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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/40 20180101AFI20221213BHJP
   F21S 41/32 20180101ALI20221213BHJP
【FI】
F21S41/40
F21S41/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018081384
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2019192393
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(72)【発明者】
【氏名】浜本 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】若杉 友弘
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0031202(US,A1)
【文献】特開2012-190594(JP,A)
【文献】特開2017-091876(JP,A)
【文献】特開2017-206104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元光制御装置で投影する光を制御する車両用灯具であって、
前記車両用灯具は、
光源装置と、
前記光源装置からの光を前記二次元光制御装置に向けて反射するリレー光学部と、
前記二次元光制御装置からの光を前方側に投影するレンズ部と、を備え、
前記光源装置が、前後方向の位置で見て、前記二次元光制御装置と前記レンズ部との間の位置に配置されるとともに、上下方向で見て、前記二次元光制御装置から前記レンズ部に入射させるように照射される光を阻害しない位置に配置され、
前記車両用灯具は、さらに、前記二次元光制御装置と前記光源装置の間に位置し、前記二次元光制御装置から照射される光が前記光源装置に入射するのを阻止する光阻止部を備え、
前記二次元光制御装置は、少なくとも一部の光を前記レンズ部に入射させない制御を行う場合、前記光阻止部に向けて前記レンズ部に入射させない光を照射するようにしてあり、
前記光阻止部は、前記二次元光制御装置からの光を受けやすいように、光阻止面が前記二次元光制御装置の光照射部に向くように後方斜め上側に傾くように配置されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記リレー光学部は、前記二次元光制御装置の前記光照射部に向けて光を反射する反射面を有し、
前記リレー光学部は、上下方向で見て、前記反射面が前記二次元光制御装置から前記レンズ部に入射させるように照射される光よりも上側であって、かつ、前記反射面の少なくとも一部が前記レンズ部の上端より下側に位置するように配置され、
前記光源装置は、上下方向で見て、前記二次元光制御装置から前記レンズ部に入射させるように照射される光よりも下側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光源装置は、
発光部を有する光源と、
前記光源からの光を前記リレー光学部に向けて照射する照射レンズ部と、を備え、
前記光源装置は、上下方向で見て、前記照射レンズ部が前記二次元光制御装置から前記レンズ部に入射させるように照射される光よりも下側であって、かつ、前記照射レンズ部の少なくとも一部が前記レンズ部の下端より上側に位置するように配置され、
前記光阻止部が、前記二次元光制御装置と前記照射レンズ部との間に位置することを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記光源装置は、光源から照射される光の照射光軸が前方斜め上側に向くように配置され、
前記リレー光学部は、前記反射面の前記照射光軸と交わる点が発光部の発光中心を通る鉛直軸よりも前方側にオフセットするように配置されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記リレー光学部は、前記反射面が、前記二次元光制御装置の前記光照射部に向けて、前記光源装置からの光を後斜め下側に反射するように配置されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用灯具(ヘッドランプ)に用いることができるMEMSミラーを利用した画像投射システムが開示されている。
