(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】二重容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20221213BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20221213BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B29C49/22
B29C49/06
(21)【出願番号】P 2018133638
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿久沢 典男
(72)【発明者】
【氏名】市川 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】飯野 裕喜
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/190411(WO,A1)
【文献】特開2014-084389(JP,A)
【文献】特開2015-151131(JP,A)
【文献】特開2017-186059(JP,A)
【文献】特開2017-202853(JP,A)
【文献】特開2017-193345(JP,A)
【文献】特開2012-206377(JP,A)
【文献】特開2009-72936(JP,A)
【文献】特開平9-248880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B29C 49/22
B29C 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容し前記内容物の減少に伴い収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に積層された二重容器であって、
前記外容器と前記内容器との間に、脂肪酸エステルを含有する中間層を備え
、
前記外容器及び前記内容器は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される、
二重容器。
【請求項2】
前記外容器及び前記内容器は、ボトル形状であり、
前記中間層は、前記外容器の肩部及び胴部と前記内容器の肩部及び胴部との間に備えられ、前記外容器の底部と前記内容器の底部との間に備えられない、
請求項1
に記載の二重容器。
【請求項3】
前記脂肪酸エステルは、トリアシルグリセロールである、
請求項1
又は2に記載の二重容器。
【請求項4】
前記トリアシルグリセロールは、中鎖脂肪酸トリグリセリドである、
請求項
3に記載の二重容器。
【請求項5】
前記中間層は、前記外容器又は前記内容器に対して環境応力破壊を生じさせる材料を含有しない、
請求項1~
4の何れか1項に記載の二重容器。
【請求項6】
内容物を収容し前記内容物の減少に伴い収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に積層された二重容器の製造方法であって、
前記外容器のプリフォームの内面及び前記内容器のプリフォームの外面の少なくとも一方に、脂肪酸エステルを含有する中間層を形成する層形成工程と、
前記外容器のプリフォーム及び前記内容器のプリフォームを前記外容器及び前記内容器に二軸延伸ブロー成形する成形工程と、
を有
し、
前記外容器及び前記内容器は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される、
二重容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体調味料又は液体化粧品等の内容物を収容し、その鮮度を保持する容器として、デラミボトル、エアレスボトル又は積層剥離容器等と称される、二重容器が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の二重容器は、外容器と内容器との間に流動パラフィンを含有する中間層を備えている。これにより、特許文献1に記載の二重容器は、外容器がスクイズ操作により押圧されて内容器が収縮する際に、内容器が外容器からスムーズに剥離する。また、外容器と内容器との間の中間層に含有される材料としては、例えば耐熱性シリコンオイルも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、スクイズ操作の際に発生する音を低減させることについて何ら検討されていない。また、流動パラフィン等を含有する中間層を備える二重容器は、リサイクル処理の洗浄工程において、中間層が外容器及び内容器から除去され難く、結果として再資源化率が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題点を解決することを課題の一例とする。すなわち、本発明の課題の一例は、スクイズ操作の際に発生する音を低減するとともに、再資源化率の低下を抑制することが可能な二重容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る二重容器は、内容物を収容し前記内容物の減少に伴い収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に積層された二重容器であって、前記外容器と前記内容器との間に、脂肪酸エステルを含有する中間層を備え、前記外容器及び前記内容器は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される。
