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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】光導波路、光モジュールおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20221213BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20221213BHJP
   G02B 6/30 20060101ALN20221213BHJP
【FI】
G02B6/125 301
G02B6/125
G02B6/122
G02B6/12 301
G02B6/42
G02B6/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018124898
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020003716
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】寺田 信介
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-193049(JP,A)
【文献】特開2016-012006(JP,A)
【文献】特開平09-257419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0086651(US,A1)
【文献】特開2004-264339(JP,A)
【文献】特開2007-171769(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104199145(CN,A)
【文献】特開2009-069359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1反射部を備える第1光路変換コア部と、
前記第1光路変換コア部から延在するとともに前記第1反射部と光学的に接続され、前記第1光路変換コア部および前記第1反射部の双方よりも幅が小さい本線コア部と、
前記第1光路変換コア部から延在するとともに前記第1反射部と光学的に接続され、前記第1光路変換コア部および前記第1反射部の双方よりも幅が小さく、かつ、前記本線コア部から離間している支線コア部と、
内部に第2反射部を備える第2光路変換コア部と、
を備える分岐パターンが形成されているコア層を有し、
前記本線コア部の長さは、前記支線コア部の長さよりも長くなっており、
前記コア層の平面視において、前記本線コア部の延長線の幅の全体、および、前記支線コア部の延長線の幅の一部が、前記第1反射部と交差するように前記分岐パターンが形成されており、
前記第1反射部を介して発光素子からの光が前記本線コア部および前記支線コア部に入射されるとともに、前記第2反射部を介して前記支線コア部からの光が受光素子に入射するように用いられることを特徴とする光導波路。
【請求項2】
前記本線コア部の幅は、20~80μmである請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記コア層の主材料は、樹脂材料である請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
前記支線コア部の長さは、800~10000μmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項5】
前記本線コア部のうち、前記光路変換コア部との境界における幅の中心点と、前記光路変換コア部から50μmの位置における幅の中心点と、を結ぶ直線を仮想直線とし、
前記支線コア部の幅の中心点の集合体を支線中心軸としたとき、
前記支線コア部は、その延在方向に沿って前記光路変換コア部から遠ざかるように移動するとき、前記コア層の平面視において前記支線中心軸の接線と前記仮想直線とのなす角度の鋭角側が徐々に小さくなるように曲がっている第1形状曲線部と、前記コア層の平面視において前記支線中心軸の接線と前記仮想直線とのなす角度の鋭角側が徐々に大きくなるように曲がっている第2形状曲線部と、を含む請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項6】
前記コア層を厚さ方向に貫通する第1凹部および第2凹部を備え、
前記第1反射部は、前記第1凹部の内面の一部であり、
前記第2反射部は、前記第2凹部の内面の一部である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項7】
前記コア層は、前記本線コア部の延在方向に交差する方向に沿って並ぶ複数の前記分岐パターンを備えている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光導波路と、
前記反射部と光学的に接続されている発光素子と、
前記支線コア部と光学的に接続されている受光素子と、
を有することを特徴とする光モジュール。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路、光モジュールおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に搬送される。光導波路の入射側には半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側にはフォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンまたはその強弱パターンに基づいて光通信を行う。
【0003】
このような光通信では、外部環境や経時変化等の理由によって発光素子の特性が変化し、それに伴って光導波路に入射する光強度が変化することがある。このような光強度の変化は、光通信の安定性を低下させる原因となる。
【0004】
そこで、特許文献1には、発光素子と、発光素子から出射する光を伝搬させる主導波路コアと、主導波路コアから分岐するモニター用導波路コアと、モニター用導波路コアから出射する光を受光する受光素子と、主導波路コアを伝搬する光の伝搬方向を変換する反射面となる空孔と、を備える光導波路モジュールが開示されている。この光導波路モジュールは、主導波路コアから分岐するモニター用導波路コアを備えているため、発光素子の発光強度の経時変化を察知することができる。これにより、例えば発光強度が一定になるように発光素子の駆動を制御することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-057760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の光導波路モジュールでは、主導波路コア(本線コア部)と空孔との界面(反射部)におけるフレネル反射を利用して、光導波路の面内において光の伝搬方向を変換している。このため、空孔やモニター用導波路コア(支線コア部)を配置するためのスペースを広く確保する必要があり、それに伴って光導波路モジュールの小型化が難しくなるという問題がある。特に、光導波路モジュールの小型化を図る場合、空孔についても小型化する必要があり、そうするとモニター用導波路コアから出射する光強度を十分に確保することができない。また、空孔を設ける分、主導波路コアの幅もある程度広くしておく必要があり、主導波路コアを並列して配置する場合の配置密度を高めることが難しいという問題もある。
