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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20221213BHJP
   H01C 1/142 20060101ALI20221213BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01C1/142
H01G4/30 201F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017227861
(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公開番号】P2019102471
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-06-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 則之
(72)【発明者】
【氏名】須田 昭
(72)【発明者】
【氏名】土井 重幸
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 康則
(72)【発明者】
【氏名】阿部 稔
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-203770(JP,A)
【文献】特開2014-197666(JP,A)
【文献】特開2004-235377(JP,A)
【文献】特開2009-206460(JP,A)
【文献】特開2009-239094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01C 1/142
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状を呈しており、実装面とされる第1主面と、前記第1主面と互いに対向している第2主面と、前記第1主面と前記第2主面との間を連結するように延びている四つの側面と、を有している素体と、
前記第1主面の一部と、前記四つの側面のうち一つの側面の一部と、を連続して覆うように設けられた端子電極と、を備え、
前記端子電極は、焼結金属層と、前記焼結金属層の全体を覆うように前記焼結金属層上に設けられた導電性樹脂層と、を有しており、
前記導電性樹脂層は、前記第1主面と前記一つの側面との間の稜線部上のみに設けられた第1電極部分と、前記第1電極部分と隣り合うように前記一つの側面上に設けられた第2電極部分と、を有しており、
前記第1電極部分の厚さの平均値は、前記第2電極部分の厚さの平均値よりも厚い、電子部品。
【請求項2】
前記焼結金属層は、前記稜線部上に設けられた第3電極部分を有しており、
前記第1電極部分の厚さは、前記第3電極部分の厚さよりも厚い、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記焼結金属層は、前記稜線部上に設けられた第3電極部分と、前記一つの側面上に設けられた第4電極部分と、を有しており、
前記第3電極部分の厚さは、前記第4電極部分の厚さよりも厚い、請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1電極部分の厚さは、前記第3電極部分の厚さよりも厚い、請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記端子電極は、前記四つの側面のうち前記一つの側面以外の三つの側面から離間して設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記焼結金属層の前記第1主面上の端縁は、略直線状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、直方体形状を呈する素体と、素体の端面に設けられた端子電極と、を備える電子部品が記載されている。この電子部品では、端子電極が素体の端面だけでなく、上面、下面及び一対の側面を連続して覆うように設けられている。端子電極は、金属ペーストの焼き付け又はめっきにより形成された第1の電極層と、導電性樹脂からなり、第1の電極層上に形成された第2の電極層と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-182879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような電子部品では、はんだ実装される際等に、熱衝撃による端子電極の膨張(引張応力)及び収縮(圧縮応力)により、素体と端子電極との間にクラックが生じる場合がある。