そして、この画像投射システムでは、中央の光度が高い光のパターンを形成し、その光のパターン内に像を形成することで画像の表示を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-211432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用灯具は、近年、小型化の要求が高まっているため、画像の投影が可能な構成を組み込むにあたって、コンパクト化することが望まれ、コンパクト化に際してグレアの発生を抑制することも考慮することが望ましい。
【0005】
したがって、車両用灯具が、DMD等の二次元光制御装置を備えるにあたって、依然として、改善されるべき点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、DMD等の二次元光制御装置を備えるにあたって、例えば、グレアの発生を抑制しつつ、コンパクト化が行える車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用灯具は、二次元光制御装置で投影する光を制御する車両用灯具であって、前記車両用灯具は、光源装置と、前記光源装置からの光を前記二次元光制御装置に向けて反射するリレー光学部と、前記二次元光制御装置からの光を前方側に投影するレンズ部と、を備え、前記光源装置が、前後方向の位置で見て、前記二次元光制御装置と前記レンズ部との間の位置に配置されるとともに、上下方向で見て、前記二次元光制御装置から前記レンズ部に入射させるように照射される光を阻害しない位置に配置され、前記車両用灯具は、さらに、前記二次元光制御装置と前記光源装置の間に位置し、前記二次元光制御装置から照射される光が前記光源装置に入射するのを阻止する光阻止部を備え、前記二次元光制御装置は、少なくとも一部の光を前記レンズ部に入射させない制御を行う場合、前記光阻止部に向けて前記レンズ部に入射させない光を照射する。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記リレー光学部は、前記二次元光制御装置の光照射部に向けて光を反射する反射面を有し、前記リレー光学部は、上下方向で見て、前記反射面が前記二次元光制御装置から前記レンズ部に入射させるように照射される光よりも上側であって、かつ、前記反射面の少なくとも一部が前記レンズ部の上端より下側に位置するように配置され、前記光源装置は、上下方向で見て、前記二次元光制御装置から前記レンズ部に入射させるように照射される光よりも下側に配置されている。
【0009】
(3)上記(2)の構成において、前記光源装置は、発光部を有する光源と、前記光源からの光を前記リレー光学部に向けて照射する照射レンズ部と、を備え、前記光源装置は、上下方向で見て、前記照射レンズ部が前記二次元光制御装置から前記レンズ部に入射させるように照射される光よりも下側であって、かつ、前記照射レンズ部の少なくとも一部が前記レンズ部の下端より上側に位置するように配置され、前記光阻止部が、前記二次元光制御装置と前記照射レンズ部との間に位置する。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記光源装置は、光源から照射される光の照射光軸が前方斜め上側に向くように配置され、前記リレー光学部は、前記反射面の前記照射光軸と交わる点が前記発光部の発光中心を通る鉛直軸よりも前方側にオフセットするように配置される。
【0011】
(5)上記(4)の構成において、前記リレー光学部は、前記反射面が、前記二次元光制御装置の光照射部に向けて、前記光源装置からの光を後斜め下側に反射するように配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、DMD等の二次元光制御装置を備えるにあたって、例えば、グレアの発生を抑制しつつ、コンパクト化が行える車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施形態の車両用灯具を備えた車両の平面図である。
図2】本発明に係る実施形態の灯具ユニットの斜視図である。
図3】本発明に係る実施形態の灯具ユニットの要部を示す断面図である。
図4】本発明に係る実施形態の灯具ユニットの形成するスクリーン上での配光パターンを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する。)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0015】
