(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】配船計画作成装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20221213BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20221213BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
G06Q10/08
G06Q50/30
B65G61/00 542
(21)【出願番号】P 2018133875
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】川上 孝介
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 智哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬和
(72)【発明者】
【氏名】河村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】福田 美和
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-162757(JP,A)
【文献】特開2013-129510(JP,A)
【文献】特表2011-504259(JP,A)
【文献】特開2012-017172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を積港から揚港に船舶で輸送する配船計画を作成する配船計画作成装置であって、
スポット契約又は数量運送契約で契約した船舶である未手当船を対象として、立案対象期間における前記対象物の引き取り量に基づいて、積港に到着するタイミングを平準化した積港配船計画を作成する積港配船計画作成手段と、
前記積港配船計画作成手段で作成した積港配船計画に基づいて、
揚港での制約
を制約条件として、輸送費用を最小化する未手当船ベースの配船計画を作成する未手当船の配船計画作成手段と、
前記未手当船の配船計画作成手段で作成した配船計画に基づいて、連続航海用船契約で契約した船舶である連航船が積港に到着する日時の情報を用いて連航船に置き換え可能な未手当船を抽出し、当該未手当船に連航船を置き換えることにより、配船計画を作成する連航船置き換え手段とを備えたことを特徴とする配船計画作成装置。
【請求項2】
前記連航船置き換え手段で作成した配船計画に対して調整を行う調整手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の配船計画作成装置。
【請求項3】
前記積港配船計画作成手段は、標準船型を与えて均等引き取り均等タイミングの積港配船計画を作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の配船計画作成装置。
【請求項4】
前記未手当船の配船計画作成手段は、積港配船を固定した状態で配船計画を作成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配船計画作成装置。
【請求項5】
前記連航船置き換え手段は、前記未手当船の配船計画作成手段で作成した配船計画と、連航船動静情報とに基づいて、連航船の積港ETAと未手当船の積港ETAとの差、及び、連航船の最大積載量に基づいて、連航船に置き換え可能な未手当船を抽出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配船計画作成装置。
【請求項6】
前記積港配船計画作成手段で使用する前提条件及び作成した積港配船計画、前記未手当船の配船計画作成手段で使用する前提条件及び作成した配船計画、並びに前記連航船置き換え手段で使用する前提条件及び作成した配船計画のうちの少なくともいずれかに対して人手による修正を可能とする構成にしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の配船計画作成装置。
【請求項7】
対象物を積港から揚港に船舶で輸送する配船計画を作成する
、コンピュータが実行する配船計画作成方法であって、
スポット契約又は数量運送契約で契約した船舶である未手当船を対象として、立案対象期間における前記対象物の引き取り量に基づいて、積港に到着するタイミングを平準化した積港配船計画を作成する手順と、
前記積港配船計画に基づいて、揚港での制約を制約条件として、輸送費用を最小化する未手当船ベースの配船計画を作成する手順と、
前記未手当船ベースの配船計画に基づいて、連続航海用船契約で契約した船舶である連航船が積港に到着する日時の情報を用いて連航船に置き換え可能な未手当船を抽出し、当該未手当船に連航船を置き換えることにより、配船計画を作成する手順とを有することを特徴とする配船計画作成方法。
【請求項8】
対象物を積港から揚港に船舶で輸送する配船計画を作成するためのプログラムであって、
