(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20221213BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
F25B43/00 S
F25B43/00 V
F25B1/00 101Z
F25B1/00 396Z
(21)【出願番号】P 2018177828
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板倉 俊二
(72)【発明者】
【氏名】小峰 健治
(72)【発明者】
【氏名】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将弘
(72)【発明者】
【氏名】船田 和也
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/189717(WO,A1)
【文献】特開平11-228947(JP,A)
【文献】特開2015-143359(JP,A)
【文献】国際公開第2010/073586(WO,A1)
【文献】特開2018-059638(JP,A)
【文献】特開平09-033141(JP,A)
【文献】特開平09-138014(JP,A)
【文献】特開2011-208860(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157325(WO,A1)
【文献】特開平11-142019(JP,A)
【文献】特開2017-207251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 - 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒、エーテル結合を持つ冷媒、のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒が充填された冷媒回路と、
前記冷媒回路に接続され、内部に潤滑油が貯留された圧縮機と、
前記圧縮機に前記混合冷媒を送るアキュムレータと、
前記冷媒回路に接続された室外機及び室内機と、
前記冷媒回路において前記室外機と前記室内機とを接続する接続配管に設けられた閉鎖弁と、
前記圧縮機から前記混合冷媒が流入する第1ポートと、
暖房運転時に前記
室内機から前記混合冷媒が流入する
と共に冷房運転時に前記室内機へ前記混合冷媒を送る第2ポートと、前記アキュムレータへ前記混合冷媒を送る第3ポートと、
前記暖房運転時に前記
室内機へ前記混合冷媒を送る
と共に前記冷房運転時に前記室内機から前記混合冷媒が流入する第4ポートと、を有し、前記冷媒回路における前記圧縮機と前記閉鎖弁との間に配置された四方弁と、
前記四方弁の前記第3ポートと前記アキュムレータとの間に配置され、前記混合冷媒中から水分または酸素の少なくとも一方を除去する除去部と、
前記圧縮機と前記四方弁の前記第1ポートとの間に配置され、前記混合冷媒中から前記潤滑油を分離する油分離器と、を備え
、
前記除去部は、前記油分離器で分離された前記潤滑油が流れる油流路と、前記除去部を通過した前記混合冷媒が流れる冷媒流路との合流部と、前記四方弁との間に設けられている、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記除去部は、脱酸素剤及び乾燥剤の少なくとも一方を含む除去剤を有し、
前記除去剤の体積は、前記冷媒回路の管内容積に応じて定められている、
請求項
1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記冷媒回路は、前記除去部が設けられた配管に、前記除去部を迂回して前記混合冷媒を流すバイパス配管が設けられている、
請求項1
または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記配管に設けられ、冷媒の流れを前記除去部へ向かう流れと前記バイパス配管へ向かう流れとに切り換える流路切換部材と、
前記流路切換部材の切換動作を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記圧縮機の運転開始時に前記除去部へ前記混合冷媒を流し、前記除去部へ前記混合冷媒を所定時間流した後に前記混合冷媒が前記バイパス配管へ流れるように前記流路切換部材を制御する、
請求項