また、実施形態及び図中において、特に断りがない場合、「前」、「後」は、各々、車両102の「前進方向」、「後進方向」を示し、「上」、「下」、「左」、「右」は、各々、車両102に乗車する運転者から見た方向を示す。
なお、言うまでもないが「上」、「下」は鉛直方向での「上」、「下」でもあり、「左」、「右」は水平方向での「左」、「右」でもある。
【0016】
図1は、本発明に係る実施形態の車両用灯具を備えた車両102の平面図である。
図1に示すように、本発明に係る実施形態の車両用灯具は、車両102の前方の左右のそれぞれに設けられる車両用の前照灯(101L、101R)であり、以下では単に車両用灯具と記載する。
【0017】
本実施形態の車両用灯具は、車両前方側に開口したハウジング(図示せず)と開口を覆うようにハウジングに取り付けられるアウターレンズ(図示せず)を備え、ハウジングとアウターレンズとで形成される灯室内に灯具ユニット1(図2参照)等が配置されている。
【0018】
図2は本発明に係る実施形態の灯具ユニット1の斜視図であり、図3は本発明に係る実施形態の灯具ユニット1の要部を示す断面図である。
なお、図3は、灯具ユニット1のレンズ部50の左右方向の中央の位置で前後方向に切断したときの要部を示す断面図になっており、構成の説明に必要な部分だけを示し、それ以外の部分の図示を省略している。
【0019】
図2に示すように、灯具ユニット1は、ヒートシンク10と、光源装置20と、二次元光制御装置30と、リレー光学部40と、レンズ部50と、光阻止部60(図3参照)と、を主に備えている。
【0020】
ヒートシンク10は、光源装置20、二次元光制御装置30、リレー光学部40、及び、レンズ部50を組み付ける際の台座となる部分であり、光源装置20を冷却する役目も果たすため、放熱性が良い材料で形成され、例えば、本実施形態では、アルミダイキャスト製のヒートシンク10を用いている。
【0021】
光源装置20は、二次元光制御装置30が制御する光を形成する部分であり、後ほど説明するように、光源21(図3参照)と、その光源21からの光をリレー光学部40に向けて照射する照射レンズ部22と、照射レンズ部22を光源21に対して所定の位置に位置させるように保持する保持部23と、を備えている。
【0022】
二次元光制御装置30は、二次元マトリックス状に配置され、光の反射方向(照射方向)を制御する複数のマイクロミラーを有する光照射部31(図3参照)を備えたディジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)等である。
【0023】
そして、二次元光制御装置30は、図3に示すように、レンズ部50側に光照射部31が向くようにして、レンズ部50と対向する後方側に配置されている。
【0024】
なお、本実施形態では、レンズ部50は、レンズ光軸Z1(図3参照)が、後述するフランジ部を除く、レンズ領域の上下中央よりも若干下側に設定されており、光照射部31の中央がそのレンズ光軸Z1(図3参照)にほぼ一致している。
【0025】
このため、二次元光制御装置30は、上下方向で見て、光照射部31の中央がレンズ部50の中央(レンズ領域の物理的な中央)よりも下側に位置するように配置されている。
【0026】
リレー光学部40は、図2に示すように、ヒートシンク10の斜め前方上側に傾いた上側を向く表面10Aに取り付けられた支持部70に取り付けられ、光源装置20からの光を二次元光制御装置30に向けて反射する部材である。
なお、ヒートシンク10の表面10Aの反対側となる側には左右方向に並び、前後方向に延在する複数の放熱フィンが設けられている。
【0027】
本実施形態では、支持部70がヒートシンク10側からレンズ部50のほぼ上側まで延在する壁面を有し、その壁面からリレー光学部40を取り付ける左右一対のアーム部71が前方側に延びるように設けられており、壁面には、二次元光制御装置30の光照射部31(図3参照)をレンズ部50に対面させるための開口部72が形成されている。
【0028】
そして、二次元光制御装置30は、開口部72に光照射部31(図3参照)の位置が合うように、ヒートシンク10に対して固定される支持部70と異なる支持構造80で支持された二次元光制御装置30を冷却するヒートシンク(図示せず)に取り付けられている。
【0029】
