(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】蓄熱性樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20221213BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20221213BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20221213BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20221213BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K5/12
C09K5/14 E
C08J3/20 Z CEV
C08J5/18
(21)【出願番号】P 2018155703
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 真保
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 多加志
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221727(WO,A1)
【文献】特開2009-051016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00-27/24
C08K 3/00-13/08
C08J 3/00-3/28
C08J 5/18
C09K 5/00-5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)100質量部に対して、可塑剤(B)を
50~150質量部、蓄熱カプセル(C)を50~300質量部含む蓄熱性樹脂組成物であって、
該塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)に含まれる酢酸ビニル成分の割合が1~
15質量%であ
り、
該蓄熱カプセル(C)が、熱硬化系樹脂からなる殻と、該殻内に充填された蓄熱性成分とを含むことを特徴とする蓄熱性樹脂組成物。
【請求項2】
結晶融解熱量ΔHmが40J/g以上であることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱性樹脂組成物。
【請求項3】
JIS K6251に準拠した引張破断伸度が30%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱性樹脂組成物。
【請求項4】
前記可塑剤(B)がフタル酸エステル系可塑剤であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄熱性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の蓄熱性樹脂組成物を成形してなるペレット。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の蓄熱性樹脂組成物を成形してなるシート。
【請求項7】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)、可塑剤(B)及び蓄熱カプセル(C)を80℃以上、200℃以下の温度で混練することを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の蓄熱性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄熱性樹脂組成物に関し、詳しくは、相転移時の潜熱量や二次加工性、成形性、長期安定性に優れる蓄熱性樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄熱とは、物質に熱を蓄え、必要に応じてその熱を取り出す仕組みのことである。この仕組みには、効率よくエネルギーを利用できるという利点があるので、空調設備や建築材料、保温容器、保冷剤、コンクリート等、幅広い分野に適用されている。
【0003】
蓄熱方式には、例えば相転移熱を利用した潜熱蓄熱、比熱を利用した顕熱蓄熱、化学反応時の吸熱・発熱を利用した化学蓄熱等が挙げられる。中でも蓄熱密度(効率)や耐久性、コスト、安全性、加工性において潜熱蓄熱方式が優れていることから、近年、その使用範囲が拡大されている。
【0004】
潜熱蓄熱材料としては、例えばパラフィン、脂肪酸エステル、水(氷)、無機水和塩等が主に挙げられる。中でも使用目的に応じた温度設定のし易さや、臭気が低く、安定性が高い(長期寿命である)等の観点から、パラフィン系または脂肪酸エステル系潜熱蓄熱材が、多く使用されている。これらは、脂肪族系の基本骨格を有しており、主鎖の炭素数に応じて融点が異なるため、最適な組成を選択することで、使用目的に応じた相転移温度の設定が可能となる。
【0005】
一方でパラフィンや脂肪酸エステル等の蓄熱材は、融解状態での粘度が低く、構造体の一部として使用した際に漏れ出す可能性がある。蓄熱材の漏れ出しを防ぐ方法として、蓄熱材をカプセルに封入する方法が良く知られている。
【0006】
樹脂に蓄熱カプセルを混合した樹脂組成物及びその成形体には、蓄熱性を付与するために蓄熱カプセルを大量に混合する必要があるが、結果として脆く、二次加工性に劣る成形体となる。また、混合時の熱やせん断によってカプセルが破壊し、内包されている蓄熱性成分がブリードするという課題もある。