【0009】
好適には、前記二重容器において、前記外容器及び前記内容器は、ボトル形状であり、前記中間層は、前記外容器の肩部及び胴部と前記内容器の肩部及び胴部との間に備えられ、前記外容器の底部と前記内容器の底部との間に備えられない。
【0010】
好適には、前記二重容器において、前記脂肪酸エステルは、トリアシルグリセロールである。
【0011】
好適には、前記二重容器において、前記トリアシルグリセロールは、中鎖脂肪酸トリグリセリドである。
【0012】
好適には、前記二重容器において、前記中間層は、前記外容器又は前記内容器に対して環境応力破壊を生じさせる材料を含有しない。
【0013】
本発明に係る二重容器の製造方法は、内容物を収容し前記内容物の減少に伴い収縮可能な内容器と、前記内容器を内包する外容器とが剥離可能に積層された二重容器の製造方法であって、前記外容器のプリフォームの内面及び前記内容器のプリフォームの外面の少なくとも一方に、脂肪酸エステルを含有する中間層を形成する層形成工程と、前記外容器のプリフォーム及び前記内容器のプリフォームを前記外容器及び前記内容器に二軸延伸ブロー成形する成形工程と、を有し、前記外容器及び前記内容器は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スクイズ操作の際に発生する音を低減するとともに、再資源化率の低下を抑制することが可能な二重容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る二重容器の縦断面を模式的に示す図である。
【
図2】本実施形態に係る二重容器を製造するための積層プリフォームの縦断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態では、ボトル形状を有する二重容器1又は積層プリフォーム400の中心軸Zに沿った方向を「軸方向」とも称し、中心軸Zを回転軸として周回する方向を「周方向」とも称し、中心軸Zに直交する方向を「径方向」とも称する。また、本実施形態では、二重容器1の口部3から底部6へ向かう軸方向を「下方」とも称し、二重容器1の底部6から口部3へ向かう軸方向を「上方」とも称する。また、本実施形態では、中心軸Zに沿った平面で二重容器1又は積層プリフォーム400を切断した断面を「縦断面」とも称する。
【0018】
[二重容器の構成]
図1は、本実施形態に係る二重容器1の縦断面を模式的に示す図である。
【0019】
二重容器1は、ボトル形状を有する容器である。二重容器1は、
図1に示されるように、二重容器1の一端部であり内容物が注出される口部3と、二重容器1の他端部であり接地面を有する底部6と、径方向外方に広がりながら口部3から下方へ延びる肩部4と、肩部4から下方に延びて底部6に連なる胴部5とを備える。
【0020】
二重容器1は、二重容器1の外郭を構成し内容器20を内包するボトル形状の外容器10と、内容物を収容し内容物の減少に伴って収縮可能なボトル形状の内容器20とを備える。更に、二重容器1は、外容器10と内容器20との間に中間層30を備える。二重容器1は、外容器10と内容器20とが中間層30を介して剥離可能に積層されたボトルである。
【0021】
外容器10及び内容器20は、合成樹脂製の容器であり、ブロー成形によって製造される。好適には、外容器10及び内容器20は、試験管形状のプリフォームを用いた二軸延伸ブロー成形によって製造される。
【0022】
外容器10及び内容器20は、ポリオレフィン系樹脂、エチレン-ビニル系共重合体、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフエニレンオキサイド樹脂、又は、生分解性樹脂を用いて製造される。好適には、外容器10及び内容器20は、ポリオレフィン系樹脂、又は、ポリエステル系樹脂を用いて製造される。より好適には、外容器10及び内容器20は、ポリエステル系樹脂を用いて製造される。このポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及び、これらの共重合ポリエステル等の樹脂が挙げられる。特に好適には、外容器10及び内容器20は、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される。
【0023】
外容器10は、底部6が接地して自立するように形成される。外容器10は、自立した状態で、口部3、肩部4、胴部5及び底部6の形態が保持されるように形成される。外容器10の肩部4及び胴部5は、スクイズ操作により押圧されると内方に撓んで変形し、押圧が解除されると押圧前の原形に復元するように形成される。
【0024】