3に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気調和機、冷蔵機器、給湯器等の冷凍サイクル装置には、冷媒が循環する冷媒回路に、圧縮機及びアキュムレータが接続されたものがある。このような冷凍サイクル装置で使用する冷媒は、GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)がより一層低い冷媒へ切り替えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GWPが低い冷媒としては、従来の冷媒と比べて分子間結合が弱い冷媒の利用が検討されている。このような冷媒は、大気中で分解し易く、温暖化への影響も小さくなるので、環境への負荷を低減する観点において望ましい。しかしながら、分子間結合が弱い冷媒の一例として、単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒は、高温環境下での安定性が低く、高温環境下で分解されたときや、冷媒回路に残留する水分や酸素と反応することで酸化や分解を起こしたときに、冷媒から酸が発生するおそれがある。冷凍サイクル装置内で酸が発生した場合には、その酸によって冷媒の分解が促進され、また金属部品が腐食するなどにより、冷凍サイクル装置の損傷を招くおそれがある。この対策としては、冷媒中の水分を除去する乾燥剤をアキュムレータ内に配置するものが知られている(特許文献1)。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、冷媒が酸化、分解を起こすことを抑制できる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する冷凍サイクル装置の一態様は、炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒、炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒、エーテル結合を持つ冷媒、のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒が充填された冷媒回路と、前記冷媒回路に接続され、内部に潤滑油が貯留された圧縮機と、前記圧縮機に前記混合冷媒を送るアキュムレータと、前記冷媒回路に接続された室外機及び室内機と、前記冷媒回路において前記室外機と前記室内機とを接続する接続配管に設けられた閉鎖弁と、前記圧縮機から前記混合冷媒が流入する第1ポートと、暖房運転時に前記室内機から前記混合冷媒が流入すると共に冷房運転時に前記室内機へ前記混合冷媒を送る第2ポートと、前記アキュムレータへ前記混合冷媒を送る第3ポートと、前記暖房運転時に前記室内機へ前記混合冷媒を送ると共に前記冷房運転時に前記室内機から前記混合冷媒が流入する第4ポートと、を有し、前記冷媒回路における前記圧縮機と前記閉鎖弁との間に配置された四方弁と、前記四方弁の前記第3ポートと前記アキュムレータとの間に配置され、前記混合冷媒中から水分または酸素の少なくとも一方を除去する除去部と、前記圧縮機と前記四方弁の前記第1ポートとの間に配置され、前記混合冷媒中から前記潤滑油を分離する油分離器と、を備え、前記除去部は、前記油分離器で分離された前記潤滑油が流れる油流路と、前記除去部を通過した前記混合冷媒が流れる冷媒流路との合流部と、前記四方弁との間に設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する冷凍サイクル装置の一態様によれば、冷媒が酸化や分解を起こすことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。
【
図2】
図2は、変形例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する冷凍サイクル装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する冷凍サイクル装置が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
実施例の冷凍サイクル装置としては、空気調和装置を一例として、1台の室外機に1台の室内機が接続され、室内機が冷房運転または暖房運転を行うことが可能に構成されたものを説明する。
図1は、実施例の冷凍サイクル装置全体を示す模式図である。
【0011】
[冷媒]
まず、実施例の冷凍サイクル装置1で使用される冷媒について説明する。実施例の冷凍サイクル装置1は、「炭素原子間の結合として、単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒」、「炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒」、「エーテル結合を持つ冷媒」のうち、少なくとも一つを含む低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒は、例えば、炭素原子間の二重結合を有するHFO冷媒や、炭素原子間の三重結合を有するトリフルオロプロピンがある。また、炭素の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒としては、トリフルオロヨードメタンがあり、エーテル結合(HFE冷媒とも言う)を持つ冷媒としてはHFE-143m等が挙げられる。