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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】物品搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 54/02 20060101AFI20221213BHJP
   B65G 47/46 20060101ALI20221213BHJP
   B65G 23/23 20060101ALI20221213BHJP
   B65G 47/52 20060101ALI20221213BHJP
   B65G 47/64 20060101ALI20221213BHJP
   B65G 47/38 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B65G54/02
B65G47/46 H
B65G23/23
B65G47/52 101A
B65G47/64
B65G47/38
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018137308
(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公開番号】P2020015560
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】林 政貴
(72)【発明者】
【氏名】角口 謙治
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-078620(JP,U)
【文献】特開2001-225943(JP,A)
【文献】特開平09-252504(JP,A)
【文献】特開平02-295818(JP,A)
【文献】特開平03-218249(JP,A)
【文献】特開昭63-176213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/00-54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行路に沿って走行する台車と、
前記走行路を画定する一対の走行レールを有する地上側設備と、を備え、
前記台車は、
前記走行路における所定位置に配置された移載スペースで物品を移載する移載機構と、
前記移載機構の下方で走行方向に延設された棒状の部材であり、磁気作用により動作して前記移載機構を駆動する第一可動子と、
前記第一可動子を支持し、当該第一可動子から前記移載機構に駆動力を伝達する駆動伝達機構であって、その一部が前記一対の走行レールの間の空間に配置された前記駆動伝達機構と、を備え、
前記地上側設備は、前記移載スペースに位置する前記台車の前記第一可動子に対して磁気作用を付与して当該第一可動子を動作させるため、前記移載スペースに対応する位置に設けられた第一固定子を備え、
前記第一固定子は、前記移載スペースに位置した前記台車の前記駆動伝達機構が貫通される開口部であって、前記第一可動子を前記第一固定子内に配置させるための開口部を有し、
前記開口部は、前記第一固定子を上面視した際に当該開口部から前記第一固定子の内部が見えない位置に配置されている
物品搬送装置。
【請求項2】
前記第一固定子は、前記走行路に沿って離散的に複数設けられている
請求項1に記載の物品搬送装置。
【請求項3】
前記台車は複数台設けられており、
複数台のそれぞれの前記台車は、独立して走行自在である
請求項1または2に記載の物品搬送装置。
【請求項4】
前記地上側設備は、前記走行路に沿って配置された第二固定子を備え、
前記台車は、前記第二固定子からの磁気作用により動作して前記台車を前記走行路に沿って走行させる第二可動子を備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の物品搬送装置。
【請求項5】
前記地上側設備は、前記走行路を前記台車が走行する際に、前記第一可動子が移動する移動経路のうち、少なくとも前記第一固定子が設けられていない領域を覆う遮蔽板を備える
請求項1~4のいずれか一項に記載の物品搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上一次リニアモータを利用して物品の搬送を行う物品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移載コンベアを有した搬送台車が、リニアモータにより発生した推力で走行路上を走行する物品搬送装置が知られている(例えば特許文献1参照)。搬送台車には、移載コンベアを駆動するための可動子が搭載されているとともに、走行路における所定位置には、搬送台の可動子に対して磁気作用を付与する固定子が設けられている。