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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-12
(45)【発行日】2022-12-20
(54)【発明の名称】レーザ溶接方法及びレーザ溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/32 20140101AFI20221213BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20221213BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20221213BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20221213BHJP
   B23K 26/28 20140101ALI20221213BHJP
【FI】
B23K26/32
B23K26/08 F
B23K26/21 G
B23K26/21 F
B23K26/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018184305
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049538
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】山口 紘次朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 克典
(72)【発明者】
【氏名】森脇 幹文
(72)【発明者】
【氏名】中井 正規
(72)【発明者】
【氏名】市原 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨永 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】氏平 直樹
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152703(JP,A)
【文献】特表2018-505059(JP,A)
【文献】特開2002-283080(JP,A)
【文献】特開2005-254282(JP,A)
【文献】特開2004-136307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の融点を有する第1の材料からなる第1の板状部材と、前記第1の融点よりも低い第2の融点を有する第2の材料からなる第2の板状部材とを溶接するレーザ溶接方法であって、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを突き合せて接触させる工程と、
前記第1の板状部材にレーザを照射することにより、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材を加熱し溶融する工程と、
前記レーザの照射位置を、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接触部に沿った第1の方向成分と前記第1の方向成分とは異なる第2の方向成分を含む方向に移動させる工程を含む、レーザ溶接方法。
【請求項2】
前記照射位置が螺旋を描くように移動されることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
前記照射位置がトロイダル曲線を描くように移動されることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項4】
前記照射位置がジグザグ模様又は波形曲線を描くように移動されることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ溶接方法。
【請求項5】
第1の融点を有する第1の材料からなる第1の板状部材と、前記第1の融点よりも低い第2の融点を有する第2の材料からなる第2の板状部材とを溶接するレーザ溶接装置であって、
レーザ発振器と、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを突き合せて接触させて、前記レーザ発振器から発振されたレーザを前記第1の板状部材に照射するとともに、前記第1の板状部材に対する前記レーザの照射位置を、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接触部に沿った第1の方向成分と、前記第1の方向成分とは異なる第2の方向成分を含む方向に移動させる手段を備えることを特徴とするレーザ溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接方法及びレーザ溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的強度の低い金属材料から作られた部品は補強を要求されることがある。この要求に応えるために、レーザ溶接が用いられる。レーザ溶接は、機械的強度の低い材料に機械的強度の高い材料を接合することで、補強を行う。金属材料においては、軽量材料として知られるアルミニウムや減衰機能を有するマグネシウムなど、その機能に応じた最適な使用を行うため、機能に応じた材料の選択を実施する必要があり、適材適所の配置を実施することにより自動車軽量化と安全性能を両立させることができる。