【0007】
さらに、微小な反射面の面精度を高めることは容易ではないことから、フレネル反射を利用した光路変換では、過剰損失が大きいという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、過剰損失が小さく小型化が図られた光導波路、ならびに、かかる光導波路を備える信頼性の高い光モジュールおよび電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)~(9)の本発明により達成される。
(1) 内部に第1反射部を備える第1光路変換コア部と、
前記第1光路変換コア部から延在するとともに前記第1反射部と光学的に接続され、前記第1光路変換コア部および前記第1反射部の双方よりも幅が小さい本線コア部と、
前記第1光路変換コア部から延在するとともに前記第1反射部と光学的に接続され、前記第1光路変換コア部および前記第1反射部の双方よりも幅が小さく、かつ、前記本線コア部から離間している支線コア部と、
内部に第2反射部を備える第2光路変換コア部と、
を備える分岐パターンが形成されているコア層を有し、
前記本線コア部の長さは、前記支線コア部の長さよりも長くなっており、
前記コア層の平面視において、前記本線コア部の延長線の幅の全体、および、前記支線コア部の延長線の幅の一部が、前記第1反射部と交差するように前記分岐パターンが形成されており、
前記第1反射部を介して発光素子からの光が前記本線コア部および前記支線コア部に入射されるとともに、前記第2反射部を介して前記支線コア部からの光が受光素子に入射するように用いられることを特徴とする光導波路。
【0010】
(2) 前記本線コア部の幅は、20~80μmである上記(1)に記載の光導波路。
(3) 前記コア層の主材料は、樹脂材料である上記(1)または(2)に記載の光導波路。
【0011】
(4) 前記支線コア部の長さは、800~10000μmである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路。
【0012】
(5) 前記本線コア部のうち、前記光路変換コア部との境界における幅の中心点と、前記光路変換コア部から50μmの位置における幅の中心点と、を結ぶ直線を仮想直線とし、
前記支線コア部の幅の中心点の集合体を支線中心軸としたとき、
前記支線コア部は、その延在方向に沿って前記光路変換コア部から遠ざかるように移動するとき、前記コア層の平面視において前記支線中心軸の接線と前記仮想直線とのなす角度の鋭角側が徐々に小さくなるように曲がっている第1形状曲線部と、前記コア層の平面視において前記支線中心軸の接線と前記仮想直線とのなす角度の鋭角側が徐々に大きくなるように曲がっている第2形状曲線部と、を含む上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の光導波路。
【0013】
(6) 前記コア層を厚さ方向に貫通する第1凹部および第2凹部を備え、
前記第1反射部は、前記第1凹部の内面の一部であり、
前記第2反射部は、前記第2凹部の内面の一部である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路。
【0014】
(7) 前記コア層は、前記本線コア部の延在方向に交差する方向に沿って並ぶ複数の前記分岐パターンを備えている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の光導波路。
【0015】
(8) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路と、
前記反射部と光学的に接続されている発光素子と、
前記支線コア部と光学的に接続されている受光素子と、
を有することを特徴とする光モジュール。
【0016】
(9) 上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の光導波路を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、過剰損失が小さく小型化が図られた光導波路が得られる。
また、本発明によれば、信頼性の高い光モジュールおよび電子機器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の光モジュールの実施形態を示す断面図である。
図2図1に示す光モジュールのうち筐体やレセプタクルを除く部位を示す平面図である。
図3図2に示す光導波路の平面図である。
図4図3に示す光導波路の部分拡大斜視図である。
図5図3に示す支線コア部を拡大して示す図である。
図6図5に示す第2形状曲線部を模式的に強調して示す図である。
図7図5に示す第1形状曲線部を模式的に強調して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の光導波路、光モジュールおよび電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<光モジュール>
まず、本発明の光モジュールの実施形態および本発明の光導波路の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明の光モジュールの実施形態を示す断面図である。また、図2は、図1に示す光モジュールのうち筐体やレセプタクルを除く部位を示す平面図である。
【0022】
図1に示す光モジュール100(実施形態に係る光モジュール)は、光導波路1(実施形態に係る光導波路)と、電気基板2と、光導波路1と光学的に接続されている発光素子31および受光素子32と、制御素子4と、レンズアレイ5と、レセプタクル61と、筐体7と、を有している。このような光モジュール100では、発光素子31で出射した光を光導波路1に導入するとともに内部で通信用の光とモニター用の光とに分配する。そして、モニター用の光を受光素子32で受光し、その光強度を監視しつつ、通信用の光に十分な光強度を確保して、高品質な光通信が可能になっている。
【0023】
このうち、図1に示す電気基板2は、絶縁基板21と、絶縁基板21の上面に設けられた導電層22および接点23と、を備えている。
【0024】
