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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】駆動力制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20221213BHJP
【FI】
F02D29/02 311Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018034487
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019148248
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】東 賢一
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-091739(JP,A)
【文献】特開2008-095635(JP,A)
【文献】特開2010-095162(JP,A)
【文献】特開平01-113531(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/005271(JP,A1)
【文献】特開2018-005808(JP,A)
【文献】特開昭61-167131(JP,A)
【文献】特開昭61-190135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルの操作状態に応じて自車両の駆動トルクの出力を抑制する駆動トルク抑制制御を実行する駆動力制御装置であって、
前記アクセルペダルの開度がアクセル開度閾値よりも大きいか、前記アクセルペダルの開度の変化量がアクセル開度変化量閾値よりも大きいかの少なくとも一方を満たす場合に前記駆動トルク抑制制御を実行するトルク制御部と、
前記自車両が停止状態にあるか走行中状態にあるかを判定する走行状態判定部と、
前記走行状態判定部によって前記自車両が停止状態にあると判定された場合の前記アクセル開度閾値及び前記アクセル開度変化量閾値を、前記自車両が走行中状態にあると判定された場合の前記アクセル開度閾値及び前記アクセル開度変化量閾値よりも大きく設定する条件設定部と、
前記アクセルペダルの開度または前記アクセルペダルの開度の変化量の少なくとも一方が警報閾値よりも大きい場合に乗員に警報を出力する警報制御部と、
前記警報閾値を前記アクセル開度閾値及び前記アクセル開度変化量閾値よりも、小さい値に設定する警報閾値設定部と、を備え、
前記トルク制御部は、前記警報制御部による警報が出力された後、依然として前記アクセルペダルの開度が前記アクセル開度閾値よりも大きい場合、または前記アクセルペダルの開度変化量が前記アクセル開度変化量閾値よりも大きい場合の少なくとも一方が成立するとき前記駆動トルク抑制制御を実行する駆動力制御装置。
【請求項2】
前記自車両の走行レンジを検出する走行レンジ検出部を備え、
前記トルク制御部は、前記駆動トルク抑制制御の実行中に前記走行レンジ検出部によって前記走行レンジがニュートラルまたは反対の進行方向に切り換えられたことが検出された場合、所定期間前記駆動トルク抑制制御を継続する請求項1に記載の駆動力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両が運転者の誤操作によって急発進してしまうことを抑制するために、自車両の駆動トルクを抑制する誤発進抑制制御技術が知られている。このような誤発進抑制制御において、特許文献1のように、自車両と先行車との車間距離や相対速度に応じて、発進抑制作動条件であるアクセルペダルの開度やアクセルペダルの操作速度の閾値を変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-5808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような誤発進抑制制御は、運転者の操作が意図したものであるにもかかわらず誤発進抑制制御が作動してしまうとドライバビリティを損ねる可能性がある一方で、運転者の意図せぬ操作が入力された場合は適切に駆動トルクを抑制する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、ドライバビリティの低下を抑制しつつ誤操作によるトルク出力を