【0007】
特許文献1には、樹脂マトリクス中に蓄熱材が分散した蓄熱シートであって、JIS K6251に準じて測定される引張強さが0.1MPa以上であり、引張破断時の伸び率が10%以上であることを特徴とする蓄熱シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の蓄熱シートは、引張破断伸度が高く、可撓性があるため二次加工時や搬送時にも割れにくいという特徴があるものの、局所的な応力がかかった状態での使用には懸念があり、耐折り曲げ性についても改善すべき課題があった。また、塗工液を加熱して硬化させる工程が必要なため、生産性に劣るという課題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、可撓性、二次加工性に優れ、かつ、蓄熱性や長期安定性に優れ、さらには生産性にも優れる蓄熱性樹脂組成物及びその成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、酢酸ビニル成分の割合が特定の範囲内である塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に対して、可塑剤と共に蓄熱カプセルを高充填することで、高い潜熱量を有するだけでなく、優れた可撓性や耐ブリード性を有し、二次加工性や長期安定性にも優れた溶融成形可能な蓄熱性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)100質量部に対して、可塑剤(B)を1~150質量部、蓄熱カプセル(C)を50~300質量部含む蓄熱性樹脂組成物であって、該塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)に含まれる酢酸ビニル成分の割合が1~20質量%であることを特徴とする蓄熱性樹脂組成物、この蓄熱性樹脂組成物を成形してなるペレット、及びこの蓄熱性樹脂組成物を成形してなるシート、に関する。
【0013】
本発明の一態様では、本発明の蓄熱性樹脂組成物の結晶融解熱量ΔHmは40J/g以上である。
【0014】
本発明の一態様では、本発明の蓄熱性樹脂組成物のJIS K6251に準拠した引張破断伸度は30%以上である。
【0015】
本発明の一態様では、可塑剤(B)はフタル酸エステル系可塑剤である。
【0016】
本発明の一態様では、蓄熱カプセル(C)は、熱硬化系樹脂からなる殻と、該殻内に充填された蓄熱性成分とを含む。
【0017】
本発明はまた、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)、可塑剤(B)及び蓄熱カプセル(C)を80℃以上、200℃以下の温度で混練して前記蓄熱性樹脂組成物を製造することを特徴とする蓄熱性樹脂組成物の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、蓄熱性樹脂組成物の相転移時の潜熱量を維持した上で溶融混練によって容易に成形でき、かつ得られた樹脂組成物は柔軟であるため曲げても割れにくく、例えば建築部材や保冷剤、容器等の複雑な形状にも追従できる優れた二次加工性を備える。更に、本発明の蓄熱性樹脂組成物は、耐ブリード性にも優れ、長期の使用によっても蓄熱性成分や可塑剤がブリードすることなく、長期安定性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、酢酸ビニル成分の含有割合が1~20質量%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)と可塑剤(B)と蓄熱カプセル(C)とを所定の割合で含むものである。
【0021】
[塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)]
本発明に用いる塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)は、塩化ビニルと酢酸ビニルからなる共重合体を意味する。ポリ塩化ビニルに柔軟性を付与する共重合成分としては、アクリル酸ブチル、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられるが、なかでも酢酸ビニルはガラス転移温度が低く、塩化ビニルとの相溶性に優れることから、ポリ塩化ビニルに優れた柔軟性を付与することができる。その結果、蓄熱カプセル(C)を高充填しても割れにくく、二次加工性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0022】
本発明で用いる塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)に含まれる酢酸ビニル成分(酢酸ビニルに由来する構造単位)の割合は1~20質量%である。前記酢酸ビニル成分の割合は、樹脂組成物またはシートに優れた可撓性を付与する観点から、1質量%以上であり、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。一方、上限は、パラフィンのブリードを抑制する観点、また、ある程度の剛性を維持しハンドリング性を付与する観点から20質量%以下であり、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0023】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)に含まれる塩化ビニル成分(塩化ビニルに由来する構造単位)は、パラフィンのブリードを抑制する観点から、80質量%以上であり、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。