(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20221213BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20221213BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20221213BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20221213BHJP
B60L 15/00 20060101ALN20221213BHJP
B60L 3/00 20190101ALN20221213BHJP
【FI】
H02K7/116
B60K7/00
F16H1/28
H02K7/14 C
B60L15/00 Z
B60L3/00 Z
(21)【出願番号】P 2018049288
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 心路
(72)【発明者】
【氏名】上田 智哉
(72)【発明者】
【氏名】水池 宏友
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-514550(JP,A)
【文献】特開2005-335536(JP,A)
【文献】特開2013-072458(JP,A)
【文献】実開平05-015661(JP,U)
【文献】特開2015-186278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
B60K 7/00
F16H 1/28
H02K 7/14
B60L 15/00
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延びるハブ軸回りに回転可能な中空のハブと、
前記ハブの内部に収容され、前記ハブ軸に固定されるモータと、
前記モータおよび前記ハブに連結される減速機構と、
を備え、
前記モータは、前記ハブ軸に沿って延びるモータシャフトを有するロータと、前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、前記ステータを内側に保持するモータハウジングと、を有し、
前記モータハウジングと径方向に対向する前記ハブの内壁面に、径方向内側に開口する凹部を有し、
前記凹部は、前記ハブの内壁面を周方向に一周する凹溝であり、
前記凹部内において前記ハブと前記モータハウジングとを熱的に接続し、
前記モータハウジングの外周を一周にわたって囲む放熱グリスを有
し、
前記ハブの内壁面から径方向内側へ広がる円環状の壁部材を有し、
前記壁部材は、
軸方向において、前記モータハウジングと前記減速機構の間に位置し、
前記モータハウジングと隙間を介して対向し、
前記壁部材から前記モータハウジングに向かって軸方向に延びる筒状の第1突出壁を有し、
前記壁部材の内周端は、前記モータハウジングの外周端よりも径方向内側に位置し、
前記モータハウジングは、前記壁部材の第1突出壁よりも径方向外側の位置から前記壁部材側に向かって軸方向に延びる筒状壁を有し、
前記壁部材の第1突出壁と前記モータハウジングの筒状壁とは径方向に対向する、
駆動装置。
【請求項2】
前記モータハウジングは、前記ステータの軸方向一方側に固定される第1モータブラケットと、前記ステータの軸方向他方側に固定される第2モータブラケットとを有し、
前記第1モータブラケットと前記第2 モータブラケットとは、軸方向に間隙を有して対向する、
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記ハブの内壁面のうちの前記モータハウジングと対向する領域内に位置する、
請求項
1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記ハブの内壁面から前記モータハウジングの外周面に向かって突出し、前記内壁面に沿って延びるリブ部を有し、
前記凹部は、前記リブ部に囲まれる、
請求項
1から3のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記ハブの内壁面において径方向外側へ凹む凹所である、
請求項
1から4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記凹部は、前記ハブの内壁面を周方向に一周する凹溝であり、
前記モータは、前記モータハウジングの外周面から径方向外側へ突出するモータ突起部を有し、