スポット契約又は数量運送契約で契約した船舶である未手当船を対象として、立案対象期間における前記対象物の引き取り量に基づいて、積港に到着するタイミングを平準化した積港配船計画を作成する積港配船計画作成手段と、
前記積港配船計画作成手段で作成した積港配船計画に基づいて、
揚港での制約
を制約条件として、輸送費用を最小化する未手当船ベースの配船計画を作成する未手当船の配船計画作成手段と、
前記未手当船の配船計画作成手段で作成した配船計画に基づいて、連続航海用船契約で契約した船舶である連航船が積港に到着する日時の情報を用いて連航船に置き換え可能な未手当船を抽出し、当該未手当船に連航船を置き換えることにより、配船計画を作成する連航船置き換え手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を積港から揚港に船舶で輸送する配船計画を作成するのに好適な配船計画作成装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼をはじめとする多くの製造業では、生産に必要な原材料を、世界各地の積港から国内の生産拠点等の揚港に船舶で輸送する。船舶による輸送計画となる配船計画では、積港及び揚港において船舶が港に到着するタイミングを平準化することが要求される。例えば、石炭や鉱石等の原材料を輸送する鉄鋼業では、特定の積港において、月内、期中で引き取り可能な原料の総量が決まっている。このため、積港において船舶が港に到着するタイミングが特定の時期に集中すると、積港での原材料が不足し、荷積みができない状況が発生する。また、揚港において船舶が港に到着するタイミングが特定の時期に集中すると、複数船舶が同時に荷揚げできず、船舶が洋上で待たなければならない状況(洋上滞船)が発生する。
【0003】
船舶が港に到着するタイミングを平準化するためには、船舶の傭船契約形態に応じて、船舶を適切に傭船することが重要である。傭船契約形態には、主に連続航海用船契約、スポット契約、数量運送契約(COA:Contract of Affreightment)が存在する。連続航海用船契約では、使用船舶を特定するが、スポット契約やCOAでは使用船舶を特定しない。連続航海用船契約で契約した船舶(本願においては連航船と呼ぶ)は、前航海の状況に応じて次航海のタイミングが束縛されるが、スポット契約、COAで契約した船舶(本願においては未手当船と呼ぶ)は、配船するタイミングに自由度がある。したがって、連航船及び未手当船を上手く組み合わせて配船することが、積港及び揚港において船舶が港に到着するタイミングを平準化した配船計画を作成するために重要といえる。
【0004】
特許文献1には、複数銘柄の原材料を複数の積港から複数の揚港に輸送する配船計画を作成するに際して、数理計画法により最適化問題によるマクロ最適化と、船舶運航状況の推移のシミュレーションとを用いることで、連続航海船、不定期船、スポット船の傭船も含めて輸送費用をミニマム化する配船計画作成手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の配船計画作成手法では、連航船に相当する連続航海船の動静を決めた後に、事前に配置された未手当船に相当するスポット船を傭船するか否かを決定している。このため、事前に配置した未手当船の動静によっては、積港及び揚港において船舶が港に到着するタイミングを平準化できなくなり、積港で荷積みできなかったり、揚港で洋上滞船が発生したりする事態を招くおそれがある。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、積港及び揚港において船舶が港に到着するタイミングを平準化した配船計画を作成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1] 対象物を積港から揚港に船舶で輸送する配船計画を作成する配船計画作成装置であって、
スポット契約又は数量運送契約で契約した船舶である未手当船を対象として、立案対象期間における前記対象物の引き取り量に基づいて、積港に到着するタイミングを平準化した積港配船計画を作成する積港配船計画作成手段と、
前記積港配船計画作成手段で作成した積港配船計画に基づいて、揚港での制約を制約条件として、輸送費用を最小化する未手当船ベースの配船計画を作成する未手当船の配船計画作成手段と、
前記未手当船の配船計画作成手段で作成した配船計画に基づいて、連続航海用船契約で契約した船舶である連航船が積港に到着する日時の情報を用いて連航船に置き換え可能な未手当船を抽出し、当該未手当船に連航船を置き換えることにより、配船計画を作成する連航船置き換え手段とを備えたことを特徴とする配船計画作成装置。
[2] 前記連航船置き換え手段で作成した配船計画に対して調整を行う調整手段を更に備えたことを特徴とする[1]に記載の配船計画作成装置。
[3] 前記積港配船計画作成手段は、標準船型を与えて均等引き取り均等タイミングの積港配船計画を作成することを特徴とする[1]又は[2]に記載の配船計画作成装置。