一方、樹脂組成物またはシートに優れた可撓性を付与する観点から、99質量%以下であり、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることが更に好ましい。蓄熱性成分としてパラフィンを用いた場合、塩化ビニルとパラフィンは極性が異なるため、パラフィンの揮発分が塩化ビニルを通過することができず、結果として、パラフィンのブリードが抑制される。前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)に含まれる塩化ビニル成分がかかる範囲であれば、耐ブリード性を維持した上で、酢酸ビニル成分により優れた可撓性を付与することができる。
【0024】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)の平均重合度は100以上、3000以下であることが好ましく、300以上、2000以下であることがより好ましく、500以上、1000以下であることが更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)の平均重合度がかかる範囲であれば、低温でもゲル化が可能となり、成形中の蓄熱性成分の揮発を抑制することができる。ここで、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)の平均重合度は、JIS K6721:1977に準じて測定することができる。
【0025】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)は、本発明の蓄熱性樹脂組成物の効果を損なわない範囲でポリ塩化ビニルとポリ酢酸ビニル以外の共重合成分を含んでいても良い。その他の共重合成分としては、例えば、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル、エチレン、プロピレン、スチレン等のα-オレフィン、ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のアルキルビニルエーテル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸、あるいはその酸無水物等を挙げることができ、これらは1種類のみを用いても2種類以上を併用してもよい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)がその他の共重合成分を含む場合、その含有量は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、その他の共重合成分を含まないことが最も好ましい。
【0026】
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)は1種のみを用いてもよく、塩化ビニル/酢酸ビニル組成等の異なるものの2種以上を併用してもよい。
【0027】
[可塑剤(B)]
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、二次加工性を向上させるために可塑剤(B)を含む。
【0028】
本発明の蓄熱性樹脂組成物において、可塑剤(B)は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)100質量部に対して1質量部以上、150質量部以下の割合で含まれ、10質量部以上、120質量部以下であることが好ましく、50質量部以上、100質量部以下であることがより好ましい。可塑剤(B)が塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)に対してかかる範囲で含まれていれば、本発明の蓄熱性樹脂組成物の剛性が低減され、二次加工性に優れたものとなる。
【0029】
可塑剤(B)としては特に限定されないが、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジドデシルフタレート、ジイソクミルフタレート、ジノニルフタレートなどの炭素数1~12のアルキル基を有するフタル酸アルキルエステル系可塑剤や、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸のグリコールエステル系可塑剤といったフタル酸エステル系可塑剤、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジヘキシルアゼレート、ジイソオクチルアゼレート、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリオクチルシトレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレートなどの脂肪酸エステル系可塑剤、トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、テトラ-(2-エチルヘキシル)ピロメリテート、テトラ-n-オクチルピロメリテート、テトライソオクチルピロメリテート、ビフェニルテトラカルボン酸テトラブチルエステル、ビフェニルテトラカルボン酸テトラペンチルエステル、ビフェニルテトラカルボン酸テトラヘキシルエステルなどの芳香族カルボン酸エステル系可塑剤、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどの正リン酸エステル系可塑剤、塩素化パラフィン、塩素化脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、エポキシブチルステアレート、エポキシオクチルステアレートなどが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)との相溶性に優れ、可塑化効果が高い上、可塑剤のブリードが抑制できるという観点から、フタル酸エステル系可塑剤が好ましく、ジイソノニルフタレートがより好ましい。