前記モータ突起部は、前記凹溝に挿入される、
請求項
1から5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記モータハウジングは、前記ステータの軸方向一方側に固定される第1モータブラケットと、前記ステータの軸方向他方側に固定される第2モータブラケットとを有し、
前記第1モータブラケットは、前記第2モータブラケット側の端部から径方向外側へ広がる第1フランジ部を有し、
前記第2モータブラケットは、前記第1モータブラケット側の端部から径方向外側へ広がる第2フランジ部を有し、
軸方向に対向する前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との間に、前記ステータの一部が配置される、
請求項
6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記ステータの一部が前記モータハウジングから露出する、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記ステータは、前記モータハウジングから露出する位置に、径方向外側に突出する突出部を有する、
請求項
8に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記放熱グリスは、前記減速機構の接触するグリスと等しい組成を有する、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動自転車、電動アシスト自転車、歩行介助車などの電動車に用いられる駆動装置として、例えば特許文献1に記載のように、ハブにモータを内蔵した駆動装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記駆動装置では、モータがハブに収容されるため、モータの熱を排出しにくい構造であった。
【0005】
本発明の一態様は、排熱性に優れる駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、中心軸に沿って延びるハブ軸回りに回転可能な中空のハブと、前記ハブの内部に収容され、前記ハブ軸に固定されるモータと、前記モータおよび前記ハブに連結される減速機構と、を備え、前記モータは、前記ハブ軸に沿って延びるモータシャフトを有するロータと、前記ロータの径方向外側に配置されるステータと、前記ステータを内側に保持するモータハウジングと、を有し、前記ハブと前記モータハウジングとを熱的に接続する放熱グリスを有する、駆動装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、排熱性に優れる駆動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の駆動装置を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1変形例の駆動装置の部分断面図である。
【
図3】
図3は、第2変形例の駆動装置の部分断面図である。
【
図4】
図4は、第3変形例の駆動装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の駆動装置を示す断面図である。
本実施形態の駆動装置10は、電動自転車、電動アシスト自転車、歩行介助車などの電動車の駆動装置として用いられる。
駆動装置10は、車両に固定される一対のハブ軸11、12と、ハブ軸11、12の中心軸J回りに回転可能な中空のハブ20と、ハブ20の内部に収容され、ハブ軸12に固定されるモータ30と、モータ30およびハブ20に連結される減速機構40と、を備える。モータ30は、ハブ軸12に固定されるモータハウジング34を有する。モータハウジング34には減速機構40が固定される。
軸方向において、ハブ軸11と、減速機構40と、モータハウジング34と、ハブ軸12とがこの順に連結されて固定される。ハブ軸11、12に固定されるモータ30および減速機構40の駆動力によって、ハブ20がハブ軸11、12を中心として回転駆動される。ハブ軸11、12は、いずれか一方が車両に固定される構造であってもよい。
【0010】
