(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/183 20060101AFI20221213BHJP
B62D 1/181 20060101ALI20221213BHJP
B62D 1/187 20060101ALI20221213BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20221213BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20221213BHJP
【FI】
B62D1/183
B62D1/181
B62D1/187
B60N2/06
B60N2/16
(21)【出願番号】P 2018183820
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】西村 要介
(72)【発明者】
【氏名】越智 教博
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】野沢 康行
(72)【発明者】
【氏名】北原 圭
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-168972(JP,A)
【文献】国際公開第03/020571(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0200344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
B60N 2/06
B60N 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵に用いられるステアリング装置であって、
第1の回動軸周りに回動するステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールを前記第1の回動軸と交差する第2の回動軸周りに回動させることにより、前記ステアリングホイールを前記第1の回動軸に沿って折り畳む折り畳み機構と、
前記ステアリングホイールを、前記車両のダッシュボードから突出した突出位置と、前記突出位置よりも前記ダッシュボードに近い収納位置との間で移動させる移動機構と、
前記折り畳み機構及び前記移動機構を駆動する制御部と、を備え、
前記制御部は
、前記ステアリングホイールを前記突出位置から前記収納位置まで移動させる際に、
(a)前記ステアリングホイールと運転者との位置関係が所定の条件を満たすか否かを判定し、
(b)前記所定の条件を満たさないと判定した場合には、前記ステアリングホイールを前記突出位置と前記収納位置との間で移動させるために前記折り畳み機構と前記移動機構とを駆動する前に、前記車両に搭載された駆動部材を駆動することにより、前記ステアリングホイールを
前記運転者の身体に対して退避させ
、
(c)その後、前記折り畳み機構及び前記移動機構を駆動して前記ステアリングホイールを前記突出位置から前記収納位置まで移動させる
ステアリング装置。
【請求項2】
前記駆動部材は、前記ステアリングホイールの上下方向における位置を調節するためのチルト機構を含み、
前記制御部は、前記チルト機構を駆動することにより前記ステアリングホイールを上方に移動させた後に、前記折り畳み機構を駆動することにより前記ステアリングホイールを折り畳む
請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記駆動部材は前記移動機構を含み、
前記制御部は、前記移動機構を駆動することにより前記ステアリングホイールを前記突出位置から前記収納位置に向かう方向に移動させた後に、前記折り畳み機構を駆動することにより前記ステアリングホイールを折り畳む
請求項1又は2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記駆動部材は前記移動機構を含み、
前記制御部は、前記移動機構を駆動することにより前記ステアリングホイールを前記収納位置から前記突出位置に向かう方向に移動させた後に、前記折り畳み機構を駆動することにより前記ステアリングホイールを折り畳む
請求項1又は2に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記駆動部材は、前記車両の運転席シートの位置を調節するためのシート調節機構を含み、
前記制御部は、前記シート調節機構を駆動することにより前記運転席シートを前記車両の後方に移動させた後に、前記折り畳み機構を駆動することにより前記ステアリングホイールを折り畳む
請求項1~4のいずれか1項に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記駆動部材は、前記車両の運転席シートの位置を調節するためのシート調節機構を含み、
前記制御部は、前記シート調節機構を駆動することにより前記運転席シートを下方に移動させた後に、前記折り畳み機構を駆動することにより前記ステアリングホイールを折り畳む