【0031】
これらの可塑剤は、1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
[蓄熱カプセル(C)]
本発明に用いる蓄熱カプセル(C)は、熱硬化系樹脂よりなる殻の中に蓄熱性成分が充填されたものであることが好ましく、このような蓄熱カプセル(C)であれば、蓄熱性成分が相転移によって融解した場合でも、蓄熱性成分のブリードを抑制することができる。
【0033】
本発明の蓄熱性樹脂組成物において、蓄熱カプセル(C)は、前記塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)100質量部に対して50質量部以上、300質量部以下の割合で含まれ、60質量部以上、200質量部以下であることが好ましく、70質量部以上、150質量部以下であることがより好ましい。また、本発明の蓄熱性樹脂組成物中の蓄熱カプセル(C)の含有量は20質量%以上、60質量%以下、特に25質量%以上、55質量%以下、とりわけ30質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。蓄熱カプセル(C)が塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)に対してかかる範囲で含まれていれば、本発明の蓄熱性樹脂組成物の蓄熱性と可撓性、即ち二次加工性の両立を図ることができる。
【0034】
蓄熱カプセル(C)の殻の構成成分としては、一般的な熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、芳香族ポリケトン系樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。本発明においては、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂のどちらを用いても良いが、蓄熱カプセル(C)からの蓄熱性成分の揮発を抑制できるという観点から、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
蓄熱カプセル(C)の殻を構成する熱硬化性樹脂としては、上記の例示樹脂が好適に用いられるが、重合時に容易にカプセルが得られるという生産性の観点から、メラミン系樹脂またはウレタン系樹脂を用いることが好ましい。蓄熱カプセル(C)の殻の成分としてメラミン系樹脂またはウレタン系樹脂を用いることで、芯の成分である蓄熱性成分の揮発を抑制できるカプセルを簡便に得ることができる。
【0036】
蓄熱カプセル(C)の殻に充填されて芯を構成する蓄熱性成分は、パラフィンまたは脂肪酸エステルであることが好ましい。これらは高い潜熱量を有するため、蓄熱性成分として好適に使用できる。
【0037】
蓄熱性成分のパラフィンとしては、脂肪族飽和炭化水素(アルカン)であれば特に制限されないが、具体例としてはデカン(炭素数=10個/融点=-30℃)、ウンデカン(炭素数=11個/融点=-26℃)、ドデカン(炭素数=12個/融点=-12℃)、トリデカン(炭素数=13個/融点=-5℃)、テトラデカン(炭素数=14個/融点=5℃)、ペンタデカン(炭素数=15個/融点=10℃)、ヘキサデカン(炭素数=16個/融点=18℃)、ヘプタデカン(炭素数=17個/融点=21℃)、オクタデカン(炭素数=18個/融点=26℃)、ノナデカン(炭素数=19個/融点=32℃)、イコサン(炭素数=20個/融点=37℃)、ヘンイコサン(炭素数=21個/融点=41℃)、ドコサン(炭素数=22個/融点=44℃)、トリコサン(炭素数=23個/融点=47℃)、テトラコサン(炭素数=24個/融点=51℃)、ペンタコサン(炭素数=25個/融点=53℃)、ヘキサコサン(炭素数=26個/融点=57℃)、ヘプタコサン(炭素数=27個/融点=58℃)、オクタコサン(炭素数=28個/融点=62℃)、ノナコサン(炭素数=29個/融点=64℃)、トリアコンタン(炭素数=30個/融点=66℃)等が挙げられる。上記のパラフィンは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、直鎖状飽和炭化水素の代わりに、分岐鎖を有する分岐状飽和炭化水素を用いても良い。
【0038】
蓄熱性成分の脂肪酸エステルとしては、脂肪酸とアルコールがエステル結合してなる化合物であれば特に制限されないが、好ましくは、炭素数8~36の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点=5℃)、ミリスチン酸メチル(融点=19℃)、パルミチン酸メチル(融点=30℃)、ステアリン酸メチル(融点=38℃)、セバシン酸ジメチル(融点=29℃)、ステアリン酸ブチル(融点=25℃)、アラキジン酸メチル(融点=45℃)等が挙げられる。上記の脂肪酸エステルは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