また、図1に示す電気基板2の上面には、発光素子31と、受光素子32と、制御素子4と、が搭載されている。これらの素子と導電層22との間は、図示しないボンディングワイヤーを介して電気的に接続されている。なお、この接続構造は、ボンディングワイヤーに限定されず、その他の構造、例えばフリップチップボンディング等で代替されてもよい。
【0025】
発光素子31としては、例えば、面発光レーザー(VCSEL)、発光ダイオード(LED)、有機EL素子等が挙げられる。
【0026】
また、受光素子32としては、例えば、フォトダイオード(PD、APD)、フォトトランジスター等が挙げられる。
【0027】
また、制御素子4としては、例えば、ドライバーIC、トランスインピーダンスアンプ(TIA)、リミッティングアンプ(LA)、またはこれらの素子を複合したコンビネーションIC等が挙げられる。
【0028】
なお、電気基板2には、上述した素子以外に、CPU(中央演算処理装置)、MPU(マイクロプロセッサーユニット)、LSI、IC、RAM、ROM、コンデンサー、コイル、抵抗、ダイオード等が搭載されていてもよい。
【0029】
また、図1に示す電気基板2の左端には、導電層22と電気的に接続された接点23が設けられている。そして、この接点23が設けられた部分は、図1に示す電気配線81の右端に取り付けられた電気コネクター82に挿入され、嵌合している。これにより、電気コネクター82を介して電気基板2と電気配線81との間が電気的に接続されている。その結果、光モジュール100に対して外部からの電気的接続が図られる。
【0030】
一方、図1、2に示す光導波路1は、シート状をなしており、内部に形成されたコア部14が導光路になっている。
【0031】
また、光導波路1の右端には、MT型光コネクター62が装着されている。このMT型光コネクター62は、レセプタクル61に対してその左側から挿入されている。すなわち、レセプタクル61の左側には、MT型受容部611が形成されており、そのMT型受容部611にMT型光コネクター62が挿入されている。
【0032】
また、光導波路1には、反射部16a(第1反射部)が形成されている。この反射部16aを介して図1の左右方向に延在する光路P1が、図1の上下方向に延在する光路P2に変換されている。この光路P2により、光導波路1と発光素子31および受光素子32との間がそれぞれ光学的に接続されている。なお、図1に示す光路P1、P2は、それぞれ光が伝搬する経路の一例を示している。
【0033】
レンズアレイ5は、光導波路1と電気基板2との間に設けられている。図1に示すレンズアレイ5は、底部51と、底部51の縁から下方に向かって立設された壁部52と、を備えている。そして、壁部52の下面が電気基板2の上面に接合され、底部51の上面に光導波路1が接合されている。これにより、底部51、壁部52および電気基板2で取り囲まれた空洞53が形成される。また、この空洞53には、前述した発光素子31、受光素子32および制御素子4が収まっている。これにより、発光素子31、受光素子32および制御素子4を外部環境や異物付着等から保護することができる。
【0034】
レンズアレイ5は、光透過性を有しており、光路P2を通過させることができる。また、底部51にはレンズ54が形成されている。このレンズ54は、例えば凸レンズであり、光路P2を伝搬する光を目的とする位置に集束することができる。
【0035】
なお、レンズアレイ5には、レンズ54の他に、回折格子、偏光子、プリズム、フィルター等が設けられていてもよい。
【0036】
また、レセプタクル61の右側には、MPO型受容部612が形成されている。そして、このMPO型受容部612には、光ファイバー91の左端に取り付けられたMPO型光コネクター92が挿入され、嵌合している。これにより、光ファイバー91と光導波路1との間が光学的に接続されている。その結果、光モジュール100に対して外部からの光学的接続が図られる。
【0037】
筐体7は、電気配線81や電気コネクター82および光ファイバー91やMPO型光コネクター92を除く各部を収納する箱状の部材である。このような筐体7に収納することにより、各部を外部環境から保護し、光モジュール100の信頼性および可搬性を高めることができる。
【0038】
なお、筐体7の一部には貫通孔が設けられ、そこから電気基板2の接点23が設けられた部分が突出している。これにより、接点23に対して電気コネクター82を容易に装着することができる。また、同様に、筐体7の一部に設けられた貫通孔からレセプタクル61のMPO型受容部612が露出している。これにより、MPO型受容部612に対してMPO型光コネクター92を挿入するだけで、光モジュール100に対して光ファイバー91を容易に接続することができる。
【0039】
筐体7の構成材料としては、例えばステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン合金のような金属材料の他、各種樹脂材料、各種セラミックス材料等が挙げられる。
<光導波路>
次に、光導波路1について説明する。
【0040】
図3は、図2に示す光導波路の平面図である。また、図4は、図3に示す光導波路の部分拡大斜視図である。
【0041】
前述したように、光導波路1は、シート状をなしており、図3の下から上に向かって出射された光を、コア部14に入射させ、通信することが可能になっている。
【0042】
本実施形態に係る光導波路1は、図4の下側から、下側保護層17、クラッド層11、コア層13、クラッド層12、および上側保護層18がこの順で積層されてなる積層体10を備えている。また、コア層13中には、図3の上下方向に延在する長尺状のコア部14と、コア層13の厚さ方向から見てコア部14の側面に隣接して設けられた側面クラッド部15と、が形成されている。
【0043】
一方、図3、4に示す光導波路1は、前述したように、図1に示す光路P1と光路P2との間を相互に変換する反射部16aを備えている。この反射部16aは、図4に示すように、積層体10の上面に開口し、コア層13を貫通する凹部160の内面の一部である。すなわち、反射部16aは、空洞である凹部160とコア部14との界面の一部である。このため、反射部16aでは、屈折率差に基づくフレネル反射によって光路P1と光路P2との間を相互に変換することができる。具体的には、図1の左右方向に延在する光路P1と、図1の上下方向に延在する光路P2と、の間が相互に変換される。
【0044】
以下、光導波路1の各部についてさらに詳述する。
-コア層-
図4に示すコア層13中に形成されているコア部14は、その側面が、側面クラッド部15およびクラッド層11、12で囲まれている。そして、コア部14の屈折率は、側面クラッド部15やクラッド層11、12の屈折率よりも高くなっている。これにより、コア部14に光を閉じ込めて伝搬させることができる。
【0045】
コア層13において、光路P1に直交する面内における屈折率分布は、いかなる分布であってもよく、例えば屈折率が不連続的に変化したいわゆるステップインデックス(SI)型の分布であってもよく、屈折率が連続的に変化したいわゆるグレーデッドインデックス(GI)型の分布であってもよい。