これらの冷媒は、冷凍サイクル装置の中での安定性が低い。また、これらの冷媒は、大気中での安定性も低く、GWPが比較的低い傾向がある。その代わり、当該冷媒は、圧力が比較的低い。圧力の低い冷媒は、冷凍サイクル装置の作動流体として用いると、冷媒性能の指標の一つである体積能力(単位はkJ/m3)が低くなる。そのため、冷凍サイクル装置の作動流体として用いる場合は、他の冷媒性能の高い冷媒(例えば、R32)と混合して用いることが考えられている。本実施例では、炭素原子間に単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒の「GWPが低い」という、環境負荷が小さいという特性を十分に発揮するため、炭素原子間の結合として単結合以外の炭素間結合を持つ冷媒を少なくとも20重量%以上含む混合冷媒を作動流体として用いる。
【0012】
炭素原子間の結合として、単結合を持つ冷媒のうち、冷凍サイクル装置で使用された実績があり、不燃性、低毒性、かつ、オゾン層破壊係数(ODP)=0の冷媒でGWPが一番低い単一冷媒はR134a(GWP:1430)である。本実施例の「低GWP冷媒」はR134aよりもGWPが低いものとする。
ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、塩素(原子量:35.5)と炭素との結合を有するR12を代表としたクロロフルオロカーボン、臭素(原子量:79.9)と炭素との結合を持つハロン1301、ヨウ素(原子量:126.9)と炭素との結合を持つトリフルオロヨードメタン(CF3I)がある。
塩素を含むR12は、GWPが10900である。臭素を含むハロン1301は、GWPが7140である。ヨウ素を含むトリフルオロヨードメタンは、GWPが1以下である。このことからわかるように、ハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒は、ハロゲン族元素の原子量が大きい程、GWPが低い。なお、上記した各冷媒のGWPは、「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律施行規則第一条第三項及びフロン類算定漏えい量等の報告等に関する命令第二条第三号の規定に基づき、国際標準化機構の規格八一七等に基づき、環境大臣及び経済産業大臣が定める種類並びにフロン類の種類ごとに地球の温暖化をもたらす程度の二酸化炭素に係る当該程度に対する比を示す数値として国際的に認められた知見に基づき環境大臣及び経済産業大臣が定める係数(フロン類GWP告示)(平成28年経済産業省・環境省告示第2号)」において定められたものである。トリフルオロヨードメタンのGWPは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、略称:NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization)[平成30年8月10日検索]のインターネットサイト<URL:http://www.nedo.go.jp/hyoukabu/articles/201207f_tech/index.html>において定められたものである。
【0013】
ハロゲン族元素の原子量と、当該ハロゲン族元素を含む代表的な冷媒のGWPの関係は、以下の式で示すことができる。
(原子量)=-4.0×10-8×(GWP)2-3.0×10-4×(GWP)+10.58
上記式から、GWPをR134a(GWP:1430)よりも低くするためには、炭素(原子量:12)の10倍を超える原子量のハロゲン族元素と炭素との単結合を持つ冷媒であることが必要だとわかる。
説明の便宜上、以下の説明において単に冷媒と称した場合には、上述した混合冷媒を指す。
【0014】
[冷凍サイクル装置の構成]
図1に示すように、実施例の冷凍サイクル装置1は、室外機2と、室外機2に接続配管としての液管8及びガス管9を介して接続された室内機5と、を備えている。液管8は、一端が室外機2の閉鎖弁25に接続され、他端が分岐して室内機5の各液管接続部53にそれぞれ接続されている。ガス管9は、一端が室外機2の閉鎖弁26に接続され、他端が分岐して室内機5の各ガス管接続部54にそれぞれ接続されている。以上により、冷凍サイクル装置1が有する冷媒回路100が構成されている。
【0015】
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、室外膨張弁24と、液管8の一端が接続された閉鎖弁25と、ガス管9の一端が接続された閉鎖弁26と、冷媒貯留器であるアキュムレータ28と、室外ファン27と、を備えている。室外ファン27を除くこれら各部は、後述する各冷媒配管を介して相互に接続されており、冷媒回路100の一部をなす室外機冷媒回路20を構成している。
【0016】