【0005】
本発明の一側面は、端子電極の耐久性の向上を図ることができる電子部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの調査研究によれば、端子電極のうち、実装面とされる第1主面と側面との間の稜線部上に設けられた電極部分に熱衝撃による応力が集中することが分かった。
【0007】
そこで、本発明の一側面に係る電子部品は、直方体形状を呈しており、実装面とされる第1主面と、第1主面と互いに対向している第2主面と、第1主面と第2主面との間を連結するように延びている四つの側面と、を有している素体と、第1主面の一部と、四つの側面のうち一つの側面の一部と、を連続して覆うように設けられた端子電極と、を備え、端子電極は、焼結金属層と、焼結金属層上に設けられた導電性樹脂層と、を有しており、導電性樹脂層は、第1主面と一つの側面との間の稜線部上に設けられた第1電極部分と、一つの側面上に設けられた第2電極部分と、を有しており、第1電極部分の厚さは、第2電極部分の厚さよりも厚い。
【0008】
この電子部品では、導電性樹脂層のうち、稜線部上に設けられた第1電極部分の厚さが、側面上に設けられた第2電極部分の厚さよりも厚い。第2電極部分は、例えば、電子部品がはんだ実装された際に、焼結金属層とはんだとの間に配置される。第2電極部分の厚さが薄いので、導電性樹脂層の電気伝導率が焼結金属層の電気伝導率よりも低い場合でも、第2電極部分に起因して、焼結金属層とはんだとの間で電気抵抗が高くなることを抑制可能となる。また、第1電極部分の厚さが厚いので、熱衝撃によって稜線部上に設けられた端子電極に集中する応力を緩和することができる。これにより、端子電極の耐久性の向上を図ることができる。
【0009】
この電子部品では、焼結金属層は、稜線部上に設けられた第3電極部分を有しており、第1電極部分の厚さは、第3電極部分の厚さよりも厚くてもよい。この場合、導電性樹脂層の方が焼結金属層よりも軟らかいので、第1電極部分の厚さが、第3電極部分の厚さよりも薄い場合に比べて、端子電極の耐久性を更に向上させることができる。
【0010】
この電子部品では、焼結金属層は、稜線部上に設けられた第3電極部分と、一つの側面上に設けられた第4電極部分と、を有しており、第3電極部分の厚さは、第4電極部分の厚さよりも厚くてもよい。この場合、第3電極部分の厚さが、第4電極部分の厚さよりも薄い場合に比べて、端子電極の耐久性を更に向上させることができる。
【0011】
この電子部品では、端子電極は、四つの側面のうち一つの側面以外の三つの側面から離間して設けられていてもよい。この場合、例えば、第1主面と、第2主面と、一つの側面と、一つの側面と隣り合う二つの側面と、を連続して覆うように端子電極が設けられている場合に比べて、端子電極が剥離し易い。このような場合でも、第1電極部分の厚さが、第2電極部分の厚さよりも厚いので、熱衝撃によって稜線部上に設けられた端子電極に集中する応力を緩和し、端子電極の剥離を抑制することができる。
【0012】
この電子部品では、焼結金属層の主面上の端縁は、略直線状であってもよい。この場合、焼結金属層の主面上の端縁が凸形状の場合に比べて、焼結金属層の主面上の端縁に応力が集中することを抑制可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面は、端子電極の耐久性の向上を図ることができる電子部品を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。
図2図2は、端子電極の断面図である。
図3図3は、端子電極の端部の平面図である。
図4図4は、一実施形態に係る電子部品の等価回路を示す図である。
図5図5は、素体の分解斜視図である。
図6図6は、素体内の構成を示す斜視図である。
図7図7は、比較例に係る端子電極の端部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、一実施形態に係る電子部品を示す斜視図である。図1に示されるように、電子部品1は、素体2と、第1端子電極4と、第2端子電極5と、第3端子電極6と、第4端子電極7と、第5端子電極8と、第6端子電極9と、を備えている。電子部品1は、例えば、複数の絶縁体層が積層されてなる積層型フィルタである。電子部品1は、ダイプレクサである。