【0046】
また、コア部14の光路P1に直交する面による断面形状は、特に限定されず、図示した四角形以外に、真円、楕円形、長円形等の円形、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形、その他の異形状であってもよい。
【0047】
また、コア層13を厚さ方向から見たとき、コア部14は、後述する拡幅部141において2つに分岐している。これにより、光信号を2つに分配することができる。なお、この分岐構造については後に詳述する。
【0048】
また、コア層13の平均厚さは、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1の伝送効率の低下を抑えつつ光導波路1の薄型化を図ることができる。
【0049】
コア層13の構成材料(主材料)としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料等が挙げられる。なお、樹脂材料には、異なる組成のものを組み合わせた複合材料も用いられる。
【0050】
-クラッド層-
クラッド層11、12の平均厚さは、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路1が必要以上に厚膜化するのを防止しつつ、クラッド層11、12としての機能が確保される。
【0051】
また、クラッド層11、12の構成材料としては、例えば、前述したコア層13の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特に(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂またはエポキシ系樹脂がより好ましい。
【0052】
なお、クラッド層11、12は、必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。このとき、例えばコア層13が外気(空気)に曝されていれば、その外気がクラッド層11、12として機能する。
【0053】
-保護層-
図4に示す光導波路1では、下側保護層17および上側保護層18が、コア層13やクラッド層11、12を保護し、外部環境等に起因したコア部14の伝送効率の低下を抑制することができる。
【0054】
下側保護層17および上側保護層18の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0055】
下側保護層17および上側保護層18の平均厚さは、特に限定されないが、5~500μm程度であるのが好ましく、10~400μm程度であるのがより好ましい。
【0056】
また、下側保護層17および上側保護層18は、互いに同じ構成であっても互いに異なる構成であってもよい。
【0057】
なお、下側保護層17および上側保護層18は、それぞれ必要に応じて設けられればよく、少なくとも一方が省略されていてもよい。
【0058】
-凹部-
凹部160は、コア部14の延在方向の端部に設けられている。そして、凹部160の内面に設けられた反射部16aは、コア部14の光路P1に対して傾斜する面である。この反射部16aの傾斜角度に応じて、光路P1の変換角度を調整することができる。
【0059】
図4に示す凹部160は、コア層13の面内において光路P1と直交する方向から見たとき、下方に頂点を持つ三角形に準じた形状をなしている。そして、反射部16aは、図4に示すように、クラッド層11からコア層13およびクラッド層12を経て上側保護層18に至るまでの間に連続して形成された平坦面である。なお、凹部160の形状は、図4に示す形状に限定されず、いかなる形状であってもよい。
【0060】
また、反射部16aの傾斜角度は、特に限定されないが、図1に示す光導波路1の下面を基準面としたとき、基準面と反射部16aとがなす角度の鋭角側は、30~60°程度であるのが好ましく、40~50°程度であるのがより好ましい。傾斜角度を前記範囲内に設定することにより、反射部16aにおいてコア部14の光路P1を効率よく変換し、光路変換に伴う損失を抑制することができる。
【0061】
なお、凹部160の最深部の位置、すなわち三角形の頂点の位置は、特に限定されないが、少なくともコア層13よりもクラッド層11側であるのが好ましい。
【0062】
また、本実施形態に係るコア層13には、凹部160に対応する位置に設けられ、コア部14よりも幅が広い拡幅部141(第1光路変換コア部)が形成されている。すなわち、図3に示すように、コア層13を平面視したとき、拡幅部141は、凹部160を内包するような長方形をなしており、かつ、コア部14の図3における上端に隣接している。この拡幅部141の屈折率は、コア部14と同様、側面クラッド部15やクラッド層11、12の屈折率よりも高くなっている。このような拡幅部141を設けることにより、反射部16aのうち、コア層13の断面に露出する材料は、側面クラッド部15やクラッド層11、12よりも屈折率の高い材料となる。このため、反射部16aにおける屈折率差をより大きくすることができ、反射率を高めるとともに、反射損失を低減することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る光導波路1は、図3に示すように、後述する支線コア部194の下方に設けられ、光路P1と光路P2との間を相互に変換する反射部16b(第2反射部)を備えている。この反射部16bは、図4に示す積層体10の上面に開口し、コア層13を貫通する凹部161の内面の一部である。すなわち、反射部16bは、空洞である凹部161とコア部14との界面の一部である。このため、反射部16bでは、屈折率差に基づくフレネル反射によって光路P1と光路P2との間を相互に変換することができる。具体的には、図1の左右方向に延在する光路P1と、図1の上下方向に延在する光路P2と、の間が相互に変換される。
【0064】
また、本実施形態に係るコア層13には、凹部161に対応する位置に設けられ、コア部14よりも幅が広い拡幅部142(第2光路変換コア部)が形成されている。すなわち、図3に示すように、コア層13を平面視したとき、拡幅部142は、凹部161を内包するような長方形をなしており、かつ、コア部14の図3における下端に隣接している。この拡幅部142の屈折率は、コア部14と同様、側面クラッド部15やクラッド層11、12の屈折率よりも高くなっている。このような拡幅部142を設けることにより、反射部16bのうち、コア層13の断面に露出する材料は、コア部14を構成する材料、すなわち、側面クラッド部15やクラッド層11、12よりも屈折率の高い材料となる。このため、反射部16bにおける屈折率差をより大きくすることができ、反射率を高めるとともに、反射損失を低減することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、凹部160、161内を空気が占めているが、その代わりにコア部14よりも低屈折率の材料で占められていてもよい。