抑制することのできる駆動力制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、アクセルペダルの操作状態に応じて自車両の駆動トルクの出力を抑制する駆動トルク抑制制御を実行する駆動力制御装置であって、前記アクセルペダルの開度がアクセル開度閾値よりも大きいか、前記アクセルペダルの開度の変化量がアクセル開度変化量閾値よりも大きいかの少なくとも一方を満たす場合に前記駆動トルク抑制制御を実行するトルク制御部と、前記自車両が停止状態にあるか走行中状態にあるかを判定する走行状態判定部と、前記走行状態判定部によって前記自車両が停止状態にあると判定された場合の前記アクセル開度閾値及び前記アクセル開度変化量閾値を、前記自車両が走行中状態にあると判定された場合の前記アクセル開度閾値及び前記アクセル開度変化量閾値よりも大きく設定する条件設定部と、前記アクセルペダルの開度または前記アクセルペダルの開度の変化量の少なくとも一方が警報閾値よりも大きい場合に乗員に警報を出力する警報制御部と、前記警報閾値を前記アクセル開度閾値及び前記アクセル開度変化量閾値よりも、小さい値に設定する警報閾値設定部と、を備え、前記トルク制御部は、前記警報制御部による警報が出力された後、依然として前記アクセルペダルの開度が前記アクセル開度閾値よりも大きい場合、または前記アクセルペダルの開度変化量が前記アクセル開度変化量閾値よりも大きい場合の少なくとも一方が成立するとき前記駆動トルク抑制制御を実行するものである。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、ドライバビリティの低下を抑制しつつ誤操作によるトルク出力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例に係る駆動力制御装置のブロック図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る駆動力制御装置の閾値の設定例を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る駆動力制御装置の条件設定処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、本発明の一実施例に係る駆動力制御装置の駆動トルク抑制処理の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、本発明の一実施例に係る駆動力制御装置の駆動トルク抑制処理によるアクセル開度の変化による警報の出力と駆動トルク抑制制御実行のタイミングを示すタイムチャートである。
図6図6は、本発明の一実施例に係る駆動力制御装置の駆動トルク抑制制御継続処理の手順を示すフローチャートである。
図7図7は、本発明の一実施例に係る駆動力制御装置の駆動トルク抑制制御継続処理による駆動トルク抑制制御停止のタイミングを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る駆動力制御装置は、アクセルペダルの操作状態に応じて自車両の駆動トルクの出力を抑制する駆動トルク抑制制御を実行する駆動力制御装置であって、少なくともアクセルペダルの開度がアクセル開度閾値よりも大きい場合に駆動トルク抑制制御を実行するトルク制御部と、自車両の進行方向を検出する進行方向検出部と、進行方向検出部によって検出される自車両の進行方向が前進方向であるときのアクセル開度閾値を、自車両の進行方向が後進方向であるときのアクセル開度閾値よりも大きく設定する条件設定部と、を備えた構成をしている。
【0010】
これにより、ドライバビリティの低下を抑制しつつ誤操作によるトルク出力を抑制することができる。
【実施例
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る駆動力制御装置について詳細に説明する。
【0012】
図1において、本発明の第一実施例に係る駆動力制御装置を搭載した車両1は、エンジン2と、警報装置3と、エンジンECU(Electronic Control Unit)4と、制御部5と、を含んで構成される。
【0013】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。本実施例においては、エンジン2の駆動力によって車両1を走行させるようになっている。
【0014】