【0017】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、その外表面として、互いに対向している一対の主面2a,2bと、一対の主面2a,2bの間を連結するように延びており且つ互いに対向している一対の側面2c,2dと、一対の主面2a,2bの間を連結するように延びており且つ互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。主面2aは、例えば電子部品1を図示しない他の電子機器(例えば、回路基板、又は、電子部品等)に実装する際、他の電子機器と対向する面(実装面)として規定される。
【0018】
一対の主面2a,2bが互いに対向している方向D1と、一対の側面2c,2dが互いに対向している方向D2と、一対の側面2e,2fが互いに対向している方向D3とは、互いに略直交している。素体2の方向D1の長さは、例えば、0.9mmであり、素体2の方向D2の長さは、例えば、2mmであり、素体2の方向D3の長さは、例えば1.25mmである。
【0019】
素体2は、主面2aと側面2cとの間、主面2aと側面2dとの間、主面2aと側面2eとの間、主面2aと側面2fとの間、主面2bと側面2cとの間、主面2bと側面2dとの間、主面2bと側面2eとの間、主面2bと側面2fとの間、側面2cと側面2eとの間、側面2eと側面2dとの間、側面2dと側面2fとの間、及び、側面2fと側面2cとの間にそれぞれ位置している稜線部2gを有している。本実施形態では、素体2には、いわゆるR面取り加工が施されている。これにより、各稜線部2gは、湾曲するように丸められている。
【0020】
主面2aと側面2cとの間の稜線部2gは、方向D3に沿って延在している。主面2aと側面2dとの間の稜線部2gは、方向D3に沿って延在している。主面2aと側面2eとの間の稜線部2gは、方向D2に沿って延在している。主面2aと側面2fとの間の稜線部2gは、方向D2に沿って延在している。主面2bと側面2cとの間の稜線部2gは、方向D3に沿って延在している。主面2bと側面2dとの間の稜線部2gは、方向D3に沿って延在している。主面2bと側面2eとの間の稜線部2gは、方向D2に沿って延在している。主面2bと側面2fとの間の稜線部2gは、方向D2に沿って延在している。側面2cと側面2eとの間の稜線部2gは、方向D1に沿って延在している。側面2eと側面2dとの間の稜線部2gは、方向D1に沿って延在している。側面2dと側面2fとの間の稜線部2gは、方向D1に沿って延在している。側面2fと側面2cとの間の稜線部2gは、方向D1に沿って延在している。
【0021】
素体2は、複数の絶縁体層10(図5参照)が積層されることによって構成されている。各絶縁体層10は、方向D1において積層されている。すなわち、各絶縁体層10の積層方向は、方向D1と一致している。各絶縁体層10は、平面視で略矩形状を呈している。実際の素体2では、各絶縁体層10は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。各絶縁体層10は、例えば、誘電体材料(BaTiO系材料、Ba(Ti,Zr)O系材料、(Ba,Ca)TiO系材料、ガラス材料、又はアルミナ材料など)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。
【0022】
第1端子電極4、第2端子電極5及び第3端子電極6は、素体2の側面2e側に配置されている。第1端子電極4、第2端子電極5及び第3端子電極6は、側面2eの一部を素体2の積層方向に沿って覆うように形成されていると共に、主面2aの一部と主面2bの一部とに形成されている。第1端子電極4、第2端子電極5及び第3端子電極6は、主面2aの一部と、側面2eの一部と、主面2bの一部とを連続して覆うように設けられている。第1端子電極4、第2端子電極5及び第3端子電極6は、方向D2から見てU字状を呈している。
【0023】
素体2において、第2端子電極5は、方向D2の中央部に位置し、第1端子電極4は、第2端子電極5よりも側面2c側に位置し、第3端子電極6は、第2端子電極5よりも側面2d側に位置している。本実施形態では、第1端子電極4、第2端子電極5及び第3端子電極6は、側面2e及び主面2a,2bのみに設けられている。第1端子電極4、第2端子電極5及び第3端子電極6は、側面2c,2d,2fには設けられておらず、側面2c,2d,2fから離間して設けられている。側面2c,2d,2fは、第1端子電極4、第2端子電極5及び第3端子電極6に覆われておらず、第1端子電極4、第2端子電極5及び第3端子電極6から露出している。