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御されるモータ(図示せず)によって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型の圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側は、圧縮機21から吐出された冷媒中から冷凍機油10を分離する油分離器37と吐出管41aを介して接続されている。また、油分離器37は、後述する四方弁22のポートaと冷媒配管41bを介して接続されており、冷凍機油10から分離された冷媒が四方弁22へ送られる。さらに、油分離器37は、アキュムレータ28の冷媒流入側と冷媒配管41cを介して接続されており、冷媒から分離された冷凍機油10がアキュムレータ28へ送られる。冷媒配管41cには、油分離器37からの冷凍機油10を減圧するためのキャピラリーチューブ40が設けられている。なお、冷媒配管41cには、キャピラリーチューブ40の代わりに減圧弁(図示せず)が設けられてもよい。上述のように油分離器37は、冷媒回路100において相対的に高圧の冷媒が流れる高圧回路部100Aに接続されている。圧縮機21の冷媒吸入側は、アキュムレータ28の冷媒流出側と吸入管42を介して接続されている。このように圧縮機21は、冷媒が充填された冷媒回路100に接続されている。また、圧縮機21の内部には、
図1に示すように、摺動部分(図示せず)を潤滑する潤滑油としての冷凍機油10が貯留されている。
【0017】
四方弁22は、冷媒の流れる方向を切り換えるための切換弁であり、4つのポートa、b、c、dを有している。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出側に吐出管41aで接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口に冷媒配管43で接続されている。ポートcは、アキュムレータ28の冷媒流入側、すなわち冷媒配管41cの下流側に冷媒配管46を介して接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26に室外機ガス管45で接続されている。
【0018】
冷媒配管46には、冷媒中から水分または酸素の少なくとも一方を除去するための除去部38が設けられている。また、冷媒配管46には、除去部38を迂回して冷媒を流すバイパス配管47が、除去部38の上流側と下流側とを連結して設けられている。除去部38は、冷媒回路100において相対的に低圧の冷媒が流れる低圧回路部100Bに接続されており、アキュムレータ28の冷媒吸入側に配置されている。バイパス配管47と冷媒配管46との接続部分には、流路切換部材としての切換弁48が設けられている。切換弁48によって、四方弁22のポートcからの冷媒が、除去部38へ向かう流れと、除去部38を迂回しバイパス配管47へ向かう流れとの二方へ切り換えられる。切換弁48は、後述する制御部としての室外機制御回路200によって切換動作が制御される。
【0019】
室外熱交換器23は、室外機2の内部に取り込まれた外気を、冷媒と後述する室外ファン27による送風によって熱交換させる。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述のように四方弁22のポートbに冷媒配管43で接続されており、他方の冷媒出入口が室外機液管44を介して閉鎖弁25に接続されている。
【0020】
室外膨張弁24は、室外機液管44に設けられている。室外膨張弁24は、電子膨張弁であり、その開度が調整されることにより、室外熱交換器23に流入する冷媒量、または、室外熱交換器23から流出する冷媒量を調整する。室外膨張弁24の開度は、冷凍サイクル装置1が冷房運転を行っている場合に全開とされる。また、冷凍サイクル装置1が暖房運転を行っている場合は、後述する吐出温度センサ33が検出した圧縮機21の吐出温度に応じて、室外膨張弁24の開度を制御することにより、冷媒の吐出温度が、圧縮機21の使用上の上限値を超えないように調整される。
【0021】
室外ファン27は、樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、吸込口(図示せず)から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を、吹出口(図示せず)から室外機2の外部へ放出する。
【0022】
上述のように、アキュムレータ28の冷媒流入側は四方弁22のポートcに冷媒配管46を介して接続されるとともに、アキュムレータ28の冷媒流出側が圧縮機21の冷媒吸入側に吸入管42を介して接続されている。このように、アキュムレータ28は、冷媒回路100と圧縮機21とに接続されている。アキュムレータ28は、冷媒配管46からアキュムレータ28の内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離してガス冷媒を圧縮機21に吸入させる。また、アキュムレータ28は、圧縮機21から冷媒回路100を経て流入した冷凍機油10を、油戻し穴30aを通して液冷媒と共に吸引し、ガス冷媒と共に液冷媒及び冷凍機油10を圧縮機21へ戻す。