つまり、搬送台車が走行路における所定位置に停止又は減速して近づくと、搬送台車側の可動子と、走行路側の固定子とがモータを構成することになり、当該モータの磁気作用によって移載コンベアが駆動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平7-21452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータの固定子と可動子との間に異物が侵入してしまうと、当該異物によって搬送台車の走行が阻害されてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、モータに対する異物の混入を抑制することができる物品搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る物品搬送装置は、所定の走行路に沿って走行する台車と、走行路を画定する一対の走行レールを有する地上側設備と、を備え、台車は、走行路における所定位置に配置された移載スペースで物品を移載する移載機構と、移載機構の下方で走行方向に延設された棒状の部材であり、磁気作用により動作して移載機構を駆動する第一可動子と、第一可動子を支持し、当該第一可動子から前記移載機構に駆動力を伝達する駆動伝達機構であって、一対の走行レールの間の空間を貫通する駆動伝達機構と、を備え、地上側設備は、移載スペースに位置する台車の第一可動子に対して磁気作用を付与して当該第一可動子を動作させるため、移載スペースに対応する位置に設けられた第一固定子を備え、第一固定子は、移載スペースに位置した台車の駆動伝達機構が貫通される開口部であって、第一可動子を第一固定子内に配置させるための開口部を有し、開口部は、第一固定子を上面視した際に当該開口部から第一固定子の内部が見えない位置に配置されている。
【0007】
これによれば、第一固定子の開口部が、第一固定子を上面視した際に当該開口部から第一固定子の内部が見えない位置に配置されているので、第一固定子の開口部に対する上方からの異物侵入を遮ることができる。つまり、第一固定子の上方に台車が存在しておらず、第一固定子が露出していたとしても、第一固定子自体で上方からの異物の侵入を遮ることができる。したがって、第一固定子及び第一可動子からなるモータに対する異物の侵入を抑制することができる。
【0008】
また、第一固定子は、走行路に沿って離散的に複数設けられている。
【0009】
これによれば、複数の第一固定子が走行路に沿って離散的に設けられている場合においても、各第一固定子の開口部が上述した位置に配置されている。つまり、各第一固定子自体で上方からの異物の侵入を遮ることができる。したがって、各第一固定子及び第一可動子からなるモータに対する異物の侵入を抑制することができる。
【0010】
また、台車は複数台設けられており、複数台のそれぞれの台車は、独立して走行自在である。
【0011】
これによれば、複数台のそれぞれの台車が走行路上を独立して走行自在であるので、複数の連結された台車によって走行路の全体が覆われている場合と比較しても、空き台車の発生を抑制することができる。
【0012】
また、複数台のそれぞれの台車が走行路上を独立して走行自在であるので、各台車の前後で間隔が空く場合が随時発生する。このため、第一固定子の上方に台車が存在しない状態も多く発生することになるが、上述したように第一固定子自体で上方からの異物の侵入を遮っているので、この場合においても第一固定子及び第一可動子からなるモータに対する異物の侵入を抑制することができる。
【0013】
また、地上側設備は、走行路に沿って配置された第二固定子を備え、台車は、第二固定子からの磁気作用により動作して台車を走行路に沿って走行させる第二可動子を備える。
【0014】
これによれば、走行路に沿って配置された第二固定子と、第二固定子からの磁気作用により動作して台車を走行路に沿って走行させる第二可動子とを備えた物品搬送装置であっても、第一固定子及び第一可動子からなるモータに対する異物の侵入を抑制することができる。
【0015】
また、地上側設備は、走行路を台車が走行する際に、第一可動子が移動する移動経路のうち、少なくとも第一固定子が設けられていない領域を覆う遮蔽板を備える。
【0016】
これによれば、第一可動子が移動する移動経路であって、少なくとも第一固定子が設けられていない領域を遮蔽板が覆っているので、当該領域を移動中の第一可動子は遮蔽板によって覆われる。つまり、移動中の第一可動子に対する異物の接近が遮蔽板で妨げられる。これにより、第一固定子及び第一可動子からなるモータに対する異物の侵入をより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の物品搬送装置は、モータに対する異物の混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施の形態に係る物品搬送装置の構成を説明するための斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る物品搬送装置を搬送台車の車幅方向に切断した断面図である。
図3図3は、実施の形態に係る地上側設備の概略構成を模式的に示す平面図である。
図4図4は、実施の形態に係る物品搬送装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図5図5は、変形例1に係る地上側設備の概略構成を模式的に示す平面図である。
図6図6は、変形例2に係る物品搬送装置を搬送台車の車幅方向に切断した断面図である。
