沿う他の断面図である。
【
図14】
図2のXIV-XIV線に沿う断面図である。
【
図15】第1実施形態のテラヘルツ素子、第1整流素子、第2整流素子の回路図である。
【
図16】第1実施形態の第1整流素子の断面図である。
【
図17】第1実施形態の第2整流素子の断面図である。
【
図18】第1実施形態の第1整流素子の電流電圧特性の一例を示すグラフである。
【
図19】第1実施形態の第2整流素子の電流電圧特性の一例を示すグラフである。
【
図20】第1実施形態のテラヘルツ素子の電流電圧特性の一例を示すグラフである。
【
図21】第1実施形態の第1整流素子と第2整流素子とからなる合成素子の電流電圧特性の一例を示すグラフである。
【
図23】
図22のXXIII-XXIII線に沿う2つの断面図を含む、テラヘルツ素子、第1整流素子、第2整流素子の回路図である。
【
図24】第1実施形態のテラヘルツ装置の断面図である。
【
図25】第1実施形態の第1変形例の半導体部品の平面図である。
【
図26】第1実施形態の第1変形例のテラヘルツ装置の平面図である。
【
図27】第1実施形態の第2変形例のテラヘルツ装置の平面図である。
【
図28】第1実施形態の第3変形例のテラヘルツ装置の平面図である。
【
図29】第1実施形態の他の変形例のテラヘルツ装置の断面図である。
【
図30】第2部分の平面視の形状の一例を示す図である。
【
図31】第2部分の平面視の形状の一例を示す図である。
【
図32】第2部分の平面視の形状の一例を示す図である。
【
図33】第2部分の平面視の形状の一例を示す図である。
【
図34】第2部分の平面視の形状の一例を示す図である。
【
図35】
図29に示した第1部分を製造する際の一時点における構造の断面図である。
【
図36】
図29に示した第1部分を製造する際の一時点における構造の断面図である。
【
図37】
図29に示した第1部分を製造する際の一時点における構造の断面図である。
【
図38】
図29に示した第1部分を製造する際の一時点における構造の断面図である。
【
図39】第1実施形態の変形例のテラヘルツ装置の斜視図である。
【
図40】第1実施形態の変形例のテラヘルツ装置の斜視図である。
【
図41】第1実施形態の変形例のテラヘルツ装置の平面図である。
【
図42】第1実施形態の変形例のテラヘルツ装置の平面図である。
【
図43】第1実施形態の変形例のテラヘルツ装置の平面図である。
【
図44】第1実施形態の変形例のテラヘルツ装置の平面図である。
【
図45】第1実施形態の変形例のテラヘルツ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0009】
「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在していること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに積層されている」および「ある物Aがある物B上に積層されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接積層されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに積層されていること」を含む。
【0010】
<第1実施形態>
図1~
図24を用いて、本開示の第1実施形態について説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態のテラヘルツ装置の斜視図である。
【0012】
同図に示すテラヘルツ装置A1は、半導体部品B1と、支持体8と、樹脂部85と、ワイヤ871、872と、を備える。
【0013】
【0014】
同図に示す半導体部品B1は、テラヘルツ帯の周波数の高周波電磁波を発振する。半導体部品B1はテラヘルツ帯の高周波電磁波を発振するものではなく、受信するものであっ
てもよい。半導体部品B1はテラヘルツ帯の高周波電磁波を発振および受信するものであってもよい。半導体部品B1は、半導体基板1と、第1導電体層2と、第2導電体層3と、絶縁層4(
図5等参照)と、テラヘルツ素子5と、第1整流素子61と、第2整流素子62と、を備える。
【0015】
半導体基板1は、半導体よりなり、半絶縁性を有する。半導体基板1を構成する半導体は、たとえば、InPであるが、InP以外の半導体であってもよい。半導体基板1は、表面11を有する。表面11は半導体基板1の厚さ方向Z1(
図5等参照)を向いている。
【0016】
図2に示すように、半導体基板1は、縁131~134を含む。縁131および縁133は互いに第1方向X1に離間している。縁131および縁133はいずれも、第2方向X2に沿って延びている。第2方向X2は、第1方向X1に直交している。縁132および縁134は互いに第2方向X2に離間している。縁132および縁134はいずれも、第1方向X1に沿って延びている。縁131は縁132につながり、縁132は縁133につながり、縁133は縁134につながり、縁134は縁131につながっている。
【0017】
図4は、
図2の領域IVの部分拡大図である。
図5は、第1実施形態のテラヘルツ素子の詳細を示す断面図である。
【0018】
図2、
図4、
図5に示すテラヘルツ素子5は、半導体基板1に形成されている。テラヘルツ素子5は、第1導電体層2および第2導電体層3に導通している。テラヘルツ素子5は、テラヘルツ素子5から放射された電磁波は、裏面反射体金属層88に反射されて、半導体基板1に対して垂直方向(厚さ方向Z1)の面発光放射パターンを有する。
【0019】