内容器20は、内容物を収容する収容空間Sを有し、外容器10に沿った形状を有するように形成される。内容器20の肩部4及び胴部5は、内容物の減少に伴って収縮するよう、外容器10よりも薄い肉厚を有するように形成される。
【0025】
外容器10の口部3には、外容器10と内容器20との間に外気を導入するための外気導入孔11が設けられる。外気導入孔11は、空気層Aと連通するように設けられる。空気層Aは、外容器10と内容器20とが剥離することによって形成される空間である。
【0026】
内容器20の口部3は、外容器10の口部3の上端部から上方に突出するように配置されて、外容器10の口部3に固定される。内容器20の口部3には、逆止弁付きのキャップが装着される被装着部21が設けられる。被装着部21は、キャップが打栓式で装着可能となるよう、周方向に延びる突条によって構成される。或いは、被装着部21は、キャップがねじ込み式で装着可能となるよう、螺旋状のねじ山又はねじ溝によって構成されてもよい。
【0027】
中間層30は、外容器10の肩部4及び胴部5と内容器20の肩部4及び胴部5との間に備えられており、外容器10の底部6と内容器20の底部6との間に備えられていない。中間層30は、脂肪酸エステルを含有する。脂肪酸エステルは、スクイズ操作の際に外容器10と内容器20とが擦れ合うことで生じる摩擦を低減することができる。また、脂肪酸エステルは、滑剤としての機能を有する程度の粘性を有することから、二重容器1を製造する際に外容器10と内容器20とが熱圧着されても、スクイズ操作により内容器20を外容器10から容易に剥離させることができる。
【0028】
また、脂肪酸エステルは、アルカリ性水溶液と反応することで、脂肪酸とアルコールとに加水分解される。この加水分解により、脂肪酸エステルを含有する中間層30は、外容器10及び内容器20から確実に除去され得る。従来のPET(Polyethylene terephthalate)ボトルのリサイクル処理における選別工程及び粉砕工程後の洗浄工程では、例えば90℃の1.5重量%水酸化ナトリウム水溶液による15分間の洗浄が行われる。外容器10及び内容器20がポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される場合、二重容器1は、この洗浄工程において中間層30が確実に除去され得る。よって、二重容器1は、従来のPETボトルのリサイクル処理を適用するだけで、簡単に再資源化することができる。
【0029】
二重容器1は、脂肪酸エステルが中間層30を構成する材料全体に対して50重量%以上含有される。また、二重容器1は、その1個当たりに形成される中間層30の重量が10mg以上である。これにより、二重容器1は、外容器10の肩部4及び胴部5と内容器20の肩部4及び胴部5との摩擦を十分に低減することができる。また、二重容器1は、その1個当たりに形成される中間層30の重量が500mg以下である。これにより、二重容器1は、中間層30が口部3の外気導入孔11から漏れ出すことを防止することができる。このように、二重容器1は、脂肪酸エステルが中間層30を構成する材料全体に対して50重量%~100重量%含有されると、好適である。また、二重容器1は、その1個当たりに形成される中間層30の重量が10mg~500mgであると、好適である。
【0030】
中間層30に含有される脂肪酸エステルは、脂肪酸一価アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステルの何れであってもよい。好適には、中間層30に含有される脂肪酸エステルとしては、アルカリ性水溶液による加水分解による分子量の低下率が大きく、安価で入手容易であるという点から、脂肪酸三価アルコールエステルが使用される。また、脂肪酸三価アルコールエステルは、外容器10又は内容器20を形成する樹脂のモノマーとして使用されない。そのため、中間層30に含有される脂肪酸三価アルコールエステルは、外容器10又は内容器20の性能に影響を与えない。さらに、脂肪酸三価アルコールエステルは、人体に対して有害とならない。このような点からも、中間層30に含有される脂肪酸エステルとしては、脂肪酸三価アルコールエステルが好適に使用される。
【0031】
中間層30に含有される脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、炭素数が少ない低鎖脂肪酸(例えば炭素数6以下)、炭素数が中程度の中鎖脂肪酸(例えば炭素数8~12)、炭素数が多い長鎖脂肪酸(例えば炭素数14以上)の何れでもよい。低鎖脂肪酸を用いて生成された脂肪酸エステルは、粘度が低いことから液垂れし易い。また、長鎖脂肪酸を用いて生成された脂肪酸エステルは、粘度が高いことから塗布し難い。これに対し、中鎖脂肪酸を用いて生成された脂肪酸エステルは、塗布し易く液垂れし難い適当な粘度を有する。このような点から、好適には、中間層30に含有される脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、中鎖脂肪酸が使用される。中間層30に含有される脂肪酸エステルを構成する中鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8のカプリル酸、炭素数10のカプリン酸、又は、炭素数12のラウリン酸が使用される。