本実施形態では、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼ぶ。軸方向のうち、モータ30から減速機構40へ向かう方向を軸方向一方側と呼び、減速機構40からからモータ30へ向かう方向を軸方向他方側と呼ぶ。軸方向一方側は、中心軸Jに沿ってモータ30からモータシャフト31が突出する方向である。軸方向他方側は、モータ30がハブ軸12に固定される側である。また、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Jに接近する方向を径方向内側と呼び、中心軸Jから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
ハブ20は、モータ30および減速機構40を収容する中空の筐体である。ハブ20は、円板状の蓋部20Aと、有底円筒状の本体部20Bとを有する。本体部20Bは軸方向一方側へ開口する。蓋部20Aは、本体部20Bの開口部を軸方向一方側から塞ぐ。蓋部20Aは、本体部20Bにボルト締結される。
【0012】
本体部20Bは、軸方向他方側に位置する底壁部121と、底壁部121の外周縁から軸方向一方側へ延びる筒部122と、を有する。本体部20Bの筒部122には、底壁部121側から順に、モータ30と減速機構40とが収容される。
蓋部20Aは、軸方向に見た中央部に第1ハブベアリング21を保持する。蓋部20Aは、第1ハブベアリング21によりハブ軸11に回転可能に支持される。本体部20Bは、軸方向に見た底壁部121の中央部に第2ハブベアリング22を保持する。本体部20Bは、第2ハブベアリング22により、モータ30のモータハウジング34に回転可能に支持される。
【0013】
本実施形態の駆動装置10では、本体部20B内のモータ30と減速機構40との間に、ハブ20の内壁面から径方向内側へ広がる円環状の壁部材24が設けられる。壁部材24は、軸方向と直交する方向に広がる円板部24aと、円板部24aの径方向内側の端縁から軸方向他方側へ延びる円筒状の第1突出壁24cと、円板部24aの径方向外側の端縁からハブ20の内壁面に沿って軸方向一方側へ延びる円筒状の第2突出壁24bと、を有する。第2突出壁24bは、ハブ20の内壁面に固定される。
【0014】
上記構成により、駆動装置10は、ハブ20の内部に、壁部材24と、ハブ20の本体部20Bの底壁部121とを側壁とし、壁部材24と底壁部121との間のハブ20の内壁面を底面とする凹溝25を有する。凹溝25は、径方向内側へ開口する。すなわち、本実施形態の駆動装置10は、モータハウジング34と径方向に対向するハブ20の内壁面に、径方向内側に開口する凹部を有する。言い換えると、凹部は、ハブ20の内壁面のうちのモータハウジング34と対向する領域内に位置する。
【0015】
凹溝25の内部には、放熱グリス60が配置される。放熱グリス60は、凹溝25内においてハブ20とモータハウジング34とを熱的に接続する。すなわち、放熱グリス60は、凹部内においてハブ20とモータハウジング34とを熱的に接続する。これにより、モータ30において発生した熱が、モータハウジング34から放熱グリス60を経由してハブ20へ伝わり、ハブ20の外表面から大気へ放出される。したがって、密閉されたハブ20の内部で発生するモータ30の熱を効率よく排出できる。
【0016】
本実施形態では、凹溝25は、ハブ20の内壁面を周方向に一周する。この場合、凹部は、ハブ20の内壁面を周方向に一周する凹溝である。
図1では、放熱グリス60をハブ20の下部にのみ表示しているが、実際には、放熱グリス60は、モータハウジング34の外周を一周にわたって囲む。これにより、モータハウジング34の外周面から径方向外側へ放射状に均一に熱が放出されるので、より優れた排熱性が得られる。
【0017】
放熱グリス60は、減速機構40の潤滑に用いられる潤滑グリスと等しい組成を有するグリスであってもよい。この構成によれば、放熱グリス60が仮に減速機構40側へ漏洩しても、潤滑グリスの量が増えるだけであるため、減速機構40の動作に不具合を生じにくい。
なお、減速機構40の動作に影響しにくいグリスであれば、上記潤滑グリスと異なる組成のグリスを放熱グリス60として用いてもよい。
【0018】
本実施形態では、壁部材24を用いて凹溝25が設けられる。これにより、ハブ20の本体部20Bの内壁面を追加加工することなく凹溝25を設けることができるため、ハブ20の製造が容易である。
【0019】
壁部材24は、軸方向において、モータハウジング34と減速機構40の間に位置する。この構成により、モータハウジング34の外周面とハブ20の内壁面とに挟まれる領域から減速機構40側へ放熱グリス60が漏洩するのを抑制できる。
【0020】
