(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】内燃機関の潤滑装置
(51)【国際特許分類】
F01M 1/06 20060101AFI20221213BHJP
F01M 1/08 20060101ALI20221213BHJP
F16C 7/02 20060101ALI20221213BHJP
F16C 9/04 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F01M1/06 B
F01M1/06 A
F01M1/06 K
F01M1/08 F
F16C7/02
F16C9/04
(21)【出願番号】P 2018159915
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】上野 慎司
(72)【発明者】
【氏名】桐村 宗孝
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-339316(JP,A)
【文献】特開2001-140615(JP,A)
【文献】特開2006-104954(JP,A)
【文献】特許第3382867(JP,B2)
【文献】実開昭57-126503(JP,U)
【文献】実開平04-105911(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0076858(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0031367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/06
F01M 1/08
F01P 3/08
F16C 7/02
F16C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンロッドの少なくとも一方の端部の軸受嵌合面にクランク軸又はピストンのピン軸を支持する軸受が嵌合固定され、
前記
ピン軸に、前記ピン軸の外周面と前記軸受の内周面との間にオイルを供給する給油路が設けられ、
前記端部に、前記ピン軸の外周面と前記軸受の内周面との間を潤滑したオイルを噴射するオイル噴出路が設けられた内燃機関の潤滑装置であって、
前記軸受嵌合
面に、前記ピン軸の外周面と前記軸受の内周面との間を潤滑したオイルを捕集するオイル捕集溝が前記ピン軸の周方向に延在形成され、
前記オイル噴出路は前記オイル捕集溝に連通して設けら
れ、
前記オイル捕集溝の断面積は、前記オイル噴出路に近づくにつれて次第に小さく形成されている、
ことを特徴とする内燃機関の潤滑装置。
【請求項2】
前記端部は、コンロッド本体に設けられ前記軸受嵌合面の半部を形成する本体側半部軸受嵌合面を有する本体側端部と、前記軸受嵌合面の残りの半部を構成するキャップ側半部軸受嵌合面を有し前記本体側端部に着脱可能に結合されるキャップ側端部とで構成され、
前記オイル捕集溝は、前記本体側端部と前記キャップ側端部とが結合される結合箇所を含んで延在している、
ことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の潤滑装置。
【請求項3】
前記オイル噴出路は、前記本体側端部の箇所で前記本体側半部軸受嵌合面の周方向において前記結合箇所と離れた前記オイル捕集溝の端部に連通して設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の内燃機関の潤滑装置。
【請求項4】
前記オイル捕集溝は、前記ピン軸の長手方向に沿った前記軸受嵌合面の幅方向の両側
に設けられ、
前記オイル噴出路は前記両側のオイル捕集溝に連通してそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする請求項1から
3の何れか1項記載の内燃機関の潤滑装置。
【請求項5】
前記端部は、クランク軸を支持する大端部であって、
前記大端部は、前記軸受嵌合面の軸心方向の両側で前記軸心に直交する平面上を延在する環状の大端部端面と、この大端部端面に接続する大端部側面とを有し、
前記クランク軸は、前記ピン軸の軸心方向の両側で前記軸心に直交する平面上を延在し前記大端部端面に摺接可能なクランクアーム端面とを有し、
前記大端部端面に前記クランクアーム端面側に開放状で前記大端部端面の半径方向に延在する凹部が形成設けられ、
