(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】高周波誘電加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/52 20060101AFI20221213BHJP
H05B 6/54 20060101ALI20221213BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20221213BHJP
【FI】
H05B6/52
H05B6/54
A23L5/10 C
(21)【出願番号】P 2018096782
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2017202190
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】丸山 友樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 真司
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-024025(JP,A)
【文献】特開平02-089983(JP,A)
【文献】特開平09-082468(JP,A)
【文献】特開2002-331586(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/52
H05B 6/54
A23L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、高周波電源と、前記筐体に収納される高圧電極と、前記筐体に収納されるアース電極とを有し、前記高圧電極と前記アース電極とが前記筐体に交互に収納されることにより各高圧電極と各アース電極との間に構成される加熱層が複数設けられ、前記加熱層に配置された被加熱材を加熱する高周波誘電加熱装置であって、
前記各高圧電極及び前記各アース電極が、前記筐体内に独立して着脱可能に支持され、
前記筐体内には、前記高周波電源と接続され前記加熱層が並ぶ方向に延びる高圧電路が設けられ、
前記高圧電路が、前記各高圧電極の支持位置で各高圧電極と接触するよう構成されていることを特徴とする高周波誘電加熱装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記高圧電極及び前記アース電極を側面より支持する電極支持体を備えることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項3】
前記高圧電路又は前記各高圧電極には、前記接触箇所に対応して高圧接点が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項4】
前記筐体は
、前記高圧電極及び前記アース電極を側面より支持する電極支持体を備え、前記電極支持体を加熱層方向に位置調整可能な電極支持位置調整手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項5】
前記高圧電路は、前記筐体外部に露出し前記高周波電源と着脱可能に接触する電源高圧接点を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項6】
前記高圧電路が、前記電源高圧接点から前記各高圧電極に至る電路長の差を所定以内に収める高圧中間電路をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項7】
前記高圧電路が、前記加熱層が並ぶ方向に複数独立して設けられ、
隣接する前記高圧電路は、前記電源高圧接点以外の隣接部において導電性部材により互いに接続されていることを特徴とする請求項6に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項8】
前記高周波電源は半導体式高周波電源であることを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項9】
前記各高圧電極及び前記各アース電極は、形状と材質とが等しい金属材であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の高周波誘電加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体と、高周波電源と、筐体に収納される高圧電極と、筐体に収納されるアース電極とを有し、前記高圧電極と前記アース電極とが前記筐体に交互に収納されることにより各高圧電極と各アース電極との間に構成される加熱層が複数設けられ、前記加熱層に配置された冷凍食品等の被加熱材を加熱する高周波誘電加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧電極とアース電極の間の被加熱材を加熱する高周波誘電加熱装置は周知であり、筐体内に複数段の高圧電極とアース電極を交互に設け、筐体外部の高周波電源から高圧電極とアース電極まで電路を接続し、高周波電圧を印加して被加熱材を加熱するものが公知である。