しかし、二次元光制御装置30が取り付けられる二次元光制御装置30を冷却するヒートシンク(図示せず)が支持部70に取り付けられ、開口部72に光照射部31(図3参照)の位置が合うように、二次元光制御装置30が配置されていてもよい。
【0030】
本実施形態では、リレー光学部40は、図3に示すように、内側に湾曲する凹面鏡に形成され、二次元光制御装置30の光照射部31に向けて、光源装置20からの光(直射光)を集光させるように反射する反射面41を有するものとしている。
【0031】
しかし、リレー光学部40は、このような形態に限定される必要はなく、例えば、反射プリズムのような材料と空気の屈折率差を利用して二次元光制御装置30の光照射部31に向けて光を集光させるように反射する光学部材で構成されていてもよい。
【0032】
レンズ部50は、図3に示すように、樹脂で形成された2枚以上のレンズ(前方側レンズ51、後方側レンズ52)の組み合わせで形成され、それらのレンズは、外周にフランジ部(図示せず)が形成されている。
【0033】
そして、レンズ部50は、図2に示すように、それらのレンズのフランジ部(図示せず)が支持部70に取り付けられるレンズホルダ90に保持されることで、二次元光制御装置30の前方側に配置され、二次元光制御装置30からの光を前方側に投影する。
【0034】
本実施形態では、レンズ部50は、前方側に配置される前方側レンズ51と、前方側レンズ51よりも後方側に配置される後方側レンズ52と、を備えている。
【0035】
そして、前方側レンズ51は、入射面51A、及び、出射面51Bが共に外側に出っ張るように湾曲した両凸レンズになっており、後方側レンズ52は、入射面52Aが外側に出っ張るように湾曲するとともに、出射面52Bが内側に凹むように湾曲する凹メニスカスレンズになっている。
【0036】
また、前方側レンズ51には、低屈折率・低分散の樹脂(例えば、アクリル系樹脂等)が用いられ、後方側レンズ52には、高屈折率・高分散の樹脂(例えば、ポリカーボネート系樹脂等)が用いられ、前方側レンズ51と後方側レンズ52のアッベ数を異なる(本例では、前方側レンズ51の方が後方側レンズ52よりもアッベ数が高い。)ものとするとともに、さらに、レンズ部50は、中央側(レンズ光軸Z1側)から径方向外側に向かって前後方向の色収差の収差量を前後に振ることで色収差をキャンセルするようにしている。
【0037】
なお、本実施形態では、樹脂で形成された2枚のレンズでレンズ部50を構成しているが、樹脂で形成された3枚以上のレンズでレンズ部50を構成するようにしてもよい。
ただし、樹脂でレンズを形成する場合には、屈折率及び分散の組み合わせを考えた場合に材料の選択幅が小さいため、3枚以上のレンズの組み合わせでレンズ部50を構成する場合には、レンズをガラスで形成する方がよい。
【0038】
例えば、レンズ部50を前方側に配置される前方側レンズと、後方側に配置される後方側レンズと、前方側レンズと後方側レンズの間に配置される中央レンズと、で構成する場合、前方側レンズを入射面(後方面)が平らで、出射面(前方面)が外側に出っ張るように湾曲する平凸レンズとし、後方側レンズを、逆に、入射面(後方面)が外側に出っ張るように湾曲し、出射面(前方面)が平らな平凸レンズとし、中央レンズを入射面(後方面)及び出射面(前方面)が共に内側に凹むように湾曲する両凹レンズとすればよい。
【0039】
そして、この場合、前方側レンズ、後方側レンズ、及び、中央レンズを形成するガラス材料を、例えば、前方側レンズ、後方側レンズ、及び、中央レンズのナトリウムD線での屈折率が1.6から1.7前後で、前方側レンズ、及び、後方側レンズに対して中央レンズのアッベ数が低くなるものとすればよい。
例えば、一例として、前方側レンズ、及び、後方側レンズの材料をクラウンガラスとして、中央レンズの材料をフリントガラスとすればよい。
【0040】
光阻止部60(図3参照)は、後ほど説明するように、二次元光制御装置30が、少なくとも一部の光をレンズ部50に入射させない制御を行う場合、つまり、マイクロミラーのうちの少なくとも一部のマイクロミラーがレンズ部50に向けて光を反射しない制御が行われるときに、その光が光源装置20側に反射されることになるため、その光が光源装置20に入射するのを阻止する部材である。
【0041】
次に、光源装置20を発光させた状態を説明しながらより詳細な構成について説明する。
図3に示すように、光源装置20は、基板21Aと基板21A上に設けられた半導体型の発光部21Bを有する光源21を備えている。
【0042】