[4] 前記未手当船の配船計画作成手段は、積港配船を固定した状態で配船計画を作成することを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の配船計画作成装置。
[5] 前記連航船置き換え手段は、前記未手当船の配船計画作成手段で作成した配船計画と、連航船動静情報とに基づいて、連航船の積港ETAと未手当船の積港ETAとの差、及び、連航船の最大積載量に基づいて、連航船に置き換え可能な未手当船を抽出することを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の配船計画作成装置。
[6] 前記積港配船計画作成手段で使用する前提条件及び作成した積港配船計画、前記未手当船の配船計画作成手段で使用する前提条件及び作成した配船計画、並びに前記連航船置き換え手段で使用する前提条件及び作成した配船計画のうちの少なくともいずれかに対して人手による修正を可能とする構成にしたことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の配船計画作成装置。
[7] 対象物を積港から揚港に船舶で輸送する配船計画を作成する、コンピュータが実行する配船計画作成方法であって、
スポット契約又は数量運送契約で契約した船舶である未手当船を対象として、立案対象期間における前記対象物の引き取り量に基づいて、積港に到着するタイミングを平準化した積港配船計画を作成する手順と、
前記積港配船計画に基づいて、揚港での制約を制約条件として、輸送費用を最小化する未手当船ベースの配船計画を作成する手順と、
前記未手当船ベースの配船計画に基づいて、連続航海用船契約で契約した船舶である連航船が積港に到着する日時の情報を用いて連航船に置き換え可能な未手当船を抽出し、当該未手当船に連航船を置き換えることにより、配船計画を作成する手順とを有することを特徴とする配船計画作成方法。
[8] 対象物を積港から揚港に船舶で輸送する配船計画を作成するためのプログラムであって、
スポット契約又は数量運送契約で契約した船舶である未手当船を対象として、立案対象期間における前記対象物の引き取り量に基づいて、積港に到着するタイミングを平準化した積港配船計画を作成する積港配船計画作成手段と、
前記積港配船計画作成手段で作成した積港配船計画に基づいて、揚港での制約を制約条件として、輸送費用を最小化する未手当船ベースの配船計画を作成する未手当船の配船計画作成手段と、
前記未手当船の配船計画作成手段で作成した配船計画に基づいて、連続航海用船契約で契約した船舶である連航船が積港に到着する日時の情報を用いて連航船に置き換え可能な未手当船を抽出し、当該未手当船に連航船を置き換えることにより、配船計画を作成する連航船置き換え手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、平準化を志向した未手当船の配船計画に対して、なるべく動静を変えないように連航船を置き換えることにより、積港及び揚港において船舶が港に到着するタイミングを平準化した配船計画を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る配船計画作成装置を含むシステムの構成を示す図である。
【
図2】積港配船計画を作成した結果を示す図である。
【
図3】積港配船計画を作成した結果を示す図である。
【
図4】未手当船ベースの配船計画を作成した結果を示す図である。
【
図5】未手当船ベースの積港配船計画を作成した結果を示す図である。
【
図6】未手当船ベースの配船計画から得られる在庫推移を示す図である。
【
図7】連航船置き換え部による連航船の置き換え処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】連航船を置き換えて配船計画を作成した結果を示す図である。
【
図9】配船計画から得られる在庫推移を示す図である。
【
図10】本発明を適用した実施形態の配船計画作成手法により配船計画を作成した結果を示す図である。
【
図11】従来の配船計画作成手法により配船計画を作成した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態では、鉄鋼業を例として、世界中に点在する山元から製鉄所に、鉱石や石炭等の原材料を船舶で輸送する場合の配船計画の作成を説明する。
図1は、本実施形態に係る配船計画作成装置100を含むシステムの構成を示す図である。
配船計画作成装置100は、複数種(複数銘柄)の原材料を複数の積港から複数の揚港に船舶で輸送する配船計画を作成する。
データベース200は、配船計画作成装置100で配船計画を作成するのに必要な情報を格納したり、配船計画作成装置100で作成した配船計画等の情報を格納したりする。
上位コンピュータ300は、ビジネスコンピュータ等と称され、データベース200に格納された情報を参照したり、データベース200に情報を格納、更新したりする。