テラヘルツ素子5は典型的にはRTDである。テラヘルツ素子5は、RTD以外のダイオードや、トランジスタによって構成されていてもよい。テラヘルツ素子5としては、例えば、タンネット(TUNNETT:Tunnel Transit Time)ダイオード、インパット(IMPATT:Impact Ionization Avalanche Transit Time)ダイオード、GaAs系電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)、GaN系FET、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)、あるいは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)により構成されうる。
【0020】
テラヘルツ素子5を実現するための一例を、
図6を用いて説明する。
図6は、
図5の部分拡大図である。GaInAs層92aが、半導体層91a(たとえばGaInAsよりなる)に配置され、n型不純物がドープされている。GaInAs層93aは、GaInAs層92aに配置され、不純物がドープされていない。AlAs層94aがGaInAs層93aに配置され、InGaAs層95が、AlAs層94aに配置され、AlAs層94bがInGaAs層95上に位置している。AlAs層94aとInGaAs層95とAlAs層94bはRTD部を構成する。GaInAs層93bは、AlAs層94bに配置され、不純物がドープされていない。GaInAs層92bは、GaInAs層93bに配置され、n型不純物がドープされている。GaInAs層91bがGaInAs層92bに配置され、n型不純物が高濃度にドープされている。そして、第1導電体層2がGaInAs層91b上に位置している。
【0021】
図示は省略するが、
図6とは異なり、n型不純物を高濃度にドープされたGaInAs層が、GaInAs層91bおよび第1導電体層2の間に介在していてもよい。これにより、第1導電体層2とGaInAs層91bとのコンタクトが良好になりうる。
【0022】
図20に示すように、テラヘルツ素子5の電流電圧特性を示すグラフにおいて、傾きが負の値となる領域R11が存在する。領域R11がテラヘルツ波を発振する領域である。
【0023】
図7は、
図2のVII-VII線に沿う断面図である。
図8は、
図2のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9は、
図2のIX-IX線の沿う断面図である。
図10は、
図2のIX-IX線の沿う他の断面図である。
図11は、
図2のXI-XI線に沿う断面図である。
図12は、
図2のXII-XII線に沿う断面図である。
図13は、
図2のXII-XII線に沿う他の断面図である。
図14は、
図2のXIV-XIV線に沿う断面図である。
【0024】
図8に示す絶縁層4は、半導体基板1上に形成されている。絶縁層4は、たとえば、SiO
2よりなる。あるいは、絶縁層4を構成する材料は、Si
3N
4、SiON、HfO
2、あるいはAl
2O
3であってもよい。絶縁層4の厚さは、たとえば、10nm~1000nmである。絶縁層4は、たとえば、CVD法、あるいはスパッタリング法によって形成されうる。
【0025】
図2等に示すように、第1導電体層2および第2導電体層3は各々、半導体基板1上に各々形成されている。第1導電体層2および第2導電体層3は互いに絶縁されている。半導体基板1の厚さ方向Z1視において、半導体基板1の厚さ方向Z1に直交する第1方向X1に第2導電体層3からテラヘルツ素子5が離間している。第1導電体層2および第2導電体層3は各々、金属の積層構造を有する。第1導電体層2および第2導電体層3の各々の積層構造は、たとえば、Au、Pd、およびTiが積層された構造である。あるいは、第1導電体層2および第2導電体層3の各々の積層構造は、たとえば、AuおよびTiが積層された構造である。第1導電体層2および第2導電体層3の各々の厚さは、例えば、10~2000nmである。第1導電体層2および第2導電体層3は各々、いずれも真空蒸着法、あるいはスパッタリング法などによって形成されうる。
【0026】
第1導電体層2は、第1部位21と、第1インダクタンス部22と、第1キャパシタ部23と、第1電極25と、を含む。第2導電体層3は、第2部位31と、第2インダクタンス部32と、第2キャパシタ部33と、第2電極35と、を含む。
【0027】
図2、
図4、
図5に示すように、第1部位21は、第1方向X1に沿って延びる。第1部位21は、第1導電部214と、第2導電部215と、を含む。
【0028】
図2、
図4においては、第1導電部214は長矩形状の部位である。第1導電部214は、第1方向X1に沿って延び、アンテナとして機能しうる。第2導電部215は、厚さ方向Z1視において、第1導電部214から第2導電体層3に向かって延び出ている。第2導電部215は、厚さ方向Z1視において、テラヘルツ素子5に重なっている。
【0029】
図2、
図4等に示す第1インダクタンス部22は、第1部位21および第1キャパシタ部23につながり且つ第1部位21から第1キャパシタ部23まで第2方向X2に沿って延びている。第1インダクタンス部22は、インダクタンスとして機能する。第1インダクタンス部22の第2方向X2の長さL1(
図4参照)は、たとえば、5μm~100μmである。第1インダクタンス部22の幅は、たとえば、1μm~10μmである。
【0030】
第2部位31は、第3方向X3に沿って延びる。第3方向X3は第1方向X1とは反対の方向である。第2部位31は、アンテナとして機能しうる。第2インダクタンス部32は、第2部位31および第2キャパシタ部33につながり且つ第2部位31から第2キャパシタ部33まで第2方向X2に沿って延びている。第2インダクタンス部32は、イン
ダクタンスとして機能する。第2インダクタンス部32の第2方向X2の長さL2(
図4参照)は、たとえば、5μm~100μmである。第2インダクタンス部32の幅は、たとえば、1μm~10μmである。
【0031】
図2、
図4等に示すように、第1キャパシタ部23は、テラヘルツ素子5に対し第2方向X2側に位置する。本実施形態では、第1キャパシタ部23は厚さ方向Z1視において矩形状である。
【0032】
図3は、
図2から第1導電体層2を省略した図である。
【0033】