【0023】
また、室外機2は、上述した構成に加えて、各種のセンサを有している。
図1に示すように、吐出管41には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ31と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33が設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口の近傍には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ32と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ34とが設けられている。
【0024】
室外機液管44における室外熱交換器23と室外膨張弁24との間には、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度、または室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ35が設けられている。そして、室外機2の吸込口(図示せず)の近傍には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36が設けられている。
【0025】
また、室外機2は、制御部としての室外機制御回路200を備えている。室外機制御回路200は、室外機2の電装品箱(図示せず)に格納されている制御基板に搭載されている。室外機制御回路200は、室外機2の各種センサが検出した検出結果及び制御信号に基づいて、圧縮機21及び室外ファン27の駆動制御を行う。また、室外機制御回路200は、室外機2の各種センサが検出した検出結果及び制御信号に基づいて、四方弁22の切り換え制御を行うと共に、室外膨張弁24の開度を調整する。
【0026】
次に、室内機5について説明する。室内機5は、室内熱交換器51と、室内膨張弁52と、分岐した液管8の他端が接続された液管接続部53と、分岐したガス管9の他端が接続されたガス管接続部54と、室内ファン55と、を備えている。そして、室内ファン55を除くこれら各部は、後述する各冷媒配管を介して相互に接続されて、冷媒回路100の一部をなす室内機冷媒回路50を構成している。
【0027】
室内熱交換器51は、吸込口(図示せず)から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を、冷媒と後述する室内ファン55による送風によって熱交換させる。室内熱交換器51は、一方の冷媒出入口と液管接続部53が室内機液管71で接続されており、他方の冷媒出入口とガス管接続部54が室内機ガス管72で接続されている。室内熱交換器51は、室内機5が冷房運転を行う場合に蒸発器として機能し、室内機5が暖房運転を行う場合に凝縮器として機能する。
【0028】
室内膨張弁52は、室内機液管71に設けられている。室内膨張弁52は、電子膨張弁であり、室内熱交換器51が蒸発器として機能する場合、すなわち室内機5が冷房運転を行う場合、室内熱交換器51の冷媒出口(ガス管接続部54側)での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように調整される。ここで、目標冷媒過熱度とは、室内機5で十分な冷房能力が発揮されるための冷媒過熱度である。また、室内膨張弁52は、室内熱交換器51が凝縮器として機能する場合、すなわち室内機5が暖房運転を行う場合、室内熱交換器51の冷媒出口(液管接続部53側)での冷媒過冷却度が平均冷媒過冷却度となるように調整される。
【0029】
室内ファン55は、樹脂材で形成されており、室内熱交換器51の近傍に配置されている。室内ファン55は、ファンモータ(図示せず)によって回転されることで、吸込口(図示せず)から室内機5の内に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を吹出口(図示せず)から室内へ供給する。
【0030】
上述した構成に加えて、室内機5には各種のセンサが設けられている。室内機液管71における室内熱交換器51と室内膨張弁52との間には、室内熱交換器51に流入、または室内熱交換器51から流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ61が設けられている。室内機ガス管72には、室内熱交換器51から流出、または室内熱交換器51に流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ62が設けられている。室内機5の吸込口(図示せず)の近傍には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度、すなわち吸込温度を検出する吸込温度センサ63が設けられている。室内機5の吹出口(図示せず)の近傍には、室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って室内機5から室内に放出される空気の温度、すなわち吹出温度を検出する吹出温度センサ64が設けられている。