蓄熱カプセル(C)の結晶融解熱量ΔHmは100J/g以上であることが好ましく、120J/g以上であることがより好ましく、140J/g以上であることが更に好ましい。蓄熱カプセル(C)の結晶融解熱量ΔHmが上記下限以上であれば、本発明の蓄熱性樹脂組成物は十分な潜熱量を有するものとなる。
【0040】
なお、本発明において、結晶融解熱量ΔHmは、示差走査熱量測定(DSC)にて10℃/minの昇温速度で測定される。DSC測定において、ベースラインと結晶融解ピークが成す面積が最も大きいものの熱量を、その材料の結晶融解熱量ΔHmとする。後述の本発明の蓄熱性樹脂組成物の結晶融解熱量ΔHmについても同様である。
【0041】
蓄熱カプセル(C)の殻成分と芯成分である蓄熱性成分の比率としては、殻成分100質量部に対して芯成分が50~1000質量部であることが好ましく、100~900質量部であることがより好ましく、200~800質量部であることが更に好ましい。殻成分と芯成分の比率がかかる範囲であれば、十分な潜熱量を維持した上で、蓄熱カプセル(C)からの蓄熱性成分の揮発を抑制することができる。また、混練時や二次加工時、使用時等に外力がかかった場合でも、殻が破砕しにくく、蓄熱性成分の漏えいを防ぐことができる。
【0042】
蓄熱カプセル(C)の粒径は、0.1~100μmであることが好ましく、0.5~50μmであることがより好ましく、1~10μmであることがさらに好ましい。
【0043】
[蓄熱性樹脂組成物]
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)100質量部に対して、可塑剤(B)を1~150質量部、蓄熱カプセル(C)を50~300質量部含んでなる。前記の通り、これらをかかる割合で含むことにより、可撓性と耐ブリード性を両立することができ、ひいては二次加工性や長期安定性に優れる蓄熱性樹脂組成物が得られる。
【0044】
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、結晶融解熱量ΔHmが40J/g以上であることが好ましく、50J/g以上であることがより好ましく、60J/g以上であることが更に好ましい。蓄熱性樹脂組成物の結晶融解熱量ΔHmが上記下限以上であれば、本発明の蓄熱性樹脂組成物は十分な潜熱量を有し、蓄熱性を有する材料として好適に使用することができる。
【0045】
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、JIS K6251に準拠した引張破断伸度が30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。蓄熱性樹脂組成物の引張破断伸度が上記下限以上であれば、十分な可撓性を有し、割れにくく、二次加工性に優れたものとなる。
【0046】
[その他の成分]
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、その他の成分として、熱安定剤を含むことができる。熱安定剤を含むことにより、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)の熱分解を抑えて有毒ガスの発生を防止することができる。熱安定剤としては限定されないが、例えば、2-エチルヘキシル酸、イソデカン酸、ネオデカン酸、炭素数8~22の高級脂肪酸、クエン酸、グルコン酸、ソルビン酸、安息香酸等のカルシウム塩類、マグネシウム塩類、バリウム塩類、および亜鉛塩類からなるCa-Zn系塩類、Mg-Zn系塩類、およびBa-Zn系塩類、Ca-Mg-Zn系塩類等を挙げることができる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、環境安全性の観点から、Ca-Zn系塩類が特に好ましい。
Ca-Zn系塩類等の熱安定剤を配合する場合、熱安定剤は塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)100質量部に対して0.5~10質量部、特に1~5質量部配合することが好ましい。
【0047】
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、更に安定化助剤を含むことができる。安定化助剤としては限定されないが、例えば、トリフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、4,4’-イソブチリデンビス-(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル-ジトリデシルホスファイト)等の有機リン系化合物や、ステアロイルベンゾイルメタン(SBM)、ジベンゾイルメタン(DBM)、デヒドロ酢酸等のβ-ジケトン化合物、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオール化合物、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油、エポキシ化サフラワー油などのエポキシ化合物等が挙げられる。
安定化助剤を配合する場合、安定化助剤は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)100質量部に対して0.5~10質量部、特に1~5質量部配合することが好ましい。
【0048】