【0032】
中間層30に含有される脂肪酸一価アルコールエステルとしては、例えば、脂肪酸メチルエステル、脂肪酸ブチルエステル、脂肪酸オクチルエステル、又は、脂肪酸イソプロピルエステルが使用される。中間層30に含有される脂肪酸一価アルコールエステルのうち、好適には、中鎖脂肪酸一価アルコールエステルが使用される。中間層30に含有される中鎖脂肪酸一価アルコールエステルとしては、例えば、カプリル酸メチルエステル、カプリン酸メチルエステル、ラウリン酸メチルエステル、カプリル酸ブチルエステル、カプリン酸ブチルエステル、ラウリン酸ブチルエステル、カプリル酸オクチルエステル、カプリン酸オクチルエステル、ラウリン酸オクチルエステル、カプリル酸イソプロピルエステル、カプリン酸イソプロピルエステル、又は、ラウリン酸イソプロピルエステルが使用される。
【0033】
中間層30に含有される脂肪酸二価アルコールエステルとしては、例えば、エチレングリコール脂肪酸エステル、ジエチレングリコール脂肪酸エステル、トリエチレングリコール脂肪酸エステル、又は、プロピレングリコール脂肪酸エステルが使用される。中間層30に含有される脂肪酸二価アルコールエステルのうち、好適には、中鎖脂肪酸二価アルコールエステルが使用される。中間層30に含有される中鎖脂肪酸二価アルコールエステルとしては、例えば、エチレングリコールモノカプリル酸エステル、エチレングリコールジカプリル酸エステル、エチレングリコールモノカプリン酸エステル、エチレングリコールジカプリン酸エステル、エチレングリコールモノラウリン酸エステル、又は、エチレングリコールジラウリン酸エステルが使用される。また、中間層30に含有される中鎖脂肪酸二価アルコールエステルとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、又は、プロピレングリコールの二価アルコールと中鎖脂肪酸との中鎖脂肪酸二価アルコールエステルが使用される。
【0034】
中間層30に含有される脂肪酸三価アルコールエステルとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、又は、トリメチロールプロパン脂肪酸エステルが使用される。好適には、中間層30に含有される脂肪酸三価アルコールエステルとしては、安価で入手が容易な点から、グリセリン脂肪酸エステルが使用される。中間層30に含有されるグリセリン脂肪酸エステルは、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールの何れであってもよい。トリアシルグリセロールは、加水分解による分子量の低下率が大きい。また、トリアシルグリセロールは、加水分解によって脂肪酸基が1個又は2個離脱した状態になると界面活性剤の構造を有し、洗浄工程での洗浄効果を向上させることができる。また、トリアシルグリセロールは、安価で入手が容易である。このような点から、好適には、中間層30に含有されるグリセリン脂肪酸エステルとしては、トリアシルグリセロールが使用される。
【0035】
中間層30に含有される脂肪酸三価アルコールエステルのうち、好適には、中鎖脂肪酸三価アルコールエステルが使用される。そのため、中間層30に含有されるトリアシルグリセロールのうち、好適には、中鎖脂肪酸トリグリセリド(Medium Chain Triglyceride:MCT)が使用される。中間層30に含有される中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、グリセリントリカプリル酸エステル、グリセリントリカプリン酸エステル、又は、グリセリントリラウリン酸エステルが使用される。また、中間層30に含有される脂肪酸多価アルコールエステルとしては、四価以上のアルコールを用いて生成されるものを使用してもよい。
【0036】
中間層30を構成する材料は、脂肪酸エステルと、その他の材料で構成される。但し、中間層30を構成する材料には、二重容器1の外容器10又は内容器20に対して環境応力破壊(Environmental Stress Cracking:ESC)を生じさせる材料が含有されない。環境応力破壊を生じさせる材料とは、外容器10又は内容器20に応力が加わった際に、外容器10又は内容器20に接触していると、クラック及びクレイズの発生並びに伝搬を引き起こし、外容器10又は内容器20を破壊させる材料をいう。このような環境応力破壊を生じさせる材料としては、例えば、アセトン、nへプタン、四塩化炭素、酢酸エチル、酢酸、アルカリ性水溶液、界面活性剤、四塩化亜鉛水溶液、シンナー類、又は、揮発性油脂が挙げられる。
【0037】
[二重容器の製造方法]
図2は、本実施形態に係る二重容器1を製造するための積層プリフォーム400の縦断面を模式的に示す図である。
【0038】
積層プリフォーム400は、外容器10のプリフォームである外プリフォーム100の中に、内容器20のプリフォームである内プリフォーム200を挿入して重ねた状態としたものである。