第2キャパシタ部33は、テラヘルツ素子5に対し第2方向X2側に位置する。
図12、
図13に示すように、第2キャパシタ部33と半導体基板1との間に、第1キャパシタ部23が介在している。本実施形態とは異なり、第1キャパシタ部23と半導体基板1との間に第2キャパシタ部33が介在していてもよい。第2キャパシタ部33は、第1キャパシタ部23に積層され、且つ、絶縁層4を介して第1キャパシタ部23から絶縁されている。第2キャパシタ部33と第1キャパシタ部23とが、キャパシタを構成する。本実施形態では、第2キャパシタ部33は厚さ方向Z1視において矩形状である。
【0034】
第1電極25は、第1キャパシタ部23につながっている。本実施形態では、第1電極25は矩形状である。本実施形態では、第1電極25は、ワイヤ871(
図11参照)がボンディングされるパッド部である。
図11に示すように、第1電極25は、半導体基板1に直接接する部位を有する。当該接する部位は、厚さ方向Z1視において、ワイヤ871と第1電極25とが接するワイヤボンディング部に重なっている。
【0035】
本実施形態では、
図2に示すように、厚さ方向Z1視において、第1電極25は、縁251~254を含む。縁251および縁253はいずれも、第2方向X2に沿って延びている。縁252および縁254は互いに第2方向X2に離間している。縁252および縁254はいずれも、第1方向X1に沿って延びている。縁251は縁252につながり、縁252は縁253につながり、縁253は縁254から離間し、縁254は縁251につながっている。縁251および縁252は、厚さ方向Z1視において、縁131および縁132にそれぞれ至っている。本実施形態とは異なり、縁251および縁252が、厚さ方向Z1視において、縁131および縁132にそれぞれ至っていなくてもよい。
【0036】
第2電極35は、第2キャパシタ部33につながっている。本実施形態では、第2電極35は矩形状である。本実施形態では、第2電極35は、ワイヤ872(
図14参照)がボンディングされるパッド部である。
図12に示すように、第2電極35は、半導体基板1に直接接する部位を有する。当該接する部位は、厚さ方向Z1視において、ワイヤ872と第2電極35とが接するワイヤボンディング部に重なっている。
【0037】
本実施形態では、
図2に示すように、厚さ方向Z1視において、第2電極35は、縁133および縁132に至っている。本実施形態とは異なり、厚さ方向Z1視において、第2電極35は、縁133および縁132に至っていなくてもよい。この場合、半導体部品B1の製造工程において、半導体基板1をダイシングする際に、第2電極35を切断することによって生じうるバリの発生を抑制できる。
【0038】
本実施形態では、
図2に示すように、厚さ方向Z1視において、第2電極35は、縁351~354を含む。縁351および縁353はいずれも、第2方向X2に沿って延びている。縁352および縁354は互いに第2方向X2に離間している。縁352および縁354はいずれも、第1方向X1に沿って延びている。縁351は縁352につながり、縁352は縁353につながり、縁353は縁354につながり、縁354は縁351か
ら離間している。縁352および縁353は、厚さ方向Z1視において、縁132および縁133にそれぞれ至っている。本実施形態とは異なり、縁352および縁353が、厚さ方向Z1視において、縁132および縁133にそれぞれ至っていなくてもよい。
【0039】
図15は、第1実施形態のテラヘルツ素子、第1整流素子、第2整流素子の回路図である。
図15に示すように、第1整流素子61は、テラヘルツ素子5と電気的に並列接続されている。第1整流素子61は、たとえばダイオードである。このようなダイオードの具体例は、ツェナーダイオード、ショットキーダイオード、および発光ダイオードを含む。第1整流素子61は、第1端子61Aおよび第2端子61Bを含む。第1整流素子61において、第1端子61Aから第2端子61Bに向かう電気的な方向が順方向である。通常の使用では、第1整流素子61において、第1端子61Aから第2端子61Bに向かって電流が流れやすく、第2端子61Bから第1端子61Aに向かって電流は流れにくい。
【0040】
図16は、第1実施形態の第1整流素子の一例の断面図である。
図16に示すように、第1整流素子61は、第1半導体層611および第2半導体層612を含む。第1半導体層611および第2半導体層612は互いに積層されている。第1半導体層611は第1の導電型を有し、第2半導体層612は第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する。第1の導電型がp型であるとき第2の導電型はn型である。第2の導電型がn型であるとき第1の導電型はp型である。
【0041】
図18は、第1整流素子61の電流電圧特性を示す。同図では、第1端子61Aから第2端子61Bに電流が流れる方向を正方向としている。同図に示すように、第1整流素子61の第1立ち上がり電圧値V611の絶対値は、第1整流素子61の第1降伏電圧値V612の絶対値よりも小さい。第1立ち上がり電圧値V611は、テラヘルツ素子5がテラヘルツ波を発振する電圧領域R11における値の絶対値の下限(電圧値V11の絶対値であり、
図20参照)よりも大きくてもよい。第1立ち上がり電圧値V611は、テラヘルツ素子5がテラヘルツ波を発振する電圧領域R11における値の絶対値の上限(電圧値V12の絶対値であり、
図20参照)よりも大きくてもよい。電圧値V11の絶対値は、たとえば、0.3~0.5Vであり、電圧値V12の絶対値は、たとえば、0.5~0.7Vである。第1立ち上がり電圧値V611の絶対値は、たとえば、0.4~0.9Vである。第1降伏電圧値V612の絶対値は、たとえば、2~8Vである。
【0042】