前記凹部の延在方向の一端は前記オイル捕集溝に連通すると共に前記凹部の延在方向の他端は前記大端部側面に開放された開口として形成され、
前記オイル噴出路は、前記凹部と前記クランクアーム端面とで構成され、
前記オイル噴出路からオイルが噴出されるオイル噴出口は、前記開口と前記クランクアーム端面とで構成されている、
ことを特徴とする請求項1から
4の何れか1項記載の内燃機関の潤滑装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、ピストンが摺動するシリンダ壁面やピストン裏面にオイルを噴出してピストンとシリンダ壁面の潤滑を図り、あるいは、ピストンを冷却させることで内燃機関の出力の向上を図る潤滑装置が設けられている。
内燃機関では、コンロッドの小端部はピストンのピストンピン軸に軸受を介して結合され、コンロッドの大端部は軸受を介してクランク軸のピン軸に結合されている。
従来の潤滑装置として、クランク軸のピン軸の外周面に開口する給油路を設け、軸受に貫通孔を設け、コンロッドの大端部に、貫通孔に連通しシリンダ壁面にオイルを噴出するオイル噴出路を設けたものが知られている(特許文献1参照)。
この潤滑装置では、加圧されたオイルが給油路に供給された状態で、クランク軸が回転することでピン軸の開口が軸受の貫通孔と合致したときに、オイルが給油路からピン軸の開口、軸受の貫通孔、オイル噴出路を通ってシリンダ壁面に噴出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、軸受の軸受面の面積が貫通孔の分だけ減少することから、軸受とピン軸との間の油膜厚さ、油膜圧力を確保する上で不利となる。
そのため、軸受の軸心方向に沿った幅を大きく確保することで油膜厚さ、油膜圧力を確保する必要がある。
ところが、このような軸受の幅を大きく確保すると、コンロッドの端部の幅、ピン軸の軸心方向の長さを大きく確保することになり、結果的にピン軸の長さが長くなり、内燃機関のコンパクト化を図りつつ内燃機関の出力の向上を図る上で不利となる。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、シリンダ壁面又はピストン裏面に噴出するオイルの量を確保し、内燃機関の出力の向上を図る上で有利な内燃機関の潤滑装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、コンロッドの少なくとも一方の端部の軸受嵌合面にクランク軸又はピストンのピン軸を支持する軸受が嵌合固定され、前記ピン軸に、前記ピン軸の外周面と前記軸受の内周面との間にオイルを供給する給油路が設けられ、前記端部に、前記ピン軸の外周面と前記軸受の内周面との間を潤滑したオイルを噴射するオイル噴出路が設けられた内燃機関の潤滑装置であって、前記軸受嵌合面に、前記ピン軸の外周面と前記軸受の内周面との間を潤滑したオイルを捕集するオイル捕集溝が前記ピン軸の周方向に延在形成され、前記オイル噴出路は前記オイル捕集溝に連通して設けられ、前記オイル捕集溝の断面積は、前記オイル噴出路に近づくにつれて次第に小さく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、オイル捕集溝にピン軸の外周面と軸受の内周面との間を潤滑したオイルの量を多く確保でき、シリンダ壁面又はピストン裏面に噴出するオイルの量を確保し、内燃機関の出力を向上する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る潤滑装置が適用された内燃機関の側面断面図である。
【
図4】コンロッドの大端部の斜視図であり、オイル捕集溝およびオイル噴出路を示す。
【
図5】コンロッドの大端部を別の角度から見た斜視図であり、オイル捕集溝およびオイル噴出路を示す。
【
図6】オイル捕集溝をその延在方向と直交する断面で破断した断面図であり、オイル捕集溝の深さが変化することを示す。
【
図7】軸受メタルのオイルリリーフを示す拡大断面図である。
【
図8】ピストンが下死点に位置した状態を示す内燃機関の正面図である。
【
図9】ピストンが下死点から上方に移動した状態を示す内燃機関の正面図である。
【
図10】ピストンがさらに上方に移動した状態を示す内燃機関の正面図である。
【
図11】ピストンがさらに上方に移動した状態を示す内燃機関の正面図である。
【
図12】ピストンがさらに上方に移動した状態を示す内燃機関の正面図である。
【