請求項1~4のいずれか1項に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ステアリングホイールを折り畳んだ後に、前記移動機構を駆動することにより前記ステアリングホイールを前記収納位置に移動させる
請求項2~6のいずれか1項に記載のステアリング装置。
【請求項8】
前記ステアリング装置は、さらに、前記車両の車室内を撮影するカメラ装置を備え、
前記制御部は、前記カメラ装置からの撮影結果に基づいて、前記ステアリングホイールと前記運転者との位置関係を判定することにより、前記駆動部材の駆動方法を決定する
請求項2~7のいずれか1項に記載のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵に用いられるステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が目的地までの経路に沿って自動で走行する自動運転技術が知られている。NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration)により定義された自動運転レベル3以上では、車両の加減速、操舵及び制動等の運転操作を全てシステムが行うため、運転者が車両の操舵のためにステアリングホイールを手で把持しておく必要がなくなる。
【0003】
そのため、自動運転時において、ステアリングホイールを車両の前方に向けて移動させることにより、ステアリングホイールをダッシュボードの近傍の位置に収納するステアリング装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ステアリングホイールを収納することにより、運転者とダッシュボードとの間の空間を広く確保することができ、運転者の快適性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のステアリング装置では、ステアリングホイールの収納動作時に、ステアリングホイールが運転者の身体に干渉するおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決しようとするものであり、その目的は、ステアリングホイールの収納動作時に、ステアリングホイールが運転者の身体に干渉するのを抑制することができるステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るステアリング装置は、車両の操舵に用いられるステアリング装置であって、第1の回動軸周りに回動するステアリングホイールと、前記ステアリングホイールを前記第1の回動軸と交差する第2の回動軸周りに回動させることにより、前記ステアリングホイールを前記第1の回動軸に沿って折り畳む折り畳み機構と、前記ステアリングホイールを、前記車両のダッシュボードから突出した突出位置と、前記突出位置よりも前記ダッシュボードに近い収納位置との間で移動させる移動機構と、前記折り畳み機構及び前記移動機構を駆動する制御部と、を備え、前記制御部は、折り畳まれた前記ステアリングホイールを前記突出位置から前記収納位置まで移動させる際に、予め、前記車両に搭載された駆動部材を駆動することにより、前記ステアリングホイールを運転者の身体に対して退避させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様に係るステアリング装置によれば、ステアリングホイールの収納動作時に、ステアリングホイールが運転者の身体に干渉するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係るステアリング装置の構造を示す斜視図である。
【
図2】ステアリングホイールが折り畳まれた状態での、実施の形態1に係るステアリング装置の構造を示す斜視図である。
【
図3】折り畳まれたステアリングホイールが収納位置に移動した状態での、実施の形態1に係るステアリング装置の構造を示す斜視図である。
【
図4】ステアリングホイールが突出位置にある状態での、実施の形態1に係るステアリング装置を搭載した車両の車室内を示す斜視図である。
【
図5】ステアリングホイールが折り畳まれた状態での、実施の形態1に係るステアリング装置を搭載した車両の車室内を示す斜視図である。
【
図6】折り畳まれたステアリングホイールが収納位置に移動した状態での、実施の形態1に係るステアリング装置を搭載した車両の車室内を示す斜視図である。
【
図7】実施の形態1及び2に係るステアリング装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態1に係るステアリング装置におけるステアリングホイールの収納動作の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態1に係るステアリング装置におけるステアリングホイールの収納動作を説明するための概略図である。
【
