(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】眼科撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/10 300
(21)【出願番号】P 2017191349
(22)【出願日】2017-09-29
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】青野 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸弘
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-509544(JP,A)
【文献】特開2015-195876(JP,A)
【文献】特開2012-035063(JP,A)
【文献】特開2014-064946(JP,A)
【文献】特開2015-080726(JP,A)
【文献】特開2014-147503(JP,A)
【文献】特開2001-177746(JP,A)
【文献】国際公開第2002/022005(WO,A1)
【文献】特開2016-059400(JP,A)
【文献】特開平11-296316(JP,A)
【文献】特開2003-324435(JP,A)
【文献】特開2014-140491(JP,A)
【文献】特開2014-140488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に照射された測定光と参照光との干渉を用いて前記被検眼の断層画像を取得するための干渉光学系と、
前記被検眼の正面画像を取得するための観察光学系と、
前記干渉光学系及び観察光学系で取得された断層画像データ及び正面画像を一時的に記憶する記憶部を備える制御部と、
前記記憶部から転送される前記断層画像データ及び前記正面画像を受信して前記断層画像を生成するホストPCとを有し、
前記制御部と前記ホストPCとが、汎用的な通信手段により接続されており、
前記制御部は、前記正面画像と前記断層画像データとを関連づけるための付加情報として、
前記記憶部から前記ホストPCに転送される前段階で前記断層画像データ及び前記正面画像のそれぞれに対してタイムスタンプ情報を付与する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載する眼科撮影装置において、
前記制御部は、1Bスキャン分の前記断層画像データ毎に、走査位置情報を付与する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項3】
被検眼に照射された測定光と参照光との干渉を用いて前記被検眼の断層画像を取得するための干渉光学系と、
前記被検眼の正面画像を取得するための観察光学系と、
前記干渉光学系及び観察光学系で取得された断層画像データ及び正面画像を一時的に記憶する記憶部を備える制御部と、
前記記憶部から転送される前記断層画像データ及び前記正面画像を受信して前記断層画像を生成するホストPCとを有し、
前記制御部と前記ホストPCとが、汎用的な通信手段により接続されており、
前記制御部は、前記正面画像と前記断層画像データとを関連づけるための付加情報
として、前記記憶部から前記ホストPCに転送される前段階で前記断層画像データ及び前記正面画像のそれぞれに対してタイムスタンプ情報を付与し、
前記ホストPCは、前記正面画像の位置ズレを検出すると、前記付加情報から位置ズレが発生した前記正面画像に関連づけられた前記断層画像データは前記断層画像を生成する際に使用しない
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項4】
被検眼に照射された測定光と参照光との干渉を用いて前記被検眼の断層画像を取得するための干渉光学系と、
前記被検眼の正面画像を取得するための観察光学系と、
前記干渉光学系及び観察光学系で取得された断層画像データ及び正面画像を一時的に記憶する記憶部を備える制御部と、
前記記憶部から転送される前記断層画像データ及び前記正面画像を受信して前記断層画像を生成するホストPCとを有し、
前記制御部と前記ホストPCとが、汎用的な通信手段により接続されており、
前記制御部は、前記正面画像と前記断層画像データとを関連づけるための付加情報
として、前記記憶部から前記ホストPCに転送される前段階で前記断層画像データ及び前記正面画像のそれぞれに対してタイムスタンプ情報を付与するとともに、1Bスキャン分の前記断層画像データ毎に、走査位置情報を付与し、
前記ホストPCは、前記正面画像の位置ズレを検出すると、前記付加情報から位置ズレが発生した前記正面画像に関連づけられた前記断層画像データを破棄し、その破棄した断層画像データの前記走査位置情報に基づいて、前記破棄した断層画像データと同じ走査位置における断層画像データを再取得する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項5】
被検眼に照射された測定光と参照光との干渉を用いて前記被検眼の断層画像を取得するための干渉光学系と、
前記被検眼の正面画像を取得するための観察光学系と、
前記干渉光学系及び観察光学系で取得された断層画像データ及び正面画像を一時的に記憶する記憶部を備える制御部と、
前記記憶部から転送される前記断層画像データ及び前記正面画像を受信して前記断層画像を生成するホストPCとを有し、
前記制御部と前記ホストPCとが、汎用的な通信手段により接続されており、
前記ホストPCは、前記正面画像の位置ズレを検出すると、前記断層画像データを取得する走査位置を前記位置ズレに対応する分だけ補正するための走査位置補正指令を前記制御部へ送信し、
前記制御部は、前記正面画像と前記断層画像データとを関連づけるための付加情報
として、前記記憶部から前記ホストPCに転送される前段階で前記断層画像データ及び前記正面画像のそれぞれに対してタイムスタンプ情報を付与するとともに、1Bスキャン分の前記断層画像データ毎に、走査位置情報を付与し、前記ホストPCから受信した前記走査位置補正指令に基づき、前記断層画像データを取得する走査位置を補正する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載するいずれか1つの眼科撮影装置において、
前記制御部は、前記通信手段の通信状況に基づいて、前記ホストPCへのデータ転送のタイミングを制御する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5に記載するいずれか1つの眼科撮影装置において、
前記制御部は、前記通信手段の通信状況に基づいて、前記ホストPCへ転送するデータ容量を制御する
ことを特徴とする眼科撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の断層画像を撮影する眼科撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンストモグラフィー(OCT:Optical Coherence Tomography)を用いて眼の断層画像を撮像する眼科撮影装置が知られている。この種の眼科撮影装置として、例えば、撮影装置に備わるOCT用の撮影手段で取得した断層画像データ(スペクトルデータ)が即時に連続してPC(パーソナルコンピュータ)に送信され、そのスペクトルデータがPCにより演算処理されて断層画像が生成されるものがある。この眼科撮影装置では、眼の正面画像(SLO画像)の位置ズレが許容範囲内にある(固視ズレがない)状態でスペクトルデータが取得され、そのスペクトルデータがPCに送信されるようになっている。これにより、予め設定された位置における断層画像(OCT画像)が生成されるようになっている。そして、眼科撮影装置に接続可能なPCの汎用性を広げるために、眼科撮影装置とPCとが汎用的な通信手段、例えば、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)等により接続されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年のOCT技術の進歩によって、OCTの撮影速度の高速化が進んでいる。すなわち、OCTスキャンの繰り返しレート(例えばBスキャンの反復レート)は、ビデオカメラのフレームレートよりもかなり高くなっている。例えば、典型的なBスキャンの反復間隔が2~3ms程度であるのに対し、ビデオカメラのフレームレートは20~50FPS程度(フレーム間隔20~50ms程度)である。そのため、通信手段(例えばUSB)の帯域(データ転送速度の上限)では、OCTの撮影速度に対応してデータ転送を行うことができない場合が生じるおそれがある。すなわち、上記の眼科撮影装置では、USBでのデータの転送速度よりもOCTの撮影速度が速くなり、取得されたスペクトルデータを連続的にPCへデータ転送することができなくなる場合が生じる可能性がある。また、上記の眼科撮影装置では、正面画像(SLO画像)の位置ズレが許容範囲内であることが確認された後に、スペクトルデータが取得されている。