図13】ピストンが上死点に近づいた状態を示す内燃機関の正面図である。
【
図14】ピストンがほぼ上死点に位置した状態を示す内燃機関の正面図である。
【
図15】潤滑装置の変形例が適用された内燃機関の側面断面図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図8に示すように、内燃機関10は、クランクケース12に取着されるシリンダブロック14と、シリンダブロック14に取着される不図示のシリンダヘッドと、シリンダブロック14で回転可能に支持されたクランク軸16と、シリンダブロック14に取着されシリンダ壁面1802を構成するシリンダライナー18と、シリンダ壁面1802に摺動可能に設けられたピストン20と、クランク軸16とピストン20とを連結するコンロッド22とを含んで構成されている。
図1に示すように、クランク軸16は、クランクジャーナル24に設けられた複数対のクランクアーム26と、各複数対のクランクアーム26先端間に設けられた複数のピン軸28とを含んで構成されている。
そして、
図8に示すように、クランク軸16のピン軸28とピストン20のピストンピン2002とがコンロッド22で連結されている。
図1に示すように、ピン軸28の長手方向の両端には、ピン軸28の軸心に直交する平面上を延在する環状のクランクアーム端面2602が位置している。
【0009】
図1、
図2、
図8に示すように、コンロッド22は、コンロッド本体30と、コンロッド本体30の長手方向の一方の端部に設けられブッシュ2004を介してピストン20のピストンピン2002に結合される小端部32と、コンロッド本体30の長手方向の他方の端部に設けられ軸受メタル36を介してクランク軸16のピン軸28に結合される大端部34とを備えている。
大端部34は、軸受メタル36が嵌合固定される軸受嵌合面3402と、軸受嵌合面3402の軸心方向の両側で軸受嵌合面3402の軸心に直交する平面上を延在する環状の大端部端面3404と、大端部端面3404の半径方向外側に接続する大端部側面3406とを有している。
大端部34は、コンロッド本体30の長手方向の他方の端部に位置する本体側大端部34Aと、この本体側大端部34Aに着脱可能に結合されるキャップ側大端部34Bとで構成され、これに対応し軸受メタル36も本体側軸受メタル半部36Aとキャップ側軸受メタル半部36Bとで構成されている。
【0010】
図1、
図2,
図3に示すように、本体側大端部34Aは、本体側半部軸受嵌合面3402Aと、両側の本体側半部大端部端面3404Aと、本体側半部大端部端面3404Aの半径方向外側に接続する本体側半部大端部側面3406Aと、結合面3408Aとを有している。
本体側半部軸受嵌合面3402Aは、軸受嵌合面3402の半部を形成し本体側軸受メタル半部36Aが嵌合固定される半円筒面状に形成されている。
両側の本体側半部大端部端面3404Aは、本体側半部軸受嵌合面3402Aの周方向と直交する幅方向両側から起立しクランクアーム端面2602に摺接可能に形成されている。
結合面3408Aは、本体側半部軸受嵌合面3402Aの周方向の両端に設けられ、平坦面で形成され、結合面3408Aにはねじ孔3410Aが形成されている。
【0011】
図1、
図2に示すように、キャップ側大端部34Bは、キャップ側半部軸受嵌合面3402Bと、両側のキャップ側半部大端部端面3404Bと、キャップ側半部大端部端面3404Bの半径方向外側に接続するキャップ側半部大端部側面3406Bと、結合面3408Bとを有している。
キャップ側半部軸受嵌合面3402Bは、軸受嵌合面3402の残りの半部を形成しキャップ側軸受メタル半部36Bが嵌合固定される半円筒面状に形成されている。
両側のキャップ側半部大端部端面3404Bは、キャップ側半部軸受嵌合面3402Bの幅方向両側から起立しクランクアーム端面2602に摺接可能に形成されている。
結合面3408Bは、キャップ側半部軸受嵌合面3402Bの周方向の両端に設けられ、平坦面で形成され、結合面3408Aにはねじ孔3410Aに合致する不図示のボルト挿通孔が形成されている。
【0012】