【0012】
配船計画作成装置100は、積港配船計画作成部101、未手当船の配船計画作成部102、連航船置き換え部103、調整部104、修正部105を備える。配船計画作成装置100は、以下に詳述するが、データベース200から配船計画を作成するのに必要な情報を取り込み、積港配船計画作成部101での処理、未手当船の配船計画作成部102での処理、連航船置き換え部103での処理、調整部104での処理の4段階に分けて、配船計画を作成する。また、修正部105を介して人手によって各段階で使用する前提条件及び作成した配船計画の修正が可能となっており、オペレータの意図を反映させることができる。
【0013】
以下、配船計画作成装置100による配船計画の作成方法を詳細に説明する。本実施形態では、配船計画の立案対象期間を2017年4月1日~2017年7月1日の3ヶ月とした例で説明する。
積港配船計画作成部101は、未手当船を対象として、立案対象期間における原材料の引き取り量に基づいて、積港に到着するタイミングを平準化した積港配船計画を作成する。具体的には、未手当船が積港に到着するタイミングと、未手当船が積載する原材料の種類及び荷積み量を決定する。
【0014】
積港配船計画作成部101は、データベース200から、引き取り量情報、標準船型情報を取り込む。
表1は、引き取り量情報の例であり、積港別、銘柄別の立案対象期間における引き取り量[トン]を表す。例えば積港Aの銘柄1についていえば、立案対象期間において920,000[トン]引き取るような積港配船計画を作成する必要がある。
【0015】
【0016】
表2は、標準船型情報の例であり、積港別に未手当船名、標準船型[千トン]、引き取り開始日を表す。未手当船名は、積港に配船される標準的な船舶の名前を表し、未手当船名毎に船舶のスペックが与えられる。標準船型は、積港に到着する船舶の標準的な船型を表す。この標準船型は、過去実績から、その積港での荷積み量の平均値等を与えればよい。引き取り開始日は、未手当船を積港に配船開始する日時を表す。
【0017】
【0018】
積港配船計画作成部101は、船舶が積港に到着するタイミングを平準化し、かつ、期中の引き取り量が、引き取り量情報に設定された量に近づくように、未手当船を積港に配船するタイミングを決定する。例えば積港Aでは、銘柄1の合計引き取り量が920,000[トン]、標準船型が100,000[トン]で与えられており、9.2隻の船舶が必要となる。立案対象期間は3ヶ月で92日になるので、引き取り開始日である4月1日から、10日おきに等間隔に配船することによって平準化した積港配船計画を作成することができる。このように標準船型を与えて、均等引き取り均等タイミングの積港配船計画を作成する。
【0019】
図2、
図3に、積港Aに対して積港配船計画を作成した結果を示す。
図2は、日付と荷積み量との関係を表す。
図3は、傭船コード、航海No、積揚区分、港名、ETA(港への到着日時)、ETB(バースへの到着日時)、ETD(港からの出港日時)、積揚量[トン]を表す。未手当船は、同じ船舶であったとしても未手当船としては異なるものとしてカウントされ、航海Noは「1」になる。
図2、
図3に示すように、未手当船が積港に到着するタイミングを平準化した積港配船計画が作成される。なお、配船対象の船が港に到着した時に、バースに他の船が停泊していて使用できない場合には、洋上で待つ必要があるため、ETAとETBに差が発生する。
図3に示す例では、他に船を想定していないので、ETAとETBがすべて同一である例が示されている。
【0020】
積港配船計画作成部101で作成した積港配船計画に対して、修正部105で、その前提条件や結果を修正してもよい。
なお、積港配船計画の作成方法は、本実施形態で説明したものに限られるものではない。例えば銘柄や与えたい標準船型が複数存在する場合は、銘柄の積み方や標準船型のパターンを予め定義し、パターンに基づいて、均等配船となるように積港配船計画を作成してもよい。表3は、銘柄の積み方(銘柄の組み合わせ及び各銘柄の荷積み量[トン])にパターンを与える例を表す。表3に示すように荷積み量のパターンを複数指定した後に、特定の積港で荷積みされる銘柄の総量が、契約数量と一致するように、各パターンの使用回数を決定すればよい。
【0021】
【0022】
未手当船の配船計画作成部102は、積港配船計画作成部101で作成した積港配船計画に基づいて、立案対象期間において、輸送費用の最小化及び揚港での制約を遵守する、未手当船ベースの配船計画を作成する。本実施形態では、揚港での制約として、揚港での在庫量を一定量以上に保つ制約を遵守する。
【0023】
未手当船の配船計画作成部102は、データベース200から、原材料の使用予定量情報、原材料の在庫量情報、船舶の輸送費用情報等を取り込む。
表4は、原材料の使用予定量情報の例であり、日別、揚港別、銘柄別に使用量[トン]を表す。
【0024】
【0025】
表5は、原材料の在庫量情報の例であり、揚港別、銘柄別に立案対象期間の前日の在庫量[トン]を表す。本実施形態では、立案対象期間の前日である2017年3月31日の在庫量が与えられる。