【0024】
第4端子電極7、第5端子電極8及び第6端子電極9は、素体2の側面2f側に配置されている。第4端子電極7、第5端子電極8及び第6端子電極9は、側面2fの一部を素体2の積層方向に沿って覆うように形成されていると共に、主面2aの一部と主面2bの一部とに形成されている。第4端子電極7、第5端子電極8及び第6端子電極9は、主面2aの一部と、側面2fの一部と、主面2bの一部とを連続して覆うように設けられている。第4端子電極7、第5端子電極8及び第6端子電極9は、方向D2から見てU字状を呈している。
【0025】
素体2において、第5端子電極8は、方向D2の中央部に位置し、第4端子電極7は、第5端子電極8よりも側面2c側に位置し、第6端子電極9は、第5端子電極8よりも側面2d側に位置している。本実施形態では、第4端子電極7、第5端子電極8及び第6端子電極9は、側面2f及び主面2a,2bのみに設けられている。第4端子電極7、第5端子電極8及び第6端子電極9は、側面2c,2d,2eには設けられておらず、側面2c,2d,2eから離間して設けられている。側面2c,2d,2eは、第4端子電極7、第5端子電極8及び第6端子電極9に覆われておらず、第4端子電極7、第5端子電極8及び第6端子電極9から露出している。
【0026】
各端子電極4~9は、例えば、互いに同形状を呈している。各端子電極4~9の幅(方向D2の長さ)は、例えば、素体2の方向D2の長さの15~20%程度である。
【0027】
図2は、図1に示される端子電極の断面図である。図2では、例として、第1端子電極4の断面図が示されているが、本実施形態の各端子電極4~9は、同じ断面構造を有している。図2では、後述するコイル導体、内部導体及び内部電極の図示が省略されている。各端子電極4~9は、図2に示されるように、第1電極層E1と、第2電極層E2と、第3電極層E3と、第4電極層E4と、を有している。
【0028】
第1電極層E1は、主面2aの一部と、側面2e又は側面2fの一部と、主面2bの一部とを連続して覆うように、これらの上に設けられている。第1電極層E1は、例えば、素体2の表面に付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成されている。第1電極層E1は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結して形成された焼結金属層である。金属成分としては、例えば、Ag、Au、Cu,Ag/Pd合金が用いられる。導電性ペーストは、例えば、金属成分、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶媒を含んでいる。第1電極層E1は、第2電極層E2を形成するための下地金属層である。
【0029】
導電性ペーストは、例えば、スクリーン印刷により付与される。スクリーン印刷は、例えば、主面2aと、側面2e又は側面2fと、主面2bとのそれぞれに対して行われる。スクリーン印刷が側面2e又は側面2fのみに行われる場合でも、導電性ペーストが側面2e又は側面2fから主面2a及び主面2bに回り込むので、主面2a及び主面2bにも導電性ペーストを付与できる。しかしながら、このような回り込みによって付与できる導電性ペーストの面積には限界がある。特に、主面2aは実装面であるため、主面2aにおける各端子電極4~9の面積が狭いと、電子部品1を他の電子機器にはんだ実装する際に、実装強度が低下するおそれがある。
【0030】
側面2e又は側面2fに加えて、少なくとも実装面となる主面2aに、別途スクリーン印刷が行われることにより、主面2aにおける各端子電極4~9の面積を広げることができる。これにより、電子部品1を他の電子機器にはんだ実装する際に、はんだと各端子電極4~9との接合面積を広げることができるので、実装強度を向上させることができる。例えば、主面2aに、電極パッドを予め設けた後、側面2e又は側面2fのみにスクリーン印刷を行って、主面2aと、側面2e又は側面2fと、主面2bとに導電性ペーストを付与し、付与した導電性ペーストを焼き付けることにより第1電極層E1を形成してもよい。この場合、電極パッドは、例えば焼成前の素体2の表面に導電性ペーストを付与し、素体2と同時に焼成することにより形成されてもよい。