図15に示すように、第2整流素子62は、テラヘルツ素子5と電気的に並列接続されている。第2整流素子62は、たとえばダイオードである。このようなダイオードの具体例は、ツェナーダイオード、ショットキーダイオード、および発光ダイオードを含む。第2整流素子62は、第1端子62Aおよび第2端子62Bを含む。第2整流素子62において、第1端子62Aから第2端子62Bに向かう電気的な方向が順方向である。通常の使用では、第2整流素子62において、第1端子62Aから第2端子62Bに向かって電流が流れやすく、第2端子62Bから第1端子62Aに向かって電流は流れにくい。
【0043】
図17は、第1実施形態の第2整流素子の一例の断面図である。
図17に示すように、第2整流素子62は、第1半導体層621および第2半導体層622を含む。第2半導体層621および第2半導体層622は互いに積層されている。第1半導体層621は第1の導電型を有し、第2半導体層622は第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する。第1の導電型がp型であるとき第2の導電型はn型である。第2の導電型がn型であるとき第1の導電型はp型である。
【0044】
図18は、第2整流素子62の電流電圧特性を示す。同図では、第1端子62Aから第2端子62Bに電流が流れる方向を正方向としている。同図に示すように、第2整流素子62の第2立ち上がり電圧値V621の絶対値は、第2整流素子62の第2降伏電圧値V
622の絶対値よりも小さい。第2立ち上がり電圧値V621は、テラヘルツ素子5がテラヘルツ波を発振する電圧領域R11における値の絶対値の下限(電圧値V11の絶対値であり、
図20参照)よりも大きくてもよい。第2立ち上がり電圧値V621は、テラヘルツ素子5がテラヘルツ波を発振する電圧領域R11における値の絶対値の上限(電圧値V12の絶対値であり、
図20参照)よりも大きくてもよい。第2立ち上がり電圧値V621の絶対値は、たとえば、0.4~0.9Vである。第2降伏電圧値V622の絶対値は、たとえば、2~8Vである。
【0045】
図15に示すように、第1整流素子61の第1端子61Aは、第2整流素子62の第2端子62Bに導通している。第1整流素子61の第2端子61Bは、第2整流素子62の第1端子62Aに導通している。したがって、第1整流素子61および第2整流素子62からなる合成素子の電流電圧特性は、
図21に示すようになる。
図21に示すように、第1端子61Aから第2端子61Bに電流が向かう方向を正方向とした場合、第1立ち上がり電圧値V611において、電流電圧曲線が急激に立ち上り、また、第2立ち上がり電圧値V621の絶対値の負の値において、電流電圧曲線は急激に降下する。
【0046】
第1整流素子61および第2整流素子62の具体例構造の一例について説明する。
図22は、
図2の領域XXIIの部分拡大図である。
図23は、
図22のXXIII-XXIII線に沿う2つの断面図を含む、テラヘルツ素子、第1整流素子、第2整流素子の回路図である。
【0047】
図2、
図22、
図23に示す例においては、第1整流素子61および第2整流素子62はいずれも、半導体基板1上に形成されている。第1整流素子61および第2整流素子62は各々、第1導電体層2(
図22、
図23に示す例では第1電極25)および第2導電体層3(
図22、
図23に示す例では第2電極35)の間に電気的に介在している。
図23に示すように、半導体基板1上には、半導体層71(第1半導体層)および半導体層72(第2半導体層)が形成されている。半導体層71および半導体層72は互いに積層されている。半導体層71は第1導電型を有し、半導体層72は第1導電型とは反対の第2導電型を有する。半導体層71は、たとえば、第1整流素子61の第1半導体層611、および、第2整流素子62の第1半導体層621を構成しうる。半導体層72は、第1整流素子61の第2半導体層612、および、第2整流素子62の第2半導体層622を構成しうる。
【0048】
図23に示すように、第1導電体層2(より具体的には第1電極25)は、部位256、257を有し、第2導電体層3(より具体的には第2電極35)は部位356、357を有する。部位256、357は、半導体層71に接しており、部位257、356は、半導体層72に接している。そして、同図に示す例においては、部位256が、第1整流素子61の第1端子61Aを構成し、第2電極356が第1整流素子61の第2端子61Bを構成しうる。同図に示す例においては、部位257が第2整流素子62の第2端子62Bを構成し、部位357が第2整流素子62の第1端子62Aを構成しうる。
【0049】
図22、
図23では、第1電極25および第2電極35の間に第1整流素子61および第2整流素子62が形成された例を示したが、第1導電体層2における第1電極25以外の部位と、第2導電体層3における第2電極35以外の部位との間に、第1整流素子61および第2電極35が形成されていてもよい。本開示では第1整流素子61および第2整流素子62の2つの整流素子が形成された例を示しているが、第1整流素子61および第2整流素子62の1つのみが形成されていてもよい。本開示では第1整流素子61および第2整流素子62の2つの整流素子が形成された例を示しているが、第1整流素子61および第2整流素子62に加え、テラヘルツ素子5に電気的に直列あるいは並列に接続された追加の素子が配置されていてもよい。
【0050】
図24は、第1実施形態のテラヘルツ装置の断面図である。
図24に示す支持体8には半導体部品B1が配置されている。支持体8は、基板81および導電体層82を含む。配線基板81は、たとえばガラスエポキシ基板である。配線基板81には、半導体部品B1が配置されている。導電体層82は、配線基板81に形成されている。導電体層82は、第1導電エレメント821および第2導電エレメント822を含む。第1導電エレメント821および第2導電エレメント822は互いに離間している。支持体8は、ガラスエポキシ基板を備えていなくてもよい。支持体8は、リードフレームに由来する1または複数のリードを備えていてもよい。
【0051】