図7図7は、変形例3に係る物品搬送装置を搬送台車の車幅方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態の物品搬送装置ついて、図面を参照しながら説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0020】
また、以下で説明する実施の形態は、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0021】
[構成]
まず、実施の形態に係る物品搬送装置100の概要を説明する。図1は、実施の形態に係る物品搬送装置の構成を説明するための斜視図である。図2は、実施の形態に係る物品搬送装置を搬送台車の車幅方向に切断した断面図である。
【0022】
物品搬送装置100は、図1及び図2に示すように、所定の走行路Rに沿って走行する複数台の台車200と、走行路Rを画定する一対の走行レール310を有する地上側設備300とを備えている。
【0023】
複数台の台車200のそれぞれは、所定の走行路R上に配置された第二固定子330と、当該台車200が有する第二可動子260により構成される地上一次リニアモータシステムによって、独立して停止または加減速可能に走行する。
【0024】
台車200は、一対の走行レール310上を走行することで、走行路Rに沿って走行する搬送台車である。台車200は、台車本体220と、移載機構230と、駆動伝達機構240と、第一可動子250と、第二可動子260と、被検知部270(図4参照)とを備えている。
【0025】
台車本体220には、一対の走行レール310上を走行するための複数の車輪221が設けられている。台車本体220には、移載機構230と、駆動伝達機構240と、第一可動子250と、第二可動子260と、被検知部270が設置されている。
【0026】
移載機構230は、後述するモータ400からの駆動力を受けて、走行路Rと交差する交差方向(Y軸方向)に物品を移載する。なお、本実施の形態では、移載機構230は、Y軸方向に物品を移載するが、Y軸方向に限らずに、走行路Rに交差する方向であれば、走行路Rに厳密に直交していなくてもよい。例えば、移載機構230による移載方向は、走行路Rに対して45度で交差していてもよい。
【0027】
移載機構230は、例えば移載用のベルトコンベアであり、台車本体220の上部に配置されている。移載機構230は、無端ベルト231と、無端ベルト231が巻回された一対のプーリ232とを備えている。一対のプーリ232のうち一方のプーリ232が回転することに追従して無端ベルト231が回転する。これにより、無端ベルト231上の物品が移載方向(Y軸方向)に進行する。つまり、移載機構230は、無端ベルト231がY軸方向に駆動されることで、Y軸方向の外側からの物品10を台車200の上面(つまり無端ベルト231の上面)に移載したり、台車200の上面に載置されている物品10を当該上面からY軸方向の外側へ移載したりする。なお、移載機構230はベルトコンベアに限らずに、ローラコンベアであってもよい。
【0028】
駆動伝達機構240は、後述するモータ400からの駆動力を移載機構230に伝達する。具体的には、駆動伝達機構240は、無端ベルト241と、この無端ベルト241を回転自在に支持する複数のローラ242とを備えている。複数のローラ242は、台車本体220に設けられた支持部材227に対して取り付けられている。支持部材227の一部は、台車本体220に対して下方に向けて突出している。この支持部材227の一部は、台車200が走行路R上を走行する際に、地上側設備300に備わる第一固定子320内にX軸方向で進入可能な形状となっている。この支持部材227の一部は、第一固定子320に対しては干渉しない形状となっている。
【0029】
無端ベルト241は、移載機構230の一方のプーリ232に巻回されている。後述するモータ400から駆動力を受けて無端ベルト241が回転すると、一方のプーリ232も回転するため、移載機構230の無端ベルト231が回転するようになっている。無端ベルト241は、例えば、ゴムベルトである。無端ベルト241は、ゴムベルトに限らずに、チェーンであってもよい。
【0030】
第一可動子250は、地上側設備300に備わる第一固定子320とともにモータ400を構成している。第一可動子250は、第一固定子320から付与された磁気作用により動作し、移載機構230を駆動する。具体的には、第一可動子250は、移載機構230の下方で走行方向に延設された棒状の部材であり、支持部材227の先端部に対して回転自在に保持されている。第一可動子250は、回転軸と軸が一致する円柱形状を有し、回転軸方向から見て回転軸を中心に放射状に磁界を発生する向きで、複数の永久磁石が円柱形状の周方向にS極とN局とが交互に並んで配置されることで構成されている。また、第一可動子250には、駆動伝達機構240の無端ベルト241が巻回されている。つまり、第一可動子250が第一固定子320から付与された磁気作用によって回転すると、無端ベルト241及び一方のプーリ232を介して、移載機構230の無端ベルト231が回転することになる。
【0031】