【0031】
また、室内機5は、室内機制御回路500を備えている。室内機制御回路500は、室内機5の電装品箱(図示せず)に格納された制御基板に搭載されている。室内機制御回路500は、室内機5の各種センサが検出した検出結果やリモコン及び室外機2から送信された信号に基づいて、室内膨張弁52の開度調整や室内ファン55の駆動制御を行う。なお、冷凍サイクル装置1の制御回路は、上述の室外機制御回路200と室内機制御回路500とによって構成される。
【0032】
(冷凍サイクル装置の動作)
次に、本実施形態における冷凍サイクル装置1の空調運転時の冷媒回路100における冷媒の流れや各部の動作について、
図1を用いて説明する。以下、室内機5が暖房運転を行う場合について説明し、冷房/除霜運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、
図1における矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示している。
【0033】
図1に示すように、室内機5が暖房運転を行う場合、室外機制御回路200は、四方弁22を
図1中に実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdを連通させ、ポートbとポートcを連通させるように切り換える。これにより、冷媒回路100が、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに室内熱交換器51cが凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
【0034】
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管41を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管45、閉鎖弁26、ガス管9、ガス管接続部54の順に流れて室内機5に流入する。室内機5に流入した冷媒は、室内機ガス管72を流れて室内熱交換器51に流入し、室内ファン55の回転によって室内機5の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器51が凝縮器として機能し、室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が吹出口(図示せず)から室内に吹き出されることによって、室内機5が設置された室内の暖房が行われる。
【0035】
室内熱交換器51から流出した冷媒は室内機液管71を流れ、室内膨張弁52を通過して減圧される。減圧された冷媒は、室内機液管71を流れて液管接続部53を介して液管8に流入する。
【0036】
液管8を流れる冷媒は、閉鎖弁25を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は、室外機液管44を流れ、吐出温度センサ33で検出した圧縮機21の吐出温度に応じて開度が調整された室外膨張弁24を通過するときに更に減圧される。室外機液管44から室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から流出した冷媒は、冷媒配管43、四方弁22、冷媒配管46、アキュムレータ28、吸入管42の順に流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0037】
なお、室内機5が冷房/除霜運転を行う場合、CPU210は、四方弁22を
図1中に破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとを連通させ、ポートcとポートdとを連通させるように切り換える。これにより、冷媒回路100は、室外熱交換器23が凝縮器として機能すると共に室内熱交換器51が蒸発器として機能する冷房サイクルとなる。
【0038】
[冷凍サイクル装置の特徴的な構成]
次に、実施例の冷凍サイクル装置1の室外機2の特徴的な構成について説明する。冷凍サイクル装置1で用いられる混合冷媒は、上述したような低GWP冷媒を20重量%以上含む混合冷媒であり、高温環境下での安定性が低く、高温環境下で分解されたときや、冷媒回路100に残留する水分や酸素と反応することで酸化、分解を起こしたときに、混合冷媒から酸が発生するおそれがある。また、圧縮機21から混合冷媒が吐出される際、圧縮機21内の冷凍機油10は、圧縮機21から混合冷媒と共に流出する傾向がある。
【0039】