【0003】
材料の組み合わせによっては、脆弱な金属間化合物が接合界面に生成されるおそれがある。この問題に対して、高融点材料にのみ熱量を与え、与える熱量を制御することで、低融点材料のみを溶かすようにして接合させる方法が提案されている(特許文献1参照)。これにより、脆弱な金属間化合物の生成をできる限り防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-279744号公報
【0005】
一方、接合させる金属材料が鉄とアルミニウムの場合、一度アルミニウムの溶融が始まると、アルミニウムの溶融は入熱した箇所から周囲へ素早く拡がる。また、図7に示すように、アルミニウムの溶融量が増え、接合界面におけるアルミニウムの濃度が75%付近まで増えると、Fe2Al5又はFeAl3などのアルミニウムを多く含む脆弱な金属間化合物が生成されるおそれがある。この問題は、接合界面の内、アルミニウムに近い領域で起こる。脆弱な金属間化合物をより多く含む領域は、機械的強度の劣る部位となり、想定されている荷重で変形してしまうおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、金属材料の接合界面で溶融した材料を攪拌することで、生成された金属間化合物を均一に拡散させるレーザ溶接方法及びレーザ溶接装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に係る実施形態の、第1の融点を有する第1の材料からなる第1の板状部材と、前記第1の融点よりも低い第2の融点を有する第2の材料からなる第2の板状部材とを溶接するレーザ溶接方法は、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを突き合せて接触させる工程と、
前記第1の板状部材にレーザを照射することにより、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材を加熱し溶融する工程と、
前記レーザの照射位置を、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接触部に沿った第1の方向成分と前記第1の方向成分とは異なる第2の方向成分を含む方向に移動させる工程を含む。
【0008】
請求項2に係る実施形態のレーザ溶接方法は、
前記照射位置が螺旋を描くように移動されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る実施形態のレーザ溶接方法は、
前記照射位置がトロイダル曲線を描くように移動されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る実施形態のレーザ溶接方法は、
前記照射位置がジグザグ模様又は波形曲線を描くように移動されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る実施形態の、第1の融点を有する第1の材料からなる第1の板状部材と、前記第1の融点よりも低い第2の融点を有する第2の材料からなる第2の板状部材とを溶接するレーザ溶接装置は、
レーザ発振器と、
前記第1の板状部材と前記第2の板状部材とを突き合せて接触させて、前記レーザ発振器から発振されたレーザを前記第1の板状部材に照射するとともに、前記第1の板状部材に対する前記レーザの照射位置を、前記第1の板状部材と前記第2の板状部材との接触部に沿った第1の方向成分と、前記第1の方向成分とは異なる第2の方向成分を含む方向に移動させる手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願の請求項1に記載の発明によれば、第1の部材と第2の部材を溶融させた状態で、レーザの照射位置を第1の方向成分と第2の方向成分を含む方向に移動させることで、生成された金属間化合物を拡散させるレーザ溶接方法を提供できる。また、第1の部材と第2の部材の接合界面については、金属間化合物が偏析するリスクがある場合には、再度レーザの照射位置の移動により、再溶融の後、攪拌することで金属間化合物を確実に拡散させることができる。これにより、接合界面の機械的性質が均一な金属材料部材を生産できる。
【0013】
また、本願の請求項5に記載の発明によれば、第1の部材と第2の部材を溶融させた状態で、レーザの照射位置を第1の方向成分と第2の方向成分を含む方向に移動させることで、生成された金属間化合物を拡散させるレーザ溶接装置を提供できる。また、第1の部材と第2の部材の接合界面については、金属間化合物が偏析するリスクがある場合には、再度レーザの照射位置の移動により、再溶融の後、攪拌することで金属間化合物を確実に拡散させることができる。これにより、接合界面の機械的性質が均一な金属材料部材を生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るレーザ溶接システムの概略構成を示す正面図である。
図2図1に示すレーザ溶接システムのブロック図である。
図3】第1の部材と第2の部材を突き合わせて、図1のレーザ溶接システムによって、第1の部材と第2の部材を突き合わせる方向に垂直な方向からレーザを照射して、螺旋を描くようにレーザ照射位置を動かして溶接する概略図である。
図4】x方向成分とy方向成分を含む方向にレーザ照射位置を動かすことで図3に示す螺旋を描くことを示し、また、そのときの第1の部材と第2の部材の断面の状態を示す概略図である。