【0026】
【0027】
表6は、船舶の輸送費用情報の例であり、船舶と寄港ルートに応じた輸送費用を表す。
【0028】
【0029】
未手当船の配船計画作成部102は、具体的には、未手当船に対する揚港、荷揚げ量、寄港順、入出港タイミングを決定して、揚港での在庫制約を守り、輸送費用を最小化する配船計画を作成する。輸送費用の最小化は、表6に示す船舶の輸送費用情報を用いて、最も輸送費用が安くなるルートの組み合わせを選択する。例えば表6に示すように積港Aを出た船舶の中で輸送費用[ドル/トン]が比較的安くなる航海ルートは、揚港X又は揚港Yに直接向かうルートである。一航海で二港以上寄港すると、輸送費用が高くなるので、できる限り揚港に寄港する回数を減らす配船計画を作成することが望ましい。配船計画の作成には、例えば特許文献1に記載の手法を用いることができる。この場合に、特許文献1では積港、揚港同時に最適化しているが、積港配船を固定した状態で最適化すればよい。具体的には、積港寄港先及び荷揚げ量を固定して、揚港寄港先及び荷揚げ量を決定変数とし、積揚量製鉄所別の在庫下限制約、船舶や港湾の運行制約を制約条件とし、フレート、滞船料の最小化を目的関数とした混合整数計画問題を構築し、一般的なソルバー等を用いて最適化すればよい。積港配船を固定化することで、配船計画作成時のパターン列挙数が減少するので、計算時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0030】
図4、
図5に、積港Aに対して配船計画を作成した結果を示す。
図4は、各未手当船の動静を表す。
図5は、傭船コード、航海No、積揚区分、港名、ETA、ETB、ETD、積揚量[トン]を表す。
図4、
図5に示すように、与えられた積港配船計画に基づいて、未手当船ベースの配船計画が作成される。なお、
図4、
図5では揚港Xのみが未手当船の寄港先として選ばれているが、これは揚港Y等他の港へ向かうルートが選択されなかった一例である。目的関数や、制約条件の設定によっては揚港X以外の港が寄港先として選ばれるパターンも存在する。
また、
図6に、
図5に示す配船計画から得られる在庫推移を示す。
図6に示すように、在庫切れが起こらない配船計画が得られていることがわかる。
【0031】
未手当船の配船計画作成部102で作成した配船計画に対して、修正部105で、その前提条件や結果を修正してもよい。また、未手当船の配船計画作成部102で作成した配船計画に基づいて、積港配船計画作成部101で作成した積港配船計画の前提条件や結果を修正し、再度積港配船計画から、未手当船ベースの配船計画を作成し直してもよい。
【0032】
連航船置き換え部103は、未手当船の配船計画作成部102で作成した配船計画に基づいて、連航船が積港に到着する日時の情報を用いて連航船に置き換え可能な未手当船を抽出し、当該未手当船に連航船を置き換えることにより、配船計画を作成する。
図7は、連航船置き換え部103による連航船の置き換え処理の例を示すフローチャートである。
ステップS301で、連航船置き換え部103は、未手当船の配船計画作成部102で作成した配船計画を読み込む。
ステップS302で、連航船置き換え部103は、データベース200から、連航船動静情報を読み込む。
表7は、連航船動静情報の例であり、既に立案されている輸送計画における連航船が最後に立ち寄る揚港(最終揚港)と、その揚港ETD、最大積載量[トン]を表す。
【0033】
【0034】
ステップS303で、連航船置き換え部103は、未手当船の配船計画作成部102で作成した配船計画に基づいて、連航船に置き換え可能な未手当船を抽出し、当該未手当船に連航船を置き換える。
この場合に、連航船の積港ETAと未手当船の積港ETAとの差、及び、連航船の最大積載量に基づいて、連航船に置き換え可能な未手当船を抽出する。
具体的には、次の(1)、(2)、(3)の手順を踏む。
(1)連航船が未手当船の積港に到着する日時(連航船の積港ETA)を計算する。
(2)連航船の積港ETAが、未手当船の積港ETA±5日に収まっているか否かを判定する
(3)連航船の最大積載量が、未手当船の荷積み量±50,000[トン]以内に収まっているか否かを判定する。
これら(2)及び(3)の条件が成立する連航船及び未手当船の組み合わせを、置き換え可能な組み合わせとして抽出する。
そして、置き換え可能な連航船及び未手当船の組み合わせに対して、混合整数計画法等を用いて、連航船の積港ETAと未手当船の積港ETAとの差の絶対値が全体として最も小さくなるような組み合わせを求める。
なお、上記手順(2)において、判定の基準となる積港ETAの差は±5日でなくともよい。船別に日にちを与えてもよいし、±5日に収まる船が存在せず実行不可能になる場合は、条件を緩和してもよい。また、上記手順(3)において、未手当船の荷積み量の差は±50000でなくてもよい。例えば、船ごとに置換可能な荷積み量の範囲を設定してもよいし、船型別に置換可能な荷積み量の範囲を設定してもよい。