図1に示すように、本体側軸受メタル半部36Aは、本体側大端部34Aの本体側半部軸受嵌合面3402Aに配置され、キャップ側軸受メタル半部36Bは、キャップ側大端部34Bのキャップ側半部軸受嵌合面3402Bに配置され、それら本体側軸受メタル半部36Aの内周面3602Aとキャップ側軸受メタル半部36Bの内周面3602Bとをピン軸28の外周面2802に合わせ、本体側大端部34Aの結合面3408Aとキャップ側大端部34Bの結合面3408Aとを合わせ、ボルト挿通孔を挿通しねじ孔3410Aに螺合されたボルトによりそれら結合面3408A、3408Bが締結されることにより、本体側軸受メタル半部36Aが本体側半部軸受嵌合面3402Aに嵌合固定され、キャップ側軸受メタル半部36Bがキャップ側半部軸受嵌合面3402Bに嵌合固定される。
なお、説明の便宜上、本体側大端部34Aの結合面3408Aとキャップ側大端部34Bの結合面3408Bとがボルトにより締結された箇所を、本体側大端部34Aとキャップ側大端部34Bの結合箇所38という。
したがって、本体側軸受メタル半部36Aの内周面3602Aとキャップ側軸受メタル半部36Bの内周面3602Bとがピン軸28の軸受面3610を構成している。
【0013】
図7に示すように、本体側大端部34Aの結合面3408Aとキャップ側大端部34Bの結合面3408Aとを合わせた箇所では、本体側軸受メタル半部36Aの内周面3602Aとキャップ側軸受メタル半部36Bの内周面3602Bに曲率半径の小さい湾曲面3620A、3620Bが形成され、ピン軸28の外周面2802とそれら湾曲面3620A、3620Bとの隙間によってピン軸28の潤滑後のオイルを速やかに排出するためのオイルリリーフ37が設けられている。
例えば、湾曲面3620A、3620Bを除く軸受メタル36の内周面3602A、3602Bとピン軸28の外周面2802との間の隙間が数十μmであるのに対して、湾曲面3620A、3620Bとピン軸28の外周面2802との間の隙間、すなわち、オイルリリーフ37の厚さは数百μmであり、上記隙間に対して10倍程度大きく確保され、オイルリリーフ37にはそれ以外の箇所よりも厚い油膜が形成される。
【0014】
次に潤滑装置40について説明する。
図1に示すように、潤滑装置40は、給油路42と、オイル捕集溝44と、オイル噴出路46とを含んで構成されている。
給油路42は、ピン軸28の外周面2802と軸受メタル36の内周面3602A、3602Bとの間にオイルを供給する箇所であり、給油路42はピン軸28毎に独立して設けられている。
クランク軸16は、クランクジャーナル24がシリンダブロック14に設けられた軸受48によって回転可能に支持されている。
給油路42は、シリンダブロック14の壁部からクランクジャーナル24の各軸受48にオイルを供給する上流側の油路50と、クランクジャーナル24の軸受48に潤滑されたオイルをピン軸28に供給する下流側の油路52とを含んで構成されている。
下流側の油路52は、その延在方向の一端がピン軸28の外周面2802に開放された開口5202として形成され、その延在方向の他端がピン軸28に隣接するクランクジャーナル24の外周面に開放された開口5204として形成されている。
すなわち、下流側の油路52は、クランクジャーナル24の外周面の開口5204からクランクアーム26の内部を通る第1油路52Aと、この第1油路52Aに連通しピン軸28の内部を通りピン軸28の外周面2802の開口5202に至る第2油路52Bとを含んで構成されている。
そして、第2油路52Bの開口5202からピン軸28の外周面2802と、本体側軸受メタル半部36Aおよびキャップ側軸受メタル半部36Bの内周面3602A、3602Bとの間にオイルが供給される。
【0015】
図1から
図5に示すように、オイル捕集溝44は、軸受嵌合面3402に設けられている。
オイル捕集溝44は、給油路42から供給されるオイルを捕集する箇所であり、ピン軸28の周方向に、すなわち、軸受嵌合面3402の周方向に延在形成されている。
本実施の形態では、オイル捕集溝44は、軸受嵌合面3402の周方向と直交する軸受嵌合面3402の幅方向の両側に設けられている。
また、本実施の形態では、
図2に示すように、オイル捕集溝44は、その延在方向の中間部に、本体側大端部34Aとキャップ側大端部34Bの結合箇所38が位置するように設けられている。
言い換えると、オイル捕集溝44は、本体側半部軸受嵌合面3402Aとキャップ側半部軸受嵌合面3402Bとにわたって延在形成されている。
オイル捕集溝44の断面形状は、U型やV型、L型など従来公知の様々な形状が採用可能である。
図6に実線、二点鎖線、点線で示すように、オイル捕集溝44は、その断面積がオイル噴出路46に近づくにつれて次第に小さく形成されている。