例えば、特許文献1で公知の高周波誘電加熱装置(解凍装置)は、台車(60)を出し入れ可能な内容積の筐体(容器2)を有し、台車(60)は、複数の高圧電極とアース電極を上下方向に絶縁部材を介して所定の間隔をおいて積層された電極群を有している。
筐体(容器2)の内部の側壁には、高圧電極(プラス電極62)と等しい高さ位置に、筐体(容器2)の外側から複数の接点部材(81)が貫通され、台車(60)の収容時に電極群の内の高圧電極(プラス電極62)の側縁に摺接するよう構成されている。
【0003】
また、筐体(容器2)の内部の側壁には、アース電極(マイナス電極63)と等しい高さ位置に、筐体(容器2)の内壁面と導通する複数の接点部材(83)が突出しており、台車(60)の収容時に電極群の内のアース電極(マイナス電極63)の側縁に摺接するよう構成されている。
そして、複数の高圧電極とアース電極の間に被加熱材を載置した台車(60)を筐体内に収容し、筐体の外部に設置した高周波電源から、高圧電極(プラス電極62)が接触する接点部材(81)とアース電極との間に高周波の電圧を順次切り替えながら印加して、被加熱材を加熱して解凍するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知の高周波誘電加熱装置(解凍装置)は、高周波電源から各高圧電極に至る電路が筐体を複数貫通しており、更に、高圧電極とアース電極が絶縁部材で固定連結された構造となっている。このように、給電部が複数構成されている場合、電界遮蔽のための高周波電源外装ケースの大型化、付帯設備としてリレーなどの切り替え手段や制御部の設置など、電源に関するだけでもかなり大がかりな設備が必要であり、高コストかつ製造やメンテナンスに手間を要するという問題があった。
また、高圧電極とアース電極の間隔を変更するためには、高圧電極とアース電極を連結する絶縁部材の長さ変更による台車の解体、各給電位置の変更が必要であるなど、容易に行うことができなかった。特に、筐体(容器2)の外側から貫通され高圧電極(プラス電極62)の側縁に摺接する接点部材の位置を変更するためには、筐体に新たな貫通穴を設ける必要があり、被加熱材の種類や厚みに応じた加熱(解凍)効率調整などを目的に電極間隔を変更することは実質不可能である。
【0006】
本発明は、前述のような課題を解決するものであり、電極を多段構成とすることにより省設置スペースかつ冷凍食品等の被加熱材を一括して加熱(解凍)することが可能であり、被加熱材の種類や厚みに応じた加熱(解凍)効率調整など電極間隔を容易に変更可能であり、組み立て、メンテナンス性、カスタマイズ対応に優れた高周波誘電加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る高周波誘電加熱装置は、筐体と、高周波電源と、前記筐体に収納される高圧電極と、前記筐体に収納されるアース電極とを有し、前記高圧電極と前記アース電極とが前記筐体に交互に収納されることにより各高圧電極と各アース電極との間に構成される加熱層が複数設けられ、前記加熱層に配置された被加熱材を加熱(解凍)する高周波誘電加熱装置であって、前記各高圧電極が、前記筐体内に独立して着脱可能に支持され、前記筐体内には、前記高周波電源と接続され前記加熱層が並ぶ方向に延びる高圧電路が設けられ、前記高圧電路が、前記各高圧電極の支持位置で各高圧電極と接触するよう構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本請求項1に係る高周波誘電加熱装置によれば、各高圧電極が、筐体内に独立して着脱可能に支持されることから、電極を筐体から取り外すことにより洗浄が容易である。
更に、筐体内には、高周波電源と接続され加熱層が並ぶ方向に延びる高圧電路が設けられ、高圧電路が各高圧電極の支持位置で各高圧電極と接触するよう構成されている。これにより、高周波電源から各高圧電極への電力供給を、1箇所の給電部から高圧電路を介して一括して行え、給電部から筐体外部へ漏れる電界を遮蔽するための電界遮蔽対策、筐体外部及び内部の電路構成を簡素化可能であり、特別な電気的知識を持ち合わせていなくても、組み立てやメンテナンス性に優れた構成となる。更に、高圧電路と各高圧電極との導通が接触であることから、電極の着脱に伴う配線作業は一切不要であるため、大きく改造することなく用途に応じたカスタマイズ対応が容易である。
【0009】
本請求項2に記載の構成によれば、筐体は高圧電極及びアース電極を側面より支持する各電極に対応した電極支持体を備えていることから、電極一枚毎の着脱が可能であり、洗浄やメンテナンスの際の作業負担が軽減される。