壁部材24の内周端は、モータハウジング34の外周端よりも径方向内側に位置する。すなわち、壁部材24の径方向長さは、モータハウジング34とハブ20の内壁面との間隔よりも大きい。これにより、放熱グリス60の減速機構40側への漏洩をさらに抑制できる。
壁部材24の第1突出壁24cは、壁部材24からモータハウジング34に向かって軸方向に延びる。この構成により、例えば車両の横倒しにより駆動装置10が倒れた場合であっても、流動した放熱グリス60は第1突出壁24cで堰き止められる。したがって、転倒時にも放熱グリス60は減速機構40側へ漏洩しにくい。
【0021】
ハブ20は、外周面から径方向外側へ突出する2つの接続部20a、20bを有する。接続部20aおよび接続部20bには、駆動装置10を電動ハブとして備える車輪のスポークが接続される。
【0022】
モータ30は、ハブ軸11、12に沿って延びるモータシャフト31を有するロータ32と、ロータ32の径方向外側に配置されるステータ33と、ステータ33を内側に保持するモータハウジング34と、を有する。
【0023】
ロータ32は、モータシャフト31に固定されるロータコアと、ロータコアの外周部に固定されるロータマグネットとを有する。ロータコアは例えば積層鋼板からなる。ロータ32は、中心軸J回りに回転する。すなわち、モータシャフト31は、中心軸Jに沿って延びる。モータシャフト31は、モータハウジング34に保持される第1ベアリング35および第2ベアリング36に支持される。
【0024】
ステータ33は、モータハウジング34に固定されるステータコア37と、ステータコア37のティースにインシュレータを介して巻き回されるコイル38と、を有する。ステータコア37は、例えば積層鋼板からなる。ステータコア37は、外周面から径方向外側へ突出する突出部37Aを有する。突出部37Aは、ステータコア37の外周面において周方向に複数箇所設けられる。突出部37Aは、ステータコア37の複数のティースの径方向外側に配置されていてもよい。突出部37Aは、周方向に連続する円環状であってもよい。
【0025】
モータハウジング34は、ステータ33の軸方向一方側に配置される第1モータブラケット34Aと、ステータ33の軸方向他方側に配置される第2モータブラケット34Bと、を有する。モータハウジング34は、第1モータブラケット34Aと前記第2モータブラケット34Bとにより、ステータ33を軸方向に挟んだ状態で保持する。すなわち、モータハウジング34は、ステータ33の軸方向一方側に固定される第1モータブラケット34Aと、ステータ33の軸方向他方側に固定される第2モータブラケット34Bとを有し、第1モータブラケット34Aと第2モータブラケット34Bとは、軸方向に間隙を有して対向する。
【0026】
第1モータブラケット34Aは、軸方向他方側に開口する有底の円筒状である。第1モータブラケット34Aは、軸方向一方側の端部に、第1ベアリング35を保持するベアリング保持部131を有する。第1モータブラケット34Aの軸方向他方側を向く開口部134Aにステータコア37の一部が挿入される。
【0027】
第2モータブラケット34Bは、軸方向一方側に開口する有底の円筒状である。第2モータブラケット34Bは、軸方向他方側の端部に、第2ベアリング36を保持するベアリング保持部132と、ハブ軸12を保持するハブ軸保持部133と、を有する。第2モータブラケット34Bの軸方向一方側を向く開口部134Bにステータコア37の一部が挿入される。本実施形態では、ステータコア37は、第2モータブラケット34Bにボルト締結される。
【0028】
第1モータブラケット34Aの開口部134Aと第2モータブラケット34Bの開口部134Bとは、間隔を空けて軸方向に対向する。この構成によれば、第1モータブラケット34Aと第2モータブラケット34Bとの間からステータ33の一部が露出するので、ステータ33と放熱グリス60とが直接接触する。これにより、ステータ33の熱を放熱グリス60を介して効率よく放出できる。
【0029】
突出部37Aは、ステータコア37の外周側において互いに対向する第1モータブラケット34Aと前記第2モータブラケット34Bとの間に位置する。突出部37Aを備えることで、ステータコア37とハブ20の内壁面との径方向の間隔が狭くなる。これにより、放熱グリス60によるステータコア37とハブ20とが熱的に接続されやすくなる。
【0030】
本実施形態では、突出部37Aの径方向外側の端縁の位置は、第1モータブラケット34Aの外周面の径方向位置および前記第2モータブラケット34Bの外周面の径方向位置に揃えられる。突出部37Aは、ハブ20に干渉しない範囲で、モータハウジング34の外周面から径方向外側へ突出していてもよい。突出部37Aの径方向外側の端縁は、放熱グリス60との接触を確保できる範囲で、モータハウジング34の外周面よりも径方向内側に位置していてもよい。