詳細には、オイル捕集溝44は、深さと、オイル捕集溝44の延在方向と直交する方向の幅とが、オイル噴出路46に近づくにつれて次第に小さく形成されている。
本実施の形態では、オイル噴出路46に接続されるオイル捕集溝44の端部の断面積は、オイル捕集溝44の延在方向の中間部の断面積の1/2となっている。
なお、
図15に示すように、オイル捕集溝44は、ピン軸28の外周面2802に形成してもよい。
【0016】
図1から
図5に示すように、オイル噴出路46は、本体側大端部34Aの箇所でピン軸28の周方向において本体側大端部34Aとキャップ側大端部34Bの結合箇所38と離れたオイル捕集溝44の端部に連通して設けられている。
本実施の形態では、オイル噴出路46は、軸受嵌合面3402の幅方向の両側のオイル捕集溝44の端部に連通して2つ設けられている。
オイル噴出路46は、本体側半部大端部端面3404Aに、クランクアーム端面2602側に開放状で本体側半部大端部端面3404Aの半径上を延在する凹部4602で形成されている。
図4、
図5に示すように、凹部4602の延在方向の一端は、オイル捕集溝44の延在方向の端部に連通し、凹部4602の延在方向の他端は、本体側半部大端部側面3406Aに開放された開口4604として形成されている。
この凹部4602はクランクアーム端面2602側に開放状に形成されているが、クランクアーム端面2602と本体側大端部端面3404とが摺接可能に接触することで凹部4602によりオイル噴出路46が形成され、本体側半部大端部端面3404Aの半径方向外側の開口4604がオイル噴出路46からオイルが噴出されるオイル噴出口47となっている。
なお、開口4604からシリンダ壁面1802にオイルを噴出させる関係上、
図2、
図4に示すように、開口4604を含むオイル噴出路46の向きは、結合面3408Aよりもコンロッド本体30側に傾いて形成されている。
なお、
図15に示すように、ピン軸28の外周面2802にオイル捕集溝44を形成した場合には、オイル噴出路46は、クランクアーム端面2602と軸受メタル36の端面との隙間を介してオイル捕集溝44に連通する。
【0017】
次に作用効果について説明する。
図8から
図14は、内燃機関10の圧縮行程あるいは排気行程においてピストン20が下死点から上死点の近傍に向かって移動する際のクランク軸16、コンロッド22、ピストン20の動作を示す内燃機関10の正面図である。
【0018】
図8に示すようにピストン20の下死点において、第2油路52Bの開口5202は、ピン軸28の軸方向から見て、オイル噴出路46と反対側のオイル捕集溝44の端部に位置し、オイル捕集溝44にオイルが捕集され始まる。
一方、クランクジャーナル24を中心として回転するピン軸28の回転により生じる遠心力Fの向きと、オイル噴出路46のオイル噴出口47とは、ピン軸28の周方向において位相がずれているため、オイル噴出路46のオイル噴出口47からオイルは噴出されない。
なお、オイル捕集溝44に捕集されたオイルは、本実施の形態では、クランク右回りの内燃機関10であることから、遠心力、および、
図8から
図14に示すピン軸28とコンロッド22の相対変位によって右回りに流動する。
【0019】
図9に示すようにクランク軸16が回転しピン軸28が上昇すると、オイル捕集溝44にオイルが捕集されつつ、第2油路52Bの開口5202は、ピン軸28の軸方向から見て、本体側大端部34Aとキャップ側大端部34Bの結合箇所38のオイルリリーフ37に近づいて行く。
この場合も、遠心力Fの向きとオイル噴出路46のオイル噴出口47とは、ピン軸28の周方向において位相がずれているため、オイル噴出路46のオイル噴出口47からオイルは噴出されない。
【0020】
図10に示すようにクランク軸16がさらに回転しピン軸28が上昇すると、オイル捕集溝44にオイルが捕集されつつ、第2油路52Bの開口5202は、ピン軸28の軸方向から見て、オイルリリーフ37内に位置する。
このとき、ピン軸28の軸方向から見て、第2油路52Bの開口5202がオイルリリーフ37内に位置するため、オイル捕集溝44に捕集されるオイルの量は最大となる。
この場合も、遠心力Fの向きとオイル噴出路46のオイル噴出口47とは、ピン軸28の周方向において位相がずれているため、オイル噴出路46のオイル噴出口47からオイルは噴出されない。
【0021】