図10】実施の形態2に係るステアリング装置におけるステアリングホイールの収納動作の流れを示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態2に係るステアリング装置におけるステアリングホイールの収納動作を説明するための概略図である。
【
図12】実施の形態3に係るステアリング装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】実施の形態3に係るステアリング装置におけるステアリングホイールの収納動作の流れを示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態3に係るステアリング装置におけるステアリングホイールの収納動作を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係るステアリング装置の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0012】
(実施の形態1)
まず、
図1~
図6を参照しながら、実施の形態1に係るステアリング装置2の構造について説明する。
図1は、実施の形態1に係るステアリング装置2の構造を示す斜視図である。
図2は、ステアリングホイール6が折り畳まれた状態での、実施の形態1に係るステアリング装置2の構造を示す斜視図である。
図3は、折り畳まれたステアリングホイール6が収納位置に移動した状態での、実施の形態1に係るステアリング装置2の構造を示す斜視図である。
図4は、ステアリングホイール6が突出位置にある状態での、実施の形態1に係るステアリング装置2を搭載した車両4の車室内を示す斜視図である。
図5は、ステアリングホイール6が折り畳まれた状態での、実施の形態1に係るステアリング装置2を搭載した車両4の車室内を示す斜視図である。
図6は、折り畳まれたステアリングホイール6が収納位置に移動した状態での、実施の形態1に係るステアリング装置2を搭載した車両4の車室内を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、ステアリング装置2は、車両4(
図4参照)に搭載され、車両4の操舵に用いられる装置である。車両4は、運転モードとして手動運転モードと自動運転モードとを切り替えることができる自動車であり、例えば普通乗用車、バス又はトラック等である。なお、車両4は、自動車に限定されず、例えば建機又は農機等であってもよい。
【0014】
図1~
図3に示すように、ステアリング装置2は、ステアリングホイール6と、移動機構10と、折り畳み機構12と、チルト機構14(駆動部材の一例)と、反力モータ16と、カメラ装置18(後述する
図7参照)とを備えている。なお、ステアリング装置2は、いわゆるステアバイワイヤ方式のステアリング装置であり、ステアリングホイール6と車両4の左右の転舵輪(図示せず)とは機械的に接続されていない。
【0015】
図1に示すように、ステアリングホイール6は、手動運転モードにおいて運転者20(後述する
図9参照)により操作される部材であり、例えば円環状に形成されている。ステアリングホイール6は、折り畳み機構12を介して、移動機構10の可動部材36(後述する)に回動可能に支持されている。運転者20は、ステアリングホイール6を手で把持して第1の回動軸22周りに回動することにより、左右の転舵輪の各転舵角を変化させることができる。なお、第1の回動軸22は、
図1において一点鎖線で示す方向(車両4の前後方向)に延びる仮想的な軸線である。ステアリングホイール6は、中立位置(
図1で示す位置)を中心として、左の端当て位置から右の端当て位置まで所定の回動範囲で回動する。
【0016】
図1に示すように、移動機構10は、
図1の矢印24で示す方向に、ステアリングホイール6を突出位置(
図1、
図2、
図4及び
図5参照)と収納位置(
図3及び
図6参照)との間で往復移動させるための機構であり、例えばテレスコピック機構である。
図4に示すように、突出位置では、ステアリングホイール6は、車両4のダッシュボード26から運転者20に向けて突出している。一方、
図6に示すように、収納位置では、ステアリングホイール6は、例えば車両4のダッシュボード26の内部に収納される。すなわち、収納位置は、突出位置よりもダッシュボード26に近い位置である。なお、収納位置では、ステアリングホイール6の全体がダッシュボード26の内部に完全に収納されてもよく、あるいは、ステアリングホイール6の一部がダッシュボード26の外部に露出されていてもよい。
【0017】
ここで、移動機構10の構成について具体的に説明する。
図1~
図3に示すように、移動機構10は、駆動モータ28と、ギヤユニット30(
図2参照)と、基礎ガイド32と、中間ガイド34と、可動部材36とを有している。
【0018】
駆動モータ28は、ギヤユニット30を駆動するための駆動源である。駆動モータ28は、基礎ガイド32の側面に取り付けられている。
【0019】
ギヤユニット30は、駆動モータ28の駆動力を、ナット38(後述する)及び送りねじ40(後述する)の各々に伝達するためのユニットである。