本請求項3に記載の構成によれば、高圧電路又は高圧電極には接触箇所に対応して高圧接点が設けられていることにより、高圧電極脱着の際に、高圧電路と高圧電極との導通を確実に行える。
本請求項4に記載の構成によれば、筐体は高圧電極及び前記アース電極を側面より支持する電極支持体を備え、電極支持体を加熱層方向に位置調整可能な電極支持位置調整手段を備えることにより、被加熱材の形状や厚みに応じて電極間隔を容易に調整することができる。
本請求項5に記載の構成によれば、高圧電路は、筐体外部に露出し高周波電源と着脱可能に接触する電源高圧接点を備えることより、高周波電源の着脱に伴う配線作業は不要であり、組み立てやメンテナンス性に優れた構成となる。
【0010】
本請求項6に記載の構成によれば、高圧電路が、前記電源高圧接点から前記各高圧電極に至る電路長の差を所定以内に収める高圧中間電路をさらに有することにより、各高圧電極のインピーダンス特性を均一化でき、全ての領域で最適な電力で高周波加熱することが可能となる。
本請求項7に記載の構成によれば、高圧電路が加熱層が並ぶ方向に複数独立して設けられ、隣接する高圧電路は、電源高圧接点以外の隣接部において導電性部材により互いに接続されていることにより、各高圧電極のインピーダンス特性をさらに均一化することが可能となる。
本請求項8に記載の構成によれば、真空管式高周波電源に対して小型、軽量な半導体式高周波電源を用いることにより、更なる組み立てやメンテナンス性の向上、省スペースに対応した高周波誘電加熱装置の提供が可能となる。
【0011】
本請求項9に記載の構成によれば、各高圧電極及び各アース電極を形状と材質とが等しい金属材とすることにより、使用時やメンテナンス時における電極の着脱の際に両電極を区別する必要がなくなり、取扱が著しく容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る高周波誘電加熱装置の側面から見た断面図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る高周波誘電加熱装置の正面から見た断面図。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る高周波誘電加熱装置の正面から見た断面図。
【
図7】高圧端子、アース端子、高周波電源の配置説明図。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る高周波誘電加熱装置の側面から見た断面図。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る高周波誘電加熱装置の正面から見た断面図。
【
図10】他の実施形態に係る高圧接点、高圧電路の説明図。
【
図13】本発明の第3実施形態、他の実施形態の実験結果の表。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1実施形態に係る高周波誘電加熱装置100は、
図1に示すように上部に冷却機構101が配置された一般に入手可能な業務用の冷蔵庫筐体110と、高周波電源140、高圧電極121、アース電極131、高圧電路200、高圧接点201、給電部202(高圧端子123)、電極支持体203、電極支持位置調整手段204から構成され、複数の高圧電極121とアース電極131が交互に収納されることにより高圧電極121とアース電極131との間に構成される加熱層130が複数設けられている。なお、
図1に示す電極配列は、一例として高圧電極121とアース電極131がその両端がアース電極となるように交互に構成されているが、高圧電極121とアース電極131が交互であれば、下記に示すように限定される必要はない。
【0014】
高圧電極121とアース電極131は、電極支持体203によってそれぞれが独立して冷蔵庫筐体側面より着脱可能に支持されており、電極を冷蔵庫筐体から取り外すことにより、筐体内部を水洗い洗浄可能である。洗浄時の廃水は、筐体110に元々備えられている筐体底部のドレン111を通じて外部に排水可能である。
電極支持体203は、電極毎にそれぞれ独立して設けられて、筐体側面に備えられ加熱層が並ぶ方向に延びる電極支持位置調整手段204に支持されている。これにより、電極支持位置を加熱層が並ぶ方向に変更することにより電極間隔を調整可能である。
高圧電路200は、筐体外部に露出し高周波電源140と導通する高圧端子123を備え、また筐体内にて加熱層が並ぶ方向に延びていることによって、高圧接点201を介して複数の高圧電極121と接触しており、各高圧電極に対する電力供給を1箇所の給電部より一括して行える構成となる。
【0015】
筐体110は、