なお、本実施形態では、発光部21BがLED素子で形成され、正方形のLED素子が隙間を開けずに左右方向(図3の紙面方向)に複数繋がって、1つの左右方向に横長の長方形状の発光部21Bになっている。
したがって、本実施形態の光源21は、左右方向に横長の長方形の1つの発光部21Bを備えるものになっている。
【0043】
また、先に触れたように、光源装置20は照射レンズ部22を備えているが、図3に示すように、この照射レンズ部22は、光源21側に位置する第1レンズ22Aと、第1レンズ22Aよりもリレー光学部40側に位置する第2レンズ22Bと、を備えており、これら第1レンズ22A、及び、第2レンズ22Bが所定の位置に位置するように、保持部23(図2参照)に保持されている。
【0044】
例えば、第1レンズ22Aは、光源21側に位置することから耐熱性に優れたポリカーボネート系樹脂で形成されることが好ましく、第2レンズ22Bは光源21から離れた側に位置することから耐熱性についてはそれほど考慮する必要はなく、アクリル系樹脂やポリカーボネート系樹脂で形成すればよい。
【0045】
ただし、第1レンズ22Aについても、光源21の出力等によって、アクリル系樹脂を使用して問題がない場合もあるため、ポリカーボネート系樹脂であることに限定されるものではない。
また、光源21の高出力化が進むことも考えられるため、この点からすれば、第2レンズ22Bもポリカーボネート系樹脂にした方が好ましいことも考えられ、第1レンズ22A及び第2レンズ22Bの両方をポリカーボネート系樹脂で形成する場合、光源21から照射される光の照射光軸Z2に沿った方向での照射レンズ部22の厚みを薄くすることが可能である。
【0046】
なお、図3では、図示を省略しているが、第1レンズ22A、及び、第2レンズ22Bは、周囲にフランジ部を有し、そのフランジ部が保持部23(図2参照)に保持されている。
【0047】
そして、本実施形態では、光源21がヒートシンク10(図2参照)の表面10A(図2参照)に配置され、その光源21の周囲に位置する支持部70(図2参照)の部分に対して保持部23が取り付けられているが、保持部23をヒートシンク10(図2参照)の表面10A(図2参照)に取り付けるようにしてもよい。
【0048】
ここで、図3に示すように、第1レンズ22A、及び、第2レンズ22Bは、どちらも入射面(光源21側を向く面)及び出射面(リレー光学部40側を向く面)が共に外側に出っ張るように湾曲した両凸レンズになっている。
【0049】
このため、光源21の発光部21Bからの長方形の光のパターンP1が崩れることなく、また、光のパターンP1内の光度の偏りを抑制するように、リレー光学部40の反射面41に向けて光を照射する設計が行いやすくなっている。
【0050】
そして、リレー光学部40の反射面41に照射される光のパターンP1が、光のパターンP1内の光度の偏りが少ない長方形にできるため、光照射部31の左右方向に横長の長方形の形状にあったものにするとともに、二次元光制御装置30の光照射部31に向けて集光させるように反射される光度の偏りが少ない光のパターンP2とするための、反射面41の設計が行いやすい。
【0051】
したがって、光照射部31の全面に光度の偏りが出ないように光を照射できるため、レンズ部50を介して前方側に投影される左右方向に横長の長方形の配光パターンも配光パターン内の光度の偏りが抑制されたものにできる。
【0052】
図4は、灯具ユニット1の形成するスクリーン上での配光パターンを説明するための図である。
図4において、HL-HR線はスクリーン上での水平基準線を示し、VU-VL線はスクリーン上での鉛直基準線を示している。
また、図4には、灯具ユニット1とは異なるロービーム配光パターンLPを形成する灯具ユニットからの光で形成されるロービーム配光パターンLPの状態を点線で示している。
【0053】
図4に示すように、二次元光制御装置30の光照射部31の全てのマイクロミラーの光の反射方向をレンズ部50に入射させる制御にすると、レンズ部50を介してスクリーン上に、左右方向に横長の長方形の配光パターンAPが形成される。
【0054】
具体的には、配光パターンAPは、水平基準線(HL-HR線参照)より上側で、ロービーム配光パターンLPに多重してハイビーム配光パターンを形成するためのハイビーム付加配光パターンに対応する配光領域APUから水平基準線(HL-HR線参照)より下側で車両102の近くの路面に警告表示等を表示する領域を含む配光領域APLまでを網羅した配光パターンになっている。
【0055】