樹脂部85は、配線基板81に配置されている。樹脂部85は、たとえばエポキシ樹脂よりなる。樹脂部85は、表面853を有する。表面853は、配線基板81の厚さ方向(本実施形態では半導体基板1の厚さ方向Z1と一致する)の一方を向いている。樹脂部85には、半導体部品B1が収容された空間851が形成されている。空間851は、第1側面851Aおよび第2側面851Bを有する。第1側面851Aは、方向Z1に対し傾斜している。第2側面851Bは、厚さ方向Z1において、第1側面851Aおよび配線基板81の間に位置する。第2側面851Bは配線基板81の厚さ方向Z1に沿って延びている。厚さ方向Z1における、第2側面851Bの寸法は、厚さ方向Z1における、テラヘルツ素子B1の寸法よりも、大きい。
【0052】
金属層86は、第1側面851Aに配置されているとよい。金属層86は、第2側面851Bにも配置されていてもよい。金属層86は、金属がめっきされた層であるとよい。金属層86は、テラヘルツ波をより効率的に反射する。ワイヤ871,871は、半導体部品B1と配線基板81(より厳密には導電体層82)に接合されている。ワイヤ871は、半導体部品B1の第1電極25と、導電体層82における第1導電エレメント821とに接合されている。ワイヤ872は、半導体部品B1の第2電極35と、導電体層82における第2導電エレメント822とに接合されている。図示した例とは異なり、第1側面851Aおよび第2側面851Bは金属により構成されていてもよい。
【0053】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0054】
本実施形態においては、
図15に示したように、テラヘルツ装置A1は、テラヘルツ素子5と電気的に並列接続された第1整流素子61を備える。このような構成によると、テラヘルツ素子5の両端に、たとえば静電気等によって大電圧が印加されたとしても、第1整流素子61を経由して電流を流すことが可能となる。これにより、テラヘルツ素子5に大電流が流れることを抑制できるため、テラヘルツ素子5が静電気等によって故障することを回避しうる。
【0055】
本実施形態においては、
図15に示したように、テラヘルツ装置A1は、テラヘルツ素子5と第1整流素子61とのいずれにも電気的に並列接続された第2整流素子62を備える。このような構成によると、上述したのと同様の理由により、テラヘルツ素子5が静電気等によって故障することを回避しうる。
【0056】
本実施形態においては、第1整流素子61において、第1端子61Aから第2端子61Bに向かう電気的な方向が順方向である。第2整流素子62において、第1端子62Aから第2端子62Bに向かう電気的な方向が順方向である。第1整流素子61の第1端子61Aは、第2整流素子62の第2端子62Bに導通している。このような構成によると、第2端子61Bに対する第1端子61Aの電圧が正となる非常に高い電圧が、テラヘルツ素子5の両端に印加された場合には、第1端子61Aから第2端子61Bに向かって第1
整流素子61を介して電流が流れる。第2端子61Bに対する第1端子61Aの電圧が負となる非常に高い電圧が、テラヘルツ素子5の両端に印加された場合には、第1端子62Aから第2端子62Bに向かって第2整流素子62を介して電流が流れる。これにより、テラヘルツ素子5に印加されうる電圧の正負に関わらず、テラヘルツ素子5に過大な電流が流れる可能性を低減できる。したがって、より効果的に、テラヘルツ素子5が静電気等によって故障することを回避しうる。
【0057】
本実施形態においては、第1整流素子61および第2整流素子62はいずれも、半導体基板1上に形成されている。このような構成は、半導体基板1の大型化を招くことを極力回避しつつ実現しうる。したがって、本実施形態は、テラヘルツ装置A1の大型化を回避するのに適する。
【0058】
<変形例>
以下の説明では、上記と同一または類似の構成については上記と同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0059】
以下の変形例の各構成は、
図25に示すように、第1整流素子61および第2整流素子62が、半導体基板1上に形成されていない点において、
図2に示した構成と異なり、その他の点は略同様であるから説明を省略する。テラヘルツ素子5、第1整流素子61、および第2整流素子62の電気的な配置は、
図15に示したものである。以下の変形例の各構成は、上記実施形態における、
図22、
図23以外の図面に関する説明を適用できる。
【0060】
図26は、第1実施形態の第1変形例のテラヘルツ装置の平面図である。
図26のテラヘルツ装置A2では、第1導電エレメント821は、第1部位821Aおよび第2部位821Bを含む。第1部位821Aおよび第2部位821Bの仮想上の境界を、
図26にて縦に延びる二点鎖線で示している。第1部位821Aは、縁821Eを含む。第1部位821Aは、
図26における縦方向に沿って延びている。第2部位821Bは、第2導電エレメント822に向かって第1部位821Aから延び出ている。第2部位821Bは、縁821Fを含む。縁821Fは、縁821Eにつながっている。同図では、第1部位821Aに、第1整流素子61が配置されている。また、第1部位821Aおよび第2部位821Bに、テラヘルツ素子5が配置されている。
【0061】
図26では、第2導電エレメント822は、第1部位822Aおよび2つの第2部位822Bを含む。第1部位822Aおよび第2部位822Bの仮想上の境界を、
図26にて縦に延びる二点鎖線で示している。第1部位822Aの一部は、第2部位821Bに対向している。第1部位822Aは、縁822Eを含む。第2部位822Bは、第1部位822Aから第1導電エレメント821に向かって延び出ている。第2部位822Bは、縁822Fを含む。各第2部位822Bの一部は、第1部位821Aに対向している。縁822Fは縁822Eにつながっている。
図26では、第1部位822Aと2つの第2部位822Bとによって、凹部822Rが形成されている。凹部822Rには、第1導電エレメント821の第2部位821Bが配置されている。同図では、第1部位822Aと第2部位822Bとに第2整流素子62が配置されている。