警報装置3は、例えば、モニタ装置、スピーカ、ランプ、メータ、ブザーなどで構成され、視覚、聴覚などを通じて各種警報を運転者に報知する。
【0015】
エンジンECU4は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0016】
エンジンECU4のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをエンジンECU4として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、エンジンECU4として機能する。また、エンジンECU4は、制御部5に接続され、相互にデータのやりとりを行なう。
【0017】
エンジンECU4は、制御部5からのトルク指令信号により、エンジン2の出力トルクがトルク指令信号に設定されたトルク指令値になるようにエンジン2を制御する。エンジンECU4は、不図示のインジェクタやスロットルバルブを制御することにより燃料噴射量や吸入空気量を制御させて、エンジン2の出力トルクを制御する。
【0018】
制御部5は、CPUと、RAMと、ROMと、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0019】
制御部5のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部5として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、制御部5として機能する。制御部5は、エンジンECU4に接続され、相互にデータのやりとりを行なう。
【0020】
制御部5の入力ポートには、前方センサ51、後方センサ52、アクセル開度センサ53、ブレーキスイッチ54、車速センサ55、エンジン回転数センサ56、シフトポジションセンサ57を含む各種センサ類が接続されている。
【0021】
前方センサ51は、レーザ光、超音波、ミリ波等を送受信したり、カメラによって前方を撮像したりして車両1の前方に存在する物体との距離を検出する。
【0022】
後方センサ52は、レーザ光、超音波、ミリ波等を送受信したり、カメラによって後方を撮像したりして車両1の後方に存在する物体との距離を検出する。
【0023】
アクセル開度センサ53は、不図示のアクセルペダルの運転者による踏み込み量をアクセル開度として検出する。
【0024】
ブレーキスイッチ54は、不図示のブレーキペダルが運転者により踏み込まれたか否かを検出する。
【0025】
車速センサ55は、例えば、不図示の駆動軸の回転速度から車速を検出する。車速センサ55は、車両1が前進方向に進んでいる場合は正の車速を出力し、車両1が後進方向に進んでいる場合は負の車速を出力する。
【0026】
エンジン回転数センサ56は、エンジン2の機関回転数であるエンジン回転数を検出する。
【0027】
シフトポジションセンサ57は、運転者による不図示のシフトレバーの操作により選択されたシフト位置を検出する。シフト位置は、例えば、前進、後進、ニュートラルのいずれかが選択される。
一方、制御部5の出力ポートには、警報装置3が接続されている。
【0028】
このような構成の車両1において、制御部5は、運転者の誤操作によって急発進してしまうことを抑制するために、例えば、ブレーキペダルが踏まれていないこと、車両1の進行方向の所定距離内に障害物が検出されていること、などの誤発進抑制条件を満たしていて、アクセル開度やアクセル開度の変化量が閾値よりも大きくなった場合、エンジン2による駆動トルクの出力を抑制する駆動トルク抑制制御を実行する。
【0029】
制御部5は、エンジンECU4へのトルク指令信号により、エンジン2による駆動トルクの出力を抑制させるトルク制御部11として機能する。
【0030】
制御部5は、アクセル開度に対する閾値であるアクセル開度閾値と、アクセル開度の変化量に対する閾値であるアクセル開度変化量閾値と、により駆動トルク抑制制御の実行を判定する。
【0031】
制御部5は、アクセル開度とアクセル開度の変化量が所定の駆動トルク抑制制御実行条件を満たしたときに、駆動トルク抑制制御を実行する。
【0032】
制御部5は、例えば、アクセル開度がアクセル開度閾値より大きいことを駆動トルク抑制制御実行条件とする。
【0033】
制御部5は、例えば、アクセル開度がアクセル開度閾値より大きいことに加え、アクセル開度の変化量がアクセル開度変化量閾値より大きいことを駆動トルク抑制制御実行条件としてもよい。