図2に示すように、高圧電極121及びアース電極131を着脱自在に支持する凸部形状を有した金属部材からなる凸部電極支持体213を筐体側面及び背面側に備える。また、高圧電極121及びアース電極131の裏面には、各凸部電極支持体213に対応し、凹部形状を有した金属部材又は絶縁部材からなる凹部電極支持体223が設けられており、凸部形状と凹部形状の電極支持体を嵌め込むことによって、各電極の着脱を容易に行うことができる。
筐体110は、凸部電極支持体213を支持し、支持位置を加熱層方向に変更可能な金属部材からなる電極支持位置調整手段204を筐体側面及び背面側に備えることによって、高圧電極121及びアース電極131の各電極間隔を容易に変更可能である。
アース電極131は、凹部電極支持体223を金属部材とすることによって、金属部材からなる凸部電極支持体213、金属部材からなる電極支持位置調整手段204を介して筐体110と導通可能であり、特別な配線作業をすることなくアース極性を機能させることができる。
高圧電極121は、凹部電極支持体223を絶縁部材とし、筐体110内の背面側に高周波電源140と接続され筐体に対して絶縁支持された上下方向に延びる高圧電路200と接触させることによって、高圧極性を機能させることができる。
【0016】
高圧接点201は、各高圧電極121を支持する凸部電極支持体213及び凹部電極支持体223による凹凸部嵌め込みによるガタを吸収させるため、
図3に示すように、バネによる押圧機能を有しており、接点固定ネジ126によって高圧電路200に複数設けられている。これにより、高圧電極121を筐体110の前面から挿入した際の電気的な接続を確実にする。
【0017】
電極支持位置調整手段204には、
図2に示すように、凸部電極支持体213を加熱層方向に位置変更可能な位置変更溝205が所定の間隔で備えており、また、
図3に示すように、高圧電路200には凸部電極支持体213の位置変更に対応した高圧接点固定ネジ126の取り付け位置を変更するネジ穴127が位置変更溝205と同間隔で複数設けられており、電極位置に応じて高圧電極121と高圧電路200との接触位置変更を容易に行うことができる。
なお、本実施形態における電極支持位置調整手段204は、筐体110にあらかじめ設けられているガイドレールをそのまま流用しているが、新たにに設けても良い。また、本実施形態では電極、電路、電極支持体などで用いられる金属部材又は金属ネジ等は、電気伝導性、耐食性、機械的強度を有したステンレス、アルミ、真鍮などの非鉄金属材料が用いられ、必要に応じて前記素材にスズメッキ、銀メッキ等の表面処理が施されてあっても良い。また、絶縁部材としては、PE、ベークライト、ナイロンなどの樹脂系素材や、ガラスや陶器などセラミック系素材が用いられる。
【0018】
本実施形態における電極配列の詳細を
図4に示す。
図4(a)の例では、高圧電極121とアース電極131が同一枚数で交互に構成されている。高周波電源140の出力Pは各高圧電極に等しく分配され、更に異なる出力で各加熱層130に分配される。最上段加熱層への電力供給は他の加熱層より大きく、被加熱材の急速加熱層として用いることができる。
図4(b)の例では、高圧電極121とアース電極131がその両端がアース電極となるように交互に構成されている。高周波電源140の出力Pは各高圧電極に等しく分配され、更に同一出力で各加熱層に分配されることにより、加熱層毎に等しい効率で被加熱材を加熱(解凍)することができる。
このように、高圧電極121及びアース電極131がそれぞれ独立して冷蔵庫筐体側面より着脱可能に支持されることによって、加熱層を形成する電極間隔や電極配列を各種設定可能であり、被加熱材の形状や厚みに応じた加熱(解凍)効率調整など常に最適な状態で装置を使用することが可能である。
【0019】
給電部202の断面を
図5に示す。高圧端子123は、高圧電路200に接続され筐体110の背面側の所定位置に外部に露出した状態で、高周波電源140の電源高圧端子141を挿入可能に設けられている。高圧端子123又は電源高圧端子141は、
図5の斜線で示される絶縁部材114を介して筐体110又は高周波電源140の金属筐体142に備えられている。
本実施形態では、高周波電源140を小型、軽量な半導体式高周波電源とすることにより、筐体110外壁部での片持ち支持が可能となり、高周波誘電加熱装置の小型化が達成できる。また、高周波電源140の取り付け位置を、
図1に示すように、筐体110を介して高圧電路200の背面側とすることにより、高圧端子123と電源高圧端子141を最短で接続することが可能となり、給電部から筐体外部へ漏れる電界を遮蔽するための電界遮蔽対策、筐体外部及び内部の電路構成を簡素化できる。更に、電源高圧端子141を高圧端子123に挿入(接触)することによって、配線作業をすることなく電源の着脱を容易に行うことが可能であり、特別な電気的知識を持ち合わせていなくても組み立てやメンテナンス性に優れた構成となる。
【0020】
本発明の第2実施形態に係る高周波誘電加熱装置は、
図6及び