図2に示すように、ギヤユニット30は、駆動モータ28の駆動軸と一体に回動する第1の駆動ギヤ42と、ナット38と一体に回動する第2の駆動ギヤ44と、送りねじ40と一体に回動する第3の駆動ギヤ46と、第1の駆動ギヤ42の回動を第2の駆動ギヤ44及び第3の駆動ギヤ46の各々に伝達する一対の中間ギヤ48a及び48bとを有している。
【0020】
基礎ガイド32は、中間ガイド34のスライドを案内するための部材である。
図1に示すように、基礎ガイド32は、ヒンジ50を介して車体取付ブラケット49に傾動可能に支持されている。すなわち、基礎ガイド32は、車体取付ブラケット49に対してヒンジ50周りに傾動可能である。車体取付ブラケット49は、車両4のシャーシ(図示せず)に固定されている。
図2に示すように、基礎ガイド32には、送りねじ52が固定されている。送りねじ52には、第2の駆動ギヤ44と連結されたナット38が螺着されている。
【0021】
中間ガイド34は、可動部材36のスライドを案内するための部材である。
図2に示すように、中間ガイド34の下面には、ナット38が回動可能に支持されている。これにより、中間ガイド34は、ナット38及び送りねじ52を介して、基礎ガイド32にスライド可能に支持されている。ナット38が回動した際には、ナット38は、送りねじ52に対して回動しながら送りねじ52に沿って移動する。その結果、中間ガイド34は、
図2の矢印24で示す方向に、基礎ガイド32に対してスライド移動する。また、中間ガイド34の下面には、送りねじ40が回動可能に支持されている。なお、中間ガイド34は、基礎ガイド32の運転者20側の端部に位置する際には、基礎ガイド32よりも運転者20側に突出する。
【0022】
可動部材36は、折り畳み機構12を介してステアリングホイール6を支持するための部材である。
図2に示すように、可動部材36の下面には、ナット54が固定されている。ナット54は、中間ガイド34の送りねじ40に螺着されている。これにより、可動部材36は、ナット54及び送りねじ40を介して、中間ガイド34にスライド可能に支持されている。送りねじ40が回動した際には、ナット54は、送りねじ40に対して回動しながら送りねじ40に沿って移動する。その結果、可動部材36は、
図2の矢印24で示す方向に、中間ガイド34に対してスライド移動する。
【0023】
駆動モータ28が駆動した際に、駆動モータ28の回動は、第1の駆動ギヤ42、一対の中間ギヤ48a,48b及び第2の駆動ギヤ44を介してナット38に伝達されるとともに、第1の駆動ギヤ42、中間ギヤ48a及び第3の駆動ギヤ46を介して送りねじ40に伝達される。これにより、中間ガイド34の基礎ガイド32に対するスライドと、可動部材36の中間ガイド34に対するスライドとが同時に行われる。その結果、ステアリングホイール6は、
図1の矢印24で示す方向に、突出位置と収納位置との間を往復移動する。
【0024】
図1に示すように、折り畳み機構12は、ステアリングホイール6を折り畳むための機構である。具体的には、折り畳み機構12は、
図1の矢印56で示す方向に、ステアリングホイール6を第1の回動軸22と直交(交差の一例)する第2の回動軸58周りに、起立姿勢(
図1参照)と折り畳み姿勢(
図2及び
図3参照)との間で回動させる。
図1に示すように、起立姿勢では、ステアリングホイール6は、可動部材36に対して起立する姿勢を取る。
図2及び
図3に示すように、折り畳み姿勢では、ステアリングホイール6は、可動部材36の下端部に沿って(すなわち、第1の回動軸22に沿って)折り畳まれる姿勢を取る。なお、第2の回動軸58は、
図1において一点鎖線で示す方向に延びる仮想的な軸線である。
【0025】
ここで、折り畳み機構12の構成について具体的に説明する。
図1~
図3に示すように、折り畳み機構12は、軸体60と、駆動モータ62とを有している。
【0026】
軸体60は、例えばステアリングホイール6の径方向に配置される棒状の部材である。軸体60は、可動部材36に第2の回動軸58周りに回動可能に支持されている。ステアリングホイール6は、一対の接続部64を介して軸体60に支持されている。ステアリングホイール6が中立位置にある状態では、軸体60は水平に配置される。
【0027】
駆動モータ62は、可動部材36に対して軸体60を第2の回動軸58周りに回動させるための駆動源である。
【0028】
軸体60が可動部材36に対して第2の回動軸58周りに回動することにより、ステアリングホイール6は、
図1の矢印56で示す方向に、第2の回動軸58周りに起立姿勢と折り畳み姿勢との間で回動する。
【0029】
図1に示すように、チルト機構14は、ステアリングホイール6の上下方向(Z軸方向)における位置を調節するための機構である。具体的には、チルト機構14は、
図1の矢印66で示す方向(上下方向)に、ステアリングホイール6を移動させる。これにより、ステアリングホイール6のチルト角を調節することができる。
【0030】