【0034】
制御部5は、例えば、アクセル開度がアクセル開度閾値より大きいことと、アクセル開度の変化量がアクセル開度変化量閾値より大きいことの、いずれか一方が満たされたことを駆動トルク抑制制御実行条件としてもよい。
【0035】
制御部5は、シフトポジションセンサ57により検出されたシフト位置により車両1の進行方向を検出する進行方向検出部12として機能する。
【0036】
制御部5は、車速センサ55により検出された車速により車両1が停止状態にあるか走行中状態にあるかを判定する走行状態判定部14として機能する。
【0037】
制御部5は、車両1の進行方向が前進方向であるときのアクセル開度閾値を、車両1の進行方向が後進方向であるときのアクセル開度閾値よりも大きくなるように設定する条件設定部13として機能する。
【0038】
運転者は、自車両が前進する場合は後進する場合と比較してアクセルペダルを大きく踏み込む傾向があるため、後進時よりも前進時の方が、駆動トルク抑制制御が作動し難くなるよう条件を設定することで、運転者の意図に沿うトルク出力を満たしつつ、誤操作によるトルク出力を防止することができる。
【0039】
また、アクセル開度閾値を前進と後進とに応じて変えるため、例えば前進と後進いずれの場合であっても踏込速度は同一にしつつ、踏込量を前進時と後進時に応じて操作するような運転者にあっても、適切に誤操作によるトルク出力を防止することができる。
【0040】
制御部5は、車両1の進行方向が前進方向であるときのアクセル開度変化量閾値を、車両1の進行方向が後進方向であるときのアクセル開度変化量閾値よりも大きくなるように設定する条件設定部13として機能する。
【0041】
アクセル開度そのものに加えて、アクセル開度の変化量についても、後進時よりも前進時の方が、駆動トルク抑制制御が作動し難くなるように条件をさらに設定するため、例えば前進と後進いずれの場合であっても、最終的な踏込量は同一でありつつも、踏込速度が異なるような操作特性でアクセル操作する運転者にあっても、適切に誤操作によるトルク出力を防止することができる。
【0042】
制御部5は、車両1の走行状態が停止状態にあるときのアクセル開度閾値を、車両1の走行状態が走行中状態にあるときのアクセル開度閾値よりも大きくなるように設定する条件設定部13として機能する。
【0043】
運転者は、停止状態から発進する場合は、低速走行状態(例えば、駐車する際の走行時)である場合と比較してアクセルペダルを大きく、素早く踏み込む傾向があるため、走行中状態よりも停止状態の方が、駆動トルク抑制制御が作動し難くなるように条件を設定することで、運転者の意図に沿うトルク出力を満たしつつ、誤操作によるトルク出力を防止することができる。
【0044】
制御部5は、車両1の走行状態が停止状態にあるときのアクセル開度変化量閾値を、車両1の走行状態が走行中状態にあるときのアクセル開度変化量閾値よりも大きくなるように設定する条件設定部13として機能する。
【0045】
アクセル開度そのものに加えて、アクセル開度の変化量も後進時よりも前進時の方が、駆動トルク抑制制御が作動し難くなるように条件をさらに設定するため、例えば発進時と低速走行時とのいずれの場合であっても、最終的な踏込量は同一でありつつも、踏込速度が異なるような操作特性でアクセル操作する運転者や、逆に踏込速度は同一でありつつも踏込量が異なるような操作特性でアクセル操作する運転者にあっても、適切に誤操作によるトルク出力を防止することができる。
【0046】
制御部5は、アクセル開度やアクセル開度の変化量が閾値よりも大きくなった場合、警報装置により車両1の乗員に警報を出力させる警報制御部15として機能する。
【0047】
制御部5は、アクセル開度に対する閾値であるアクセル開度警報閾値と、アクセル開度の変化量に対する閾値であるアクセル開度変化量警報閾値と、により警報の出力を判定する。
【0048】
制御部5は、アクセル開度とアクセル開度の変化量が所定の警報条件を満たしたときに、警報を出力させる。
【0049】
制御部5は、例えば、アクセル開度がアクセル開度警報閾値より大きいことを警報条件とする。
【0050】
制御部5は、例えば、アクセル開度がアクセル開度警報閾値より大きいことに加え、アクセル開度の変化量がアクセル開度変化量警報閾値より大きいことを警報条件としてもよい。
【0051】