図7に示すように、上部に冷却機構101が配置された一般に入手可能な業務用の冷蔵庫筐体110と、半導体式高周波電源140、高圧電極121、アース電極131、高圧電路200、高圧接点201、アース電路300、アース接点302、給電部202(高圧端子123、アース端子133、電源高圧端子141、電源アース端子151)、電極支持体203(金属部材からなる凸部電極支持体213、絶縁部材からなる凹部電極支持体223)、電極支持位置調整手段204から構成され、高圧電極121とアース電極131は、その両端がアース電極となるように交互に配列され、電極支持体203によってそれぞれが独立して冷蔵庫筐体側面より着脱可能に支持される。電極支持体203は、筐体側面に備えられ加熱層が並ぶ方向に延びる電極支持位置調整手段204に支持されており、電極支持位置を加熱層が並ぶ方向に変更することにより電極間隔を調整可能である。
高圧電路200及びアース電路300は、筐体外部に露出し半導体式高周波電源140と導通する高圧端子123及びアース端子133を備え、また筐体内にて加熱層が並ぶ方向に延びていることによって、高圧接点201及びアース接点302を介して複数の高圧電極121及びアース電極131と接触している。
高圧端子123及びアース端子133は、
図7の斜線で示される絶縁部材114を介して筐体110と絶縁された状態で接続されており、また、電源高圧端子141は、斜線で示される絶縁部材114を介して高周波電源140の金属筐体142と絶縁された状態で接続されている。更に電源アース端子151は高周波電源140の金属筐体142にアース接続されている。
アース電極131は、絶縁部材からなる凹部電極支持体によって絶縁支持されることによって、筐体110へ漏洩する高周波ノイズを低減させる構成となる。この場合、高周波電源140の金属筐体142は、アルミ材などの電気抵抗の小さい金属素材であることが好ましい。
【0021】
本発明の第2実施形態に係る高周波誘電加熱装置は、
図8に示すように、上部に冷却機構101が配置された扉が上下独立した一般に入手可能な業務用の冷蔵庫筐体110において、扉上段部に冷蔵室501、扉下段部に高周波解凍室502で構成される。このように、冷蔵室501と高周波解凍室502を同一筐体内に別々に設けることによって、例えば、食材を解凍しながら通常の冷蔵庫として使用することが可能となり、省スペースでありながら使い勝手は向上する。
高周波解凍室502は、電極配列として高圧電極121とアース電極131は、その両端がアース電極となるように交互に配列され、電極支持体203によってそれぞれが独立して冷蔵庫筐体側面より着脱可能に支持される。両端をアース電極とすることによって、上述のように各加熱層に対する電力供給を均一にすることができる。電極支持体203は、筐体側面に備えられ加熱層が並ぶ方向に延びる電極支持位置調整手段204に支持されており、電極支持位置を加熱層が並ぶ方向に変更することにより電極間隔を調整可能である。電極支持位置調整手段204は、筐体110に元々備えられたものであり、冷蔵室501と高周波解凍室502とに上下方向に延びて構成される。そのため、加熱電極の支持と冷蔵庫に付属している汎用載置棚102の支持を兼用することが可能であり、より安価に構成させることができる。
給電部202は、冷蔵室501と高周波解凍室502との境となるセンターピラー112背面に位置し、上述した電源高圧端子141及び電源アース端子151で構成される。
各高圧電極121及びアース電極131は、形状と材質とが等しい導電性を有する金属材とすることにより、使用時やメンテナンス時における電極の着脱の際に両電極を区別する必要がなくなり、取扱が著しく容易となる。各電極はアルミ素材を絞りや板金加工することによって、軽量かつ安価に同一形状とすることができる。
【0022】
本発明の第3実施形態に係る高周波誘電加熱装置は、
図9に示すように、高圧電路122及びアース電路132が、上下方向に延びて高圧端子123及びアース端子133から各高圧接点124及び各アース接点134に至る電路長の差を所定以内に収める高圧中間電路125及びアース中間電路135を有している。
その他の構成は、第2実施形態と同じである。
この高圧中間電路125及びアース中間電路135は、いわゆるトーナメント形状であり、高圧接点124及びアース接点134の数が多い場合には多段にしてもよい。
【0023】
なお、上述の実施形態では、アース電極131は、高圧電極121と同様に上下方向に延びるアース電路132、アース中間電路135、アース端子133を介して、筐体110と絶縁されて高周波電源140に接続されているが、前述の第2実施形態と同様に、アース中間電路135を有さないストレートのアース電路300のみとしてもよく、第1実施形態と同様に、アース電路300も有さず、アース電極131を筐体110あるいは電極支持体を介して高周波電源140に接続してもよい。
また、