第二可動子260は、例えば、複数の永久磁石により構成されている。第二可動子260を構成する複数の永久磁石は、台車200の走行方向に並んで配置される。第二可動子260は、台車本体220の下面に設けられており、そのY軸方向の一端部が開放している。第二可動子260は、複数の永久磁石が開口を挟んでZ軸方向に二列に並ぶ構成となっている。第二可動子260の開口内には、地上側設備300に備わる第二固定子330が配置されている。一列の複数の永久磁石は、第二固定子330に対向する側にN極と、S極とが交互に向いているように配置される。なお、第二可動子260は2列の永久磁石に限らずに、1列の永久磁石により構成されていてもよい。また、第二可動子260は、走行方向に並ぶ複数列の永久磁石により構成されていてもよい。
【0032】
被検知部270は、例えば、永久磁石であり、位置センサ350により検知されるための部材である。被検知部270は、永久磁石でなくてもよく、位置センサ350がレーザ光や超音波、カメラにより撮像された画像を用いるセンサである場合には、台車200の車体そのものであってもよい。
【0033】
次に、地上側設備300について説明する。図3は、実施の形態に係る地上側設備300の概略構成を模式的に示す平面図である。図3では、一対の走行レール310に対してはドットハッチングを施して図示している。
【0034】
図1図3に示すように、地上側設備300は、一対の走行レール310と、第一固定子320と、第二固定子330と、遮蔽板340と、位置センサ350(図4参照)とを備えている。なお、図1では遮蔽板340の図示を省略している。
【0035】
走行レール310は、所定の走行路Rに沿って配置される部材である。具体的には、走行路Rは図3に示すように長円形状に形成されている。走行レール310は、走行路Rに直交する方向に並び、走行路Rに沿った2本の部材であり、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属により構成されている。なお、走行レール310は、樹脂により構成されていてもよい。本実施の形態では、図1及び図3に示すように、走行レール310は、物品10を搬送する搬送装置800の搬送経路810と交差し、搬送装置800との間で物品10を移載する移載スペースSを含んでいる。本実施の形態では、一つの走行路Rに対して搬送経路810が三つ設けられている。このため、移載スペースSも一つの走行路Rに対して三つ配置されており、これらが走行路Rに沿って離散的に配置されている。なお、搬送経路810の設置個数は3つ以外であってもよく、移載スペースSも搬送経路810の設置個数に対応した数となる。つまり、移載スペースSは、一つの走行路Rに対して少なくとも一つ設けられていればよい。
【0036】
第一固定子320は、移載スペースSに停車又は減速して進入した台車200の第一可動子250に対して磁気作用を付与して当該第一可動子250を動作させるための固定子である。第一固定子320は、走行路Rに沿って離散的に複数設けられている。具体的には、複数の第一固定子320のそれぞれは、移載スペースSに対応する位置に配置されている。
【0037】
第一固定子320は、台車200の走行時において、台車200に備わる第一可動子250が通過する略円柱状の領域うち、当該領域を囲う位置に配置されている。具体的には、第一固定子320は、X軸方向で貫通した略円筒状に形成されており、その周壁の一部が開口した開口部321となっている。開口部321は、第一固定子320におけるX軸方向の全体にわたって連続している。これにより、第一固定子320は、X軸方向視において略C字状に形成されている。第一固定子320は、略円柱状の領域の周方向にに並ぶ複数のコイルにより構成されている。
【0038】
第一固定子320は、台車200の走行方向(X軸方向)周りの約270度の範囲を囲う形状を有する。言い換えると、第一固定子320は、円筒形状の側面のうち、約90度の範囲に相当する一部の側面が取り除かれた形状を有する。第一固定子320は、円筒形状の取り除かれた形状がY軸方向プラス側を向く向きで配置されている。このように、開口部321は、第一固定子320を上面視した際に当該開口部321から第一固定子320の内部が見えない位置に配置されている。ここで、上面視とは、Z軸方向プラス側から第一固定子320を見ることを言う。
【0039】
この開口部321には、移載スペースSに停車又は減速して進入した台車200の駆動伝達機構240及び支持部材227が貫通される。この状態では、支持部材227で支持された第一可動子250は、第一固定子320内に配置されている。
【0040】
第二固定子330は、第二可動子260の開口内で走行路Rに沿うように配置されている。具体的には、第二固定子330は、走行路R沿って水平方向に延設した基板と、当該基板の延設方向に並んで配置される複数のコイルとにより構成される。つまり、実質的には、複数のコイルが第二固定子330として機能する。第二固定子330を構成する複数のコイルは、コントローラ500(図4参照)により個別に制御されることで、それぞれが独立して磁界を発生する。このように、第二固定子330を構成する複数のコイルが、コントローラ500により個別に制御されることで、台車200の第二可動子260に磁気作用を与えて、X軸方向に力を付与する。これにより台車200が走行レール310上で走行する。