ここで、チルト機構14の構成について具体的に説明する。
図1に示すように、チルト機構14は、駆動モータ68と、送りねじ70と、ナット72と、リンク機構74とを有している。駆動モータ68は、送りねじ70を回動させるための駆動源であり、車体取付ブラケット49の側面に取り付けられている。送りねじ70は、駆動モータ68の駆動軸と一体に回動する。ナット72は、送りねじ70に螺着されている。リンク機構74は、ナット72に回動可能に支持されているとともに、基礎ガイド32の運転者20側の端部にボルト76で固定されている。
【0031】
駆動モータ68により送りねじ70が回動することにより、ナット72が送りねじ70に対して回動しながら送りねじ70に沿って移動する。これにより、リンク機構74が第3の回動軸78周りに回動し、基礎ガイド32は、
図1の矢印79で示す方向に、車体取付ブラケット49に対してヒンジ50周りに傾動する。その結果、ステアリングホイール6は、
図1の矢印66で示す方向に移動する。
【0032】
図1に示すように、反力モータ16は、ステアリングホイール6を第1の回動軸22周りに回動させた際に、ステアリングホイール6の回動方向と反対方向のトルクである操舵反力を発生させるためのモータであり、例えば三相のブラシレスモータである。反力モータ16は、移動機構10の可動部材36と折り畳み機構12との間に連結されている。反力モータ16が操舵反力を発生させることにより、運転者20に路面反力に応じた適度な手応え感を与えることができる。また、反力モータ16は、後述するようにステアリングホイール6をダッシュボード26の内部に収納する際に、予め、ステアリングホイール6を中立位置まで回動させた後に、ステアリングホイール6の回動を中立位置でロックする。さらに、反力モータ16には、ロータの回転角を検出するための回転角センサ
8が設けられている。
【0033】
後述する
図7に示すように、カメラ装置18は、車両4の車室内を撮影するための装置であり、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラである。カメラ装置18は、例えば車両4の車室内の天井に配置され、運転席シート82(後述する
図9参照)に着座している運転者20及びステアリングホイール6を撮影する。
【0034】
次に、
図7を参照しながら、実施の形態1に係るステアリング装置2の機能構成について説明する。
図7は、実施の形態1に係るステアリング装置2の機能構成を示すブロック図である。
【0035】
図7に示すように、ステアリング装置2は、機能構成として、制御部84を備えている。制御部84は、移動機構10の駆動モータ28、折り畳み機構12の駆動モータ62及びチルト機構14の駆動モータ68を駆動することにより、ステアリングホイール6の位置及び姿勢を制御するECU(Electronic Control Unit)である。
【0036】
制御部84は、カメラ装置18からの撮影結果(画像データ)に基づいて、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔(位置関係の一例)を判定する。制御部84は、当該判定結果に基づいて、各駆動モータ28,62及び68の駆動方法を決定する。
【0037】
また、制御部84は、回転角センサ8により検出されたロータの回転角に基づいて、操舵角を算出する。なお、操舵角とは、ステアリングホイール6の中立位置からの回動角度である。制御部84は、算出された操舵角に基づいて、反力モータ16を制御する。これにより、制御部84は、例えば自動運転モードの開始時において、ステアリングホイール6を中立位置まで回動させたり、ステアリングホイール6の回動を中立位置にロックしたりする。なお、ステアリングホイール4の回動を中立位置でロックするためのロック機構として、例えば回動する側の部材に設けられた孔に挿通されるソレノイドロックを用いてもよい。
【0038】
次に、
図4~
図6、
図8及び
図9を参照しながら、ステアリング装置2によりステアリングホイール6をダッシュボード26の内部に収納する動作について説明する。
図8は、実施の形態1に係るステアリング装置2におけるステアリングホイール6の収納動作の流れを示すフローチャートである。
図9は、実施の形態1に係るステアリング装置2におけるステアリングホイール6の収納動作を説明するための概略図である。
【0039】
図4に示すように、手動運転モードでは、ステアリングホイール6の位置及び姿勢はそれぞれ、突出位置及び起立姿勢となっており、ステアリングホイール6の回動はロックされていない。運転者20は、運転席シート82に着座した姿勢で、ステアリングホイール6を手で把持して第1の回動軸22周りに回動することにより、車両4を手動で操舵することができる。
【0040】
例えば運転者20がダッシュボード26に配置されたスイッチ等を操作することにより、手動運転モードから自動運転モードに切り替えられる。自動運転モードでは、以下のようにして、ステアリングホイール6がダッシュボード26の内部に収納される。
