(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】車載用電子装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20221213BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20221213BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B60R16/02 610A
H05K5/02 L
H05K5/03 A
(21)【出願番号】P 2018103502
(22)【出願日】2018-05-30
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 侯宏
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132432(JP,A)
【文献】特開2017-130335(JP,A)
【文献】特開2013-105965(JP,A)
【文献】特開2009-087554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H05K 5/02
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電子装置(1)であって、
ケース(2)と、
前記ケース(2)内に設けられた回路基板(3)と、
前記回路基板(3)の少なくとも一部を覆うように設けられる保護用のカバー(11)とを備え、
前記カバー(11)は、プラスチック製シートの成形品からなると共に、表面側突起部(12)及び裏面側突起部(13)を一体に有し、
前記表面側突起部(12)が前記ケース(2)の内壁面に当接し、前記裏面側突起部(13)が前記回路基板(3)の表面に当接した状態で設けら
れ、
前記ケース(2)には、外気を導入するための外気流入口(7)が設けられており、前記カバー(11)は、前記回路基板(3)のうち少なくとも前記外気流入口(7)に臨む部分を覆うように設けられている車載用電子装置。
【請求項2】
前記表面側突起部及び/又は裏面側突起部は、前記カバーのうち中心線に対して対称的な位置に設けられている請求項1記載の車載用電子装置。
【請求項3】
前記カバーを構成するプラスチック製シートは、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートからなる請求項1又は2記載の車載用電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載される車載用電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両には、例えばディスプレイユニットやエンジン制御用ECU等の各種の電子装置が搭載される。この種の電子装置は、ケース内に回路基板を収容して構成されるが、特に冷却ファンを備え、外気をケース内に取込んで部品の冷却を図るようにしたものでは、低温の状態で、高湿度の空気がケース内に浸入すると、回路基板の表面等における結露が発生し、ひいては腐食等につながる虞がある。そこで、従来では、回路基板上の結露の虞のある部分に、防湿剤を塗布することが一般に行われている。
【0003】
また、電子装置における回路基板の表面部に対する塵埃などの侵入を防止するために、例えば次のような構成も考えられている、即ち、特許文献1では、光ディスク装置において、ステンレスの薄板からなる保護カバーを設けることが開示されている。或いは、特許文献2においては、デジタルカメラにおいて、光学フィルタ部分への塵埃の侵入を防止するために、光学フィルタをエラストマ(ゴム材)でカバーすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-110973号公報
【文献】特許第5901347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、回路基板に防湿剤を塗布する構成では、塗布作業や管理に工数がかかり、製造コストがアップしてしまう事情がある。また、コネクタ等に防湿剤が付着してしまうと、機能不良を招いてしまう虞もある。金属製の保護カバーを設ける構成では、保護カバー自体が高価となると共に、回路基板との間のクリアランスを小さく確保することが難しく、絶縁不良等の問題があった。或いは、エラストマでカバーする構成では、車両という高温、高湿の環境下での使用において、ゴム材料の変形や劣化の問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、結露や塵埃等からの回路基板の保護を効果的に行うことができながら、そのための構成を簡単に済ませることができる車載用電子装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の車載用電子装置(1)は、車両に搭載される電子装置(1)であって、ケース(2)と、前記ケース(2)内に設けられた回路基板(3)と、前記回路基板(3)の少なくとも一部を覆うように設けられる保護用のカバー(11)とを備え、前記カバー(11)は、プラスチック製シートの成形品からなると共に、表面側突起部(12)及び裏面側突起部(13)を一体に有し、前記表面側突起部(12)が前記ケース(2)の内壁面に当接し、前記裏面側突起部(13)が前記回路基板(3)の表面に当接した状態で設けられ、前記ケース(2)には、外気を導入するための外気流入口(7)が設けられており、前記カバー(11)は、前記回路基板(3)のうち少なくとも前記外気流入口(7)に臨む部分を覆うように設けられている。
【0008】