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、その他の成分として、加工助剤を含むことができる。加工助剤を含むことにより、低温条件下の加工でもゲル化を促進することができる。加工助剤としては限定されないが、例えば、メチルメタクリレートやブチルメタクリレート等のアクリル酸エステルや、スチレンを含むコアシェル型ランダム共重合体が挙げられる。
加工助剤を配合する場合、加工助剤は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)100質量部に対して0.5~30質量部、特に1~20質量部配合することが好ましい。
【0049】
その他、本発明の蓄熱性樹脂組成物は、樹脂組成物の性質に影響を与えない範囲において、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、防菌・防カビ剤、染料、難燃剤、顔料、無機質微粒子などの各種添加剤を含有してもよい。
【0050】
[蓄熱性樹脂組成物の製造方法]
本発明の蓄熱性樹脂組成物は、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)、可塑剤(B)及び蓄熱カプセル(C)と、必要に応じて用いられるその他の成分とを80℃以上、200℃以下の温度で溶融混練することにより製造することが好ましい。
【0051】
具体的には、あらかじめロールやニーダーによって混練し、混練後の塊を、樹脂組成物が十分に溶融する温度に達した押出機に投入し、溶融しながら混練する。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機などを用いることができるが、分散性の観点から二軸押出機を用いることが好ましい。この際、押出機の温度は、80℃以上、200℃以下であることが好ましく、90℃以上、180℃以下であることがより好ましく、100℃以上、160℃以下であることが更に好ましい。押出機の温度がかかる範囲であれば、混練時及び混練後の成形時に蓄熱性成分が揮発するのを抑制することができる。
【0052】
[成形品]
本発明の蓄熱性樹脂組成物を、シート状、板状、粒状、ペレット状、管状等の各種の形状に成形して成形品とすることができる。
【0053】
その成形方法としては、一般の成形法、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、カレンダー成形、真空成形、圧空成形、プレス成形等を採用することができる。
【0054】
具体的な成形方法としては、本発明の蓄熱性樹脂組成物の製造時に各成分が混合され溶融状態となったものを、そのままで、あるいは若干冷却して型に流し込み所望のシート状、板状とする方法が挙げられる。また、本発明の蓄熱性樹脂組成物は、当該蓄熱性樹脂組成物の流動開始温度より低い温度で固化するので、ブロック状に成形した後、切断してシート状や板状としてもよい。更に、本発明の蓄熱性樹脂組成物をフィルム、布、繊維、パーティクルボード等の上に付着、塗布、或いは含浸させてシート状、板状としてもよい。また、ポリエチレン等の袋にパック詰めにして冷却過程でシート状、板状、棒状とすることもできる。また、押出機を用いてシート状、板状に押出成形してもよい。押出機により棒状、パイプ状に成形したものを裁断して粒状、ペレット状とすることもできる。それぞれの成形方法において、装置および加工条件は特に限定されない。
【0055】
押出成形によって成形体を得る場合、前述の通り塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)、可塑剤(B)及び蓄熱カプセル(C)と、必要に応じて用いられるその他の成分を、あらかじめロールやニーダーによって混練し、混練後の塊を、樹脂組成物が十分に溶融する温度に達した押出機に投入し、溶融しながら混練し、各種形状の口金から吐出し、その後空冷または水冷によって冷却し、所望の成形体を得る。押出機としては、単軸押出機と二軸押出機のいずれを用いても良いが、分散性の観点から、二軸押出機を用いることが好ましい。
【0056】
押出成形によって成形体を得る場合、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)を十分溶融させる観点から、80℃以上で混練することが好ましく、90℃以上で混練することがより好ましく、100℃以上で混練することがさらに好ましい。一方、混練温度の上限は、成形時に蓄熱性成分が揮発するのを抑制する観点から、200℃以下が好ましく、160℃以下で混練することがより好ましく、140℃以下で混練することが更に好ましい。
【0057】
射出成形によって成形体を得る場合、前述の通り塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)、可塑剤(B)及び蓄熱カプセル(C)と、必要に応じて用いられるその他の成分を、ドライブレンドあるいは混合ペレットの状態で樹脂組成物が十分に溶融する温度に達した射出成形機に投入し、各種形状の金型に射出して、所望の成形体を得る。この際の成形温度についても、押出成形の場合と同様の設定が好ましい。
【0058】
本発明の蓄熱性樹脂組成物を成形してなるペレットの粒径は、0.1~10mmであることが好ましく、0.5~7.0mmであることがより好ましく、1.0~3.0mmであることがさらに好ましい。ペレットは、さらに所望の形状に押出成形してもよいし、そのまま袋や容器に詰めて蓄熱材として使用してもよい。また、コンクリートやパーティクルボード等とブレンドして建築材料や空調設備として使用することもできる。
【0059】