【0066】
また、凹部160、161に代えて、コア層13の厚さ方向に光路を曲げる湾曲導波路が設けられていてもよい。
【0067】
-分岐パターン-
図3に示す光導波路1は、前述したように分岐構造を含む複数のコア部14と拡幅部141および拡幅部142とが形成されたコア層13を有している。すなわち、コア層13は、分岐パターン19に形成された複数のコア部14と拡幅部141および拡幅部142とを有している。
【0068】
この分岐パターン19は、内部に反射部16aを備える拡幅部141(第1光路変換コア部)と、拡幅部141から延在するとともに反射部16aと光学的に接続され、拡幅部141よりも幅が小さい本線コア部193と、拡幅部141から延在するとともに反射部16aと光学的に接続され、拡幅部141よりも幅が小さく、かつ、本線コア部193から離間している支線コア部194と、支線コア部194に隣接する拡幅部142と、を備えている。
【0069】
このうち、拡幅部141は、前述したように、反射部16aを内部に備えている。内部に備えるとは、コア層13を平面視したとき、拡幅部141の内側に反射部16aを内包している状態を指す。このようにして反射部16aを内部に備えることにより、反射部16aにおいて側面クラッド部15やクラッド層11、12よりも屈折率の高い材料が露出している面積を大きく確保することができる。その結果、反射部16aにおいて反射損失が小さい領域をより大きく確保することができる。
【0070】
このような分岐パターン19が形成されていることにより、反射部16aに入射した光は、2つに分配され、本線コア部193と支線コア部194からそれぞれ出射する。したがって、例えば本線コア部193から通信用の光を取り出す一方、支線コア部194からモニター用の光を取り出すことができる。このモニター用の光は、通信用の光に影響を与えることなく、例えば反射部16aから入射した光の品質を検査するために用いられる。したがって、例えばモニター用の光の光強度を検出することにより、発光素子31の健全性を監視することができる。
【0071】
なお、光学的に接続とは、接続対称の2つの部位同士が、コア部14を構成する材料、すなわち相対的に屈折率が大きい材料でつながっている状態をいう。
【0072】
また、拡幅部141から延在する本線コア部193の線形は、特に限定されないが、拡幅部141から少なくとも所定の長さの範囲では直線的であるのが好ましい。これにより、反射部16aから本線コア部193に入射する光の入射効率を特に高めることができる。その結果、過剰損失を抑制することができる。このとき、所定の長さは、例えば50μmとされる。以下、本線コア部193のうち、拡幅部141から直線的に延在する部分を、基準部分191という。
【0073】
また、本線コア部193のうち、拡幅部141との境界を入射端部1931としたとき、入射端部1931における幅の中心点を光入射点1931aとする。さらに、本線コア部193のうち、入射端部1931から50μmの位置における幅の中心点を基準部分出射点1931bとする。このとき、光入射点1931aと基準部分出射点1931bとを結ぶ直線を仮想直線VLという。
【0074】
なお、本明細書における過剰損失とは、光導波路1に入射した光強度のうち、本線コア部193および支線コア部194で出射する光強度以外の損失分のことをいう。
ここで、本実施形態に係る分岐パターン19は、以下の3つの条件を満たしている。
【0075】
[1]本線コア部193および支線コア部194が、それぞれ拡幅部141(第1光路変換コア部)から延在し、かつ、反射部16aと光学的に接続されていること
【0076】
[2]本線コア部193の幅および支線コア部194の幅が、それぞれ拡幅部141(第1光路変換コア部)の幅よりも小さいこと
【0077】
[3]本線コア部193と支線コア部194とが互いに離間していること
以下、[1]~[3]について順次説明する。
【0078】
[1]本線コア部193および支線コア部194が、それぞれ拡幅部141(第1光路変換コア部)から延在し、かつ、反射部16aと光学的に接続されていること
拡幅部141は、前述したように、図3においてコア部14の上端に隣接している部位であって、内部に反射部16aを備えている。そして、本線コア部193および支線コア部194は、それぞれ拡幅部141から図3の下方に向かって延在している。したがって、拡幅部141と本線コア部193との間、および、拡幅部141と支線コア部194との間は、それぞれ屈折率の高い領域でつながっている。このため、反射部16aと本線コア部193との間、および、反射部16aと支線コア部194との間は、それぞれ光学的に接続されている。
【0079】
このような分岐パターン19によれば、反射部16aを、本線コア部193と支線コア部194の双方に対して、損失を抑えつつ光学的に接続することができる。このため、反射部16aに入射した光を、効率よく、本線コア部193と支線コア部194に振り分けることができ、過剰損失が小さい光導波路1を実現することができる。
【0080】
[2]本線コア部193の幅および支線コア部194の幅が、それぞれ拡幅部141(第1光路変換コア部)の幅よりも小さいこと
本線コア部193の幅および支線コア部194の幅が、それぞれ拡幅部141の幅よりも小さいため、裏を返すと、拡幅部141の幅は、本線コア部193の幅および支線コア部194の幅よりそれぞれ大きい。このため、拡幅部141は、図3に示すように、余裕を持って、本線コア部193の入射端部1931および支線コア部194の入射端部1943の双方に隣接することができる。また、それに伴って、拡幅部141の内部に設けられる反射部16aについても、その幅を十分に広げることができるので、反射部16aで反射した光を、本線コア部193および支線コア部194の双方に対して効率よく導入することができる。
【0081】
拡幅部141の幅は、入射端部1931の幅の150~500%であるのが好ましく、200~400%であるのがより好ましい。これにより、拡幅部141は、本線コア部193と支線コア部194の双方に対して隣接することができる程度の十分な幅を有することになる。特に、拡幅部141は、反射部16aを内包する部位であるため、拡幅部141の幅を前記範囲内に設定することにより、反射部16aの幅も十分に広く確保することができる。その結果、例えば反射部16aの幅の中心を仮想直線VLに合わせた場合でも、反射部16aの幅の端を支線コア部194の入射端部1943に合わせることができる。換言すれば、反射部16aの幅の中心は、比較的面精度が高い傾向があるため、この領域を本線コア部193の入射端部1931に合わせることによって、伝搬モードが揃った光を本線コア部193に入射することができる。これにより、伝送効率が高くパルスの鈍りも発生しにくい、高品質な光通信を実現することができる。
