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特許7192295調圧弁、その製造方法、および蓄電デバイスモジュール
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  • 特許-調圧弁、その製造方法、および蓄電デバイスモジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】調圧弁、その製造方法、および蓄電デバイスモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/14 20130101AFI20221213BHJP
   H01M 50/317 20210101ALI20221213BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
H01G11/14
H01M50/317
F16K17/04 C
F16K17/04 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018146581
(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公開番号】P2020021897
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】黒須 満
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-168070(JP,U)
【文献】特表2013-534028(JP,A)
【文献】特開2011-159849(JP,A)
【文献】米国特許第05554455(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/14
H01M 50/317
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設置されて該筐体の内圧を調圧する調圧弁であって、
前記内圧が一定圧力以上で前記筐体のガスを排出して調圧する調圧部と、
前記筐体に接して前記調圧部を密封状態に維持するカバー部と、
を備えることを特徴とする調圧弁。
【請求項2】
前記調圧部は、
前記筐体に形成された開口部に着脱可能に取り付けられるベース部と、
このベース部と前記カバー部との間に復元力を作用させ、前記筐体の内圧が一定圧力未満で前記カバー部を前記筐体上に閉止させるスプリングと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の調圧弁。
【請求項3】
前記カバー部は、スプリングの復元力を受けて前記筐体にエッジ部が接し、前記カバー部を密封状態にすることを特徴とする請求項1に記載の調圧弁。
【請求項4】
前記カバー部は、
前記スプリングを装着する軸部と、
前記スプリングの復元力を調整可能に前記軸部に前記スプリングを係止するストッパと、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の調圧弁。
【請求項5】
前記内圧Pが復元力Fに対してP>Fであれば、カバー部が押し上げられて前記カバー部のエッジ部が筐体から離れ、かつOリングが弁座部から離れ、P≦Fであれば、前記エッジ部が元位置に復帰することを特徴とする請求項1に記載の調圧弁。
【請求項6】
前記ベース部および前記筐体に密着して前記開口部を封止する封止部を備えることを特徴とする請求項2に記載の調圧弁。
【請求項7】
蓄電デバイスが搭載された筐体に、請求項1ないし請求項6のいずれかの請求項に記載の調圧弁を備えることを特徴とする蓄電デバイスモジュール。
【請求項8】
調圧部を形成する工程と、
前記調圧部を覆うカバー部を成形する工程と、
前記調圧部を支持するベース部を形成する工程と、
前記ベース部との間に復元力を作用させるスプリングを前記カバー部の軸部に装着し、この軸部に前記スプリングを係止するストッパを取り付ける工程と、
前記ベース部を筐体の開口部内に設置する工程と、
前記調圧部が前記筐体との間で密閉状態になるように、前記カバー部を前記筐体に接触させる工程と、
を含むことを特徴とする調圧弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電デバイスモジュールの筐体内圧などの調圧に用いられる弁に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスモジュールには複数のキャパシタセルが搭載され、各キャパシタセルは駆動時、電解液の化学反応でガスを発生する。各キャパシタセルから放出したガスはモジュール筐体に充満し、長時間使用で筐体内圧を上昇させる。この内圧上昇を抑制するため、調圧弁が設けられる。この調圧弁は、筐体内圧が上昇すると、筐体からガスを筐体外に排出するとともに、圧力低下後は再び筐体を封止状態に維持する復元性を有する。
このような調圧弁に関し、電池からの放出ガスを抜き、高水圧下で漏水を防止する構造が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-28991公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、復元性を有する調圧弁は、筐体の内圧上昇に応じてガス放出、封止を繰り返すことが可能である。この調圧弁を備える蓄電デバイスモジュールの設置環境は多種多様であり、車載用途などでは室外使用となり、水、粉塵、泥など、異物の侵入を避けることができないという課題がある。調圧機能を司る調圧部が露出している構造では、調圧部に異物が付着すれば、調圧機能が低下するという課題がある。