これによれば、回路基板が保護用のカバーによって覆われることにより、回路基板に対する結露の防止や、塵埃の付着の防止を図ることができる。このとき、保護用のカバーは、プラスチック製シートの成形品から構成されるので、回路基板の表面形状に倣った立体形状を容易に形成でき、カバーの厚み自体を薄くして小さなクリアランスでも配置することが可能となる。また安価に済ませることができる。カバーは、絶縁材製なので、金属製のカバーと異なり、回路基板との間のクリアランスを小さくしても、絶縁不良の問題が生ずることはないことは勿論である。
【0009】
ここで、ケース内にプラスチック製のカバーを設ける場合、車両振動に伴うカバーの振動音の発生が懸念される。ところが、カバーの表面側に設けられた表面側突起部がケースの内壁面に当接し、カバーの裏面側に設けられた裏面側突起部が回路基板の表面に当接するので、カバーがケースと回路基板との間に挟まれて保持される形態となり、カバーの振動を規制して異音の発生を防止することができる。従って、結露や塵埃等からの回路基板の保護を効果的に行うことができながら、そのための構成を簡単に済ませることができるという優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態を示すもので、車載用電子装置の分解斜視図
【
図3】第2回路基板上にカバーを配置した状態の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、車載用電子装置として例えば車両用のディスプレイユニットに適用した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る車載用電子装置1(以下、単に「電子装置1」という)は、例えばナビゲーションシステムを構成するディスプレイユニットからなり、自動車のインストルメントパネルの中央部分に搭載される。尚、図面では、実際の車載時(使用状態)には前面(正面)側に配置される液晶パネル側を、下向きに置いた形態で示している。
【0012】
図1は、電子装置1の全体の外観を概略的に示している。この電子装置1は、ケース2内に、プリント配線板に各種部品を実装してなる回路基板3、4を収容して構成される。このとき、本実施形態では、回路基板3、4がケース2内に2枚が設けられ、そのうち図で手前側(使用状態では下側)の回路基板を第1の回路基板3、奥側(使用状態では上側)の回路基板を第2の回路基板4と称する。
【0013】
前記ケース2は、図で上下方向(使用状態では前後方向)に薄型のほぼ矩形箱状をなし、図で下側の第1ケース5と、図で上側の第2ケース6とを突き合わせて接合して構成される。そのうち第1ケース5は、
図2にも一部示すように、例えばプラスチックから、図で上面が開口した薄型ほぼ矩形箱状に構成されている。図示はしないが、この第1ケース5の下面側(車載時には前面側)には、液晶パネルが設けられている。
【0014】
前記第2ケース6は、例えば金属から、図で下面が開口した矩形蓋状に構成され、前記第1ケース5の図で上面の開口部を塞ぐように設けられる。この第2ケース6の中央部には、ファン取付部6aが設けられており、冷却用のファン装置(図示せず)が装着されるようになっている。さらに、第2ケース6には、外部接続用の複数個のコネクタ8(一部のみ図示)が配置される開口6bなどが設けられている。尚、第2ケース6の図で前端下辺部には、図で手前側に延びる延出部6cが一体に設けられている。
【0015】
このとき、ケース2の図で前面部(使用状態では底面部)には、第1ケース5と第2ケース6の延出部6cとの間に位置して外気流入口7が設けられている。これにて、前記ファン装置が駆動されると、
図1に矢印Aで示すように、外気流入口7からケース2内に外気が吸い込まれて、内部の電子部品等の冷却に寄与した後、図で上面側(使用状態では背面側)に排出されるようになっている。
【0016】
前記第1の回路基板3は、
図2、
図3にも示すように、横長な形状をなし、その上面には、電気回路を構成する複数個の部品9(一部のみ図示)が実装されている。この場合、第1の回路基板3は、ケース2(第1ケース5)内の図で手前側に配置され、従って、第1の回路基板3の上面部は、前記外気流入口7に臨む部位に配置されている。
図1に示すように、第2の回路基板4は、第1の回路基板3より図で前後方向に大型なほぼ正方形状をなし、ケース2(第1ケース5)内の第1の回路基板3の奥側に位置して配設されている、前記コネクタ8は、第2の回路基板4上に実装されている。
【0017】
さて、本実施形態では、前記回路基板3、4のうち、第1の回路基板3の上面を覆うように、保護用のカバー11が設けられる。
図1~
図3に示すように、このカバー11は、プラスチック製シートの成型品からなり、全体として、第1の回路基板3の上面の電子部品9を含めた凹凸形状に沿うように、僅かなクリアランスを確保した状態で上面ほぼ全体を覆うような形状、つまり薄型の矩形蓋形状に形成されている。より具体的には、このカバー11を構成するプラスチック製シートは、例えばポリプロピレン(PP)の厚み寸法が0.5mmのシート(フィルム)からなり、いわゆる真空成型によりカバー11が成形されている。
【0018】
周知のように、真空成型とは、シートを加熱して軟化させた状態で、真空引きにより成形型の表面に密着させて成形する方法である。尚、
図2、
図3に示すように、第1の回路基板3の上面に実装されている部品9のうち、高さ寸法の大きい一部の部品9に関しては、カバー11に開口11aが形成され、部品9がその開口11aから上方に突出するように配置される。
【0019】
そして、カバー11には、その表面側に位置して表面側突起部12が一体に形成され、裏面側に位置して裏面側突起部13が一体に形成されている。そのうち表面側突起部12は、