図10に示すように、高圧端子123及びアース端子133から、独立して設上側に設けられた高圧電路122A及びアース電路132Aと、独立して下側に設けられた高圧電路122B及びアース電路132Bとを、高圧端子123及びアース端子133以外の隣接する位置において導電性部材128、138により接続することで、各加熱層に対する電力供給がさらに均一となる。
導電性部材128、138は、市販のアルミテープ等の安価なものでもよい。
【実験例】
【0024】
本発明の実験例を、
図11及び
図12を用いて説明する。
図11(a)の電路構成は高圧端子123に接続されたストレートに上方に延びる高圧電路200と、アース端子133に接続されたストレートに上方に延びるアース電路300にて構成される。
また、
図11(b)の電路構成は高圧端子123に接続されたトーナメント形状の高圧中間電路125を有する高圧電路122と、アース端子133に接続されたトーナメント形状のアース中間電路135を有するアース電路132にて構成されている。
図11(a)及び
図11(b)の各電路構成において、食材として-20℃の冷凍ブラジル産鶏モモ肉(1袋=2kg)を電極間に配置し、雰囲気設定2℃、出力500wで高周波解凍した際の高圧電極電圧、解凍時間、食材温度を
図12に示す。
図11(a)に示す電路構成(ストレート型)における高圧電極電圧は電極位置によって大きく異なり、高圧端子123に対して近距離の高圧電極では電圧が低く、遠距離の高圧電極では電圧が高くなった。その結果、食材配置位置によって解凍後の食材温度は大きく異なり、高圧端子123近傍に配置した食材では解凍時間は長くなった。
一方、
図11(b)に示す電路構成(トーナメント型)における高圧電極電圧は電極位置によらずほぼ等しく、解凍後の食材温度は食材搭載位置によらずほぼ等しくなった。このように、食材複数を一括して短時間解凍を行う際には、
図11(b)に示すようなトーナメント形状の高圧中間電路を有する高圧電路により構成される電路が有効であることがわかる。
【0025】
次に、本発明の第3実施形態を示す
図9及び他の実施形態を示す
図10の各電路構成における実験例として、-20℃の冷凍ブラジル産鶏モモ肉(1袋=2kg)を電極間に配置し、雰囲気設定2℃、出力500wで高周波解凍した際の高圧電極電圧、解凍時間、食材温度を
図13に示す(ただし、
図13(a)は
図9の電路構成における解凍試験結果を、
図13(b)は
図10の電路構成における解凍試験結果をそれぞれ示している。)。
図9及び
図10に示す各電路は、どちらも高圧端子123及びアース端子133に対して上側及び下側にトーナメント形状の高圧中間電路125、アース中間電路135をそれぞれ有する高圧電路122、アース電路132により構成されており、更に
図10に示す電路では、隣接する高圧電路122A及び122B並びにアース電路132A及び132Bがそれぞれ導電性部材128、138により互いに接続された構成となっている。
図9に示す電路構成では、
図13(a)に示すように、高圧端子123及びアース端子133に対して上下の電極構成(以下、上段電極又は下段電極)に食材数量を均等に配置した場合、上段電極と下段電極に生じる電圧はほぼ等しいが、食材数量を上段電極に多く下段電極に少なく配置した場合、下段電極の電圧は上段電極に対して低く、この場合、先の結果と同様に下段電極に配置した食材は解凍時間が長くなった。
一方、
図10に示す電路構成では、
図13(b)に示すように、食材数量を上段電極に多く下段電極に少なく配置した場合においても、各高圧電極にはほぼ等しい電圧が生じるため食材の重量、数量、種類、配置の仕方に影響されず均一解凍が可能であった。
【符号の説明】
【0026】
100 ・・・ 高周波誘電加熱装置
101 ・・・ 冷却機構
102 ・・・ 汎用載置棚
110 ・・・ 筐体
111 ・・・ ドレン
112 ・・・ センターピラー
114 ・・・ 絶縁部材
121 ・・・ 高圧電極
122 ・・・ 高圧電路
123 ・・・ 高圧端子
124 ・・・ 高圧接点
125 ・・・ 高圧中間電路
126 ・・・ 接点固定ネジ
127 ・・・ ネジ穴
128 ・・・ 導電性部材
130 ・・・ 加熱層
131 ・・・ アース電極
132 ・・・ アース電路
133 ・・・ アース端子
134 ・・・ アース接点
135 ・・・ アース中間電路
138 ・・・ 導電性部材
140 ・・・ 高周波電源
141 ・・・ 電源高圧端子
142 ・・・ 金属筐体
151 ・・・ 電源アース端子
200 ・・・ 高圧電路
201 ・・・ 高圧接点
202 ・・・ 給電部
203 ・・・ 電極支持体
204 ・・・ 電極支持位置調整手段
205 ・・・ 位置変更溝
213 ・・・ 凸部電極支持体
223 ・・・ 凹部電極支持体
300 ・・・ アース電路
302 ・・・ アース接点
501 ・・・ 冷蔵室
502 ・・・ 高周波解凍室