図5】第1の部材と第2の部材を突き合わせて、図1のレーザ溶接システムによって、第1の部材と第2の部材を突き合わせる方向に垂直な方向からレーザを照射して、トロイダル曲線を描くようにレーザ照射位置を動かして溶接する概略図である。
図6】第1の部材と第2の部材を突き合わせて、図1のレーザ溶接システムによって、第1の部材と第2の部材を突き合わせる方向に垂直な方向からレーザを照射して、ジグザグ模様を描くようにレーザ照射位置を動かして溶接する概略図である。
図7】第1の部材と第2の部材を重ね合わせ、図1のレーザ溶接システムによって、第1の部材と第2の部材を重ね合わせる方向からレーザを照射して、螺旋を描くようにレーザ照射位置を動かして溶接する概略図である。
図8】x方向成分とy方向成分を含む方向にレーザ照射位置を動かすことで図7に示す螺旋を描くことを示し、また、そのときの第1の部材と第2の部材の断面の状態を示す概略図である。
図9】第1の部材と第2の部材を重ね合わせ、図1のレーザ溶接システムによって、第1の部材と第2の部材を重ね合わせる方向からレーザを照射して、トロイダル曲線を描くようにレーザ照射位置を動かして溶接する概略図である。
図10】鉄-アルミニウムの状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明に係るレーザ溶接方法の実施形態を説明する。
【0016】
[レーザ溶接システム]
図1は実施形態1に係るレーザ溶接方法を実施するためのレーザ溶接システムの概要を示す。図示するレーザ溶接システム(以下、「溶接システム」という。)10は、溶接対象12を支持する下部構造14と、溶接対象12にレーザを照射する上部構造16を有する。
【0017】
下部構造14は、建物の床等に固定された基台18と、基台18の上に配置された移動テーブル20と、移動テーブル20の上に配置された支持テーブル22を有する。支持テーブル22は、溶接対象12を支持する水平支持面24を備えている。支持テーブル22はまた、水平支持面24に支持されている溶接対象12を固定するための治具26を備えている。移動テーブル20は、テーブル移動モータ28に連結されており、モータ28の駆動に基づいて、支持テーブル22を水平支持面24に平行で図の左右方向に伸びる方向(x方向)に移動させることができるように構成されている。
【0018】
実施形態では、支持テーブル22は、その内部に冷媒を輸送する空間の冷媒輸送路30が形成されている。冷媒は、空気又は適当な液体のいずれかであってもよい。冷媒輸送路30は冷媒循環路(管路)32を介して冷却器34に接続されている。冷却器34は、冷媒を冷媒循環路32を介して冷媒輸送路30に輸送し、また、冷媒輸送路30から冷媒循環路32を介して冷媒を回収するためのポンプ36と、回収された冷媒を再び冷却する熱交換器38を備えている。
【0019】
上部構造16はレーザ加工機40を有する。レーザ加工機40は、加工用レーザ発振器42と、ガルバノスキャナ44と、レンズ46を有する。レーザ発振器42から出力されるレーザは、YAGレーザ、CO2レーザ、その他のレーザのいずれであってもよい。ガルバノスキャナ44は、レーザ発振器42で発振されたレーザ48の照射位置をx方向成分とy方向成分を含む方向に連続的に又は断続的に変更するために、Xスキャンミラー50と、該Xスキャンミラー50に連結されたXスキャンモータ52と、Yスキャンミラー54と、該Yスキャンミラー54に連結されたYスキャンモータ56を有する。Xスキャンミラー50とXスキャンモータ52は、Xスキャンモータ52の駆動に基づいてXスキャンミラー50の角度を調整することで、レーザ発振器42で発振されたレーザ48を、溶接対象12上でx方向に走査するように構成されている。Yスキャンミラー54とYスキャンモータ56は、Yスキャンモータ56の駆動に基づいてYスキャンミラー54の角度を調整することで、レーザ発振器42で発振されてXスキャンミラー50で反射したレーザ48を、溶接対象12に向けると共に溶接対象12上でy方向に走査するように構成されている。したがって、Xスキャンモータ52とYスキャンモータ56を同時に駆動することにより、Xスキャンミラー50とYスキャンミラー54を同時に動かし、溶接対象12上においてx方向成分とy方向成分を含む方向に連続的に又は断続的にレーザ照射位置を移動させることができる。
【0020】
なお、上述したレーザ溶接システムでは、移動テーブル20が支持テーブル22をx方向に移動させたが、代わりに、レーザ加工機40をスキャナヘッドとしてx方向に移動させてもよい。
【0021】
上述したテーブル移動モータ28、ポンプ36、レーザ発振器42、Xスキャンモータ52、及びYスキャンモータ56は、コントローラ58に接続されている。コントローラ58はまた、記憶部60に接続されている(図2参照)。したがって、コントローラ58は、記憶部60に記憶されているプログラム又はデータに基づいて上述の機器を駆動し、所定の溶接加工を行うことができる。具体的に、溶接システム10で行うことができる種々の溶接加工について説明する。
【0022】
[実施形態1]
まず最初に説明する溶接加工の溶接対象12は、図3に示すように、突き合わせた2つの部材である。図面上、第1の部材62と第2の部材64は共に板状部材であるが、その組み合わせに限るものではない。
【0023】
第1の部材62には第2の部材64よりも融点の高い材料が選ばれる。例えば、第1の部材62は鉄で、その融点は1,538℃である。第2の部材64はアルミニウムで、その融点は660℃である。