【0031】
第1電極層E1は、主面2a又は主面2b上に設けられた電極部分E1aと、側面2e又は側面2f上に設けられた電極部分E1bと、稜線部2g上に設けられた電極部分E1cと、を有している。電極部分E1aは、主面2a又は主面2bに直交する方向(方向D1)から見て、主面2a又は主面2bと重なっている。電極部分E1bは、側面2e又は側面2fに直交する方向(方向D2)から見て、側面2e又は側面2fと重なっている。電極部分E1cは、電極部分E1aと電極部分E1bとの間に配置され、電極部分E1aと電極部分E1bとを連結している。
【0032】
第2電極層E2は、第1電極層E1の全体を覆うように、第1電極層E1上に設けられている。第2電極層E2は、第1電極層E1上に付与された導電性樹脂を硬化させることにより形成された導電性樹脂層である。導電性樹脂は、樹脂(例えば、熱硬化性樹脂)、導電性材料(例えば、金属粉末)、及び有機溶媒を含んでいる。導電性材料としては、例えば、Agが用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はポリイミド樹脂が用いられる。本実施形態では、第2電極層E2の電気伝導率は、第1電極層E1の電気伝導率よりも低い。また、第2電極層E2は、第1電極層E1よりも軟らかい。
【0033】
第2電極層E2は、主面2a又は主面2b上に設けられた電極部分E2aと、側面2e又は側面2f上に設けられた電極部分E2bと、稜線部2g上に設けられた電極部分E2cと、を有している。電極部分E2aは、主面2a又は主面2bに直交する方向(方向D1)から見て、主面2a又は主面2bと重なっている。電極部分E2bは、側面2e又は側面2fに直交する方向(方向D2)から見て、側面2e又は側面2fと重なっている。電極部分E2cは、電極部分E2aと電極部分E2bとの間に配置され、電極部分E2aと電極部分E2bとを連結している。
【0034】
電極部分E1cの厚さt1は、例えば28μmである。電極部分E2cの厚さt2は、例えば30μmである。電極部分E1bの厚さt3は、例えば12μmである。電極部分E2bの厚さt4は、例えば15μmである。電極部分E1aの厚さt5は、例えば30μmである。電極部分E2aの厚さt6は、例えば32μmである。厚さt1~t6は、それぞれ平均値である。平均値は、各電極部分E1a,E1b,E1c,E2a,E2b,E2cの複数箇所で求めた厚さの平均値であってもよいし、画像処理により求めた全体の平均値であってもよい。
【0035】
厚さt2は、厚さt1よりも厚い(t1<t2)。厚さt4は、厚さt3よりも厚い(t3<t4)。厚さt6は、厚さt5よりも厚い(t5<t6)。厚さt1は、厚さt3よりも厚い(t3<t1)。厚さt2は、厚さt4よりも厚い(t4<t2)。本実施形態では、厚さt1~t6がそれぞれ最大値であるとしても、これらの大小関係が成立している。
【0036】
本実施形態では、電極部分E2cの厚さの最小値は、電極部分E1cの厚さの最大値よりも厚い。電極部分E2bの厚さの最小値は、電極部分E1bの厚さの最大値よりも厚い。電極部分E2aの厚さの最小値は、電極部分E1aの厚さの最大値よりも厚い。電極部分E1bの厚さの最大値は、電極部分E1cの厚さの最小値よりも厚い。電極部分E2bの厚さの最大値は、電極部分E2cの厚さの最小値よりも厚い。
【0037】
第3電極層E3は、第2電極層E2の全体を覆うように、第2電極層E2上に設けられている。第3電極層E3は、第2電極層E2上にめっき法により形成されためっき層である。第3電極層E3は、例えばNiめっきにより形成されたNiめっき層である。すなわち、第3電極層E3は、Niを含んでいる。第3電極層E3は、Snめっき層、Cuめっき層、又はAuめっき層であってもよい。すなわち、第3電極層E3は、Sn、Cu、又はAuを含んでいてもよい。
【0038】
第4電極層E4は、第3電極層E3の全体を覆うように、第3電極層E3上に設けられている。第4電極層E4は、第3電極層E3上にめっき法により形成されためっき層である。第4電極層E4は、例えばSnめっきにより形成されたSnめっき層である。すなわち、第4電極層E4は、Snを含んでいる。第4電極層E4は、Cuめっき層又はAuめっき層であってもよい。すなわち、第4電極層E4は、Cu又はAuを含んでいてもよい。
【0039】