【0041】
図8に示すように、自動運転モードの開始時には、制御部84は、反力モータ16を駆動することにより、ステアリングホイール6を中立位置まで回動させ、ステアリングホイール6の回動を中立位置でロックする(S101)。
【0042】
その後、制御部84は、カメラ装置18からの撮影結果を取得し(S102)、取得した撮影結果に基づいて、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔を判定する(S103)。
【0043】
制御部84は、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離以上であると判定した場合には(S104でYES)、折り畳み機構12の駆動モータ62を駆動する。これにより、
図5に示すように、折り畳み機構12は、ステアリングホイール6を起立姿勢から折り畳み姿勢に回動させて、ステアリングホイール6を折り畳む(S105)。その後、制御部84は、移動機構10の駆動モータ28を駆動する。これにより、
図6に示すように、移動機構10は、折り畳まれたステアリングホイール6を突出位置から収納位置まで移動させる(S106)。
【0044】
なお、本実施の形態では、ステップS105の後にステップS106を実行したが、上述したステップS105及びS106を同時に実行してもよい。すなわち、ステアリングホイール6を折り畳みながら、ステアリングホイール6を突出位置から収納位置まで移動させてもよい。
【0045】
なお、ステアリングホイール6を収納位置から突出位置に移動させる取り出し動作の流れは、上述した収納動作の流れと逆になるので、その説明を省略する。
【0046】
図8のステップS104に戻り、制御部84は、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離未満であると判定した場合には(S104でNO)、チルト機構14の駆動モータ68を駆動する。なお、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離未満である場合としては、
図9の(a)に示すように、例えばステアリングホイール6が運転者20の胸腹部又は大腿部等に近接している場合が考えられる。
【0047】
制御部84がチルト機構14の駆動モータ68を駆動することにより、
図9の(b)に示すように、チルト機構14は、ステアリングホイール6を上方(矢印66で示す方向)に移動させる(S107)。これにより、ステアリングホイール6を、運転席シート82に着座している運転者20の身体に対して退避させることができる。その後、上述したステップS104に戻る。
【0048】
その後、制御部84は、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離以上であると判定した場合には(S104でYES)、折り畳み機構12の駆動モータ62を駆動する。これにより、
図9の(c)に示すように、折り畳み機構12は、ステアリングホイール6を起立姿勢から折り畳み姿勢に回動させて、ステアリングホイール6を折り畳む(S105)。この時、ステアリングホイール6は、運転者20の身体に対して退避した位置で折り畳まれるので、ステアリングホイール6の折り畳み動作中にステアリングホイール6が運転者20の身体に干渉するのを抑制することができる。
【0049】
その後、制御部84は、移動機構10の駆動モータ28を駆動する。これにより、移動機構10は、折り畳まれたステアリングホイール6を突出位置から収納位置まで移動させる(S106)。
【0050】
なお、自動運転モードから手動運転モードに切り替えられた際には、制御部84は、反力モータ16を駆動することにより、ステアリングホイール6の回動のロックを解除した後に、ステアリングホイール6を中立位置から転舵輪の転舵角に対応する操舵角の位置まで回動させてもよい。これにより、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えをスムーズに行うことができる。
【0051】
本実施の形態のステアリング装置2では、次のような効果を得ることができる。上述したように、ステアリングホイール6の収納動作時に、予め、ステアリングホイール6を運転者20の身体に対して退避させることにより、ステアリングホイール6が運転者20の身体に干渉するのを抑制することができる。
【0052】
(実施の形態2)
次に、
図7を参照しながら、実施の形態2に係るステアリング装置2Aの機能構成について説明する。
図7は、実施の形態2に係るステアリング装置2Aの機能構成を示すブロック図である。なお、以下の各実施の形態において、上記実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
図7に示すように、本実施の形態のステアリング装置2Aでは、自動運転モードにおいて、制御部84Aは、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離未満であると判定した場合に、チルト機構14の駆動モータ68を駆動することに代えて、移動機構10(駆動部材の一例)の駆動モータ28を駆動する。