制御部5は、例えば、アクセル開度がアクセル開度警報閾値より大きいことと、アクセル開度の変化量がアクセル開度変化量警報閾値より大きいことの、いずれか一方が満たされたことを警報条件としてもよい。
【0052】
制御部5は、アクセル開度警報閾値をアクセル開度閾値よりも小さくなるように設定する警報閾値設定部16として機能する。制御部5は、アクセル開度変化量警報閾値をアクセル開度変化量閾値よりも小さくなるように設定する警報閾値設定部16として機能する。
【0053】
このようにすることで、駆動トルク抑制制御が実行される前に警報が出力されるため、運転者が早めに誤操作に気付いた場合、不要な駆動トルク抑制制御が実行されることを防止することができる。
【0054】
制御部5は、車両1の進行方向が前進方向であるときのアクセル開度警報閾値を、車両1の進行方向が後進方向であるときのアクセル開度警報閾値よりも大きくなるように設定する警報閾値設定部16として機能する。
【0055】
制御部5は、車両1の進行方向が前進方向であるときのアクセル開度変化量警報閾値を、車両1の進行方向が後進方向であるときのアクセル開度変化量警報閾値よりも大きくなるように設定する警報閾値設定部16として機能する。
【0056】
制御部5は、車両1の走行状態が停止状態にあるときのアクセル開度警報閾値を、車両1の走行状態が走行中状態にあるときのアクセル開度警報閾値よりも大きくなるように設定する警報閾値設定部16として機能する。
【0057】
制御部5は、車両1の走行状態が停止状態にあるときのアクセル開度変化量警報閾値を、車両1の走行状態が走行中状態にあるときのアクセル開度変化量警報閾値よりも大きくなるように設定する警報閾値設定部16として機能する。
【0058】
制御部5は、シフトポジションセンサ57により検出されたシフト位置により走行レンジを検出する走行レンジ検出部17として機能する。走行レンジは、例えば、前進、後進、ニュートラルのいずれかが選択される。
【0059】
制御部5は、駆動トルク抑制制御の実行中に走行レンジがニュートラルまたは反対の進行方向に切り換えられたことが検出された場合、所定期間の間、駆動トルク抑制制御を継続する。
【0060】
なお、上述の所定期間は、予め設定された期間でもよいし、走行レンジの切り替えが検出されたときの車速に応じて長さを変えてもよいし、車速が所定値以下になるまでの期間としてもよい。
【0061】
駆動トルク抑制制御が作動中に、前進から後進またはニュートラル、後進から前進またはニュートラルに運転者の意志により切り換えられた場合に駆動トルク抑制制御を停止してしまうと、切り換え直後の車両1は、車速が直ぐにゼロにならず、切り換え前の進行方向を継続してしまい、駆動トルク抑制制御が停止した状態で障害物に接近してしまう。
【0062】
このため、駆動トルク抑制制御の実行中に走行レンジがニュートラルまたは反対の進行方向に切り換えられたことが検出された場合、駆動トルク抑制制御を継続させることで、車両1が反対方向に動かない間(障害物との距離が短くなる間)は、駆動トルク抑制制御を継続させて車速を低下させることができる。
【0063】
制御部5は、例えば、アクセル開度閾値、アクセル開度変化量閾値、アクセル開度警報閾値、アクセル開度変化量警報閾値を、図2に示すように、進行方向及び走行状態ごとに記憶しておく。
【0064】
図2において、各閾値は、進行方向が前進方向であるときの停車中よりも低速走行中のほうが小さく、進行方向が前進方向であるときの低速走行中よりも進行方向が後進方向であるときの停車中のほうが小さく、進行方向が後進方向であるときの停車中よりも低速走行中のほうが小さく設定される。
【0065】
また、進行方向が前進方向であるときの停車中のアクセル開度閾値θsfsは、進行方向が後進方向であるときの停車中のアクセル開度閾値θsbsよりも大きい値が設定され、進行方向が前進方向であるときの低速走行中のアクセル開度閾値θsfrは、進行方向が後進方向であるときの低速走行中のアクセル開度閾値θsbrよりも大きい値が設定される。
【0066】
また、進行方向が前進方向であるときの停車中のアクセル開度変化量閾値θ'sfsは、進行方向が後進方向であるときの停車中のアクセル開度変化量閾値θ'sbsよりも大きい値が設定され、進行方向が前進方向であるときの低速走行中のアクセル開度変化量閾値θ'sfrは、進行方向が後進方向であるときの低速走行中のアクセル開度変化量閾値θ'sbrよりも大きい値が設定される。
【0067】