そこで、本実施例の冷凍サイクル装置1の冷媒回路100は、上述したように、冷媒回路100の液管8における圧縮機21と閉鎖弁25との間に配置されて混合冷媒中から水分または酸素の少なくとも一方を除去する除去部38を備えている(
図1参照)。また、実施例における除去部38は、冷媒回路100における低圧回路部100Bに接続されている。
【0040】
また、冷凍サイクル装置1は、冷媒回路100における高圧回路部100Aに接続されて圧縮機21から吐出された混合冷媒中から冷凍機油10を分離する油分離器37を備える。油分離器37を備えることにより、冷媒回路100を循環する冷媒に含まれる冷凍機油10(以下、油分とも称する。)を除去し、油分が除去された冷媒中から、水分または酸素を除去するように構成することで、必要となる乾燥剤や脱酸素剤の量が抑えられるので、除去部38の体積を小さくすることができる。
【0041】
除去部38は、除去剤を有している。除去剤は、水分を除去する乾燥剤または酸素を除去する脱酸素剤である。1つの除去剤は、乾燥剤及び脱酸素剤の両方であってもよい。すなわち、除去剤は、脱酸素剤及び乾燥剤の少なくとも一方を含む。脱酸素剤としては、例えば、鉄粉等が用いられる。乾燥剤としては、例えば、シリカゲル、ゼオライト等が用いられる。また、低圧回路部100Bには、複数の除去部38が独立して配置されてもよく、乾燥剤を有する除去部38と、脱酸素剤を有する除去部38との個数が限定されるものではない。
【0042】
ここで、冷凍サイクル装置1全体の大きさ(システムサイズ)に応じて除去部37の体積(脱酸素剤または乾燥剤の量)が設定される理由を説明する。冷凍サイクル装置1の冷凍能力と、冷凍サイクル装置1のシステムサイズと、圧縮機21の大きさとの間には、相関性がある。
冷凍サイクル装置1のシステムサイズは、冷凍サイクル装置1において室内機2と室外機5とを接続するための接続配管(液管8、ガス管9)の最大長さ(配管長)に依存する。このため、冷凍サイクル装置1の冷凍能力が大きい場合には、接続配管の最大長さも長くなり、接続配管内における容積(配管の容積)が大きい程、接続配管内に空気中の酸素や水分が侵入するおそれが高まる傾向にある。
【0043】
すなわち、水分または酸素を除去する除去部38を、冷凍サイクル装置1のシステムサイズに応じて大型化することで、冷媒の分解による酸の発生が抑えられることが発明者により検証された。
【0044】
ここで、除去剤の体積を設定するためのシステムサイズの具体的な数値としては、例えば、冷媒回路100の配管の管内容積[cc]または管内表面積[m2]が用いられる。このようなシステムサイズに関連する数値に応じて、除去剤の体積[m3]が設定される。例えば、管内容積が10000[cc]以下のときに、除去剤の体積が、100[cc]に設定される。
【0045】
[冷媒中の水分または酸素の除去]
上述の冷媒回路100を冷媒が循環する際、油分離器37によって、圧縮機21からの冷媒の流れの上流側において、圧縮機21から吐出された混合冷媒中から冷凍機油10を分離し、除去部38によって、圧縮機21へ送られる混合冷媒中から酸素または水分を除去する。このように、圧縮機21から吐出された冷媒中から冷凍機油10を除去することで、冷凍機油10が除去部38に付着することが避けられるので、除去部38によって冷媒中の水分を効率的に除去することが可能になる。冷凍機油10が除去部38の除去剤の表面に付着すると、除去剤の水分や酸素を除去する能力が低下する。例えば、乾燥剤の表面に冷凍機油10が付着すると、水分を吸着させることが可能な表面積が小さくなるため、冷媒中の水分を効率的に除去することができない。また、圧縮機21の冷媒吸入側に除去部38が配置されることで、圧縮機21へ送られる冷媒中の水分を除去することができる。これにより、冷媒が高温になる圧縮機21内において、冷媒中の水分や酸素によって冷媒に酸化や分解が起こることが抑えられる。
【0046】
また、冷凍サイクル装置1の室外機制御回路200は、圧縮機21の運転開始時に除去部38へ混合冷媒を流し、除去部38へ混合冷媒を所定時間流した後に混合冷媒がバイパス配管47へ流れるように切換弁48を制御する。このため、冷凍サイクル装置1の最初の起動時に、冷媒回路100内に残留する水分または酸素を除去することが可能になり、水分または酸素が除去された後に除去部38を冷媒が通過することに伴う冷媒の圧力損失を抑えることができる。除去部38は、主に、冷凍サイクル装置1を設置した後に冷凍サイクル装置1が最初に使用される際に、製造時や設置時の環境の影響で使用する前から冷媒回路100内に残留する水分または酸素を除去するために使用される。ところが、一度水分を吸着させた乾燥剤は、外気温の影響による温度上昇によって水分を放出することがある。そのため、冷凍サイクル装置1の室外機制御回路200は、圧縮機21の運転を開始する度に除去部38へ所定時間混合冷媒を流すようにしている。したがって、冷凍サイクル装置1は、冷媒回路100内から水分や酸素を除去するために必要なタイミングで除去部38を使用し、その後の圧縮機21の運転時に、除去部38によって冷媒の圧力損失を招くことが避けられる。