【0024】
図示するように、第1の部材62と第2の部材64は、第1の部材62を左、第2の部材64を右にして突き合わせる。重ねた第1の部材62と第2の部材64は、両者を出来るだけ密着させた状態で、適当な治具26によって固定する(図1参照)。
【0025】
この状態で、コントローラ58は記憶部60に記憶されている溶接プログラムを読み出し、そのプログラムにしたがってレーザ発振器42、Xスキャンモータ52、Yスキャンモータ56、及びテーブル移動モータ28を駆動する。これにより、レーザ発振器42から出力されたレーザ48は、Xスキャンミラー50とYスキャンミラー54で反射し、レンズ46を介して、第1の部材62と第2の部材64の突き合わせ方向(y方向)に垂直な方向(z方向)から、第1の部材62に照射される。レーザ48の照射位置66は、Xスキャンミラー50によってx方向に動かされ、Yスキャンミラー54によってy方向に動かされ、結果として、x方向成分とy方向成分を含む方向(図4に示す矢印C方向)に移動する。また、テーブル移動モータ28の駆動に基づいて、レーザ照射位置66に対して溶接対象12をx方向に連続的に又は間欠的に移動する。
【0026】
一つの実施形態では、図3に示すように、テーブル移動モータ28が所定の時間間隔をあけて一定時間駆動される。また、テーブル移動モータ28が停止した状態で、Xスキャンモータ52とYスキャンモータ56が連続的に駆動され、レーザ照射位置66が螺旋68を描くように、Xスキャンミラー50とYスキャンミラー54が回転される。螺旋68は、アルキメデス螺旋、対数螺旋のいずれであってもよい。
【0027】
この結果、図4に示すように、レーザ48の照射によって加熱された第1の部材62のレーザ照射領域70では、第1の部材62が溶融する。また、第1の部材62から第2の部材64に伝わる熱によって第2の部材64が溶融する。このとき、上述のように、レーザ照射位置66は螺旋68を描くように移動するため、その移動によって溶融した第1の部材62と第2の部材64がx、y、z方向に攪拌され、その結果、実施形態では鉄とアルミニウムの金属間化合物(例えば、Fe2Al5、FeAl3)が溶融池72の中で均一に拡散する。
【0028】
本実施形態において、レーザ照射位置66の移動速度は限定的ではないが、レーザ照射位置を高速で動かすことによって溶融池における金属間化合物の拡散がより促進される。そのため、レーザ照射位置の移動速度は、照射位置の精度を考慮して、例えば3m/秒程度が好ましい。
【0029】
上記レーザ溶接中、冷却器34のポンプ36が連続的に駆動され、冷媒が、冷媒循環路32を介して、冷媒輸送路30に供給される(図1参照)。これにより、支持テーブル22を介して溶接対象12がその下面から冷却され、特に第2の部材64の溶融が過度に進行しないように制御される。
【0030】
[実施形態2]
上述した溶接加工では、x方向に一定の間隔をあけた位置でレーザ照射位置66を螺旋状に変化させたが、図5及び図6に示すように、x方向に向けて連続的にトロイダル曲線74、ジグザグ模様76、波形曲線(図示せず)を描くようにレーザ照射位置66を移動してもよい。この実施形態でも、レーザ照射位置66は、x方向成分とy方向成分を含む組み合わせ方向に連続的に移動するため、溶融した金属がx、y、z方向に攪拌され、その結果、金属間化合物が溶融池の中で均一に拡散する。
【0031】
なお、図3~6に示す実施形態では、レーザ照射位置66のx方向の移動に応じて第1の部材62と第2の部材64の上を移動し、これら第1の部材62と第2の部材64を安定的に保持する押さえローラ78を設けてもよい。
【0032】
[実施形態3]
上述した実施形態1,2では、第1の部材62と第2の部材64を突き合わせ、その突き合わせ方向に垂直な方向から一方の部材にレーザを照射して該部材を溶融し、その溶融熱によって他方の部材を溶融したが、本発明はいわゆる重ね合わせ溶接にも適用可能である。
【0033】
この場合、図7を参照すると、第2の部材64を下、第1の部材62を上にして重ね、第1の部材62と第2の部材64を重ね合わせた方向から第1の部材62に対してレーザを照射する。また、レーザ照射位置66は、x方向に一定の間隔をあけたレーザ照射領域80において螺旋82を描くように移動させてもよいし、図9に示すようにx方向に沿って連続的に又は間欠的にトロイダル曲線84、ジグザグ模様(図示せず)、波形曲線(図示せず)を描くように、移動させてもよい。いずれの場合にあっても、レーザ照射位置66がx方向成分とy方向成分を含む組み合わせ方向に移動されることによって、溶融池86(図8参照)において金属間化合物が効果的に拡散される。
【0034】
なお、図7~9に示す実施形態でもローラを採用し、第1の部材62と第2の部材64の間に安定した両者の接触面を形成するようにしてもよい。
【0035】
本実施形態では、突き合わせ溶接の際に第1の部材62にレーザ48を照射したが、第1の部材62だけでなく第2の部材64にもレーザを照射してもよい。
【0036】
上述した実施形態では、第1の部材62が鉄、第2の部材64がアルミニウムであったが、本発明の適用はその組み合わせに限るものでない。
【符号の説明】
【0037】
10:レーザ溶接システム
40:レーザ加工機
48:レーザ
62:第1の部材
64:第2の部材
66:レーザ照射位置
68,82:螺旋
74,84:トロイダル曲線
76:ジグザグ模様
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10