図3に示すように、カバー11の図で前側寄り部位の中心線Cに沿う位置に、
図4にも示すように、例えば直径4mm程度で丸く膨らんだ形態に1個が設けられている。また、表面側突起部12の厚み方向(図で上方)への突出寸法は、例えば0.6mm程度とされている。この表面側突起部12は、先端が前記ケース2、つまり第2ケース6の延出部6cの内壁面に当接する。
【0020】
前記裏面側突起部13は、
図5にも示すように、カバー11の図で前端部位の、中心線Cに対して左右に対称的な位置に、各2個ずつが横方向に並んで設けられている。これら裏面側突起部13は、先端が丸みを帯びた円筒状に裏面側に突出するように形成されており、厚み方向(図で下方)への突出寸法は、例えば0.6mm程度とされている。これら裏面側突起部13は、先端が第1の回路基板3の表面に当接する。これにて、カバー11は、第2ケース6と第1の回路基板3との間に挟まれて保持される形態となる。この場合、表面側突起部12及び裏面側突起部13の図で高さ方向の干渉量は、例えば0.3mm程度となる。
【0021】
このとき、前記第1の回路基板3には、両側前後の各コーナー部分や、それ以外の要所に位置して、ねじ挿通穴が形成されており、
図2等に示すように、第1ケース5の内壁部に形成されたねじボス部(図示せず)に対して、ねじ(ビス)14による取付け固定がなされる。本実施形態では、
図3に示すように、カバー11にも、4つのコーナー部などに、第1の回路基板3のねじ挿通穴に重なる位置に、ねじ挿通用の穴11bが形成されており、ねじ14によるいわゆる共締めにより第1の回路基板3と併せて第1ケース5に固定されている。
【0022】
次に、上記のように構成された電子装置1の作用・効果について述べる。上記構成の電子装置1においては、第1の回路基板3が保護用のカバー11によって覆われることにより、第1の回路基板3に対する結露の防止や、塵埃の付着の防止を図ることができる。このとき、カバー11は、プラスチック製シートの成形品から構成されるので、第1の回路基板3の表面形状に倣った立体形状を容易に形成でき、カバー11の厚み自体を薄くして小さなクリアランスでも配置することが可能となる。また、カバー11を安価に済ませることができる。カバー11は、絶縁材製なので、金属製のカバーと異なり、第1の回路基板3との間のクリアランスを小さくしても、絶縁不良の問題が生ずることがないことは勿論である。
【0023】
ここで、ケース2内にプラスチック製のカバー11を設ける場合、車両振動に伴うカバー11の振動音の発生が懸念される。ところが、カバー11の表面側に設けられた表面側突起部12が第2ケース6の延出部6cの内壁面に当接し、カバー11の裏面側に設けられた裏面側突起部13が第1の回路基板3の表面に当接する。これにより、カバー11がケース2と第1の回路基板3との間に挟まれて保持される形態となり、カバー11の振動を規制して異音の発生を防止することができる。従って、本実施形態によれば、結露や塵埃等からの回路基板3の保護を効果的に行うことができながら、そのための構成を簡単に済ませることができるという優れた効果を得ることができる。
【0024】
特に本実施形態では、ファン装置を備え、ケース2に設けられた外気流入口7から外気を取入れる構成とされているが、カバー11は、外気流入口7に臨む部分である第1の回路基板3の図で上面を覆うように設けられている。これにより、ケース2内において最も結露が生じやすい部分である第1の回路基板3の表面部を、カバー11により覆うことができる、従って、結露が生じたとしてもカバー11の表面側になるので、第1の回路基板3上の結露やそれに伴う不具合を未然に防止することができる。
【0025】
また、本実施形態では、1個の表面側突起部12をカバー11のうち中心線Cに沿う位置に設け、複数個の裏面側突起部13を、カバー11のうち中心線Cに対して左右対称的な位置に設けるようにした。これにより、カバー11が、ケース2と第1の回路基板3との間に安定して保持されるようになる。
【0026】
本実施形態では、カバー11を構成するプラスチック製シートとして、ポリプロピレンを採用した。材料としてのポリプロピレンは、安価、軽量であり、絶縁性に優れ、薄いシートでも一定の強度(剛性)が得られる。真空成型などの成形性も良い。ゴム等と比べて熱や温度変化に強く熱的に安定している、金属に比べて熱容量も小さい、等のメリットを得ることができる。
【0027】
尚、上記実施形態では、カバー11の取付けにあたっては、ケース2(第1ケース5)に対して、第1の回路基板3と共にねじ止め(共締め)する構成としたが、そのような固定手段を特に設けることなく、ケースと回路基板との間に挟持して保持する構成とすることも可能である。また、上記実施形態では、カバー11を、PP製としたが、ポリエチレンテレフタレート(PET)から構成しても良く、PP製の場合と同様の作用・効果を得ることができる。ファン装置を備えないものであっても、同様にカバー11を設けることにより、結露や塵埃等からの回路基板を保護することができる。
【0028】
その他、上記実施形態では、ディスプレイユニットに適用したが、エンジンECU等様々な用途、種類の車両用電子装置全般に適用することが可能である。ケースの形状や、外気流入口の配置などについても様々な変更が可能であることは勿論である。本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0029】
図面中、1は車載用電子装置、2はケース、3は第1の回路基板、4は第2の回路基板、5は第1ケース、6は第2ケース、7は外気流入口、9は電子部品、11はカバー、12は表面側突起部、13は裏面側突起部、Cは中心線を示す。