このように、本実施形態の各端子電極4~9は、第1電極層E1と、第2電極層E2と、第3電極層E3と、第4電極層E4と、を含む多層構造(具体的には、四層構造)を有している。第2電極層E2に形成されるめっき層は、第3電極層E3と、第4電極層E4とを含む多層構造(具体的には、二層構造)を有している。各端子電極4~9は、第3電極層E3及び第4電極層E4を有していなくてもよい。
【0040】
図3は、端子電極の端部の平面図である。図3では、例として、第1端子電極4の主面2a上の端部の平面図が示されているが、本実施形態の各端子電極4~9の主面2a上及び主面2b上の各端部は、同じ形状を有している。図3では、第3電極層E3及び第4電極層E4の図示が省略されている。図3に示されるように、主面2aに直交する方向(方向D1)から見て、第1端子電極4における第1電極層E1の主面2a上の端縁E1eは、略直線状である。端縁E1eは、主面2aと側面2eとの間の稜線部2gが延在している方向(方向D2)に沿って延在している。主面2a上に設けられた部分である電極部分E1aは、略矩形状を呈している。第2電極層E2は、第1電極層E1を全て覆うように配置されている。
【0041】
続いて、電子部品1の回路構成について説明した後、電子部品1の内部構成について説明する。図4に示されるように、電子部品1は、信号が入力される入力端子TINと、信号が出力される第1出力端子TOUT1と、信号が出力される第2出力端子TOUT2と、入力端子TINと第1出力端子TOUT1とを接続する線路S1に設けられる第1フィルタFと、入力端子TINと第2出力端子TOUT2とを接続する線路S2に設けられる第2フィルタFと、開放インダクタLOPENと、を備えている。
【0042】
第1フィルタFは、第1LC共振回路RC1と、第2LC共振回路RC2と、を有する。第1LC共振回路RC1及び第2LC共振回路RC2は、直列に接続されている。第1LC共振回路RC1は、ハイパスフィルタを構成している。第1LC共振回路RC1は、第1の周波数帯域内の周波数の第1の信号と、第1の周波数帯域よりも高い周波数帯域である第2の周波数帯域内の周波数の第2の信号のうちの、第2の信号を選択的に通過させる。第1LC共振回路RC1は、インダクタL1及び3つのキャパシタC1,C1,C1を含んで構成されている。キャパシタC1及びキャパシタC1は、直列に接続されている。キャパシタC1は、キャパシタC1及びキャパシタC1と並列に接続されている。インダクタL1は、一端がキャパシタC1とキャパシタC1との間に接続されていると共に、他端がグラウンド端子に接続されている。
【0043】
第2LC共振回路RC2は、ローパスフィルタを構成している。第2LC共振回路RC2は、第1の信号と第2の信号のうちの、第1の信号を選択的に通過させる。第2LC共振回路RC2は、インダクタL2及びキャパシタC2を含んで構成されている。インダクタL2及びキャパシタC2は並列に接続されている。
【0044】
第2フィルタFは、第3LC共振回路RC3と、第4LC共振回路RC4と、キャパシタCと、を有する。第3LC共振回路RC3及び第4LC共振回路RC4は、直列に接続されている。第3LC共振回路RC3及び第4LC共振回路RC4は、ローパスフィルタを構成している。第3LC共振回路RC3は、インダクタL3及びキャパシタC3を含んで構成されている。インダクタL3及びキャパシタC3は、並列に接続されている。第4LC共振回路RC4は、インダクタL4及びキャパシタC4を含んで構成されている。インダクタL4及びキャパシタC4は、並列に接続されている。キャパシタCは、一端が第3LC共振回路RC3と第4LC共振回路RC4との間に接続されていると共に、他端がグラウンド端子Gに接続されている。
【0045】
開放インダクタLOPENは、一端がグラウンド端子Gに接続されていると共に、他端が開放されている。
【0046】
図1に示される第1端子電極4は、グラウンド端子Gを構成している。第2端子電極5は、入力端子TINを構成している。第3端子電極6は、グラウンド端子Gを構成している。第4端子電極7は、第2出力端子TOUT2を構成している。第5端子電極8は、グラウンド端子Gを構成している。第6端子電極9は、第1出力端子TOUT1を構成している。第1フィルタFと、第2フィルタFと、開放インダクタLOPENは、素体2内に配置されている。
【0047】