【0035】
ステップS304で、連航船置き換え部103は、連航船の動静を確定する。具体的には、ステップS303において連航船に置き換えられた未手当船の配船情報を消去し、消去した未手当船の積港に連航船を配船する。換言すれば、未手当船の配船計画作成部102で作成した配船計画において、連航船に置き換え可能な未手当船を連航船に置き換える。
ステップS305で、連航船置き換え部103は、立案対象期間の連航船がすべて未手当船に置き換えられたか否かを判定する。すべての連航船が置き換えられた場合(ステップS305:Yes)、本フローを終了し、すべての連航船が置き換えられていない場合(ステップS305:No)、ステップS303に戻って、再度連航船及び未手当船の置き換えを行う。
【0036】
図8に、
図5に示す配船計画に対して、連航船を置き換えて配船計画を作成した結果を示す。
図8は、傭船コード、航海No、積揚区分、港名、ETA、ETB、ETD、積揚量[トン]を表す。このように連航船の動静に近い未手当船を連航船に置き換えることで、連航船を含む配船計画を作成することができる。
また、
図9に、
図8に示す配船計画から得られる在庫推移を示す。
図9に示すように、在庫切れが起こらない配船計画が得られていることがわかる。
【0037】
連航船置き換え部103で作成した配船計画に対して、修正部105で、その前提条件や結果を修正してもよい。
【0038】
調整部104は、連航船置き換え部103で作成した配船計画に対して調整を行う。例えば連航船置き換え部103で作成した配船計画に対して、連航船、未手当船の積揚量や、寄港先の最終調整を行い、実行可能な配船計画を作成する。この調整には、例えば特許文献1に記載の手法を用いることができる。この場合に、未手当船の配船計画作成部102で配船計画を作成するときと同様に積港配船を固定してもよいし、寄港先を固定して荷揚げ量を調整してもよい。積港配船を固定化することで、配船計画作成時のパターン列挙数が減少するので、計算時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0039】
調整部104で調整した配船計画に対して、修正部105で、その前提条件や結果を修正してもよい。
【0040】
図10は、本発明を適用した実施形態の配船計画作成手法により配船計画を作成した結果を示す図であり、船舶の動静を表す。また、
図11は、特許文献1に記載された従来の配船計画作成手法により配船計画を作成した結果を示す図であり、船舶の動静を表す。
図10、
図11において横軸は日時であり、実線が連航船の動静を示し、点線が未手当船の動静を示す。
【0041】
従来の配船計画作成手法では、積港に等間隔に未手当船を配置し、連航船の動静を決めた後で、未手当船を採用するか否かを決定する。このため、もし等間隔に配置する未手当船の数が不十分な場合は、
図11に示すように、積港及び揚港で平準化できず、揚港、積港に到着するタイミングの重なりが発生して、滞船時間の悪化を招くおそれがある。一方で、従来の配船計画作成手法で、安定的な平準化を実現するためには、相当数の未手当船を配置した上で、最適化問題を解かなければならない。これは、配船計画問題の組み合せ数の増大に繋がり、実用的な時間内に最適化計算が終わらない事態を招くおそれがある。
【0042】
それに対して、本発明を適用した配船計画作成手法では、未手当船が積港に到着するタイミングを平準化した後に、未手当船の配船計画を作成して、その動静に近い連航船に置き換えるので、積港及び揚港ともに平準化した配船計画を作成することができる。また、列挙すべき未手当船の数は、契約数量を標準船型で割った数が上限となるので、最適化問題で解くべき配船ルートの組み合わせ数を必要最低限に抑えることができる。
以上述べたように、積港及び揚港において船舶が港に到着するタイミングを平準化した配船計画を作成することができる。これにより、積港で荷積みできなかったり、揚港で洋上滞船が発生したりする事態が発生しないようにすることができる。
【0043】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本実施形態では、鉄鋼業における鉱石や石炭等の原材料を輸送する例を説明したが、本発明は、対象物を積港から揚港に船舶で輸送する配船計画を作成するのに広く適用することができる。
本発明を適用した配船計画作成装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により実現される。なお、
図1では配船計画作成装置100を一台の装置のように図示したが、例えば複数台の装置により構成される形態でもかまわない。
また、本発明は、本発明の配船計画作成機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0044】
100:配船計画作成装置
101:積港配船計画作成部
102:未手当船の配船計画作成部
103:連航船置き換え部
104:調整部
105:修正部