本発明の蓄熱性樹脂組成物を成形してなるシートの厚さは、0.1~10mmであることが好ましく、1.0~7.0mmであることがより好ましく、2.0~5.0mmであることがさらに好ましい。シートは、壁紙や床材と貼り合せることにより建築材料として使用することができる。また、容器(コンテナ等の底板)と貼り合せることにより保温・保冷効果を付与することができ、物流資材向けに使用することもできる。
【実施例】
【0060】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
[評価方法]
得られた蓄熱性樹脂組成物及びこれを用いた成形体の評価は次の方法により行った。
【0062】
(1)結晶融解熱量ΔHm・蓄熱性
示差走査熱量計(DSC:パーキンエルマージャパン社製「Diamond DSC」)を用いて、0℃から100℃まで、昇温速度10℃/分での加熱昇温過程における樹脂組成物の結晶融解熱量ΔHm[J/g]を測定した。結晶融解熱量ΔHmが40J/g以上のものを合格(蓄熱性○)、40J/g未満のものを不合格(蓄熱性×)とした。
【0063】
(2)折り曲げ性
蓄熱性樹脂組成物を用いて縦100mm、横100mm、厚み2mmのシートサンプルを作製し、箱状物の角に当てがって90°折り曲げた際に、角に追従し、かつ割れが生じなかったものを合格(○)、割れが生じたものを不合格(×)とした。
【0064】
(3)引張破断伸度
JIS K6251に準拠して、引張破断伸度を測定した。引張破断伸度の値が30%以上のものを合格、30%未満のものを不合格とした。
【0065】
(4)耐ブリード性
蓄熱性樹脂組成物を用いて縦100mm、横100mm、厚み2mmのシートサンプルを作製し、熱処理オーブン内で40℃にて2時間保持した。その後、シートを取り出し、シート表面への蓄熱性成分または可塑剤のブリードの有無を指触にて評価した。ブリードが確認されなかったものを合格(○)、ブリードが確認されたものを不合格(×)とした。
【0066】
[使用材料]
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)、可塑剤(B)、及び、蓄熱カプセル(C)等としては、以下のものを用いた。
【0067】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)>
(A)-1:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル成分含有量:10質量%)
(A)-2:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル成分含有量:7質量%)
(A)-3:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル成分含有量:5質量%)
(A)-4:塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル成分含有量:25質量%)
【0068】
<可塑剤(B)>
(B)-1:DINP(ジイソノニルフタレート)
(B)-2:DINA(ジイソノニルアジペート)
【0069】
<蓄熱カプセル(C)>
(C)-1:蓄熱カプセル(殻成分:メラミン系樹脂、芯成分:オクタデカン、殻成分:芯成分=25:75(質量%)、結晶融解熱量ΔHm(B)=150J/g、融点=26℃、粒径=約2μm)
(C)-2:蓄熱カプセル(殻成分:メラミン系樹脂、芯成分:テトラデカン、殻成分:芯成分=25:75(質量%)、結晶融解熱量ΔHm(B)=150J/g、融点=5℃、粒径=約2μm)
【0070】
<その他成分>
熱安定剤:アデカスタブ SC-308E(ADEKA社製、Ca-Zn系熱安定剤)
加工助剤:メタブレン P-550A(三菱ケミカル社製、メチルメタクリレート(MMA)/ブチルアクリレート(BA)共重合体、MMA/BA=88/12質量%)
【0071】
<比較用樹脂材料>
(N)-1:塩化ビニル単独重合体
(N)-2:塩化ビニル-ブチルアクリレート共重合体
【0072】
[実施例及び比較例]
(実施例1)
(A)-1を100質量部に対して、(B)-1を80質量部、(C)-1を123質量部、熱安定剤と加工助剤をそれぞれ1質量部秤量した。これらの混合物をヘンシェルミキサーにて80℃の温度で予備混練し、可塑剤や各種添加剤を樹脂に吸収させた。続いて、150℃に設定した二本ロール設備に予備混練物を投入し、10分間混練した。ロール間のギャップを2mmに設定することで、2mm厚のシートを得た。得られたシートを所定のサイズに裁断し、各種試験を行った。結果を表1に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0073】
(実施例2)
(A)-1を100質量部に対して、(B)-1を60質量部、(C)-1を108質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0074】
(実施例3)
(A)-1を100質量部に対して、(B)-1を100質量部、(C)-1を135質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0075】
(実施例4)
(B)-1の代わりに(B)-2を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0076】
(実施例5)
(A)-1を100質量部に対して、(C)-1を79質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は30質量%であった。