【0082】
これに対し、反射部16aの幅の端は、比較的面精度が低い傾向があるため、反射部16aの幅の端で反射した光は、高次モードを多く含む可能性がある。このため、この領域で反射した光を通信用の光として利用した場合、光通信の品質が低下しやすいという問題がある。
【0083】
その一方、反射部16aの幅の端で反射した光をモニター用の光として利用する分には、特に問題がない。したがって、反射部16aの幅の端を支線コア部194の入射端部1943に合わせることにより、従来は活用することができていなかった光を有効利用することができる。その結果、通信用の光の光強度を著しく減少させることなく、モニター用の光の光強度を確保することができる。
【0084】
なお、拡幅部141の幅が前記上限値を上回ってもよいが、その場合、反射部16aの幅の中心を仮想直線VLに合わせた場合、反射部16aの幅の端が仮想直線VLから大きく離れることになる。このため、過剰損失が増大するとともに、分岐パターン19の配置密度を高めることが難しくなるおそれがある。
【0085】
また、本線コア部193の幅および支線コア部194の幅が、それぞれ拡幅部141(第1光路変換コア部)の幅以上である場合、反射部16aから本線コア部193と支線コア部194に光を導入する際、双方に対して光を導入することができないおそれがある。
【0086】
また、本線コア部193の幅は、特に限定されないが、20~80μmであるのが好ましく、25~75μmであるのがより好ましい。これにより、複数の分岐パターン19を並列させるとき、その密度を高めるとともに、小型化を図ることができる。また、伝送効率が低くなるのを抑制することができる。
【0087】
すなわち、本線コア部193の幅が前記下限値を下回ると、本線コア部193の伝送効率が低下するおそれがある。一方、本線コア部193の幅が前記上限値を上回ると、本線コア部193の配置密度を十分に高めることができないおそれがある。
【0088】
なお、本線コア部193の幅とは、仮想直線VLに直交する方向における長さのことをいう。
【0089】
また、本線コア部193の幅は、その全長にわたって本線コア部193の入射端部1931の幅の80~120%であるのが好ましく、90~110%であるのがより好ましい。これにより、本線コア部193の幅は、全体でほぼ一定になるため、過剰損失が小さく、高品質な光通信を実現可能なものとなる。
【0090】
また、支線コア部194の幅は、本線コア部193の幅と同じであっても、狭くてもよいが、本線コア部193の幅より広いことが好ましい。これにより、通信用の光の光強度を減少させることなく、モニター用の光の光強度を十分に確保することができる。その結果、本線コア部193から出射する通信用の光の光強度と支線コア部194から出射するモニター用の光の光強度とのバランスが良好になる。
【0091】
具体的には、支線コア部194の幅は、本線コア部193の入射端部1931の幅の100%超であるのが好ましく、101~200%であるのがより好ましく、110~150%であるのがさらに好ましい。支線コア部194の幅が前記下限値を下回ると、支線コア部194の幅を広げた効果を十分に享受することができないおそれがある。一方、支線コア部194の幅が前記上限値を上回ると、支線コア部194の幅が過剰に広くなるため、分岐パターン19の配置密度を十分に高めることができないおそれがある。
【0092】
[3]本線コア部193と支線コア部194とが互いに離間していること
本線コア部193と支線コア部194とが互いに離間しているとは、本線コア部193と支線コア部194との間に側面クラッド部15が介挿されている状態をいう。
【0093】
本線コア部193と支線コア部194とが互いに離間していることにより、本線コア部193を伝搬する光が支線コア部194に漏れ出すことが抑制される。これにより、通信用の光の光強度が減少するのを抑制することができる。また、本線コア部193から側面クラッド部15に光が漏れ出したり、反射部16aから側面クラッド部15に光が入射したりした場合でも、これらの漏れ光を支線コア部194に取り込むことができる。これにより、漏れ光が本線コア部193に入射することを抑制し、光通信の品質が低下するのを防止することができる。すなわち、漏れ光を支線コア部194に閉じ込めることにより、漏れ光による光通信への影響を最小限に留めることができる。
【0094】
本線コア部193と支線コア部194との離間距離Sは、特に限定されないが、2~30μmであるのが好ましく、4~10μmであるのがより好ましい。離間距離Sを前記範囲内に設定することにより、分岐パターン19の配置密度を高めつつ、本線コア部193から支線コア部194に漏れ出す光の光強度を最小限に留めることができる。その結果、光導波路1の小型化と光通信の高品質化とを両立させることができる。
【0095】
なお、離間距離Sが前記下限値を下回ると、本線コア部193から支線コア部194に漏れ出す光の光強度が増加するおそれがある。一方、離間距離Sが前記上限値を上回ると、側面クラッド部15に漏れ出す光の光強度が増加し、過剰損失が増加するおそれがある。
【0096】
以上のような3つの条件を満たすことにより、光導波路1は、過剰損失が小さく、かつ、小型化が図られたものとなる。
【0097】
また、光モジュール100は、前述したように、光導波路1と、電気基板2と、光導波路1と光学的に接続されている発光素子31および受光素子32と、を有している。このような光モジュール100では、光導波路1においてモニター用の光を受光素子32で受光し、その光強度を監視しつつ、通信用の光に十分な光強度を確保して、高品質な光通信が可能になっている。つまり、モニター用の光に十分な光強度を確保しつつ、通信用の光を高めることができるので、これらのバランスを良好に保ち、しかも、光導波路1における過剰損失が小さいため、高品質な光通信を可能にしつつ、発光素子31の健全性を常時監視可能であるという付加価値も有している。また、光モジュール100は、小型化も可能であり、様々な電子機器に搭載可能である。したがって、かかる光モジュール100は、信頼性の高いものとなる。
【0098】
なお、制御素子4は、受光素子32によってモニター用の光の光強度を監視し、例えば光強度が閾値を下回った場合には、警告を発報したり、発光素子31の駆動を停止したりしてもよい。また、光強度の変動によって、発光素子31の劣化状況を予測し、不具合に至る前に発光素子31の交換を促すことも可能である。
【0099】
また、支線コア部194の長さL1は、800~10000μmであるのが好ましく、900~8000μmであるのがより好ましく、1000~7000μmであるのがさらに好ましい。長さL1を前記範囲内に設定することにより、光導波路1や光モジュール100の小型化を図ることができる。なお、長さL1が前記下限値を下回ると、本線コア部193や支線コア部194をより大きな曲率で曲げなければ、支線コア部194の出射端部1944に隣接して設けられた拡幅部142に必要なスペースを確保することが難しくなるおそれがある。そして、大きな曲率で曲げた場合、本線コア部193や支線コア部194における曲げ損失が増大し、光導波路1の過剰損失が増大するおそれがある。