図11に示すようにクランク軸16がさらに回転しピン軸28が上昇すると、オイル捕集溝44にオイルが捕集されつつ、第2油路52Bの開口5202は、ピン軸28の軸方向から見て、オイル噴出路46を通過し、オイル捕集溝44の端部に至る。
この場合も、遠心力Fの向きとオイル噴出路46のオイル噴出口47とは、ピン軸28の周方向において位相がずれているため、オイル噴出路46のオイル噴出口47からオイルは噴出されない。
【0022】
図12に示すようにクランク軸16がさらに回転しピン軸28が上昇し、ピストン20が上死点近傍となると、第2油路52Bの開口5202はオイル捕集溝44の端部を通過し、そのため、オイル捕集溝44に捕集されるオイルの量は少なくなる。
一方、遠心力Fの向きとオイル噴出路46のオイル噴出口47とは、ピン軸28の周方向において位相が一致するため、オイル噴出路46のオイル噴出口47からオイルがシリンダ壁面1802の下端に向けて矢印Aで示すように噴出される。
この際、オイル噴射路のオイル噴出口47から噴射されるオイルの方向は、オイル噴射路のオイル噴出口47のオイルに加わる遠心力Fの向きとオイル噴出口47の移動方向および移動速度とによって決定される。
また、ピストン20の上死点の近傍では、
図1に示すように、本体側軸受メタル半部36Aの内周面3602Aとピン軸28の外周面2802との間の油膜が圧縮されるので、オイル噴射路のオイル噴出口47からオイルを勢いよく噴出する上で有利となる。
【0023】
図13に示すようにクランク軸16がさらに回転しピン軸28が上昇し、ピストン20がさらに上死点に近づくと、第2油路52Bの開口5202がオイル捕集溝44の端部を通過していることから、オイル捕集溝44に捕集されるオイルの量は少なくなる。
一方、遠心力Fの向きとオイル噴出路46のオイル噴出口47とは、ピン軸28の周方向において位相が一致するため、オイル噴出路46のオイル噴出口47からオイルがシリンダ壁面1802の下端よりも上方の下部に向けて矢印Aで示すように噴出される。
この場合も、ピストン20の上死点の近傍では、
図1に示すように、本体側軸受メタル半部36Aの内周面3602Aとピン軸28の外周面2802との間の油膜が圧縮されるので、オイル噴射路のオイル噴出口47からオイルを勢いよく噴出する上で有利となる。
【0024】
図14に示すようにクランク軸16がさらに回転しピン軸28が上昇し、ピストン20がほぼ上死点に位置すると、第2油路52Bの開口5202がオイル捕集溝44の端部を通過していることから、オイル捕集溝44に捕集されるオイルの量は少なくなる。
一方、遠心力Fの向きとオイル噴出路46のオイル噴出口47とは、ピン軸28の周方向において位相が一致するため、オイル噴出路46のオイル噴出口47からオイルがシリンダ壁面1802の上部に向けて矢印Aで示すように噴出される。
この場合も、ピストン20の上死点の近傍では、
図1に示すように、本体側軸受メタル半部36Aの内周面3602Aとピン軸28の外周面2802との間の油膜が圧縮されるので、オイル噴射路のオイル噴出口47からオイルを勢いよく噴出する上で有利となる。
【0025】
さらにクランク軸16が回転すると、ピストン20が上死点から下死点に向かい、第2油路52Bの開口5202がオイル捕集溝44の端部を通過していることから、オイル捕集溝44に捕集されるオイルの量は少なく、また、遠心力Fの向きとオイル噴出路46のオイル噴出口47とは、ピン軸28の周方向において位相がずれているため、オイル噴出路46のオイル噴出口47からオイルは噴出されない。
さらにクランク軸16が回転し、
図8に示すようにピストン20が下死点に位置すると、前記と同様に、第2油路52Bの開口5202は、ピン軸28の軸方向から見て、オイル噴出路46と反対側のオイル捕集溝44の端部に位置し、オイル捕集溝44にオイルが捕集され始め、以後、上記と同様な動作が繰り返して行なわれる。
【0026】
本実施の形態によれば、軸受嵌合面3402の外周面に、または、ピン軸28の外周面2802に、ピン軸28の外周面2802と軸受メタル36の内周面3602A、3602Bとの間を潤滑したオイルを捕集するオイル捕集溝44をピン軸28の周方向に延在形成し、オイル噴出路46をオイル捕集溝44に連通して設けた。
したがって、オイル捕集溝44にピン軸28の外周面2802と軸受メタル36の内周面3602A、3602Bとの間を潤滑したオイルの量を多く確保でき、シリンダ壁面1802に噴出するオイルの量を確保し、シリンダ壁面1802に多くの量のオイルを潤滑させる上で有利となり、内燃機関10の出力を向上する上で有利となる。