【0041】
遮蔽板340は、走行路Rを台車200が走行する際に、第一可動子250が移動する移動経路R1を上方から覆っている。図3では、第一可動子250の移動経路R1は破線で図示している。図3に示すように、遮蔽板340は、移動経路R1の全体に対して連続して設けられている。遮蔽板340は、移動経路R1に対して異物が落下したとしても、それ以上の落下を遮ることで、異物が第一可動子250に干渉することを防止している。
【0042】
具体的には、図2に示すように遮蔽板340は、第一部位341と、第二部位342とを備えている。第一部位341及び第二部位342は、それぞれ例えば鉄などの金属によって形成されている。
【0043】
第一部位341は、移動経路R1の上方を覆う部位である。第一部位341は、移載スペースSに対応する箇所では、第一固定子320の上方を覆っている。第一部位341は、壁部343と、天井部344とを備えている。壁部343は、第一固定子320の開口部321側とは反対側に配置されており、移動経路R1及び第一固定子320の側方を覆っている。天井部344は、壁部343の上部から水平方向に延設された部位であり、移動経路R1及び第一固定子320の上方を覆っている。天井部344の先端部は、台車200の駆動伝達機構240及び支持部材227に干渉しない程度に、下方に向けて垂れ下がっている。これにより、第一固定子320の開口部321は、その少なくとも一部が天井部344の先端部から露出している。
【0044】
第二部位342は、第一固定子320の開口部321側に配置されている。第二部位342は、台車200の駆動伝達機構240及び支持部材227に干渉しない程度に、上方に向けて立設している。これにより、第一固定子320の開口部321は、その少なくとも一部が第二部位342から露出している。
【0045】
第二部位342の基端部は、Y軸方向において、天井部344の先端部よりも第一固定子320から離れた位置に配置されている。第二部位342の上端部は、第一固定子320側に向けて屈曲している。具体的には、第二部位342の上端部は、第二部位342の基端部に対して90度以上、180度未満の角度で傾斜している。また、第二部位342の上端部は、天井部344の先端部の延長線L1上に重なっている。第二部位342がこのような構成であるので、異物が落下し、天井部344の近傍を通過したとしても、第二部位342の上端部によって異物が遮蔽板340外へと弾かれる。つまり、遮蔽板340内に異物が侵入しにくい構成となっているので、第一固定子320及び第一可動子250に対して、より異物が干渉しにくくなっている。
【0046】
位置センサ350は、各台車200の位置を検知するためのセンサである。位置センサ350は、例えば、磁気センサであり、各台車200のそれぞれに設けられた被検知部270としての永久磁石の位置を検知する。位置センサ350は、磁気センサでなくてもよく、レーザ光や超音波などを用いたセンサであってもよいし、カメラにより撮像した画像を用いたセンサであってもよい。
【0047】
位置センサ350は、走行路R上に沿って配置されている。具体的には、位置センサ350は、第二固定子330が配置されている区間に亘って配置される。これにより、物品搬送装置100は、位置センサ350により検知された各台車200の位置に応じて、当該位置に対応する第二固定子330を制御することで、各台車200のそれぞれの走行動作を制御することができる。
【0048】
図4は、実施の形態に係る物品搬送装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【0049】
物品搬送装置100は、コントローラ500と、第一固定子320と、第二固定子330と、位置センサ350と、複数の台車200とを備えている。
【0050】
第一固定子320と、第二固定子330と、位置センサ350と、複数の台車200については、上述したため、説明を省略する。つまり、ここでは、コントローラ500のみについて説明する。なお、図3では、一つの台車200のみしか図示していないが、他の台車200についても同様に機能する。
【0051】
コントローラ500は、第二固定子330及び台車200の第二可動子260により構成される地上一次リニアモータシステムの動作を制御する。コントローラ500は、例えば、第二固定子330を制御することで、複数の台車200のそれぞれを、移載スペースSに停車又は減速して進入させる。この状態において、コントローラ500は、第一固定子320を制御することで、搬送装置800との間で移載機構230を介して物品を移載する。
【0052】
また、コントローラ500は、第二固定子330を制御することで、複数の台車200を同期して走行させてもよい。
【0053】
コントローラ500は、例えば、所定のプログラムを実行するプロセッサ、及び、所定のプログラムを記憶しているメモリなどにより構成される。また、コントローラ500は、専用回路により構成されてもよい。
【0054】
[効果など]