【0100】
なお、支線コア部194の長さL1は、支線コア部194の仮想直線VLに沿った長さのことをいう。
【0101】
また、本線コア部193の長さL2は、支線コア部194の長さL1より短くてもよいが、長いことが好ましい。これにより、本線コア部193の出射端部1932に前述したMT型光コネクター62を装着するとき、MT型光コネクター62が反射部16bに干渉してしまうのを防止することができる。
【0102】
なお、長さL2は、特に限定されないが、1000μm~100mmであるのが好ましく、1500μm~50mmであるのがより好ましい。これにより、光導波路1および光モジュール100の十分な小型化が図られる。
【0103】
また、図3に示す支線コア部194は、曲がる方向が異なる2つの部位として、第1形状曲線部1941および第2形状曲線部1942を含んでいる。
【0104】
図5は、図3に示す支線コア部194を拡大して示す図である。また、図6は、図5に示す第2形状曲線部1942を模式的に強調して示す図であり、図7は、図5に示す第1形状曲線部1941を模式的に強調して示す図である。なお、図5~7では、それぞれ支線コア部194の線形における曲率を図3に比べて強調している。
【0105】
図3に示す支線コア部194は、図5に強調して示すように、拡幅部141から延出する第2形状曲線部1942と、そこから延出する第1形状曲線部1941と、を含んでいる。
【0106】
ここで、支線コア部194の幅の中心点の集合体を支線中心軸C2とする。このとき、図3に示す支線コア部194は、その延在方向に沿って拡幅部141から遠ざかるように移動するとき、コア層13の平面視において、図6に示すように、支線中心軸C2の接線TL21、TL22、TL23と仮想直線VLとのなす角度のうち鋭角側の角度β1、β2、β3が徐々に大きくなるように曲がっている第2形状曲線部1942と、図7に示すように、支線中心軸C2の接線TL11、TL12、TL13と仮想直線VLとのなす角度のうち鋭角側の角度α1、α2、α3が徐々に小さくなるように曲がっている第1形状曲線部1941と、を含む。
【0107】
このうち、図6に示す第2形状曲線部1942では、支線中心軸C2上の互いに離れた3点について接線TL21、TL22、TL23を引いている。この接線TL21、TL22、TL23は、拡幅部141側からこの順で並んでいる。そして、接線TL21と仮想直線VLとのなす角度のうち鋭角側の角度をβ1とし、接線TL22と仮想直線VLとのなす角度のうち鋭角側の角度をβ2とし、接線TL23と仮想直線VLとのなす角度のうち鋭角側の角度をβ3としたとき、β1<β2<β3の関係を満たしている。
【0108】
このような第2形状曲線部1942を含むことにより、支線コア部194を本線コア部193から徐々に離すことができる。これにより、支線コア部194における曲げ損失を抑制することができる。また、支線コア部194の出射端部1944を接続する反射部16bとして、十分な大きさの反射部16bを設けるためのスペースを確保することができる。その結果、反射部16bにおける反射損失を十分に抑制することができる。
【0109】
一方、図7に示す第1形状曲線部1941では、支線中心軸C2上の互いに離れた3点について接線TL11、TL12、TL13を引いている。この接線TL11、TL12、TL13は、拡幅部141側からこの順で並んでいる。そして、接線TL11と仮想直線VLとのなす角度のうち鋭角側の角度をα1とし、接線TL12と仮想直線VLとのなす角度のうち鋭角側の角度をα2とし、接線TL13と仮想直線VLとのなす角度のうち鋭角側の角度をα3としたとき、α1>α2>α3の関係を満たしている。
【0110】
このような第1形状曲線部1941を含むことにより、支線コア部194を本線コア部193に向けて徐々に近づけることができる。これにより、双方の離間距離が広くなりすぎるのを防止して、分岐パターン19の幅を最適化することができる。
【0111】
以上のことから、第1形状曲線部1941および第2形状曲線部1942を含むことにより、小型化を図りつつ、曲げ損失および反射損失を抑え、過剰損失の小さい光導波路1を実現することができる。
【0112】
なお、第1形状曲線部1941および第2形状曲線部1942の曲率は、曲げ損失の観点のみからするとできるだけ小さい方がよい。すなわち、曲率半径はできるだけ大きい方がよい。しかしながら、曲率半径が大きいと、拡幅部142を配置するスペースを確保するために、長さL1を非常に長くすることが求められる。そうすると、光導波路1や光モジュール100の小型化が困難になるおそれがある。
【0113】
そこで、第1形状曲線部1941および第2形状曲線部1942の曲率半径は、それぞれ0.30~5.0mmであるのが好ましく、0.50~3.0mmであるのがより好ましく、1.0~2.5mmであるのがさらに好ましい。曲率半径を前記範囲内に設定することにより、曲げ損失を許容範囲内に抑えつつ、光導波路1の十分な小型化を図ることができる。
【0114】
なお、第1形状曲線部1941および第2形状曲線部1942の曲率半径は、支線中心軸C2の曲率半径として求められる。
【0115】
また、支線コア部194は、第1形状曲線部1941および第2形状曲線部1942以外の部位として、直線状に延在する部位を含んでいてもよい。
【0116】
また、本実施形態では、図3に示すように、本線コア部193が仮想直線VLに沿って直線状に伸びている。このとき、仮想直線VLと支線中心軸C2との最大距離L3は、50~150μmであるのが好ましく、75~125μmであるのがより好ましい。これにより、分岐パターン19の幅を十分に狭くすることができる。このため、例えば図3に示すように複数の分岐パターン19を並列に配置したとき、配置の密度を高めやすくなる。その結果、小型化と多チャンネル化とを両立させた光導波路1および光モジュール100を実現することができる。
【0117】
なお、最大距離L3が前記下限値を下回ると、拡幅部142に必要なスペースを確保することができず、そこに設けられる凹部161の幅も制限されることとなる。その結果、反射部16bを介した光路変換に伴う反射損失が増大するおそれがある。一方、最大距離L3が前記上限値を上回ると、分岐パターン19の配置密度が低下し、小型化と多チャンネル化との両立が困難になるおそれがある。また、支線コア部194の線形において曲率をより大きくする必要が生じるため、モニター用の光の光強度が減少するおそれがある。
【0118】