【0047】
上述した実施例では、除去部38が冷媒回路100の低圧回路部100Bに設けられたが、低圧回路部100Bに配置される構成に限定されるものではない。
図2は、変形例の冷凍サイクル装置1全体を示す模式図である。変形例は、冷媒回路100における除去部38の配置が実施例と異なる。説明の便宜上、変形例においても、実施例と同一の構成部材には、実施例と同一の符号を付けて説明を省略する。
図2に示すように、変形例における冷媒回路100には、液管8における圧縮機21と閉鎖弁25との間、及びガス管9における圧縮機21と閉鎖弁26との間に、除去部38がそれぞれ配置されている。
【0048】
なお、除去部38は、室内機2と室外機5とを接続する液管8、ガス管9にそれぞれ設けられた2つの閉鎖弁25、26の少なくとも一方と、圧縮機21との間に配置されていればよい。除去部38は、主に、冷凍サイクル装置1を設置した後に冷凍サイクル装置1が最初に使用される際に、冷媒回路100内に残留する水分または酸素を除去するために使用される。また、除去部38は、油分離器37によって油分が除去されて、アキュムレータ28の上流側を流れる冷媒から水分または酸素を除去することが好ましい。また、冷房時と暖房時とで冷媒が循環する向きが逆になるので、冷凍サイクル装置1の設置後に最初に使用される運転が、冷房であるか暖房であるかによって除去部38の配置が好ましい位置が変わる。これらを踏まえると、冷房時と暖房時との両方において、冷媒から水分または酸素を効果的に除去するために、
図2に示すように、2つの除去部38が配置される構成が好ましく、冷凍サイクル装置1の設置後の最初の運転が冷房と暖房のいずれである場合にも対応することが可能になる。
【0049】
上述のように冷凍サイクル装置1は、冷媒回路100における圧縮機21と、閉鎖弁25、26のそれぞれとの間に配置され、混合冷媒中から水分または酸素の少なくとも一方を除去する除去部38と、を備える。これにより、冷媒回路100内を循環して圧縮機21へ流入する混合冷媒に含まれる水分または酸素が低減されるので、圧縮機21内における混合冷媒が酸化や分解を起こすことを抑制することができる。したがって、混合冷媒から酸が発生することが抑制され、酸によって冷凍サイクル装置1が損傷することを抑制できる。
【0050】
また、冷凍サイクル装置1は、冷媒回路100において相対的に高圧の混合冷媒が流れる高圧回路部100Aに接続され、圧縮機21から吐出された混合冷媒中から冷凍機油10を分離する油分離器37を備える。このように、圧縮機21からの冷媒の流れの上流側で、油分離器37によって冷媒中に含まれる冷凍機油10が除去されると共に、冷凍機油10が除去された冷媒中から、除去部38によって水分や酸素を除去することができる。このため、油分離器37から冷凍機油10を圧縮機21内へ戻すことで、圧縮機21内に適切な量の冷凍機油10を常に確保するが可能になり、圧縮機21内の摺動部分が冷凍機油10で適正に潤滑されるので、摺動部分等の高温部分で冷媒が酸化や分解を起こすことを抑制できる。加えて、圧縮機21内へ送られる冷媒に水分や酸素が含まれることが抑えられるので、圧縮機21内における混合冷媒が酸化や分解を起こすことを抑制することができる。したがって、混合冷媒から酸が発生することが抑制され、酸によって冷凍サイクル装置1が損傷することを抑制できる。
【0051】
また、冷凍サイクル装置1における冷媒回路100は、除去部38が設けられた冷媒配管46に、除去部38を迂回して混合冷媒を流すバイパス配管47が設けられている。これにより、除去部38を使用しない場合、バイパス配管47へ冷媒を流すことにより、除去部38の流動抵抗に伴う冷媒の圧力損失を抑えることができる。
【0052】
また、冷凍サイクル装置1は、冷媒の流れを除去部38へ向かう流れとバイパス配管47へ向かう流れとに切り換える切換弁48と、切換弁48の切換動作を制御する室外機制御回路200と、備えており、室外機制御回路200は、圧縮機21の運転開始時に除去部38へ混合冷媒を流し、除去部38へ混合冷媒を所定時間流した後に混合冷媒がバイパス配管47へ流れるように切換弁48を制御する。これにより、除去部38を必要なタイミングで使用し、その後の圧縮機21の運転時に、除去部38によって冷媒の圧力損失を招くことを避けることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 冷凍サイクル装置
2 室内機
5 室外機
8 液管(接続配管)
9 ガス管(接続配管)
10 冷凍機油(潤滑油)
21 圧縮機
25、26 閉鎖弁
37 油分離器
38 除去部
46 冷媒配管(配管)
47 バイパス配管
48 切換弁(流路切換部材)
100 冷媒回路
100A 高圧回路部
100B 低圧回路部
200 室外機制御回路(制御部)