【0062】
ワイヤ861は、第1整流素子61と、第2導電エレメント822における第2部位822Bと、に接合されている。ワイヤ862は、第2整流素子62と、第2導電エレメント822における第2部位822Bと、に接合されている。ワイヤ871は、半導体部品B1と、第1導電エレメント821における第1部位821Aと、に接合されている。ワイヤ872は、半導体部品B1と、第2導電エレメント822における第1部位822Aと、に接合されている。ワイヤ861、862、871、872はいずれも、平面視において、第1部位21および第2部位31(本実施形態ではいずれもアンテナとして機能し
うる)に沿って延びる仮想直線LLを避けて形成されている。図示の例においては、ワイヤ861、862、871、872はいずれも、平面視において、第1部位21および第2部位31(本実施形態ではいずれもアンテナとして機能しうる)に沿って延びる仮想直線LLに交差しない。平面視において、仮想直線LLを挟んで互いに反対側に、第1整流素子61および第2整流素子62が配置されている。
【0063】
本変形例では、ワイヤ861、862、871、872はいずれも、平面視において、第1部位21および第2部位31(本実施形態ではいずれもアンテナとして機能しうる)に沿って延びる仮想直線LLを避けて形成されている。このような構成によると、ワイヤ861、862、871、872が、テラヘルツの発振(あるいは受信)に影響を与えにくくできる。影響を与えにくくできる理由の一つとしては、たとえば、導体(すなわちワイヤ)が、第1部位21および第2部位31(本実施形態ではいずれもアンテナとして機能しうる)に関して形成される電磁場に影響しにくいことが、考えられる。
【0064】
本変形例では、平面視において、仮想直線LLを挟んで互いに反対側に、第1整流素子61および第2整流素子62が配置されている。このような構成によると、半導体部品B1を支持体8の平面視におけるより中心側に配置しやすい。テラヘルツの発振(あるいは受信)に影響を与えにくくしつつ、平面視における支持体8の面積をより小さくすることが可能となる。
【0065】
図27に示す変形例では、第1導電エレメント821および第2導電エレメント822の形状が一部異なる。
図27では、第2部位821Bに、第1整流素子61が配置されている。第1部位821Aおよび第2部位821Bに、半導体部品B1が配置されている。このような構成によると、第1整流素子61を
図27におけるより右側に配置できるので、
図26に示す変形例と比較して、支持体8の平面視における小面積化を実現しうる。
【0066】
図28に示す変形例のように、第1整流素子61および第2整流素子62を配置してもよい。
【0067】
本開示では、テラヘルツ装置が支持体および樹脂部を含むものである例を示したが、テラヘルツ装置は、本開示の半導体装置に相当するチップタイプのものであってもよい。
【0068】
図29には、別の変形例を示している。
図29に示すテラヘルツ装置A12は、部材G10を更に備える点において、
図24に示したテラヘルツ装置A1とは異なる。本変形例の構成は、
図24に示したテラヘルツ装置A1以外のテラヘルツ装置と組み合わせてもよい。
【0069】
図29に示すように、部材G10は、樹脂部85に配置されている。部材G10は、空間851に露出している。本変形例では、空間851は、樹脂部85および部材G10に規定されている。本変形例においては、樹脂部85に形成された空間851には、気体が充填されている。当該気体の具体例は、たとえば、不活性気体(たとえば窒素)および空気を含む。本変形例では、部材G10は、板状であるが、他の形状であってもよい。部材G10は、たとえば、接合層G12を介して、樹脂部85に形成されていてもよい。空間851は、部材G10(および接合層G12)によって、密閉されていてもよい。
図39、
図40に示すように、部材G10を樹脂部85に配置しやすくするために、樹脂部85に部材G10をはめ込むための少なくとも1つの部位(
図39では部位888A~888D、
図40では部位888)を形成してもよい。
【0070】
図29に示すように、本変形例においては、部材G10は、第1部分G11と、第2部分G13と、第3部分G15とを含む。
【0071】
第1部分G11は、たとえば絶縁材料よりなる。第1部分G11は、たとえば、基板(シートやフィルム状のものも含む)であってもよい。第1部分G11を構成する材料は、たとえば、テラヘルツ波に対する吸収損失が低く、かつ、テラヘルツ波の透過率が高いものであることが、好ましい。たとえば、第1部分G11を構成する基板として、低誘電率の薄膜シートや高抵抗のSi基板等を用いることができる。Si基板を用いた場合、積層構造を形成しやすい。第1部分G11を構成する材料の他の例は、たとえば、ポリマーおよびMgOを含む。ポリマーを用いる場合、たとえば、シート状に加工したものにパターンを転写することにより、第1部分G11を形成できる。MgOを用いた場合、テラヘルツ波の吸収損失を小さく出来るメリットを享受しうる。あるいは、第1部分G11を構成する材料として、化合物半導体(SiC、GaN、GaAs、InP、サファイヤ等)を用いてもよい。化合物半導体にドーパントを調整して、抵抗率を大きくしてもよい。
【0072】
第2部分G13は、たとえば、導電材料(たとえば金属(たとえば、Cu、Al、あるいはAu等))よりなる。第2部分G13は、テラヘルツ波に対する所望の機能を発揮しうる。具体的には、第2部分G13は、たとえば、テラヘルツ波帯の偏光機能、周波数フィルター機能、および平面レンズ機能の少なくとも1つの機能を発揮しうる。
【0073】
第2部分G13は、複数の層を含んでいてもよい。
図29に示す例では、第2部分G13は、G131、G132を含んでいる。複数の層G131、G132は、互いに