【0031】
減速機構40は、モータシャフト31の軸方向一方側の端部に連結される太陽歯車41と、太陽歯車41の径方向外側に配置される複数の遊星歯車42と、各々の遊星歯車42を回転可能に支持する複数の支持軸43と、複数の支持軸43をモータ30に固定する固定部44と、複数の遊星歯車42を径方向外側から囲む円環状の出力歯車45と、を有する。遊星歯車42および支持軸43は、本実施形態では3組設けられる。
【0032】
太陽歯車41は、モータシャフト31と同軸の外歯歯車である。
遊星歯車42は、径の異なる1組の同軸の外歯歯車を有する2段歯車である。遊星歯車42は、軸方向一方側に位置する小歯車42aと、軸方向他方側に位置する大歯車42bとを有する。遊星歯車42の大歯車42bは、太陽歯車41と噛み合う。遊星歯車42は、小歯車42aおよび大歯車42bの中心を貫通する貫通孔42cを有する。
【0033】
支持軸43は、軸方向に延びる。支持軸43は、遊星歯車42の貫通孔42cに通される。支持軸43の軸方向一方側の端部は固定部44に固定される。支持軸43の軸方向他方側の端部は、第1モータブラケット34Aの底壁部134に固定される。
【0034】
固定部44は、複数の支持軸43の軸方向一方側の端部が固定される頂壁部44aと、頂壁部44aの外周端から軸方向他方側へ延びる複数の脚部44bと、を有する。頂壁部44aには、ハブ軸11の軸方向他方側の端部が固定される。脚部44bは、本実施形態では3本設けられる。脚部44bの軸方向他方側の端部は、第1モータブラケット34Aの底壁部134にボルト締結により固定される。
【0035】
出力歯車45は、遊星歯車42の小歯車42aに噛み合う内歯歯車である。出力歯車45は、ハブ20の蓋部20Aの内面に固定される。すなわち、減速機構40は、太陽歯車41においてモータ30に連結され、出力歯車45においてハブ20に連結される。
【0036】
(第1変形例)
図2は、第1変形例の駆動装置の部分断面図である。
第1変形例の駆動装置10Aでは、モータハウジング34が、壁部材24の第1突出壁24
cよりも径方向外側の位置から壁部材24側に向かって軸方向に延びる筒状壁134aを有する。壁部材24の第1突出壁24
cとモータハウジング34の筒状壁134aとは、径方向に対向する。
【0037】
この構成によれば、第1突出壁24cと筒状壁134aとにより、凹溝25から壁部材24の外側へ向かう放熱グリス60の流路が、複数箇所で屈曲されたラビリンス構造の流路となる。したがって、放熱グリス60が凹溝25から減速機構40側へ流出しにくくなる。
【0038】
第1変形例では、モータハウジング34が筒状壁134aを有する構成としたが、モータハウジング34の軸方向一方側を向く面に、中心軸Jを中心とする円環状の溝部を設け、上記溝部に壁部材24の第1突出壁24cが挿入される構成であってもよい。
【0039】
(第2変形例)
図3は、第2変形例の駆動装置の部分断面図である。
第2変形例の駆動装置10Bは、ハブ20の内壁面に、モータハウジング34の外周面に向かって突出するリブ部124a、124bを有する。リブ部124a、124bは、モータハウジング34の周囲を周方向に一周する。駆動装置10Bは、リブ部124aおよびリブ部124bを側壁とし、リブ部124a、124bの間に位置するハブ20の内壁面を底面とする凹溝125を有する。凹溝125は、径方向内側に開口する。すなわち、駆動装置10Bは、モータハウジング34と径方向に対向する凹部としての凹溝125を有する。
【0040】
リブ部124a、124bのうち、軸方向一方側に位置するリブ部124aは、第1モータブラケット34Aの外周面と対向する。軸方向他方側に位置するリブ部124bは、第2モータブラケット34Bの外周面と対向する。したがって、凹溝125は、ハブ20の内壁面のうち、モータハウジング34と径方向に対向する領域に位置する。より詳細には、凹溝125は、第1モータブラケット34Aと第2モータブラケット34Bとの軸方向の隙間、およびステータコア37の突出部37Aと径方向に対向する。
【0041】
凹溝125内には、実施形態の駆動装置10と同様に、放熱グリス60が配置される。放熱グリス60は、凹溝125内において、モータハウジング34とハブ20とを熱的に接続する。この構成により、モータ30の熱は、放熱グリス60を介してハブ20へ効率よく排出される。