【0005】
これらのことから、OCTの撮影速度の高速化が図られているにもかかわらず、通信手段(例えばUSB)の帯域や正面画像(SLO画像)の撮影速度の影響(制限)を受けてしまい、断層画像を生成するために必要なスペクトルデータのPCへの取り込みに時間がかかってしまう。そのため、断層画像の生成時間を短縮することが難しかった。また、取得されたスペクトルデータがPCへ即時に連続して転送されるため、マップ撮影など一連のシーケンス処理中に一部のデータの転送に失敗した場合には、スペクトルデータが残っていない。そのため、喪失したスペクトルデータを取得するために撮影をやり直す必要があり、断層画像の生成時間がさらに長くなってしまう。
【0006】
そこで、本開示は、上記した問題点を解決するために、眼の断層画像の生成時間を短縮することができる眼科撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
被検眼に照射された測定光と参照光との干渉を用いて前記被検眼の断層画像を取得するための干渉光学系と、
前記被検眼の正面画像を取得するための観察光学系と、
前記干渉光学系及び観察光学系で取得された断層画像データ及び正面画像を一時的に記憶する記憶部を備える制御部と、
前記記憶部から転送される前記断層画像データ及び前記正面画像を受信して前記断層画像を生成するホストPCとを有し、
前記制御部と前記ホストPCとが、汎用的な通信手段により接続されており、
前記制御部は、前記正面画像と前記断層画像データとを関連づけるための付加情報として、前記記憶部から前記ホストPCに転送される前段階で前記断層画像データ及び前記正面画像のそれぞれに対してタイムスタンプ情報を付与する
ことを特徴とする眼科撮影装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の眼科撮影装置によれば、眼の断層画像の生成時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の眼科撮影装置の外観側面図である。
【
図2】実施形態の眼科撮影装置における光学系及び制御系の概略構成図である。
【
図3】実施形態の眼科撮影装置における制御系を示すブロック図である。
【
図4】モニタに表示されるSLO画像を模式的に示す図である。
【
図5】装置本体で実施される画像取得及び取得画像のPCへのデータ転送の処理内容を示すフローチャートである。
【
図6】OCT画像の生成手順を概念的に説明する図である。
【
図7】ガルバノ情報を利用してスキャン位置をフィードバック制御しながらOCT画像を生成する手順を概念的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。まず、眼科撮影装置の全体構成について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の眼科撮影装置1の外観側面図である。
図2は、眼科撮影装置1における光学系及び制御系の概略構成図である。
図3は、眼科撮影装置1の制御系を示すブロック図である。
【0011】
<全体構成>
本実施形態の眼科撮影装置1は、一例として、
図1~
図3に示すように、前眼部観察光学系90、投光光学系150、干渉光学系(OCT光学系)200、観察光学系300、制御部70、HUB171、パーソナルコンピュータ(PC)110等を備える。各光学系は、装置本体4に収納されている。そして、制御部70とPC110とが、USB3.0規格のHUB171を介してユニバーサル・シリアル・バス(USB)により接続されている。
【0012】
具体的に、PC110は、装置本体4に備わる制御部70に接続されているHUB171に対し、USBポート79a,79bを経由してUSBケーブル115で接続されている。なお、制御部70とHUB171はUSBケーブル78で接続されている。つまり、本実施形態では、眼科撮影装置1に対してUSBケーブル115によってPC110が接続されている。これにより、眼科撮影装置1に接続可能なPC110の汎用性を広げることができる。そして、PC110としては、例えば、デスクトップ型のパソコンやノート型のパソコンの他、タブレットPC等を使用することができる。
【0013】
つまり、PC110は、プロセッサとしてのCPU、操作入力部(例えば、マウス、キーボード等)、メモリ(不揮発性メモリ)、表示部を備えていればよい。PC110は、装置本体4の制御を司ってもよい。すなわち、PC110は、制御部70との間で、画像(データ)の送受信以外にも、各部品の状態(センサ状態やステータスなど)、PC110からの制御指令などの情報の通信も行うことができる。
【0014】
なお、本実施形態では、制御部70とPC110とがUSBにより接続されている場合を例示しているが、制御部70とPC110との接続はUSBに限られず、データ通信が可能な汎用的な通信手段、つまり、市販されているPCに標準搭載されているような通信手段、例えば、USBの他にLAN(有線・無線は問わない)やブルートゥース(登録商標)等を用いて行うことができる。そして、このような汎用的な通信手段のデータ転送速度は、OCTの撮影速度(フレームレート)よりも遅い。
【0015】
PC110のメモリは、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリとして、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、PC110に着脱可能に装着されるUSBメモリ、外部サーバー等を使用することができる。メモリには、眼科撮影装置1による正面画像および断層画像の撮影を制御するための撮影制御プログラムや撮影された画像の処理を行うための画像処理プログラム等が記憶されている。
【0016】
また、PC110のメモリには、PC110が眼科解析装置として使用されるための眼科解析プログラムが記憶されている。つまり、PC110は、眼科解析装置を兼用してもよい。また、メモリには、走査ラインにおける断層像(OCTデータ)、三次元断層像(三次元OCTデータ)、眼底正面像、断層像の撮影位置の情報等、撮影に関する各種情報が記憶される。操作入力部には、検者による各種操作指示が入力される。
【0017】
一方、眼科撮影装置1は、基台2と、基台2に対して左右方向(X方向)及び前後(作動距離)方向(Z方向)に移動可能な移動台3と、移動台3に対して3次元方向に移動可能に設けられ後述する光学系を収納する筐体としての装置本体4と、被検者の顔を支持するために基台2に固設された顔支持ユニット5を備える。装置本体4は、移動台3に設けられたXYZ駆動部6により、被検眼Eに対して左右方向、上下方向(Y方向)及び前後方向に相対的に移動される。移動台3は、ジョイスティック7の操作により基台2上をXZ方向に移動される。また、回転ノブ7aを回転操作することにより、XYZ駆動部6がY駆動し装置本体4がY方向に移動される。なお、装置本体4の検者側には、前眼部観察像等を表示するモニタ75が設けられている。
【0018】