図2に示す積層プリフォーム400において、部分Mは、延伸成形されない部分であり、口部3に相当する部分である。また、部分Nは、延伸成形される部分であり、二軸延伸ブロー成形によって二重容器1の肩部4、胴部5及び底部6に成形される部分である。
【0039】
二重容器1は、内プリフォーム200の外面に中間層30を形成する層形成工程と、外プリフォーム100及び内プリフォーム200を外容器10及び内容器20に二軸延伸ブロー成形する成形工程とを有する製造方法によって製造される。
【0040】
層形成工程では、例えば次のような方法で中間層30が形成される。内プリフォーム200における口部3に相当する部分及び底部6に成形される部分の外面が、適当なマスク材でマスキングされる。次に、内プリフォーム200における肩部4及び胴部5に成形される部分の外面に、中間層30を構成する材料からなる塗布剤が付着される。これにより、内プリフォーム200における肩部4及び胴部5に成形される部分の外面は、中間層30によってコーティングされる。その後、内プリフォーム200からマスク材が除去される。中間層30を構成する材料からなる塗布剤を付着させる方法としては、例えばスプレー装置による噴霧、刷毛による塗布、又は、ディッピングが挙げられる。
【0041】
なお、中間層30を構成する材料からなる塗布剤は、内プリフォーム200における肩部4及び胴部5に成形される部分の外面の一面に付着されなくてもよい。例えば、スプレー装置によって中間層30を構成する材料からなる塗布剤を噴霧する場合、内プリフォーム200における肩部4及び胴部5に成形される部分の外面において、中間層30を構成する材料からなる塗布剤の液滴が付着している部分と付着していない部分とが混在していてもよい。この場合、後の成形工程での二軸延伸ブロー成形の際に、内プリフォーム200の外面における塗布剤の付着部分が、外プリフォーム100と内プリフォーム200とに押圧されながら引き伸ばされる。
【0042】
成形工程では、中間層30が形成された内プリフォーム200が、外プリフォーム100に挿入され、外プリフォーム100と内プリフォーム200とが同時に外容器10と内容器20とに二軸延伸ブロー成形される。外プリフォーム100と内プリフォーム200との間には、脂肪酸エステルによる粘性を有する中間層30が備えられている。このため、二重容器1は、二軸延伸ブロー成形によって外容器10と内容器20とが熱圧着されても、スクイズ操作が行われた際、内容器20を外容器10から容易に剥離させることができる。
【0043】
なお、上述の層形成工程では、中間層30は、内プリフォーム200における肩部4及び胴部5に成形される部分の外面に形成されるが、これに代えて、外プリフォーム100における肩部4及び胴部5に成形される部分の内面に形成されてもよい。或いは、中間層30は、内プリフォーム200における肩部4及び胴部5に成形される部分の外面と、外プリフォーム100における肩部4及び胴部5に成形される部分の内面との両方に形成されてもよい。
【0044】
また、上述の成形工程では、外プリフォーム100と内プリフォーム200とが同時に外容器10と内容器20とに二軸延伸ブロー成形されるが、これに代えて、外プリフォーム100が外容器10に二軸延伸ブロー成形された後、外容器10の内部において、内プリフォーム200が内容器20に二軸延伸ブロー成形されてもよい。
【0045】
[作用効果]
以上のように、本実施形態に係る二重容器1は、外容器10と内容器20との間に、脂肪酸エステルを含有する中間層30を備える。このため、本実施形態に係る二重容器1は、外容器10と内容器20との摩擦が低減する。また、本実施形態に係る二重容器1は、中間層30に含有される脂肪酸エステルがアルカリ性水溶液により加水分解されるため、中間層30がリサイクル処理の洗浄工程で確実に除去され得る。よって、本実施形態に係る二重容器1は、スクイズ操作の際に発生する音を低減するとともに、再資源化率の低下を抑制することができる。脂肪酸エステルを含有する中間層30を備えない従来の二重容器では、スクイズ操作の際に80dB以上の音量の音を出すことがある。これに対し、本実施形態に係る二重容器1は、その音量を60dB以下にまで低減させることができる。
【0046】
更に、本実施形態に係る二重容器1は、外容器10及び内容器20がポリエチレンテレフタレート樹脂を用いて製造される。このため、本実施形態に係る二重容器1は、従来のPETボトルのリサイクル処理を適用するだけで、簡単に再資源化することができる。よって、本実施形態に係る二重容器1は、スクイズ操作の際に発生する音を低減するとともに、再資源化率の低下を簡単に抑制することができる。
【0047】
更に、本実施形態に係る二重容器1は、中間層30が、外容器10の肩部4及び胴部5と内容器20の肩部4及び胴部5との間に備えられ、外容器10の底部6と内容器20の底部6との間に備えられない。このため、本実施形態に係る二重容器1は、外容器10の肩部4及び胴部5と、内容器20の肩部4及び胴部5との摩擦が低減される。その一方、本実施形態に係る二重容器1は、外容器10の底部6と内容器20の底部6とが接合される。よって、本実施形態に係る二重容器1は、外容器10の肩部4及び胴部5に対するスクイズ操作の際に発生する音を低減するとともに、再資源化率の低下を抑制することができる。また、本実施形態に係る二重容器1は、内容器20の底部6が外容器10の底部6から剥離して浮き上がることが抑制されるため、内容物の残留量を低減することができる。