また、進行方向が前進方向であるときの停車中のアクセル開度閾値θsfsは、進行方向が前進方向であるときの低速走行中のアクセル開度閾値θsfrよりも大きい値が設定され、進行方向が前進方向であるときの停車中のアクセル開度変化量閾値θ'sfsは、進行方向が前進方向であるときの低速走行中のアクセル開度変化量閾値θ'sfrよりも大きい値が設定される。
【0068】
また、進行方向が後進方向であるときの停車中のアクセル開度閾値θsbsは、進行方向が後進方向であるときの低速走行中のアクセル開度閾値θsbrよりも大きい値が設定され、進行方向が後進方向であるときの停車中のアクセル開度変化量閾値θ'sbsは、進行方向が後進方向であるときの低速走行中のアクセル開度変化量閾値θ'sbrよりも大きい値が設定される。
【0069】
また、進行方向が後進方向であるときは、クリープにより進むことが多く、アクセルがあまり踏まれない。すなわち、進行方向が前進方向であるときの低速走行中と比べ、進行方向が後進方向であるときの停車中のときはアクセルの踏み込みが弱い。
【0070】
このことから、進行方向が前進方向であるときの低速走行中のアクセル開度警報閾値θafrは、進行方向が後進方向であるときの停車中のアクセル開度警報閾値θabsよりも大きい値が設定される。
【0071】
また、進行方向が前進方向であるときの低速走行中のアクセル開度変化量警報閾値θ'afrは、進行方向が後進方向であるときの停車中のアクセル開度変化量警報閾値θ'absよりも大きい値が設定される。
【0072】
また、進行方向が前進方向であるときの低速走行中のアクセル開度閾値θsfrは、進行方向が後進方向であるときの停車中のアクセル開度閾値θsbsよりも大きい値が設定される。
【0073】
また、進行方向が前進方向であるときの低速走行中のアクセル開度変化量閾値θ'sfrは、進行方向が後進方向であるときの停車中のアクセル開度変化量閾値θ'sbsよりも大きい値が設定される。
【0074】
以上のように構成された本実施例に係る駆動力制御装置による条件設定処理について、図3を参照して説明する。なお、以下に説明する条件設定処理は、制御部5が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0075】
ステップS1において、制御部5は、シフトポジションセンサ57により検出されたシフト位置により車両1の進行方向を検出する。
【0076】
ステップS2において、制御部5は、車速センサ55により検出された車速により車両1の走行状態を検出する。
【0077】
ステップS3において、制御部5は、車両1の進行方向と車両1の走行状態に基づいてアクセル開度閾値を設定する。
【0078】
ステップS4において、制御部5は、車両1の進行方向と車両1の走行状態に基づいてアクセル開度変化量閾値を設定する。
【0079】
ステップS5において、制御部5は、車両1の進行方向と車両1の走行状態に基づいてアクセル開度警報閾値とアクセル開度変化量警報閾値を設定して、終了する。
【0080】
本実施例に係る駆動力制御装置による駆動トルク抑制処理について、図4を参照して説明する。なお、以下に説明する駆動トルク抑制処理は、上述の誤発進抑制条件を満たした場合に開始され、予め設定された時間間隔で実行され、上述の誤発進抑制条件を満たさなくなった場合に停止される。
【0081】
ステップS11において、制御部5は、アクセル開度センサ53によりアクセル開度を検出する。
【0082】
ステップS12において、制御部5は、前回実行時のアクセル開度と今回のアクセル開度からアクセル開度変化量を算出する。
【0083】
ステップS13において、制御部5は、アクセル開度とアクセル開度変化量が上述の警報条件を満たしたか否かを判定する。警報条件を満たしていないと判定した場合、制御部5は、処理を終了する。
【0084】
ステップS13において警報条件を満たしたと判定した場合、ステップS14において、制御部5は、警報装置3に警報を出力させる。
【0085】
ステップS15において、制御部5は、アクセル開度とアクセル開度変化量が上述の駆動トルク抑制制御実行条件を満たしたか否かを判定する。駆動トルク抑制制御実行条件を満たしていないと判定した場合、制御部5は、処理を終了する。
【0086】
ステップS15において駆動トルク抑制制御実行条件を満たしたと判定した場合、ステップS16において、制御部5は、駆動トルク抑制制御を実行して、処理を終了する。
【0087】