眼科撮影装置1には、眼Eの断層像を得る干渉光学系(OCT光学系)200と、眼Eの正面像を得る観察光学系(スキャニングレーザオフサルモスコープ(SLO)光学系)300と、眼Eにアライメント指標を投影する投光光学系150と、前眼部の正面像を観察するための前眼部観察光学系90とが設けられている。これらの光学系は、装置本体4に内蔵され、前述のアライメント用移動機構(手動又は電動)により、眼Eに対して三次元的に移動される。
【0019】
<干渉光学系(OCT光学系)>
OCT光学系200は、測定光学系200aと参照光学系200bを含む。また、OCT光学系200は、参照光と測定光による干渉光を周波数(波長)毎に分光し、分光された干渉光を受光手段(本実施形態においては、1次元受光素子)に受光させる分光光学系800を有する。
【0020】
ダイクロイックミラー40は、OCT光学系200に用いられるOCT光源27から発せられる測定光(例えば、λ=840nm付近)を反射し、SLO光学系300に用いられるSLO光源61aから発せられるレーザ光(OCT光源27とは異なる波長の光、例えば、λ=780nm付近)を透過する特性を有する。この場合、ダイクロイックミラー40は、OCT光学系200の測定光軸L1とSLO光学系300の測定光軸L2とを同軸にする。
【0021】
まず、ダイクロイックミラー40の反射側に設けられたOCT光学系200の構成について説明する。OCT光源27はOCT光学系200の測定光及び参照光として用いられる低コヒーレントな光を発するOCT光源であり、例えばSLD光源等が用いられる。OCT光源27には、例えば、中心波長840nmで50nmの帯域を持つ光源が用いられる。ファイバーカップラー(スプリッタ)26は、光分割部材と光結合部材としての役割を兼用する。OCT光源27から発せられた光は、導光路としての光ファイバ38aを介して、ファイバーカップラー26によって参照光と測定光とに分割される。測定光は光ファイバ38bを介して被検眼Eへと向かい、参照光は光ファイバ38c(ポラライザ(偏光素子)33)を介して参照ミラー31へと向かう。
【0022】
測定光を被検眼Eへ向けて出射する光路には、測定光を出射する光ファイバ38bの端部39b、コリメータレンズ21、フォーカス用光学部材(フォーカシングレンズ)24、走査部(光スキャナ)23と、リレーレンズ22が配置されている。走査部23は、2つのガルバノミラーによって構成され、走査駆動機構51の駆動により、測定光源から発せられた光を眼底(被検物)上で二次元的(XY方向)に走査させるために用いられる。なお、走査部23は、例えば、AOM(音響光学素子)やレゾナントスキャナ等によって構成されていてもよい。
【0023】
ダイクロイックミラー40及び対物レンズ10は、OCT光学系200からのOCT測定光を被検眼眼底へと導光する導光光学系としての役割を有する。フォーカシングレンズ24は、駆動機構24aの駆動によって、光軸方向に移動可能となっており、被検者眼底に対する視度を補正するために用いられる。
【0024】
光ファイバ38bの端部39bから出射した測定光は、コリメータレンズ21によってコリメートされた後、フォーカシングレンズ24を介して、走査部23に達し、2つのガルバノミラーの駆動により反射方向が変えられる。その後、測定光は、リレーレンズ22を介して、ダイクロイックミラー40で反射された後、対物レンズ10を介して、被検眼眼底に集光される。
【0025】
そして、眼底で反射した測定光は、対物レンズ10を介して、ダイクロイックミラー40で反射し、OCT光学系200に向かい、リレーレンズ22、走査部23の2つのガルバノミラー、フォーカシングレンズ24及びコリメータレンズ21を介して、光ファイバ38bの端部39bに入射する。端部39bに入射した測定光は、光ファイバ38b、ファイバーカップラー26、光ファイバ38dを介して、光ファイバ38dの端部84aに達する。
【0026】
参照光学系200bは、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系200bは、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系200bは、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー31)によって形成され、ファイバーカップラー26からの光を反射光学系により反射することにより再度ファイバーカップラー26に戻し、受光素子83に導く。他の例としては、参照光学系200bは、透過光学系(例えば、光ファイバ)によって形成され、ファイバーカップラー26からの光を戻さず透過させることにより受光素子83へと導く。
【0027】
例えば、参照光を参照ミラー31に向けて出射する光路には、光ファイバ38c、参照光を出射する光ファイバ38cの端部39c、コリメータレンズ29、参照ミラー31が配置されている。光ファイバ38cは、参照光の偏光方向を変化させるため、駆動機構34により回転移動される。すなわち、光ファイバ38c及び駆動機構34は、偏光方向を調整するためのポラライザ33として用いられる。
【0028】
なお、本実施形態のポラライザ33は、測定光と参照光の偏光方向を一致させるために、測定光と参照光の少なくともいずれかの偏光方向を調整する。ポラライザ33は、測定光路又は参照光路の少なくともいずれかに配置される。ポラライザ33としては、上記構成に限定されず、例えば、光軸を中心に1/2波長板又は1/4波長板の回転角を調整することによって光の偏光方向を変える構成、ファイバーに圧力を加えて変形させることによって光の偏光方向を変える構成、などが考えられる。
【0029】
また、参照ミラー駆動機構50は、参照光との光路長を調整するために参照光路中に配置された参照ミラー31を駆動させる。参照ミラー31は、本実施形態においては、参照光路中に配置され、参照光路長を変化させるべく、光軸方向に移動可能な構成となっている。
【0030】
光ファイバ38cの端部39cから出射した参照光は、コリメータレンズ29で平行光束とされ、参照ミラー31で反射された後、コリメータレンズ29により集光されて光ファイバ38cの端部39cに入射する。端部39cに入射した参照光は、光ファイバ38c(ポラライザ33)を介して、ファイバーカップラー26に達する。
【0031】
そして、OCT光源27から発せられた光によって前述のように生成される参照光と被検眼眼底Efに照射された測定光による眼底反射光は、ファイバーカップラー26にて合成され干渉光とされた後、光ファイバ38dを通じて端部84aから出射される。周波数毎の干渉信号を得るために干渉光を周波数成分に分光する分光光学系800(スペクトロメータ部)は、コリメータレンズ80、グレーティングミラー(回折格子)81、集光レンズ82、受光素子83を有する。本実施形態では、受光素子83として、赤外域に感度を有する一次元素子(ラインCCD)を用いている。この受光素子83はカメラリンクにより制御部70(第2制御部270)に接続されている。
【0032】
ここで、端部84aから出射された干渉光は、コリメータレンズ80にて平行光とされた後、グレーティングミラー81にて周波数成分に分光される。そして、周波数成分に分光された干渉光は、集光レンズ82を介して、受光素子83の受光面に集光する。これにより、受光素子83上で干渉縞のスペクトルデータが記録され、そのデータに基づき、PC110において被検眼Eの断層画像が生成される。
【0033】
すなわち、受光素子83で取得されたスペクトルデータを、フーリエ変換を用いて解析することで、被験者眼の深さ方向における情報が計測可能となる。そして、走査部23により測定光を眼底Ef上で所定の横断方向に走査することにより断層像を取得できる。例えば、X方向もしくはY方向に走査することにより、被検眼眼底EfのXZ面もしくはYZ面における断層像(眼底断層像)を取得できる(なお、本実施形態においては、このように測定光を眼底に対して一次元走査し、断層像を得る方式をBスキャンとする)。さらに、走査部23の駆動を制御して、測定光をXY方向に二次元的に走査することにより、受光素子83からの出力信号に基づき被検者眼眼底のXY方向に関する二次元動画像や被検眼眼底の三次元画像を取得することも可能である。
【0034】