【0077】
(実施例6)
(A)-1を100質量部に対して、(C)-1を185質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は50質量%であった。
【0078】
(実施例7)
(C)-1の代わりに(C)-2を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0079】
(実施例8)
(A)-1の代わりに(A)-2を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0080】
(実施例9)
(A)-1の代わりに(A)-3を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表1に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0081】
(比較例1)
(A)-1を100質量部に対して、(B)-1を使用せず、(C)-1を68質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表2に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0082】
(比較例2)
(A)-1を100質量部に対して、(B)-1を300質量部、(C)-1を268質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表2に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0083】
(比較例3)
(A)-1を100質量部に対して、(B)-1を80質量部、(C)-1を20質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表2に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は10質量%であった。
【0084】
(比較例4)
(A)-1を100質量部に対して、(B)-1を80質量部、(C)-1を425質量部とした以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表2に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は70質量%であった。
【0085】
(比較例5)
(A)-1の代わりに(N)-1を用いた以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表2に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0086】
(比較例6)
(A)-1の代わりに(A)-4を使用した以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った(引張破断伸度は測定せず。)。結果を表2に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0087】
(比較例7)
(A)-1の代わりに(N)-2を用いた以外は、実施例1と同様の方法でサンプル作製及び評価を行った。結果を表2に示す。なお、樹脂組成物全体に占める蓄熱カプセル(C)の含有量は40質量%であった。
【0088】
【0089】
【0090】
表1より次のことが分かる。
実施例1~9に記載のサンプルは、結晶融解熱量ΔHm、折り曲げ性、引張破断伸度、耐ブリード性のすべてにおいて優れている。このことから、本発明の蓄熱性樹脂組成物及びその成形体は、優れた蓄熱性と二次加工性、長期安定性を有しており、建材用途や物流用途等に好適に使用できることが分かる。
なお、実施例1と実施例4との対比から、可塑剤(B)としては、フタル酸エステル系可塑剤を用いることで引張破断伸度を向上させることができることが分かる。
【0091】
一方、比較例1に記載のサンプルは、可塑剤(B)を含んでいないため、剛性が高く、二次加工性に劣る。
比較例2に記載のサンプルは、可塑剤(B)の含有量が多いため、可塑剤のブリードが認められる。
比較例3に記載のサンプルは、蓄熱カプセル(C)の含有量が少ないため、蓄熱性が十分でない。
比較例4に記載のサンプルは、蓄熱カプセル(C)の含有量が多いため、二次加工性が十分でない。
比較例5に記載のサンプルは、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)の代わりに塩化ビニル単独重合体を使用しているため、折り曲げ性や引張破断伸度、すなわち可撓性が十分でなく、ひいては二次加工性に劣る。
比較例6に記載のサンプルは、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)における酢酸ビニル成分量が本発明の規定値を超えることから耐ブリード性に劣る。
比較例7に記載のサンプルは、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(A)の代わりに塩化ビニル-ブチルアクリレート共重合体を使用しているため、折り曲げ性や引張破断伸度、すなわち可撓性が十分でなく、ひいては二次加工性に劣る。
【0092】
以上の通り、蓄熱性樹脂組成物の潜熱量と二次加工性、耐ブリード性を両立することは一般的に難しいが、本発明の蓄熱性樹脂組成物によれば、この課題を解決することができることが分かる。