そして、先に説明したように、配光パターンAPは、光度の偏りが少ないものになっているため、マイクロミラーを個別に制御して、一部の光がスクリーン側に投影されず、警告表示等を描く場合でも、その警告表示等がぼやけることがない。
【0056】
一方、図3に示すように、リレー光学部40が、前後方向の位置で見て、二次元光制御装置30とレンズ部50との間の位置に配置されるとともに、上下方向で見て、二次元光制御装置30からレンズ部50に入射させるように照射される光(光のパターンP3参照)よりも上側に配置されるとともに、上下方向で見て、反射面41の少なくとも一部(ほぼ全部)が二次元光制御装置30からレンズ部50に入射させるように照射される光(光のパターンP3参照)よりも上側であって、かつ、反射面41の少なくとも一部(ほぼ全部)がレンズ部50の上端より下側に位置するように配置されている。
【0057】
本実施形態では、図3で図示していないレンズ部50のそれぞれのレンズ(前方側レンズ51、後方側レンズ52)のレンズホルダ90に保持されるフランジ部の上端をレンズ部50の上端とすると、リレー光学部40は、リレー光学部40のほぼ全部が、レンズ部50の上端より下側に位置するように配置されている。
【0058】
さらに、光源装置20が、前後方向の位置で見て、二次元光制御装置30とレンズ部50との間の位置に配置されるとともに、上下方向で見て、二次元光制御装置30からレンズ部50に入射させるように照射される光(光のパターンP3参照)を阻害しない位置に配置されるとともに、より詳細には、光源装置20は、上下方向で見て、照射レンズ部22が二次元光制御装置30からレンズ部50に入射させるように照射される光(光のパターンP3参照)よりも下側であって、かつ、照射レンズ部22の少なくとも一部がレンズ部50の下端より上側に位置するように配置されている。
【0059】
本実施形態では、図3で図示していないレンズ部50のそれぞれのレンズ(前方側レンズ51、後方側レンズ52)のレンズホルダ90に保持されるフランジ部の下端をレンズ部50の下端とすると、光源装置20が、上下方向で見て、第2レンズ22Bが二次元光制御装置30からレンズ部50に入射させるように照射される光(光のパターンP3参照)よりも下側であって、かつ、第2レンズ22Bのほぼ全部がレンズ部50の下端より上側に位置するように配置されている。
【0060】
このように、二次元光制御装置30からレンズ部50に入射させるように照射される光(光のパターンP3参照)を阻害しないようにしながら、できるだけ光源装置20及びリレー光学部40を二次元光制御装置30からレンズ部50に入射させるように照射される光(光のパターンP3参照)に近づけるようにしているため、上下方向のサイズをコンパクトにし、車両用灯具の小型化が行いやすいようにしている。
【0061】
なお、例えば、灯具ユニット1の上側には、先に少し触れたロービーム配光パターンLPを形成する灯具ユニットや、ハイビーム配光パターンを形成するための別の灯具ユニットが配置される場合があるため、光源装置20を下側に配置することで、光源装置20が熱の影響を受け難いものとすることができる。
【0062】
また、このようにコンパクトに配置を行うと、警告表示等を描くために、二次元光制御装置30が、少なくとも一部の光をレンズ部50に入射させない制御を行う場合に、マイクロミラーを駆動して、斜め下側に光を反射させたときに、光源装置20に向けて光が反射されることになる。
【0063】
しかし、先にも触れたように、本実施形態では、二次元光制御装置30と光源装置20の間(より詳細には、二次元光制御装置30と照射レンズ部22の第2レンズ22Bとの間)に位置し、二次元光制御装置30から照射される光が光源装置20(より詳細には、第2レンズ22B)に入射するのを阻止する光阻止部60が設けられている。
【0064】
このため、二次元光制御装置30は、少なくとも一部の光をレンズ部50に入射させない制御を行う場合、光阻止部60に向けてレンズ部50に入射させない光を照射することができ、光源装置20(第2レンズ22B)で光が乱反射して前方側に照射されて、グレアになることが抑制される。
【0065】
例えば、光阻止部60は、二次元光制御装置30からの光を受けやすいように、光阻止面61が二次元光制御装置30の光照射部31に向くように後方斜め上側に傾くように配置され、光の阻止力が高くなるように、その光阻止面61を凹凸状として光の散乱減衰を高めるとともに、光を吸収しやすい色の塗装や蒸着が行われていることが好ましい。