また、本線コア部193が直線状に伸びている場合、曲げ損失がないため、通信用の光の光強度を実質的に最大化することができる。なお、本線コア部193は、図示した形状に限定されず、曲線状に伸びていてもよいし、直線状に伸びている部位と曲線状に伸びている部位の双方を含んでいてもよい。
【0119】
また、図3に示す分岐パターン19は、コア層13の平面視において、本線コア部193の延長線193Eおよび支線コア部194の延長線194Eの双方が反射部16aと交差している。すなわち、本線コア部193を拡幅部141側に延長してなる延長線193E、および、支線コア部194を拡幅部141側に延長してなる延長線194Eは、図3に示すコア層13の平面視において、それぞれ反射部16aと重なっている。これにより、例えば反射部16aで反射した光を、効率よく本線コア部193および支線コア部194に導入することができる。また、拡幅部141自体を光の分岐構造として用いることもできる。したがって、小型であっても過剰損失が小さい光導波路1が得られる。
【0120】
なお、延長線193Eについては、その幅の全体が反射部16aと交差することが好ましい。これにより、本線コア部193に導入される光強度を十分に確保することができる。一方、延長線194Eについては、その幅の全体が反射部16aと交差していてもよいが、その幅の一部が反射部16aと交差していることが好ましい。これにより、支線コア部194に導入される光強度を必要かつ十分に確保しつつ、反射部16aで反射されても無駄になってしまう光を減らすことができる。その結果、過剰損失が小さい光導波路1が得られる。
【0121】
なお、延長線193E、194Eは、反射部16aの傾斜角度等によっては、必ずしも上記のような配置になっていなくてもよい。また、延長線193E、194Eについては、図3において斜線を付して示している。
【0122】
また、本実施形態に係るコア層13は、仮想直線VLに交差する方向に沿って並ぶ複数の分岐パターン19を備えている。これにより、各分岐パターン19に対して、互いに独立した複数の光信号を同時に入射することができるので、例えば多チャンネルの光ファイバーに対しても接続可能になり、大容量の光通信が可能になる。なお、コア層13中に形成される分岐パターン19の数は、特に限定されないが、1~100本程度であるのが好ましい。なお、分岐パターン19の数が多い場合は、必要に応じて光導波路1を多層化してもよい。具体的には、図4に示すクラッド層12上に、さらにコア層とクラッド層とを交互に重ねることにより多層化することができる。
【0123】
なお、隣り合う分岐パターン19同士の離間距離、すなわち、図3に示す隣り合う分岐パターン19の仮想直線VL同士の距離L4は、特に限定されないが、100~250μmであるのが好ましく、150~250μmであるのがより好ましい。これにより、分岐パターン19同士の干渉を避けつつ、分岐パターン19の配置密度を十分に高めることができる。その結果、光導波路1の小型化と多チャンネル化とを両立させることができる。このため、モニター用の光の光強度の検出精度が低下したり、光通信の品質が低下したりするのを抑制することができる。
【0124】
また、本線コア部193から出射する光強度を本線出射強度とし、支線コア部194から出射する光強度を支線出射強度とするとき、本線出射強度に対する支線出射強度の比(分岐比)は、-25dB以上であることが好ましく、-20~-10dBであることがより好ましい。このような分岐比であれば、本線コア部193から出射する通信用の光の光強度と、支線コア部194から出射するモニター用の光の光強度と、のバランスが特に良好になる。すなわち、光通信の品質を著しく低下させることなく、モニター用の光の光強度を十分に確保することができる。その結果、良好な光通信を行いながら、同時に、発光素子31の健全性をより正確に監視し続けることができる。
【0125】
<電子機器>
上述したような本発明の光導波路によれば、前述したように、モニター用の光の光強度を監視可能になっており、かつ、通信用の光の光強度を十分に確保することができるので、電子機器に対して、発光素子31の健全性を監視する機能を容易に付与可能である。しかも、光導波路1は、過剰損失が小さく、かつ、小型化が図られているため、高品質な光通信が可能で、かつ、電子機器の小型化を容易にする。したがって、本発明の光導波路を備えることにより、信頼性の高い電子機器(本発明の電子機器)が得られる。
【0126】
本発明の電子機器としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、ゲーム機、ルーター装置、WDM装置、パソコン、テレビ、サーバー、スーパーコンピューター等の電子機器類が挙げられる。
【0127】
以上、本発明の光導波路、光モジュールおよび電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0128】
例えば、前記実施形態では、光導波路と受発光素子との間にレンズを配置しているが、このレンズは必要に応じて設けられればよく、省略されてもよい。また、光モジュールの筐体も、省略されてもよい。
【0129】
また、光モジュールが備える光コネクターの形状は、特に限定されず、いかなる形状であってもよい。また、光コネクターは、必要に応じて設けられればよく、例えば光導波路と光ファイバーとが直接接続されていてもよいし、光導波路に設けられた反射部を介して光ファイバーと接続されていてもよい。
【0130】
また、電気基板は、リジッド基板、フレキシブル基板のような樹脂基板がよく用いられるが、セラミックス基板やガラス基板等であってもよい。
【符号の説明】
【0131】
1 光導波路
2 電気基板
4 制御素子
5 レンズアレイ
7 筐体
10 積層体
11 クラッド層
12 クラッド層
13 コア層
14 コア部
15 側面クラッド部
16a 反射部
16b 反射部
17 下側保護層
18 上側保護層
19 分岐パターン
21 絶縁基板
22 導電層
23 接点
31 発光素子
32 受光素子
51 底部
52 壁部
53 空洞
54 レンズ
61 レセプタクル
62 MT型光コネクター
81 電気配線
82 電気コネクター
91 光ファイバー
92 MPO型光コネクター
100 光モジュール
141 拡幅部
142 拡幅部
160 凹部
161 凹部
191 基準部分
193 本線コア部
193E 延長線
194 支線コア部
194E 延長線
611 MT型受容部
612 MPO型受容部
1931 入射端部
1931a 光入射点
1931b 基準部分出射点
1932 出射端部
1941 第1形状曲線部
1942 第2形状曲線部
1943 入射端部
1944 出射端部
C2 支線中心軸
L3 最大距離
L4 距離
P1 光路
P2 光路
S 離間距離
TL11 接線
TL12 接線
TL13 接線
TL21 接線
TL22 接線
TL23 接線
VL 仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7