なお、受光素子83で取得されたスペクトルデータは、制御部70におけるメモリ73に一時的に記憶され、制御部70におけるプロセッサ71の指令により、所定のタイミングでPC110へ転送され、PC110に受信される。このPC110へのデータ転送の詳細については後述する。
【0035】
<観察光学系(SLO光学系)>
次に、ダイクロイックミラー40の透過方向に配置された観察光学系(SLO光学系)300について説明する。SLO光学系300は、被検眼眼底Efの正面像を取得するための光学系である。SLO光学系300は、被検眼眼底Efを照明する照明光学系と、該照明光学系によって照明された被検眼反射光を受光素子により受光する受光光学系とに大別され、受光素子から出力される受光信号に基づいて被検眼眼底Efの正面像を得る。
【0036】
光出射部61は、第1の光源(SLO光源)61a、第2の光源(固視光源)61b、ミラー69、ダイクロイックミラー101、とを有する。
【0037】
SLO光源61aは、高コヒーレントな光を発する光源であり、例えば、λ=780nmの光源(レーザダイオード光源やSLD光源等)が用いられる。固視光源61bは、可視域の波長の光であり、例えば、λ=630nmの光源(レーザダイオード光源やSLD光源等)が用いられる。SLO光源61を出射したレーザ光は、ダイクロイックミラー101を透過し、コリメートレンズ102を介して、ビームスプリッタ62に進む。固視光源61bを出射した可視光は、ミラー69によって折り曲げられた後、ダイクロイックミラー101によって反射され、SLO光源61aから出射したレーザ光と同軸とされる。
【0038】
SLO光源61aから発せられるレーザ光を被検眼Eに向けて出射する光路には、コリメートレンズ102、被検眼の屈折誤差に合わせて光軸方向に移動可能なフォーカシングレンズ63、走査駆動機構52の駆動により眼底上でXY方向に測定光を高速で走査させることが可能なガルバノミラーとポリゴンミラーとの組み合せからなる走査部64、リレーレンズ65、対物レンズ10が配置されている。また、走査部64のガルバノミラー及びポリゴンミラーの反射面は、被検眼瞳孔と略共役な位置に配置される。
【0039】
また、SLO光源61aとフォーカシングレンズ63との間には、ビームスプリッタ62が配置されている。そして、ビームスプリッタ62の反射方向には、共焦点光学系を構成するための集光レンズ66と、眼底に共役な位置に置かれる共焦点開口67と、SLO用受光素子68とが設けられている。
【0040】
ここで、SLO光源61aから発せられたレーザ光(測定光)は、ビームスプリッタ62を透過した後、フォーカシングレンズ63を介して、走査部64に達し、ガルバノミラー及びポリゴンミラーの駆動により反射方向が変えられる。そして、走査部64で反射されたレーザ光は、リレーレンズ65を介して、ダイクロイックミラー40を透過した後、対物レンズ10を介して、被検眼眼底Efに集光される。
【0041】
そして、眼底Efで反射したレーザ光は、対物レンズ10、リレーレンズ65、走査部64のガルバノミラー及びポリゴンミラー、フォーカシングレンズ63を経て、ビームスプリッタ62にて反射される。その後、集光レンズ66にて集光された後、共焦点開口67を介して、受光素子68によって検出される。そして、受光素子68にて検出されたSLO画像は制御部70へ入力され、制御部70のメモリ72に一時的に記憶される。なお、SLO画像の取得は、走査部64に設けられたガルバノミラーによるレーザ光の縦方向の走査(副走査)とポリゴンミラーによるレーザ光の横方向の走査(主走査)によって行われる。その後、メモリ72に記憶されたSLO画像は、制御部70のプロセッサ71の指令により、所定のタイミングでPC110へ転送され、PC110で受信された後、PC110によって、受信したSLO画像に基づき被検眼眼底Efの正面画像が生成される。なお、PC110へのデータ転送の詳細については後述する。
【0042】
<投光光学系>
投光光学系150は、角膜Ecに指標を投影するために用いられる。投光光学系150には、
図2の左下の点線内の図に示すように、光軸を中心として同心円上に45度間隔で近赤外光源が複数個配置されている。投光光学系150は、光軸L1を通る垂直平面を挟んで左右対称に配置された赤外光源151とコリメートレンズ152を持つ第1指標投光光学系(0度、及び180度)と、第1指標投光光学系とは異なる位置に配置され6つの近赤外光源153を持つ第2指標投光光学系と、を備える。なお、
図2には、便宜上、第1指標投光光学系(0度、及び180度)と、第2指標投光光学系の一部のみ(45度、135度)が図示されている。光源151は前眼部照明を兼ねる。もちろん、前眼部照明用の光源を別途設ける構成としてもよい。
【0043】
<前眼部観察光学系>
前眼部観察光学系90は、被検眼Eを撮像し前眼部像を得るために配置されている。前眼部観察光学系90は、対物レンズ10、ダイクロイックミラー91、結像レンズ95、二次元撮像素子(二次元受光素子)97を備える。
【0044】
投光光学系150による前眼部反射光及びアライメント光束は、対物レンズ10を介してダイクロイックミラー91によって反射された後、結像レンズ95を介して二次元撮像素子97により受光される。ダイクロイックミラー91は、OCT光学系200の測定光を透過する一方、投光光学系150によって照射された前眼部からの光を反射する。二次元撮像素子97の出力は制御部70に送信され、モニタ75には二次元撮像素子97によって撮像された前眼部像が表示される。
【0045】
なお、本実施形態において、投光光学系150及び前眼部観察光学系90は、被検眼Eに対して装置本体4を所定の位置関係に誘導させるためのアライメント検出光学系として用いられる。例えば、投光光学系150及び前眼部観察光学系90は、被検眼Eと装置本体4を所定の適正作動距離に誘導するために利用される。
【0046】
なお、アライメント検出光学系は、Z方向について被検眼Eに対する装置本体4のアライメント状態を検出する構成としては、被検眼Eに対して斜めからアライメント光を投光し、その反射光を斜め反対方向から受光してZアライメントを検出するようにしてもよい。
【0047】
<制御系>
制御部70は、装置全体の制御、測定、画像データの処理などを行う。制御部70は、モニタ75に接続され、その表示画像を制御する。また、制御部70には、各種操作を行うための操作部74、駆動機構24a、34、50、51、52、63a、光源27、61a、61b、151、153、受光素子83、撮像素子97、受光素子68、XYZ駆動部6、ジョイスティック7などが接続されている。
【0048】
制御部70は、撮像素子97から出力される撮像信号に基づいて眼Eと装置本体4に対するアライメント状態を検出し、その検出結果をモニタ75に出力する。もちろん、検出結果を、PC110に備わるモニタにも出力させてもよい。また、制御部70は、アライメント検出結果(例えば、アライメントずれ量)が所定の許容範囲を満たすようにXYZ駆動部6の駆動を制御し、眼Eに対して装置を自動的に移動させる自動アライメントを行うようにしてもよい。
【0049】
このような制御部70は、
図3に示すように、プロセッサ71とメモリ72,73とを備えており、各光学系における制御、測定、画像データの処理などを行うようになっている。なお、プロセッサ71は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路を意味する。このプロセッサは、例えば、メモリに格納されているプログラムを読み出し実行することで、後述する取得した画像への付加情報の添付処理やPC110へのデータ転送処理などを実施する。
【0050】
制御部70は、映像ケーブル173a,173bによりSLO用受光素子68,二次元撮像素子97と接続され、カメラリンク273により受光素子83と接続されている。また、制御部70は、USBケーブル172によりHUB171と接続されている。
【0051】
<眼科撮影装置の動作>
続いて、上記の構成を有する眼科撮影装置1の動作について説明する。まず、検者は、被検者の顔を顔支持ユニット5に固定させ、不図示の固視標を固視するように被検者に指示する。このとき、二次元撮像素子97によって撮像された前眼部像がモニタ75に表示される。
【0052】