【0054】
次に、
図10及び
図11を参照しながら、ステアリング装置2Aによりステアリングホイール6をダッシュボード26の内部に収納する動作について説明する。
図10は、実施の形態2に係るステアリング装置2Aにおけるステアリングホイール6の収納動作の流れを示すフローチャートである。
図11は、実施の形態2に係るステアリング装置2Aにおけるステアリングホイール6の収納動作を説明するための概略図である。なお、
図10のフローチャートにおいて、
図8のフローチャートと同一の処理には同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0055】
図10に示すように、自動運転モードが開始した際には、上記実施の形態1と同様に、ステップS101~S104が実行される。
【0056】
ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離以上である場合には(S104でYES)、上記実施の形態1と同様に、ステップS105及びS106が実行される。
【0057】
一方、
図11の(a)に示すように、ステアリングホイール6が運転者20の身体に近接している場合には、制御部84Aは、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離未満であると判定し(S104でNO)、移動機構10の駆動モータ28を駆動する。これにより、
図11の(b)に示すように、移動機構10は、ステアリングホイール6を車両4の前方(矢印24で示す方向)、すなわち突出位置から収納位置に向かう方向に移動させる(S201)。これにより、ステアリングホイール6を、運転席シート82に着座している運転者20の身体に対して退避させることができる。その後、上述したステップS104に戻る。
【0058】
その後、制御部84Aは、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離以上であると判定した場合には(S104でYES)、折り畳み機構12の駆動モータ62を駆動する。これにより、
図11の(c)に示すように、折り畳み機構12は、ステアリングホイール6を起立姿勢から折り畳み姿勢に回動させて、ステアリングホイール6を折り畳む(S105)。この時、ステアリングホイール6は、運転者20の身体に対して退避した位置で折り畳まれるので、ステアリングホイール6の折り畳み動作中にステアリングホイール6が運転者20の身体に干渉するのを抑制することができる。
【0059】
その後、制御部84Aは、移動機構10の駆動モータ28を駆動する。これにより、移動機構10は、折り畳まれたステアリングホイール6を突出位置から収納位置まで移動させる(S106)。
【0060】
したがって、本実施の形態のステアリング装置2Aにおいても、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、ステップS201において、移動機構10は、ステアリングホイール6を車両4の前方に移動させたが、これに代えて、ステアリングホイール6を車両4の後方、すなわち収納位置から突出位置に向かう方向に移動させてもよい。
【0062】
(実施の形態3)
次に、
図12を参照しながら、実施の形態3に係るステアリング装置2Bの機能構成について説明する。
図12は、実施の形態3に係るステアリング装置2Bの機能構成を示すブロック図である。
【0063】
図12に示すように、本実施の形態のステアリング装置2Bは、シート調節機構86(駆動部材の一例)を備えている。シート調節機構86は、運転席シート82の前後方向及び上下方向における位置を調節するための機構である。シート調節機構86は、運転席シート82を前後方向に移動させるスライド機構(図示せず)と、運転席シート82を上下方向に移動させるリフター機構(図示せず)と、スライド機構及びリフター機構を駆動する駆動モータ88とを有している。
【0064】
制御部84Bは、シート調節機構86の駆動モータ88を駆動することにより、運転席シート82の前後方向及び上下方向における位置を調節する。
【0065】
次に、
図13及び
図14を参照しながら、ステアリング装置2Bによりステアリングホイール6をダッシュボード26の内部に収納する動作について説明する。
図13は、実施の形態3に係るステアリング装置2Bにおけるステアリングホイール6の収納動作の流れを示すフローチャートである。
図14は、実施の形態3に係るステアリング装置2Bにおけるステアリングホイール6の収納動作を説明するための概略図である。なお、
図13のフローチャートにおいて、
図8のフローチャートと同一の処理には同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。
【0066】
図13に示すように、自動運転モードが開始した際には、上記実施の形態1と同様に、ステップS101~S104が実行される。