斯かる調圧弁を備えた蓄電デバイスモジュールなどでは、水、粉塵、泥などの異物が侵入すると、筐体の防護機能が低下し、蓄電デバイスモジュールの性能劣化だけでなく、併設された電源回路などの回路機能の低下を来すという課題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は上記課題に鑑み、水、粉塵、泥などの異物による調圧機能の低下を防止し、ひいては調圧弁を搭載する機器の性能劣化を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の調圧弁の一側面によれば、筐体に設置されて該筐体の内圧を調圧する調圧弁であって、前記内圧が一定圧力以上で前記筐体のガスを排出して調圧する調圧部と、前記筐体に接して前記調圧部を密封状態に維持するカバー部とを備える。
この調圧弁において、前記調圧部は、前記筐体に形成された開口部に着脱可能に取り付けられるベース部と、このベース部と前記カバー部との間に復元力を作用させ、前記筐体の内圧が一定圧力未満で前記カバー部を前記筐体上に閉止させるスプリングとを含んでよい。
この調圧弁において、前記カバー部は、スプリングの復元力を受けて前記筐体にエッジ部が接し、前記カバー部を密封状態にしてもよい。
この調圧弁において、前記カバー部は、前記スプリングを装着する軸部と、前記スプリングの復元力を調整可能に前記軸部に前記スプリングを係止するストッパとを備えてよい。
この調圧弁において、前記内圧Pが復元力Fに対してP>Fであれば、カバー部が押し上げられて前記カバー部のエッジ部が筐体から離れ、かつOリングが弁座部から離れ、P≦Fであれば、前記エッジ部が元位置に復帰してよい。
この調圧弁において、前記ベース部および前記筐体に密着して前記開口部を封止する封止部を備えてよい。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の蓄電デバイスモジュールの一側面によれば、蓄電デバイスが搭載された筐体に、上記のいずれかの調圧弁を備える。
上記目的を達成するため、本発明の調圧弁の製造方法の一側面によれば、調圧部を形成する工程と、前記調圧部を覆うカバー部を成形する工程と、前記調圧部を支持するベース部を形成する工程と、前記ベース部との間に復元力を作用させるスプリングを前記カバー部の軸部に装着し、この軸部に前記スプリングを係止するストッパを取り付ける工程と、前記ベース部を筐体の開口部内に設置する工程と、前記調圧部が前記筐体との間で密閉状態になるように、前記カバー部を前記筐体に接触させる工程とを含む。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
(1) 筐体内圧に応じてガス排出を行う調圧部がカバー部によって閉じられて防護でき、外部からの水、粉塵、泥などの異物の侵入を回避できる。
(2) 調圧部に対する異物による影響や性能劣化を防止できる。
(3) 調圧機能の維持により、調圧弁を備えた密閉筐体を異物侵入から防護することができ、調圧弁を搭載する蓄電デバイスモジュールなどの機器の性能劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施の形態に係る調圧弁を示す断面図である。
図2】調圧機能を説明するための図である。
図3】調圧弁の取り付けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、一実施の形態に係る調圧弁の断面を示している。図1に示す構成は一例であって、本発明が斯かる構成に限定されるものではない。
この調圧弁2は蓄電デバイスを備える蓄電デバイスモジュールなどの筐体4に設置され、筐体内圧を調整する。筐体4には調圧弁2を挿抜させるための開口部6が形成され、この開口部6に調圧弁2が設置される。この調圧弁2には、調圧部8とカバー部10が備えられる。
【0011】
調圧部8は、筐体4の内圧が一定圧力(復元力F)以上でOリング12を開き、一定圧力未満でOリング12を閉じる。このOリング12は弁の一例であり、カバー部10の内面部に係止部14によって固定されている。この調圧弁2において、少なくともOリング12が閉じているとき、カバー部10のエッジ部15が筐体4と接し、調圧部8がカバー部10および筐体4により密封状態に維持される。
【0012】
調圧部8にはベース部16およびスプリング18が備えられる。ベース部16はたとえば、合成樹脂の成形体の円筒体であり、複数の脚部20が形成されている。この脚部20の弾性を利用して筐体4の開口部6にベース部16が着脱可能に取り付けられる。脚部20には筐体4にベース部16を係止させるための係止突部22が形成されている。このベース部16の上部には円環状の弁座部24が形成されている。
スプリング18は、ベース部16とカバー部10との間に復元力を作用させ、筐体4の内圧が一定圧力未満でベース部16の弁座部24にOリング12を閉止させる。
【0013】
カバー部10には中央部にスプリング18を装着する軸部26が備えられ、この軸部26にスプリング18が装着されるとともに、このスプリング18の復元力Fを調整可能に係止するストッパ28が備えられている。軸部26はベース部16の軸受部30に回動および摺動可能に支持されている。ストッパ28はたとえば、ナットで構成し、軸部26のスプリング18の復元力Fによる調圧位置にたとえば、ねじなどで固定し、接着剤で固定すればよい。
ベース部16には筐体4に密着して開口部6を封止するOリング32が備えられる。このOリング32は封止部の一例であり、Oリング以外の他のシール部材でもよい。このOリング32は、弁座部24の背面側と筐体4との間に挟み込まれ、筐体4はOリング32と脚部20の係止突部22との間に挟み込まれる。