<撮影条件の設定>
次に、検者は、ジョイスティック7を操作して装置本体4を移動させ、前眼部の瞳孔中心に測定光軸が位置するように、アライメント作業を行う。なお、このアライメント作業は、自動アライメントモードを利用して行ってもよいし、手動にて行ってもよい。
【0053】
そして、制御部70は、アライメント状態の適否を判定し、判定結果に基づいて、最適化制御を開始する。制御部70は、アライメント偏位量(ずれ)が所定の許容範囲内(例えば、XYZ方向におけるアライメント基準位置からのずれが0.5mm以内)であるか否かを判定する。例えば、制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に収まっているか否かにより、XYZ方向のアライメントの適否を判定する。
【0054】
制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に収まっている場合、アライメントが適正であると判定する。制御部70は、XYZ方向におけるアライメントが適正であると判定すると、XYZ駆動部6の駆動を停止させると共に、アライメント完了信号を出力する。一方、制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に収まっていない場合、アライメントが適正でないと判定し、自動アライメントを行う。
【0055】
アライメント完了信号が出力されると、制御部70は、最適化制御を開始するためのトリガ信号を発し、最適化の制御動作を開始する。制御部70は、最適化を行うことによって、検者が所望する眼底部位が高感度・高解像度で観察できるようにする。なお、本実施形態において、最適化の制御は、光路長調整、フォーカス調整、偏光状態の調整(ポラライザ調整)の制御である。なお、最適化の制御において、眼底に対する一定の許容条件を満たすことができればよく、最も適切な状態に調整する必要は必ずしもない。
【0056】
なお、最適化制御中において、制御部70は、アライメント偏位量が許容範囲を満たすように被検者眼に対して装置本体4を追尾させる制御(トラッキング)を行う。例えば、制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に、一定時間(例えば、画像処理の10フレーム分又は0.3秒間等)継続して収まっているかにより、XYZ方向のアライメントの適正状態が継続しているか否かを判定する。制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に、一定時間、継続して収まっている場合、アライメントの適正状態が継続していると判定し、XYZ駆動部6の駆動は停止させた状態を維持する。
【0057】
また、制御部70は、XYZ方向におけるアライメント偏位量がアライメント完了の許容範囲内に、一定時間、継続して収まっておらず、許容範囲を外れてしまっている場合、アライメントの適正状態が継続していないと判定し、XYZ駆動部6の駆動を開始し、自動アライメントを行う。この場合、例えば、制御部70は、XYZ駆動部6の駆動中(自動アライメント中)においても、最適化制御を続けて行う。
【0058】
もちろん、制御部70は、アライメント偏位量が許容範囲を外れた場合、最適化制御を停止するような構成としてもよい。また、最適化制御の停止後、アライメント偏位量が許容範囲内に復帰した場合、制御部70は、最適化制御を再開するような構成としてもよい。また、自動アライメントを行う場合には、最適化制御を初期位置からやり直す構成としてもよい。
【0059】
最適化制御において、制御部70は、初期化の制御として、参照ミラー31とフォーカシングレンズ24の位置を初期位置に設定する。初期化完了後、制御部70は、設定した初期位置から参照ミラー31を一方向に所定ステップで移動させ、第1光路長調整を行う(第1自動光路長調整)。また、第1光路長調整と並行するように、制御部70は、受光素子68から出力される受光信号によって取得されるSLO眼底像に基づいて被検眼眼底に対する合焦位置情報を取得する。合焦位置情報が取得されると、制御部70は、フォーカシングレンズ24を合焦位置に移動させ、オートフォーカス調整(フォーカス調整)を行う。なお、合焦位置とは、観察画像として許容できる断層画像のコントラストを取得できる位置であればよく、必ずしも、フォーカス状態の最適位置である必要はない。
【0060】
そして、フォーカス調整完了後、制御部70は、再度、参照ミラー31を光軸方向に移動させ、光路長の再調整(光路長の微調整)をする第2光路長調整を行う。第2光路長調整完了後、制御部70は、参照光の偏光状態を調節するためのポラライザ33を駆動させ、測定光の偏光状態を調整する(詳しくは、特願2012-56292号参照)。このようにして、最適化の制御が完了されることにより、検者が所望する眼底部位が高感度・高解像度で観察できるようになる。
【0061】
これにより、
図4に示すような高感度・高解像度のSLO画像15が、モニタ75に表示される。もちろん、SLO画像15をPC110に備わるモニタに表示させてもよい。そして、検者は、リアルタイムで観察されるモニタ75上のSLO画像15から撮影したい断層画像(OCT画像)の位置を設定する。ここで、検者は、操作部74を用いて、SLO画像15に対して走査ラインSLを移動させていき、走査位置を設定する(例えば、走査ラインSLのドラッグ操作)。なお、走査ラインSLがX方向となるように設定すればXZ面の断層画像の撮影が行われ、走査ラインSLがY方向となるように設定すれば、YZ面の断層画像の撮影が行われるようになっている。また、走査ラインSLを任意の形状(例えば、斜め方向や丸等)に設定できるようにしてもよい。
【0062】
<撮影動作>
以上のようにして、撮影条件の設定が完了した後、検者によって、操作部74に備わる撮影開始スイッチ74aが操作されると、制御部70は、画像の撮影を開始する。なお、撮影を開始するスイッチは、操作部74とは異なる部分に設けることもできる。例えば、ジョイスティック7のボタン7bを撮影開始スイッチとして使用することができる。そして、制御部70により、SLO画像とOCT画像(スペクトルデータ)とが並行して取得されて、取得された各画像がPC110へ転送され、PC110により複数のOCT画像(スペクトルデータ)が加算平均処理されることにより、ノイズ成分を抑制したOCT画像が生成される。
【0063】
そこで、このようなOCT画像を生成するための撮影動作について、
図5~
図7を参照しながら説明する。なお、
図5は、装置本体で実施される画像取得及び取得画像のPCへのデータ転送の処理内容を示すフローチャートである。
図6は、OCT画像の生成手順を概念的に説明する図である。
図7は、ガルバノ情報を利用してスキャン位置をフィードバック制御しながらOCT画像を生成する手順を概念的に説明する図である。
【0064】
まず、装置本体側で実施される処理について、
図5を参照しながら説明する。操作部74からの撮影開始信号が入力されると、制御部70は、OCT画像(スペクトルデータ)及びSLO画像の取り込み動作を開始する。すなわち、制御部70は、受光素子68からのSLO画像の取り込みを開始するとともに、受光素子83で検出される走査ラインSLに対応する走査位置における断層画像データの取り込みを開始する。この場合、例えば、装置本体4にて取得されたスペクトルデータがPC110に転送され、PC110にてOCT画像が生成されてもよい。また、これに限定されず、装置本体4にて取得されたスペクトルデータに基づいて装置本体4にてOCT画像が生成され、生成されたOCT画像がPC110に転送される構成であってもよい。つまり、断層画像データとしては、例えば、スペクトルデータであってもよいし、スペクトルデータに基づくOCT画像であってもよい。
【0065】