図29の方向Z1において異なる位置に(すなわち異なる高さ位置に)配置されている。各層G131、G132が、所望の機能を発揮するとよい。また、各層G131、G132の平面視の形状や機能が互いに異なっていてもよいし、互いに同一であってもよい。
図29とは異なり、第2部分G13が一層のみ(たとえば層G131のみ)の構造であってもよい。また、第2部分G13が、3以上の層を含んでいてもよい。
【0074】
第2部分G13は、平面視において、少なくとも1つの帯状部分、少なくとも1つの環状部分、および少なくとも1つのドットの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
図30~
図34に、平面視の第2部分G13の形状の具体例を示す。
図29に示す各層G131、G132が、後述の
図30~
図34のいずれかの形状を有していてもよい。
【0075】
図30に示す第2部分G13は、平面視において、複数の帯状部分(すなわち、スリット構造)を有している。
図30に示す第2部分G13により発揮されうる機能は、たとえば、テラヘルツ波帯の偏光機能や周波数フィルター機能である。
図31に示す第2部分G13は、平面視において、複数の環状部分(すなわち、リング構造)を有している。
図31に示す第2部分G13により発揮されうる機能は、たとえば、アンテナ機能や集光機能である。
図32に示す第2部分G13は、平面視において、複数のドット(すなわち、ドット構造)を有している。
図32に示す第2部分G13により発揮されうる機能は、たとえば、ビームパターン制御機能や二次元共振器機能である。その他、第2部分G13の平面視の形状が、
図33や
図34に示すものであってもよい。
【0076】
図29に示すように、第3部分G15は、第2部分G13上に配置されている。第3部分G15は、たとえば絶縁材料よりなる。このような絶縁材料の具体例は、たとえば、SiO
2、SiN、樹脂、および、ポリマーを含む。
図29に示すように、第3部分G15は、複数の層G151、G152を含んでいてもよい。複数の層G151、G152は互いに積層されている。
【0077】
図29に示す、部材G10と半導体部品B1との離間距離LLは、たとえば、半導体部品B1からのテラヘルツ波の1波長(存在する空間中の実効波長)よりも小さくてもよい。離間距離LLが半導体部品B1からのテラヘルツ波の1波長(存在する空間中の実効波長)よりも小さい場合、近接場のカップリングを用いることで、半導体部品B1からのテラヘルツ波を適切に外部へと放出させうる。たとえば、半導体部品B1が空気中に存在する場合には、1波長は1mm程度であるため、離間距離LLは1mmよりも小さくてもよい。
【0078】
図35~
図38を用いて、部材G10の製造方法につき簡単に説明する。まず、
図35に示すように、第1部分G11に、第2部分G13の層G131を形成する。層G131は金属よりなっていてもよい。層G131は、たとえばパターンニングにより形成されうる。次に、
図36に示すように、第3部分G15の層G151を形成する。層G151は、たとえば、絶縁材料を層G131上に形成した後に、表面研磨することにより形成されうる。なお、当該表面研磨が行われなくてもよい。次に、
図35および
図36を用いて説明したのと同様に、
図37、
図38に示すように、層G132および層G152を順次形成する。その後、ダイシングを行うことにより、
図38に示す部材G10が製造される。
【0079】
図41には、本変形例の装置の平面図を示している。同図に示す装置は、
図26に示した構成と、
図30に示した構成と、を組み合わせたものである。
図41においては、半導体装置B1の中心点C11と、第2部分G13の対称点C12(平面視において、対称点C12について第2部分G13が点対称となっている)とが一致している。
【0080】
図41に示したものとは異なり、
図26に示した構成と、
図31~34のいずれかに示した構成と、を組み合わせてもよい。
図42~
図45は、それぞれ、
図26に示した構成と、
図31~34に示した構成と、を組み合わせたものである。
図42~
図45においても、半導体装置B1の中心点C11と、第2部分G13の対称点C12(平面視において、対称点C12について第2部分G13が点対称となっている)とが一致している。
【0081】
図29に示す変形例では、樹脂部85に形成された空間851には、気体が充填されている。このような構成によると、空間851に樹脂が充填されている場合と比べて、テラヘルツ波が樹脂を透過する際に減衰することを、抑制できる。また、本変形例によると、樹脂が半導体部品B1に付着することにより、境界条件が変化してしまいチップ基板内での共振モードに影響する問題の発生を低減あるいは防止できる。
【0082】
本変形例においては、第2部分G13は導電材料よりなる。このような構成によると、第2部分G13に、テラヘルツ波に対する所望の機能を発揮させることが可能となる。これにより、より好適なテラヘルツ装置が提供されうる。また、第2部分G13は、複数の層G131を含んでいてもよい。この場合には、複数の層G131に、たとえば、異なる機能を発揮させることが可能となる。
【0083】
本開示は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0084】
本開示は以下の付記に関する実施形態を含む。
[付記1]
半導体基板と、
前記半導体基板上に配置されたテラヘルツ素子と、
前記テラヘルツ素子と電気的に並列接続された第1整流素子と、を備える、テラヘルツ装置。
[付記2]
前記テラヘルツ素子と前記第1整流素子とのいずれにも電気的に並列接続された第2整流素子を更に備える、付記1に記載のテラヘルツ装置。
[付記3]
前記第1整流素子および前記第2整流素子は各々、第1端子および第2端子を含み、前記第1整流素子および前記第2整流素子の各々において、前記第1端子から前記第2端子に向かう電気的な方向が順方向であり、
前記第1整流素子の前記第1端子は、前記第2整流素子の前記第2端子に導通している、付記2に記載のテラヘルツ装置。
[付記4]