この調圧弁2によれば、カバー部10による調圧部8の防護機能と、調圧部8により復元性を持つ調圧機能が得られる。
【0014】
<防護機能>
スプリング18の復元力Fに対して筐体内圧PがF≧Pであれば、図1に示すように、カバー部10のエッジ部15が筐体4の外面部に接し、調圧弁2の調圧部8が密封状態に維持される。これにより、調圧部8は防護される。つまり、カバー10の内部への水、粉塵、泥などの異物の侵入が阻止される。
【0015】
<調圧機能>
筐体内圧Pが上昇し、筐体内圧Pがスプリング18の復元力Fに対してP>Fとなれば、図2に示すように、筐体内圧Pを受けてカバー部10が押し上げられる。これにより、Oリング12が弁座部24から離れる。同時に、カバー部10のエッジ部15が筐体4から離れる。
このとき、筐体内圧Pを上昇させているガスGがOリング12と弁座部24の隙間から流れ出し、カバー部10のエッジ部15側から外気に放出される。
【0016】
このガス放出により、筐体内圧Pが低下し、筐体内圧PがF≧Pとなれば、Oリング12は下降して弁座部24に接して閉じる。これに連動し、エッジ部15が筐体4の外面部に接し、図1の状態(元位置)に復帰する。
このような動作は、筐体内圧Pの上昇に応じて繰り返され、筐体内圧PがF≧Pの状態に維持される。
ガスGの排出時、カバー部10のエッジ部15が筐体4から離れるが、ガスGの排出力により、カバー10の内部への水、粉塵、泥などの異物の侵入を阻止する。
【0017】
<調圧弁2の製造方法>
この一実施の形態に係る調圧弁2の製造方法には一例として以下の工程が含まれる。
A) カバー部10、ベース部16などの形成工程
この形成工程では、カバー10およびベース部16をたとえば、合成樹脂で成形する。スプリング18やストッパ28を加工し、または既存の部品から選択する。ベース部16の形成には、係止突部22および弁座部24の形成が含まれる。また、Oリング12、32は、ゴムなどの弾性材料で加工してよいが、既存のOリングから選択してもよい。
【0018】
B) 組立工程
この組立工程では、カバー部10にOリング12を取り付けて調圧部8を形成し、ベース部16にOリング32を取り付ける。ベース部16との間に復元力Fを作用させるスプリング18をカバー部10の軸部26に装着し、この軸部26にスプリング18を係止するストッパ28を取り付ける。
【0019】
<調圧弁2の筐体4への取付け>
筐体4には図3に示すように、調圧弁2のベース部16を装着するための開口部6が形成される。
組み立てを完了している調圧弁2のベース部16を筐体4の開口部6に合わせ、脚部20を開口部6に滑り込ませて押圧し、脚部20の中途部にある係止突部22を筐体4の内側天井面に係止させる。このような装着はベース部16の構成材料である合成樹脂の弾性を利用してスムーズに行うことができる。これにより、調圧弁2は筐体4に強固に密着状態で装着される。
このような装着状態からベース部16の脚部20を圧縮させて係止突部22と筐体4との係合を解くことができ、調圧弁2を筐体4から外すことができる。
【0020】
<一実施の形態の効果>
この一実施の形態によれば、次の効果が得られる。
(1) この調圧弁2は少なくともOリング12が閉じているとき、筐体4にカバー部10のエッジ部15が接してカバー部10内に調圧部8が密封状態に維持されるので、Oリング12、弁座部24を含む調圧部8を防護することができる。つまり、筐体内圧PがF≧Pとなれば、スプリング18の復元力Fが荷重として作用し、Oリング12が弁座部24に対してその荷重が加わり、カバー部10のエッジ部15が筐体4に対してその荷重が加わることになる。
(2) この調圧弁2は上記構成部材により容易に組み立てることができ、組立性に優れる。
(3) この調圧弁2は部品点数が少なく、軽量かつコンパクトである。
(4) この調圧弁2はスプリング18の復元力F、Oリング12および弁座部24の開閉機能を維持しており、スプリング18の復元力Fによる調圧機能の高い復元性を維持することができる。
【0021】
<他の実施の形態>
(1) ストッパ位置の調節機能
軸部26にねじ溝を備え、このねじ溝にストッパ28を構成するナットを取り付ければ、ストッパ28の位置調整により復元力Fを加減でき、併せて調圧機能を調整することができる。
(2) エッジ部15の封止機能
エッジ部15にOリングなどの封止部材を設置すれば、エッジ部15と筐体4との密着性を高めることができ、弁座部24にOリング12が接しているとき、より高い封止機能を実現することができる。
(3) 筐体4の多様性
筐体4について、蓄電デバイスモジュール筐体を例示したが、本発明の調圧弁は調圧機能を必要とする密封筐体に用いられ、蓄電デバイスモジュールの筐体に限定されない。
(4) 調圧部8
一実施の形態では弁座部24に対してOリング12を開閉する弁機構を例示したが、調圧部8にはガス透過性を備えるガス抜き弁を用いてもよい。
【0022】
以上説明したように、調圧弁、その製造方法、および蓄電デバイスモジュールの最も好ましい一実施の形態について説明した。本発明は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明によれば、調圧弁の弁および調圧部の防護機能を高めることができ、蓄電デバイスモジュールのたとえば、車載用途などで、水、粉塵、泥など、異物の侵入を回避することができる。
【符号の説明】
【0024】
2 調圧弁
4 筐体
6 開口部
8 調圧部
10 カバー部
12 Oリング
14 係止部
15 エッジ部
16 ベース部
18 スプリング
20 脚部
22 係止突部
24 弁座部
26 軸部
28 ストッパ
30 軸受部
32 Oリング

図1
図2
図3