具体的には、プロセッサ71が、メモリ72にバッファを作成する(ステップS10)。次に、プロセッサ71は、SLO画像を取得する。つまり、プロセッサ71は、SLO光源61aによって照明され、SLO用受光素子68で撮像されているSLO画像を静止画として取得する(ステップS11)。SLO画像を取得すると(ステップS11:YES)、プロセッサ71は、そのSLO画像に対して、付加情報としてタイムスタンプを添付する(ステップS12)。そして、プロセッサ71は、タイムスタンプを添付したSLO画像を、メモリ72に作成したバッファに展開する(一時的に記憶させる)(ステップS13)。つまり、プロセッサ71は、SLO画像をメモリ72のバッファに展開するときにタイムスタンプを添付する。
【0066】
このSLO画像の取り込み処理と並行して、OCT画像(スペクトルデータ)の取り込み処理が実施される。すなわち、プロセッサ71が、メモリ73にバッファを作成する(ステップS20)。そして、プロセッサ71は、OCT画像(スペクトルデータ)(例えば、1Bスキャン分のデータ)を取得する(ステップS21)。つまり、プロセッサ71は、SLO画像15上に設定された走査ラインSLの表示位置に基づいて、走査ラインSLの位置に対応する眼底の断層画像(Bスキャン画像)が得られるように、走査部23を駆動させて測定光を走査させる。そして、そのときの受光素子83からの検出信号を取得する。OCT画像(スペクトルデータ)を取得すると(ステップS21:YES)、プロセッサ71は、OCT画像(スペクトルデータ)に対して、付加情報としてタイムスタンプ及び/又はガルバノ情報(走査位置情報)を添付する(ステップS22)。つまり、1Bスキャン分のOCT画像(スペクトルデータ)毎に、タイムスタンプ及び/又はガルバノ情報(走査位置情報)が添付される。そして、プロセッサ71は、タイムスタンプ及び/又はガルバノ情報を添付した1Bスキャン分のOCT画像(スペクトルデータ)を、メモリ73に作成したバッファに展開する(一時的に記憶させる)(ステップS23)。つまり、プロセッサ71は、1Bスキャン分のOCT画像(スペクトルデータ)をメモリ73のバッファに展開するときにタイムスタンプ及び/又はガルバノ情報を添付する。
【0067】
ここで、タイムスタンプは、各メモリ72,73に備わるカウンタに基づいて、各メモリ72,73に作成されたバッファに展開されるタイミングで添付される。そして、各メモリ72,73に備わるカウンタは、眼科撮影装置1の電源が投入されたとき、又は撮影開始信号が入力されたときにカウントアップが開始され同期が取られる。これにより、SLO画像に添付されるタイムスタンプと1Bスキャン分のスペクトルデータに添付されるタイムスタンプとの同期を取ることができる。
【0068】
本実施形態では、例えば、
図6に示すように、OCT画像(スペクトルデータ)に対して、タイムスタンプが順に、T1,T2,T3,T4,・・・・・と添付されるとともに、走査部23の状態(走査位置)を特定するガルバノ情報G1,G1,・・・が添付される。一方、SLO画像は、OCT画像(スペクトルデータ)よりも撮影速度(フレームレート)が遅いため、SLO画像の取得順に、T1,T4,T7,T10,・・・・・とタイムスタンプが添付される。
【0069】
そして、SLO画像に添付されるタイムスタンプと1Bスキャン分のOCT画像(スペクトルデータ)に添付されるタイムスタンプとの同期が取られているので、例えば、同じタイムスタンプT1,T4,T7,T10,・・・が添付されている画像は、同じタイミングで取得(撮影)されたものであると判断することができる。つまり、各画像に添付されたタイムスタンプを利用することにより、SLO画像とOCT画像(スペクトルデータ)との関連づけを行うことができる。従って、SLO画像が取得されたタイミングと同じタイミングで取得されたOCT画像(スペクトルデータ)を特定することができる。なお、SLO画像、OCT画像にタイムスタンプが添付される場合、画像取得のための走査タイミング(例えば、走査開始時、走査終了時)からバッファに展開されるまでのタイミングずれを考慮してタイムスタンプが添付されてもよい。例えば、制御部70は、SLO画像又はOCT画像がバッファに展開されるタイミングに対し、当該タイミングずれ分、オフセットを加えてもよい。オフセット量は、例えば、既知の値であってもよく、SLO画像とOCT画像で異なってもよい。これによれば、SLO画像又はOCT画像を得る走査動作タイミングにてタイムスタンプを付すことができるので、各画像を得るタイミングをより正確に把握することが可能となり、各種制御を精度よく行うことができる。
【0070】
また、各OCT画像(スペクトルデータ)に添付されたガルバノ情報G1,G1,・・・を利用することにより、各OCT画像(スペクトルデータ)が取得されたときの走査部23の状態(走査位置)を把握することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、付加情報として画像にタイムスタンプやガルバノ情報を添付しているが、これら以外の情報(例えば、各部の情報や設定値など)を付加情報として添付してもよい。付加情報としては、例えば、装置本体と眼とのアライメント情報(例えば、眼と装置との間の作動距離)、光路長調整の完了位置(例えば、光路長調整後の光路長調整部材の駆動位置)であってもよい。なお、光路長調整部材としては、例えば、参照ミラーであってよいし、これに限定されず、光路長調整部材は、測定光の光路に配置された光学部材であってもよい。
【0072】
このようにして、制御部70によりSLO画像及びOCT画像(スペクトルデータ)が取得され、各メモリ72,73のバッファに各画像が展開されると、それらの各画像がそれぞれPC110へ転送される。具体的には、制御部70においてプロセッサ71が、PC110と接続されているUSBケーブル115の通信帯域α(データ転送速度の上限)の状態を検出する。つまり、現時点でのUSBケーブル115におけるデータ転送可能容量がどのくらいあるのかを検出する。そして、USBケーブル115の通信帯域αに空きがあれば(ステップS14:YES)、言い換えると、現時点でUSBケーブル115におけるデータ転送可能容量が転送予定のデータ容量よりも大きければ、メモリ72のバッファに展開したSLO画像を、USBケーブル172、HUB171、USBケーブル78,115を介してPC110に転送する(ステップS15)。このとき、PC110は、メモリ72から出力(転送)されたSLO画像を受信する。
【0073】
そして、メモリ72のバッファに展開されたSLO画像のPC110への転送が完了してPC110の受信が終了すると、プロセッサ71は、メモリ72のバッファを空き状態にする(ステップS16)。そのため、PC110への転送が完了するまで、取得されたSLO画像がメモリ72のバッファに保存される。その後、上記のSLO画像の取得とPC110への転送処理は、後述する所定の終了条件Aを満たすまで繰り返し行われ、終了条件Aを満たすと(ステップS17:YES)、SLO画像の取り込み(撮影)が終了する。
【0074】
また、プロセッサ71は、PC110と接続されているUSBケーブル115の通信帯域α(データ転送速度の上限)の状態を検出して空きがあれば(ステップS24:YES)、メモリ72のバッファに展開したOCT画像(スペクトルデータ)を、USBケーブル172、HUB171、USBケーブル78,115を介してPC110に転送する(ステップS25)。このとき、USBケーブル115の通信帯域αに空きはあるが、メモリ72のバッファに展開したOCT画像(スペクトルデータ)が大容量であり、通信帯域αの空きでは一度にデータを送信することが困難である場合には、通信帯域αの空き容量に応じて送信するデータ容量を可変させるようにすればよい。つまり、USB通信帯域αを安定して確保するために、OCT画像(スペクトルデータ)の送信タイミングで帯域αを管理してもよいし、通信相手側(PC110)からの応答で帯域αの空きを監視し管理してもよい。
【0075】
これにより、受光素子83でのOCT画像(スペクトルデータ)の取得(撮影)速度が、USB3.0の転送上限速度を超えるような場合であっても、後述の終了条件Aを満たすまでBスキャンを中断することなく連続的に行ってOCT画像(スペクトルデータ)を連続的に取得することができる。つまり、受光素子83の最大フレームレートでOCT画像(スペクトルデータ)を取得することができる。従って、OCT画像の生成に必要な枚数のOCT画像の静止画を短時間で取得することができる。