【0042】
凹溝125は、ステータ33の径方向外側に位置し、モータハウジング34の軸方向長さよりも狭い幅である。これにより、放熱グリス60が配置される範囲が、
図1および
図2に示した構成よりも狭くなるため、放熱グリス60の使用量を節約できる。
第2変形例の駆動装置10Bでは、凹溝125の軸方向の幅の増減と、凹溝125内に配置する放熱グリス60の増減により、モータ30からハブ20への排熱量を調整できる。
【0043】
第2変形例において、リブ部124a、124bは、3本以上配置されていてもよい。リブ部の数を増やすことにより、凹溝125から外側へ漏洩した放熱グリス60が、減速機構40へ回り込むのを抑制できる。
第2変形例では、ハブ20の内壁面を周方向に一周する凹溝125としたが、凹溝125は、周方向において複数の凹部に分割されていてもよい。この場合でも、ハブ20の回転に伴って、凹部および放熱グリス60がモータハウジング34の外周面に対して相対移動するので、モータ30の熱をハブ20へ排出可能である。したがって、放熱グリス60は、ハブ20とモータハウジング34とを熱的に接続可能な位置に配置されていれば、必ずしも凹部内に配置される必要はない。上記実施形態および各変形例においても同様である。
【0044】
(第3変形例)
図4は、第3変形例の駆動装置の部分断面図である。
第3変形例の駆動装置10Cは、ハブ20の内壁面に、モータハウジング34の外周面に向かって突出するリブ部124a、124bと、リブ部124a、124bの間に位置し、ハブ20の内壁面において径方向外側に凹む凹溝225と、を有する。凹溝225は、それぞれモータハウジング34の周囲を周方向に一周する。凹溝225は、径方向内側に開口する。すなわち、駆動装置10Bは、モータハウジング34と径方向に対向する凹部としての凹溝225を有する。
第3変形例の凹溝225は、底面をハブ20の内壁面よりも径方向外側へ配置することにより第2変形例の凹溝125よりも深くされた凹溝である。
【0045】
モータ30は、モータハウジング34の外周面において径方向外側へ突出するモータ突起部30aを有する。モータ突起部30aは、第1モータブラケット34Aの軸方向他方側の端縁から径方向外側へ広がる第1フランジ部135aと、第2モータブラケット34Bの軸方向一方側の端縁から径方向外側へ広がる第2フランジ部135bと、第1フランジ部135aと第2フランジ部135bとの間に位置する突出部37Aと、を有する。すなわち、軸方向に対向する第1フランジ部135aと第2フランジ部135bとの間には、ステータ33の一部が配置される。
【0046】
ステータコア37の突出部37Aの径方向外側の端縁の径方向位置は、モータハウジング34の第1フランジ部135aの径方向外側の端縁、および第2フランジ部135bの径方向外側の端縁の径方向位置に一致する。モータ突起部30aは、径方向外側に延びて凹溝225内に挿入される。モータ突起部30aの径方向外側の端縁は、リブ部124a近傍の内壁面20cよりも径方向外側に位置する。
【0047】
凹溝225内には、実施形態の駆動装置10と同様に、放熱グリス60が配置される。放熱グリス60は、凹溝225内において、モータハウジング34とハブ20とを熱的に接続する。この構成により、モータ30の熱は、放熱グリス60を介してハブ20へ効率よく排出される。
第3変形例では、モータ突起部30aの一部が凹溝225に挿入されているため、モータハウジング34およびステータコア37と放熱グリス60との接触面積が、
図3に示した第2変形例と比較しても大きく、優れた放熱性が得られる。
【0048】
第3変形例において、リブ部124a、124bが設けられていない構成としてもよい。凹溝225は、内壁面20cよりも径方向外側へ凹んでいるため放熱グリス60を保持可能である。またモータ突起部30aは内壁面20cよりも径方向外側まで延びているため、リブ部124a、124bが無くとも放熱グリス60と接触可能である。
【符号の説明】
【0049】
10,10A,10B,10C…駆動装置、11,12…ハブ軸、20…ハブ、20c…内壁面、24…壁部材、24c…第1突出壁、24b…第2突出壁、25,125,225…凹溝、30…モータ、30a…モータ突起部、31…モータシャフト、32…ロータ、33…ステータ、34…モータハウジング、34A…第1モータブラケット、34B…第2モータブラケット、37A…突出部、40…減速機構、60…放熱グリス、124a,124b…リブ部、134a…筒状壁、135a…第1フランジ部、135b…第2フランジ部、J…中心軸