このような駆動トルク抑制処理による動作について図5を参照して説明する。
図5に示すように、車両1の進行方向の所定距離内に障害物が検出されていて、アクセルが急激に踏まれると、アクセル開度の変化量が大きくなっていき、時刻t1においてアクセル開度変化量警報閾値を超え、時刻t2においてアクセル開度変化量閾値を超える。
【0088】
その後、さらにアクセルが踏み込まれると、時刻t3においてアクセル開度警報閾値を超え、警報装置3により警報が出力される。時刻t4においてアクセル開度閾値を超えると、駆動トルク抑制制御が実行される。
【0089】
本実施例に係る駆動力制御装置による駆動トルク抑制制御継続処理について、図6を参照して説明する。なお、以下に説明する駆動トルク抑制制御継続処理は、制御部5が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0090】
ステップS21において、制御部5は、走行レンジがニュートラルまたは反対の進行方向に切り換えられたか否かを判定する。走行レンジがニュートラルまたは反対の進行方向に切り換えられていないと判定した場合、制御部5は、処理を終了する。
【0091】
ステップS21において走行レンジがニュートラルまたは反対の進行方向に切り換えられたと判定した場合、ステップS22において、制御部5は、駆動トルク抑制制御が実行中か否かを判定する。駆動トルク抑制制御が実行中でないと判定した場合、制御部5は、処理を終了する。
【0092】
ステップS22において駆動トルク抑制制御が実行中であると判定した場合、ステップS23において、制御部5は、所定期間駆動トルク抑制制御を継続する。
【0093】
このような駆動トルク抑制制御継続処理による動作について図7を参照して説明する。
図7に示すように、低速で後退中に後方に障害物を検知していて駆動トルク抑制制御が実行中のとき、時刻t5において走行レンジが後進から前進に切り換えられると、駆動トルク抑制制御が実行中であるため、駆動トルク抑制制御が継続して実行される。
【0094】
時刻t6において、車速が所定値以下となって車両1が停止したと判定されると、所定期間が終了したとして駆動トルク抑制制御が終了する。
【0095】
なお、駆動トルク抑制制御を実行中、エンジン回転数が所定値以下に低下した場合、メッセージ表示やブザー吹鳴などにより、エンジン回転数が低下したことを運転者に報知するようにしてもよい。
【0096】
手動変速機を搭載した車両において、駆動トルク抑制制御が作動した場合、エンジントルクが低トルクに抑制されるが、そのまま何もしなければエンスト状態になる。このため、エンジン回転数が所定値以下に低下した場合、エンジン回転数が低下したことを運転者に報知することで、運転者にエンストを回避する操作を促すことができる。
【0097】
また、トラックなどの後方にゲートを備えた車両において、このゲートが開いていることを検出するセンサを設け、このセンサが後方のゲートが開いていることを検出しているときは、このゲートよりも遠方の障害物を検出した場合に駆動トルク抑制制御を実行するようにしてもよい。
【0098】
このようにすることで、ゲートを障害物として検知して駆動トルク抑制制御が実行されることを回避することができ、不要な駆動トルク抑制制御の実行を抑制することができる。
【0099】
後方センサ52によりゲートとその他の障害物を区別可能な場合は、後方センサ52による検出結果によりゲートが開いていることを検出してもよい。
【0100】
また、本実施例においては、エンジン2により車両1の駆動トルクを出力させる場合を示したが、モータなどにより車両1の駆動トルクを出力させる場合も同様に構成することができる。
【0101】
本実施例では、各種センサ情報に基づき制御部5が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0102】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0103】
1 車両
2 エンジン
3 警報装置
4 エンジンECU
5 制御部
11 トルク制御部
12 進行方向検出部
13 条件設定部
14 走行状態判定部
15 警報制御部
16 警報閾値設定部
17 走行レンジ検出部
53 アクセル開度センサ
55 車速センサ
57 シフトポジションセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7