【0076】
そして、メモリ72のバッファに展開されたOCT画像(スペクトルデータ)のPC110への転送が完了してPC110の受信が終了すると、プロセッサ71は、メモリ72のバッファを空き状態にする(ステップS26)。そのため、PC110への転送が完了するまで、メモリ72のバッファに取得されたOCT画像(スペクトルデータ)が保存される。これにより、例えば、マップ撮影など一連のシーケンス処理中に一部のOCT画像(スペクトルデータ)の転送に失敗した場合であっても、メモリ72のバッファに保存されているOCT画像(スペクトルデータ)を再転送することができる。従って、OCT画像(スペクトルデータ)の転送に失敗しても、OCT画像(スペクトルデータ)の再取得(撮影)を行う必要がない。
【0077】
その後、上記のOCT画像(スペクトルデータ)の取得と転送処理は、所定の終了条件Aを満たすまで繰り返し行われる(ステップS27)。なお、所定の終了条件Aは、PC110で加算平均処理に使用可能と判定されたOCT画像の静止画が加算枚数の設定上限に枚数に達することである。つまり、PC110で加算平均処理に使用するOCT画像の静止画が加算枚数の設定上限枚数に達するまで、OCT画像(スペクトルデータ)の取り込み(撮影)が行われる。
【0078】
<OCT画像の生成>
次に、PC110で実施される処理(OCT画像の生成)について、
図6を参照しながら説明する。制御部70の各メモリ72,73から各画像を受信したPC110は、まず、走査ラインSLが設定されたときのSLO画像を基準画像に設定する。そして、PC110は、制御部70から順次受信するSLO画像の基準画像に対する位置ズレ(変位量)を画像処理により検出する。
【0079】
このとき、受信したSLO画像の位置ズレが許容範囲内であれば、PC110は、そのSLO画像と同じタイミングで取得されたOCT画像(スペクトルデータ)を静止画として、PC110のメモリに取り込む(判定○)。一方、受信したSLO画像の位置ズレが許容範囲内にない場合、PC110は、そのSLO画像と同じタイミングで取得されたOCT画像(スペクトルデータ)を破棄する(判定×)。
【0080】
具体的に本実施形態では、例えば、タイムスタンプT1のSLO画像の位置ズレが許容範囲内であると判断されたとすると(判定○)、タイムスタンプT1のOCT画像が静止画として、PC110のメモリに取り込まれる。なお、OCT画像(スペクトルデータ)には、ガルバノ情報G1も添付される。
【0081】
次に、タイムスタンプT4のSLO画像の位置ズレが許容範囲内でないと判断されたとすると(判定×)、タイムスタンプT2からT4のOCT画像(スペクトルデータ)は、位置ズレした状態で取得されたものであると判断されて破棄される。
【0082】
そして、タイムスタンプT7のSLO画像の位置ズレが許容範囲内であると判断されたとすると(判定○)、タイムスタンプT7のOCT画像が静止画として、PC110のメモリに取り込まれる。また、タイムスタンプT7以前でT5以降(T5,T6)のOCT画像(スペクトルデータ)は、位置ズレした状態で取得されたものであると判断されて破棄される。
【0083】
さらに、タイムスタンプT10のSLO画像の位置ズレが許容範囲内であると判断されたとすると(判定○)、タイムスタンプT10のOCT画像が静止画として、PC110のメモリに取り込まれる。また、タイムスタンプT10以前でT8以降(T8,T9)のOCT画像(スペクトルデータ)は、位置ズレしていない状態で取得されたものであると判断され、静止画としてPC110のメモリに取り込まれる。
【0084】
以後、このような処理が繰り返し行われ、「判定○」と判断されてPC110のメモリに取り込んだOCT画像の静止画が加算枚数の設定上限枚数に達すると、PC110は、メモリに取り込んだOCT画像の静止画を加算平均処理してOCT画像(Bスキャン画像)を生成する。
【0085】
このように本実施形態の眼科撮影装置1では、メモリ73にバッファを作成して、そのバッファにOCT画像(スペクトルデータ)を一時的に記憶させる。また、メモリ73のバッファに記憶させる際に、SLO画像とOCT画像(スペクトルデータ)とを関連づけるタイムスタンプを添付する。つまり、タイムスタンプを添付した状態のOCT画像(スペクトルデータ)をメモリ73のバッファに記憶させる。これにより、OCT画像(スペクトルデータ)を取得した後に、タイムスタンプを利用して、SLO画像の位置ズレが許容範囲内にない状態で取得(撮影)されたOCT画像(スペクトルデータ)を特定することができる。そのため、OCT画像(スペクトルデータ)の取り込み(撮影)を、従来のようにUSBの帯域やSLO画像の撮影速度の影響(制限)を受けることなく行うことができる。これにより、加算平均処理したOCT画像の生成時間を短縮することができる。
【0086】
また、本実施形態の眼科撮影装置1では、PC110との接続をUSBにより行っているため、接続するPC110の汎用性が高い。従って、本実施形態の眼科撮影装置1によれば、接続するPC110の汎用性が高いとともに、ノイズが低減された高画質のOCT画像を短時間で生成することができる。これにより、検査時間が短くなるので、被検者の負担を軽減することができる。
【0087】
ここで、3次元OCT画像を生成する場合には、上記のOCT画像(スペクトルデータ)の取り込み(撮影)が、複数のスキャンライン(例えば256ライン)において実施される。このため、USBケーブル115の帯域α(データ転送速度の上限)では、OCT画像(スペクトルデータ)の撮影速度に対応して、PC110へのデータ転送を行うことができなくなるおそれがある。
【0088】
しかしながら、本実施形態の眼科撮影装置1では、制御部70において、OCT画像(スペクトルデータ)をメモリ72のバッファに一時的に記載させ、USBケーブル115の帯域αに空きがあるときに、メモリ72のバッファに一時的に記載させたOCT画像(スペクトルデータ)をPC110へ転送している。これにより、3次元OCT画像を生成する場合にも、USBケーブル115の帯域αに制約されることなく、受光素子83の最大フレームレートでOCT画像(スペクトルデータ)を取得することができる。
【0089】
また、上記したようにタイムスタンプによりOCT画像(スペクトルデータ)はSLO画像と関連づけられている。そのため、撮影後に、被検眼に位置ズレ(固視ズレ)があったOCT画像をタイムスタンプを利用することにより特定することができる。これにより、OCT画像(スペクトルデータ)の撮影速度が、従来のようにSLO画像の撮影速度に制限されることもない。従って、3次元OCT画像を生成するために必要なOCT画像(スペクトルデータ)を非常に短時間で取得することができる。
【0090】
そして、PC110において、取得したOCT画像(スペクトルデータ)から3次元OCT画像を生成する際に、あるスキャンラインにおけるOCT画像(スペクトルデータ)が位置ズレによって不良になったり、データ量が不足している場合などには、OCT画像(スペクトルデータ)に添付されているガルバノ情報に基づいて、そのスキャンラインにおけるOCT画像(スペクトルデータ)を再取得することができる。
【0091】
例えば、PC110が、メモリ72から、3次元OCT画像の生成に必要となるスキャンライン分、例えば256ライン分のOCT画像(スペクトルデータ)を一度に受信することができて3次元OCT画像の生成処理を行う場合に、あるスキャンラインにおけるデータの不良・不足が検出されたとする。その場合には、データの不良・不足が検出されたスキャンラインをガルバノ情報に基づき特定し、その特定したスキャンラインにおけるOCT画像(スペクトルデータ)を再取得する。そして、再取得したOCT画像(スペクトルデータ)を使用して、3次元OCT画像を生成する。
【0092】
あるいは、PC110が、メモリ72から順次受信するスキャンライン数例分のOCT画像(スペクトルデータ)に対して、3次元OCT画像を生成するための処理実行中に、あるスキャンラインにおけるデータの不良・不足が検出されたとする。その場合には、現在取得中のOCT画像(スペクトルデータ)の撮影を一時中断して、データの不良・不足が検出されたスキャンラインをガルバノ情報に基づき特定し、その特定したスキャンラインにおけるOCT画像(スペクトルデータ)を再取得する。