【0048】
更に、本実施形態に係る二重容器1は、中間層30に含有される脂肪酸エステルとして、トリアシルグリセロールが使用される。このため、本実施形態に係る二重容器1は、トリアシルグリセロールが、アルカリ性水溶液による加水分解による分子量の低下率が大きく、洗浄効果を高めることができることから、リサイクル処理の洗浄工程において中間層30がより確実に除去される。また、本実施形態に係る二重容器1は、トリアシルグリセロールが、安価で入手が容易である。よって、本実施形態に係る二重容器1は、スクイズ操作の際に発生する音を低減するとともに、再資源化率の低下を更に抑制することができる上、製造コストを抑制することができる。
【0049】
更に、本実施形態に係る二重容器1は、中間層30に含有されるトリアシルグリセロールとして、中鎖脂肪酸トリグリセリドが使用される。このため、本実施形態に係る二重容器1は、中鎖脂肪酸トリグリセリドが塗布し易く液垂れし難いことから、中間層30を安定的に存在させることができる。よって、本実施形態に係る二重容器1は、スクイズ操作の際に発生する音を安定的に低減するとともに、再資源化率の低下を更に抑制することができる上、製造コストを抑制することができる。
【0050】
更に、本実施形態に係る二重容器1は、中間層30が、環境応力破壊を生じさせる材料を含有しない。このため、本実施形態に係る二重容器1は、外容器10又は内容器20が中間層30によって破壊されることを抑制することができる。これにより、本実施形態に係る二重容器1は、外容器10又は内容器20の破壊による摩擦の発生を抑制することができる。また、本実施形態に係る二重容器1は、外容器10又は内容器20の破壊された部分に中間層30が存在することを抑制することができる。その結果、本実施形態に係る二重容器1は、リサイクル処理の洗浄工程において外容器10及び内容器20から中間層30がより確実に除去される。よって、本実施形態に係る二重容器1は、スクイズ操作の際に発生する音を安定的に低減するとともに、再資源化率の低下を更に抑制することができる。
【0051】
本実施形態に係る二重容器1の製造方法は、外プリフォーム100の内面及び内プリフォーム200の外面の少なくとも一方に、脂肪酸エステルを含有する中間層30を形成する層形成工程と、外プリフォーム100及び内プリフォーム200を外容器10及び内容器20に二軸延伸ブロー成形する成形工程とを有する。このため、本実施形態に係る二重容器1の製造方法は、二軸延伸ブロー成形という既存の成形工程の前に層形成工程を追加するだけで、外容器10と内容器20との間に中間層30を備えた二重容器1を簡単に製造することができる。よって、本実施形態に係る二重容器1の製造方法は、スクイズ操作の際に発生する音を低減するとともに、再資源化率の低下を抑制可能な二重容器1を簡単に製造することができる。
【0052】
[その他]
上述の実施形態において、二重容器1は、特許請求の範囲に記載された「二重容器」の一例に該当する。外容器10は、特許請求の範囲に記載された「外容器」の一例に該当する。内容器20は、特許請求の範囲に記載された「内容器」の一例に該当する。口部3は、特許請求の範囲に記載された「口部」の一例に該当する。肩部4は、特許請求の範囲に記載された「肩部」の一例に該当する。胴部5は、特許請求の範囲に記載された「胴部」の一例に該当する。底部6は、特許請求の範囲に記載された「底部」の一例に該当する。中間層30は、特許請求の範囲に記載された「中間層」の一例に該当する。外プリフォーム100は、特許請求の範囲に記載された「外容器のプリフォーム」の一例に該当する。内プリフォーム200は、特許請求の範囲に記載された「内容器のプリフォーム」の一例に該当する。
【0053】
上述の実施形態は、変形例を含めて各実施形態同士で互いの技術を適用することができる。上述の実施形態は、本発明の内容を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない程度に変更を加えることができる。
【0054】
上述の実施形態及び特許請求の範囲で使用される用語は、限定的でない用語として解釈されるべきである。例えば、「含む」という用語は、「含むものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「含有する」という用語は、「含有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「備える」という用語は、「備えるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0055】
1 二重容器
3 口部
4 肩部
5 胴部
6 底部
10 外容器
11 外気導入孔
20 内容器
21 被装着部
30 中間層
100 外プリフォーム
200 内プリフォーム
400 積層プリフォーム
A 空気層
S 収容空間
Z 中心軸