【0067】
ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離以上である場合には(S104でYES)、上記実施の形態1と同様に、ステップS105及びS106が実行される。
【0068】
一方、
図14の(a)に示すように、ステアリングホイール6が運転者20の身体に近接している場合には、制御部84Bは、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離未満であると判定し(S104でNO)、シート調節機構86の駆動モータ88を駆動する。これにより、
図14の(b)に示すように、シート調節機構86は、運転席シート82を車両4の後方(矢印90で示す方向)に移動させる(S301)。これにより、ステアリングホイール6を、運転席シート82に着座している運転者20の身体に対して退避させることができる。その後、上述したステップS104に戻る。
【0069】
その後、制御部84Bは、ステアリングホイール6と運転者20の身体との間隔が所定距離以上であると判定した場合には(S104でYES)、折り畳み機構12の駆動モータ62を駆動する。これにより、
図14の(c)に示すように、折り畳み機構12は、ステアリングホイール6を起立姿勢から折り畳み姿勢に回動させて、ステアリングホイール6を折り畳む(S105)。この時、ステアリングホイール6は、運転者20の身体に対して退避した位置で折り畳まれるので、ステアリングホイール6の折り畳み動作中にステアリングホイール6が運転者20の身体に干渉するのを抑制することができる。
【0070】
その後、制御部84Bは、移動機構10の駆動モータ28を駆動する。これにより、移動機構10は、折り畳まれたステアリングホイール6を突出位置から収納位置まで移動させる(S106)。
【0071】
したがって、本実施の形態のステアリング装置2Bにおいても、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、ステップS301において、シート調節機構86は、運転席シート82を車両4の後方に移動させたが、これに代えて、運転席シート82を下方(
図14の(b)の矢印92で示す方向)に移動させてもよい。あるいは、シート調節機構86は、運転席シート82を車両4の後方且つ下方に移動させてもよい。
【0073】
(変形例等)
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0074】
例えば、上記各実施の形態において、制御部84(84A,84B)は、カメラ装置18からの撮影結果に基づいて、ステアリングホイール6と運転者20との位置関係を判定することにより、駆動部材の駆動方法を決定してもよい。具体的には、制御部84(84A,84B)は、ステップS107(S201,S301)において、ステアリングホイール6と運転者20との位置関係に応じて、a)移動機構10の駆動モータ28、b)折り畳み機構12の駆動モータ62、c)チルト機構14の駆動モータ68、及び、d)シート調節機構86の駆動モータ88の中から少なくとも1つを駆動部材として選択し、選択した駆動部材を駆動してもよい。例えば、制御部84(84A,84B)は、ステアリングホイール6を上方に移動させ、且つ、運転席シート82を車両4の後方に移動させてもよい。これにより、ステアリングホイール6と運転者20との位置関係に応じた最適な方法で、ステアリングホイール6を、運転席シート82に着座している運転者20の身体に対して退避させることができる。
【0075】
また、上記各実施の形態では、反力モータ16を用いてステアリングホイール6の回動をロックしたが、これに限定されず、例えば機械的なロック機構を用いてステアリングホイール6の回動をロックしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係るステアリング装置は、例えば運転モードとして手動運転モードと自動運転モードとを切り替えることができる自動車等に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
2,2A,2B:ステアリング装置、4:車両、6:ステアリングホイール、10:移動機構、12:折り畳み機構、14:チルト機構、16:反力モータ、18:カメラ装置、20:運転者、22:第1の回動軸、24,56,66,79,90,92:矢印、26:ダッシュボード、28,62,68,88:駆動モータ、30:ギヤユニット、32:基礎ガイド、34:中間ガイド、36:可動部材、38,54,72:ナット、40,52,70:送りねじ、42:第1の駆動ギヤ、44:第2の駆動ギヤ、46:第3の駆動ギヤ、48a,48b:中間ギヤ、49:車体取付ブラケット、50:ヒンジ、58:第2の回動軸、60:軸体、64:接続部、74:リンク機構、76:ボルト、78:第3の回動軸、82:運転席シート、84,84A,84B:制御部、86:シート調節機構