前記第1整流素子は、第1立ち上がり電圧値および第1降伏電圧値を有し、前記第2整流素子は、第2立ち上がり電圧値および第2降伏電圧値を有し、
前記第1立ち上がり電圧値の絶対値は、前記第1降伏電圧値の絶対値よりも小さく、
前記第2立ち上がり電圧値の絶対値は、前記第2降伏電圧値の絶対値よりも小さく、
前記第1立ち上がり電圧値および前記第2立ち上がり電圧値は、前記テラヘルツ素子がテラヘルツ波を発振する電圧領域における値の絶対値の下限よりも、大きい、付記2または付記3に記載のテラヘルツ装置。
[付記5]
前記第1立ち上がり電圧値および前記第2立ち上がり電圧値は、前記テラヘルツ素子がテラヘルツ波を発振する電圧領域における値の絶対値の上限よりも、大きい、付記4に記載のテラヘルツ装置。
[付記6]
前記半導体基板上に各々形成され、互いに絶縁された第1導電体層および第2導電体層を更に備え、
前記第1整流素子および前記第2整流素子はいずれも、前記半導体基板上に形成され、且つ、前記第1導電体層および前記第2導電体層の間に電気的に介在している、付記2ないし付記5のいずれかに記載のテラヘルツ装置。
[付記7]
前記半導体基板上に各々形成され、且つ、互いに積層された第1半導体層および第2半導体層を更に備え、
前記第1半導体層は、第1導電型を有し、前記第2半導体層は、前記第1導電型とは反対の第2導電型を有し、
前記第1整流素子の前記第1端子と、前記第2整流素子の前記第2端子とは、前記第1導電体層によって構成され、
前記第1整流素子の前記第2端子と、前記第2整流素子の前記第1端子とは、前記第2導電体層によって構成されている、付記6に記載のテラヘルツ装置。
[付記8]
互いに絶縁された第1導電部位および第2導電部位を更に備え、
前記テラヘルツ素子は、前記第1導電部位および前記第2導電部位の間に電気的に介在しており、
前記第1導電部位は、平面視において、前記テラヘルツ素子の位置する側から第1方向に沿って延びており、前記第2導電部位は、平面視において、前記テラヘルツ素子の位置する側から第1方向とは反対方向に沿って延びている、付記2ないし付記5のいずれかに記載のテラヘルツ装置。
[付記9]
前記半導体基板が配置された支持体を更に備え、
前記テラヘルツ素子および前記支持体に接合された第1ワイヤを更に備え、
前記第1ワイヤは、平面視において、前記第1導電部位に沿って延びる仮想直線を避けて形成されている、付記8に記載のテラヘルツ装置。
[付記10]
前記テラヘルツ素子および前記支持体に接合された第2ワイヤを更に備え、
前記第2ワイヤは、平面視において、前記仮想直線を避けて形成されている、付記9に記載のテラヘルツ装置。
[付記11]
前記第1整流素子および前記第2整流素子は、平面視において、前記仮想直線を挟んで互いに反対側に配置されている、付記9または付記10に記載のテラヘルツ装置。
[付記12]
前記支持体は、互いに絶縁された第1導電エレメントおよび第2導電エレメントを含み、
前記テラヘルツ装置および前記第1整流素子は、前記第1導電エレメントに配置されており、前記第2整流素子は、前記第2導電エレメントに配置されている、付記8ないし付記11のいずれかに記載のテラヘルツ装置。
[付記13]
前記第1導電エレメントは、第1部位と、前記第2導電エレメントに向かって前記第1部位から延び出る第2部位と、を含み、
前記テラヘルツ装置は、前記第1導電エレメントにおける前記第2部位に配置されている、付記12に記載のテラヘルツ装置。
[付記14]
前記第1整流素子は、前記第1導電エレメントの前記第2部位に配置されている、付記13に記載のテラヘルツ装置。
[付記15]
前記第2導電エレメントは、前記第1部位に対向する部位を含み、前記第2整流素子は、前記第2導電エレメントにおける前記部位に配置されている、付記13または付記14に記載のテラヘルツ装置。
[付記16]
前記テラヘルツ素子を包囲する空間が形成された樹脂部と、
前記樹脂部に配置され、前記空隙に露出した部材と、を更に備え、
前記空間には、気体が充填されている、付記1ないし付記15のいずれかに記載のテラヘルツ装置。
[付記17]
前記部材は、前記樹脂部に配置された第1部分と、前記第1部分に配置された第2部分と、を含み、
前記第2部分は、導電材料よりなる、付記16に記載のテラヘルツ装置。
[付記18]
前記第2部分は、少なくとも1つの帯状部分、少なくとも1つの環状部分、および少なくとも1つのドットの少なくともいずれかを含む、付記17に記載のテラヘルツ装置。
【符号の説明】
【0085】
1 半導体基板
11 表面
131 縁
132 縁
133 縁
134 縁
2 第1導電体層
21 第1部位
214 第1導電部
215 第2導電部
217 第1コンタクト部
22 第1インダクタンス部
23 第1キャパシタ部
25 第1電極
251 縁
252 縁
253 縁
254 縁
256 部位
257 部位
3 第2導電体層
31 第2部位
32 第2インダクタンス部
33 第2キャパシタ部
35 第2電極
351 縁
352 縁
353 縁
354 縁
357 部位
358 部位
4 絶縁層
5 テラヘルツ素子
61 第1整流素子
611 第1半導体層
612 第2半導体層
61A 第1端子
61B 第2端子
62 第2整流素子
621 第1半導体層
622 第2半導体層
62A 第1端子
62B 第2端子
71、72 半導体層
8 支持体
81 基板
82 導電体層
821 第1導電エレメント
821A 第1部位
821B 第2部位
821E 縁
821F 縁
822 第2導電エレメント
822A 第1部位
822B 第2部位
822E 縁
822F 縁
822R 凹部
85 樹脂部
86 金属部
861 ワイヤ
862 ワイヤ
871 ワイヤ
872 ワイヤ
A1、A2 テラヘルツ装置
B1~B4 半導体部品
LL 仮想直線
R11 領域
V11、V12 電圧値
V611 第1立ち上がり電圧値
V612 第1降伏電圧値
V621 第2立ち上がり電圧値
V622 第2降伏電圧値
X1 第1方向
X2 第2方向
X3 第3方向
X4 第4方向
Z1 厚さ方向