また、軸受メタル36に従来のように孔を形成するなどの何らの加工を施すことがないので、軸受メタル36の軸受面の面積を確保でき、したがって、軸受メタル36とピン軸28との間の油膜厚さ、油膜圧力を確保する上で有利となり、また、従来のようにコンロッド22の大端部34の幅やピン軸28の軸心方向の長さを大きくする不具合を解消でき、クランク軸16の長さを大きくすることなく内燃機関10のコンパクト化を図る上で有利となる。
また、オイル捕集溝44にオイルを捕集することから、内燃機関10の始動直後からシリンダ壁面1802に噴出するオイルの量を確保する上で有利となり、シリンダライナー18およびピストン20の耐久性を高める上で有利となる。
【0027】
また、本実施の形態では、オイル捕集溝44は、その断面積がオイル噴出路46に近づくにつれて次第に小さく形成されているので、オイル噴出路46のオイル噴出口47から噴出されるオイルの噴出速度を高め、シリンダ壁面1802にオイルを確実に到達させる上で有利となる。
例えば、本実施の形態では、オイル噴出路46に接続されるオイル捕集溝44の端部の断面積がオイル捕集溝44の延在方向の中間部の断面積の1/2となっているので、オイル捕集溝44の中間部におけるオイルの流速に対してオイル噴出路46に接続されるオイル捕集溝44の端部におけるオイルの流速が約2倍となり、オイル噴出口47から噴出されるオイルの噴出速度を高める上で有利となる。
また、オイル捕集溝44は、本体側大端部34Aとキャップ側大端部34Bとが結合される結合箇所38を含んで延在しているので、オイル捕集溝44にピン軸28の外周面2802と軸受メタル36の内周面3602A、3602Bとの間を潤滑したオイルの量を多く確保する上で有利となり、シリンダ壁面1802に噴出するオイルの量を確保し、シリンダ壁面1802に多くの量のオイルを潤滑させる上で有利となる。
【0028】
また、本実施の形態では、オイル捕集溝44は、ピン軸28の長手方向に沿った軸受嵌合面3402の幅方向の両側に、あるいは、ピン軸28の長手方向の両側に設けられているので、オイル捕集溝44にピン軸28の外周面2802と軸受メタル36の内周面3602A、3602Bとの間を潤滑したオイルの量を多く確保する上で有利となり、シリンダ壁面1802に噴出するオイルの量を確保し、シリンダ壁面1802に多くの量のオイルを潤滑させる上で有利となる。
また、オイル噴出路46は、本体側大端部34Aに、オイル捕集溝44に連通するように貫設した孔などで形成してもよいが、本実施の形態のように、オイル噴出路46を、大端部端面3404に設けた凹部4602とクランクアーム端面2602とで構成すると、オイル噴出路46を簡単に確実に形成する上で有利となる。
なお、軸受の材質についてはメタルに限定されず、樹脂など従来公知の様々な材質でもよいことは無論である。
また、上記実施形態では、シリンダ壁面1802にオイルを噴出する構造で説明したが、冷却目的でピストン20の裏面にオイルを噴出させる構造としてもよく、その場合は、上記と同様にピストン20の裏面に噴出するオイルの量を確保することができるので、多くのオイルによりピストン20を冷却することができ、内燃機関10の出力の向上を図る上で有利となる。
すなわち、上記実施形態では、コンロッド本体30の大端部34側となるクランク軸16との間に介装される軸受メタル36を用いて説明したが、本発明をコンロッド本体30の小端部32側となるピストン20側の軸受に適用してオイル補修溝をピストン20側の軸受の軸受嵌合面に設けてもよく、あるいは、ピストン側のピン軸の外周面に設けても良い。
【符号の説明】
【0029】
10 内燃機関
16 クランク軸
1802 シリンダ壁面
20 ピストン
2002 ピストンピン(ピン軸)
22 コンロッド
2602 クランクアーム端面
28 ピン軸
2802 外周面
30 コンロッド本体
32 小端部(端部)
34 大端部(端部)
3402 軸受嵌合面
3404 大端部端面
3406 大端部側面
34A 本体側大端部(本体側端部)
3402A 本体側半部軸受嵌合面
34B キャップ側大端部(キャップ側端部)
3402B キャップ側半部軸受嵌合面
36 軸受メタル(軸受)
3602A 内周面
3602B 内周面
37 オイルリリーフ
38 結合箇所
40 潤滑装置
42 給油路
44 オイル捕集溝
46 オイル噴出路
4602 凹部
4604 開口
47 オイル噴出口