【0093】
このように、PC110が、3次元OCT画像の生成に必要となるスキャンライン分のOCT画像(スペクトルデータ)を、一括で受信する場合あるいは順次数列ずつ受信する場合にかかわらず、取得したOCT画像(スペクトルデータ)に不良や不足が発生した場合には、瞬時に不良・不足分のOCT画像(スペクトルデータ)を再取得することができる。そのため、高画質の3次元OCT画像を生成するために必要となるOCT画像(スペクトルデータ)を非常に短時間で取得することができる。従って、高画質の3次元OCT画像を非常に短時間で生成することができる。
【0094】
また、眼科撮影装置1において、PC110でOCT画像を生成する際、SLO画像に位置ズレが検出された場合に、そのSLO画像に対応するOCT画像(スペクトルデータ)を破棄するとともに、位置ズレの変位量に応じたガルバノ補正指令(走査位置補正指令:位置ズレの変位量に対応するガルバノ制御信号)を、制御部70へ送信するようにしてもよい。これにより、ガルバノ補正指令を受信した制御部70により、ガルバノ補正指令に基づいて駆動機構24aが制御されて走査部23に備わる2つのガルバノミラーが適宜駆動される。その結果、SLO画像に位置ズレが生じていても、走査ラインSLの位置に対応する眼底のOCT画像(スペクトルデータ)を取得することができる。
【0095】
具体的には、
図7に示すように、PC110は、タイムスタンプT1のSLO画像の位置ズレが許容範囲内であると判断すると(判定○)、タイムスタンプT1のOCT画像を静止画としてPC110のメモリに取り込む。なお、タイムスタンプT1~T3のOCT画像(スペクトルデータ)には、ガルバノ情報G1が添付される。
【0096】
次に、タイムスタンプT4のSLO画像の位置ズレが許容範囲内でないと判断されたとすると(判定×)、PC110は、タイムスタンプT2~T4までのOCT画像(スペクトルデータ)を破棄するとともに、ガルバノ補正指令を制御部70に送信する。制御部70は、ガルバノ補正指令に基づいて駆動機構24aを制御して走査部23に備わる2つのガルバノミラーを適宜駆動する。走査部23のガルバノミラーが駆動された後に、タイムスタンプT6以降のOCT画像(スペクトルデータ)が取得されたとすると、タイムスタンプT6のOCT画像(スペクトルデータ)からガルバノ情報がG1からG2に変更されて添付される。この場合、PC110は、タイムスタンプT5のOCT画像(スペクトルデータ)を得る際の走査を途中キャンセルして、次のOCT画像(タイムスタンプT6)を得るための走査に移行してもよい。
【0097】
そして、PC110は、タイムスタンプT7のSLO画像を受信すると、基準画像に対する位置ズレの変位量から前回のSLO画像(タイムスタンプT4)と一致すると判断する(判定○)。つまり、タイムスタンプT7のSLO画像は基準画像に対しては位置ズレが発生しているが、その位置ズレに対するガルバノ補正が実施された状態からは変化していない。従って、このときに取得されたタイムスタンプT6,T7のOCT画像(スペクトルデータ)は、走査ラインSLの位置に対応する眼底の断層位置におけるものとなっている。そのため、タイムスタンプT6,T7のOCT画像が静止画として、PC110のメモリに取り込まれる。なお、タイムスタンプT6,T7のOCT画像(スペクトルデータ)には、ガルバノ情報G2が添付される。
【0098】
その後、このようなフィードバック制御を実施しながら、PC110のメモリへのOCT画像の静止画の取り込み処理が繰り返し行われる。そして、PC110のメモリに取り込んだ静止画が必要枚数に達すると、PC110は、メモリに取り込んだ静止画に基づいてOCT画像を生成する。
【0099】
以上、説明したように、本実施形態の眼科撮影装置1では、OCTの撮影速度(受光素子83のフレームレート)よりも遅い転送速度が上限となっている汎用の通信手段(一例としてUSB)を介してPC110を接続する場合に、OCT画像(スペクトルデータ)の取り込み(撮影)を、従来のようにUSBの帯域やSLO画像の撮影速度の影響(制限)を受けることなく、OCT用の受光素子83の最大フレームレートで行うことができる。また、PC110への転送に失敗しても、そのOCT画像(スペクトルデータ)がメモリ72のバッファに保存されているので、同じOCT画像(スペクトルデータ)を即時に再転送することができる。これにより、OCT用の受光素子83の撮影速度の高速化に追従して、PC110へOCT画像(スペクトルデータ)を取り込むことができる。従って、OCT画像の生成時間を短縮することができる。特に、OCT画像(スペクトルデータ)の取り込み量(データ量)が多くなる3次元OCT画像の生成時間を大幅に短縮することができる。
【0100】
また、本実施形態の眼科撮影装置1では、PC110との接続をUSBにより行っているため、接続するPC110の汎用性が高い。従って、本実施形態の眼科撮影装置1によれば、接続するPC110の汎用性が高く、ノイズが低減された高画質のOCT画像を短時間で生成することができる。これにより、検査時間が短くなるので、被検者の負担を軽減することができる。
【0101】
なお、上記した実施形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、撮影条件の設定や撮影開始の指示を装置本体4で行う場合について例示しているが、これらの設定や指示などをPC110の入力指示部(例えば、マウス、キーボード等)から行うこともできる。
【0102】
また、上記の実施形態において、PC110は、OCT画像を生成した後、画像解析することにより層検出や視神経乳頭解析などを行い、その解析結果をPC110のモニタやモニタ75に表示したり、プリントアウトするようにしてもよい。
【0103】
また、上記の実施形態では、眼科撮影装置1のOCTとして、Spectral-domain OCT(SD-OCT)を用いた場合を例示しているが、これ以外のOCT、例えば、Swept-source OCT(SS-OCT)等を用いることもできる。
【0104】
また、上記の実施形態では、付加情報としてのタイムスタンプをメモリ72,73に取り込む際に各画像に添付しているが、受光素子68,83において各画像を撮像した際にタイムスタンプを添付してもよいし、メモリ72,73から出力する際に添付してもよい。
【0105】
なお、上記の実施形態において、SLO画像の位置ズレに基づいてOCT画像(スペクトルデータ)の取捨選択を行う場合(例えば、
図7参照)、PC110は、基準画像の取得後に順次受信されるSLO画像の基準画像に対する部分的な歪みの有無を判定し、判定結果に応じてOCT画像を取捨選択してもよい。この場合、例えば、PC110は、各OCT画像が取得されるタイミングでのSLO画像中の部分領域を付加情報(例えば、走査位置情報、又はタイムスタンプ)として記憶しておく。
PC110は、例えば、一つのOCT画像が取得されるタイミングに対応するSLO画像の部分領域と、基準画像とを比較することで、基準画像に対する歪みの有無を判定する。ここで、位置ズレが大きければ、歪みありと判定し、位置ズレが少ない場合、歪み無と判定してもよいし、所定の画像処理によって歪みの有無を判定してもよい。
上記のようにして、順次受信されるSLO画像と基準画像とをOCT画像単位で比較することによって、SLO画像間の部分的な歪みの有無をOCT画像単位で判定し、歪みが検出されたOCT画像を破棄し、歪みが無かったOCT画像を採用することによって、各OCT画像の取捨選択をより正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0106】
1 眼科撮影装置
15 SLO画像
70 制御部
71 プロセッサ
72 メモリ
73 メモリ
74 操作部
75 モニタ
83 受光素子
110 PC
115 USBケーブル
200 干渉光学系(OCT光学系)
300 観察光学系(SLO光学系)
E 被検眼
G1,G2・・・ ガルバノ情報
SL 走査ライン
T1,T2・・・ タイムスタンプ