インダクタL1は、図5及び図6に示されるように、コイル導体12と、コイル導体15と、コイル導体17と、により構成されている。インダクタL1は、積層方向に沿った方向を軸心にループ状に構成されている。コイル導体12の一端は、第5端子電極8に接続されている。コイル導体17の一端は、スルーホール導体により、内部電極28及び内部電極31に電気的に接続されている。コイル導体12及びコイル導体17は、例えば、Ag及びPdの少なくとも一方を導電性材料として含んで形成される。コイル導体12及びコイル導体17は、導電性材料としてAg及びPdの少なくとも一方を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。以下の説明において、コイル導体及び内部電極は、同様に形成される。
【0048】
キャパシタC1は、内部電極32と、内部電極34と、により構成されている。内部電極34は、第2端子電極5に接続されている。キャパシタC1は、内部電極31と、内部電極34と、により構成されている。キャパシタC1は、内部電極28と、内部電極32と、により構成されている。
【0049】
インダクタL2は、コイル導体13と、コイル導体16と、コイル導体18と、により構成されている。インダクタL2は、積層方向に沿った方向を軸心にループ状に構成されている。コイル導体18の一端は、スルーホール導体により、内部電極32に電気的に接続されている。キャパシタC2は、内部電極32と、内部電極35と、により構成されている。内部電極35は、第6端子電極9に接続されている。
【0050】
インダクタL3は、コイル導体11と、コイル導体14と、により構成されている。インダクタL3は、積層方向に沿った方向を軸心にループ状に構成されている。コイル導体11の一端は、第2端子電極5に接続されている。キャパシタC3は、内部電極26と、内部電極27と、により構成されている。内部電極26は、第2端子電極5に接続されている。内部電極27は、スルーホール導体により、コイル導体22に電気的に接続されている。
【0051】
インダクタL4は、コイル導体19と、コイル導体22と、により構成されている。インダクタL4は、積層方向に沿った方向を軸心にループ状に構成されている。コイル導体22の一端は、コイル導体14の一端にスルーホール導体により電気的に接続されている。キャパシタC4は、内部電極30と、内部電極27及び内部電極33と、により構成されている。内部電極30は、第4端子電極7に接続されている。
【0052】
キャパシタCは、内部電極29及び内部電極36と、内部電極27及び内部電極33と、により構成されている。内部電極29は、第1端子電極4に接続されている。内部電極36は、第1端子電極4及び第5端子電極8に接続されている。
【0053】
開放インダクタLOPENは、コイル導体20と、コイル導体23と、コイル導体24と、コイル導体25と、により構成されている。開放インダクタLOPENは、積層方向に沿った方向を軸心にループ状に構成されている。コイル導体20の一端は、第3端子電極6に接続されている。開放インダクタLOPENは、第2LC共振回路RC2のインダクタL2と対向する位置に配置されている。すなわち、開放インダクタLOPENとインダクタL2とは、積層方向で互いに隣り合っている。具体的には、開放インダクタLOPENのコイル導体20は、絶縁体層10を挟んで、インダクタL2のコイル導体18と対向する(素体2の積層方向から見て重なる)位置に配置されている。
【0054】
以上説明したように、電子部品1では、第2電極層E2のうち、稜線部2g上に設けられた部分である電極部分E2cの厚さt2が、側面2e又は側面2f上に設けられた部分である電極部分E2bの厚さt4よりも厚い。本実施形態では、第2電極層E2の電気伝導率が第1電極層E1の電気伝導率よりも低い。しかしながら、電子部品1がはんだ実装された際に、はんだと第1電極層E1との間に配置される電極部分E2bの厚さt4が薄いので、電極部分E2bに起因して、第1電極層E1とはんだとの間で電気抵抗が高くなることを抑制可能となる。また、電極部分E2cの厚さt2が厚いので、熱衝撃によって稜線部2gにおける各端子電極4~9に集中する応力を緩和することができる。これにより、各端子電極4~9の耐久性の向上を図ることができる。更に、電極部分E2bの厚さt4が薄いので、電子部品1の方向D2の長さを抑制することができる。
【0055】
電極部分E2cの厚さt2は、第1電極層E1のうち、稜線部2g上に設けられた部分である電極部分E1cの厚さt1よりも厚い。第2電極層E2は、導電性樹脂層であり、焼結金属層である第1電極層E1よりも軟らかいので、厚さt2が厚さt1よりも薄い場合に比べて、各端子電極4~9の耐久性を更に向上させることができる。