以上のように、本実施の形態に係る物品搬送装置100は、所定の走行路Rに沿って走行する台車200と、走行路Rを画定する一対の走行レール310を有する地上側設備300と、を備えている。台車200は、走行路Rにおける所定位置に配置された移載スペースSで物品を移載する移載機構230と、移載機構230の下方で走行方向に延設された棒状の部材であり、磁気作用により動作して移載機構230を駆動する第一可動子250と、第一可動子250を支持し、当該第一可動子250から移載機構230に駆動力を伝達する駆動伝達機構240であって、一対の走行レール310の間の空間を貫通する駆動伝達機構240と、を備えている。地上側設備300は、移載スペースSに位置した台車200の第一可動子250に対して磁気作用を付与して当該第一可動子250を動作させるため、移載スペースSに対応する位置に設けられた第一固定子320を備えている。第一固定子320は、移載スペースSに位置する台車200の駆動伝達機構240が貫通される開口部321であって、第一可動子250を第一固定子320内に配置させるための開口部321を有している。開口部321は、第一固定子320を上面視した際に当該開口部321から第一固定子320の内部が見えない位置に配置されている。
【0055】
これによれば、第一固定子320の開口部321が、第一固定子320を上面視した際に当該開口部321から第一固定子320の内部が見えない位置に配置されているので、第一固定子320の開口部321に対する上方からの異物侵入を遮ることができる。つまり、第一固定子320の上方に台車200が存在しておらず、第一固定子320が露出していたとしても、第一固定子320自体で上方からの異物の侵入を遮ることができる。したがって、第一固定子320及び第一可動子250からなるモータ400に対する異物の侵入を抑制することができる。
【0056】
また、第一固定子320は、走行路Rに沿って離散的に複数設けられている。
【0057】
これによれば、複数の第一固定子320が走行路Rに沿って離散的に設けられている場合においても、各第一固定子320の開口部321が上述した位置に配置されている。つまり、各第一固定子320自体で上方からの異物の侵入を遮ることができる。したがって、各第一固定子320及び第一可動子250からなるモータ400に対する異物の侵入を抑制することができる。
【0058】
また、台車200は複数台設けられており、複数台のそれぞれの台車200は、独立して走行自在である。
【0059】
これによれば、複数台のそれぞれの台車200が走行路R上を独立して走行自在であるので、複数の連結された台車200によって走行路Rの全体が覆われている場合と比較しても、空き台車200の発生を抑制することができる。
【0060】
また、複数台のそれぞれの台車200が走行路R上を独立して走行自在であるので、各台車200の前後で間隔が空く場合が随時発生する。このため、第一固定子320の上方に台車200が存在しない状態も多く発生することになるが、上述したように第一固定子320自体で上方からの異物の侵入を遮っているので、この場合においても第一固定子320及び第一可動子250からなるモータ400に対する異物の侵入を抑制することができる。
【0061】
また、地上側設備300は、走行路Rに沿って配置された第二固定子330を備え、台車200は、第二固定子330からの磁気作用により動作して台車200を走行路Rに沿って走行させる第二可動子260を備える。
【0062】
これによれば、走行路Rに沿って配置された第二固定子330と、第二固定子330からの磁気作用により動作して台車200を走行路Rに沿って走行させる第二可動子260とを備えた物品搬送装置100であっても、第一固定子320及び第一可動子250からなるモータ400に対する異物の侵入を抑制することができる。
【0063】
また、地上側設備300は、走行路Rを台車200が走行する際に、第一可動子250が移動する移動経路R1の全体を上方から覆う遮蔽板340を備えている。
【0064】
これによれば、第一可動子250が移動する移動経路R1の全体を遮蔽板340が上方及び側方から覆っているので、移動経路R1を移動中の第一可動子250は遮蔽板340によって覆われる。つまり、移動中の第一可動子250に対する異物の侵入が遮蔽板340で遮られる。これにより、第一固定子320及び第一可動子250からなるモータ400に対する異物の侵入をより確実に抑制することができる。
【0065】
(変形例1)
上記実施の形態では、遮蔽板340が第一可動子250の移動経路の全体を上方から覆う場合を例示した。しかしながら、遮蔽板340Aは、第一可動子250の移動経路の内、少なくとも第一固定子320が設けられていない領域を上方から覆えばよい。
【0066】
以下、変形例1について詳細に説明する。なお、以降の説明において上記実施の形態と同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0067】
図5は、変形例1に係る地上側設備300Aの概略構成を模式的に示す平面図である。図5では、一対の走行レール310に対してはドットハッチングを施して図示している。
【0068】
図5に示すように、変形例1に係る地上側設備300Aは、遮蔽板340Aを備えている。遮蔽板340Aは、走行路Rに沿って複数に分割されており、その間隔からは第一固定子320が露出している。これにより、遮蔽板340Aは、第一可動子250の移動経路R1のうち、第一固定子320が設けられていない領域の全体を上方から覆っている。