【0066】
なお、本実施形態では、光阻止面61が左右方向に延在するフィン形状の凸部を前後方向に複数の設けることで凹凸状としているが、これに限定されることはなく、サンドブラストで粗面化処理等を施して細かい凹凸が形成されたようなものであってもよい。
【0067】
一方、警告表示等を描くために、二次元光制御装置30が、少なくとも一部の光をレンズ部50に入射させない制御を行う場合に、マイクロミラーを駆動して、前方斜め上側に光を反射させることも可能である。
【0068】
しかし、この場合、同様に、光阻止部を設けたとしても、車両102の振動等で阻止できなかった光が発生すると、その漏れ出た光が、スクリーンの水平基準線より上側に照射され、グレアになる確率が前方斜め下側に光を反射させた場合より高くなるため、本実施形態のように、二次元光制御装置30が、少なくとも一部の光をレンズ部50に入射させない制御を行う場合には、前方斜め下側に光を逃がすようにマイクロミラーを駆動することが好ましい。
【0069】
また、本実施形態では、光源装置20が、光源21から照射される光の照射光軸Z2が前方斜め上側に向くように配置されるとともに、リレー光学部40が、反射面41の照射光軸Z2と交わる点が発光部21Bの発光中心Oを通る鉛直軸Vよりも前方側にオフセットするように配置されている。
【0070】
このため、リレー光学部40は、反射面41が、二次元光制御装置30の光照射部31に向けて、緩やかな角度で光源装置20からの光を後斜め下側に反射するように配置できるので、光照射部31に向けて光を集光させる制御を行うための反射面41の形状に無理が発生することが抑制でき、光照射部31全体にほぼ均一な光度で光を照射させることができる。
【0071】
したがって、より一層、スクリーン上の配光パターンAP内の光度を均一なものにすることができる。
【0072】
このように、本実施形態によれば、第1レンズ22A、及び、第2レンズ22Bが共に両凸型のレンズになっているため、反射面41に向けて、光度が均一な矩形状の光のパターンP1を照射することができ、スクリーン上の配光パターンAP内の光度の均一化とともに、配光パターンAPをきれいな矩形状に形成することができる。
【0073】
また、光源装置20が、光源21から照射される光の照射光軸Z2を前方斜め上側に向くように配置されることで、反射面41で光照射部31に向けて光を集光させる制御を行うために無理な設計を行わなくてよいため、より一層、スクリーン上の配光パターンAP内の光度の均一化が図れるとともに、配光パターンAPをきれいな矩形状に形成することができる。
【0074】
一方、光源装置20及びリレー光学部40を二次元光制御装置30からレンズ部50に入射させるように照射される光(光のパターンP3参照)に近づけるようにしているため、上下方向のサイズをコンパクトにし、車両用灯具の小型化が行いやすいようになっている。
【0075】
そして、二次元光制御装置30と照射レンズ部22の第2レンズ22Bとの間に光阻止部60を設けることで、グレアが発生するのを抑制しつつ、全体のコンパクト化が行いやすいものになっている。
【0076】
以上のように、本実施形態では、DMD等の二次元光制御装置30を備えるにあたって、投影される像のぼやけが少なく、かつ、コンパクト化が行え、グレアの抑制ができる車両用灯具になっている。
【0077】
以上、具体的な実施形態を基に本発明の説明を行ってきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に変更や改良を行ったものも発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0078】
1 灯具ユニット
10 ヒートシンク
10A 表面
20 光源装置
21 光源
21A 基板
21B 発光部
22 照射レンズ部
22A 第1レンズ
22B 第2レンズ
23 保持部
30 二次元光制御装置
31 光照射部
40 リレー光学部
41 反射面
50 レンズ部
51 前方側レンズ
51A 入射面
51B 出射面
52 後方側レンズ
52A 入射面
52B 出射面
60 光阻止部
61 光阻止面
70 支持部
71 アーム部
72 開口部
80 支持構造
90 レンズホルダ
AP 配光パターン
APL、APU 配光領域
LP ロービーム配光パターン
P1、P2、P3 光のパターン
Z1 レンズ光軸
Z2 照射光軸
101L、101R 車両用の前照灯
102 車両
図1
図2
図3
図4