【0056】
第1端子電極4、第2端子電極5及び第3端子電極6は、側面2c,2d,2fから離間して設けられている。第4端子電極7、第5端子電極8及び第6端子電極9は側面2c,2d,2eから離間して設けられている。このため、例えば、主面2aと、主面2bと、側面2cと、稜線部2gを介して側面2cと隣り合う側面2e,2fとからなる五つの面を連続して覆うように設けられた端子電極に比べて、三つの面を連続して覆うように設けられた本実施形態の各端子電極4~9は剥離し易い。このような場合でも、電極部分E2cの厚さt2が、電極部分E2bの厚さt4よりも厚いので、応力を緩和し、各端子電極4~9の剥離を抑制することができる。
【0057】
電極部分E1cの厚さt1は、第1電極層E1のうち、側面2e又は側面2f上に設けられた部分である電極部分E1bの厚さt3よりも厚い。このため、厚さt1が厚さt3よりも薄い場合に比べて、各端子電極4~9の耐久性を更に向上させることができる。
【0058】
図7は、比較例に係る端子電極の端部の平面図である。図7では、例として、比較例に係る端子電極50の主面2a上の端部の平面図が示されているが、端子電極50の主面2a上及び主面2b上の各端部は、同じ形状を有している。端子電極50は、主面2a上及び主面2b上の端部の形状の点で、実施形態に係る各端子電極4~9と相違している。図7では、第3電極層E3及び第4電極層E4の図示が省略されている。主面2aに直交する方向(方向D1)から見て、端子電極50における第1電極層E1の主面2a上の端縁E1eは、円弧状であり、側面2f側に凸形状を呈している。主面2a上に設けられた部分である電極部分E1aの方向D3の長さは、幅方向(方向D2)の両端から中央に向かうにつれて長くなっている。
【0059】
このような端子電極50を有する電子部品を、他の電子機器(例えば、回路基板、又は、電子部品等)にはんだ実装すると、端縁E1eが円弧状であるため、端縁E1eの先端の一点に応力が集中し易い。これに対して、実施形態に係る電子部品1では、各端子電極4~9の端縁E1eが直線状であるため、応力が分散される。したがって、電子部品1によれば、実装強度を向上させることができる。
【0060】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0061】
上記実施形態では、電子部品として、ダイプレクサを例に説明したが、本発明はこの例に限られることなく、コンデンサ、インダクタ、バリスタ、又はサーミスタ等の電子部品に適用されてもよい。
【0062】
上記実施形態では、各端子電極4~9が側面2e又は側面2f及び主面2a,2bに配置される形態を例に説明したが、各端子電極4~9の形状(配置形態)はこれに限定されない。
【0063】
各端子電極4~9は、少なくとも実装面とされる主面2aの一部と、側面2c,2d,2e,2fのいずれか一つの側面の一部とを連続して覆うように設けられていればよい。例えば、各端子電極4~9は、主面2bに設けられておらず、主面2bから離間して設けられていてもよい。つまり、主面2bは、各端子電極4~9に覆われておらず、各端子電極4~9から露出していてもよい。
【0064】
上記実施形態では、電子部品1の各端子電極4~9は、三つの面を連続して覆うように設けられているが、四つ以上の面を連続して覆うように設けられていてもよい。例えば、電子部品1が、五つの面(例えば、側面2c又は側面2dの全部、主面2a、主面2b、側面2e及び側面2fの一部)を連続して覆うように設けられた端子電極を備えていてもよい。
【0065】
上記実施形態では、各端子電極4~9の主面2a上及び主面2b上の各端部は、同じ形状を有しているが、異なる形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…電子部品、2…素体、2a…主面(第1主面),2b…主面(第2主面)、2c,2d,2e,2f…側面、2g…稜線部、4…第1端子電極、5…第2端子電極、6…第3端子電極、7…第4端子電極、8…第5端子電極、9…第6端子電極、E1…第1電極層、E1b…電極部分(第4電極部分)、E1c…電極部分(第3電極部分)。E1e…端縁、E2…第2電極層、E2b…電極部分(第2電極部分)、E2c…電極部分(第1電極部分)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7