【0069】
このように、地上側設備300は、走行路Rを台車200が走行する際に、第一可動子250が移動する移動経路R1のうち、少なくとも第一固定子320が設けられていない領域を覆う遮蔽板340を備えている。
【0070】
これによれば、第一可動子250が移動する移動経路R1であって、少なくとも第一固定子320が設けられていない領域を遮蔽板340が上方及び側方から覆っているので、当該領域を移動中の第一可動子250は遮蔽板340によって覆われる。つまり、移動中の第一可動子250に対する異物の接近が遮蔽板340で妨げられる。これにより、第一固定子320及び第一可動子250からなるモータ400に対する異物の侵入をより確実に抑制することができる。
【0071】
なお、遮蔽板340は、移動経路Rの直上を覆っていなくても、移動経路Rの側方又は斜め上方を覆っていてもよい。また、遮蔽板340Aは、磁気作用を有さないダミーの第一固定子であってもよい。
【0072】
(変形例2、3)
上記実施の形態では、開口部321がY軸方向プラス側を向くように第一固定子320が配置されている場合を例示した。しかしながら、開口部321の向きは、第一固定子320を上面視した際に当該開口部321から第一固定子320の内部が見えないのであれば、如何様でもよい。
【0073】
図6は、変形例2に係る物品搬送装置を搬送台車の車幅方向に切断した断面図である。図6に示すように変形例2では、第一固定子320aは、開口部321aの向きが斜め下を向くように配置されている。具体的には、開口部321aは、Y軸方向に対してZ軸方向マイナス側に45度傾いた方向を向いている。この場合においても、第一固定子320aを上面視した際に開口部321aから第一固定子320aの内部が見えない。
【0074】
なお、この場合においても、支持部材227aの一部は、第一固定子320aに対して干渉しない形状となっている。具体的には支持部材227aの一部は、第一固定子320aの下端部と概ね同じ位置まで垂下している。このため、変形例2においては、支持部材227aとの干渉を防ぐべく、遮蔽板340の第二部位342を取り除いている。
【0075】
図7は、変形例3に係る物品搬送装置を搬送台車の車幅方向に切断した断面図である。図7に示すように変形例3では、第一固定子320bは、開口部321bの向きが真下を向くように配置されている。具体的には、開口部321bは、Z軸方向マイナス側を向いている。この場合においても、第一固定子320bを上面視した際に開口部321bから第一固定子320bの内部が見えない。
【0076】
なお、この場合においても、備わる支持部材227bの一部は、第一固定子320bに対して干渉しない形状となっている。具体的には支持部材227bの一部は、第一固定子320bの下端部と概ね同じ位置まで垂下している。このため、変形例3においては、支持部材227bとの干渉を防ぐべく、遮蔽板340の第二部位342を取り除いている。
【0077】
(その他)
以上、本発明の一つまたは複数の態様に係る物品搬送装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0078】
例えば、上記実施の形態では、物品搬送装置100が遮蔽板340を備えている場合を例示したが、遮蔽板340は設けられていなくてもよい。遮蔽板340がなくとも、第一固定子320の開口部321が、第一固定子320を上面視した際に当該開口部321から第一固定子320の内部が見えない位置に配置されているので、第一固定子320の開口部321に対する上方からの異物侵入を遮ることができる。
【0079】
また、上記実施の形態では、走行レールは、無端状の経路として、長円形状や矩形状などの環状の経路を構成するとしたが、環状の経路に限らずに、8の字状の経路や、θ字状の経路を構成していてもよい。つまり、走行レールは、一部に環状の経路を有する経路を構成していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、搬送台車が走行する経路を、物品を搬送する経路として十分に活用できる物品搬送装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0081】
10 物品
100 物品搬送装置
200 台車
220 台車本体
221 車輪
227、227a、227b 支持部材
230 移載機構
231、241 無端ベルト
232 プーリ
240 駆動伝達機構
242 ローラ
250 第一可動子
260 第二可動子
270 被検知部
310 走行レール
300、300A 地上側設備
320、320a、320b 第一固定子
321、321a、321b 開口部
330 第二固定子
340、340A 遮蔽板
341 第一部位
342 第二部位
343 壁部
344 天井部
350 位置センサ
400 モータ
500 コントローラ
800 搬送装置
810 搬送経路
L1 延長線
R 走行路
R1 移動経路
S 移載スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7